(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】脂肪アルコールを含まないヘアコンディショニング組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20241016BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241016BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/36
A61Q5/12
(21)【出願番号】P 2022575691
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2021037823
(87)【国際公開番号】W WO2022005757
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原(松岡) 伸晃
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106551799(CN,A)
【文献】特表2002-516831(JP,A)
【文献】国際公開第1999/062462(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第102178612(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アルギニンと、
b)C16~C22アルキル鎖を有する脂肪酸と、
c)水性キャリアと、
d)コンディショニング油と、
を含むヘアコンディショナー組成物であって、
a)~c)がゲル構造を形成し、
前記コンディショニング油は、10未満の親水-親油バランス(HLB)を有し、モノマー単位がC2~C16の炭素鎖を有する、モノ、ジ、又はトリエステルまたはエーテルであり、
前記組成物が、
6炭素原子より多い炭素鎖を有する脂肪アルコールを含まない、ヘアコンディショナー組成物。
【請求項2】
前記組成物が、カチオン性界面活性剤分子を含まない、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項3】
前記組成物が、シリコーンを含まない、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項4】
a、b、及びcの混合物が、4.5以上のpHを有する、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項5】
前記ヘアコンディショナー組成物が、前記ヘアコンディショナー組成物の0.01重量%~40重量%のアルギニンを含む、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項6】
前記ヘアコンディショナー組成物が、前記ヘアコンディショナー組成物の0.02重量%~40重量%の脂肪酸を含む、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項7】
a対bの比が、1:100~40:1である、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項8】
前記コンディショニング油が、非シリコーンである、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項9】
前記コンディショニング油が、粒径が最大500nmの予備形成されたエマルジョン形態である、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項10】
前記ゲル構造が、L
β相を有するラメラゲルネットワークマトリックスである、請求項1に記載のヘアコンディショナー組成物。
【請求項11】
a)水を80℃~90℃に加熱する工程と、
b)前記加熱した水にアルギニン及び脂肪酸を添加し、混合物が溶解し均一に分散するまで待つ工程と、
c)前記混合物を相転移温度未満に冷却して、ゲル構造を形成する工程と、
d)前記ゲル構造にコンディショニング油を添加する工程と、
を含
み、前記コンディショニング油は、10未満の親水-親油バランス(HLB)を有し、モノマー単位がC2~C16の炭素鎖を有する、モノ、ジ、又はトリエステルまたはエーテルである、ヘアコンディショナー組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギニン、脂肪酸、及び水性キャリアを含むヘアコンディショニング組成物に関し、これらの全てがゲル構造を形成し、組成物は脂肪アルコールを含まない。
【背景技術】
【0002】
毛髪のコンディショニングのために、様々な手法が開発されてきた。コンディショニング効果を提供する一般的な方法は、カチオン性界面活性剤及びポリマー、高融点脂肪族化合物、低融点油、シリコーン化合物、並びにこれらの混合物などのコンディショニング剤の使用によるものである。これらのコンディショニング剤のほとんどは、様々なコンディショニング効果を提供することが知られている。例えば、いくつかのカチオン性界面活性剤は、いくつかの高融点脂肪族化合物及び水性キャリアと共に使用される場合、ゲル構造又はLβ相を有するラメラゲルネットワークマトリックスを提供すると考えられ、濡れた毛髪に適用している際のツルツルとした感触、柔らかさ、及び乾いた毛髪におけるしっとりとした感触などの様々なコンディショニング効果をもたらすのに好適である。
