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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20241016BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 220/08 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 220/04 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 222/02 20060101ALI20241016BHJP
   C08F 222/04 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 131/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C08F220/08
C08F220/04
C08F222/02
C08F222/04
C09J131/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022525102
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2019117981
(87)【国際公開番号】W WO2021092789
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、イン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シンホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チェンピン
(72)【発明者】
【氏名】チュイ、チャオホイ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-298815(JP,A)
【文献】特開2005-068399(JP,A)
【文献】特表2014-518310(JP,A)
【文献】特開2005-68399(JP,A)
【文献】特開2010-116472(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208573(WO,A1)
【文献】特開2007-211161(JP,A)
【文献】特開平4-117470(JP,A)
【文献】特開2003-342335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(a)ポリ酸ポリマー水性分散液であって、前記ポリ酸ポリマーが、50重量%~100重量%の1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物を含有し、前記エチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物が、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、α,β-メチレングルタル酸、モノアルキルマレエート、モノアルキルフマレート、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、およびそれらの塩を含む、ポリ酸ポリマー水性分散液、
(b)ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンであって、前記ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーが、0.1~10%のヒドロキシル基含有モノマー、0.1%~20%重量の不飽和カルボン酸および30%~90%のアクリルモノマーを含有する、
モノマー混合物を重合することから得られる、ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンを含む、接着剤組成物であって、
前記アクリルモノマーが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
上記成分(a)および(b)の固形分重量比が、前記成分(a)および(b)の前記固形分に基づいて、0.1:100~10:100である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリルレート、2-エチルヘキシルアクリルレート、デシルアクリルレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、置換スチレン、ブタジエン、ビニルアセテート、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルと共重合される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基含有モノマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基含有モノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)およびヒドロキシプロピルアクリレートを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記不飽和カルボン酸が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸無水物、マレイン酸無水物またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記モノマー混合物が、スチレンモノマーまたは前記エチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物とは異なるビニルモノマーを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の接着剤組成物によって調製された、物品。
【請求項8】
テキスタイル/不織布に対する請求項1に記載の接着剤組成物の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物、特に、ポリ酸ポリマー水性分散液およびアクリルエマルジョンを含む接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
