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特許7572462工作機械の段取り機能を備えた数値制御装置及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】工作機械の段取り機能を備えた数値制御装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/22 20060101AFI20241016BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20241016BHJP
   G05B 19/4097 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B23Q15/22
B23Q15/00 309Z
G05B19/4097 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022578527
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003440
(87)【国際公開番号】W WO2022163839
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021014608
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貫太
(72)【発明者】
【氏名】平内 和弘
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-212221(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138475(WO,A1)
【文献】特開2000-210839(JP,A)
【文献】特開平05-253794(JP,A)
【文献】特開2019-063914(JP,A)
【文献】特開平02-064711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00 - 15/22
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 17/00
G06F 9/451
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を制御する数値制御装置であって、
前記工作機械の加工プログラムの一部又は全部、若しくは前記加工プログラムに関連する情報の少なくとも一つを含む加工プログラム関連情報から段取り作業に必要な段取り情報を取得する段取り情報取得部と、
前記工作機械の加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報から段取り基本情報を取得し、前記段取り情報と前記段取り基本情報とから段取り支援情報を生成する段取り支援情報生成部と、
前記段取り情報および前記段取り支援情報を用いて前記加工プログラムの段取り作業を支援する段取り支援部と、
を備え
前記段取り情報は、ワーク原点とワークの素材形状を含み、
前記段取り支援情報生成部は、前記ワーク原点と前記ワークの素材形状からワークの計測方法を算出する数値制御装置。
【請求項2】
前記段取り支援部は、前記段取り支援情報を用いて段取り作業の手順を示す段取り支援画面を作成する段取り支援画面作成部を備える、請求項1記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記段取り支援部は、前記段取り支援情報を用いて段取り作業の手順を示す文書データを作成する手順書作成部を備える、請求項1記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記段取り支援部は、前記段取り支援情報を用いて段取り作業を周辺機器に実行させる動作プログラムまたは信号を作成する周辺機器制御指令作成部を備える、請求項1記載の数値制御装置。
【請求項5】
一つ又は複数のプロセッサが実行することにより、
工作機械の加工プログラムの一部又は全部、若しくは前記加工プログラムに関連する情報の少なくとも一つを含む加工プログラム関連情報から段取り作業に必要な段取り情報を取得し、
前記工作機械の加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報から段取り基本情報を取得し、前記段取り情報と前記段取り基本情報から段取り支援情報を生成し、
