(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20241016BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02P9/00 A
H02P9/04 J
(21)【出願番号】P 2022573381
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2022041069
(87)【国際公開番号】W WO2023080174
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2022-11-28
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/040588
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稻月 仁哉
(72)【発明者】
【氏名】富永 純一
(72)【発明者】
【氏名】西田 郁郎
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 博之
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-166551(JP,A)
【文献】特開2015-109746(JP,A)
【文献】特開2017-184485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P9/00
H02P9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統とともに、電気機器等の電力負荷に発電電力を投入可能な発電システムであって、
調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御し、前記電力負荷に前記発電電力を投入可能な発電機と、
前記動力機関が駆動している状態で前記発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される模擬負荷と、
前記模擬負荷の消費電力を0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように電力調整可能に構成され
るとともに電力の調整で電力波形を歪ませる高調波が発生する電力調整器からなる模擬負荷電力調整部と、
前記模擬負荷電力調整部を制御することにより前記模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部と、
を備え、
前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部は、前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部を一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部が、前記発電機に対して調整された負荷を互いに独立して投入可能に構成され、
前記制御部は、
前記商用電力系統からの受電の停止後であって、前記電力負荷と前記発電機とが解列している状態で、
前記複数の模擬負荷電力調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、
前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、
前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが、0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、
を少なくとも含む制御を行う
発電システム。
【請求項2】
前記第2の投入制御は、
前記模擬負荷の負荷を、階段状、または線形状に、前記所定の負荷容量まで増加させる制御である
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部の組は、2組以上設けられる
請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記第2の投入制御によって投入される模擬負荷における昇負荷レートが、0%/minより大きく45%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる
請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記第2の投入制御によって投入される模擬負荷における昇負荷レートが、45%/min以上60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる
請求項3に記載の発電システム。
【請求項6】
前記第2の投入制御の後、前記複数の模擬負荷のうち、前記第1の投入制御の対象である前記1つの模擬負荷としての第1模擬負荷および前記第2の投入制御の対象である前記他の1つの模擬負荷としての第2模擬負荷のいずれとも異なる第3模擬負荷に対して、昇負荷レートが、0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第3の投入制御と、
前記第3の投入制御の後、前記複数の模擬負荷のうち、前記第1模擬負荷、前記第2模擬負荷、および前記第3模擬負荷のいずれとも異なる第4模擬負荷に対して、昇負荷レートが、0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第4の投入制御と、を行い、かつ前記第2の投入制御、前記第3の投入制御、および第4の投入制御の前記昇負荷レートはそれぞれ、互いに異なる昇負荷レートである
請求項1に記載の発電システム。
【請求項7】
前記第2の投入制御の後、前記他の1つの模擬負荷における負荷容量を維持する第2維持制御と、
前記第2維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうち、前記第1の投入制御の対象である前記1つの模擬負荷としての第1模擬負荷および前記第2の投入制御の対象である前記他の1つの模擬負荷としての第2模擬負荷のいずれとも異なる第3模擬負荷に対して、昇負荷レートが、0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第3の投入制御と、
前記第3の投入制御の後、前記第3模擬負荷における負荷容量を維持する第3維持制御と、
前記第3維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記第1模擬負荷、前記第2模擬負荷、および前記第3模擬負荷のいずれとも異なる第4模擬負荷に対して、昇負荷レートが、0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第4の投入制御と、を行い、かつ前記第2の投入制御、前記第3の投入制御、および前記第4の投入制御の前記昇負荷レートはそれぞれ、互いに異なる昇負荷レートである
請求項1に記載の発電システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記発電機に対して前記複数の模擬負荷の投入が終了した後、前記模擬負荷と異なる電力負荷に対して、前記発電機による発電電力の供給を開始させ、
前記電力負荷による消費電力の変動に対応させて、前記模擬負荷の消費電力を増減させるように前記模擬負荷電力調整部を制御する
請求項1に記載の発電システム。
【請求項9】
調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御し前記電力負荷に前記発電電力を投入可能な発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される複数の模擬負荷と、前記複数の模擬負荷の消費電力をそれぞれ個別に0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように電力調整可能に構成され
るとともに電力の調整で電力波形を歪ませる高調波が発生する電力調整器からなる、前記複数の模擬負荷と一対に設けられる複数の模擬負荷電力調整部と、を制御可能な制御部を備え、商用電力系統とともに電力負荷に発電電力を投入可能な発電システムを制御する制御装置であって、
前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部は一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、それぞれの一対の前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部が、前記発電機に対して調整された負荷を互いに独立して投入可能に構成され、
前記制御部は、
前記商用電力系統からの受電の停止後であって、前記電力負荷と前記発電機とが解列している状態で、
前記複数の模擬負荷電力調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、
前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、
前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、
を少なくとも含む制御を行う
制御装置。
【請求項10】
調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御し前記電力負荷に前記発電電力を投入可能な発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される複数の模擬負荷と、前記複数の模擬負荷の消費電力をそれぞれ個別に0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように電力調整可能に構成され
るとともに電力の調整で電力波形を歪ませる高調波が発生する電力調整器からなる、前記複数の模擬負荷と一対に設けられる複数の模擬負荷電力調整部と、を制御可能な制御部を備え、商用電力系統とともに電力負荷に発電電力を投入可能な発電システムを制御する制御装置が実行する制御方法であって、
前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部は一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、それぞれの一対の前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部が、前記発電機に対して調整された負荷を互いに独立して投入可能であり、
前記制御部が、
前記商用電力系統からの受電の停止後であって、前記電力負荷と前記発電機とが解列している状態で、
