(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】触媒含有材料
(51)【国際特許分類】
C04B 35/50 20060101AFI20241016BHJP
C04B 35/48 20060101ALI20241016BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20241016BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241016BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20241016BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C04B35/50
C04B35/48
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J23/63 M
(21)【出願番号】P 2022530162
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019062943
(87)【国際公開番号】W WO2021107913
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ウチェラー,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】グラッシー,ベンジャミン アンドリュー
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519408(JP,A)
【文献】国際公開第2019/068110(WO,A1)
【文献】特開2016-175008(JP,A)
【文献】特開2017-000936(JP,A)
【文献】特開2011-224428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0297779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/50
C04B 35/48
B01J 37/04
B01J 37/08
B01J 37/00
B01J 23/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性マトリックスと、
触媒酸化物から構成され
た粒子であって、前記耐火性マトリックスを通して分散され、埋め込まれた、粒子と、
を備え、
前記耐火性マトリックスが、CeO
2およびHfO
2の二成分組成物であ
り、
前記粒子が、V
2
O
5
、MnO
2
、およびそれらの組み合わせから選択された、触媒含有材料。
【請求項2】
5重量%~50重量%
の前記触媒酸化物から構成された粒子と、95重量%~50重量%の前記耐火性マトリックスと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒含有材料。
【請求項3】
30重量%~40重量%
の前記触媒酸化物から構成された粒子と、70重量%~60重量%の前記耐火性マトリックスと、を含むことを特徴とする請求項
2に記載の触媒含有材料。
【請求項4】
燃焼室と、前記燃焼室に推進薬を供給するためのインジェクタと、前記推進薬の反応を触媒するように前記燃焼室に配置された請求項1に記載の触媒含有材料と、を備えたスラスタ。
【請求項5】
マトリックス粒子と、1つまたは複数の触媒金属元素から構成された、または触媒酸化物から構成された、粒子と、の混合物を提供し、
前記混合物を少なくともバインダと組み合わせて、1つまたは複数の未焼結状態の物体を生成し、
前記1つまたは複数の未焼結状態の物体を熱処理する、
ことを備え、
前記熱処理が、前記マトリックス粒子の焼結を引き起こし、それにより、前記1つまたは複数の触媒金属元素または前記触媒酸化物から構成された粒子が分散され埋め込まれた、耐火性マトリックスを生成することを特徴とする、触媒含有材料の製造方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の未焼結状態の物体を粒状化することをさらに備えることを特徴とする請求項
5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記粒子が、前記1つまたは複数の触媒金属元素から構成され、Ir、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Re、およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項
5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記粒子が、CeO
2、HfO
2、ZrO
2、Y
2O
3、Ln
2O
3、およびそれらの組み合わせから選択されるセラミック酸化物粒子から構成され、Lnはランタニド元素であることを特徴とする請求項
5に記載の製造方法。
【請求項9】
燃焼室と、
前記燃焼室に推進薬を供給するためのインジェクタと、
前記燃焼室から分解生成物を放出するための出口と、
前記推進薬の反応を触媒するように前記燃焼室内に配置された触媒含有材料と、
を備え、
前記触媒含有材料が、
耐火性マトリックスと、
触媒酸化物から構成され
た粒子であって、前記耐火性マトリックスを通して分散され、埋め込まれた、粒子と、
を備え
、
前記耐火性マトリックスが、CeO
2
およびHfO
2
の二成分組成物であり、
前記粒子が、V
2
O
5
、MnO
2