前記段取り支援情報を用いて前記加工プログラムに対応する段取り支援を行い、
前記段取り情報は、ワーク原点とワークの素材形状を含み、
前記段取り支援情報の生成の際に、前記ワーク原点と前記ワークの素材形状からワークの計測方法を算出する記憶媒体。
【請求項6】
前記段取り支援情報を用いて段取り支援作業の手順を示す段取り支援画面を作成することにより、前記加工プログラムに対応する段取り支援を行う、コンピュータが読み取り可能な命令を記憶する請求項5記載の記憶媒体。
【請求項7】
前記段取り支援情報を用いて段取り支援の手順を示す文書データを作成することにより、前記加工プログラムに対応する段取り支援を行う、コンピュータが読み取り可能な命令を記憶する請求項5記載の記憶媒体。
【請求項8】
前記段取り支援情報を用いて段取り作業をロボットまたは搬送機に実行させる動作プログラムまたは信号を作成する、コンピュータが読み取り可能な命令を記憶する請求項5記載の記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の段取り支援機能を備えた数値制御装置、及び段取り支援を行うコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置は工作機械を制御するための装置であり、工具の移動量や移動速度などを数値で制御する。数値制御装置で加工を制御する前の一連のセッティング作業を「段取り」という。段取り作業では、工具とワークの取り付け、ワーク座標系、ワーク原点、補正の設定、加工プログラムの転送または作成を行う。
【0003】
ワーク座標系やワーク原点を設定するにはワークを計測する。ワークの計測にはプローブを用いる。プローブはワークとの接触を検出する装置である。工作機械の主軸にプローブを取り付けて、計測プログラムを実行すると、数値制御装置は自動的にワークを計測する。数値制御装置は、その計測の結果を基にワーク座標系やワーク原点を設定する。
【0004】
ワークの計測位置を指定する際、例えば、特許文献1では、ワークとその周りの画像を撮像し、オペレータからの補助点とアプローチ点との入力を受け付け、入力された補助点とアプローチ点の位置とワークの形状とから、計測候補を絞りこむ。
【0005】
特許文献1では、オペレータがワークを設置し、ワークをカメラで撮影し、オペレータが補助点とアプローチ点を指定した後、計測候補が一覧表示され、ワークの計測プログラムが決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-18155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
段取り作業は、加工プログラムごとに異なる。オペレータは、段取り作業の前に、加工プログラムをみて、ワーク原点の位置や使用する工具を確認しなければならない。
加工プログラムの内容を確認することは煩雑である。プログラムを作成した人と加工を行う人とが異なる場合、プログラム内容の理解に時間がかかったり、間違った段取り作業を行ったりする可能性がある。
【0008】
工作機械の分野では、段取り作業を効率化する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
工作機械を制御する数値制御装置であって、工作機械の加工プログラムの一部又は全部、又は前記加工プログラムに関連する情報の少なくとも一つを含む加工プログラム関連情報から段取り作業に必要な段取り情報を取得する段取り情報取得部と、工作機械の加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報から段取り基本情報を取得し、段取り情報と段取り基本情報から段取り支援情報を生成する段取り支援情報生成部と、段取り情報および段取り支援情報を用いて加工プログラムの段取り作業を支援する段取り支援部と、を備え、前記段取り情報は、ワーク原点とワークの素材形状を含み、前記段取り支援情報生成部は、前記ワーク原点と前記ワークの素材形状からワークの計測方法を算出する
本開示の一態様である記憶媒体は、一つ又は複数のプロセッサが実行することにより、工作機械の加工プログラムの一部又は全部、又は加工プログラムに関連する情報の少なくとも一つを含む加工プログラム関連情報から段取り作業に必要な段取り情報を取得し、工作機械の加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報から段取り基本情報を取得し、段取り情報と段取り基本情報から段取り支援情報を生成し、段取り支援情報を用いて加工プログラムに対応する段取り支援を行い、前記段取り情報は、ワーク原点とワークの素材形状を含み、前記段取り支援情報の生成の際に、前記ワーク原点と前記ワークの素材形状からワークの計測方法を算出する
