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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】生産システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B25J13/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022566857
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042932
(87)【国際公開番号】W WO2022118704
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020199361
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 航
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-203789(JP,A)
【文献】特開2006-159399(JP,A)
【文献】実開平2-31219(JP,U)
【文献】特開2000-25664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送するワーク搬送装置と、
ロボットと、
前記ロボットを移動させるロボット移動装置と、を備え、
前記ワーク搬送装置によって前記ワークが搬送されている時に、前記ロボット移動装置によって前記ロボットを移動させ、前記ロボットが前記ワークに追従しながら作業を行う生産システムであって、
前記ロボットが前記ワークに追従して移動している間に、前記ロボットに対する前記ワークの位置が、前記ロボットが前記ワークに対して作業可能な動作可能範囲を超えたか否かを判断する判断部と、
前記判断部によって、前記ロボットに対する前記ワークの位置が前記動作可能範囲を超えたと判断された場合に、前記ロボットに対する前記ワークの位置が前記動作可能範囲内に入るように、前記ワーク搬送装置及び前記ロボット移動装置の少なくともいずれか一方の駆動を制御して位置補正を行う位置補正部と、を有し、
前記動作可能範囲は、第1動作可能範囲と、前記第1動作可能範囲よりも範囲の広い第2動作可能範囲と、の少なくとも2つの範囲を有し、
前記位置補正部は、判断部によって前記ロボットに対する前記ワークの位置が、前記第1動作可能範囲を超えたと判断された場合の位置補正の補正量よりも、前記第2動作可能範囲を超えたと判断された場合の位置補正の補正量を大きくする、生産システム。
【請求項2】
前記位置補正部は、前記ワーク搬送装置及び前記ロボット移動装置の少なくともいずれか一方を、予め指定された距離移動させることによって位置補正を行う、請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記位置補正部は、前記ワーク搬送装置及び前記ロボット移動装置の少なくともいずれか一方の速度を変更することによって位置補正を行う、請求項1に記載の生産システム。
【請求項4】
ワーク搬送装置によって搬送されるワークに、ロボット移動装置によって移動するロボットを追従させながら行う作業の動作を制御する制御装置であって、
前記ロボットが前記ワークに追従して移動している間に、前記ロボットに対する前記ワークの位置が、前記ロボットが前記ワークに対して作業可能な動作可能範囲を超えたか否かを判断する判断部と、
前記判断部によって、前記ロボットに対する前記ワークの位置が前記動作可能範囲を超えたと判断された場合に、前記ロボットに対する前記ワークの位置が前記動作可能範囲内に入るように、前記ワーク搬送装置及び前記ロボット移動装置の少なくともいずれか一方の駆動を制御して位置補正を行う位置補正部と、を有し、
前記動作可能範囲は、第1動作可能範囲と、前記第1動作可能範囲よりも範囲の広い第2動作可能範囲と、の少なくとも2つの範囲を有し、
前記位置補正部は、判断部によって前記ロボットに対する前記ワークの位置が、前記第1動作可能範囲を超えたと判断された場合の位置補正の補正量よりも、前記第2動作可能範囲を超えたと判断された場合の位置補正の補正量を大きくする、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを搬送するワーク搬送装置と、ロボットと、ワーク搬送装置に沿ってロボットを移動させるロボット移動装置と、を備える生産システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような生産システムでは、ワーク搬送装置によってワークが搬送されている時に、ロボット移動装置が、ワークの搬送に同期して、ワークと同じ速度でロボットを移動させる。ロボットは、ワークに追従しながらワークに対して所定の作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-72764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットは、ワークに対して作業可能な所定の動作可能範囲を有する。そのため、ロボット移動装置は、搬送中のワークにロボットを追従させる際に、ロボットに対するワークの位置が、ロボットの動作可能範囲を超えることのないようにロボットを移動させる必要がある。