テキスタイルおよび不織用途において使用される従来のバインダーは、機能性モノマーとしてN-メチロールアクリルアミド(NMA)を含有し、優れた耐水性(湿潤強度)および耐溶剤性(イソプロピルアルコール強度)を提供する。しかしながら、NMA含有バインダーは、加熱時にホルムアルデヒドを放出する。
【0003】
最近では、ホルムアルデヒド不含の架橋技術に関する多くの研究業績がある。これらの架橋技術は、硬化後に優れた耐水性および耐溶剤性を達成したが、それでもNMA含有バインダーに対して競合的でない。
【0004】
より良い性能を達成するために適度な硬化温度で新規の配合物を開発することが、期待される。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、より良い性能を達成するために適度な硬化温度を有する、特にNMAモノマーを含まない接着剤組成物を提供する。
【0006】
本開示の第1の態様では、本開示は、以下の成分、
(a)ポリ酸ポリマー水性分散液であって、ポリ酸ポリマーが、50重量%~100重量%の1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物を含有する、ポリ酸ポリマー水性分散液、
(b)ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンであって、ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーが、0.1~10%のヒドロキシル基含有モノマー、0.1%~20%重量の不飽和カルボン酸および30%~90%のアクリルモノマーを含有する、モノマー混合物を重合することから得られる、ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンを含む、接着剤組成物であって、
上記成分(a)および(b)の固形分重量比が、成分(a)および(b)の固形分に基づいて、0.1:100~10:100である、接着剤組成物を提供する。
【0007】
本開示の第2の態様では、本開示は、本開示に従う接着剤組成物によって調製された物品を提供する。
【0008】
本開示の第3の態様では、本開示は、テキスタイル/不織布に対する本開示の接着剤組成物の使用を提供する。
【0009】
本開示では、ポリ酸ポリマー水性分散液は、ヒドロキシル基含有アクリル結合剤系に導入され、硬化して網状組織となり、優れた性能をもたらすことができる。150℃で、自己架橋系は、優れた湿潤強度およびIPA強度を示した。本開示に従う配合物は、非常に良好な貯蔵安定性を示す。50℃のオーブン中で30日間の加速加熱エージング後、性能は低下しなかった。したがって、本開示に従う配合物は、一成分配合物であり、容易に取り扱われる可能性がある。
【0010】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0012】
本明細書で開示される場合、「および/または」は、「および、または代替として」を意味する。すべての範囲は、別段記載されない限り、端点を含む。
【0013】
本明細書に開示される場合、「組成物」、「配合物」、または「混合物」という用語は、物理的な手段によって異なる成分を単に混合することによって得られる、異なる成分の物理的なブレンドを指す。
【0014】
本明細書に開示される場合、「ガラス転移温度」または「Tg」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。
【0015】
本明細書で開示される場合、本明細書で言及されるすべての百分率は、別段明記されない限り、重量により、℃の温度による。
【0016】
本明細書に開示される場合、「アルキル」または「アルコキシ」という用語は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「スチレンモノマー」という用語は、芳香族基、好ましくはスチレン(Sty)および置換スチレン、例えばα-メチルスチレン(AMS)で置換されたエチレン性不飽和モノマーを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「溶液」という用語は、例えば、溶液重合などの従来の重合技法によって調製され得る、水不溶性ポリマーの分散液を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「エマルジョン」「ラテックス」または「ラテックス組成物」という用語は、例えば、乳化重合などの従来の重合技法によって調製され得る、水不溶性ポリマーの分散液を指す。
【0021】
本開示の第1の態様では、本開示は、以下の成分、
(a)ポリ酸ポリマー水性分散液であって、ポリ酸ポリマーが、50重量%~100重量%の1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物を含有する、ポリ酸ポリマー水性分散液、
(b)ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンであって、ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーが、0.1~10%のヒドロキシル基含有モノマー、0.1%~20%重量の不飽和カルボン酸および30%~90%のアクリルモノマーを含有する、モノマー混合物を重合することから得られる、ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンを含む、接着剤組成物であって、
上記成分(a)および(b)の固形分重量比が、成分(a)および(b)の固形分に基づいて、0.1:100~10:100である、接着剤組成物を提供する。
【0022】
接着剤組成物は、水性であり、好ましくは有機溶媒を含まず、すなわち、接着剤組成物は、接着剤組成物の総乾燥重量に基づいて、4%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満の有機溶剤を含む。
【0023】
ポリ酸ポリマー水性分散液