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様により、段取り作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】数値制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図2】加工プログラム関連情報を作成する装置を示す図である。
図3】数値制御装置のブロック図である。
図4】第1の開示の段取り情報、段取り基本情報、段取り支援情報の一例を示す図である。
図5】第1の開示の段取り支援画面の一例を示す図である。
図6】第2の開示の段取り情報、段取り基本情報、段取り支援情報の一例を示す図である。
図7】第2の開示の段取り支援画面の一例を示す図である。
図8】第3の開示の段取り情報、段取り基本情報、段取り支援情報の一例を示す図である。
図9】第3の開示の段取り支援画面の一例を示す図である。
図10】第4の開示の数値制御装置のブロック図である。
図11】段取り手順書の一例を示す図である。
図12】段取り手順書の共有を説明する図である。
図13】第5の開示の数値制御装置のブロック図である。
図14】ロボットの段取り作業を説明する図である。
図15】第6の開示の数値制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の開示]
図1は、数値制御装置100の概略図である。数値制御装置100は、工作機械200に段取り作業を実施させる機能を備える。
図1の数値制御装置100は、工作機械200に接続されている。図1において、数値制御装置100と工作機械200は別々であるが一体でもよい。
工作機械200のテーブルにはワーク51が取り付けられる。工作機械200の主軸には、プローブ50が取り付けられている。プローブ50は、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に移動する。プローブ50はワーク51との接触を検知する。数値制御装置100は、プローブ50がワーク51に接触した位置を基にワーク51を計測する。数値制御装置100の壁面には、表示部70及び該表示部と一体のまたは別体のキーボード、タッチパネルなどの入力部71が設けられている。オペレータはその入力部71を操作して段取り作業を行う。
【0013】
以下、数値制御装置100について説明する。図1における数値制御装置100が備えるCPU111は、数値制御装置100を全体的に制御するプロセッサである。CPU111は、バス122を介してROM112に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って数値制御装置100の全体を制御する。RAM113には一時的な計算データや表示データ、入力部71を介してユーザが入力した各種データ等が一時的に格納される。
【0014】
表示部70は、数値制御装置100に付属のモニタなどである。表示部70は、後述する段取り支援画面や段取り手順書などを表示する。
【0015】
入力部71は、表示部70と一体、又は、表示部70とは別のキーボード、タッチパネルなどである。ユーザは入力部71を操作して、表示部70に表示された画面への入力などを行う。
【0016】
不揮発性メモリ114は、例えば、バッテリ(図示せず)でバックアップされるなどして、数値制御装置100の電源がオフされても記憶状態が保持されるメモリである。不揮発性メモリ114には、インタフェース(図示せず)を介して外部機器から読み込まれたプログラムや入力部71を介して入力されたプログラム、数値制御装置100の各部や工作機械200等から取得された各種データ(例えば、工作機械200から取得した設定パラメータ等)が記憶される。不揮発性メモリ114に記憶されたプログラムや各種データは、実行時/利用時にはRAM113に展開されてもよい。また、ROM112には、各種のシステム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0017】
工作機械200の各軸を制御するコントローラ40は、CPU111からの軸の移動指令をパルス信号に変換しドライバ41に出力する。ドライバ41はパルス信号を電流に変換してモータを駆動する。
【0018】