前記複数の模擬負荷電力調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、
前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、
前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、
を少なくとも含む制御を行う
制御方法。
【請求項11】
調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御し前記電力負荷に前記発電電力を投入可能な発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される複数の模擬負荷と、前記複数の模擬負荷の消費電力をそれぞれ個別に0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように電力調整可能に構成され
るとともに電力の調整で電力波形を歪ませる高調波が発生する電力調整器からなる、前記複数の模擬負荷と一対に設けられる複数の模擬負荷電力調整部と、を制御可能、かつ前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部が一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、それぞれの一対の前記模擬負荷および前記模擬負荷電力調整部を前記発電機に対して調整した負荷を互いに独立して投入するように制御可能であって、商用電力系統とともに電力負荷に発電電力を投入可能な発電システムを制御する制御部に、
前記商用電力系統からの受電の停止後であって前記電力負荷と前記発電機とが解列している状態で、前記複数の模擬負荷電力調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、
前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、
前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、
を少なくとも含む制御を行う
ことを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器などの電力負荷が設けられた施設には、商用電力系統に連系して発電を行い、発電電力を電力負荷に供給する発電システムが備えられる場合がある。特許文献1には、このような発電システムとして、商用電力系統または常用電源からの受電が停止する停電時において、商用電力系統または常用電源から発電機を切り離した状態で、発電機を駆動する内燃機関を起動させて発電機の自立運転を行い、発電機の発電電圧が確立し安定して発電が行えるようになった段階で、停電時の給電対象とする電力負荷の一部または全部の特定負荷を発電機に投入する技術が開示されている。このような発電システムにおいては、商用電力系統または常用電源からの受電の停止後において、例えば40秒以内程度の短時間で、発電機の発電電圧の確立や電力負荷の投入を可能にすることが求められる(非特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、模擬負荷制御手段、第1模擬負荷消費電力調整手段および第2模擬負荷消費電力調整手段によって第1模擬負荷と第2模擬負荷とで消費される消費電力が等しくなるように制御する模擬負荷制御を実行する技術が開示されている。特許文献3には、電力負荷の消費電力を計測する電力負荷消費電力計測手段と、発電機の発電電力を消費する模擬負荷と、模擬負荷の消費電力を変更可能な模擬負荷消費電力調整手段と、発電機の発電電力がエンジンを安定運転可能な所定の基準発電電力以上に維持されるように、電力負荷消費電力計測手段の計測結果に基づいて模擬負荷消費電力調整手段を制御する模擬負荷制御手段を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-6595号公報
【文献】特開2017-184485号公報
【文献】特開2015-109746号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】一般財団法人日本内燃力発電設備協会「防災用自家発電装置技術基準」(平成30年5月1日発行)第8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術による発電システムにおいて、電力負荷の投入または停止によって、電力負荷の変動が生じる。この電力負荷の変動に対して、発電機の運転を安定させるために、模擬負荷を用いて事前に負荷を投入する操作が必要になる。ここで、模擬負荷を事前に投入する際に、模擬負荷の出力を任意に調整するために、特許文献2,3に開示されているように、発電機と模擬負荷との間に模擬負荷の消費電力を調整するための電力調整器を設ける必要がある。
【0007】
しかしながら、電力調整器を設けることによって、発電システムにおいて模擬負荷に対して電力調整制御を実行する際に、電流の波形を歪ませる高調波が発生してしまい、発電機の運転における力率を低下させる場合がある。発電機の力率が低下すると、発電機を起動させたり運転を継続させたりする際に、発電機の運転を維持することが困難になり、発電機からの電力を消費する本来の電力負荷を投入する前に、発電機が停止する可能性がある。
【0008】
また、力率を維持できたとしても、模擬負荷の消費電力の投入の仕方によっては、発電機の故障や、故障に繋がる過給機の異音や電力波形の乱れなどの、発電機自体への機械的負荷が大きくなり、発電機の安定した稼動寿命が短くなる事で安定した運転に支障をきたす可能性がある。そのため、商用電力系統や常用電源からの受電の停止後に求められる発電機の起動および運転を長期に亘り安定して実行できる技術が求められている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、商用電力系統や常用電源からの受電の停止後に求められる発電機の起動および運転を長期に亘り安定して実行できる発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る発電システムは、調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御する発電機と、前記動力機関が駆動している状態で前記発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される模擬負荷と、前記模擬負荷の消費電力を0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように調整可能に構成された模擬負荷調整部と、前記模擬負荷調整部を制御することにより前記模擬負荷の消費電力を制御可能な制御部と、を備え、前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部は、前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部を一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部が、前記発電機に対して調整された負荷を互いに独立して投入可能に構成され、前記制御部は、前記複数の模擬負荷調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが、0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、を少なくとも含む制御を行う。
【0011】
(2)本発明の一態様に係る発電システムは、上記の(1)の発明において、前記第2の投入制御は、前記模擬負荷の負荷を、階段状、または線形状に、前記所定の負荷容量まで増加させる制御である。
【0012】
(3)本発明の一態様に係る発電システムは、上記の(1)または(2)の発明において、前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部の組は、2組以上設けられる。
【0013】
(4)本発明の一態様に係る発電システムは、上記の(3)の発明において、前記第2の投入制御によって投入される模擬負荷における昇負荷レートが、0%/minより大きく45%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる。
【0014】
(5)本発明の一態様に係る発電システムは、上記の(1)~(4)のいずれかの発明において、前記制御部は、前記発電機に対して前記複数の模擬負荷の投入が終了した後、前記模擬負荷と異なる電力負荷に対して、前記発電機による発電電力の供給を開始させ、前記電力負荷による消費電力の変動に対応させて、前記模擬負荷の消費電力を増減させるように前記模擬負荷調整部を制御する。
【0015】
(6)本発明の一態様に係る制御装置は、調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御する発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される複数の模擬負荷と、前記複数の模擬負荷の消費電力をそれぞれ個別に0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように調整可能に構成され前記複数の模擬負荷と一対に設けられる複数の模擬負荷調整部と、を制御可能な制御部を備える制御装置であって、前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部は一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、それぞれの一対の前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部が、前記発電機に対して調整された負荷を互いに独立して投入可能に構成され、前記制御部は、前記複数の模擬負荷調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、を少なくとも含む制御を行う。
【0016】
(7)本発明の一態様に係る制御方法は、調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御する発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される複数の模擬負荷と、前記複数の模擬負荷の消費電力をそれぞれ個別に0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように調整可能に構成され前記複数の模擬負荷と一対に設けられる複数の模擬負荷調整部と、を制御可能な制御部が実行する制御方法であって、前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部は一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、それぞれの一対の前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部が、前記発電機に対して調整された負荷を互いに独立して投入可能であり、前記制御部が、前記複数の模擬負荷調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、を少なくとも含む制御を行う。
