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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】架橋型粘着剤組成物および粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20241016BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241016BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20241016BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20241016BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241016BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J133/06
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/24
C09J7/25
H01M4/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022511589
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003734
(87)【国際公開番号】W WO2021199650
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/014959
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】土屋 靖史
(72)【発明者】
【氏名】三幣 美帆
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308670(JP,A)
【文献】特開2003-201306(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038383(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/002203(WO,A1)
【文献】特開2016-176038(JP,A)
【文献】特開2016-210863(JP,A)
【文献】特開平03-220280(JP,A)
【文献】特開2007-000338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/14
C09J 133/06
C09J 11/06
C09J 7/38
C09J 7/24
C09J 7/25
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーおよび式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーである(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(A1)を3質量部以上、25質量部未満、カルボン酸基含有(メタ)アクリルモノマー(A2)を5質量部以上、25質量部未満、式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A3)を5質量部以上、30質量部未満、式(4)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A4)を50質量部以上、90質量部未満(以上の各モノマーの合計を100質量部とする)を含むアクリル系共重合体を含有する架橋型粘着剤組成物であって、前記架橋型粘着剤組成物は架橋剤を介さずに前記アクリル系共重合体のカルボン酸と水酸基で自己架橋する架橋型粘着剤組成物。
【化1】
(式(1)中、R1はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、Rは炭化水素基を表し、xは1~3である。)
【化2】
(式(2)中、R3はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、Rは炭化水素基を表し、Rの炭素原子数は式(1)におけるRの炭素原子数よりも多く、xは1~3である。)
【化3】
(式(3)中、R5はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、R6は炭素原子数が1~3のアルキル基、シクロヘキシル基またはイソボルニル基を表す。)
【化4】
(式(4)中、R7はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、R8は炭素原子数が4~12のアルキル基を表す。)
【請求項2】
架橋剤を含まない、請求項1に記載の架橋型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体100質量部に対して固形分量が0.5質量部以下の架橋剤を含む、請求項1に記載の架橋型粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋型粘着剤組成物を含む粘着層を有する粘着テープ。
【請求項5】
粘着層が基材上に設けられている、請求項4に記載の粘着テープ。
【請求項6】
基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムから選択される少なくとも1種を有する、請求項5に記載の粘着テープ。
