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特許7572438ハイブリッドステントグラフト及び生体管腔修復方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ハイブリッドステントグラフト及び生体管腔修復方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20241016BHJP
【FI】
A61F2/07
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022544793
(86)(22)【出願日】2021-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021014804
(87)【国際公開番号】W WO2021151033
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】62/965,321
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504291867
【氏名又は名称】ザ クリーヴランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ロゼリ,エリック イー
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012123(WO,A1)
【文献】特開2014-128670(JP,A)
【文献】特表2018-525074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0282355(US,A1)
【文献】特表2010-508970(JP,A)
【文献】特表2017-530764(JP,A)
【文献】特表2007-508068(JP,A)
【文献】特表2013-524996(JP,A)
【文献】特表2013-518696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントグラフトであって、
長尺体と、少なくとも1つのステーションとを備え、
前記長尺体は、中間部で長手方向に仕切られた近位端部及び遠位端部と、前記中間部を少なくとも部分的に貫通するように延在するルーメンと、内面及び外面を有するフレーム構造とを有し、前記内面と前記外面とのうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的にグラフト材によって覆われ、前記近位端部と前記遠位端部とのうちの少なくとも1つは、前記ルーメンに流体連通し且つ前記フレーム構造の一部で規定された開口を有し、
前記ステーションは、前記長尺体の前記グラフト材に位置決めされ、前記ステーションは、前記フレーム構造を覆う前記グラフト材に接続された環形構造で規定された外周部と、前記外周部で区画された選択的に開放された孔部とを有し、前記少なくとも1つのステーションの前記孔部は、前記グラフト材によって選択的に覆われており、
前記ステントグラフトにおける窓孔は、
前記少なくとも1つのステーションの前記孔部を選択的に覆う前記グラフト材の少なくとも一部が開放された位置と、
前記少なくとも1つのステーションの前記外周部を規定する前記環形構造が除去された位置と、
前記少なくとも1つのステーションの前記環形構造と前記長尺体の前記近位端部との間に設けられる前記グラフト材の一部が除去された位置と、
前記少なくとも1つのステーションと、前記長尺体の前記フレーム構造と、前記長尺体を覆う前記グラフト材とを含む前記ステントグラフトの一部が除去された位置と、のうちの少なくとも1つの位置に設けられることを特徴とするステントグラフト。
【請求項2】
前記少なくとも1つのステーションの前記窓孔は、前記ステントグラフトにおいて、二次ステントを前記少なくとも1つの分岐血管に導入可能な部位を提供することを特徴とする請求項に記載のステントグラフト。
【請求項3】
二次ステントを備え、
前記二次ステントは、少なくとも部分的に前記少なくとも1つのステーションの前記窓孔を通り、前記二次ステントは、少なくとも部分的に前記少なくとも1つの分岐血管に位置する遠位端と、少なくとも部分的に前記ステントグラフトに位置する近位端とを有し、
前記二次ステントは、前記少なくとも1つの分岐血管と前記長尺体の前記ルーメンとの間の流体連通を許容するように構成されることを特徴とする請求項に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記少なくとも1つのステーションは、前記環形構造で定義された前記外周部内に位置する少なくとも1つの第2環形構造を更に備え、前記少なくとも1つの第2環形構造は、前記環形構造内に位置し、且つ、前記ステーション内において窓孔を開設するための小領域を規定することを特徴とする請求項に記載のステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本願は2020年1月24日に出願された出願番号が62/965,321である米国臨時出願の優先権を主張し、その内容は引用によって本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ハイブリッドステントグラフト装置を使用する機器及び方法に関し、それにより本体内の生体管腔の修復を促進し、より具体的には、ハイブリッドステントグラフト装置に関し、当該ハイブリッドステントグラフト装置は、ハイブリッドステントグラフト装置により追加的な介入を行うことを促進するためのステーションを含む。
【背景技術】
【0003】
米国及び米国国外では、身体障害及び死亡の主な原因は、血管系の一部に対する損害を含む。これは、大動脈瘤と破断の点で特に問題である。例えば、大動脈疾患は、米国及び多くの他の先進国の1つの主な死亡原因として、ますます注目されている。深刻な動脈硬化症、深刻な石灰化の大動脈及び他の適応症は、完全又は部分的な大動脈置換手術を継続する必要がある。
【0004】
動脈瘤の典型的な特徴は、血管病変又は損傷であり、これは、血管壁が弱くなることを引き起こす。血管壁が弱くなると血管の充血が拡張する。治療を行わなければ、動脈瘤は、最終的に破裂し、且つ非常に短い時間内に急性(且つ常に致命的な)大出血を引き起こす。
【0005】
