(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ワーク自動搬送装置のティーチングシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20241016BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2022569365
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046710
(87)【国際公開番号】W WO2022130495
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】小寺 創
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051445(WO,A1)
【文献】特開平10-301609(JP,A)
【文献】特開2007-188276(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドに構成されたロボット側チャックにより把持したワークを相手側装置に受渡しするワーク自動搬送装置であり、
前記ロボットハンドに備えられ前記相手側装置に対する所定箇所の接触を検出する接触検出装置と、
前記接触検出装置からの接触検出信号を基に接触時の前記ロボットハンドの位置を算出する制御装置と、
を有し、
前記接触検出装置は、前記ロボットハンドによって把持する無線のタッチプローブであり、前記ワーク自動搬送装置の駆動により前記タッチプローブの先端を前記相手側装置に配置したマスターワークに接触させ、
前記ロボットハンドは、旋回可能なベースに前記ロボット側チャックが表裏両面に構成されたものであり、一方のロボット側チャックに測定用ワークを把持した状態で、他方のロボット側チャックに把持したタッチプローブの先端を前記相手側装置に配置したマスターワークに接触させるようにした、
ワーク自動搬送装置のティーチングシステム。
【請求項2】
ロボットハンドに構成されたロボット側チャックにより把持したワークを相手側装置に受渡しするワーク自動搬送装置であり、
前記ロボットハンドに備えられ前記相手側装置に対する所定箇所の接触を検出する接触検出装置と、
前記接触検出装置からの接触検出信号を基に接触時の前記ロボットハンドの位置を算出する制御装置と、
を有し、
前記相手側装置は、ワークを把持して回転させる主軸側チャックを備えたワーク主軸装置であり、
前記接触検出装置は、前記ロボットハンドによって把持する無線のタッチプローブであり、前記主軸側チャックが把持した円筒形状の
マスターワークに対して前記タッチプローブの先端を数か所接触させ、前記制御装置により主軸の中心位置を算出するようにし、
前記ロボットハンドは、旋回可能なベースに前記ロボット側チャックが表裏両面に構成されたものであり、一方のロボット側チャックに測定用ワークを把持した状態で、他方のロボット側チャックに把持したタッチプローブの先端を前記相手側装置に配置したマスターワークに接触させるようにした、
ワーク自動搬送装置のティーチングシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、重さの異なる複数の前記測定用ワークを用いて行われた前記タッチプローブによる各計測に基づいて主軸の中心位置のズレ量を算出し、前記測定用ワークの重量変化における中心位置のズレ量を補正値として受渡し制御を行うようにした請求項1または請求項2に記載するワーク自動搬送装置のティーチングシステム。
【請求項4】
前記接触検出装置は、前記ロボット側チャックによるワークの把持状態の有無を検出する、前記ロボットハンドに構成された着座スイッチであり、前記相手側装置に配置されたワークを前記ロボット側チャックが把持することにより、前記制御装置が前記ロボットハンドの位置を算出する請求項1または請求項2に記載するワーク自動搬送装置のティーチングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク自動搬送装置におけるティーチングを行うためのティーチングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを相手側装置との間で受渡しするなど所定の作業を行う多関節ロボットは、各駆動軸に関して原点マークや位置決めピンなどを使用した原点出しが行われるほか、制御プログラムに応じた動作を記憶させるティーチングが行われる。例えば、搬送用ロボットであれば、記憶された制御プログラムの実行により、ワークを正確な位置に搬送することが求められている。しかし、ロボットの部品精度や、ワークを受け取る相手側装置に誤差が生じていると、数値制御によって行う作業が正確に実行できなくなってしまう。そこで従来からティーチングが行われているが、下記特許文献1にはそのためのティーチングシステムが開示されている。