【請求項7】
粘着層の厚みが1~200μmであ請求項4に記載の粘着テープ。
【請求項8】
下記式により算出される電解液浸漬後の粘着力保持率(X)が、45%以上である、請求項4に記載の粘着テープ。
X=[(B)/(A)]×100[%]
(X:電解液浸漬後の粘着力保持率、(A):JIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定される電解液浸漬前の粘着力、(B):JIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定される電解液浸漬後の粘着力)
【請求項9】
非水系電池の電解液に接触した状態で使用するための、請求項4に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋剤成分の添加量を低減することができ、例えば電池、特にリチウムイオン二次電池などの非水系電池における絶縁、固定用途において、好適に使用できる架橋型粘着剤組成物および粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の非水系電池(以下、「非水系電池」ともいう)は、パソコンやスマートフォンなどに広く使用されている。
【0003】
非水系電池には、端末留め用、電極保護用など、種々の粘着テープが使用されている。これらの粘着テープは、電解液に接触する環境で使用されるため、粘着テープの粘着剤の成分が電解液に溶け出し、電池特性が劣化する場合がある。特に、粘着剤に含まれる架橋剤などの添加物は、電池特性の劣化の原因となる。そのため、電池メーカーでは、架橋剤などの添加物量を低減させた粘着剤を使用した粘着テープが求められている。
【0004】
また、粘着テープが非水系電池内部において電解液に接触すると、粘着剤が溶解して粘着力が劣化し、端末留めや電極保護などに必要な粘着力を維持できない場合がある。非水系電池内部で粘着テープが剥がれた場合、電池の短絡に繋がるなどの不具合が生じる可能性がある。そのため、電解液に接触しても一定の粘着力を維持できる性能が求められている。
【0005】
さらに、粘着テープが非水系電池の端末留めや電極保護に使われる場合、セパレータに存在する異物や電極のバリなどによる粘着テープの破れが発生し、電池の短絡に繋がるなどの不具合が生じる可能性がある。非水系電池にはより高い安全性が求められており、そのため、非水系電池内部の異物やバリに接触しても破れない、高い突き刺し強度を有する粘着テープが求められている。
【0006】
特許文献1には、非水系電池内部の電解液に浸漬するまたは電解液に接触する可能性のある部位に貼着するための粘着テープであって、常温で電池構成部材に容易に貼着でき、非水系電池内部環境下において優れた接着性を保持できる粘着テープが開示されている。しかし、特許文献1に開示の粘着テープの粘着剤層は、アクリル系ポリマーと架橋剤として作用するポリイソシアネートを必須成分としているが、非水系電池に対する粘着テープに含まれる架橋剤成分の与える影響に関しては検討されていない。これに対して、リチウムイオン二次電池等の非水系電池においては、高容量化、小型化、さらなる長期使用が課題となっており、従来問題視されなかった架橋剤の反応残渣等、微量成分の影響が相対的に大きくなるため、架橋剤成分の含有量を抑えた粘着テープが求められている。
【0007】
また、特許文献2には、非水系電池内部に使用する電池用粘着テープであって、電池特性の低下を引き起こすことなく、異物やバリ等の突起によるセパレータの貫通防止、活物質の剥がれ防止、電池ケース内への電極の詰め込み適性改善を行うことができる電池用粘着テープが開示されている。そして、特許文献2には、粘着剤層に必要に応じて架橋剤を添加してもよいとの開示がある。しかしながら、特許文献2では、発明の効果を検証する実施例における粘着剤層は架橋剤を必須成分としているが、特許文献2においても非水系電池に対する粘着テープに含まれる架橋剤成分の与える影響に関しては言及されていない。
粘着剤への架橋剤成分の添加は一般的な手法であり、架橋剤を含有させる目的は粘着テープの粘着層の架橋密度を高め、硬化を促進、諸物性を向上、安定化させる事にある。しかし、架橋剤成分を含むと、架橋剤成分を含まない場合に比較して粘着剤層の柔軟性が減少し、貼り付け性が劣化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2013/133167号
【文献】特開2013-140765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、架橋剤成分の含有量を抑えることができる架橋型粘着剤組成物、並びに、この架橋型粘着剤組成物を含む粘着層を有し、例えば電池、特にリチウムイオン二次電池などの非水系電池における絶縁、固定用途において、好適に使用できる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は、式(1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーおよび式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーからなる成分(A1)を3質量部以上、25質量部未満、カルボン酸基含有(メタ)アクリルモノマーからなる成分(A2)を5質量部以上、25質量部未満、式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーからなる成分(A3)を5質量部以上、30質量部未満、式(4)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーからなる成分(A4)を50質量部以上、90質量部未満(成分(A1)~(A4)の合計を100質量部とする)含むアクリル系共重合体を含有する、架橋型粘着剤組成物である。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、R1はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、Rは炭化水素基表し、xは1~3の整数である。)