大動脈が引裂し、大動脈層が分離すると、破断が発生する。大動脈層が分離するにつれて、新たなチャンバを形成し、且つ血液がこの新たに形成されたチャンバに流入し、これにより患者に深刻な問題が発生する可能性がある。潜在的な問題は、以下を含むことができる。(i)大動脈から生成された分岐血管の血流を損害し、器官の灌流不良、虚血及び潜在的な身体障害又は死亡をもたらす。(ii)成長が大きすぎることにより、それは、大動脈の正常な開口を圧迫することができ、且つ器官の血流を減少させる。破断及び動脈瘤は、いずれも治療されにくい疾患である。治療は、手術計画、血管内方案及び/又は薬物方案を含んでもよい。従来の手術及び血管内の治療方法は、血管にステントグラフトを配置して血液が流れる経路を許容し、且つ病変大動脈に関連する合併症を防止することである。
【0006】
大動脈は、多数の分岐動脈を有する。例えば、胸主動脈絡は、一般的に三つの主な分岐血管を有し、当該分岐血管は、弓の上面から突起し且つ胸上孔を通って頸部の根部まで上昇する。動脈瘤や破断及び分岐血管との接近は、排除機器、例えば管状ステントグラフトの使用を制限する可能性がある。例えば、管状ステントグラフトの本体又は両端は、分岐血管を塞ぐか又は閉塞する可能性があり、ステントグラフトの位置は、遠位端及び/又は近位端に健康な大動脈セグメント、すなわち動脈壁の非病変又は非拡張部分があるか否かに依存するため、ステントグラフトと血管の良好な貼り合わせを確保する。分岐血管を遮断することは、有益である可能性があり、他の場合に分岐血管内のスムーズな流通を保持することは、有益である。しかしながら、病変の大動脈領域と従来のステントグラフトを使用する分岐血管の位置で、ステントグラフトの密封に供される十分な長さの健康組織がない可能性がある。
【0007】
読者が本開示の幾つかの態様に係る関連解剖学及び生理学を理解することを助けるために、図1は、大動脈弓分岐血管14を含むヒト大動脈弓12を説明し、横大動脈12の断面図とも呼ばれる。大動脈は、人体のうち最大の血管である。それは、酸素を含む血液を心臓の左心室(図示せず)から各器官に輸送する。大動脈は、心臓から、大動脈弁16を有し、当該大動脈弁は、大動脈の根部18に隣接し且つ後に上行大動脈20、大動脈弓(横大動脈)12、下行大動脈20及び胸腹部大動脈(図示せず)が続いている。腹部大動脈は、二本の腸骨全動脈で分岐して腹部で終端する(図示せず)。大動脈弓12は、上腕動脈幹部24と、左総頸動脈26と、左鎖骨下動脈28とを有している。上腕動脈幹部24は、分岐して右鎖骨下動脈30及び右総頸動脈32を形成し、右腕と右側の頸部及び頭部に血を供給する。左総頸動脈26と左鎖骨下動脈28とは、左側において並行機能を実行する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様は、ステントグラフトを提供し、更に介入するための少なくとも1つのステーションを含む。本発明は、ステントグラフトを提供する。当該ステントグラフトは、長尺体と、グラフト材被覆と、少なくとも1つのステーションとを備える。長尺体は、中間部で長手方向に仕切られた近位端部及び遠位端部と、中間部を少なくとも部分的に貫通するように延在するルーメンと、内面及び外面を有するフレーム構造とを有する。内面と外面とのうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的にグラフト材によって覆われ、近位端部は、ルーメンに流体連通し且つフレーム構造の一部で規定された開口を有する。ステーションは、長尺体のグラフト材に位置決めされ、ステーションは、フレーム構造を覆うグラフト材に接続された環形構造で規定された外周部と、外周部で区画された選択的に開放された孔部とを有する。少なくとも1つのステーションの孔部は、グラフト材によって選択的に覆われている。
【0009】
本発明の別の態様は、被験者の生体管腔へステントグラフトを提供する方法を提供する。当該方法は、ステントグラフトを生体管腔内の目標位置に位置決めするステップであって、ステントグラフトが長尺体とグラフト材被覆と少なくとも1つのステーションとを備え、長尺体が、中間部で長手方向に仕切られた近位端部及び遠位端部と、中間部を少なくとも部分的に貫通するように延在するルーメンと、内面及び外面を有するフレーム構造とを有し、内面と外面とのうちの少なくとも1つが少なくとも部分的にグラフト材によって覆われ、近位端部と遠位端部とのうちの少なくとも1つが、ルーメンに流体連通し且つフレーム構造の一部で規定された開口を有し、ステーションが長尺体のグラフト材に位置決めされ、ステーションが、フレーム構造を覆うグラフト材に接続された環形構造で規定された外周部と、外周部で区画された選択的に開放された孔部とを有し、少なくとも1つのステーションの孔部がグラフト材によって選択的に覆われているステップと、ステントグラフトにおける少なくとも1つのステーションを生体管腔の少なくとも1つの分岐血管に位置合わせるステップと、ステントグラフトを目標位置に固定するステップと、少なくとも1つの分岐血管に位置合わせられた少なくとも1つのステーションを開放することで少なくとも1つのステーションに窓孔を開設するステップと、少なくとも1つの二次ステントが少なくとも1つの窓孔を通るように構成することで、少なくとも1つの分岐血管とステントグラフトとを接続するステップと、少なくとも1つの二次ステントを少なくとも1つの分岐血管に固定するステップと、を含む。
【0010】
本発明の更に別の態様は、被験者の大動脈弓へステントグラフトを提供する方法を提供する。当該方法は、予め位置決めされたステントグラフトを被験者の大動脈弓内で提供するステップを含む。ステントグラフトが長尺体と、グラフト材被覆と、複数の突き合わせリングとを備える。長尺体は、中間部で長手方向に仕切られた近位端部及び遠位端部と、中間部を少なくとも部分的に貫通するように延在するルーメンと、内面及び外面を有するフレーム構造とを有する。内面と外面とのうちの少なくとも1つが少なくとも部分的にグラフト材によって覆われ、近位端部と遠位端部とのうちの少なくとも1つが、ルーメンに流体連通し且つフレーム構造の一部で規定された開口を有する。複数の突き合わせリングが長尺体のグラフト材に位置決めされ、各突き合わせリングが、フレーム構造を覆うグラフト材に接続された環形構造で規定された外周部と、外周部で区画された選択的に開放された孔部とを有し、複数の突き合わせリングのうちの各突き合わせリングの孔部がグラフト材によって選択的に覆われている。
【0011】