【0005】
ワークの搬送速度は、所定のサイクルで計測される。ロボット移動装置は、そのワークの搬送速度の計測値に基づいて、ワークの搬送速度に対応する速度でロボットを移動させる。そのため、通常の動作時において、ロボットに対するワークの位置が、ロボットの動作可能範囲を超えることはない。
【0006】
しかしながら、何らかの突発的なトラブルの発生によって、ワークの搬送速度の計測値がロボット移動装置側に送信されない場合、または、ワークの搬送速度が、計測サイクルよりも短い期間内で急激に変化する場合等に、ロボット移動装置は、ロボットをワークに適正に追従させることができなくなり、ロボットに対するワークの位置がロボットの動作可能範囲を超えてしまう場合がある。
【0007】
したがって、ロボットに対するワークの位置が、常にロボットの動作可能範囲を超えることのないように、ロボットをワークに追従して移動させることができる生産システムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、ワークを搬送するワーク搬送装置と、ロボットと、前記ロボットを移動させるロボット移動装置と、を備え、前記ワーク搬送装置によって前記ワークが搬送されている時に、前記ロボット移動装置によって前記ロボットを移動させ、前記ロボットが前記ワークに追従しながら作業を行う生産システムであって、前記ロボットが前記ワークに追従して移動している間に、前記ロボットに対する前記ワークの位置が、前記ロボットが前記ワークに対して作業可能な動作可能範囲を超えた否かを判断する判断部と、前記判断部によって、前記ロボットに対する前記ワークの位置が前記ロボットの前記動作可能範囲を超えたと判断された場合に、前記ロボットに対する前記ワークの位置が前記ロボットの前記動作可能範囲内に入るように、前記ワーク搬送装置及び前記ロボット移動装置の少なくともいずれか一方の駆動を制御して位置補正を行う位置補正部と、を有する、生産システムである。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、ロボットに対するワークの位置が、常にロボットの動作可能範囲を超えることのないように、ロボットをワークに追従して移動させることができる生産システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】生産システムの概要を示す図である。
図2】生産システムの構成を示すブロック図である。
図3】生産システムのシステム制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】ロボットがワークに追従して作業を行う様子を説明する図である。
図5】ワークに対するロボットの動作可能範囲の一実施形態を説明する図である。
図6】生産システムの動作の一実施形態を説明するフローチャートである。
図7】ロボットに対するワークの位置がロボットの動作可能範囲内に入るように位置補正を行う様子を説明する図である。
図8】ワークに対するロボットの動作可能範囲の他の実施形態を説明する図である。
図9】生産システムの動作の他の実施形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。図1図3において、生産システム1は、ワークWを搬送するワーク搬送装置2と、ロボット3と、ロボット3を移動させるロボット移動装置4と、を備える。ワークWは、ロボット3の作業対象物である。ワーク搬送装置2及びロボット移動装置4は、生産システム1における生産ラインを構成する。
【0012】
ワーク搬送装置2は、例えばコンベアであり、図2に示すシステム制御装置10によって駆動制御される。ワーク搬送装置2は、上面に載置したワークWをDw1-Dw2方向に沿って直線的に移動させる。ワーク搬送装置2は、ワークWを、Dw1方向(前進方向)とDw2方向(後進方向)との両方向に搬送することができる。
【0013】
ワーク搬送装置2上のワークWの位置は、図2に示すワーク位置検出部5によって検出される。ワーク位置検出部5は、例えばリニアエンコーダによって構成される。ワーク位置検出部5によって検出されるワークWの位置情報は、システム制御装置10に出力される。システム制御装置10は、所定のサイクルタイム毎のワークWの位置情報から、ワークWの搬送速度を計測する。