【0013】
【化2】
【0014】
(式(2)中、R3はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、Rは炭化水素基表し、Rの炭素原子数は式(1)におけるRの炭素原子数よりも多く、xは1~3の整数である。)
【0015】
【化3】
(式(3)中、R5はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、R6は炭素原子数が1~3のアルキル基、シクロヘキシル基またはイソボルニル基を表す。)
【0016】
【化4】
【0017】
(式(4)中、R7はCH=CH-またはCH=C(CH)-を表し、R8は炭素原子数が4~12のアルキル基を表す。)
【0018】
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は、架橋剤を含まない自己架橋型であることが好ましい。
【0019】
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して固形分量が0.5質量部以下の架橋剤を含んでもよい。
【0020】
本発明にかかる粘着テープは、上記架橋型粘着剤組成物を含む粘着層を有する。
【0021】
本発明にかかる粘着テープは、粘着層が基材上に設けられている構成を有してもよい。基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムの少なくとも一種であることが好ましい。
【0022】
本発明にかかる粘着テープの粘着層の厚みは、1~200μmであることが好ましい。
【0023】
本発明にかかる粘着テープは、下記式により算出される電解液浸漬後の粘着力保持率が、45%以上であることが好ましい。
X=[(B)/(A)]×100[%]
[X:電解液浸漬後の粘着力保持率、(A):JIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定される電解液浸漬前の粘着力、(B):JIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定される電解液浸漬後の粘着力]
【0024】
本発明にかかる粘着テープは、非水系電池の電解液に接触した状態での用途に特に有用である。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる粘着テープは、架橋剤成分の添加量を抑えることができるため、電池、特にリチウムイオン二次電池などの非水系電池において使用される場合、電池特性の劣化を抑制することができる。また、本発明にかかる粘着テープは、非水系電池内部のセパレータ、電極などの被着体への貼り付け性に優れ、非水系電池内部の電解液に接触する環境で使用される場合でも、粘着力維持性能が優れている。さらに、粘着テープが非水系電池の端末留めや電極保護に使われる場合、本発明にかかる粘着テープによれば、セパレータに存在する異物や電極のバリなどの突起による粘着テープの破れの発生を抑制することができる。したがって、本発明にかかる粘着テープは、例えば、電池、特にリチウムイオン二次電池などの非水系電池における絶縁、固定用途において、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<アクリル系共重合体>
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物の樹脂成分は、以下の成分(A1)~(A4)をポリマー鎖の構成成分として含むアクリル系共重合体を含む。
(A1)前記式(1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー[成分(A1a)]及び前記式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー[成分(A1b)]からなる成分:3質量部以上25質量部未満。
(A2)カルボン酸基含有(メタ)アクリルモノマーからなる成分:5質量部以上25質量部未満。
(A3)前記式(3)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーからなる成分:5質量部以上30質量部未満。
(A4)前記式(4)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーからなる成分:50質量部以上90質量部未満。
(以上の成分(A1)~(A4)の合計を100質量部とする)。
成分(A1a)としては、前記式(1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(A1b)としては、前記式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物の樹脂成分に含まれるアクリル系共重合体を形成するためのモノマー組成は、成分(A1)~(A4)からなることが好ましい。