駆動部(主軸等)にはプローブ50が取り付けられている。モータは、プローブ50を移動させる。本開示では、プローブ50は、XYZの3軸方向に相対移動するが、4軸や5軸に移動してもよい。
【0019】
プローブ50とは、測定対象の位置を検出する装置である。本開示のプローブ50は、接触方式である。プローブ50には、赤外線方式、無線方式、誘電方式などがある。
【0020】
図2を参照して本開示の適用される装置について説明する。
数値制御装置100、PC300、専用装置400は、加工プログラムに関する情報(加工プログラム関連情報)を作成する装置である。それら数値制御装置100、PC300、及び専用装置400は、加工プログラムを作成する環境が構築されている。
PC300には、加工プログラムを作成するソフトウェアがインストールされている。数値制御装置100は、ボタンや画面などを操作して加工プログラムを作成することができる。専用装置400は、数値制御装置100のエミュレータであり、数値制御装置100と同じボタンや画面が設けられており、数値制御装置100と同じ環境で加工プログラムを作成することができる。
【0021】
図2の装置で作成する加工プログラム関連情報には、加工プログラム全体又は加工プログラムの一部、若しくは、加工プログラムに関連する情報の少なくとも一つが含まれる。ここで、加工プログラムに関連する情報とは、加工する工具が取り付けられるタレットの番号、加工するワークの形状など個々の加工で必要となる情報を意味する。
【0022】
一方、数値制御装置100、PC300、専用装置400は、加工プログラムを実行する装置でもある。数値制御装置100は、加工プログラムを実行して実際に工作機械を制御する機能と、加工プログラムのシミュレーションを行う機能とを備える。PC300は、工作機械の軸移動軌跡を作成するためのソフトウェア、例えば、CAM(Computer Aided Machine)がインストールされており、加工プログラムを実行してシミュレーションを行う。専用装置400も、数値制御装置100と同様に加工プログラムのシミュレーション機能を備える場合がある。数値制御装置100、PC300、専用装置400には、加工プログラムを実行するために必要な情報が登録されている。この情報を装置登録情報と呼ぶ。
【0023】
装置登録情報は、必ずしも段取り作業のために用意された情報ではなく、従来から工作機械200の制御に用いられている既存の情報である。装置登録情報は、実際に加工を行う数値制御装置100だけでなく、PC300や専用装置400などのシミュレーションを行う装置にも登録されている場合がある。
本開示では、個々の加工プログラムに関連する加工プログラム関連情報と加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報とを組み合わせて個々の加工プログラムの段取り作業に必要な段取り支援情報を作成する。
【0024】
図3は、数値制御装置100のブロック図である。数値制御装置100は、加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報記憶部11と、加工プログラム関連情報から段取り情報を取得する段取り情報取得部12と、加工プログラムに関連する情報を記憶する加工プログラム関連情報記憶部13と、装置登録情報と加工プログラム関連情報から段取り支援情報を生成する段取り支援情報生成部14と、段取り支援を行う段取り支援部15と、を備える。
【0025】
装置登録情報記憶部11は、数値制御装置100、PC300、専用装置400など加工プログラムを実行する装置に登録された装置登録情報を記憶する。装置登録情報のうち段取り支援に利用できる情報を段取り基本情報と呼ぶ。段取り基本情報には、例えば、工具番号や工具寿命などがあるが、これに限定されない。
【0026】
段取り情報取得部12は、加工プログラム関連情報から段取り情報を取得する。段取り情報には、工具情報、素材形状、ワーク原点位置などがある。段取り情報は、加工プログラムのヘッダに記載されている場合も、加工プログラムの途中に記載されている場合もある。段取り情報取得部12は、加工プログラムのT指令やGコードから段取り情報を取得したり、コメントから段取り情報を取得したりする。
ワークの形状は、加工プログラムのGコードから分かる。例えば、「G1902」は直方体、「G1900」及び「G1906」は柱体、「G1901」は柱体(穴付き)、「G1903」は角柱の、それぞれワーク形状を設定するためのGコードである。加工プログラムに記載されたGコードによってワークの形状と寸法とが分かる。ワーク原点位置は、「G54~G59」のGコードで設定できる。なお、段取り情報は、加工プログラムのコメントに記載されていることもある。