理解がより良好になるように、図面を参照可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】人間の大動脈の断面を模式的に示す。
図2】ステントグラフトの断面を模式的に示す。
図3図2のステントグラフトの一部の平面図である。
図3a図2のステントグラフトの一部の平面図である。
図4a】ステントグラフトの様々な孔隙を描画する。
図4b】ステントグラフトの様々な孔隙を描画する。
図4c】ステントグラフトの様々な孔隙を描画する。
図4d】ステントグラフトの様々な孔隙を描画する。
図4e】ステントグラフトの様々な孔隙を描画する。
図4f】ステントグラフトの様々な孔隙を描画する。
図5】導入された二次ステントを有するステントグラフトの断面を描画する。
図6】ステントグラフトを用いる方法のフローチャートである。
図7】ステントグラフトを用いる方法のフローチャートである。
図8】ステントグラフトを用いる方法のフローチャートである。
図9】ステントグラフトを用いる方法のフローチャートである。
図10】ステントグラフトを用いる方法のフローチャートである。
図11】ステントグラフトを用いる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、別の定義がない限り、本開示の属する分野の当業者に一般のに理解されるものと同じ意味を有する。
【0014】
本明細書で用いられるように、用語「被験者」は、用語「患者」と交換可能でありながら、任意の温血生体を指すものであり、人、豚、ラット、マウス、犬、ヤギ、綿羊、馬、サル、サル、ウサギ、牛、家畜、家畜などを含むがこれらに限定されない。
【0015】
本明細書に使用されるように、用語「ユーザ」は、医療専門家、例えば医者、医者又は、看護士、又は、ステントグラフトの構造及び使用について決定を下す権限を有する他の個人を指すことができる。
【0016】
本明細書で使用されるように、用語「治療」又は「治療中」は、治療的に調節し、予防し、修復し、改善し、身体血管(例えば大動脈)の損傷、疾患又は障害の症状を軽減し及び/又は、その影響を減少させることを指す。したがって、治療は、以下の状況を含む:少なくとも1つのステーションを有するステントグラフトを生体管腔に導入し、且つ二次ステントを分岐血管に導入することにより、生体管腔及び/又は分岐血管の問題、例えば動脈瘤又は、破断、又は、少なくともそれに関連する症状を軽減し、例えば、少なくとも部分的に発生するか又は、停止することを防止し(例えば、終了)、それにより被験者が生体管腔の少なくとも一部の損傷、疾患又は障害、又は、少なくともそれに関連する症状を受けないようにする。
【0017】
本明細書に使用されるように、文脈から明確でなければ、単数形は、複数の形式を含むことができる。更に理解できるように、用語「備える」及び/又は「含む」は、前記特徴、ステップ、操作、要素及び/又は要素の存在を指定することができるが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、要素及び/又はその組を存在するか又は複数追加することを排除しない。
【0018】
本明細書で用いられるように、用語「及び/又は」は、関連する項目のうちの1つ又は複数の任意及び全ての組み合わせを含むことができる。
【0019】
本明細書で使用されるように、「XとYの間」及び「ほぼXとYの間」という語句は、X及びYを含むと解釈することができる。
【0020】
素子が別の素子の「上」に位置するもの、別の素子に「付着」されるもの、別の素子に「接続」されるもの、別の素子と「連結」、「接触」又は「隣接」するものなどと呼ばれる場合、当該素子は、直接のに、別の素子に位置するもの、別の素子に付着されるもの、別の素子に接続されるもの、別の素子に連結、接触又は隣接するものとすることができ、または中間素子が存在してもよいと理解されるべきである。これに対して、素子が例えば「他の素子の上に直接位置するもの」、他の素子に「直接付着」されるもの、他の素子に「直接接続」されるもの、他の素子と「直接連結」、「他の素子に直接接触」又は他の素子と「直接隣接」するものと呼ばれる場合、中間素子が存在しない。当業者であれば理解されるように、別の特徴と「直接隣接する」ように配置された構造又は特徴に対する記述は、当該隣接する特徴と重なるか又は当該隣接する特徴の下に位置する部分を有してもよく、別の特徴と「隣接する」ように配置された構造又は特徴は、当該隣接する特徴と重なるか又は当該隣接する特徴の下に位置する部分を有しなくてもよい。
【0021】
説明を容易にするために、本明細書で「下方」、「下側」、「下」、「上方」、「上」、「近位端」、「遠位端」などの空間相対用語を用いて図に例示された1つの素子又は特徴と他の1つ又は複数の素子又は特徴との関係を説明することができる。理解されるように、図に示された配向に加えて、空間相対用語は、デバイスの使用又は操作における異なる配向をさらに含むことができる。例えば、図中のデバイスを逆にすると、他の素子又は特徴の「下方」又は「下」に記述された素子は、他の素子又は特徴の「上方」に位置するように配向される。
【0022】
本明細書で用いられるように、フレーズ「X及びYのうちの少なくとも1つ」は、X、Y又はX及びYの組み合わせを含むと解釈することができる。例えば、素子がX及びYのうちの少なくとも1つを有すると記述されると、当該素子は、特定の時間にX、Y又はX及びYの組み合わせを含むことができ、X、Y又はX及びYに対する選択は、時間に応じて変化することができる。これに対して、フレーズ「Xのうちの少なくとも1つ」は、1つ又は複数のXを含むと解釈することができる。
【0023】
本明細書に使用されるように、用語「覆う」は、ある物を別の構造の頂部又は前に置き、特にその中の流体の流れを保護し、マスキングするか又は閉塞するために定義される。覆うとは、完全に覆われていてもよいし、部分的に覆われていてもよいことを意味する。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「開放」は、流体連通が前の完全又は部分的に閉塞された空間を通過することを許容するように定義される。構造を開放する行為は、針、メス、ハサミ、ガイドワイヤ又は他の機械工具で穿刺し、切断し、切り込むこと、及び/又は、構造の少なくとも一部を切断し、及び/又は、電気、光、熱(例えば電気焼成)又は他のエネルギー工具(例えばレーザ、無線周波数等)を使用してカバーに1つの孔又は新たな孔を開設することを含むが、それらに限定されない。