ポリ酸ポリマーは、50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、より好ましくは70重量%~100重量%、最も好ましくは80重量%~100重量%の、1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物を含有する。好適なエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物は、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、α,β-メチレングルタル酸、モノアルキルマレエート、およびモノアルキルフマレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、例えば、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物、およびメタクリル酸無水物などのエチレン性不飽和無水物、ならびにそれらの塩を含む。本開示の好ましい実施形態では、カルボキシモノマーは、アクリル酸もしくはメタクリル酸もしくはイタコン酸/無水物またはマレイン酸/無水物であり得る。
【0024】
1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物は、任意の好適なモノマーと共重合され得る。本開示の一実施形態では、1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物は、アクリルエステルモノマーなどの少なくとも1つのエチリン性(ethylynically)不飽和モノマーと共重合される。好適なアクリルエステルモノマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、およびヒドロキシプロピルメタクリレート;(メタ)アクリルアミドまたは置換(メタ)アクリルアミド;スチレンまたは置換スチレン;ブタジエン;ビニルアセテートまたは他のビニルエステル;アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル;などを含む。
【0025】
ポリ酸ポリマーは、0重量%~50重量%、好ましくは0重量%~40重量%、より好ましくは0重量%~30重量%、最も好ましくは0重量%~20重量%の、少なくとも1つのエチリン性不飽和モノマーを含有する。
【0026】
ポリ酸ポリマー水性分散液は、40%以上、好ましくは40%~60%、より好ましくは45%~55%の総重量固形分を有する。
【0027】
一実施形態では、ポリ酸ポリマーは、2,000~1,000,000、好ましくは5,000~750,000、最も好ましくは10,000~600,000の重量平均分子量を有する。
【0028】
ポリ酸ポリマー水性分散液は、任意の従来の溶液重合によって作製され得、その溶液プロセスは、当業者に周知である。
【0029】
溶液重合プロセスの間、メルカプタン、ポリマーカプタン、およびハロゲン化合物などの連鎖移動剤は、ポリ酸ポリマーの分子量を緩和するために、重合混合物において使用され得る。一般に、ポリ酸ポリマーの重量に基づいて、0重量%~10重量%のC-C20アルキルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、またはメルカプトプロピオン酸のエステルが、使用され得る。
【0030】
ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョン
ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンは、ラテックスであり、エチレン性不飽和モノマーのポリマーの粒子の水系分散液である。ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーは、0.1~10%のヒドロキシル基含有モノマー、0.1%~20%重量の不飽和カルボン酸および30%~90%のアクリルモノマーを含有する、モノマー混合物を重合することから得られる。ラテックスは、典型的には、25℃で約10~1000cps、より好ましくは、25℃で20~500cpsの範囲の粘度を示すであろう。ラテックス中の固形分含有量は、5~95%の範囲であり得る。より好ましくは、それは、20~80%、さらにより好ましくは30~70%の範囲であり、さらにより好ましくは、それは、40~60%の範囲である。一実施形態では、ラテックスのポリマーは、5000~2,000,000、より好ましくは、100,000~2,000,000の重量平均分子量を有する。
【0031】
一実施形態では、ヒドロキシル基含有モノマーの好適な例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC-Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC-Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC-Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、ヒドロキシル基含有モノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)およびヒドロキシプロピルアクリレートを含む。
【0032】
モノマー混合物は、モノマー混合物の重量に基づいて、0.1~10%、好ましくは0.5~8%、より好ましくは0.5~5%、最も好ましくは0.5~2%のヒドロキシル基含有モノマーを含む。
【0033】
一実施形態では、不飽和カルボン酸は、1つ以上のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸を含む。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の好適な例は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、もしくはフマル酸などの酸保有(acid-bearing)モノマー、または、そのような酸基(無水物、(メタ)アクリル酸無水物、またはマレイン酸無水物など)を生成するか、もしくはその後にそれに変換可能である、酸形成基を有するモノマー)、またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0034】
モノマー混合物は、モノマー混合物の重量に基づいて、0.1~20%、好ましくは1~15%、より好ましくは1.5~10%、最も好ましくは1.5~8%の不飽和カルボン酸を含む。
【0035】