【0014】
ロボット3は、図2に示すロボット制御装置30によって駆動制御される。ロボット3は、例えば複数の可動部を備える垂直多関節ロボットである。ロボット3は、アーム部31の先端に、ワークWに対して所定の作業を行うためのハンド部32を有する。ロボット3は、ロボット移動装置4上で旋回動作及びアーム部31の伸縮動作を行うことによって、ハンド部32を自在に移動させる。
【0015】
ハンド部32には、図2に示すカメラ33が取り付けられている。カメラ33によって撮像された画像データは、ロボット制御装置30に送られる。ロボット制御装置30は、カメラ33によって撮像された画像に基づいて、ビジュアルフィードバックを行う。ロボット制御装置30は、ジュアルフィードバックにおいて、作業可能な姿勢で教示したモデルを用いてパターンマッチングを行い、ロボット3を制御して、検出結果が教示時のモデル位置に近づくようにロボット3を動作させる。これによって、ロボット3は、所定の動作可能範囲内でハンド部32によってワークWに対する所定の作業を行う。
【0016】
ロボット移動装置4は、システム制御装置10によって駆動制御される。ロボット移動装置4は、上面に載置したロボット3を、例えば、図示しないレールに沿ってDr1-Dr2方向に沿って直線的に移動させる。ロボット移動装置4は、システム制御装置10で計測されたワークWの搬送速度に対応する速度でロボット3を移動させる。Dr1-Dr2方向は、例えば上記のワークWの搬送方向であるDw1-Dw2方向に平行な方向である。ロボット移動装置4は、ロボット3を、Dr1方向(前進方向)とDr2方向(後進方向)との両方向に移動させることができる。
【0017】
ロボット移動装置4上のロボット3の位置は、図2に示すロボット位置検出部6によって検出される。ロボット位置検出部6は、例えばリニアエンコーダによって構成される。ロボット位置検出部6によって検出されるロボット3の位置情報は、システム制御装置10に出力される。
【0018】
図2及び図3に示すシステム制御装置10は、生産システム1の全体的な動作を制御する。システム制御装置10は、図4に示すように、ワーク搬送装置2を駆動して、ワークWを所定の速度でDw1方向に搬送する。システム制御装置10は、ワークWを搬送している時に、ロボット移動装置4を駆動して、ロボット3をワークWと同じ方向に沿うDr1方向に移動させる。このときのロボット移動装置4は、ロボット3に対するワークWの位置がロボット3の所定の動作可能範囲内に配置され続けるように、ロボット3をワークWの搬送速度に対応する速度で移動させる。システム制御装置10は、ロボット3の移動中に、ロボット制御装置30を介してロボット3を駆動する。これによって、ロボット3は、ワークWに追従して移動しながら、ハンド部32によってワークWに対して所定の作業を行う。
【0019】
図3に示すように、システム制御装置10は、ワーク搬送装置駆動部11と、ロボット移動装置駆動部12と、判断部13と、位置補正部14と、を有する。ワーク搬送装置駆動部11は、ワーク搬送装置2を駆動する。ロボット移動装置駆動部12は、ロボット移動装置4を駆動する。
【0020】
判断部13は、ロボット3がワークWに追従して移動している時に、ワーク位置検出部5によって検出されるワーク位置及びロボット位置検出部6によって検出されるロボット位置を入力する。判断部13は、図示しない記憶部等に、ロボット3がワークWに対して作業可能な所定の動作可能範囲の情報を予め有している。動作可能範囲の情報とは、具体的には、例えばロボット3に対してワークWがどこまで離隔した場合に動作可能であるかの情報である。この動作可能範囲は、通常、作業の安定性を考慮して、ロボット3が完全に作業不可能になる限界の範囲よりも狭い範囲に設定される。
【0021】
判断部13は、入力されるワーク位置及びロボット位置から、ワークWとロボット3との相対的な位置を計測し、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3がワークWに対して作業可能な所定の動作可能範囲を超えたか否かを判断する。この判断部13の判断は、ワーク位置検出部5によって検出されるワークWの位置情報からワークWの搬送速度を計測するサイクルタイムよりも短い所定のサイクルタイムによって実行される。判断部13は、動作可能範囲を超えたと判断した場合に、位置補正部14にその旨の信号を出力する。
【0022】
位置補正部14は、判断部13によって、ロボット3に対するワークWの位置がロボット3の動作可能範囲を超えたと判断された場合に、ロボット3に対するワークWの位置がロボット3の動作可能範囲内に入るように、ワーク搬送装置2及びロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御することによって、位置補正を行う。