【0027】
段取り支援情報生成部14は、加工プログラム関連情報から取得した段取り情報と、数値制御装置100、PC300、専用装置400などの装置登録情報から取得した段取り基本情報とを基に、段取り支援情報を生成する。段取り支援情報は、工具の選択、ワークの設置、ワークの計測などの段取り作業の支援に用いられる。第1の開示では、段取り支援画面を作成して、段取りの手順をオペレータに提示し、段取りの支援を行う。
【0028】
段取り支援部15は、段取り支援画面作成部16を備える。段取り支援画面作成部16は、段取り支援情報を基に、工具選択画面、ワーク設置画面、ワーク計測画面などの段取り支援画面を作成する。段取り支援画面は対話形式で段取りの手順をオペレータに伝達する。
【0029】
図4に段取り情報、段取り基本情報、段取り支援情報の一例を示す。
オペレータが加工プログラムを選択すると、段取り情報取得部12は、加工プログラムから段取り情報を抽出する。段取り情報には、工具の種類を示す「T指令」、ワークの「素材形状」、ワーク原点の位置が含まれる。図4では、「T指令」はT1及びT2である。ワークの形状である「素材形状」はGコード「G1902」から取得できる。「G1902」は、素材形状が「直方体」であることを示す。「G1902」のパラメータは「直方体」のサイズ「奥行100、幅100、高さ50」を示す。Gコード「G54~G59」のパラメータから「ワーク原点位置(50、50、50)」が取得できる。
【0030】
段取り支援情報生成部14は、段取り基本情報と段取り情報を基に段取り支援情報を生成する。数値制御装置100は、段取り基本情報として、「T指令」に対応する工具の種類を記憶している。段取り支援情報生成部14は、段取り基本情報を参照して、T指令「T1」を「ドリル工具」、T指令「T2」を「面取り工具」に変換する。
また、段取り支援情報生成部14は、ワーク原点と素材形状(ワーク形状)からワークの計測方法を算出する計算式を予め記憶している。段取り支援情報生成部14は、加工プログラムから取得した「ワーク原点位置(50、50、50)」、「素材形状:直方体(奥行100、幅100、高さ50)」と、段取り基本情報の式「ワーク原点:奥行×0.5、幅×0.5、高さ」とから、「計測方法」が「幅計測」であると判定する。
【0031】
そうして図4の段取り支援情報は、「T1:ドリル工具」、「T2:面取り工具」、「素材形状:直方体」、「ワーク原点位置(50、50、50)」、「計測方法:幅計測」となる。
【0032】
段取り支援画面作成部16は、段取り支援情報を基に段取り支援画面を表示する。図5は、段取り支援画面の一例である。図5の段取り支援画面には、工具選択画面、ワーク設置画面、ワーク計測画面(1枚目)~(3枚目)が含まれる。
工具選択画面には、「工具をタレットに装着してください」というオペレータへの指示と、「T1:ドリル工具」、「T2:面取り工具」という取り付ける工具の種類が表示される。作業を完了し、工具選択画面の右下にある「次」ボタンを選択すると、ワーク設置画面が表示される。
【0033】
ワーク設置画面には、設置するワークの画像と、ワークの形状を説明するテキストが表示される。図5のワーク設置画面には、「以下の形状のワークを設置してください」というオペレータへの指示と、直方体のワークの形状を示す画像と、「直方体」、「奥行:100」、「幅:100」、「高さ:50」というワークの形状を示すテキストが表示されている。ワークを設置し、ワーク設置画面の右下にある「次」ボタンを選択すると、ワーク計測画面(1枚目)が表示される。
【0034】
ワーク計測画面(1枚目)は、加工プログラム(又は計測プログラム)が実施する計測方法を表示する。図5のワーク計測画面(1枚目)では、「以下の計測を行います。」という作業内容の説明と、「計測方法:幅計測」という計測方法が表示される。さらに、「タッチプローブでX,Y方向の幅を計測します。」という幅計測の説明を表示してもよい。
【0035】
ワーク計測画面(2枚目)では、プローブの計測動作を示す図と、「タッチプローブでX方向の両面を計測してください。」というユーザの作業内容が表示される。作業を完了し、ワーク計測画面(2枚目)の右下にある「次」ボタンを選択すると、ワーク計測画面(3枚目)が表示される。
【0036】