なお、「(メタ)アクリル」との記載は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する総称である。
【0027】
前記式(1)および前記式(2)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、炭化水素基あれば良く、その種類は特に制限されない。これらの基は飽和および不飽和の何れでも良いが、飽和炭化水素基および酸素原子含有飽和炭化水素基が好ましい。また、これらの基は脂肪族基および芳香族基の何れでも良いが、脂肪族炭化水素基および酸素原子含有脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。さらに、脂肪族基の場合は直鎖状、分枝状、脂環状の何れでも良いが、直鎖状または分枝状脂肪族炭化水素基、並びに酸素原子含有直鎖状または分枝状脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状脂肪族炭化水素基および酸素原子含有直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましい。直鎖状脂肪族炭化水素基および酸素原子含有直鎖状脂肪炭化水素基であることにより、アクリル系共重合体の架橋密度が向上し、電解液による粘着剤の溶解をさらに抑制することができる。
【0028】
前記式(1)におけるRが炭化水素基である場合の-R-(OH)x1、ならびに、前記式(2)におけるRが炭化水素基である場合の-R-(OH)x2(すなわち水酸基を有する炭化水素基)のそれぞれの具体例としては、水酸基を有するアルキル基が好ましく、炭素原子数1~4の水酸基を有するアルキル基がより好ましい。その具体例としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が挙げられる。
【0029】
成分(A1)に含まれる前記式(1)及び前記式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーのR及びRの少なくとも一方は炭化水素基であることが好ましい。
【0030】
前記式(2)のRの炭素原子数は、前記式(1)におけるRの炭素原子数よりも多い。具体的には、Rの炭素原子数とRの炭素原子数の差は1以上であり、好ましくは2以上であり、より好ましくは2以上8以下である。特にこの差が2以上であると、電解液による粘着剤の溶解を抑制する点でより顕著な効果が得られる。これは分子鎖の絡み合いがより十分になるからと推測される。したがって、前記式(2)のRの炭素原子数は適度に多い方が好ましい。ただし、多過ぎる場合はRの量に対する水酸基の量の割合が相対的に低下するので好ましくない場合がある。具体的には、前記式(2)のRの炭素原子数は2以上であり、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上12 以下である。前記式(1)におけるRの炭素原子数は1以上であり、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは2または3である。前記式(1)および前記式(2)におけるRおよびRの炭素原子数が上記の範囲内であることにより、アクリル系共重合体の架橋密度が向上し、電解液による粘着剤の溶解をさらに抑制することができる。
【0031】
前記式(1)および前記式(2)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、CH=CH-またはCH=C(CH)-である。前記式(1)におけるRと前記式(2)におけるRは、互いに同一でも良いし、異なっていても良い。
【0032】
前記式(1)および前記式(2)におけるx及びxは、RおよびRに結合している水酸基-(OH)の数をそれぞれ表す。x及びxはそれぞれ独立して1~3の整数であり、好ましくは1または2であり、最も好ましくは1である。x及びxがこれらの範囲内であることにより、重合反応を安定化させることができ、必要な粘着力を有する粘着剤を得ることができる。前記式(1)および前記式(2)におけるx及びxは、互いに同一でも良いし、異なっていても良い。
【0033】
前記式(1)および前記式(2)におけるRおよびRに対する-(OH)の結合位置は特に限定されない。ただし、前記式(2)におけるRに対する-(OH)の結合位置に関しては、Rの分子末端側(Rに対して遠い側の末端)が好ましい。Rに対する-(OH)の結合位置が上記にあることにより、アクリル系共重合体の架橋密度が向上し、電解液による粘着剤の溶解をさらに抑制することができる。
【0034】
前記式(1)および前記式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの特に好適な具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル[例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-HEA)]、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル[例えば、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4-HBA)]等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。これらの中から、成分(A1a)及び成分(A1b)となる少なくとも2種のモノマーを併用して成分(A1)を形成する。このように少なくとも2種のモノマーを併用することにより、アクリル系共重合体の架橋密度が向上し、電解液による粘着剤の溶解をさらに抑制することができる。