一実施形態では、アクリルモノマーの好適な例は、アルキル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートを含むが、これらに限定されない。アルキル(メタ)アクリレートの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2-エチルヘキシルメタクリレート、ならびにそれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0036】
モノマー混合物は、モノマー混合物の重量に基づいて、30~90%、好ましくは35~85%、より好ましくは40~85%、最も好ましくは45~85%のアクリルモノマーを含む。
【0037】
モノマー混合物は、スチレンモノマーおよびビニルモノマーなどの1つ以上の追加のモノマーをさらに含み得る。スチレンモノマーの例は、例えば、スチレン、置換スチレン、またはそれらの混合物を含み得る。置換スチレンには、例えば、ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ブチルスチレン、メチルスチレン、p-メトキシスチレン、またはそれらの混合物を含み得る。好ましいスチレンモノマーは、スチレンである。ビニルモノマーの例は、例えば、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどのオレフィン;ビニルアセテートなどのビニルエステル;ビニルアルコール;アクリロニトリル;塩化ビニルなどのハロゲン化アルケン;ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0038】
モノマー混合物は、モノマー混合物の重量で、5%以上、10%以上、13%以上、かつ同時に、60%以下、50%以下のスチレンモノマーを含み得る。
【0039】
界面活性剤は、安定性を提供し、同様に、粒径を制御するために、(例えば、乳化重合または分散重合において使用するために)開示の結合剤組成物において必要に応じて用いられ得ることが、理解されよう。従来の界面活性剤は、アニオン性または非イオン性の乳化剤またはそれらの組み合わせを含む。典型的なアニオン性乳化剤として、アルカリまたはアンモニウムアルキル硫酸塩、アルカリまたはアンモニウムアルキルエーテル硫酸塩、アルカリまたはアンモニウムアルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸の塩、スルホコハク酸塩のエステル、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、および複合有機リン酸エステルの塩または遊離酸が含まれるが、これらに限定されない。典型的な非イオン性乳化剤は、ポリエーテル、例えば、直鎖および分岐鎖アルキルおよびアルキルアリールポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールエーテルおよびチオエーテルを含む酸化エチレンおよび酸化プロピレン縮合物、約7~約18個の炭素原子を含むアルキル基を有し、約4~約100個のエチレンオキシ単位を有するアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、ならびにソルビタン、ソルビド(sorbide)、マンニタン、およびマンニドを含む、ヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体を含むが、これらに限定されない。界面活性剤は、最終組成物の総重量に基づいて、0.1~3重量%以上のレベルで、本発明のポリマー組成物において用いられ得る。
【0040】
アクリルエマルジョンは、-80℃~100℃、好ましくは-50℃~80℃、より好ましくは-45℃~60℃、最も好ましくは-40℃~50℃のTgを有する。
【0041】
ポリ酸ポリマー水性分散液およびヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンの固形分重量比は、ポリ酸ポリマー水性分散液およびヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンの固形分に基づいて、0.1:100~10:100、好ましくは0.5:100~8:100、より好ましくは1:100~8:100、最も好ましくは2:100~7:100である。
【0042】
本開示の接着剤組成物の他の任意選択の成分は、共溶剤、凝集剤、顔料または他の着色剤、充填剤、強化剤(例えば繊維)、分散剤、湿潤剤、ワックス、触媒、発泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着促進剤、酸化防止剤、殺生物剤、凝集剤、または安定剤から選択される薬剤を含むが、これらに限定されない。これらの任意選択の成分は(必要に応じて)、成分間に配合禁忌を生じさせない任意の添加順序で添加され得る。水性担体中に溶解しない成分(例えば、顔料および充填剤)は、ミキサー(任意選択で、高せん断ミキサー)を使用して、ラテックスまたは水性の担体もしくは共溶剤中に分散され得る。組成物のpHは、撹拌しながら酸または塩基を添加することによって調整され得る。塩基の例は、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および酢酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。酸の例は、酢酸、ギ酸、塩酸、硝酸、およびトルエンスルホン酸を含むが、これらに限定されない。
【0043】
本開示の接着剤組成物は、任意の目的のために使用され得る。好ましい用途は、テキスタイル/不織布に対するバインダーとしてである。例えば、個々の繊維の集合(つまり、糸に紡がれていない繊維)は、例えば、浸漬、計量、噴霧、または他の方法によって、本開示の組成物と接触するようになる場合があり、本開示の組成物中の水は、テキスタイル/不織マットを作り出すために蒸発するか、または蒸発することが可能になる。得られるテキスタイル/不織マットは、水の蒸発前または蒸発中のいずれかに、加熱されてもされなくてもよい(すなわち、40℃を超える温度に曝露される)。連続体積のポリマーが複数の繊維に接着し、したがってポリマーが繊維を一緒に結合するように作用すると企図される。
【0044】
バインダーの有効性の1つの尺度は、特にマットが水または有機溶剤に曝露されているときのテキスタイル/不織マットの引張強度である。より高い引張強度が望ましい。
【0045】