【0023】
詳しくは、図5に示すように、Dw1方向に搬送中のワークWに追従してDr1方向に移動するロボット3は、所定の幅の動作可能範囲を有する。移動中のロボット3が、搬送中のワークWに対して適正な位置を維持して追従している場合、搬送中のワークWは、ロボット3の動作可能範囲内に配置される。ロボット3は、ワークWが動作可能範囲内に配置されていれば、ワークWがW1、W2及びW3のいずれの位置に配置されていても、ワークWに対して作業を行うことができる。しかし、搬送中のワークWが、移動中のロボット3の動作可能範囲を超えるW4又はW5の位置に配置される場合、ロボット3はワークWに対して作業を行うことができない場合がある。
【0024】
位置補正部14は、判断部13から動作可能範囲を超えた旨の信号の入力があると、ワークW及びロボット3のそれぞれの現在位置に応じて、ワーク搬送装置2及びロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御する。
【0025】
具体的には、例えば、ロボット3に対するワークWの位置が、図5に示すように、ロボット3よりもDw1方向に進んだ位置W4に配置されている場合、位置補正部14は、ワークWがロボット3の動作可能範囲内に配置されるように、以下のいずれかの制御を行う。
【0026】
(1)ワーク搬送装置2によるワークWの搬送速度を低下させるようにワーク搬送装置駆動部11のみを制御する。
(2)ワーク搬送装置2によるワークWの搬送方向をDw2方向に反転させ、予め指定された距離移動させるようにワーク搬送装置駆動部11のみを制御する。
(3)ロボット移動装置4によるロボット3の移動速度を増加させるようにロボット移動装置駆動部12のみを制御する。
(4)ワーク搬送装置2によるワークWの搬送速度を低下させるようにワーク搬送装置駆動部11を制御するとともに、ロボット移動装置4によるロボット3の移動速度を増加させるようにロボット移動装置駆動部12を制御する。
【0027】
一方、例えば、ロボット3に対するワークWの位置が、図5に示すように、ロボット3よりもDw2方向に後退した位置W5に配置されている場合、位置補正部14は、ワークWがロボット3の動作可能範囲内に配置されるように、以下のいずれかの制御を行う。
【0028】
(5)ワーク搬送装置2によるワークWの搬送速度を増加させるようにワーク搬送装置駆動部11のみを制御する。
(6)ロボット移動装置4によるロボット3の移動方向をDr2方向に反転させ、予め指定された距離移動させるようにロボット移動装置駆動部12のみを制御する。
(7)ロボット移動装置4によるロボット3の移動速度を低下させるようにロボット移動装置駆動部12のみを制御する。
(8)ワーク搬送装置2によるワークWの搬送速度を増加させるようにワーク搬送装置駆動部11を制御するとともに、ロボット移動装置4によるロボット3の移動速度を低下させるようにロボット移動装置駆動部12を制御する。
【0029】
ワーク搬送装置2によるワークWの搬送速度及び搬送方向は、生産システム1の生産性に影響する。そのため、位置補正部14は、ワークWがロボット3の動作可能範囲内に配置されるように制御を行う場合に、以上の(1)~(8)の制御のうち、(3)、(4)、(6)、(7)、(8)の制御を行うことが望ましく、ロボット移動装置4のみを制御する(3)、(6)、(7)の制御を行うことがさらに望ましい。
【0030】
次に、図6のフローチャートに基づいて、生産システム1の具体的な動作について説明する。
【0031】
ロボット3は、ロボット移動装置4上の所定の作業開始初期位置に配置されている。生産システム1の稼働後、システム制御装置10は、ワーク搬送装置駆動部11を制御してワーク搬送装置2を駆動させ、予め設定された一定の搬送速度でワークWをDw1方向に前進させる。システム制御装置10は、ワーク位置検出部5によってワークWがロボット3の作業領域に入ったかどうかを監視する。システム制御装置10は、ワークWがロボット3の作業領域に入るまで待機する(ステップS1、ステップS2;NO)。
【0032】
システム制御装置10は、ワークWがロボット3の作業領域内に入ったことを検出すると(ステップS2;YES)、ロボット移動装置駆動部12を制御してロボット移動装置4を駆動させる。これによって、システム制御装置10は、予め設定された一定の移動速度でロボット3をDr1方向に前進させ、ワークWに追従して移動させる(ステップS3)。
【0033】
その後、システム制御装置10は、ロボット3の移動開始とともにロボット制御装置30に作業開始指令を出力する。これによって、ロボット制御装置30は、所定の作業プログラムに従ってロボット3を駆動させる。ロボット制御装置30は、ロボット3のハンド部32に取り付けられたカメラ33で撮像された画像に基づいて、ビジュアルフィードバックによってアーム部31及びハンド部32を駆動させ、ワークWに追従しながらワークWに対して所定の作業を実行する(ステップS4)。