【0003】
この従来例は、先端のチャックで把持したワークを目標位置へ移動させる多関節ロボットのティーチングシステムである。このシステムではチャックの位置とワークの位置とが大まかに合わせられ、所定位置へと搬送されるワークがチャックによって把持される。その際、チャックとワークとの中心位置にズレがあれば、チャック側のフローティング体が移動して両者の中心位置が一致するようになっている。そして、チャックの位置がセンサによって検出され、その位置データに基づいて真のチャック位置が演算部において算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来のティーチングシステムは、多関節ロボットにフローティング機構を設けるものであり、そのロボット自体に特別な構造を必要とするものであった。従って、特別な構造が付加されていることで多関節ロボットの価格が上がってしまう。また、フローティング機構が多関節ロボットを構造的に弱いものとしてしまい、故障の原因にもなり易くなっている。そのため、こうした特別な構造を加えることなく、作業者によってティーチングが行われることもある。例えば、中心位置にズレが生じている場合はワークを受渡しする際に搬送ロボット側が引っ張られるため、その変化を目視によって確認した作業者によってズレを無くすように中心位置を合わせる調整が行われる。しかし、こうした調整は構造的な問題はないものの、正確に行うには練度が大きく影響し、作業者によって工数や精度に大きな差が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、より簡単に行うことができるワーク自動搬送装置のティーチングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるワーク自動搬送装置のティーチングシステムは、ロボットハンドに構成されたロボット側チャックにより把持したワークを相手側装置に受渡しするワーク自動搬送装置であり、前記ロボットハンドに備えられ前記相手側装置に対する所定箇所の接触を検出する接触検出装置と、前記接触検出装置からの接触検出信号を基に接触時の前記ロボットハンドの位置を算出する制御装置とを有する。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、ロボットハンドに備えられたタッチプローブなどの接触検出装置によって、相手側装置に対する所定箇所の接触を検出することにより、その接触検出信号を基に制御装置が接触時のロボットハンドの位置を算出するので、ティーチングをより簡単に行うことができる。そして、このような構成によれは、従来のような複雑な構造は必要でなくなり、作業者の練度による精度や作業時間の差も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】複合加工機の主要な構造を示した斜視図である。
【
図2】ワーク自動搬送装置および自動工具交換装置を加えた複合加工機の側面図である。
【
図3】複合加工機の制御システムを概念的に示した図である。
【
図4】ワーク自動搬送装置の昇降アーム部分を示した斜視図である。
【
図5】ティーチングの作業状況を上方からX軸方向に見た図である。
【
図6】片側にワークを把持したティーチングの作業状況を上方からX軸方向に見た図である。
【
図7】奥行き方向に関するティーチングの作業状況を上方からX軸方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るワーク自動搬送装置のティーチングシステムの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。先ず、本実施形態のワーク自動搬送装置は複合加工機に組み込まれたものであり、
図1は、その複合加工機の主要な構造を示した斜視図である。複合加工機1は、各種加工装置を有することによりNC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持つようにした工作機械である。具体的には、ワークWを把持する第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置4と、複数の工具Tを有する第1タレット装置5および第2タレット装置6が、それぞれ左右対称に配置された対向2軸旋盤であり、加えて機体中央には工具主軸装置2が設けられている。
【0011】