、およびそれらの組み合わせから選択された、スラスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスタなどの様々な用途で有用な触媒構造および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒は、多くの異なる化学反応を促進するように、様々な構造および組成物で知られており、使用されている。たとえば、白金族金属は、担持触媒構造の触媒としてよく使用される。構造の例には、コア担体粒子の外面に付着する触媒粉末、および多孔質の高表面積担体に浸透する触媒が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一例による触媒含有材料は、耐火性マトリックスと、1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、を含む。それらの粒子は、耐火性マトリックスを通して分散され、埋め込まれる。
【0004】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれ、Ir、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Re、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0005】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、1つまたは複数の触媒金属元素が、Irである。
【0006】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、触媒酸化物に含まれ、V2O5、MnO2、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0007】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、ZrO2、Y2O3、Ln2O3、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物であり、Lnはランタニド元素である。
【0008】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物である。
【0009】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、耐火性マトリックスが、耐火性金属およびセラミック耐火物から選択される。
【0010】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、5重量%~50重量%の1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、95重量%~50重量%のセラミック酸化物マトリックスと、を含む。
【0011】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、30重量%~40重量%の1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、70重量%~60重量%の耐火性マトリックスと、を含む。
【0012】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、ZrO2、Y2O3、Ln2O3から選択される2つの異なる酸化物の二成分組成物であり、Lnはランタニド元素である。
【0013】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、耐火性マトリックスが、CeO2およびHfO2の二成分組成物である。
【0014】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれ、Ir、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Re、およびそれらの組み合わせから選択され、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、ZrO2、Y2O3、La2O3、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物であり、5重量%~50重量%の1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、95重量%~50重量%の耐火性マトリックスと、を含む。
【0015】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれるとともにIrであり、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物であり、30重量%~40重量%の1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、70重量%~60重量%の耐火性マトリックスと、を含む。
【0016】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、材料が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれるとともにIrである粒子と、CeO2、HfO2、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物である耐火性マトリックスと、からなり、30重量%~40重量%の1つまたは複数の触媒金属元素の粒子と、70重量%~60重量%の耐火性マトリックスと、を含む。
【0017】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、スラスタが、燃焼室と、燃焼室に推進薬を供給するためのインジェクタと、推進薬の反応を触媒するように燃焼室に配置された前述の実施形態のいずれかの触媒含有材料と、を含む。