【0017】
(8)本発明の一態様に係るプログラムは、調速機を備える動力機関の駆動によって発電電力を制御する発電機の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量が設定される複数の模擬負荷と、前記複数の模擬負荷の消費電力をそれぞれ個別に0から設定された前記所定の負荷容量まで増加させるように調整可能に構成され前記複数の模擬負荷と一対に設けられる複数の模擬負荷調整部と、を制御可能、かつ前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部が一対として複数組設けられ、前記複数組の前記模擬負荷は、前記複数組を構成する前記模擬負荷の前記所定の負荷容量の合計が前記発電機の設定出力と略等しく、それぞれの一対の前記模擬負荷および前記模擬負荷調整部を前記発電機に対して調整した負荷を互いに独立して投入するように制御可能な制御部に、前記複数の模擬負荷調整部のそれぞれに調整信号を出力して、前記発電機の起動時に前記複数の模擬負荷のうちの1つの模擬負荷について、前記発電機に対して無段階で0から前記所定の負荷容量まで瞬時に増加するように投入する第1の投入制御と、前記第1の投入制御の後から前記発電機の発電電力が安定するまでの間、前記1つの模擬負荷における前記所定の負荷容量を維持する維持制御と、前記維持制御の後、前記複数の模擬負荷のうちの前記1つの模擬負荷とは異なる他の1つの模擬負荷に対して、昇負荷レートが0%/minより大きく60%/min以下を満たすように前記所定の負荷容量まで増加させる第2の投入制御と、を少なくとも含む制御を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラムによれば、商用電力系統や常用電源からの受電の停止後に求められる発電機の起動および運転を長期に亘り安定して実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による発電システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による発電システムの制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による発電システムの制御装置による制御の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、1つの模擬負荷を制御した場合の模擬負荷の投入率とエンジン発電機の力率との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、複数の模擬負荷を同時に制御した場合の模擬負荷の投入率とエンジン発電機の力率との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、複数の模擬負荷を個別に制御した場合の模擬負荷の投入率とエンジン発電機の力率との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による発電システムの制御装置による制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態による発電システムの制御装置による制御方法を説明するためのグラフである。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態による発電システムの効果を説明するための模擬負荷の投入率、発電機の出力、および発電機の力率を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態による発電システムにおける昇負荷レートごとの負荷設定率および発電出力を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施形態による発電システムにおける効果を説明するための表である。
【
図13】
図13は、本発明の第2の実施形態による発電システムの制御装置による制御方法を説明するためのグラフである。
【
図14】
図14は、本発明の第3の実施形態による発電システムの制御装置による制御方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0021】
まず、本発明の実施形態による発電システムについて説明する。以下に説明する実施形態は、エンジン発電機、模擬負荷、および制御部を備える発電システムに関するが、その他の発電システムであってもよい。エンジン発電機20は、調速機(図示せず)が設けられた内燃機関21の駆動によって発電する。エンジン発電機20は、発電電力を電力負荷50に供給する発電時において、所定のエンジン制御部(図示せず)によって、出力が定格出力以下の任意の出力になるように制御される。本発明の実施形態による発電システムは、制御装置10が、電力負荷50の投入、遮断操作、または運転負荷率の変更によるエンジン発電機20の発電電力の変化を低減するように、模擬負荷の消費電力を増加させたり減少させたりするシステムである。
図1は、本実施形態による発電システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、実施形態による発電システム1は、制御装置10、エンジン発電機20、模擬負荷消費電力調整器31によって調整される模擬負荷群30、商用電力系統40、および電力負荷50を備える。
【0023】
発電システム1において、エンジン発電機20の出力側には、出力する電力を計測可能な発電電力計測部61が設けられている。電力負荷50の入力側には、供給される電力を計測可能な電力負荷消費電力計測部62が設けられている。模擬負荷消費電力調整器31の入力側には、供給される電力を計測可能な模擬負荷消費電力計測部63が設けられている。
【0024】
発電機としてのエンジン発電機20は、内燃機関21および発電機22を有する。エンジン発電機20は、燃料を用いた内燃機関としてのエンジンによって回転運動を発生させて、発電機22の回転子を回転させることによって発電可能に構成される。なお、内燃機関21は、発電機22によって発電可能な機関であれば、エンジンなどの内燃機関21に限定されない。また、内燃機関21はあくまでも例に過ぎず、内燃機関21の代わりに、蒸気タービンやガスタービンなどの外燃機関や、その他の調速機を備えた発電可能な動力機関を採用することが可能である。
【0025】
模擬負荷群30は、複数の模擬負荷301,302,303,304を有して構成される。模擬負荷301~304はそれぞれ、所定の電力を消費する例えば負荷抵抗器などから構成される。模擬負荷301~304はそれぞれ、エンジン発電機20の発電電力の少なくとも一部を消費することによって、エンジン発電機20の発電電力の変動を抑制して、安定化させるための負荷であり、電力負荷50とは独立して設けられる。なお、模擬負荷301~304は、エンジン発電機20の発電電力を消費する負荷である点に関しては、電力負荷50と共通する。
【0026】
模擬負荷調整部としての模擬負荷消費電力調整器31は、制御装置10から入力される調整信号に基づいて、模擬負荷群30が消費する電力を調整する装置である。模擬負荷消費電力調整器31は、模擬負荷301~304のそれぞれに対応した模擬負荷調整器311,312,313,314を有して構成され、複数の模擬負荷301~304をそれぞれ独立に制御可能に構成される。すなわち、模擬負荷301~304はそれぞれ、模擬負荷調整器311~314によって、負荷の大きさを調整可能に構成される。これにより、模擬負荷調整器311~314はそれぞれ、制御装置10から入力される調整信号に基づいて、模擬負荷301~304の消費電力を調整可能に構成される。換言すると、模擬負荷消費電力調整器31は、模擬負荷群30の消費電力を0から設定された所定の負荷容量まで増加させるように調整可能に構成される。調整信号は、模擬負荷群30の消費電力の増減を制御するための情報を含む。
【0027】
なお、本実施形態においては、模擬負荷群30は、模擬負荷301~304が4台設けられた構成としているが、複数の模擬負荷を有していれば、4台以外であってもよい。また、後述する制御方法を効率よく実行するためには、模擬負荷の台数は、典型的には2台以上10台以下、好適には3台以上6台以下、より好適には4台または5台である。この場合、模擬負荷調整器も、模擬負荷の設置台数に対応して設けられ、模擬負荷と一対で設けられる。すなわち、模擬負荷および模擬負荷調整器の組として、典型的には2組以上10組以下、好適には3組以上6組以下、より好適には4組または5組である。また、それぞれの模擬負荷301~304はそれぞれ、内燃機関21が駆動している状態でエンジン発電機20の発電電力を消費可能、かつ消費電力を調整可能に所定の負荷容量を設定する事が可能である。
【0028】
商用電力系統40は、例えば電力会社などからの電力系統である。なお、本明細書においては、常用電源なども含めて、商用電力系統40と称する。電力負荷50は、設備を稼働させるために必要な電力が供給される負荷であり、具体的に例えばポンプやモータなどの負荷である。なお、電力負荷50は、例えばポンプやモータに限定されず、従来公知の種々の負荷が用いられる。
【0029】
発電電力計測部61は、エンジン発電機20に接続された電力供給線に接続され、エンジン発電機20が出力した発電電力の計測値を制御装置10に出力する電力計である。電力負荷消費電力計測部62は、電力負荷50に接続された電力供給線に接続され、電力負荷50が消費した消費電力の計測値を制御装置10に出力する電力計である。模擬負荷消費電力計測部63は、模擬負荷群30または模擬負荷消費電力調整器31に接続された電力供給線に接続され、模擬負荷群30が消費した消費電力の計測値を制御装置10に出力する電力計である。なお、模擬負荷消費電力計測部63は、それぞれの模擬負荷301~304の入力側に、それぞれの模擬負荷301~304に対応させて複数台設けてもよい。また、発電電力計測部61、電力負荷消費電力計測部62、および模擬負荷消費電力計測部63は、電力の増減を評価可能な計測器であれば、電力計に限定されず、例えば電流計などの種々の計測器を採用することが可能である。
【0030】
制御装置10は、エンジン発電機20の発電電力、電力負荷50の消費電力、および模擬負荷群30の消費電力の計測値を取得して、模擬負荷消費電力調整器31によって模擬負荷群30の消費電力の増減を制御する装置である。