【0034】
ワークWに追従したロボット3の移動中に、システム制御装置10は、判断部13において、ワーク位置検出部5及びロボット位置検出部6から入力されるワーク位置及びロボット位置に基づいて、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3がワークWに対して作業可能な動作可能範囲を超えたかどうかを判断する(ステップS5)。ロボット3に対するワークWの位置が動作可能範囲を超えていないと判断された場合(ステップS5;NO)には、システム制御装置10は、ワークWに対するロボット3の作業が完了したかどうかを判断する(ステップS7)。作業完了していない場合(ステップS7;NO)には、システム制御装置10は、処理をステップS5からの処理に戻し、作業完了した場合(ステップS7;YES)には、当該ワークWに対するロボット3の作業を終了する。
【0035】
上記ステップS5において、ロボット3に対するワークWの位置が動作可能範囲を超えたと判断された場合(ステップS5;YES)には、システム制御装置10は、位置補正部14において、ロボット3に対するワークWの位置が動作可能範囲内に入るように、ワーク搬送装置2又はロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御して位置補正を行う(ステップS6)。図6に示すフローチャートでは、位置補正部14は、ロボット移動装置駆動部12を制御して、ロボット移動装置4の移動距離又は速度を変更することによって、位置補正を行っている。
【0036】
例えば、図5に示すように、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3よりもDw1方向に進んだ位置W4に配置されている場合には、位置補正部14は、ロボット移動装置駆動部12を制御して、図7に示すように、ロボット3が予め指定された速度まで速度を増加させるようにロボット移動装置4を駆動する。また、図5に示すように、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3よりもDw2方向に後退した位置W5に配置されている場合には、位置補正部14は、ロボット移動装置駆動部12を制御して、ロボット3をDr2方向に予め指定された距離だけ後退移動させるようにロボット移動装置4を駆動する。システム制御装置10は、位置補正の後、ステップS7の処理に移行し、作業完了かどうかを判断する。
【0037】
なお、指定された速度及び指定された距離は、例えば位置補正部14に予め設定されて記憶される。この速度及び距離は、1つの値に制限されない。ロボット3に対するワークWの離隔距離に応じて複数の速度及び距離の値が設定されていてもよい。その場合、位置補正部14は、ロボット3に対するワークWの離隔距離に応じて、ワークWの位置がロボット3の動作可能範囲内に入る最適な速度及び距離の値を選択することによって位置補正を行うことができる。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る生産システム1は、ワークWを搬送するワーク搬送装置2と、ロボット3と、ロボット3を移動させるロボット移動装置4と、を備え、ワーク搬送装置2によってワークWが搬送されている時に、ロボット移動装置4によってロボット3を移動させ、ロボット3がワークWに追従しながら作業を行う生産システム1である。ロボット3がワークWに追従して移動している間に、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3がワークWに対して作業可能な動作可能範囲を超えた否かを判断する判断部13と、判断部13によって、ロボット3に対するワークWの位置が動作可能範囲を超えたと判断された場合に、ロボット3に対するワークWの位置が動作可能範囲内に入るように、ワーク搬送装置2及びロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御して位置補正を行う位置補正部14と、を有する。これによって、ロボット3に対するワークWの位置が、常にロボット3の動作可能範囲を超えることのないように、ロボット3をワークWに追従して移動させることができる。したがって、生産システム1におけるワークWの加工精度及び生産性が向上する。
【0039】
位置補正部14が、ワーク搬送装置2及びロボット移動装置4の少なくともいずれか一方を、予め指定された距離移動させることによって位置補正を行う場合には、ワークW及びロボット3の少なくともいずれか一方の移動によって、簡単に位置補正することができる。