【0003】
しかし、一部の消費者は、カチオン性界面活性剤分子を有していない製品を好むであろう。より広くは、一部の消費者は、非常に単純な配合を有する製品を好み、これは、少数の成分、又は全て天然の成分、又は重化学プロセスを伴わない成分のみを意味するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、依然として製剤中でゲル構造を形成し、消費者が所望する効果をもたらすことができる、最小数の天然成分を有するヘアケア組成物を配合することが引き続き必要である。
【0005】
既存の技術のいずれも、性能、コスト、安全性、及び環境に優しいことなどの、本発明の利点及び効果の全てを提供するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルギニン、C16~C22アルキル鎖を有する脂肪酸、及び水性キャリアを含むヘアコンディショニング組成物を目的とし、これらの全てが製剤中でゲル構造を形成し、組成物は脂肪アルコールを含まない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書は、本発明を具体的に指摘し、かつ明確に特許請求する、「特許請求の範囲」をもって結論とするが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【0008】
本明細書で、「含む(comprising)」とは、最終結果に影響しない他の工程及び他の成分も加えられる場合があることを意味する。この用語には、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語が包含される。
【0009】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。全てのこのような重量は、列挙された成分に関する場合、活性成分濃度に基づいており、したがって市販材料に含まれ得るキャリア又は副生成物を含まない。
【0010】
本明細書で、「混合物」は、材料の単純な組み合わせと、このような組み合わせから得られる場合がある任意のコンパウンドと、を含むことを意味する。
【0011】
適量は、本明細書では100%に至るまでを意味する。
【0012】
組成物
a)アルギニンと、
b)C16~C22アルキル鎖を有する脂肪酸と、
c)水性キャリアと、を含む本発明のヘアコンディショニング組成物は、
a)~c)がゲル構造を形成し、
組成物は脂肪アルコールを含まない。
【0013】
本発明の目的は、ゲル構造を含み、かつ許容可能な塗布感並びに乾燥外観及び感触の効果を有する、安定したコンディショナー組成物を提供することである。水性キャリアを伴う、C16~C22脂肪酸とアルギニンとの組み合わせは、良好なレオロジープロファイルを可能にし、かつ良好な相安定性及び塗布感を提供する、構造の調製を可能にする。ゲル構造は、組成安定性を提供するのに十分堅牢である。ゲル構造及び組成物は、毛髪の扱いやすさ、縮れ制御、及び体積などの乾燥コンディショニング効果を更にもたらす。
【0014】
典型的なヘアコンディショナー組成物は、脂肪アルコール、感触/レオロジー調整剤ポリマー、コンディショニング油及び薬剤、香料/着色剤、並びにカチオン性界面活性剤などの構造化剤を含む。消費者がより少数の成分及び天然かつ穏やかな成分のみを含む製品により関心を持つにつれて、これらのヘアコンディショナー成分の各々は、消費者が期待する性能及び効果を依然として提供しながら、消費者が認識する天然かつ穏やかな成分がどのように組成物を構成し得るかについて検討される。改善され得る1つの領域は、界面活性剤である。本発明者らは、カチオン性界面活性剤分子を使用せずに、脂肪酸と塩基性アミノ酸アルギニンとの特定の組み合わせを含むヘアコンディショナー組成物を配合した。この組み合わせは、塗布に適したレオロジー特性をヘアコンディショニングに提供するゲル構造を形成する最小数の成分(水を含めて合計3つ)を提供する。本発明の組成物のベースシャーシは、カチオン性界面活性剤を含まず、脂肪アルコールを含まなくてもよい。脂肪アルコールの使用は、極端なプロセス条件で化学/金属触媒を必要とすることがあるが、本発明の組成物は、脂肪酸の加水分解及びアルギニンの発酵のみを必要とする。したがって、本発明の組成物は、性能、コスト、安全性、及び環境に優しい基準を依然として満たしながら、分子設計及びサプライチェーンにおける柔軟性を可能にする、天然の、持続可能に供給される、環境に優しい、かつ穏やかな成分を提供する。
【0015】
ゲル構造
本発明の組成物は、ゲル構造又はゲルネットワーク、場合によってはLβ相を有するラメラゲルネットワークマトリックスを含む。ゲル構造は、濡れた毛髪に適用している際のツルツルとした感触、乾いた毛髪における柔らかさ及びしっとりとした感触などの様々なコンディショニング効果をもたらすのに好適である。