一対の第1および第2ワーク主軸装置3,4は、それぞれ主軸台12のスピンドルに主軸側チャック11が組付けられ、スピンドルモータ13の駆動によって回転し、把持したワークWに加工時の位相決めや所定速度での回転が与えられる。主軸台12やスピンドルモータ13は主軸スライド14に搭載され、ベッド7上を機体幅方向のZ軸方向(主軸台12のスピンドルの軸線方向)に移動するよう構成されている。また、第1タレット装置5および第2タレット装置6は、割出し用サーボモータ16の回転制御によって、タレット15に装着された工具T(タレット工具)の旋回割出しが行われる。そして、工具TをワークWに対する加工位置に移動させるため、タレット15がZ軸に直交する機体前後方向のYL軸及び上下方向のXL軸の2方向に移動するよう駆動機構が設けられている(
図2参照)。
【0012】
工具主軸装置2は、主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵されたビルトインタイプの主軸ヘッド17を有し、鉛直なX軸方向に移動可能な主軸スライド18に搭載され、その主軸スライド18が機体前後に水平なY軸方向に移動可能なベーススライド19に搭載されている。主軸ヘッド17は、加工内容に応じて工具T(主軸ヘッド工具)の取り換えが可能であり、Y軸に平行
なB軸を中心に回転するよう構成されている。なお、前述したタレット15の移動方向であるYL軸およびXL軸は、
図2に示すようにY軸およびX軸に対して45度傾いている。
【0013】
図2は、ワーク自動搬送装置および自動工具交換装置を加えた複合加工機1の側面図である。複合加工機1は、機体の中央前部に、工具主軸装置2に対する工具T(主軸ヘッド工具)の自動交換を行うための自動工具交換装置8が設けられている。自動工具交換装置8は、複数の工具Tを収納したツールマガジン21が上部に設けられ、主軸ヘッド17に向かい合ったツールチェンジャ22によって工具交換が行われるようになっている。また、主軸ヘッド17とツールチェンジャ22との間には工具を移動させるためのシフト機構が設けられている。
【0014】
複合加工機1は、第1および第2ワーク主軸装置3,4に対するワークWの供給および排出を行うためのワーク自動搬送装置9が設けられている。複合加工機1は、ベッド7上に櫓型のフレーム構体10が組付けられ、ワーク自動搬送装置9は、そのフレーム構体10に搭載されたガントリ式の搬送装置である。ワーク自動搬送装置9は、フレーム構体10の上を走行テーブル25が機体幅方向に移動可能であり、その走行テーブル25上にはスライド台26が機体前後方向に移動可能な構成を有している。そして、スライド台26の先端部には、上下方向に移動可能な昇降アーム27が構成され、その下端部にはチャックを備えたロボットハンド28が組付けられている。
【0015】
こうしたワーク自動搬送装置9は、走行テーブル25、スライド台26および昇降アーム27に対して、それぞれにサーボモータが設けられている。各軸方向のサーボモータの駆動は、その回転運動がラック・ピニオンなどの駆動伝達機構を介してZ軸方向、Y軸方向あるいはX軸方向の各方向の直線運動に変換される。よって、ロボットハンド28によって把持されたワークWは、各軸方向のサーボモータの駆動制御によって所定位置へと搬送され、相手側装置との間で受渡しが行われる。
【0016】
図3は、複合加工機1の制御システムを概念的に示した図である。複合加工機1を駆動させる制御装置50は、マイクロプロセッサ(CPU)51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、I/Oユニット55などがバスライン58を介して接続されている。CPU51は制御部全体を統括制御するものであり、ROM52にはCPU51が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM53には一時的に演算データ等が格納される。
【0017】
また、揮発性メモリ54は、CPU51が行う処理に必要な情報であり、複合加工機1の加工プログラムやティーチングを実行するためのプログラムなどの情報が格納されている。そして、制御装置50にはI/Oユニット55に接続されたプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)56が設けられ、ラダー形式で作成されたシーケンスプログラムによって複合加工機1の工具主軸装置2など各種加工装置の駆動部制御が行われる。加工プログラムの各機能指令はシーケンスプログラムによって必要な信号に変換され、I/Oユニット55から工具主軸装置2などに対して出力が行われる。
【0018】