【0040】
位置補正部14が、ワーク搬送装置2及びロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の速度を変更することによって位置補正を行う場合には、ワークW及びロボット3の少なくともいずれか一方の移動によって、速やかに位置補正することができる。
【0041】
判断部13によって判断されるロボット3の動作可能範囲は、図5に示した1つの範囲に制限されず、図8に示すように、第1動作可能範囲と、第1動作可能範囲よりも範囲の広い第2動作可能範囲と、の少なくとも2つの範囲を有していてもよい。この場合では、生産システム1において、前記動作可能範囲は、第1動作可能範囲と、前記第1動作可能範囲よりも範囲の広い第2動作可能範囲と、の少なくとも2つの範囲を有し、前記位置補正部14は、前記判断部13によって、前記ロボット3に対する前記ワークWの位置が前記第1動作可能範囲を超えたと判断された場合に、前記ロボット3に対する前記ワークWの位置が前記第1動作可能範囲内に入るように、前記ワーク搬送装置2及び前記ロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御して第1位置補正を行い、前記判断部13によって、前記ロボット3に対する前記ワークWの位置が前記第2動作可能範囲を超えたと判断された場合に、前記ロボット3に対する前記ワークWの位置が前記第1動作可能範囲内に入るように、前記ワーク搬送装置2及び前記ロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御して、第1位置補正よりも補正量が大きい第2位置補正を行うことができる。
【0042】
第1動作可能範囲は、ロボット3がワークWに対して、安定して、余裕を持って作業を行うことができる範囲である。例えば、ワークWが、図8に示す位置W10、W21及びW31に配置されている場合、ロボット3はワークWに対して、安定して、余裕を持って作業を行うことができる。第2動作可能範囲は、ロボット3がワークWに対して作業を行うことができるが、第1動作可能範囲よりもロボット3の作業効率が低下する等のおそれがある範囲である。ワークWが第2動作可能範囲を超える場合、たとえば、ロボット3はストロークリミット等によって、ワークWに対して適正な作業を行うことが困難又は不可能になる場合がある。動作可能範囲は、2つの動作可能範囲に設定されるものに限らず、3つ以上の動作可能範囲が設定されてもよい。
【0043】
ロボット3に対するワークWの位置が、図8に示すロボット3よりもDw1方向に進んだ位置W22に配置されている場合、ワークWは、ロボット3の第1動作可能範囲を超えているため、位置補正部14は、ワークWがロボット3の第1動作可能範囲内に配置されるように、上記の(1)~(4)のいずれかの制御によって第1位置補正を行う。
【0044】
一方、ロボット3に対するワークWの位置が、図8に示すロボット3よりもDw2方向に後退した位置W32に配置されている場合も、ワークWは、ロボット3の第1動作可能範囲を超えているため、位置補正部14は、ワークWがロボット3の第1動作可能範囲内に配置されるように、上記の(5)~(8)のいずれかの制御によって第1位置補正を行う。
【0045】
また、ロボット3に対するワークWの位置が、図8に示すロボット3よりもDw1方向にさらに進んだ位置W41に配置されている場合、ワークWは、ロボット3の第2動作可能範囲を超えているため、位置補正部14は、ワークWがロボット3の第1動作可能範囲内に配置されるように、上記の(1)~(4)のいずれかの制御によって第2位置補正を行う。
【0046】
さらに、ロボット3に対するワークWの位置が、図8に示すロボット3よりもDw2方向にさらに後退した位置W51に配置されている場合、ワークWは、ロボット3の第2動作可能範囲を超えているため、位置補正部14は、ワークWがロボット3の第1動作可能範囲内に配置されるように、上記の(5)~(8)のいずれかの制御によって第2位置補正を行う。
【0047】
第2位置補正は、第1位置補正よりも補正量が大きい。具体的には、位置補正のパラメータが距離である場合は、第2位置補正による補正距離は、第1位置補正による補正距離よりも大きい値である。位置補正のパラメータが速度である場合には、第2位置補正による補正速度の変化量は、第1位置補正による補正速度の変化量よりも大きい値である。
【0048】
次に、図9のフローチャートに基づいて、ロボット3の動作可能範囲が第1動作可能範囲及び第2動作可能範囲の2つの範囲に設定された生産システム1の具体的な動作について説明する。
【0049】