本開示の組成物によって一緒に結合される繊維は、任意の材料で作製され得る。繊維は、鉱物繊維または有機繊維であり得る。有機繊維は、天然または人工であり得る。いくつかの好適な天然有機繊維は、例えば、セルロース、セルロース誘導体、綿、麻、および羊毛で作製される。いくつかの好適な人工有機繊維は、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリルポリマー、およびポリオレフィンで作製される。本発明の実施において、繊維は、好適な繊維の混合物であり得る。
【0046】
本開示の第2の態様では、本開示は、本開示に従う接着剤組成物によって調製された物品を提供する。
【0047】
本開示の第3の態様では、本開示は、テキスタイル/不織布に対する本開示の接着剤組成物の使用を提供する。
【0048】
一実施形態では、本開示の接着剤組成物は、特にマットが水または有機溶剤に曝されているときに不織マットの引張強度を増加させるために使用され得る。
【実施例
【0049】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例においてここに記載され、すべての部および百分率は、別段明記されない限り、重量による。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、これらの実施例に記載される配合物に限定されない。それどころか、実施例は、開示の発明に関するものにすぎない。
【0050】
原料:
使用される略語:DI水=脱イオン水、CD=横方向、SC=固形分含有量、BA=ブチルアクリレート、Sty=スチレン、IA=イタコン酸、AA=アクリル酸、HEMA=ヒドロキシエチルメタクリレート、MA=マレイン酸無水物
A:ポリ酸ポリマー水性分散液(すぐに使用できる市販製品、DOW Chemicalから):
A1:Acusol 479N、AA/MAコポリマー、40%の固形分;
A2:Acusol 505N、AA/MAコポリマー、35%の固形分;
A3:Acusol 465、AA/MAコポリマー、40%の固形分
A4:Leukotan 8090、AAホモポリマー、40%の固形分
DS-4:RHODACAL DS-4、界面活性剤、Solvay Chemicalから;
IA:イタコン酸、Sinopharm Chemical Reagentから;
HEMA:ヒドロキシルエチルメタクリレート、Tokyo Chemical Industryから;
AA:アクリル酸、Sinopharm Chemical Reagentから;
BA:ブチルアクリレート、Sinopharm Chemical Reagentから;
Sty:スチレン、Sinopharm Chemical Reagentから;
APS:過硫酸アンモニア、Sinopharm Chemical Reagentから;
SBS:亜硫酸水素ナトリウム、Sinopharm Chemical Reagentから;
t-BHP:tert-ブチルヒドロペルオキシド、70%水溶液、Tokyo Chemical Industryから;
FF6:Bruggolite FF6、Bruggmann Chemicalから;
TRITON X-100:DOW Chemicalからの界面活性剤。
IPA=イソプロパノール、Sinopharm Chemical Reagentから。
WHATMAN#4紙:Whatman Ltd.の製品。
実施例1:ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンの調製(B)
B-I-1:
5.77gのDS-4を、475gの脱イオン水(DI水)に溶解した。乳化されたモノマー混合物を、撹拌しながら溶液にゆっくりと以下の原料を添加することによって調製した:6.84gのIA、13.7gのHEMA、34.2gのAA、1107.4gのBA、177.7gのSty。
【0051】
50.42gのDS-4および370gの脱イオン水を含有する溶液を、熱電対、冷却コンデンサー、撹拌機を備えた5つ口の3リットル丸底フラスコに入れ、窒素下で70℃に加熱した。255gの60℃のDI水中の27.4gイタコン酸(IA)を、フラスコに充填した。次いで、82.8gの乳化モノマー混合物を、フラスコ中に充填した。次いで、25gのDI水中の3.72gの過硫酸アンモニア(APS)および20gのDI水中の1.86gの亜硫酸水素ナトリウム(SBS)を、フラスコ中に充填した。発熱ピークが発生し、温度が70℃になったとき、残りの乳化モノマー混合物、APSの溶液(50gのDI水中2.48g)およびSBSの溶液(50gのDI水中1.24g)を、120分で供給した。重合反応温度を、69~71℃で維持した。添加が完了した後、乳化モノマー混合物を含有した容器およびフラスコに通じる供給管を、90gのDI水ですすぎ、すすぎ液をフラスコに戻した。次いで、フラスコを、70℃で15分間保持した。次いで、t-BHP(70%、5gのDI水中の1.05g)および5gのDI水中のFF6(0.9g)の溶液を、充填した。15分後、t-BHP(70%、38gのDI水中3.98g)およびFF6(42gのDI水中3.38g)の溶液を60分かけて徐々に添加し、次いで、反応物を室温に冷却した。15gのアンモニア溶液を添加して、pH値を6.5~7.5に調整した。固形分含有量は、45%である。
【0052】
コポリマーの乾燥重量に基づいて、81重量%のBA、13重量%のSty、2.5重量%のAA、2.5重量%のIA、1重量%のHEMAを含むコポリマーを含む、エマルジョンB-I-1を、調製した。Tg=-25℃。
【0053】
B-I-2:エマルジョンB-I-2を、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したことを除いて、エマルジョンB-I-1と同じプロセスに従って調製し、乳化モノマー混合物を、撹拌しながら溶液に以下の原料をゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、34.2gのAA、615.2gのブチルアクリレート、670gのスチレン。Tg=30℃。
【0054】
B-I-3:エマルジョンB-I-3を、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したことを除いて、エマルジョンB-I-1と同じプロセスに従って調製し、乳化モノマー混合物を、撹拌しながら溶液に以下の原料をゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、34.2gのAA、806.6gのブチルアクリレート、478.5gのスチレン。Tg=0℃。