【0035】
成分(A1)~成分(A4)の全モノマーの合計100質量部に対する成分(A1)の含有量は、3質量部以上、25質量部未満である。この含有量が3質量部未満であると粘着剤の架橋点が減少し、電解液により粘着剤が溶解するため、電解液浸漬後の粘着力を維持することができない。又、この含有量が25質量部以上であると常態粘着力が低下するため、非水系電池における絶縁、固定用途において必要な粘着力を満たすことができない。この成分(A1)の含有量は、3質量部以上、23質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
成分(A1)を形成する成分(A1a)の量(Ma)と成分(A1b)の量(Mb)の割合(質量基準)は、本発明において目的とする効果が得られるように設定すればよい。所定の配合割合の成分(A2)との組合せにおいて電解液に対する耐性、例えば、電解液浸漬後の粘着力を維持するという点からは、MaをMbと同じとするか、あるいはMbよりもMaを少なくすること(Ma=MbまたはMa<Mb)が好ましい。更に、Maの2倍の量までの範囲でMaをMbよりも少なくすること(Ma<Mb≦[2×Ma])がより好ましく、Ma:Mbを1:1.2~1:2の範囲から選択することが特に好ましい。
【0037】
成分(A2)としてのカルボン酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有するモノマーであり、その例としては、例えば、(メタ)アクリル酸[例えば、アクリル酸(AA)]、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グラタコン酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸などが使用できる。これらのうち、得られる粘着剤の架橋密度や入手の容易性を考慮すると、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。成分(A2)としてのカルボン酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、その1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
成分(A1)~成分(A4)の全モノマーの合計100質量部に対する成分(A2)の含有量は、5質量部以上、25質量部未満である。成分(A2)の含有量が5質量部未満であると粘着剤の架橋点が減少し、電解液により粘着剤が溶解するため、電解液浸漬後の粘着力を維持することができない。又、成分(A2)の含有量が25質量部以上であると常態粘着力が低下するため、非水系電池における絶縁、固定用途において必要な粘着力を満たすことができない。成分(A2)の含有量は、10質量部以上、23質量部以下であることがより好ましい。
【0039】
成分(A3)としての前記式(3)により表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどが使用できる。得られる粘着剤の架橋密度を考慮するとアクリル酸メチルを用いることが好ましい。成分(A3)としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、その1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
成分(A1)~成分(A4)の全モノマーの合計100質量部に対する成分(A3)の含有量は、5質量部以上、30質量部未満である。成分(A3)の含有量が5質量部未満であると、粘着剤の耐反発性が減少して電子機器内部の部品固定等の用途に必要な粘着力を満たすことができない。又、成分(A3)の含有量が30質量部以上であると粘着力が低下するため、非水系電池における絶縁、固定用途において必要な粘着力を満たすことができない。成分(A3)の含有量は、5質量部以上、25質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
成分(A4)としての前記式(4)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル[例えば、アクリル酸ブチル(BA)]、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル[例えば、アクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA)]、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシルなどが使用できる。アクリル系共重合体を含む粘着剤のタックを維持するためTg(ガラス転移点)が低い(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等を使用することが好ましい。成分(A4)としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、その1種を、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