【0018】
本開示の一例による触媒含有材料の製造方法が、マトリックス粒子と、1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、の混合物を提供し、その混合物を少なくともバインダと組み合わせて、1つまたは複数の未焼結状態の物体(green state bodies)を生成し、その1つまたは複数の未焼結状態の物体を熱処理することを含む。熱処理は、マトリックス粒子の焼結を引き起こし、1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子が分散され埋め込まれた、耐火性マトリックスを生成する。
【0019】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、1つまたは複数の未焼結状態の物体を粒状化することを含む。
【0020】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれるとともに、Ir、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Re、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0021】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、CeO2、HfO2、ZrO2、Y2O3、Ln2O3、およびそれらの組み合わせから選択されるセラミック酸化物粒子であり、Lnはランタニド元素である。
【0022】
本開示の一例によるスラスタが、燃焼室と、燃焼室に推進薬を供給するためのインジェクタと、燃焼室から分解生成物を放出するための出口と、推進薬の反応を触媒するための燃焼室内の触媒含有材料と、を含む。セラミックマトリックス触媒複合材料は、耐火性マトリックスと、1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子であって、耐火性マトリックスを通して分散され、埋め込まれた、粒子と、を含む。
【0023】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれ、Ir、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Re、およびそれらの組み合わせから選択され、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、ZrO2、Y2O3、Ln2O3、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物であり、Lnはランタニド元素であり、5重量%~50重量%の1つまたは複数の触媒金属元素またはセラミック酸化物の粒子と、95重量%~50重量%の耐火性マトリックスと、を含む。
【0024】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、それらの粒子が、1つまたは複数の触媒金属元素に含まれるとともにIrであり、耐火性マトリックスが、CeO2、HfO2、およびそれらの組み合わせから選択される酸化物であり、30重量%~40重量%の1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物の粒子と、70重量%~60重量%の耐火性マトリックスと、を含む。
【0025】
本開示の様々な特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に添付の図面は、以下のように簡単に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】ある期間の使用後の触媒含有材料の断面図である。
【
図4】触媒含有材料を有する一例のスラスタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
スラスタなどのいくつかの高温用途、およびいくつかの低温用途でさえ、担持触媒の触媒は、触媒効果を低下させる凝集体にプール(pool)されるまたは移動(migrate)する可能性がある。したがって、これらの担持触媒は、触媒効果を維持するという点で比較的低い耐久性を示す。触媒構造に関する一般的な考え方は、少なくとも部分的には、この問題の解決を妨げている可能性がある。例えば、典型的な担持触媒の構造では、パラダイムは、1つもしくは複数の反応物との接触を最大化するためにすべての触媒が露出されるというものである。したがって、同じ期間にわたって、すべての触媒が継続的にプールまたは移動の影響を受けやすい可能性がある。これに関して、本明細書に開示されるのは、改善された耐久性を促進するためのセラミックマトリックス触媒複合体である。
【0028】
図1は、触媒含有材料20(以下、「材料20」)の例の断面図を示している。示されるように、材料20は顆粒の形態である。そのような顆粒は、例えば、1つまたは複数の反応物と接触するように触媒床に提供することができる。しかしながら、材料20は顆粒に限定されず、材料20は、シリンダ、ロッド、またはその他の工学的形状などであるがこれらに限定されない、最終用途が決定づけるその他の形態で提供され得ることを理解されたい。
【0029】
材料20は、耐火性マトリックス22および粒子24を含む(図中ではそのうちのいくつかのみに番号が付されている)。粒子24は、1つまたは複数の触媒金属元素または触媒酸化物(一般に24aで示される)から構成され、粒子24は、耐火性マトリックス22を通して分散され、埋め込まれる。例えば、粒子24は、触媒金属元素または触媒酸化物24aのみから構成される。「分散」という用語は、耐火性マトリックス22の範囲全体にわたって比較的均一に空間的に分布している粒子24を指す。「埋め込まれた」という用語は、実質的にまたは完全に耐火性マトリックス22に包囲され、それらと密接に接触していること等により、耐火性マトリックス22にしっかりと埋め込まれている粒子24を指す。このような埋め込みにより、金属粒子24は、触媒が単純に担体の既存の細孔に堆積される担持触媒とは異なり、耐火性マトリックス22に「固定」される。