【0016】
本発明のヘアコンディショナー組成物のゲル構造は、アルギニンと、主鎖長としてC16~C22を含有するより長いアルキル鎖の脂肪酸とを含む、界面活性剤を含む。
【0017】
組成物は、ヘアコンディショナー組成物の約0.01重量%~約40重量%のアルギニンを含み得る。いくつかの実施形態では、アルギニンの量は、ヘアケアコンディショナー組成物の約0.01重量%~約40重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.2重量%~約15重量%であってもよい。
【0018】
本発明のアルギニンは、ゲル構造を形成するために特定のpH(4.5超)及びプロセス条件で脂肪酸と組み合わされ得る。組成物は、ヘアコンディショナー組成物の約0.02重量%~約40重量%の脂肪酸を含み得る。いくつかの実施形態では、脂肪酸の量は、ヘアコンディショナー組成物の約0.02重量%~約40重量%、約0.05重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%であってもよい。脂肪酸は、飽和及び/又は不飽和脂肪酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、ヘアコンディショナー組成物の約0.05重量%~約5重量%の不飽和脂肪酸を含み得る。脂肪酸は、主な構成要素としてC16~C22アルキル鎖、又は場合によってはC18~C22アルキル鎖を有し得る。飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。不飽和脂肪酸としては、ナタネ油脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、及びこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。ヘアコンディショナー組成物は、当該ヘアコンディショナー組成物の少なくとも約60重量%、いくつかの実施形態では少なくとも約80重量%の水性キャリアを含み得る。
【0019】
本明細書における本発明の組成物は、脂肪酸、アルギニン、及び水性キャリアを含む、Lβ相を有するラメラゲルネットワークマトリックスを形成し得る。一般に、水性キャリアを伴う、アルギニンと脂肪酸との混合物は、少なくとも約4.5のpHを有し得る。塩基性アミノ酸アルギニン対脂肪酸の比は、約1:100~約40:1、約1:20~約30:1、約1:10~約20:1であってもよい。
【0020】
本発明の組成物は、セラミドを実質的に含まなくてもよい。本発明の組成物は、コレステロールを実質的に含まなくてもよい。また、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤のみからなるゲルネットワークを実質的に含まなくてもよい。本発明の組成物はまた、脂肪アルコール及び/又はカチオン性界面活性剤を含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。
【0021】
水性キャリア
本発明のコンディショニング組成物は水性キャリアを含む。キャリアの濃度及び種類は、他の成分との相溶性及び製品の他の所望の特性に従って選択される。
【0022】
本発明で有用なキャリアとしては、水、並びに低級アルキルアルコール及び多価アルコールの水溶液が挙げられる。本明細書で有用な低級アルキルアルコールは、1~6個の炭素を有する一価アルコールであり、より好ましくは、エタノール及びイソプロパノールである。本明細書で有用な多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、及びプロパンジオールが挙げられる。
【0023】
好ましくは、水性キャリアは、実質的に水である。好ましくは、脱イオン水が使用される。ミネラルカチオンを含む天然供給源からの水もまた、製品の所望の特性に応じて使用することができる。一般的に、本発明の組成物は、約20%~約99%、好ましくは約30%~約95%、より好ましくは約70%~約90%の水を含む。
【0024】
シリコーン化合物
本発明の組成物は、シリコーン化合物を含有してもよく、又は含有しなくてもよい。シリコーン化合物は、乾いた毛髪に滑らかさ及び柔らかさをもたらすことができると考えられる。本明細書のシリコーン化合物は、好ましくは組成物の約0.1重量%~約20重量%、より好ましくは約0.5重量%~約10重量%、更により好ましくは約1重量%~約8重量%の濃度で使用され得る。
【0025】
好ましくは、シリコーン化合物は、組成物中、約1マイクロメートル~約50マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0026】
単一化合物として、少なくとも2つのシリコーン化合物のブレンド若しくは混合物として、又は少なくとも1つのシリコーン化合物及び少なくとも1つの溶媒のブレンド若しくは混合物として、本明細書で有用なシリコーン化合物は、25℃°にて、好ましくは約1,000~約2,000,000mPa・sの粘度を有する。
【0027】