成分(A1)~成分(A4)の全モノマーの合計100質量部に対する成分(A4)の含有量は、50質量部以上、90質量部未満である。成分(A4)の含有量が50質量部未満であると、常態粘着力が低下するため、非水系電池における絶縁、固定用途において必要な粘着力を満たすことができない。成分(A4)の含有量が90質量部以上であると、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとカルボン酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が減少し、粘着剤の架橋点が減少するため、電解液により粘着剤が溶解し、電解液浸漬後の粘着力を維持することができない。成分(A4)の含有量は、50質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物の調製に用いるアクリル系共重合体は、これらのモノマーを溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種重合方法により重合して生成させることができる。例えば、反応容器内で、これらのモノマーと重合開始剤を酢酸エチル等の溶剤に溶解させ、恒温下で一定時間撹拌することでアクリル系共重合体を得ることができる。
【0044】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、特に限定されない。架橋型粘着剤組成物の粘着力や膨潤度が、本発明にかかる粘着テープの使用環境に適したものとなるように、重量平均分子量を調節することができる。重量平均分子量は、20万以上、120万以下であることが好ましく、25万以上、100万以下であることがより好ましい。
【0045】
モノマー組成を以上の様に構成することにより、モノマー中に含まれるカルボン酸基と水酸基に架橋が生じ、架橋成分の添加量の低減を可能とする架橋型粘着剤組成物を提供することができる。その結果、かかる粘着剤を含む粘着層における電解液浸漬後の粘着力保持率を十分なレベルに維持することができる。
【0046】
また、本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は架橋剤成分の添加を抑制することにより、常態粘着力を向上させることができる。常態粘着力が向上することにより、非水系電池内部のセパレータ、電極などの被着体への貼り付け性が優れる。常態粘着力が向上する理由として、粘着剤が架橋剤を介さずにアクリル系共重合体内の官能基同士で架橋する自己架橋部分を有するため、粘着剤の柔軟性が比較的高くなり、被着体への濡れ性が向上するためと考えられる。
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物を架橋して得られる粘着剤の常態粘着力は、目的とする粘着剤の用途に応じて設定することができ、少なくとも1.0N/10mmとなるように設定することが好ましい。
【0047】
さらに、本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は架橋剤成分の添加を抑制することにより、突き刺し強度が向上する。突き刺し強度が向上することにより、テープが非水系電池の端末留めや電極保護に使用される場合、セパレータに存在する異物や電極のバリなどの突起物によるテープの破れの発生を抑制することができる。突き刺し強度が向上する理由として、粘着剤が架橋剤を介さずにアクリル系共重合体内の官能基同士で架橋する自己架橋部分を有するため、粘着剤の柔軟性が比較的高くなり、針の突き刺し時に粘着剤層に加わる力が分散されるためと考えられる。
【0048】
なお、本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は、上述した架橋剤を添加しない場合における本発明で目的とする効果が得られる程度の自己架橋する部分を有すればよく、本発明にかかる架橋型粘着剤組成物には本発明で目的とする効果が損なわれない範囲内で架橋剤が添加されていてもよい。また、架橋剤の添加が好ましくない用途においては、本発明にかかる架橋型粘着剤組成物は架橋剤を含まない自己架橋型であることが好ましい。
常態粘着力を低下させず、かつ、良好な耐電解液性を確保するという点から、架橋型粘着剤組成物を構成するアクリル系共重合体100質量部に対する架橋剤の固形分量の配合割合は、0~0.5質量部の範囲から選択することができる。
本発明にかかる架橋型粘着剤組成物が架橋剤を含む場合は、架橋型粘着剤組成物を構成するアクリル系共重合体100質量部に対して、固形分量として0.5質量部以下の割合で、すなわち、0質量部を超えて0.5質量部以下の割合で架橋剤を添加することが好ましく、0.001~0.5質量部の範囲から選択した割合で架橋剤を添加することがより好ましい。
架橋剤としては、グリシジル基含有化合物(例えば、1,3ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m-N,N-ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルアニリン、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、イソシアネート基含有化合物(例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等)等を挙げることができる。
【0049】
<粘着テープ>
本発明にかかる粘着テープは、以上説明したアクリル系共重合体(および必要に応じて任意成分)を含有する架橋型粘着剤組成物が粘着剤として使用された粘着テープである。「架橋型粘着剤組成物が粘着剤として使用された粘着テープ」とは、例えば、この架橋型粘着剤組成物をシート状に形成した粘着層からなる粘着テープ(いわゆる、ベースレスタイプの粘着テープ)、あるいは、この架橋型粘着剤組成物を使用して基材の片面または両面に粘着層を形成した粘着テープである。