【0025】
理解できるように、用語「第1」、「第2」等は、ここで様々な要素を説明するために用いることができるが、これらの要素は、これらの用語に限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素と他の要素とを区別するために用いられる。したがって、以下に検討された「第1」要素は、「第2」要素と呼ばれてもよく、本開示の意味から逸脱しない。特に指定しない限り、操作(又は、行動/ステップ)の順番は、請求項又は図に示された順番に限定されない。
【0026】
本開示は、一般的に身体血管の修復に関し、特に改良されたステントグラフトに関し、当該ステントグラフトは、従来のステントグラフトにより閉塞されるか又は部分的に閉塞された身体血管に対して二次ステント及び他の二次介入を行うことに役立つ。本発明は、任意の組み合わせで以下の特徴を含み、以下の特徴で構成されるか、又は、基本的に以下の特徴で構成される。
【0027】
図2は、大動脈弓12が植設されるように配置されたステントグラフトの断面図を示めす。他のステントグラフト配置(図示せず)は、異なる生体管腔に異なる形状を提供することができ、各配置は、いずれも当該配置に使用される特定の生体管腔の解剖学的構造に基づく。ステントグラフト100は、長尺体102を有し、当該長尺体は、近位端部104及び遠位端部106を有し、当該近位端部及び遠位端部は、中間部108により長手方向に隔てられる。ルーメン110は、中間部108を少なくとも部分的に貫通するように延在してもよい。ルーメン110は、中間部108の一部又は全部を貫通していてもよい。一例では、ルーメン110は、長尺体102の全長さにわたって延在可能であり、ステントグラフトの両端の生体管腔との流体流通を許容する。
【0028】
長尺体102は、更にフレーム構造112を含み、当該フレーム構造は、内面114及び外面116を有する。フレーム構造112は、例えば2015年9月10日に提出された名称が「フレーム構造、同構造を含むステントグラフト及び大動脈修復を拡張するための方法」である米国第14/849,785号特許出願又は、2018年10月9日に提出された名称が「大動脈修復を拡張するための血管内移植体及び方法」である米国第16/155,176号特許出願に記載された1つ又は複数のフレーム構造であってもよく、この2つの出願の全文は、引用によってここに組み込まれる。内面114及び/又は外面116は、少なくとも部分的にグラフト材118で覆われていてもよい。グラフト材118は、内面114及び/又は外面116の全部又は一部を覆うことができる。近位端部104及び遠位端部106の少なくとも一方は、ルーメン110に流体流通する開口120を有していてもよい。開口120は、フレーム構造112の一部によって規定される。開口120は、生体管腔と長尺体102のルーメンとの間の流体連通を可能にする。ステントグラフト100は、更に少なくとも1つのステーション122を含み、当該ステーションは、長尺体102のグラフト材118に位置決めされる。図2~5では、2つのステーション122を例に挙げて説明したが、任意の数のステーションは、いずれも長尺体102のグラフト材118に任意の数の配置で位置決めすることができる。
【0029】
図3は、ステントグラフト100の少なくとも1つのステーション122を描画する。少なくとも1つのステーション122は、環状構造124で規定された外周部を有し、当該環状構造は、フレーム構造112を覆うグラフト材118に接続される。少なくとも1つのステーション122は、外周部によって規定された選択的に開放された孔部126を更に有することができる。少なくとも1つのステーション122の孔部126は、グラフト材118によって選択的に覆われている。用語「選択的に開放する」及び「選択的に覆う」は、ここで少なくとも1つのステーション122の孔部126がまったく覆われない(例えば、開放される)、部分的に覆われるか又は完全に覆われることを示すために用いられ、且つステーション122は、ユーザが特定の使用環境の需要に応じてこれらの状態のうちの任意の1つの間に変換することができる。考えられるように、グラフト材118の被覆は、孔部126の境界を規定する環状構造124の頂部及び/又は下部に位置することができる。孔部126がグラフト材に部分的に覆われるか又は完全に覆われる場合、孔部の少なくとも一部が閉塞される。孔部126は、長尺体102のグラフト材118で覆われてもよく、ユーザは、環状構造124をグラフト材に位置決めした後に孔部を覆う部分又は、全てのグラフト材を除去することにより孔部の開放又は被覆程度を選択することができる。考えられるように、少なくとも1つのステーション122の孔部126は、別のグラフト材で覆われてもよく、長尺体102を覆うグラフト材と分離され、且つ接続され(例えば、縫合、接着等)環状構造124に接続される。外周部を規定する環状構造124は、任意の生体適合性の材料であってもよく、例えば、縫合リング、金属リング、及びプラスチックリングに限定されない。環状構造124は、任意の適切な方式でグラフト材118に接続されてもよく、例えば、グラフト材118に縫製され、グラフト材118に集積及び/又は交絡され、及び/又は、グラフト材118に接着される。環状構造124は、既に形成されたフレーム構造の支持ロッドに開孔(例えばレーザ切断孔)及び/又は、フレーム構造の製造過程でフレーム構造において少なくとも1つの環状構造を加工する等の方法によりフレーム構造112に組み込まれてもよい。
【0030】
図2~3に示すように、少なくとも1つのステーション122は、長尺体102の近位端部104に近接するように位置決めすることができ、それによりステントグラフト100が大動脈に位置するときに大動脈の少なくとも1つの分岐血管14にほぼ位置合わせする。大動脈の少なくとも1つの分岐血管14は、上腕動脈(主幹)24、左総頸動脈26及び左鎖骨下動脈28のうちの少なくとも1つであってもよい。生体管腔が大動脈弓12ではない場合、少なくとも1つのステーション122は、他の分岐血管にほぼ位置合わせるように配置されてもよく、又は、逆であってもよい。生体管腔が大動脈の一部である場合、それは、大動脈弓、上行大動脈、下行大動脈又は腹部大動脈のうちの1つであってもよい。他の生体管腔例は、腎動脈、冠動脈、頸動脈又は肺部気道の部分を含む。当業者は、任意の必要な使用環境へ本発明に係るステントグラフト100を提供することを容易に想到できる。したがって、少なくとも1つのステーション122は、長尺体102上の任意の一点に位置決めすることができ、1つ以上のステーション122があれば、各ステーション122は、いずれもステントグラフト100の特定の使用環境に応じて長尺体102の表面の任意の場所に位置決めすることができる。