粘度は、Dow Corning Corporateの試験方法CTM0004(1970年7月20日)に記載されているガラスキャピラリー粘度計により測定することができる。好適なシリコーン流体としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー、アミノ置換シリコーン、四級化シリコーン、及びこれらの混合物が挙げられる。コンディショニング特性を有する他の不揮発性シリコーン化合物も使用することができる。
【0028】
好ましいポリアルキルシロキサンとして、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、及びポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。ジメチコンとしても知られるポリジメチルシロキサンが、特に好ましい。これらのシリコーン化合物は、例えば、General Electric CompanyからそれらのViscasil(登録商標)及びTSF451シリーズで、及びDow CorningからそれらのDow Corning SH200シリーズで入手可能である。
【0029】
上記ポリアルキルシロキサンは、例えば、より低い粘度を有するシリコーン化合物との混合物として利用可能である。このような混合物の粘度は、好ましくは約1,000mPa・s~約100,000mPa・s、より好ましくは約5,000mPa・s~約50,000mPa・sである。このような混合物は、好ましくは(i)25℃において約100,000mPa・s~約30,000,000mPa・s、好ましくは約100,000mPa・s~約20,000,000mPa・sの粘度を有する第1のシリコーンと、(ii)25℃において約5mPa・s~約10,000mPa・s、好ましくは約5mPa・s~約5,000mPa・sの粘度を有する第2のシリコーンと、を含む。本明細書で有用なこのような混合物としては、例えば、GE Toshibaから入手可能な18,000,000mPa・sの粘度を有するジメチコンと、200mPa・sの粘度を有するジメチコンとのブレンド、及びGE Toshibaから入手可能な18,000,000mPa・sの粘度を有するジメチコンと、シクロペンタシロキサンとのブレンドを挙げられる。
【0030】
本明細書で有用なシリコーン化合物としてはまた、シリコーンゴムが挙げられる。用語「シリコーンゴム」は、本明細書で使用するとき、25℃において1,000,000センチストーク以上の粘度を有するポリオルガノシロキサン材料を意味する。本明細書に記載されるシリコーンゴムが、上に開示されたシリコーン化合物といくらかの重複を有する場合もあることが認識される。この重複は、これら材料のいずれにおいても限定を意図しない。「シリコーンゴム」は、典型的には、約200,000超、概して、約200,000~約1,000,000の質量分子量を有する。具体的な例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサンメチルビニルシロキサン)コポリマー、ポリ(ジメチルシロキサンジフェニルシロキサンメチルビニルシロキサン)コポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。シリコーンゴムは、例えば、より低い粘度を有するシリコーン化合物との混合物として入手可能である。本明細書で有用なこのような混合物としては、例えば、Shin-Etsuから入手可能なゴム/シクロメチコンブレンドが挙げられる。
【0031】
本明細書で有用なシリコーン化合物としてはまた、アミノ置換材料が挙げられる。好ましいアミノシリコーンとしては、例えば、次の一般式(I)に一致するものが挙げられる:
(R1)aG3-a-Si-(-OSiG2)n-(-OSiGb(R1)2-b)m-O-SiG3-a(R1)a
式中、Gは、水素、フェニル、ヒドロキシ、又はC1~C8アルキル、好ましくはメチルであり、aは、0、又は1~3の値を有する整数、好ましくは1であり、bは、0、1、又は2、好ましくは1であり、nは、0~1,999の数であり、mは、0~1,999の整数であり、nとmとの合計は、1~2,000の数であり、a及びmのいずれもが0であることはなく、R1は、一般式CqH2qLに従う一価基であり、式中、qは、2~8の値を有する整数であり、Lは、-N(R2)CH2-CH2-N(R2)2、-N(R2)2、-N(R2)3A-;-N(R2)CH2-CH2-NR2H2A-、の基から選択され、ここで、R2は、水素、フェニル、ベンジル、又は飽和炭化水素ラジカル、好ましくは約C1~約C20のアルキルラジカルであり、A-は、ハロゲン化物イオンである)。
【0032】
非常に好ましいアミノシリコーンは、式(I)(式中、m=0、a=1、q=3、G=メチルであり、nは、好ましくは約1500~約1700、より好ましくは約1600であり、Lは、-N(CH3)2又は-NH2、より好ましくは-NH2である)に対応するものである。別の非常に好ましいアミノシリコーンは、式(I)(式中、m=0、a=1、q=3、G=メチルであり、nは、好ましくは約400~約600、より好ましくは約500であり、Lは、-N(CH3)2又は-NH2、より好ましくは-NH2である)に対応するものである。シリコーン鎖の一端又は両端が、窒素含有基を末端としているため、このような非常に好ましいアミノシリコーンを、末端アミノシリコーンと呼ぶことができる。