図2は、本実施形態による発電システム1の制御装置10を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、制御装置10は、判定制御部11、加算部12、差分演算部13、制御感度演算部14、制御出力演算部15、および記憶部16を備える。制御装置10には、それぞれの発電電力計測部61、電力負荷消費電力計測部62、および模擬負荷消費電力計測部63から計測値が入力される。制御装置10は、模擬負荷消費電力調整器31の模擬負荷調整器311~314にそれぞれ、制御信号(調整信号)を出力する。
【0032】
判定制御部11、加算部12、差分演算部13、制御感度演算部14、および制御出力演算部15は、具体的に、ハードウェアを有する、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。
【0033】
記憶部16は、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、もしくはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部16を構成してもよい。記憶部16には、制御装置10の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による模擬負荷群30の消費電力の増減制御を実現する電力増減制御プログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0034】
制御装置10においては、記憶部16に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。本実施形態においては、制御装置10によるプログラムの実行によって、判定制御部11、加算部12、差分演算部13、制御感度演算部14、および制御出力演算部15の処理が実行される。
【0035】
判定制御部11は、発電電力計測部61から取得する発電電力の計測値と、電力負荷消費電力計測部62および模擬負荷消費電力計測部63の少なくとも一方から取得する消費電力の計測値とに基づいて、制御モードを判定して選択する。判定制御部11は、選択した制御モードに基づいて、模擬負荷消費電力調整器31に制御信号(調整信号)を出力して制御する。
【0036】
本実施形態による発電システム1における判定制御部11は、例えば以下の3つの電力制御モード部を有する。本実施形態による発電システム1が備える制御装置10の判定制御部11が、以下の電力制御モードを実行する主たる制御部として機能する。具体的にまず、判定制御部11は例えば、第1電力制御モード部111、第2電力制御モード部112、および第3電力制御モード部113から、1つの制御モード部を選択する。続いて判定制御部11は、選択した電力制御モード部が実行する電力制御モードに基づいて模擬負荷消費電力調整器31の模擬負荷調整器311~314をそれぞれ制御する。これによって、模擬負荷301~304のそれぞれの消費電力を制御して、模擬負荷群30の全体の消費電力を制御する。ここで、第1電力制御モード部111、第2電力制御モード部112、および第3電力制御モード部113のそれぞれが実行する、それぞれの電力制御モードの詳細について説明する。
【0037】
判定制御部11が第1電力制御モード部111を選択して実行される第1電力制御モードは、放出電力の減少を開始する電力制御モードである。すなわち、商用電力系統40の停電時においては、電力負荷50において負荷電力は、例えば投入の開始時点などから過渡的に増加する場合がある。この場合、判定制御部11の第1電力制御モード部111は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷群30の消費電力(放出電力)を、電力負荷50の負荷電力の増加分だけ低下させるように変更する。これにより、電力負荷50が消費する負荷電力に合わせて、放出電力が減少され、エンジン発電機20の発電電力を略一定に維持することができる。
【0038】
判定制御部11が第2電力制御モード部112を選択して実行される第2電力制御モードは、模擬負荷群30の放出電力の減少や増加を所定時間停止させたり、模擬負荷群30の負荷を所定時間一定に維持したりする電力制御モードである。すなわち、第2電力制御モード部112は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷群30の放出電力が減少しない状態または一定の状態になるように維持する。
【0039】
第3電力制御モード部113により実行される第3電力制御モードは、模擬負荷群30の放出電力を増加させる電力制御モードである。すなわち、第3電力制御モード部113は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷群30の放出電力を増加させる。商用電力系統40の停電時においては、電力負荷50における負荷電力が継続して漸近的に減少する場合がある。そこで、第3電力制御モード部113は、模擬負荷消費電力調整器31を制御して、模擬負荷群30における放出電力を、電力負荷50の消費する負荷電力の増加率の絶対値、すなわち減少率よりも大きい増加率で増加させる。換言すると、電力負荷50の負荷電力の低下に追従して低下した発電電力を、模擬負荷群30の放出電力の増加率を、電力負荷50の負荷電力の減少率より大きくすることで調整する。これにより、エンジン発電機20の発電電力を略一定に維持することができる。
【0040】
以上の第1電力制御モード、第2電力制御モード、および第3電力制御モードを切り替えることによって、エンジン発電機20による発電電力を略一定に維持する制御を、エンジン発電機20に対する電力増減制御という。
【0041】
加算部12は、電力負荷消費電力計測部62の計測値と、模擬負荷消費電力計測部63の計測値とを取得して加算し、差分演算部13に出力する。すなわち、加算部12は、模擬負荷群30の消費電力と電力負荷50の消費電力との合計の消費電力を、差分演算部13に出力する。
【0042】
差分演算部13は、模擬負荷群30と電力負荷50との合計の消費電力と、エンジン発電機20の発電電力との差分を演算して、制御出力演算部15に出力する。換言すると、差分演算部13は、発電電力に対する消費電力の差分を演算する演算部である。差分演算部13が発電電力と消費電力との差分を算出することによって、エンジン発電機20による発電電力を略一定にするために必要な模擬負荷群30に対する消費電力の制御値を算出できる。
【0043】
制御感度演算部14は、差分演算部13によって求められた、発電電力を略一定にするために必要な模擬負荷群30の消費電力の制御値を、模擬負荷消費電力調整器31に出力する感度を演算する。すなわち、制御感度演算部14は、模擬負荷群30の消費電力の制御値をどの程度の感度で出力するかを演算する。制御感度演算部14は、演算によって得られた感度の情報を制御出力演算部15に出力する。
【0044】
制御出力演算部15は、差分演算部13によって得られた、発電電力を略一定にするために必要な模擬負荷群30の消費電力の制御値と、制御感度演算部14によって得られた感度の情報とを含む制御情報を生成する。制御出力演算部15は、生成した制御情報を判定制御部11に出力する。判定制御部11においては、制御出力演算部15において得られた模擬負荷消費電力調整器31に出力する制御情報を適切な制御信号に変換して、模擬負荷消費電力調整器31に出力する。
【0045】
次に、以上のように構成された制御装置10によって実行される制御方法としての模擬負荷群30による消費電力(以下、放出電力という)の制御方法について説明する。まず、本実施形態による模擬負荷群30に対する消費電力の制御方法についての理解を容易にするために、本発明者による鋭意検討について説明する。
図3は、本実施形態による発電システム1のエンジン制御部(図示せず)および制御装置10によるエンジン発電機20に対する制御の一例を示すグラフである。
【0046】
まず、
図3に示すように、電力負荷50を有する施設や、商用電力系統40などにおける停電を検知したときに、エンジン発電機20が電力負荷50から解列された状態を想定する。エンジン制御部(図示せず)は、電力負荷50がエンジン発電機20から解列した状態で、エンジン発電機20を無負荷定格速度運転させることにより安定させる。その後、制御装置10により、模擬負荷によるエンジン発電機20の昇負荷運転を開始させる。なお、本明細書においては、電力負荷50がエンジン発電機20から解列した状態で、エンジン発電機20が無負荷定格速度運転によって安定している状態から、模擬負荷群30を用いたエンジン発電機20に対する昇負荷を「起動」という。これにより、エンジン発電機20の電力の放出が開始されて出力が増加する。エンジン発電機20が起動を開始した起動開始時点T
1から所定の起動時間だけ経過すると、エンジン発電機20の起動動作が終了する。起動動作の終了時においては、エンジン発電機20が整定して発電電力が安定して、電力負荷50を投入可能になる(安定時点T
2)。エンジン発電機20の発電電力が安定して安定時点T
2が経過すると、電力負荷50の投入が開始される(負荷投入開始時点T
3)。
【0047】
負荷投入開始時点T3においてエンジン発電機20の発電電力に電力負荷50が投入されると、制御装置10によって電力増減制御が実行され、電力負荷50が消費する負荷電力に応じて放出電力が調整される。本実施形態においては、以下の(A)式に従って負荷電力の増減に対応して放出電力を増減させることにより、エンジン発電機20による発電電力を略一定に維持することができる。これにより、発電システム1において、放出電力の電力増減制御により、エンジン発電機20を一定負荷で運転させて、大きな負荷変動によるエンジン発電機20における内燃機関21の失速を回避することができる。
放出電力=発電電力-負荷電力 …(A)
【0048】
ここで、エンジン発電機20の起動の開始時点においては、模擬負荷のみで昇負荷させ、かつエンジン発電機20を安定して昇負荷させるために、模擬負荷による消費電力を線形状に増加させることが好ましい。しかしながら、本発明者は、従来の発電システムにおいてエンジン発電機20を起動させる場合、模擬負荷のみで昇負荷させ、かつエンジン発電機20を安定して昇負荷させるために、模擬負荷による消費電力を線形状に増加させていくと、力率が急激に低下してしまってエンジン発電機20にトリップが生じる場合があることを知見した。すなわち、本発明者は、起動開始時点T
1においてエンジン発電機20を起動させる場合に、
図3に示す時間帯(起動期間δ1)においてエンジン発電機20がトリップする場合があることを知見した。
【0049】