【0031】
少なくとも1つのステーション122の外周部は、少なくとも1つの選択された分岐血管14に位置合わせることに適する形状、大きさ、グラフトでの位置、断面積及び/又は他の物理的配置を有することができる。環状構造124によって規定される少なくとも1つのステーション122の外周部は、図においてほぼ円形に描かれる。しかしながら、外周部の形状は、直角形、曲線形、円形、楕円形、長方形、多角形及び/又は特定の使用環境の任意の他の必要な外周部形状のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、それらに限定されない。少なくとも1つのステーション122が2つ以上のステーションを含む場合、各ステーションは、任意の適切な形状、大きさ、グラフトでの位置、外周部軌跡、断面積及び/又は任意の他の物理的特性を有することができ、他のステーション122の物理的特性と類似するか又は異なる。図3Aに示すように、少なくとも1つのステーション122は、少なくとも1つの第2環状構造125を含むことができる。少なくとも1つの第2環状構造125は、少なくとも1つのステーション122の環状構造124によって規定された外周部内に位置することができる。第2環状構造は、ステーション122内に面積の小さい孔を規定することができ、且つ第1外部ステーションを規定する環形構造124と同心であってもよいが、必ずしも同心である必要はない。第2環状構造125は、環状構造124と同じ材料又は、異なる材料で構成されてもよい。図に示すように、第2環状構造125は、グラフト材118で単独で被覆されてもよく、又は、第2環状構造は、環状構造124と同じグラフト材で覆われてもよい。例えば、外側の環状構造124は、直径が10ミリメートルのリングであってもよく、第2環状構造125は、第1リング構造124の外周部の内に位置し、直径が6ミリメートルのリングであってもよく、ユーザは、直径が6ミリメートルのリングだけを開きより小さい分岐血管に用いるか、又は、直径が6ミリメートルのリングと10ミリメートルのリングを同時に開き且つ大きな分岐血管に用いることを選択することができる。第2環状構造が存在する場合、第2環状構造125は、外側の環状構造124を開く過程の一部として除去されるか及び/又は破断されてもよい。例えば、バルーンで縫合リングを含む環状構造124及び/又は環状構造125の一部を折り及び/又は切開することができ、環状構造を除去するものではない。
【0032】
ステントグラフト100の少なくとも1つのステーション122は、ステントグラフト100に窓孔を開設するのに役立つ。窓孔は、介入により表面に形成された孔又は開口である。開放された表面は、生物学的表面又は、人工表面であってもよい。好ましくは、ステントグラフトが被験者の選択生体管腔内に配置された後、少なくとも1つのステーションに窓孔を開設する。しかしながら、ステントグラフト100が被験者の選択生体管腔内に配置される前に、少なくとも1つのステーション122に窓孔を開設してもよい。様々な技術で窓孔を開設することができ、例えば、ハサミ、メス、針、ガイドワイヤ、電流、レーザ及び/又は他の窓孔を開設できる機器のうちの少なくとも1つを使用して穿刺し、切断し、除去するか又は他の方式で少なくとも1つのステーション122の任意の部分を変更し、それにより窓孔ステーションを形成する。考慮すべきことは、グラフト材は、除去、置換、破壊(例えば、溶解又は気化)又は任意の他の適切な技術のうちの少なくとも一種により窓孔を形成することができ、それによりグラフト材が変更されてその上の孔部を含む。
【0033】
図4a~4fは、窓孔テーブルの例を示している。図4a~cに示すように、グラフト材の少なくとも一部を開放することにより窓孔を開設することができ、当該グラフト材は、少なくとも1つのステーション122の孔部126を選択的に覆う。開放は、少なくとも1つのステーション122の孔部126に被覆されたグラフト材118の一部(図4aを参照)を穿刺することに限定されず、少なくとも1つのステーション122の孔部126を覆うグラフト材118の一部を切断し且つグラフト材118の弁膜を依然として環状構造124に接続し(図4bを参照)、及び/又は、少なくとも1つのステーション122の孔部126を覆うグラフト材118の一部を切り出して除去することにより、少なくとも1つのステーション122のグラフト材118内にホールが存在する(図4cを参照)。
【0034】
図4dに示すように、少なくとも1つのステーション122の外周部を規定する環形構造124を除去することにより窓孔を開設し、それにより除去された少なくとも1つのステーション122と同じサイズの孔を開設し、少なくとも1つのステーション122の外周部を規定する環形構造124を除去することは、当該少なくとも1つのステーション122の孔部126を覆うグラフト材を選択的に除去することを含む。図4eは、窓孔技術を示し、長尺体102のグラフト材118の一部を除去することを含み、当該グラフト材は、少なくとも1つのステーション122の環状構造124と長尺体102の近位端部104との間に配置される。好ましくは、少なくとも1つのステーション122は、同時に除去されてもよく、このように、環状構造124と、少なくとも1つのステーション122の孔部126を覆う少なくとも一部のグラフト材118とは、少なくとも部分的に除去される。少なくとも1つのステーション122のリング構造と、少なくとも1つのステーション122の孔部126を選択的に覆うグラフト材118との全部が、この開窓方法の一部として除去されてもよい。
【0035】
最後に、図4fは、ステントグラフト100の一部を除去することにより作成された窓孔を示し、当該ステントグラフトは、少なくとも1つのステーション122、長尺体102のフレーム構造112の一部及び少なくとも一部が長尺体102を覆うグラフト材118を含む。少なくとも1つのステーション122が1つ以上のステーション122を含む場合、上記窓孔方法によりそのうちの1つのステーションを除去するか又は複数のステーションを除去することができる。少なくとも1つのステーション122の窓孔タイプは、例えば、ユーザが大動脈12(又は、他の生体管腔)から受けるダメージと、ステントグラフト100が大動脈(又は、他の生体管腔)に位置決めされたときにステントグラフトの長尺体102によって閉塞される分岐血管14の数及び性質とによって選択することができる。