【0033】
上述のアミノシリコーンを組成物中に組み込む場合、より低い粘度を有する溶媒と混合することができる。このような溶媒としては、例えば、極性又は非極性の揮発性又は不揮発性油が挙げられる。このような油としては、例えば、シリコーン油、炭化水素、及びエステルが挙げられる。このような各種溶媒のうち、好ましいものは、非極性揮発性炭化水素、揮発性環状シリコーン、不揮発性直鎖シリコーン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである。本明細書で有用な不揮発性直鎖シリコーンは、25℃で約1~約20,000センチストークス、好ましくは約20~約10,000センチストークスの粘度を有するものである。好ましい溶媒のうち、非常に好ましいものは、アミノシリコーンの粘度を低下させること、及び乾いた毛髪上における摩擦が低減するなどの改善されたヘアコンディショニング効果を提供することという観点から、非極性揮発性炭化水素、特に非極性で揮発性のイソパラフィンである。このような混合物の粘度は、好ましくは約1,000mPa・s~約100,000mPa・s、より好ましくは約5,000mPa・s~約50,000mPa・sである。
【0034】
他の好適なアルキルアミノ置換シリコーン化合物としては、シリコーン主鎖のペンダント基としてアルキルアミノ置換を有するものが挙げられる。非常に好ましいものは、「アモジメチコン」として知られているものである。本明細書で有用な市販のアモジメチコンとしては、例えば、Dow Corningから入手可能なBY16-872が挙げられる。いくつかの実施形態は、シリコーンクオタニウム-26を含み得る。
【0035】
シリコーン化合物は更に、機械的混合によるか、又はエマルジョン重合による合成段階で、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びこれらの混合物から選択される界面活性剤を用いて又は用いないで製造されたエマルジョンの形態で本発明の組成物に組み入れることができる。
【0036】
追加の構成成分
本発明の組成物は、他の追加の構成成分を含んでもよく、それは最終製品の所望の特性によって当業者により選択されてもよく、また組成物をより美容的若しくは審美的に許容可能なものにするために、又は付加的な使用による効果を組成物にもたらすために好適なものである。このような他の追加成分は、概して、組成物の約0.001重量%~約1020重量%、好ましくは約510重量%以下の濃度で個々に用いられる。
【0037】
多種多様な他の追加の構成成分を本発明の組成物に処方することができる。これには、他のコンディショニング剤(例えば、Hormelから入手可能な商品名「Peptein 2000」の加水分解コラーゲン、Eisaiから入手可能な商品名「Emix-d」のビタミンE、Rocheから入手可能なパンテノール、Rocheから入手可能なパントテニルエチルエーテル、加水分解ケラチン、タンパク質、植物抽出物、及び栄養素);防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びイミダゾリジニル尿素など)、pH調節剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム);着色剤(例えば、FD&C又はD&C染料のいずれか);香料;及び金属イオン封鎖剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム);紫外線・赤外線遮断吸収剤(例えばベンゾフェノンなど)、及び抗ふけ剤(例えばジンクピリチオンなど)が挙げられる。
【0038】
低融点油
組成物は、1種以上のコンディショニング油を含み得る。本明細書で有用な低融点油は、25℃未満の融点を有するものである。本明細書で有用な低融点油は、10~約40個の炭素原子を有する炭化水素;エステル油(例えば、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトールを含むペンタエリスリトールエステル油、トリメチロールエステル油、クエン酸エステル油、及びグリセリルエステル油);ポリα-オレフィン油(例えば、ポリデセン);及びそれらの混合物からなる群から選択される。追加の油としては、トリグリセリド(例えば、カプリル酸カプリン酸トリグリセリド)、又は植物油(例えば、ココナツ油、大豆油、菜種油、ココアバター、オリーブ油、パーム油、米ぬか油)、及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、コンディショニング油は、