【0050】
ベースレスタイプの粘着テープは、例えば、離型紙等の支持体上にアクリル系共重合体を塗布し、その後乾燥させることにより形成できる。一方、基材を有する粘着テープは、基材上に本発明にかかる架橋型粘着剤組成物を塗布し、その後乾燥させることにより粘着剤層を形成することで製造することができる。あるいは、離型紙等の支持体上に本発明にかかる架橋型粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を基材の片面または両面に転写して貼り合せても良い。ベースレスタイプの粘着テープおよび基材を有する粘着テープの粘着剤層は、単層であっても良いし、複数の層の積層された積層体からなるものであっても良い。
【0051】
基材を有する粘着テープにおける粘着層の厚さは、好ましくは1~200μm、より好ましくは5~100μmである。ベースレスタイプの粘着テープの厚さは、好ましくは1~200μm、より好ましくは5~100μmである。
【0052】
架橋型粘着剤組成物を基材または離型紙等の支持体上に塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を用いれば良い。その具体例としては、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーロールコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0053】
非水系電池の電解液と接触する部分での用途に適した粘着テープの粘着力を評価する指標として、以下の計算式で算出される電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1対1での混合液)への浸漬後の粘着力保持率を利用することができる。
X=[(B)/(A)]×100[%]
(X:電解液浸漬後の粘着力保持率、(A):JIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定される電解液浸漬前の粘着力、(B):JIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定される電解液浸漬後の粘着力)
なお、電解液浸漬前の粘着力(A)としては、常態粘着力を利用することができる。電解液浸漬後の粘着力保持率の詳細な算出方法については後述する。
非水系電池用途の粘着テープの電解液浸漬後の粘着力保持率は、45%以上、すなわち、少なくとも45%とすることが好ましい。
【0054】
粘着テープが基材を有している場合、基材の具体例としては、紙、布、不織布、ネット等の繊維系基材、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の樹脂基材(樹脂フィルムまたは樹脂シート)、ゴムシート、発泡シート(発泡基材)、金属箔、金属板が挙げられる。これらのうち基材の材質としては、汎用性や非水系電池の電解液への耐薬品性等を考慮してポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムの少なくとも一種を用いることが好ましい。さらにこれらの積層体、例えば、樹脂基材と樹脂以外の基材との積層体、樹脂基材同士の積層体であっても良い。基材は単層、複層の何れでも良い。基材の粘着剤層を設ける面には、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理、下塗り処理、コロナ処理、プラズマ処理等の各種処理が施されていても良い。基材の厚さは、好ましくは5~500μm、より好ましくは10~200μmである。
【0055】
粘着テープは、離型紙またはその他のフィルムにより保護されていても良い。離型紙またはその他のフィルムは特に限定されず、公知のものを必要に応じて使用できる。
【実施例
【0056】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明する。
【0057】
[常態粘着力(A)]
280番耐水研磨紙で研磨したステンレス鋼(SUS304)板に、10mm幅の片面粘着テープ試料を2.0kgローラ1往復で加圧貼付し、加圧貼付後20分経過後の180°引きはがし粘着力(N/10mm幅)をJIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定した。
【0058】
[電解液浸漬後の粘着力(B)]
280番耐水研磨紙で研磨したSUS304板に、10mm幅の片面粘着テープ試料を2.0kgローラ1往復で加圧貼付した。加圧貼付後20分経過後に、このサンプルを、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1対1で混合した電解液に浸漬し、温度40±5℃の雰囲気下に24時間放置した。その後、サンプルを容器から取り出し、純水を用いて電解液を拭き取り、水滴を拭き取った後、温度23±5℃、湿度50±5%の雰囲気下に2時間放置した。このサンプルの180°引きはがし粘着力(N/10mm幅)をJIS Z 0237:2000に記載の方法に従って測定し、測定値を「電解液浸漬後の粘着力」とした。
【0059】
[電解液浸漬後の粘着力保持率(X)]
電解液浸漬後の粘着力保持率(X)を下記式により求めた。
X=[(B)/(A)]×100[%]
【0060】
[重量平均分子量]
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC法により、アクリル系共重合体の標準ポリスチレン換算の分子量を以下の測定装置および条件にて測定した値である。