【0055】
B-C-1:エマルジョンB-C-1を、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したことを除いて、エマルジョンB-I-1と同じプロセスに従って調製し、乳化モノマー混合物を、撹拌しながら溶液に以下の原料をゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、34.2gの高純度(glacial)アクリル酸、1107.4gのブチルアクリレート、191.4gのスチレン。HEMAを添加しなかった。Tg=-25℃。
【0056】
B-C-2:エマルジョンB-C-2は、すぐに使用できる市販製品(ECONEXT 919、DOW Chemicalから)、Tg=-25℃、HEMAなしであった。
発明例および比較例
上記の原材料を、以下の表1に従って配合した。原料を15分間撹拌して、硬化性の水性組成物を得た。
【0057】
28cm×46cmのWHATMAN紙の断片を、300mLの配合された組成物に浸漬した。処理された紙をMathisパダーでパディングした後、次いで、乾燥させ、150℃で3分間硬化した。紙へのポリマーの添加を、14~16%に制御した。硬化した紙を1インチ×4インチの断片に切断し、4インチの方向は、紙の横(CD)方向である。サンプルの引張強度を、Instron引張試験機での乾燥(未処理)、湿潤(0.1重量%のTriton X-100/水溶液中の30分間の浸漬後)、およびIPA(イソプロパノール中の30分間の浸漬後)で試験した。湿潤強度は水に対する耐性を反映し、IPA強度は溶剤に対する耐性を反映する。結果を、以下の表2に示す。
【表1】
【表2】
【0058】
比較1~3と比較して、配合物中に成分Aを有する発明1-1~3-4は、湿潤強度で10%~25%の改善、およびIPA強度で40~90%の改善を示した。比較1を比較4または5と、発明1-1を比較4-1または5-1と比較することによって、成分Bがヒドロキシル基含有モノマーを含有したときに、湿潤強度およびIPA強度の両方が増加した。発明3-3を発明3-3-aと比較すると、発明の配合物の性能は、30日、50℃の熱エージング後に安定に保たれることが、見出された。
【0059】
ガラス転移温度(Tg)
ポリマーの乾燥サンプルをアルミニウムるつぼに入れ、次いで、サンプルを、TA InstrumentsからのDSC Q2000によって、以下のこのプログラムで試験した。
1.-80℃から120℃まで20℃/分で昇温して熱履歴を消去する;
2.-80℃まで冷却する;
3.-80℃から120℃まで10℃/分で昇温する。
【0060】
転移の半分の高さの点を、ガラス転移温度(Tg)として決定した。
本願は以下の態様にも関する。
(1)以下の成分、
(a)ポリ酸ポリマー水性分散液であって、前記ポリ酸ポリマーが、50重量%~100重量%の1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物を含有する、
ポリ酸ポリマー水性分散液、
(b)ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンであって、前記ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーが、0.1~10%のヒドロキシル基含有モノマー、0.1%~20%重量の不飽和カルボン酸および30%~90%のアクリルモノマーを含有する、モノマー混合物を重合することから得られる、ヒドロキシル基含有アクリルコポリマーエマルジョンを含む、接着剤組成物であって、
上記成分(a)および(b)の固形分重量比が、前記成分(a)および(b)の前記固形分に基づいて、0.1:100~10:100である、接着剤組成物。
(2)前記エチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物が、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、α,β-メチレングルタル酸、モノアルキルマレエート、モノアルキルフマレート、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、およびそれらの塩を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
(3)前記1つ以上のエチレン性不飽和モノまたはジカルボン酸/無水物が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリルレート、2-エチルヘキシルアクリルレート、デシルアクリルレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、置換スチレン、ブタジエン、ビニルアセテート、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルと共重合される、請求項1に記載の接着剤組成物。
(4)前記ヒドロキシル基含有モノマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
(5)前記ヒドロキシル基含有モノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)およびヒドロキシプロピルアクリレートを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
(6)前記不飽和カルボン酸が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸無水物、マレイン酸無水物)、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
(7)前記アクリルモノマーが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
(8)前記モノマー混合物が、スチレンモノマーまたはビニルモノマーを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
(9)請求項1に記載の接着剤組成物によって調製された、物品。
(10)テキスタイル/不織布に対する請求項1に記載の接着剤組成物の、使用。