【0036】
一般的には、ステントグラフト100を生体管腔内に導入するか又はその後に窓孔を開設することは考えられる。しかしながら、ステントグラフト100を生体管腔に導入する前、期間中及び/又はその後に窓孔を開設することができる。1つのオプションにおいて、ステントグラフト100が所定の位置に配置される前のデスクトップ手術において1つ又は複数の窓孔を開設することができる。別のオプションにおいて、ステントグラフト100を被験者の生体管腔内の同じ介入に入れて1つ又は複数の窓孔を開設することができる。別のオプションにおいて、同じ介入又は、後の介入において、ステントグラフト100が生体管腔内に導入された後に1つ又は複数の窓孔を開設することができる。考えられることは、同じステントグラフト100において、1つ以上の窓孔を開設する時間オプションを使用することができることである。
【0037】
ステントグラフト100が窓孔を形成すると、窓孔は、ステントグラフトにおいて1つの部位を提供し、当該部位では、二次ステントを少なくとも1つのステーションに位置合わせられた少なくとも1つの分岐血管に導入することができる。図5は、二次ステント128を有するブラケットグラフト100を示し、当該二次ステントは、少なくとも1つのステーション122の窓孔に位置する。二次ステント128は、少なくとも1つのステーション122の窓孔を部分的に貫通するように延在することができる。二次ステント128は、少なくとも一部が少なくとも1つの分岐血管14に位置決めされる遠位端130と、少なくとも部分的にステントグラフト100内に位置決めされる近位端132と、近位端及び遠位端を接続する中間部134とを有する。ステントグラフト100と類似し、二次ステント128は、ルーメン136を有してもよく、当該ルーメンは、少なくとも部分的に中間部134を通過する。ルーメン136は、中間部134の任意の部分又は全部を延伸することができ、例えば遠位端130から近位端132までである。二次ステント128は、少なくとも1つの分岐血管14とステントグラフト100の長尺体102のルーメン110との間の流体連通を許容するように配置されている。ステントグラフト100は、少なくとも1つのステーション122を有することにより二次ステント128を置きやすい。生体管腔内の損傷が少なくとも1つの分岐血管に近づきすぎると、既知のステントグラフトは、一般的に少なくとも1つの分岐血管を閉塞するように配置される。又は、既知のステントグラフトは、ルーメンと分岐血管との間の流通を許容するように配置されるが、ルーメン内の損傷が完全に修復されず、且つさらなる損傷が発生する可能性があり、又は、別の手術で損傷を完全に修復する必要がある。また、動脈瘤又は破断は、少なくとも1つの分岐血管に延在する可能性があり、再度検出して当該分岐血管を修復する必要がある。
【0038】
本開示の別の態様は、方法200~700(図6~11)を含むことができ、被験者の病変又は損傷を修復するための生体管腔、例えばステントグラフトを用いて大動脈弓の動脈瘤又は破断を修復することに用いられ、説明を容易にするために、当該ステントグラフトが前に検討されたステントグラフト100であると仮定する。
【0039】
方法200~700は、フロー説明付きのプロセスのフローチャートとして示される。簡単のために、これらの方法は、連続的に実行されるように示され且つ説明される。しかし、理解すべきことは、本開示の内容は、図示された順番に限定されず、幾つかのステップは、異なる順番で発生し及び/又は本明細書で示され且つ説明された他のステップと同時に発生することができるためである。また、全ての説明の点でこれらの方法を実施する必要がある。
【0040】
図6は、被験者の生体管腔にステントグラフト100を提供する方法200を示し、当該ステントグラフトは、例えば上記少なくとも1つのステーション122を有するステントグラフト100である。ステントグラフト100は、生体管腔の損傷を修復するために用いられ、且つさらなる介入及び/又は生体管腔の分岐血管にステントを配置することを促進することができる。生体管腔が大動脈の一部である場合、それは、大動脈弓12、上行主動脈、下行主動脈又は腹部大動脈の1つであってもよい。他の生体管腔例は、腎動脈、冠動脈、頸動脈又は肺部気道の部分を含む。ステップ202において、ステントグラフト100は、生体管腔内の目標位置に位置決めされてもよい。目標位置は、動脈瘤を被覆し、破断する裂け目を覆い、出血を遮断し、生体管腔壁の問題を修復する位置であってもよく、又は、ステントグラフト100を位置決めして他の介入を促進し、例えば分岐血管に二次ステント128を配置する位置であってもよいが、目標位置は、これらの位置に限定されない。ステップ204において、ステントグラフト100のうちの少なくとも1つのステーション122は、生体管腔の少なくとも1つの分岐血管に位置合わせられてもよい。少なくとも1つのステーション122は、少なくとも1つの分岐血管と完全に又は部分的に位置合わせることができ、ここでステーション122の孔部126の少なくとも一部は、分岐血管の開口の少なくとも一部と重なる。生体管腔が大動脈弓12である場合、少なくとも1つの分岐血管14は、上腕動脈、左総頸動脈及び左鎖骨下動脈のうちの1つであってもよい。
【0041】
ステップ206において、少なくとも1つのステーション122が整列されると、ステントグラフト100を目標位置に固定することができる。例えば、ステントフレームの拡張によりステントグラフト100を固定して血管壁に近接させ、及び/又は、縫合糸、釘、吸引力手段、生体適合性接着剤及び/又は、任意の他の固定手段で固定することができる。ステントグラフト100は、固定されてもよく、それによりステントグラフトの位置は、正常な身体機能において実質的な移動が発生しない。ステップ208において、少なくとも1つの分岐血管に位置合わせられた少なくとも1つのステーション122を開放することができ、それにより少なくとも1つのステーションに窓孔を開設する。ステップ210において、少なくとも1つの二次ステント128は、前に説明したように、少なくとも1つの窓孔により配置することができ、それにより少なくとも1つの分岐血管とステントグラフト100を接続する。二次ステント128は、少なくとも1つの分岐血管とステントグラフト100のルーメン110との間の流体連通を許容することができる。ステップ212において、少なくとも1つの二次ステント128は、少なくとも1つの分岐血管及び/又は、少なくとも1つのステーション122に固定されてもよい。二次ステント128は、例えば二次ステントのフレーム拡張により少なくとも1つの分岐血管と少なくとも1つのステーション122に固定されてそれぞれ血管壁と環状構造124に近接し、及び/又は、縫合糸、釘、接着剤、及び/又は、他の固定手段で固定される。