【0030】
耐火性マトリックス22は、1つまたは複数の耐火物から構成される。本明細書で使用されるように、「耐火物」または「複数の耐火物」は、耐火材料および耐火金属として知られているものを含む、それらの2つの材料分類の中から選択される1つまたは複数の高温材料を指す。耐火材料は、多くのセラミックなどの、1,000°F(538°C)を超える環境での使用に適した化学的および物理的特性を備えた非金属材料であると理解される。高融点金属は、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ハフニウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、およびイリジウムであると理解される。
【0031】
一例では、耐火性マトリックス22はモノリシックであり、したがって、単一の金属元素または単一の耐火性化合物など、上記の耐火物のうちの1つのみから構成される。別の例では、耐火性マトリックス22は複合材料であり、したがって、上記の耐火物のうちの2つ以上から構成される。さらなる例では、耐火性マトリックス22はまた、補強材として提供されるとともに耐火性マトリックス22を通して分配される1つ以上の耐火物を有する(しかし、耐火性マトリックス22に分散される触媒金属元素24aとは異なる)。一例として、補強耐火物(reinforcement refractory)は、耐火性マトリックス22の耐火物または複数の耐火物と化学的に異なる耐火物または複数の耐火物から形成された繊維または繊維ネットワークを含む。例えば、1つの非限定的な例では、耐火性補強材(refractory reinforcement)はジルコニウム繊維であり、耐火性マトリックス22は、上記の耐火物から選択されるが、ジルコニウムを含まない。
【0032】
セラミック耐火物には、耐火性ホウ化物、窒化物、炭化物、および酸化物が含まれるが、これらに限定されない。「セラミック」は、一般に、ホウ素、窒素、炭素、酸素、またはこれらの組み合わせと結合した1つまたは複数の金属または半金属元素を有し、結晶性、部分的結晶性、または非結晶性であり得る無機非金属固体化合物を指す。一例として、TiB2、NbB2、Si3N4、およびSiCが含まれるが、これらに限定されない。セラミック酸化物の例は、CeO2、HfO2、ZrO2、Y2O3、およびLn2O3から選択され、Lnは、La、Nd、Eu、Tb、Er、およびYbから選択されるランタニド元素である。
【0033】
例示的な粒子24の1つまたは複数の触媒金属元素24aは、Ir、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Re、およびそれらの組み合わせから選択される。1つの特定の例では、耐火性マトリックス22は、CeO2、HfO2、またはそれらの組み合わせから選択され、触媒金属はIrである。さらなる例では、耐火性マトリックス22はまた、他のセラミック酸化物を含み、触媒金属はまた、他の金属を含み得る。しかしながら、さらなる例では、耐火性マトリックス22は、CeO2、HfO2、またはそれらの組み合わせのみからなり、触媒金属は、材料20がIrおよびCeO2、HfO2、またはそれらの組み合わせのみから構成されるように、Irのみからなる。さらなる例では、上記の例の金属元素は、V2O5またはMnO2などの触媒酸化物の代わりになる。
【0034】
耐火性マトリックス22および粒子24の相対量は、触媒効果のために変化させることができる。最も典型的には、その量は、マトリックス22と粒子24の合計重量により、5重量%から50重量%の粒子24と、95重量%から50重量%の耐火性マトリックス22である。更なる例では、その量は、30重量%から40重量%の粒子24と、70重量%から60重量%の耐火マトリックス22である。上記の例の量では、材料20は、セラミック酸化物マトリックス22および粒子24のみから構成されることが想定される。材料20が他の構成要素を有する場合、マトリックス22および粒子24のみの合計重量に対して、(すなわち、他の構成要素の重量を除く)上記と同じ量を使用することができる。
【0035】
耐火性マトリックス22を通して分散され、埋め込まれた粒子24を有する材料20の構造は、プーリング(pooling)または移動の軽減を容易にする。例えば、
図1に示されるように、粒子24のいくつかは、最初は材料20の外面(例えば、この場合は顆粒の外面)の近くに位置し、それらの粒子24の少なくとも一部は耐火性マトリックス22の外面において露出している。他の粒子24は、外面より下に位置し、露出されていない。
【0036】
露出した粒子24は、(1つまたは複数の)反応物と接触することができ、したがって、(1つまたは複数の)反応物との触媒反応に関与することができる。耐火性マトリックス22は、外表面の下にある粒子24が(1つまたは複数の)反応物と接触するのを阻止するか、または実質的に阻止する。したがって、外表面の下にある粒子24は休止状態であり、触媒反応に関与しない、または実質的に関与しない。
【0037】
経時的な使用により露出した粒子24は、プールまたは移動する可能性がある。しかしながら、材料20において、プールまたは移動に起因する、最初に露出した粒子24の移動は、その下にある別の粒子24が露出されることを示す。