そこで、本発明者は、電力負荷50に相当する負荷を用いてあらかじめ所定の負荷(以下、初期負荷)を投入させた状態でエンジン発電機20を起動させ、模擬負荷群30の負荷投入率MV(%)とエンジン発電機20の力率との関係について実験を行った。なお、本明細書において、負荷投入率(MV)(%)とは、設定出力に対する模擬負荷の出力の割合(%)で定義されるが、これは負荷設定率ともほぼ同義であるため、以下、負荷設定率(以下、MVともいう)(%)と称する。
図4、
図5、および
図6はそれぞれ、本発明者が発電システム1において行った、1つの模擬負荷が設けられた場合、複数の模擬負荷が設けられた場合、および複数の模擬負荷を個別に制御した場合の実験における、模擬負荷の投入率とエンジン発電機の力率との関係を示すグラフである。
【0050】
まず、本発明者は、模擬負荷群30のうちの1台の模擬負荷301を用いて実験を行った。ここで、初期負荷をエンジン発電機20の設定出力に対してそれぞれ、20%、15%、10%、および5%にした。その結果を
図4に示す。なお、模擬負荷301の最大の負荷は150kWとした。なお、設定出力は規定出力とも称される。ここで、設定出力とは、停電時において発電設備を自立運転させる際に、電力負荷の変動に対してエンジン発電機20の運転を安定させるために必要な模擬負荷群30の総容量である。また、模擬負荷群30は、停電時に施設が自立運転する際に消費する電力負荷50とは異なり、施設にとって必ずしも必要としない負荷である。加えて、例えば負荷抵抗器を用いる場合、
図3に示す放出電力は電力を熱に変換し、大気へ放出することにより、エネルギー的には非効率となる。これにより、模擬負荷群30の総容量は、第1に停電時に施設が自立運転する際に消費する電力負荷50の総容量を確保し、第2に各電力負荷の始動方式に伴う過渡的な電力変動が発生しても安定して発電設備の運転を維持可能な最小容量によって決定する必要がある。さらに、電力負荷50の総容量は、発電設備において確実に給電できる容量であることから、定格出力以下となり、施設によっては、商用電力系統40と接続されている場合に設備の電力負荷50への給電に加えて、売電することもある。そのため、設定出力は、発電設備の定格出力とは必ずしも一致せず、設定出力が定格出力未満(設定出力<定格出力)になる場合もある。
【0051】
図4から、初期負荷を20%にした場合、模擬負荷301のMVを0%から増加させるのに伴って力率が1から低下し、MV(%)が約40%~50%で力率が最小の0.93程度にまで低下することがわかる。また、模擬負荷301のMVを40%から増加させるのに伴って力率は0.93から1まで増加することが分かる。同様に、初期負荷を15%にした場合、模擬負荷301のMVを0%から100%まで増加させる間に、力率は、MV(%)が約40%程度で最小の0.9程度にまで低下した後に1まで増加することが分かる。初期負荷を10%にした場合には、模擬負荷301のMV(%)を0%から100%まで増加させる間に、力率は、MV(%)が約40%程度で最小の0.85程度にまで低下した後に1まで増加することが分かる。ここで、本発明者がさらに検討を行ったところ、模擬負荷301のMV(%)が約40%~50%の場合に力率が最小となるのは、高調波の発生に起因することを知見するに至った。
【0052】
さらに、初期負荷を5%にした場合には、模擬負荷301のMVを0%から増加させると、増加の途中でエンジン発電機20の重故障発報条件cosθmin以下になって、エンジン発電機20がトリップすることが判明した。具体的に、エンジン発電機20の設定出力が600kWである場合には、初期負荷を30kW以下にすると、模擬負荷301のMV(%)を増加させて負荷を100%にするまで上昇(以下、昇負荷)させることが困難になることが判明した。換言すると、初期負荷は本来0%とすべきであるが、初期負荷を5%とした場合でも模擬負荷301のMV、すなわち消費電力の設定を増加させるのに伴って力率が急激に低下し、エンジン発電機20の重故障条件に到達してしまう。そのため、初期負荷を0%としてエンジン発電機20の昇負荷を実行させることは、極めて困難であることが判明した。
【0053】
本発明者は、模擬負荷を複数、例えば複数の模擬負荷301,302を設け、模擬負荷301,302を併せて昇負荷させてエンジン発電機20を起動させる実験を行った。なお、模擬負荷301,302の最大の負荷は2台分で(2×150=)300kWとした。その結果を
図5に示す。
図5から、この場合においても、エンジン発電機20の昇負荷における傾向は、
図4と同様であることが分かる。また、初期負荷を10%とした場合に、模擬負荷301のMV(%)を0%から増加させると、増加の途中で重故障発報条件cosθ
min以下になって、エンジン発電機20がトリップすることが判明した。具体的に、エンジン発電機20の設定出力が600kWである場合には、初期負荷を60kW以下にすると、エンジン発電機20を昇負荷させることが困難になることが判明した。
【0054】
さらに、本発明者は、模擬負荷を複数、例えば複数の模擬負荷301~304を設け、模擬負荷301~304を1台ずつ順に、MV(%)を0%から100%に増加させて、エンジン発電機20を昇負荷させる実験を行った。なお、模擬負荷301~304は1台当たりの負荷は、150kWとした。その結果を
図6に示す。
図6から、この場合においても、エンジン発電機20の昇負荷における傾向は、
図4と同様であることが分かる。すなわち、複数の模擬負荷301~304のMV(%)を1台ずつ増加させていくと、1台目の模擬負荷301の段階で、
図4と同等の条件になるため、模擬負荷301のMV(%)を0%から増加させると、増加の途中で重故障発報条件cosθ
min以下になって、エンジン発電機20がトリップしてしまう。
【0055】
本発明者は、以上の実験に基づいて、さらに鋭意検討を行い、エンジン発電機20をトリップさせることなく、起動時の昇負荷を実現する制御方法を案出した。すなわち、本発明者は、エンジン発電機20に対して互いに独立して負荷を投入可能な複数の模擬負荷を設け、複数の模擬負荷をエンジン発電機20に投入する際に、一部の模擬負荷として1台目の模擬負荷の負荷容量をあらかじめ設定された負荷容量まで無段階で瞬時に上昇させ、残部の模擬負荷である2台目以降の模擬負荷に関しては、1台ずつ順次、設定された負荷容量まで増加させるように制御する制御方法を案出した。ここで、1台目の模擬負荷を無段階で上昇させる負荷容量は、エンジン発電機20が負荷投入に伴う周波数低下や不足電圧によるトリップを生じない負荷容量以下に選択される。本実施形態においては、例えば模擬負荷として負荷抵抗器でそれぞれ構成し、全体負荷容量が約400kWとする場合、エンジン発電機20の場合では定格出力(585kW)の25%(約145kW)がトリップを生じない負荷容量の上限になる。そのため、4台の模擬負荷で全体負荷容量を均等に分担させる、すなわち、それぞれの負荷容量は約100kWとなる。以下に説明する本発明は、本発明者による以上の鋭意検討により案出されたものである。
【0056】
次に、本発明の第1の実施形態における制御装置10による制御方法について説明する。
図7は、第1の実施形態における制御装置による制御方法を説明するためのフローチャートである。
図8は、第1の実施形態における制御装置10による
図7に対応する制御の一例を示すグラフである。
図8に示すSTは、
図7に示すステップに相当する。
図7に示すフローチャートは、商用電力系統40が停電状態になってエンジン発電機20が電力負荷50から解列された後、エンジン発電機20の起動で開始される。
【0057】
図7および
図8に示すように、ステップST1において制御装置10は、エンジン発電機20の起動時に、複数台の模擬負荷301~304のうちの1台の模擬負荷301の負荷を投入する調整信号を、模擬負荷消費電力調整器31に対して出力する。なお、「エンジン発電機20の起動時」とは、エンジン発電機20の仕様や性能(スペック)などによって変動はあるものの、所定のエンジン制御部(図示せず)によるエンジン発電機20に対する昇負荷の指示がされた時点に対する前後の短時間の時間間隔、第1の実施形態によるエンジン発電機20においては、例えば±1秒程度の時間間隔を意味する。すなわち、制御装置10は、模擬負荷消費電力調整器31の模擬負荷調整器311に調整信号を出力して、模擬負荷301をエンジン発電機20に投入する。ここで、本実施形態においては、第1の投入制御として、模擬負荷301の負荷が0%から100%にステップ状に増加するようにエンジン発電機20に投入する。すなわち、エンジン発電機20に投入する模擬負荷301の負荷容量を、0%から100%まで瞬間的に増加させる第1の投入制御を行う。ここで、
図7に示す例では模擬負荷301の100%の負荷容量を、エンジン発電機20の設定出力に対してX%の負荷容量に設定することで、エンジン発電機20の起動時に直前に、エンジン発電機20に対して設定出力のX%の負荷がステップ状に投入される。なお、X%は、エンジン発電機20のトリップが生じない負荷容量以下であれば種々の値を採用できる。第1の実施形態においては、4台の模擬負荷301~304の負荷容量を互いに等しくしつつ、合計の負荷容量をエンジン発電機20の設定出力と略等しくしている。これにより、模擬負荷301~304のそれぞれの負荷容量は、エンジン発電機20の設定出力の25%になる。なお、模擬負荷301~304の負荷容量をそれぞれ異なる負荷容量とすることも可能である。
【0058】
その後、ステップST2に移行して、制御装置10は、1台目の模擬負荷301の投入に伴うエンジン発電機20の出力の変動が安定したか否かを判定する。エンジン発電機20に対して模擬負荷301の負荷容量の0%から100%までを瞬間的に投入すると、エンジン発電機20が整定、つまり発電出力が安定するまで一定の期間を要する場合がある。制御装置10は、エンジン発電機20の発電電力の出力が整定するまでの間(ステップST2:No)、ステップST2においてエンジン発電機20の出力が安定するまで待機する。制御装置10が、エンジン発電機20の出力が安定状態であると判定した場合(ステップST2:Yes)、ステップST3に移行する。
【0059】
ステップST3において制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは2台目の模擬負荷302を、エンジン発電機20に対して、負荷容量の0%から100%まで線形状または階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器312に出力して模擬負荷302の負荷を制御することにより、エンジン発電機20に対して模擬負荷302の負荷を0%から増加させつつ100%まで投入する。これにより、エンジン発電機20に対して投入される負荷容量は、エンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで増加する。