複合加工機1は、制御装置50に格納された加工プログラムに従い、ワークWに応じた内容の加工が実行される。加工対象となるワークWは、入力側ストッカからワーク自動搬送装置9によって加工位置へと運び出される。ロボットハンド28に把持されたワークWは、ワーク自動搬送装置9の駆動によりX軸Y軸およびZ軸方向に移動し、第1ワーク主軸装置3や第2ワーク主軸装置4へと搬送される。そして、各主軸装置の主軸側チャック11に受渡しされた後、第1タレット装置5や第2タレット装置6による所定の加工、或いは工具主軸装置2による所定の加工が行われる。
【0019】
ワーク自動搬送装置9では、搬送プログラム応じた各サーボモータの駆動が記憶されており、走行テーブル25、スライド台26および昇降アーム27の移動位置への制御が行われる。複合加工機1では、ワーク自動搬送装置9が相手側装置に対して正確にワークWの受渡しができるようにティーチングが行われる。そこで、相手側装置を第1ワーク主軸装置3として、主軸側チャック11に対するロボットハンド28のティーチングについて以下に説明する。なお、第2ワーク主軸装置4に対するティーチングも同じである。
【0020】
複合加工機1に構成されたティーチングシステムは、測定器として無線のタッチプローブ61が使用され、対象物に接触した検出信号が制御装置50の通信部57へ送信されるようになっている。ここで、
図4は、ワーク自動搬送装置9の昇降アーム27を示した斜視図である。昇降アーム27は、アーム部材33の上端部分に連結部34が形成され、下端部分にはロボットハンド28の角度を調整する旋回用モータ35が設けられている。
【0021】
ロボットハンド28は、旋回用モータ35によって180度の反転が可能なベース36に対し、一対のロボット側チャック37,38が表裏両面に構成されている。ロボット側チャック37,38は、ティーチングを実行するに当たって、チャック爪の開閉によって一方にはタッチプローブ61が、他方にはマスターワーク62がそれぞれに把持される。なお、タッチプローブ61およびマスターワーク62は、例えばワークWを収納するストッカ側に測定器用ステーションが用意され、そこからワーク自動搬送装置9によって取り出されるようになっている。
【0022】
マスターワーク62は、ティーチングの対象となる第1ワーク主軸装置3へと運ばれ、主軸側チャック11によって把持される。ワーク自動搬送装置9のロボットハンド28は、マスターワーク62の受渡しを行った後、旋回用モータ35の駆動によりロボット側チャック37,38の位置が入れ替わり、タッチプローブ61が相手側装置に向けられる。
図3は、第1ワーク主軸装置3を相手側装置として行うティーチングの状況が示されているが、
図5は、それを上方からX軸方向に見た図である。
【0023】
ティーチングでは、ワーク自動搬送装置9における各軸方向のサーボモータが駆動し、円筒形状のマスターワーク62に対して、その内周面621(外周面622であってもよい)にタッチプローブ61の先端を3方向から当てた計測が行われる。プローブ先端がマスターワーク62に接触すると、タッチプローブ61からは無線の接触検出信号が通信部57へと送信される。制御装置50では、その接触検出信号の受信に従ってサーボモータの回転角度が求められ、そこからプローブ先端の接触位置の座標値が算出される。そして、マスターワーク62の中心位置OがZ軸に直交するXY平面上の座標値として算出および記憶される。
【0024】
主軸側チャック11に把持されたマスターワーク62は、その中心位置Oが第1ワーク主軸装置3の主軸の中心位置に重なる。そのため、中心位置OがワークWを受渡し制御する際の受渡し位置として記憶される。こうして第1ワーク主軸装置3の主軸中心と、ロボットハンド28に構成されたロボット側チャック37,38の中心位置を合わせた芯出しが行われる。第1ワーク主軸装置3に対するティーチングが終了した後は、ワーク自動搬送装置9によってマスターワーク62が第2ワーク主軸装置4へ受け渡しされる。そして、同じようにタッチプローブ61の接触が行われ、それによって得られる座標値から主軸の中心位置が算出され、ワークWを受渡し制御する際の受渡し位置として記憶される。
【0025】
ところで、複合加工機1の稼働中に機内でワーク自動搬送装置9の接触が起きることがあり、それによってロボットハンド28の移動位置に機械的な誤差が生じることがある。つまり、ティーチングによって記憶された三次元座標の値と実際の動きに狂いが生じてしまうことがある。そのような場合にも、修正プログラムに従って補正が行われる。例えば、主軸側チャック11のチャック爪にワークWが当たってしまい、受渡しエラーが生じてしまったような場合に行われる。前述したティーチングが終了した後は、タッチプローブ61およびマスターワーク62が測定器用ステーションに戻されている。そのため、ワーク自動搬送装置9のロボットハンド28によって再びタッチプローブ61などが掴み出され、同じようにしてティーチングが行われて制御値の補正が行われる。