【0042】
図7は、方法300を説明し、当該方法は、少なくとも1つの分岐血管に位置合わせられたステントグラフト100の少なくとも1つのステーション122を開放して少なくとも1つのステーションに窓孔を開設するために用いられる。各開放ステップは、単独で行ってもよく、他の任意のステップと組み合わせて行ってもよい。ステップ302において、少なくとも1つのステーション122の孔部126を覆うグラフト材118の一部を除去することにより、窓孔を開設することができる。グラフト材の一部を除去することは、グラフト材に穿孔すること、グラフト材の一部を切開すること、グラフト材の一部を切り出すこと、又は、他の適切な除去態様を含んでもよい。ステップ304において、少なくとも1つのステーション122の外周部を規定する環形構造124を除去して窓孔を開設することができる。環状構造124を除去することは、環状構造の一部又は全部を切り出すことを含むことができる。環状構造124を除去することは、環状構造自体を除去し且つ環状構造で形成された孔部126を覆うグラフト材118を除去することを含むことができる。ステップ306において、少なくとも1つのステーション122の環状構造124と長尺体102の近位端部104との間に配置されたグラフト材の少なくとも一部を除去して窓孔を形成することができる。環状構造124と長尺体102の近位端部104との間に配置されたグラフト材118を除去する以外、少なくとも1つのステーション122の孔部126を覆うグラフト材は、開放及び/又は除去されてもよく、環状構造又はその任意の部分が除去されてもよい。ステップ308において、少なくとも1つのステーション122、長尺体102を含むフレーム構造112及び長尺体を覆うグラフト材118を含むステントグラフト100の一部を除去して窓孔を開設することができる。ステップ306及び308のいずれかにおいて、ステントグラフト100の新縁部を作成することができる。新縁部は、更にステントグラフトを固定するか、又は他の介入例えば適合に用いることができる。
【0043】
少なくとも1つのステーション122は、少なくとも第1ステーション及び第2ステーションを含み、ここで第1ステーション及び第2ステーションのうちの少なくとも1つは、グラフト材で選択的に覆われてもよい。第1及び第2ステーション122から選択された1つは、グラフト材118で覆われた孔部126を有し、第1及び第2ステーションのうちのもう1つは、グラフト材で覆われない開放孔部を有することができる。別の例において、第1及び第2ステーション122は、いずれもグラフト材118で覆われてもよい。特定の使用環境の需要に応じて、少なくとも1つの蓋あり又は蓋なしのステーション122は、少なくとも1つの分岐血管に位置合わせることができ、且つ当該方法を実行する間に、ステーション122は、必要に応じて、選択的に、再度覆われるか又は覆われない。
【0044】
図8は、被験者の大動脈弓12にステントグラフトを提供する方法400を説明する図である。ステップ402において、予め位置決めされたステントグラフトを被験者の大動脈弓内で提供することができる。当該ステントグラフトは、以上に説明した少なくとも1つのステーション122を有するステントグラフトであってもよい。幾つかの使用環境において、ステントグラフトは、上記ステントグラフト100と類似することができ、且つ少なくとも1つのステーション122の代わりに複数の突き合わせリングを有する。ステップ404において、ステントグラフトにおける複数の突き合わせリングのうちの少なくとも1つは、大動脈弓12の少なくとも1つの分岐血管14に位置合わせることができる。ステップ406において、グラフト材118の少なくとも一部は、開放されてもよく、それによりステントグラフトに窓孔が開設され、当該グラフト材は、大動脈弓12の少なくとも1つの分岐血管14に位置合わせられた複数の突き合わせリングのうちの少なくとも1つの孔部を覆う。ステップ408において、窓孔に二次ステントを埋め込むことにより、大動脈弓の少なくとも1つの分岐血管をステントグラフトに接続することができる(例えば、分岐血管とステントグラフトのルーメンとの間の流体連通を許容する)。別の図示しない方法において、ステップ406及び408に代えて、複数の突き合わせリングの窓孔に被覆されたグラフト材を保持することにより、少なくとも1つの分岐血管とステントグラフトのルーメンとの間の流体連通を少なくとも部分的に閉鎖することができる。グラフト材の被覆を保持することは、少なくとも1つの分岐血管からステントグラフトに流入する流体量を調整することに役立ち、又は、逆も同然である。
【0045】
図9は、被験者の大動脈弓にステントグラフトを提供する方法500を説明し、ここでステントグラフトの複数の突き合わせリングは、少なくとも2つの突き合わせリングを含む。ステップ502において、先に提供されたステントグラフトの複数の突き合わせリングの第1突き合わせリングは、大動脈弓の分岐血管のうちの選択された1つに位置合わせることができる。ステップ504において、複数の突き合わせリングの第2突き合わせリングは、大動脈弓の壁と大動脈弓のもう1つの分岐血管とから選択された1つに位置合わせることができる。ステップ506において、第1突き合わせリングの孔部を覆うグラフト材の一部を開放することができ、それによりステントグラフトのルーメンと大動脈弓の少なくとも1つの分岐血管との間の流体連通を許容する。ステップ508において、複数の突き合わせリングのうちの第2突き合わせリングを跨ぐグラフト材を保留することにより、第2突き合わせリングを介したステントグラフトのルーメンとの流体連通を少なくとも部分的に閉鎖することができる。グラフト材は、完全に又は部分的に保留されていてもよい。
【0046】