ワーク計測画面(3枚目)では、プローブの計測動作を示す図と、「タッチプローブでY方向の両面を計測してください。」というユーザの作業内容が表示される。作業を完了し、第3のワーク計測画面の右下にある「次」ボタンを選択すると、段取り作業が終了する。
【0037】
上述したように、第1の開示の数値制御装置100では、加工プログラム関連情報から段取り情報を取得し、数値制御装置100、PC300、専用装置400の設定情報から段取り基本情報を取得し、段取り情報と段取り基本情報とから段取り支援画面を作成する。
段取り支援画面には、工具情報、ワークの形状、ワーク;の計測方法などが表示される。ユーザは、段取り支援画面を参照するだけで、段取り作業ができるようになり、ユーザの作業負担を軽減する。また、段取り作業の間違いを軽減できる。
【0038】
[第2の開示]
図6及び図7を参照して、丸棒のワークを計測する例を説明する。
図6は、第2の開示における段取り情報、段取り基本情報、段取り支援情報の一例を示す。オペレータが、加工プログラムを選択すると、段取り情報取得部は、加工プログラム関連情報から段取り情報を取得する。段取り情報には、工具の種類を示す「T指令」、ワークの「素材形状」、ワーク原点の位置が含まれる。図6では、「T指令」はT3、T4である。「素材形状」はGコード「G1900」から抽出できる。「G1900」は、素材形状が「丸棒」であることを示す。「G1900」のパラメータは「丸棒」のサイズが「素材径50、素材長100」であることを示す。また、Gコード「G54~G59」のパラメータから「ワーク原点位置(25、25、100)」が取得できる。
【0039】
段取り支援情報生成部14は、段取り基本情報と段取り情報とから段取り支援情報を生成する。数値制御装置100は、段取り基本情報として、「T指令」に対応する工具の種類予め記憶している。また、段取り支援情報生成部14は、ワーク原点と素材形状(ワーク形状)とからワークの計測方法を算出する計算式を予め記憶している。段取り支援情報生成部14は、段取り基本情報を参照して、「T3」を「フラットエンドミル工具」に、「T4」を「タップ工具」に変換する。
加工プログラムから抽出した「ワーク原点位置(25、25、100)」、「素材形状:丸棒(素材径50、素材長100)」は、段取り基本情報の式「ワーク原点:素材径×0.5、素材径×0.5、素材長」を満たすので、「計測方法」が「外径計測」であることが分かる。
【0040】
段取り支援画面作成部16は、段取り支援情報を基に段取り支援画面を表示する。図7は、段取り支援画面の一例である。図7の段取り支援では、まず、工具選択画面を表示する。工具選択画面には、「工具をタレットに装着してください。」というオペレータへの指示と、「T3:フラットエンドミル工具」、「T4:タップ工具」、という取り付ける工具の種類とが表示される。画面上での工具選択に係る作業を完了し、工具選択画面の右下にある「次」ボタンを選択すると、ワーク設置画面が表示される。
【0041】
ワーク設置画面には、設置するワークの画像と、ワークの形状を説明するテキストが表示される。図7のワーク設置画面には、「以下の形状のワークを設置してください」というオペレータへの指示と、丸棒のワークの形状を示す画像と、「丸棒」、「素材径:50」、「素材長:100」というワークの形状を示すテキストとが表示されている。そこで、ワークを設置し、ワーク設置画面の右下にある「次」ボタンを選択すると、ワーク計測画面(1枚目)が表示される。
【0042】
ワーク計測画面(1枚目)は、加工プログラム(又は計測プログラム)が実施する計測方法を表示する。ワーク計測画面(1枚目)では、「以下の計測を行います。」という作業内容の説明と、「計測方法:外径計測」という、「タッチプローブでX,Y方向の幅を計測します。」という計測方法の説明が表示される。
第1の開示と同様に、ワーク計測画面(2枚目)、ワーク計測画面(3枚目)の指示に従い作業を行うと、ワークの計測作業が完了する。
【0043】
第2の開示では、丸棒のワークの段取り支援を行う。ワークの形状は、加工プログラムのGコード「G1900」から取得できる。「G1900」のパラメータは、丸棒の寸法を規定している。計測方法は、ワーク原点から算出できる。ワーク原点は、加工プログラムから取得する。工具の種類は、加工プログラムの「T指令」から取得できる。Tコードは、工具の種類に変換できる。
【0044】
以上のように、本開示の数値制御装置100では、ワークの形状が異なる加工プログラムでも段取り支援を行うことができる。工具の種類、ワークの形状、計測方法などの段取り作業に必要な情報は、加工プログラム関連情報及び設定情報から自動的に取得することができる。