【0026】
次に、
図6は、片側にワークを把持したティーチングの作業状況を上方からX軸方向に見た図である。ロボットハンド28は、図示するようにベース36の片側のロボット側チャック37(又は38)でのみワークWを把持した場合、荷重の偏りによってロボット側チャック37,38の中心線Cに僅かな傾きが生じてしまうことがある。そこで、例えば片側のロボット側チャック38に測定用ワーク63を把持した状態で、反対のロボット側チャック37にタッチプローブ61を把持させたティーチングを行う。この場合、1kgから15kgまで1kg単位で重さを変化させた複数の測定用ワーク63が使用される。
【0027】
ワーク自動搬送装置9では、測定用ワーク63を把持したままタッチプローブ61の先端が、前述した
図5に示す場合と同様に、マスターワーク62の内周面621(外周面622であってもよい)に対し3方向に当てられる。そのタッチプローブ61からは接触検出信号が送信され、制御装置50ではマスターワーク62の中心位置OがZ軸に直交するXY平面上の座標値として算出および記憶される。このとき、測定用ワーク63の重さに応じて中心線Cに傾きが生じた場合、算出したマスターワーク62の中心位置Oにズレが生じる。そこで、測定用ワーク63の重量変化における中心位置Oのズレ量を算出し、その値を補正値として記憶し、例えば加工前にタッチパネルからワークWの重量入力を行い、その数値に基づいて補正処理をした受渡し制御が行われるようにする。
【0028】
続いて、タッチプローブ61を使用したティーチングは、第1ワーク主軸装置3(または第2ワーク主軸装置4)の主軸に直交するXY平面上の座標が求められるが、Z軸方向つまり主軸側チャック11の奥行は計測できない。
図7は、その奥行き方向に関するティーチングの作業状況を示した図である。奥行き方向のティーチングでは、対象となる第1ワーク主軸装置3の主軸側チャック11に対し、実際に加工対象となっているワークWが予め加工時の状態で把持されている。そこにワーク自動搬送装置9のロボットハンド28が、主軸に平行なZ軸方向の移動によってワークWを掴みに行く。
【0029】
ロボットハンド28は、ワークWを把持した状態を検出するための接触検出装置が構成されている。チャック爪41の付け根部分に板状のプッシャ42が設けられ、ワークWが突き当てられて変位することにより、着座スイッチ43が押されるようになっている。そのため、奥行き方向のティーチングでは、主軸に平行なZ軸方向にロボットハンド28が移動し、主軸側チャック11に把持されたワークWに接触することによって着座スイッチ43が入り、その接触検出信号を基に駆動停止が行われる。制御装置50ではサーボモータの回転角度によってZ軸方向の停止位置の座標値が算出される。そして、ロボットハンド28が突き当たった位置からプッシャ42が変位した分だけを後退させた位置が、奥行き方向の受渡し位置として算出および記憶される。
【0030】
本実施形態によれば、タッチプローブ61や着座スイッチ43のようなロボットハンド28に設けられた接触検出装置を用いることにより、受渡し位置に関して自動計測を行い、当該計測を基に受け渡し位置に移動させるための座標値が制御装置によって算出および記憶される。よって、従来のような複雑な構造は必要なく、作業者の練度に応じた精度や作業時間の差が生じることもない。また、複合加工機1の稼働時に衝突が生じたとしても、修正のティーチングを行うことにより早期に復旧させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態ではワーク自動搬送装置としてガントリ式のロボットを例に挙げたが、従来例のように多関節ロボットにおけるものであってもよい。
また、前記実施形態ではティーチングの対象に主軸の例を挙げて説明したが、そのほかの装置であってもよく、例えば、加工済みワークの検測装置などに対するティーチングであってもよい。この場合のティーチングは、例えばマスターワークを各装置に配置しておき、それに対しタッチプローブ61を使用した計測を行うようにする。
また、ワーク自動搬送装置を有するものであれば、複合加工機1とは異なる工作機械であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…複合加工機 2…工具主軸装置 3…第1ワーク主軸装置 4…第2ワーク主軸装置 5…第1タレット装置 6…第2タレット装置 8…自動工具交換装置 9…ワーク自動搬送装置 11…主軸側チャック 25…走行テーブル 26…スライド台 27…昇降アーム 28…ロボットハンド 36…ベース 37,38…ロボット側チャック 61…タッチプローブ 62…マスターワーク 63…測定用ワーク 50…制御装置 57…通信部