図10は、被験者の大動脈弓にステントグラフトを提供する方法600を説明し、ここでステントグラフトの複数の突き合わせリングは、少なくとも2つの突き合わせリングを含む。ステップ602において、先に提供されたステントグラフトの複数の突き合わせリングのうちの第1突き合わせリングは、大動脈弓の分岐血管から選択された1つに位置合わせることができる。ステップ604において、複数の突き合わせリングのうちの第2突き合わせリングは、大動脈弓の壁と大動脈弓のもう1つの分岐血管とから選択された1つに位置合わせることができる。ステップ606において、第2突き合わせリングは、大動脈弓の分岐血管から選択された1つに位置に合わせることができる。ステップ608において、複数の突き合わせリングのうちの第1突き合わせリングの孔部を覆うグラフト材の一部ができ、それによりステントグラフトのルーメンと大動脈弓の少なくとも1つの分岐血管との間の流体連通を許容する。ステップ610において、複数の突き合わせリングのうちの第2突き合わせリングの孔部を覆うグラフト材の一部を開放することにより、ステントグラフトのルーメンと大動脈弓の選択された分岐血管との間の流体連通を許容する。第1及び第2の突き合わせ環の孔部を覆うグラフト材の開放セグメント部は、孔部を覆うグラフト材の全部又はいずれの部分であってもよい。例えば、1つのステーションは、左総頸動脈に位置合わせることができ、もう1つのステーションは、左鎖骨下動脈に位置合わせることができる。2つのステーションの被覆は、いずれも開放することができ、それにより左総頸動脈及び左鎖骨下動脈と大動脈弓内のステントグラフトとの間の液体の流通を許容する。二次ステントは、そのうちの1つの開口を貫通するか、開口を貫通しないか、又は、2つの開口を貫通するように位置決めすることができる。二次ステントを配置しない場合に、突き合わせリングの窓孔によって流体連通を行うことができる。
【0047】
図11は、予め位置決めと整列されたステントグラフトの適合を実施するための方法700を説明する図である。ステップ702において、大動脈弓の少なくとも1つの分岐血管に位置合わせられた複数の突き合わせリングのうちの少なくとも1つを除去することができる。複数の突き合わせリングのうちの少なくとも1つを除去することは、突き合わせリングの外周部を規定する環状構造を除去し、且つ突き合わせリングの孔部を覆うグラフト材を除去することを含むことができる。ステップ704において、ステントグラフトのグラフト材の一部を除去することにより、グラフト材の新縁部を形成することができ、ここで、当該ステントグラフトは、複数の突き合わせリングのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を取り囲む。ステントグラフトの部分フレーム構造は、除去されてもよい。ステップ706において、グラフト材の新縁部でステントグラフトと大動脈弓の少なくとも1つの分岐血管との間の適合を形成することができる。
【0048】
ステントグラフト及び二次ステント(あれば)がどのように目標血管に供給されても、ステントグラフトは、少なくとも半永久的に原位置に留まり、ある程度の生体管腔壁の周囲に成長した組織を選択することができる。考えられるように、外科医は、従来の取り付けられたステントグラフトに改めて接触することができ、従来の二次ステントを交換し、新たな二次ステント(例えば、ステントグラフトの別のステーションを開放する)を追加し、前に窓を開けたステーションを改めて覆い、ステントグラフトを除去し(二次ステントが原位置に残ることを同時に選択することができる)、ステントグラフトを完全に交換し、又は、任意の他の原因で、前に取り付けられたステントグラフトに改めて接触することが考えられる。
【0049】
本開示の様々な態様は、上記例示的な態様を参照して特に示され且つ説明されたが、当業者であれば理解できるように、様々な他の態様を考慮することができる。例えば、上記機器を使用する具体的な方法は、例示的である。当業者は、任意の数の工具、ステップ順番又は、他の手段/オプションを容易に確定することができ、それにより上記機器又は、その部品を本明細書に示された位置と基本的に類似する位置に配置する。図中の明瞭度を維持するために、幾つかの重複する部品は、具体的な番号がないが、当業者は、番号付けされた部品に基づいて番号付けされていない部品に関連すべき部品番号を認識する。図に部品番号が存在するか又はない場合、類似部品の間の区別を意味するものではない。前記任意の構造及び部材は、全体的に単一又は全体の部品を形成することができ、又は、単独のサブ部品で構成され、そのうちの任意の形式は、いずれも任意の適切な在庫又は、カスタマイズされた部品及び/又は、任意の適切な材料又は、材料の組み合わせに関する。しかしながら、選択された材料は、多くのアプリケーションに対して生体適合性であるべきである。前記任意の構造及び部材は、いずれも使い捨て又は繰り返し使用可能であり、それにより特定の使用環境の需要を満たす。任意のコンポーネントは、いずれもユーザの感知可能なマークを提供することができ、それにより当該コンポーネントに関連する材料、配置、少なくとも1つのサイズ又は、類似するものを示すことができ、ユーザが感知できるマークは、ユーザが類似するコンポーネント配列から特定の使用環境から1つのコンポーネントを選択することに役立つ可能性がある。用語「実質的に」は、ここで大きな程度の品質を示すために用いられるが、必ずしも全ての品質である。「実質的に」の品質は、相対的に小さい非品質項目を含む可能性があると認められる。ここで説明された幾つかの部品は、特定の幾何学的形状を有するように表示されるが、本開示の全ての構造は、任意の適切な形状、サイズ、配置、相対関係、断面積又は、任意の他の特定のアプリケーションにとって好ましい物理的特徴を有することができる。1つの態様又は、構成を参照して説明された任意の構造又は、特徴は、単独で又は、他の構造又は、特徴と組み合わせて任意の他の態様又は、構成に提供することができ、本明細書で説明された各態様及び構成を全ての他の態様及び構成に関連して説明された全てのオプションとして説明することは、現実的ではない。以下の請求項及びその任意の等価物に基づいて決定されるため、これらの特徴のうちの任意の1つを含む機器又は、方法は、本開示の範囲に属すると理解されるべきである。
【0050】
図面、開示内容及び添付の請求項に対する研究により、他の態様、目標及び利点を得ることができる。
図1
図2
図3
図3a
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11