【0045】
[第3の開示]
第3の開示では、装置登録情報記憶部11から工具の「取付状態」と「工具寿命」とを段取り基本情報として取得しユーザに提示する。これら工具の「取付状態」と「工具寿命」は、従来、数値制御装置100が工具管理に用いている既存の情報である。
【0046】
第3の開示の段取り支援情報は、前述の第1及び第2の開示の段取り支援情報に「取付状態」と「工具寿命」とが追加されている。図8の例では、工具番号「T1」、「T2」の「取付状態」及び「工具寿命」、すなわち、「T1:取付済み、寿命切れ」と「T2:未取付、寿命あり」という情報が追加されている。
【0047】
第3の開示の段取り支援画面では、工具選択画面が第1及び第2の開示と異なる。図9に示す第3の開示の工具選択画面には、「以下の工具をタレットに装着してください。」というオペレータの指示と、「T:ドリル工具」、「T2:面取り工具」という工具の種類の他に、「未取付です。取り付けてください。」、「工具が摩耗しています。交換してください。」という、工具の取付状態や工具寿命に関するテキストが表示される。画面に従い作業を完了し、工具選択画面の右下にある「次」ボタンを選択すると、ワーク設置画面が表示される。
ワーク設置画面が表示された後の作業は、前述した第1及び第2の開示と同様であるため説明を省略する。
【0048】
第3の開示では、数値制御装置100の段取り基本情報から工具の取付状態や工具寿命に関する情報を読出し、工具選択画面に表示する。オペレータは、工具選択画面を参照することで工具が取り付けられているか、工具寿命に達したかなどの工具に関する情報を確認することができるので、オペレータの作業負担が軽減される。
【0049】
[第4の開示]
第4の開示では、段取り作業の手順書を作成する。図10は、第4の開示の数値制御装置100のブロック図である。第4の開示の数値制御装置100は、段取り支援部15として、手順書作成部17と、手順書表示部18と、手順書共有部19とを備える。
【0050】
手順書作成部17は、段取り支援情報から段取り手順書を作成する。段取り手順書は、段取り作業の手順を記載した文書データである。図11に段取り手順書の一例を示す。
図11の段取り手順書の1行目には、「O2001段取り手順書」と記載されている。「O2001」は加工プログラム(又は計測プログラム)の名称である。名称の下には「以下の手順に沿って段取りを行ってください。」と記載されている。そして、「1.以下の工具をタレットに装着してください。」、「T1:ドリル工具」、「T2:面取り工具」と最初の作業内容が記載されており、「2.以下の形状をバイスに装着してください。」、「素材形状:直方体」、「奥行100」、「幅100」、「高さ50」という第2の作業内容が記載されており、「3.ワークに対して以下の計測を行ってください。」、「計測方法:幅計測」と第3の作業内容が記載されている。
【0051】
第4の開示では、段取り支援情報を基に、段取りの手順を記載した文書データを作成する。段取り手順書は、文書データであるため、多くの情報処理装置で閲覧できる。そのため、段取り手順書を可搬性記憶媒体に記録して、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、サーバのコンソール画面、数値制御装置100の操作画面などに表示することができる。
【0052】
また、図12に示すように、段取り手順書をサーバに記録し、複数の数値制御装置100(又は工作機械)で共有することもできる。手順書共有部19は、数値制御装置100が作成した段取り手順書をサーバにアップロードしたり、他の数値制御装置100がサーバにアップロードした段取り手順書を読み出したりする。
【0053】
第4の開示では、段取り作業の手順を記載した文書データを作成することにより、多くの情報処理装置で、段取り手順書を共有できる。
【0054】
[第5の開示]
第5の開示の数値制御装置100は、ロボット500や搬送機600などの段取り作業を行う周辺機器の制御プログラムや制御指令を作成し、周辺機器に段取り作業を実行させる。
図13は、第5の開示の数値制御装置100のブロック図である。
段取り支援部15は、周辺機器制御部20を備える。この第5の開示においては周辺機器の制御方法は特に限定しない。周辺機器制御部20は、周辺機器の制御プログラムを作成したり、周辺機器に制御信号を出力したりする。制御プログラムや制御信号は既存の方法で作成する。
第5の開示の数値制御装置100は、工具の種類やタレットの番号、ワークWの設置方向などの情報を段取り支援情報から読み出してロボット500や搬送機600などの周辺機器制御プログラムを作成することを特徴とする。