図8に示す例では、模擬負荷302の負荷を線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで投入している。なお、第1の実施形態においてY%は、例えば50%である。
【0060】
ここで、模擬負荷302の負荷を増加させてMVをエンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで投入する場合の昇負荷レートα(%/min)として、0%/minより大きく60%/min以下とする。ここで、第1の実施形態においては、昇負荷レートαを例えば60(%/min)とする。なお、昇負荷レートを60(%/min)以下とする理由の詳細については後述する。
【0061】
ここで、本明細書における昇負荷レートα(%/min)の定義について説明する。まず、昇負荷レートαにおける「%」は、負荷設定率であるMV(%)の「%」を意味する。また、昇負荷レートαの対象となる時間は、
図8に示す第1の投入制御および維持制御が完了した時点T
ST2、すなわちステップST2の完了時点であるMVがX%の時点から、MVが100%となる所定の負荷になるまでの時間以下の時間であって、発電設備の出力規模や接続される模擬負荷の台数なども影響するが、少なくとも10秒以上の時間を必要とするものである。すなわち、MVが、X%になって安定した時点から100%になるまでの時間や、X%になって安定した時点からY%になるまでの時間、Y%からZ%になるまでの時間、Y%から100%になるまでの時間、X%になって安定した時点からZ%になるまでの時間であって、10秒以上の時間である。換言すると、制御装置10が、エンジン発電機20の出力が安定状態であると判定した時点から、MVが100%になるまでの時間内における任意の時間であって10秒以上の時間を、昇負荷レートαの対象時間とする。なお、昇負荷レートαはステップ状、すなわち負荷をMVまで瞬時に投入するような無段階投入ではなく、目標とするMV(%)になるまで所定の時間を要する投入方法である。ステップST3においては、昇負荷レートαを例えば60(%/min)とし、模擬負荷302の負荷を0%から100%まで線形的に増加させる。第1の実施形態において具体的に例えば、X%が25%でありY%が50%である場合、X%からY%まで増加させる時間tは、(50-25)/60(min)以下とすることが好ましい。
【0062】
次に、ステップST4に移行して制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは3台目の模擬負荷303を、エンジン発電機20に対して、負荷容量の0%から100%まで線形状または階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器313に出力して模擬負荷303の負荷を制御することにより、エンジン発電機20に対して模擬負荷303の負荷を0%から増加させつつ100%まで投入する。これにより、エンジン発電機20に対して投入される負荷容量は、エンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで増加する。この場合においても、昇負荷レートαは0%/minより大きく60%/min以下(0<α≦60)を満たす形とする。
図8に示す例では、模擬負荷303の負荷を線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで投入している。なお、第1の実施形態においてZ%は、例えば75%である。
【0063】
次に、
図7に示すステップST5に移行して制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは4台目の模擬負荷304を、エンジン発電機20に対して、負荷容量の0%から100%まで線形状または階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器314に出力して模擬負荷304の負荷を制御することにより、昇負荷レートα(%/min)を0<α≦60としつつ、エンジン発電機20に対して模擬負荷304の負荷を0%から増加させて100%まで投入する。これにより、エンジン発電機20に対して投入される負荷容量は、エンジン発電機20の設定出力のZ%から100%まで増加する。
図8に示す例では、模擬負荷304の負荷を線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のZ%から100%まで投入している。
【0064】
なお、上述したX%、Y%、およびZ%はそれぞれ任意に設定することが可能である。すなわち、模擬負荷301~304に対して任意の制御範囲を割り当てて、それぞれの模擬負荷301~304に対して個別に制御して、昇負荷レートαは0%/minより大きく60%/min以下(0<α≦60)としつつ、それぞれの模擬負荷301~304におけるMVを0%から100%まで増加させる。その結果、模擬負荷群30におけるMVを100%にした場合に、エンジン発電機20の設定出力、例えば定格出力の70%程度まで負荷が投入される。
【0065】
その後、ステップST6に移行して制御装置10は、例えば施設などに設けられた電力負荷50をエンジン発電機20に投入できる条件(電力負荷投入条件)が成立したか否か、すなわち、エンジン発電機20による発電電力の出力が安定したか否か判定する。制御装置10は、エンジン発電機20からの発電電力の出力が安定するまで電力負荷50の投入は待機される(ステップST6:No)。一方、制御装置10が、エンジン発電機20の電力負荷投入条件が成立したと判定した場合(ステップST6:Yes)、ステップST7に移行する。
【0066】
ステップST7において制御装置10は、電力負荷50をエンジン発電機20に投入するとともに、第1~第3電力制御モードを選択して制御する電力増減制御を開始する。ステップST7における電力増減制御において制御装置10は、模擬負荷調整器311~314に対して調整信号を出力して、電力負荷50の負荷電力の増減に応じて、模擬負荷301~304の負荷を調整する。これによって、上述した(A)式に示すように、エンジン発電機20の発電電力を略一定に制御する。以上により、第1の実施形態による制御装置10によるエンジン発電機20に投入する負荷の制御処理、すなわち模擬負荷群30および模擬負荷消費電力調整器31に対する制御処理が終了する。
【0067】
上述した実施形態による制御処理は、
図3に示す起動期間δ1に対して適用する場合を例に説明したが、電力負荷50が投入された後の稼働期間δ2においても、同様の制御を実行することができる。すなわち、制御装置10による電力増減制御において、模擬負荷群30における模擬負荷301~304を同時に制御する方法以外にも、これらの模擬負荷301~304を個別に制御して、必要とされる放出電力を消費する模擬負荷301~304を順次投入することにより、エンジン発電機20における力率の低下を抑制できるので、放出電力の制御をより安定して実行することが可能になる。
【0068】
以上説明した第1の実施形態による制御方法によって、互いに負荷容量が等しい4台のヒータをそれぞれ模擬負荷301~304として用い、エンジン発電機20を起動させた場合のグラフを
図9に示す。なお、昇負荷レートαを45(%/min)とする。
図9において、横軸は、1台目の無段階での昇負荷後の維持期間経過後、2台目以降の模擬負荷の昇負荷が開始してからの経過時間(s)を示し、左縦軸に対しては、エンジン発電機20の出力した電力を点線、4台のヒータの出力した電力の合計を実線、上述した第1の実施形態による制御方法によって4台のヒータを制御した場合の全体のMV(ここでは、ヒータ電流制御によるMV(%))を一点鎖線として示す。右縦軸に対しては、エンジン発電機20の力率を2点鎖線で示す。なお、2本の太破線は、重故障発報条件の一例を示し、上の太破線は力率が0.79(20秒で発報)、下の破線は力率が0.7(5秒で発報)である。
【0069】
図9から、1台目のヒータ(模擬負荷301)の負荷を瞬間的に0~100%まで増加させて、エンジン発電機20の設定出力の25%まで瞬間的に投入していることにより、1台目のヒータ(模擬負荷301)の模擬負荷調整器311がパススルー状態になって、力率の低下を解消できていることが分かる。すなわち、
図9から、2台目のヒータ(模擬負荷302)の負荷を線形状に増加させた場合であっても、エンジン発電機20の力率は0,95程度までの低下にとどまっていることが分かる。なお、3台目、4台目のヒータ(模擬負荷303,304)の負荷を線形状に増加させた場合であっても、ヒータをそれぞれ個別に制御することによって、重故障発報条件に対して十分な力率の裕度を確保できることが分かる。
【0070】
本発明者の知見によれば、エンジン発電機20の力率は、投入された負荷が消費する「有効電力」と「無効電力」との割合から導出される。また、1台目の模擬負荷301をステップ状にX%まで、上述した第1の実施形態においては25%まで瞬間的に増加させて投入すると、模擬負荷調整器311における0%および100%においては、力率の低下が生じない(
図4~
図6参照)。そのため、1台目の模擬負荷調整器311による模擬負荷301を投入する負荷容量の設定を100%とすることによって、エンジン発電機20の力率の低下を招くことなく、さらなる模擬負荷302~304を投入することができる。2台目以降の模擬負荷302~304を、階段状、または線形状に投入させた場合であっても、すでに模擬負荷301によって力率の低下が生じない負荷が投入されていることから、無効電力が増加したとしても、極端な力率の低下が生じないと考えられる。さらに、順次投入される模擬負荷302~304の台数が増加するのに従って、模擬負荷301~304の全体に対する力率が1となる負荷の割合が増加するため、力率が低下する影響に関しては、投入された模擬負荷の台数に伴って緩和される。そのため、
図9に示すように、模擬負荷302~304に相当する2台目~4台目のヒータをエンジン発電機20の負荷として投入した場合に、力率の低下量がヒータの台数の増加に伴って減少していると考えられる。
【0071】
また、第1の実施形態による制御方法によって、内燃機関21としてガスエンジンを用いるとともに、4台のヒータをそれぞれ模擬負荷301~304として用いた実験条件として、昇負荷レートαを種々の値に変更させて実験を行った。なお、この実験においては、内燃機関21としてのガスエンジンの定格出力を例えば585kWとし、設定出力を定格出力の70%程度の410kWとしている。
図10は、このような実験条件下において、エンジン発電機20を起動させた場合のグラフを示す。なお、