ロボット3は、ロボット移動装置4上の所定の作業開始初期位置に配置されている。生産システム1の稼働後、システム制御装置10は、ワーク搬送装置駆動部11を制御してワーク搬送装置2を駆動させ、予め設定された一定の搬送速度でワークWをDw1方向に前進させる。システム制御装置10は、ワーク位置検出部5によってワークWがロボット3の作業領域に入ったかどうかを監視する。システム制御装置10は、ワークWがロボット3の作業領域に入るまで待機する(ステップS11、ステップS12;NO)。
【0050】
システム制御装置10は、ワークWがロボット3の作業領域内に入ったことを検出すると(ステップS12;YES)、ロボット移動装置駆動部12を制御してロボット移動装置4を駆動させる。これによって、システム制御装置10は、予め設定された一定の移動速度でロボット3をDr1方向に前進させてワークWに追従して移動させる(ステップS13)。
【0051】
システム制御装置10は、ロボット3の移動開始とともにロボット制御装置30に作業開始指令を出力する。これによって、ロボット制御装置30は、所定の作業プログラムに従ってロボット3を駆動させる。ロボット制御装置30は、ロボット3のハンド部32に取り付けられたカメラ33で撮像された画像に基づいて、ビジュアルフィードバックによってアーム部31及びハンド部32を駆動させ、ワークWに追従しながらワークWに対して所定の作業を実行する(ステップS14)。
【0052】
ワークWに追従したロボット3の移動中に、システム制御装置10は、判断部13において、ワーク位置検出部5及びロボット位置検出部6から入力されるワーク位置及びロボット位置に基づいて、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3がワークWに対して作業可能な第1動作可能範囲を超えたどうかを判断する(ステップS15)。ロボット3に対するワークWの位置が第1動作可能範囲を超えていないと判断された場合(ステップS15;NO)には、システム制御装置10は、ワークWに対するロボット3の作業が完了したかどうかを判断する(ステップS18)。作業完了していない場合(ステップS18;NO)は、システム制御装置10は、処理をステップS15からの処理に戻し、作業完了した場合(ステップS18;YESに)は、当該ワークWに対するロボット3の作業を終了する。
【0053】
上記ステップS15において、ロボット3に対するワークWの位置が第1動作可能範囲を超えたと判断された場合(ステップS15;YES)は、次に、システム制御装置10は、判断部13において、ロボット3に対するワークWの位置が、ロボット3がワークWに対して作業可能な第2動作可能範囲を超えたかどうかを判断する(ステップS16)。
【0054】
上記ステップS16において、ロボット3に対するワークWの位置が第2動作可能範囲を超えていないと判断された場合(ステップS16;NO)には、位置補正部14において、ロボット3に対するワークWの位置が第1動作可能範囲内に入るように、ワーク搬送装置2又はロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御して第1位置補正を行う(ステップS17)。図9に示すフローチャートでは、位置補正部14は、ロボット移動装置駆動部12を制御して、ロボット移動装置4の移動距離又は速度を変更することによって、第1位置補正を行っている。
【0055】
上記ステップS16において、ロボット3に対するワークWの位置が第2動作可能範囲を超えたと判断された場合(ステップS16;YES)には、位置補正部14において、ロボット3に対するワークWの位置が第1動作可能範囲内に入るように、ワーク搬送装置2又はロボット移動装置4の少なくともいずれか一方の駆動を制御して、第1位置補正よりも補正量の大きい第2位置補正を行う(ステップS19)。図9に示すフローチャートでは、位置補正部14は、ロボット移動装置駆動部12を制御して、ロボット移動装置4の移動距離又は速度を変更することによって、第2位置補正を行っている。
【0056】
システム制御装置10は、ステップS17において第1位置補正を行った後、及びステップS19において第2位置補正を行った後、ステップS18の処理に移行し、作業完了かどうかを判断する。
【0057】
このように、判断部13によって判断される動作可能範囲が、第1動作可能範囲と、第1動作可能範囲よりも範囲の広い第2動作可能範囲と、の少なくとも2つの範囲を有することによって、ロボット3は、ワークWに対して常により良い姿勢で作業を行うことができる。したがって、生産システム1におけるワークWの加工精度及び生産性がさらに向上する。
【符号の説明】
【0058】
1 生産システム
2 ワーク搬送装置
3 ロボット
4 ロボット移動装置
13 判断部
14 位置補正部
W ワーク
図1
図2
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図9