・装置:LC-2000シリーズ(日本分光株式会社製)
・カラム:Shodex KF-806M×2本、Shodex KF-802×1本
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・注入量:100μL
・検出器:屈折率計(RI)
【0061】
[突き刺し強度]
23±5℃の雰囲気下で、直径5mmの円形の穴を有する金属板に、穴を覆うように片面粘着テープを貼付し、Oリング付きの冶具で粘着テープを挟んで固定した。直径1mm、先端形状半径が0.5mmの半円形の針を、粘着テープの粘着剤層側から、毎分50mmの速度で突き刺し、針が粘着テープを貫通するまでの最大応力を測定し、突き刺し強度とした。
【0062】
[実施例1~8、比較例1~13]
(アクリル系共重合体の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却機および窒素導入管を備えた反応装置に、表1に示す質量部のアクリル系共重合体を調製するための下記に示すモノマー、トルエン、酢酸エチル、連鎖移動剤およびラジカル重合開始剤を仕込み、窒素ガスを封入後、攪拌しながら窒素ガス気流下で65℃3時間反応させた。その後、ラジカル重合開始剤を仕込み、75℃3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、2-プロパノールを添加した。これにより固形分濃度30%のアクリル系共重合体を得た。
(i)アクリル系モノマー:
・成分(A1)
2-HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル(A1a)
4-HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル(A1b)
・成分(A2)
AA:アクリル酸
・成分(A3)
MA:アクリル酸メチル
・成分(A4):
BA:アクリル酸ブチル
2-EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
(ii)ラジカル重合開始剤
開始剤種A:2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)
開始剤種B:ジラウロイルパーオキサイド(商品名:パーロイルL、日本油脂株式会社製)
(iii)連鎖移動剤
n-ドデカンチオール
【0063】
(架橋型粘着剤組成物の調製)
上記の方法で調製したアクリル系重合体を用いて架橋剤を添加せずに実施例1~4及び比較例1~6用の粘着剤を調製した。
架橋剤(綜研化学製 E-5XM、固形分濃度5%)を上記の方法で調製したアクリル系重合体100質量部に対して表1及び表3に示す固形分量(質量部)で添加して実施例5~8、比較例7~13用の粘着剤を調製した。
【0064】
(片面粘着テープの製造)
両面コロナ放電処理された厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に、上記の方法によって調製した各粘着剤をそれぞれ全面平滑に塗布し、120℃で加熱乾燥し、厚さ5μmの粘着剤層を形成した。さらに、この粘着剤層の上に長鎖アルキル系の剥離紙を貼り合わせ、40℃で3日間養生した後、総厚30μmの片面粘着テープを得た。
【0065】
(粘着テープの評価)
各実施例、各比較例で得られた粘着テープの評価結果を表1~3に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
表1の実施例1~4では、モノマー組成(モノマーの種類と配合割合)を適切に選択し、かつ架橋剤を含まない自己架橋型のアクリル系重合体を粘着剤の樹脂成分として用いたことによって、架橋剤の添加無しでも、各評価項目において良好な結果が得られた。特に、十分な常態粘着力、電解液浸漬後の粘着力保持率及び突き刺し強度をバランス良く有する粘着テープを得ることができた。なお、実施例1の重量平均分子量は測定不可であったが、粘着テープの製造は問題なく可能であり、各評価項目において良好な結果が得られた。これは、重量平均分子量が測定可能範囲より大きくなっているが、アクリル系共重合体の分子内架橋を劣化させる因子にはならないためと考えられる。これに対して、架橋剤を含まず、モノマー組成が本発明における規定を満たしていない比較例1~6では、良好な電解液浸漬後の粘着力保持率と突き刺し強度の両方をバランスよく有する粘着テープを得ることはできなかった。
表1の実施例5~8では、架橋剤の添加量を少なく調整することによっても、各評価項目にかかる良好な特性をバランスよく有する、特に、十分な、常態粘着力、電解液浸漬後の粘着力保持率及び突き刺し強度を有する粘着テープを得ることができた。
【0070】
表1および表3に示すとおり、本発明におけるモノマー構成では、架橋剤成分の添加量を抑制することで高い常態粘着力を維持することができる。
【0071】
表1~3の結果から、本発明に従ってモノマー組成を調整することによって、各評価項目にかかる十分な特性をバランスよく維持しつつ、架橋剤の添加量が低減された、更には、架橋剤を含まない粘着テープが得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、架橋剤の添加量が低減された、好ましくは、架橋剤無添加のアクリル系共重合体を含む架橋型粘着剤組成物及びそれを用いた粘着テープを提供することができる。この粘着テープは、非水系電池の電解液と接触する状態での用途、例えば、電池、特にリチウムイオン二次電池などの非水系電池における絶縁、固定用途において、特に好適に利用できる。