図10において、左縦軸に対しては、エンジン発電機20の出力した電力を、昇負荷レートαごとにそれぞれ、実線(94%/min)、点線(60%/min)、破線(45%/min)、二点鎖線(24%/min)、および一点鎖線(12%/min)として示す。左縦軸に対しては上側のグラフが対応する。一方、右縦軸に対しては、第1の実施形態による制御方法によって4台のヒータを制御した場合の全体のMV(ここではヒータ電流制御によるMV(%))を、昇負荷レートαごとにそれぞれ、実線(94%/min)、点線(60%/min)、破線(45%/min)、二点鎖線(24%/min)、および一点鎖線(12%/min)として示す。それぞれのグラフは、MV(%)の上昇とともに弧を描きながら昇負荷されている。昇負荷レートαが異なるため、任意の発電出力に到達する時間には差があり、これに伴って弧の形状は異なるものの、昇負荷レートα以外の要因、例えば、発電電圧や力率の低下に伴い、任意のMV(%)における発電出力が他の条件よりも低くなっている、または、ノッキングなどの機械的不具合が発生し、発電出力のグラフが瞬間的または周期的に変動するなどのグラフ形状の違いは確認できない。
【0072】
本発明者は、
図10に示す5つの条件によってエンジン発電機20を起動させて、故障の発生の有無の検証を行った。その結果を
図11に示す。ここで、これらの5つの条件によってエンジン発電機20を起動させ、故障の発生有無や発電電力(電圧、周波数、力率)、燃焼室温度、および冷却水温度のトレンドの安定性評価を行い、エンジン発電機20に与える負荷の影響度の評価を◎(故障無し)、〇(軽故障)、△(重故障)で表した。また、
図12は、
図11に示す評価のそれぞれの評価項目の判定基準を示す。
【0073】
図11から、昇負荷レートαを12%/min,24%/min、45%/minとした場合に、エンジン発電機20において軽故障が発生することもなく、昇負荷を安定して実行できることが分かる。昇負荷レートを60%/minとした場合、過渡的な軽故障、すなわち負荷の変動による一時的な冷却水温度の上昇などの発生が確認されたが、負荷の変動が完了した後は自動で正常状態に復帰したことが確認され、エンジン発電機20の起動に問題がないことが確認された。昇負荷レートαを94%/minとした場合、エンジン発電機20においては、燃焼室温度上昇や冷却水温度上昇に関する軽故障の発生のみならず、負荷変動完了後も冷却水温度がハンチングを続け、軽故障の発報と自動復帰を繰り返す現象が確認された。また、昇負荷レートが大きいことから電圧や周波数が整定値を維持できなくなり、一時的に増減する現象が確認された。その他、力率自体は維持できるものの、過給機からのサージング音が発生するなどの機械的な負荷も極めて大きいことが確認され、重故障の発生の可能性も懸念されることから、発電設備の状況を勘案すると昇負荷レートとしては、あまり好ましくないことが確認された。
【0074】
さらに、本発明者は、MV(%)を、エンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで、Y%からZ%まで、またはZ%から100%まで増加させる際に、昇負荷レートを60(%/min)より大きくして負荷をステップ状に増加させる方法についても検討を行った。
【0075】
本発明者は、動力機関として例えば蒸気タービンを用いた場合について検討を行ったところ、昇負荷をステップ状に行った場合に、蒸気タービンに急激な負荷変動を与えてしまう点に着目した。この場合、蒸気タービンに与える急激な負荷変動に起因して、トルクやエンタルピの変化も大きくなり、熱応力による材料の劣化、タービン軸の振動、および車室から車軸間の伸び差による接触などの不具合を生じる可能性が高くなる。そのため、負荷の増加をステップ状に行うことは好ましくないことが判明した。これに対し、第1の実施形態のように、昇負荷を線形状または階段状に行うと、無段階ではない一定期間での負荷の増加、または無段階ではない一定期間での負荷の増加後に発電設備を安定させるための整定期間が設けられることになるため、ステップ状に負荷を増加させる場合に生じる問題点を抑制することが可能になる。
【0076】
本発明者は、以上のようにして得た知見から、昇負荷レートα(%/min)としては0%/minより大きく60%/min以下(0<α≦60)とすることが好ましいことを想到した。さらに、本発明者が蒸気タービンやその他の動力機関に対して同様に検討を行ったところ、昇負荷レートαとしては、0%/minより大きく60%/min以下(0<α≦60)が好ましく、45%/min以上60%/min以下(45≦α≦60)がより好ましいことが確認された。
【0077】
以上説明した、本発明の第1の実施形態によれば、互いに独立に制御可能な複数台の模擬負荷301~304を、エンジン発電機20に負荷を投入可能な状態で接続させ、エンジン発電機20の起動時において、少なくとも1台の模擬負荷301を制御する模擬負荷調整器311に対して、少なくともエンジン発電機20がトリップしない負荷容量を、0%から100%までステップ状に瞬時に投入していることにより、残りの模擬負荷302~304をそれぞれ、順次0%から100%まで増加させるように投入した場合においても、エンジン発電機20を、トリップを回避しつつ安定して起動させることが可能になる。
【0078】
(第2の実施形態による制御方法)
次に、本発明の第2の実施形態における制御装置10による制御方法について説明する。第2の実施形態による制御方法を示すフローチャートは、
図7に示す第1の実施形態と同様である。第2の実施形態による制御方法としては、それぞれの模擬負荷301~304が互いに異なる昇負荷レート(線形)で昇負荷される場合について説明する。
【0079】
図13は、第2の実施形態における制御装置10による
図7に対応する制御の一例を示すグラフである。
図13に示すSTは、
図7に示すステップに相当する。
図7に示すフローチャートは、第1の実施形態と同様に、商用電力系統40が停電状態になってエンジン発電機20が電力負荷50から解列された後、エンジン発電機20の起動で開始される。
【0080】
第2の実施形態においては、
図7および
図13に示すように、第1の実施形態と同様にしてステップST1,ST2を実行する。制御装置10が、エンジン発電機20の出力が安定状態であると判定した場合(ステップST2:Yes)、ステップST3に移行する。ステップST3において制御装置10は、第2の投入制御として、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは2台目の模擬負荷302を、エンジン発電機20に対して、時点T
ST2から時点T
ST3までの間で負荷容量の0%から100%まで線形状または階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器312に出力して模擬負荷302の負荷を制御することにより、エンジン発電機20に対して模擬負荷302の負荷を、昇負荷レートを60(%/min)以下としつつY%まで増加させる。なお、
図13において、太点線は、昇負荷レートが60(%/min)を示す。これにより、エンジン発電機20に対して投入される負荷容量は、エンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで増加する。
図13に示す例では、傾きを60(%/min)以下の例えば45(%/min)としつつ、模擬負荷302の負荷を線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで投入している。なお、第2の実施形態においてY%は、例えば50%である。
【0081】
次に、ステップST4に移行して制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは3台目の模擬負荷303を、エンジン発電機20に対して、時点T
ST3から時点T
ST4までの間で負荷容量の0%から100%まで線形状または階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器313に出力して模擬負荷303の負荷を制御することにより、昇負荷レートを60(%/min)以下としつつ、エンジン発電機20に対して模擬負荷303の負荷を、エンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで増加させる。
図13に示す例では、傾きを60(%/min)以下の例えば60(%/min)としつつ、模擬負荷303の負荷を線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで投入している。なお、第2の実施形態においてZ%は、例えば75%である。
【0082】
次に、ステップST5に移行して制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは4台目の模擬負荷304を、エンジン発電機20に対して、時点T
ST4から時点T
2A(T
ST5)までの間で負荷容量の0%から100%まで線形状または階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器314に出力して模擬負荷304の負荷を制御することにより、昇負荷レートを(60%/min)以下としつつ、エンジン発電機20に対して模擬負荷304の負荷を、エンジン発電機20の設定出力のZ%から100%まで増加させる。
図13に示す例では、模擬負荷304の負荷を、昇負荷レートを60(%/min)以下の45(%/min)としつつ、線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のZ%から100%まで投入している。
【0083】
上述したX%、Y%、およびZ%はそれぞれ任意に設定することが可能である。すなわち、模擬負荷301~304に対して任意の制御範囲を割り当てて、それぞれの模擬負荷301~304に対して個別に制御して、それぞれの模擬負荷301~304における負荷設定率であるMVを0%から100%まで増加させる。その結果、模擬負荷群30におけるMVを100%にした場合に、エンジン発電機20の設定出力まで負荷が投入される。
【0084】
上述したステップST3,ST4,ST5における、制御装置10による負荷の増加においては、
図13中太線で示すように、それぞれの模擬負荷301~304における昇負荷レートをそれぞれ独立して設定されている。この場合、負荷の増加における発電出力の傾向は、
図13に示すように折れ線状になる。ここで、昇負荷レートはそれぞれ以下の(1-1)式、(1-2)式、および(1-3)式に示すように導出される。
ステップST3の昇負荷レート=(Y-X)/(T
ST3-T
ST2)…(1-1)
ステップST4の昇負荷レート=(Z-Y)/(T
ST4-T
ST3)…(1-2)
ステップST5の昇負荷レート=(100-Z)/(T
ST5-T
ST4)…(1-3)
第2の実施形態においては、(1-1)式~(1-3)式に示す昇負荷レートは、上限値の60%/min以下(
図13において(100-X)/(T
2-T
ST2)以下)である必要がある。
【0085】