図2は、最初は表面にあった元の粒子24のいくつかが移動した後の粒子24を示しており、その下の粒子24が新たに露出している。次に、新たに露出した粒子24は、(1つまたは複数の)反応物と直接開放接触することができ、したがって、触媒反応に寄与することができる。
【0038】
さらなる経時的な使用により、その上の粒子の移動によって露出した粒子24は、それ自体がプールされ、または新しい場所に移動し、それにより、その下の次の粒子24が露出する、等々である。そのようにして、材料20は、本質的に、プールまたは移動によって失われた粒子24を「自己置換」し、それにより、プールされた/移動された粒子24の失われた触媒効果を、新たに露出した粒子24の触媒効果で補う。
【0039】
図3は、材料20を製造する例示的な方法40を示している。方法40は、ステップ42、44、および46を含む。各ステップは別々のブロックに示されているが、各ステップは、組み合わされたり、さらにサブステップに分割されたり、他の方法ステップと一緒に用いられたりしうる作用または機能を表すことを理解されたい。
【0040】
ステップ42において、マトリックス粒子および粒子24の混合物が提供される。混合物は、事前に調製された混合物として提供され得るか、あるいは出発物質から調製され得る。後者の場合、出発マトリックス粒子は出発粒子24と混合される。マトリックス粒子が複数の粒子組成物を含む場合、これはまた、マトリックス粒子の複数の組成物を一緒に混合することを含み得る。同様に、粒子24が複数の組成物を含む場合、複数の組成物が一緒に混合される。混合の順序は特に注目に値するものではなく、出発物質を一度にまたは2つ以上のサブ混合物で混合し、次にそれらを組み合わせて最終混合物にすることができる。
【0041】
出発マトリックス粒子および出発粒子24は、最も典型的には乾燥粉末である。例えば、処理を容易にするために、出発マトリックス粒子は、出発マトリックス粒子の化学的変換が必要とされないように、耐火マトリックス22を形成する耐火物の粉末として提供される。さらに、耐火物の粉末を使用すると、化学変換を行う必要がなくなる。乾燥粉末の特性は特に注目に値するものではないが、一般に、マトリックス粉末粒子および粒子24は、平均して、それぞれ100マイクロメートル未満のサイズを有し、さらに1つの例は5~30マイクロメートルである。粉末は、材料20中の所望のパーセンテージに対応する重量パーセント比で混合される。この点に関して、粉末は、材料20中の耐火性マトリックス22および粒子24について上記のパーセンテージに従って混合される。混合のための既知の技術を使用することができる。一例の技術は、乾燥粉末を組み合わせ、次に振動シェーカー(「ペイントシェーカー」としても知られる)を使用して混合することを含む。
【0042】
ステップ44で、混合物は、少なくともバインダと組み合わされて、未焼結状態の物体(green state body)を生成する。最も一般的には、バインダはポリマまたは樹脂であるが、未焼結状態の物体の所望の形態および追加の処理ステップに応じて、その他の種類のバインダを代わりに使用することができる。有用なバインダの一例はポリビニルブチラール樹脂であり、そのような一例はButvar(登録商標)B-79である。
【0043】
バインダを柔らかくし、未焼結状態の物体をより成形可能にするために、溶媒を加えることができる。例えば、溶媒は、イソプロパノール、メタノール、またはエタノールなどであるがこれらに限定されない1つまたは複数の有機溶媒である。一例では、未焼結状態の物体が濃厚なペーストになるように、ある量の溶媒が添加される。例えば、ペーストは容易に成形可能であるが、成形された形状を保持するように自立している。ほとんどの場合、未焼結状態の物体は、最終用途に望ましい、またはそれに関連する1つまたは複数の形状に成形される。例えば、成形には、押し出し、成形、プレス、スタンピング、切断、および分割が含まれ得るが、これらに限定されない。1つの特定の例では、未焼結状態の物体は、押し出され、次に、顆粒に切断または分割することによって粒状化される(すなわち、複数の粒状の未焼結状態の物体)。
【0044】
ステップ46で、未焼結状態の物体(または該当する場合は複数の物体)が熱処理される。熱処理により、マトリックス粒子が焼結されて耐火性マトリックス22が生成される。バインダおよび残留溶媒も燃焼する。それにより、マトリックス粒子と混合された粒子24は、耐火性マトリックス22中に埋め込まれるようになる。焼結は、マトリックス粒子が溶融することなく、マトリックス粒子が固体に融合する固体熱プロセスである。焼結の温度、環境、および圧力は、耐火物の組成に応じて変えることができる。最も典型的には、焼結は、耐火物の溶融温度よりも実質的に低い温度で、セラミック酸化物との反応に関して不活性であるカバーガス中で、または代替的に化学変換を促すための反応性ガス中で行われる。焼結温度はさまざまであるが、一般的には溶融温度の40%~70%である。さらに、焼結は、加熱プロファイルに従って、加熱速度、冷却速度、保持時間、および/または温度サイクルを制御するために実施することができる。セラミックの酸化物損失を軽減するために、空気または酸素環境を使用することができる。
【0045】
焼結中、マトリックス粒子は互いに融合し、粒子24を耐火性マトリックス22中に閉じ込める。焼結は主に固体の質量輸送現象であるため、プロセス中の化学反応は最小限であると予想される。したがって、乾燥出発粉末組成物が耐火性マトリックス22および粒子24の組成物のために選択される組成物である場合、耐火性マトリックス22および粒子24の組成物は、乾燥出発粉末の組成物に等しいと予想される。しかしながら、乾燥出発粉末の成分が反応して、耐火性マトリックス22に新しい異なる組成物または相を生成することも起こりうる。
【0046】