約10未満の親水-親油バランス(HLB)を有し得る。いくつかの実施形態では、油は、モノマー単位がC2~C16、好ましくはC4~C10、又はより好ましくはC6~C8の炭素鎖を有する、モノ、ジ、又はトリエステル又はエーテルであり得る。いくつかの実施形態では、油は、C16よりも短い、好ましくはC12よりも短い炭素鎖を有する疎水性モノマー単位(直鎖又は分岐鎖)を有するポリエステルであってもよい。市販の油の例としては、BASFからのMyritol 318(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、BASFからのPlantasil Micro(エマルジョン形態のジカプリリルエーテル(ジカプリリルエーテル(及び)デシルグルコシド(及び)オレイン酸グリセリル));又はP2 scienceからのCitropol 1A(酢酸ポリシトロネロール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
製品形態
本発明のコンディショニング組成物は、リンスオフ製品又はリーブオン製品の形態であってもよく、ペースト、クリーム、ゲル、エマルジョン、ムース、及びスプレーが挙げられるがこれらに限定されない、多種多様な製品形態で配合されてもよい。本発明のコンディショニング組成物は、リンスオフヘアコンディショナー又はノーリンスヘアコンディショナーに特に好適である。
【0041】
使用方法
本発明のコンディショニング組成物は、好ましくは毛髪をコンディショニングする方法に使用され、この方法は、
(i)毛髪をシャンプーした後、毛髪をコンディショニングするために有効量のコンディショニング組成物を毛髪に塗布する工程と、
(ii)必要に応じて、その後、毛髪をすすぐ工程と、を含む。
【0042】
本明細書での有効量は、例えば、毛髪10gあたり約0.1mL~約2mL、好ましくは、毛髪10gあたり約0.2mL~約1.5mLである。
【0043】
本発明のコンディショニング組成物は、すすぎ前の湿潤コンディショニング効果を維持しながら、改善されたコンディショニング効果、特にすすぎ後の改善された湿潤コンディショニング効果及び改善された乾燥コンディショニング効果を提供する。本発明のコンディショニング組成物はまた、消費者に改善された製品外観を提供することができる。したがって、本発明のコンディショニング組成物の用量を減らしても、従来のコンディショナー組成物の全用量と同じレベルのコンディショニング効果を提供することができる。本明細書でのこのような減少量は、例えば、毛髪10gあたり約0.3mL~約0.7mLである。
【0044】
製造方法
本発明はまた、
以下のようにヘアコンディショニング組成物を製造する方法を目的とする。
a.アルギニンと、
b.C16~C22アルキル鎖を有する脂肪酸と、
c.水性キャリアと、を含む、ヘアコンディショナー組成物を製造する方法であって、
この方法は、
a)脂肪酸の融点の温度よりも高い温度
(約80℃~90℃)の水を添加する工程と、
b)加熱した水にアルギニン及び脂肪酸を添加し、混合物が溶解し均一に分散するまで待つ工程と、
c)混合物を相転移温度未満に冷却して、ゲル構造を形成する工程と、を含む。
【0045】
方法は、含まれる場合、シリコーン若しくは油化合物、香料、防腐剤、審美剤などの追加成分をゲル構造に添加する工程を更に含み得る。本発明のコンディショニング組成物は、当該技術分野で周知の任意の従来の方法によって調製され得る。
【0046】
最終製品及び冷却工程後の製造プロセス中の組成物のpHは、少なくとも4.5であり得る。
【実施例】
【0047】
以下の実施例では、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明及び実証する。これらの実施例は、例示目的のためにのみ提供され、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくそれらの多くの変更が可能であることから、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。適用可能な場合には、成分を、化学名又はCTFA名で特定し、そうでない場合は、以下で定義する。
【0048】
表1は、4つの比較例と共に2つの本発明の組成物を示す。本発明の実施例1は、水性キャリア中にアルギニン及びステアリン酸(C16/C18鎖)を有し、本発明の実施例2は、水性キャリア中にアルギニン及びベヘン酸(C22鎖)を有する。本発明の実施例は両方とも、安定した製品を形成し、30を超える(ゲル構造を示す)DSCピークを有し、許容可能な乾燥コンディショニングを有する。対照的に、アルギニンとC12脂肪酸(比較例3)及びヒスチジンとC12、16/18、又は22脂肪酸(それぞれ比較例4、5、及び6)は、相分離を示し、これはゲル構造/マトリックスが形成されていないことを示す。
【0049】
【表1】
*C16/C18の鎖分布を約50/50で有する。
【0050】
表2は、シリコーン及び/又は油を含む追加の本発明の実施例を示す。
【0051】
【0052】
試験方法
1.乾燥エキスパート官能方法
これは、エキスパートによる官能パネル試験方法であり、3人の高度エキスパートによる官能パネルを使用して、乾燥状態の毛髪処理時の特定の属性を評価する。毛髪処理のための処理プロトコルは、以下のとおりである。
a.20gのヘアピースを水ですすぎ、水を上から下に1回絞り出す。
b.1mLのコンディショナーを前側に塗布し、1mLのコンディショナーを後側に塗布した。
c.製品をヘアピース上で30秒間に30往復して泡立てる。