その後、第1の実施形態と同様にして、ステップST6,ST7を実行する。以上により、第2の実施形態による制御装置10によるエンジン発電機20に投入する負荷の制御処理、すなわち模擬負荷群30および模擬負荷消費電力調整器31に対する制御処理が終了する。
【0086】
第2の実施形態によれば、エンジン発電機20の起動において、昇負荷レートを60(%/min)以下として負荷投入していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
(第3の実施形態による制御方法)
次に、本発明の第3の実施形態における制御装置10による制御方法について説明する。第3の実施形態による制御方法を示すフローチャートは、
図7に示す第1の実施形態と同様である。第3の実施形態による制御方法としては、それぞれの模擬負荷301~304が互いに異なる昇負荷レートで階段状、すなわち所定時間の負荷維持制御を間に挟みつつ昇負荷する場合について説明する。
【0088】
図14は、第3の実施形態における制御装置10による
図7に対応する制御の一例を示すグラフである。
図14に示すSTは、
図7に示すステップに相当する。
図7に示すフローチャートは、第1の実施形態と同様に、商用電力系統40が停電状態になってエンジン発電機20が電力負荷50から解列された後、エンジン発電機20の起動で開始される。
【0089】
第3の実施形態においては、
図7および
図14に示すように、第1の実施形態と同様にしてステップST1,ST2を実行する。制御装置10が、エンジン発電機20の出力が安定状態であると判定した場合(ステップST2:Yes)、ステップST3に移行する。ステップST3において制御装置10は、第2の投入制御として、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは2台目の模擬負荷302を、エンジン発電機20に対して、時点T
ST2から時点T
ST3eまでの間で負荷容量の0%から100%まで線形状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器312に出力して模擬負荷302の負荷を制御することにより、エンジン発電機20に対して模擬負荷302の負荷を、昇負荷レートを60(%/min)以下としつつY%まで増加させる。なお、
図14において、太点線は、昇負荷レートが60(%/min)を示す。これにより、エンジン発電機20に対して投入される負荷容量は、エンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで増加する。
図14に示す例では、傾きを60(%/min)以下の45(%/min)としつつ、模擬負荷302の負荷を線形的に増加させてエンジン発電機20の設定出力のX%からY%まで投入している。なお、第3の実施形態においてY%は、50%である。
【0090】
次に、ステップST4に移行して制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは3台目の模擬負荷303を、エンジン発電機20に対して、時点T
ST3eから時点T
ST4eまでの間で負荷容量の0%から100%まで階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器313に出力して模擬負荷303の負荷を制御することにより、一定の負荷維持制御時間および昇負荷レートを、60(%/min)以下を含みつつ、エンジン発電機20に対して模擬負荷303の負荷を、エンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで増加させる。
図14に示す例では、時点T
ST3eから時点T
ST4sまでの間において負荷の増加率を0(%/min)として投入負荷を一定に維持する制御を行った後、時点T
ST4sから時点T
ST4eまで、模擬負荷303の負荷の模擬負荷レートを60(%/min)にしつつ線形的に増加させて、エンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで投入する。なお、第3の実施形態においてZ%は、75%である。なお、第3の実施形態において、上述したように一定の負荷維持制御の時間を設けている理由は、発電設備(蒸気タービン)によっては、負荷を急激に上げた場合にケーシングと車軸の熱膨張の差が大きくなり、接触や故障の原因となったり、材料の疲労破壊などのリスクが増加したりするため、温度環境に発電設備自体を慣らす意味で必要となる場合があるものである。
【0091】
次に、ステップST5に移行して制御装置10は、複数台の模擬負荷301~304から2台目以降、ここでは4台目の模擬負荷304を、エンジン発電機20に対して、時点T
ST4eから時点T
2A(T
ST5e)までの間で負荷容量の0%から100%まで階段状に投入させる。すなわち、制御装置10は、調整信号を模擬負荷調整器314に出力して模擬負荷304の負荷を制御することにより、一定の負荷維持制御時間および昇負荷レートを、60(%/min)以下を含みつつ、エンジン発電機20に対して模擬負荷304の負荷を、エンジン発電機20の設定出力のZ%から100%まで増加させる。
図14に示す例では、時点T
ST4eから時点T
ST5sまでの間において負荷の増加率を0%/minとして投入負荷を一定とした後、時点T
ST5sから時点T
ST2A(T
ST5e)まで、模擬負荷303の負荷の増加率を60(%/min)にしつつ線形的に増加させて、エンジン発電機20の設定出力のY%からZ%まで投入する。
【0092】
上述したX%、Y%、およびZ%はそれぞれ任意に設定することが可能である。すなわち、模擬負荷301~304に対して任意の制御範囲を割り当てて、それぞれの模擬負荷301~304に対して個別に制御して、それぞれの模擬負荷301~304における負荷設定率であるMVを0%から100%まで増加させる。その結果、模擬負荷群30におけるMVを100%にした場合に、エンジン発電機20の設定出力まで負荷が投入される。
【0093】
上述したステップST3,ST4,ST5における、制御装置10による負荷の増加においては、
図14中太線で示すように、それぞれの模擬負荷301~304における昇負荷レートをそれぞれ独立して設定されている。この場合、負荷の増加における発電出力の傾向は、
図14に示すように折れ線状になる。ここで、昇負荷レートはそれぞれ以下の(2-1)式、(2-2)式、および(2-3)式に示すように導出される。
ステップST3の昇負荷レート=(Y-X)/(T
ST3e-T
ST2)…(2-1)
ステップST4の昇負荷レート=(Z-Y)/(T
ST4e-T
ST4s)…(2-2)
ステップST5の昇負荷レート=(100-Z)/(T
ST5e-T
ST5s)…(2-3)
第3の実施形態においては、(2-1)式~(2-3)式に示す昇負荷レートは、上限値の60%/min以下(
図14において(100-X)/(T
2-T
ST2)以下)である必要がある。
【0094】
その後、第1および第2の実施形態と同様にして、ステップST6,ST7を実行する。以上により、第3の実施形態による制御装置10によるエンジン発電機20に投入する負荷の制御処理、すなわち模擬負荷群30および模擬負荷消費電力調整器31に対する制御処理が終了する。
【0095】
第3の実施形態によれば、エンジン発電機20の起動において、昇負荷レートを60%/min以下として負荷投入していることにより、第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0097】
(記録媒体)
上述の実施形態において、制御装置10が実行する処理方法を実行させるプログラムを、コンピュータその他の機械などの装置(以下、コンピュータなど、という)が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータなどに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、当該コンピュータなどが制御装置10として機能する。ここで、コンピュータなどが読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラムなどの情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータなどから読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちのコンピュータなどから取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、BD、DAT、磁気テープ、フラッシュメモリなどのメモリカードなどがある。また、コンピュータなどに固定された記録媒体としてハードディスク、ROMなどがある。さらに、SSDは、コンピュータなどから取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータなどに固定された記録媒体としても利用可能である。
【0098】
また、実施形態による制御装置10に実行させるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
上述した実施形態においては、上述した「部」を「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御回路に読み替えることができる。
【0100】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「次に」、「その後」、「続いて」などの表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本実施の形態を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。すなわち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0101】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る発電システム、制御装置、制御方法、およびプログラムは、調速機を備えたエンジン発電機に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0103】
1 発電システム
10 制御装置
11 判定制御部
12 加算部
13 差分演算部
14 制御感度演算部
15 制御出力演算部
16 記憶部
20 エンジン発電機
21 内燃機関
22 発電機
30 模擬負荷群
31 模擬負荷消費電力調整器
40 商用電力系統
50 電力負荷
61 発電電力計測部
62 電力負荷消費電力計測部
63 模擬負荷消費電力計測部
111 第1電力制御モード部
112 第2電力制御モード部
113 第3電力制御モード部
301,302,303,304 模擬負荷
311,312,313,314 模擬負荷調整器