焼結後、得られた固結された材料20は、使用の準備ができているか、または最終用途に応じて追加の処理ステップに供され得る。担体の表面に触媒を堆積させるための比較方法は、通常、金属を還元するステップを必要とする金属塩の使用を伴う(例えば、Ir塩からIr金属へ)。方法40は、そのような塩の使用を回避し、それにより、必要なステップおよび処理時間を短縮する。以下の実施例は、方法40をさらに実証する。
【0047】
(実施例1)
セラミック酸化物触媒複合材料:HfO2/CeO2 公称9重量%Ir。
【0048】
0.5グラムのIr、4.59グラムのHfO2、0.41グラムのCeO2、および0.21グラムのB-79の乾燥粉末を組み合わせ、振動シェーカーで15分間混合した。次に、体積1.05ミリリットルのイソプロパノールを加え、混合をさらに30分間続けた。得られた混合物は、濃厚なペーストの粘稠度を有していた。次に、ペーストを「麺」状に押し出し、一晩乾燥させた。次に、乾燥した麺をサイズ20メッシュのふるいを通して圧出し、粒状の未焼結状態の物体を生成した。粒状の未焼結状態の物体は、150°C/時の加熱速度で1700°Cまで空気環境中で焼結され、その温度で10時間保持され、次いで、-150°C/時の速度で100°C未満まで冷却された。得られた顆粒は、X線回折分析によって示されるように、HfO2/CeO2合金とIr金属を含んでいた。
【0049】
(実施例2)
セラミック酸化物触媒複合材料:HfO2/CeO2 公称20重量%Ir。
【0050】
1.0グラムのIr、3.68グラムのHfO2、0.33グラムのCeO2、および0.16グラムのB-79の乾燥粉末を組み合わせ、振動シェーカーで15分間混合した。次に、体積1.68ミリリットルのイソプロパノールを加え、混合をさらに15分間続けた。混合物は流動的であった。ペーストが得られるまで、窒素ガスを混合物に吹き込んでイソプロパノールを除去した。次に、ペーストを「麺」状に押し出し、乾燥させ、次にサイズ20メッシュのふるいを通して圧出し、粒状の未焼結状態の物体を生成した。粒状の未焼結状態の物体は、150°C/時の加熱速度で1700°Cまで空気環境中で焼結され、その温度で10時間保持され、次いで、-150°C/時の速度で100°C未満まで冷却された。
【0051】
(実施例3)
セラミック酸化物触媒複合材料:HfO2/CeO2 公称30重量%Ir。
【0052】
1.5グラムのIr、3.2グラムのHfO2、0.3グラムのCeO2、および0.14グラムのB-79の乾燥粉末を組み合わせ、振動シェーカーで15分間混合した。次に、体積0.74ミリリットルのイソプロパノールを加え、混合をさらに15分間続けた。その時点で混合物はまだ粉末状であった。0.07ミリリットルの追加体積を追加し、混合をさらに5分間続けた。混合物が濃厚なペーストの粘稠度になるまでこれを繰り返した。次に、ペーストを「麺」状に押し出し、乾燥させ、次にサイズ20メッシュのふるいを通して圧出し、粒状の未焼結状態の物体を生成した。粒状の未焼結状態の物体は、150°C/時の加熱速度で1700°Cまで空気環境中で焼結され、その温度で10時間保持され、次いで、-150°C/時の速度で100°C未満まで冷却された。
【0053】
(実施例4)
セラミック酸化物触媒複合材料:HfO2/CeO2 公称40重量%Ir。
【0054】
65.47グラムのIr(-325メッシュに事前にふるいにかけられた)、89.94グラムのHfO2、8.18グラムのCeO2、および3.92グラムのB-79の乾燥粉末を組み合わせ、振動シェーカーで15分間混合した。次に、体積20.60ミリリットルのイソプロパノールを加え、混合を15分間続けた。混合物はわずかに乾燥しているように見えたので、さらに3ミリリットルのイソプロパノールを加え、混合をさらに30分間続けた。得られた混合物は、濃厚なペーストの粘稠度を有していた。次に、ペーストを「麺」状に押し出し、乾燥させ、次にサイズ20メッシュのふるいを通して圧出し、粒状の未焼結状態の物体を生成した。粒状の未焼結状態の物体は、150°C/時の加熱速度で1700°Cまで空気環境中で焼結され、その温度で10時間保持され、次いで、-150°C/時の速度で100°C未満まで冷却された。アクセス可能なイリジウム金属上の潜在的な表面酸化物を還元するために、さらなる還元ステップが用いられた。
【0055】
図4は、材料20の実施例を示している。この例では、材料20は、スラスタ60内にある。スラスタ60は、燃焼室62と、燃焼室62に推進薬Pを供給するためのインジェクタ64と、燃焼室62から分解ガスCを放出するための出口66と、を含む。この例では、出口66はノズルであるが、代替的にオリフィスまたは他のタイプの出口であってもよい。材料20は、触媒床68として燃焼室62内に配置される。推進薬Pは、インジェクタ64を介して燃焼室62に導入される。触媒床68は、推進薬の点火および分解を促進するのに役立つ。推進薬は通常液体であり、イオン液体単元推進薬、ヒドラジンベースの推進薬ブレンド、トリアゾールベースの推進薬ブレンド、過酸化物ベースの推進薬、およびカルボヒドラジドベースの推進薬ブレンドであるが、これらに限定されない。分解生成物は、推力を生成するために出口66を通して放出される。
【0056】
図示の例には特徴の組み合わせが示されているが、本開示の様々な実施形態の利点を実現するためにそれらの全てを組み合わせる必要はない。言い換えれば、本開示の一実施形態に従って設計されたシステムは、必ずしも、図面のいずれか1つに示される特徴の全て、または図面に概略的に示される部分の全てを含むとは限らない。さらに、1つの例示的な実施形態の選択された特徴は、他の例示的な実施形態の選択された特徴と組み合わせることができる。
【0057】
前述の説明は、実際には、制限的ではなく例示的なものである。必ずしも本開示から逸脱するものではない、開示される実施例に対する変形及び修正が、当業者に明らかとなり得る。本開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。