【0055】
図14の例において、搬送機600は段取り支援情報に記載された工具を数値制御装置100に搬送する。工具は工作機械200のタレットに取り付けられる。タレットには番号が設定されており、ロボット500は番号に合わせて工具を装着する(図14の例では「T1」として「ドリル工具」を装着し、「T2」として「面取り工具」を装着する)。ロボット500は、ワークWの設置も行う。ロボット500は、周辺機器制御部20が作成した制御プログラムや制御信号に従い、「奥行き:100」、「幅:100」、「高さ:50」となる向きに「直方体」のワークWを設置する。
工具とワークWを取り付けると、数値制御装置100は、工作機械200を制御してワークWの計測を自動的に行う。ワークの計測プログラムは既存のものを用いる。ワークWの計測方法は、段取り支援情報に記載されている。
【0056】
この第5の開示では、段取り支援情報に基づき、ロボット500や搬送機600などの周辺機器の制御プログラム及び制御信号を作成する。搬送機600は加工プログラムに対応したワークを数値制御装置100まで搬送し、ロボット500は加工プログラムに対応したワークWを加工プログラムに指定された方向に設置する。さらに、ロボット500は、加工プログラムに規定された工具を指定された位置に装着する。
このように、第5の開示では、段取り支援情報に基づきロボット500を制御することで、オペレータの作業を自動化し、オペレータの作業負担を軽減する。
【0057】
[第6の開示]
第6の開示では、図15に示すようにオペレータが段取り情報を入力する。加工プログラム関連情報や設定情報から段取り支援に必要な情報が取得できない場合、段取り情報取得部12は、入力画面などを表示して、必要な情報をオペレータから取得する。
段取り作業に必要な情報を取得すると、第6の開示の数値制御装置100は、上述した第1~第5の開示と同じ処理を行う。
【0058】
段取り情報は、数値制御装置100に直接入力するだけでなく、ネットワーク上のPCやサーバから入力してもよい。近年の工場は、多数の機械がネットワークを介して接続されており、個々の工作機械200を中央のサーバで管理していることもある。
オンラインで段取り情報を入力する場合、生産管理を行うオペレータが中央のサーバから加工したいワークの情報や工具情報を入力し、不足している部品の加工を指示し、生産調整を行うことができる。
【0059】
以上説明したように、第1~第6の開示の数値制御装置100では、加工プログラム関連情報から取得した段取り情報と、加工プログラムを実行する装置に設定された段取り基本情報とから、段取り支援情報を作成し、オペレータの段取り支援を行う。加工プログラム関連情報は個々の加工プログラムに関連する情報であり、加工プログラムを実行する装置の設定情報は個々の装置に関連する情報である。本開示の数値制御装置100は、これらの情報を組み合わせて段取り支援情報を作成する。本開示の数値制御装置100では、加工プログラム関連情報から段取り情報を自動的に読み出すため、オペレータが加工プログラムを解析する負担を軽減する。
また、段取り作業の手順を画面に表示したり、周辺機器が段取り作業を自動的に行うため、オペレータの負担が軽減する。文書データは、汎用性が高く略全ての情報処理端末で読み取ることができる。また、段取り手順をサーバに集積して、複数の工作機械で共有することができる。作業加工プログラムの中には、段取り情報が含まれないものも存在するため、その場合には、必要な段取り情報を取得することもできる。
【0060】
本開示の段取り作業は全て数値制御装置100で行ったが、加工プログラムから段取り情報を抽出する段取り情報取得部12、及び段取り基本情報と段取り情報から段取り支援情報を生成する段取り支援情報生成部14の処理は、ネットワーク上の情報処理装置で分散して行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 数値制御装置
200 工作機械
300 PC
400 専用装置
11 装置登録情報記憶部
12 段取り情報取得部
13 加工プログラム関連情報記憶部
14 段取り支援情報生成部
15 段取り支援部
16 段取り支援画面作成部
17 手順書作成部
18 手順書表示部
19 手順書共有部
20 周辺機器制御部
111 CPU
114 不揮発性メモリ
115 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15