d.次いで、毛髪を前側で15秒間及び後側で15秒間すすぎ、水を上から下に1回絞り出した。
e.一晩乾燥させる。
この方法において評価された官能属性は、実施例の表中で「乾燥コンディショニング」として記載する。パネリストは、乾燥状態において毛髪の滑らかな表面感触を評価し、(コンディショニング感触として)「許容可能」又は「許容不可能」のいずれかを見出すよう求められた。
【0053】
2.DSC分析方法
示差走査熱量測定(DSC)は、形成された構造の相転移(融解又は凝固)温度、並びに融解及び凝固の熱エネルギーを与えるため、便利なツールである。手順方法は、以下の工程を含む。
1.0.00℃で平衡化
2.5.00℃/分の速度で90.00℃まで加熱
3.5.0分間等温
4.5.00℃/分の速度で0.00℃まで冷却
5.5.0分間等温
DSCピーク>30℃に関する記述試験:5.00℃/分の速度で90.00℃まで加熱したときのDSCグラフは、形成された構造の融解相転移温度を与える。30℃より高いピークが観察される場合、「はい」と記載される。
【0054】
3.製品安定性の視覚的評価
安定性は、製品が特定の期間にわたって一貫して安定であることを確実にするための視覚的評価である。製品の組成物を、-5℃、25℃、及び40℃の3つの異なる条件に配置した。評価は、異なる間隔で行われる。
1)製造時に安定
2)1週間後に安定
3)3ヶ月後に安定(25℃)
製品安定性に関する記述試験:製品の視覚的評価が1)、2)、及び3)の全ての条件で相分離していない場合、「安定」と記載される。製品の視覚的評価が1)、2)、又は3)で相分離を示す場合、「相分離」と記載される。
【0055】
4.レオロジー法
レオロジーを使用して、製品試料を評価及び特徴付ける。特定された2つの重要なレオロジー法を以下に記載する。
・流動曲線による950s-1での剪断応力:これは、コーン及びプレート形状を使用して1分間で0.1~1000s-1まで剪断速度を対数的に上昇させて、剪断速度950s-1での剪断応力値σ(Pa)を読み取る方法である。
・振動測定G’/G”:これは、0.1~100Paまで上昇させて貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を測定し、「静止」状態の試料の粘弾性情報、及び永久変形する(流動開始する)のに必要な応力である降伏応力値σ(Pa)を得る振動応力法である。
剪断応力の許容可能なレオロジー範囲は、5Pa~1500Paである。振動測定に関しては、貯蔵弾性率G’の範囲は30Pa~45000Paであり、損失弾性率G”の範囲は10Pa~20000Paである。
【0056】
実施例/組み合わせ
A.
a)アルギニンと、
b)C16~C22アルキル鎖を有する脂肪酸と、
c)水性キャリアと、を含むヘアコンディショナー組成物であって、
a)~c)がゲル構造を形成し、
組成物が脂肪アルコールを含まない、組成物。
B.組成物が、カチオン性界面活性剤分子を含まない、段落Aに記載の組成物。
C.組成物が、シリコーンを含まない、段落A又はBのいずれか1つに記載の組成物。
D.a、b、及びcの混合物が、少なくとも約4.5のpHを有する、段落A~Cのいずれか1つに記載の組成物。
E.ヘアコンディショナー組成物が、ヘアコンディショナー組成物の約0.01重量%~約40重量%のアルギニンを含む、段落A~Dのいずれか1つに記載の組成物。
F.ヘアコンディショナー組成物が、ヘアコンディショナー組成物の約0.02重量%~約40重量%の脂肪酸を含む、段落A~Eのいずれか1つに記載の組成物。
G.脂肪酸が、飽和及び不飽和脂肪酸を含む、段落A~Fのいずれか1つに記載の組成物。
H.a対bの比が、約1:100~約40:1である、段落A~Gのいずれか1つに記載の組成物。
I.脂肪酸が、ヘアコンディショナー組成物の約0.05重量%~約5重量%の不飽和脂肪酸を含む、段落A~Hのいずれか1つに記載の組成物。
J.組成物が、コンディショニング油を更に含む、段落A~Iのいずれか1つに記載の組成物。
K.コンディショニング油が、非シリコーンである、段落Jに記載の組成物。
L.コンディショニング油が、粒径が最大約500nmの予備形成されたエマルジョン形態である、段落J又はKのいずれか1つに記載の組成物。
M.コンディショニング油が、約10未満のHLBを有する、段落J~Lのいずれか1つに記載の組成物。
N.ゲル構造が、Lβ相を有するラメラゲルネットワークマトリックスである、段落A~Mのいずれか1つに記載の組成物。
O.
a)水を80℃~90℃に加熱する工程と、
b)加熱した水にアルギニン及び脂肪酸を添加し、混合物が溶解し均一に分散するまで待つ工程と、
c)混合物を相転移温度未満に冷却して、ゲル構造を形成する工程と、を含む、ヘアコンディショナー組成物を製造する方法。
【0057】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0058】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0059】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。