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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】着磁装置及び着磁方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H02K15/03 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023027095
(22)【出願日】2023-02-24
(65)【公開番号】P2024120356
(43)【公開日】2024-09-05
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】平良 斗輝生
(72)【発明者】
【氏名】根本 真次
(72)【発明者】
【氏名】加藤 稔貴
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182118(JP,A)
【文献】特開2020-120480(JP,A)
【文献】特開2023-144536(JP,A)
【文献】特開2024-047599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配置された複数の磁性体を有するロータに対して、前記ロータの径方向の磁界を印加することで、複数の前記磁性体を着磁する着磁装置であって、
前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向外向きの第1磁界を発生させる第1着磁コイルと、
前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの第2磁界を発生させる第2着磁コイルと、
前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの第3磁界を発生させる第3着磁コイルと、
前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの補助磁界を発生させる補助コイルと、
を備え、
前記第2磁界と前記第3磁界とを合成した合成磁界を前記第1着磁コイルが前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁界、前記第2磁界又は前記第3磁界が通る磁性体は、前記径方向に沿った磁化方向に着磁され、
前記第2磁界及び前記第3磁界による磁束のうち、前記第1磁界に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束であり、
前記補助コイルは、前記ロータに前記補助磁界を印加することで、複数の前記磁性体のうち、前記補助磁界が無いと仮定した場合に、前記漏れ磁束の通過によって磁化すべき方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる、着磁装置。
【請求項2】
請求項1記載の着磁装置において、
前記第1着磁コイルが前記合成磁界を前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、前記第1着磁コイルと前記径方向に向かい合う第1磁性体が径方向外向きに着磁され、前記第2着磁コイルと前記径方向に向かい合う第2磁性体が径方向内向きに着磁され、前記第3着磁コイルと前記径方向に向かい合う第3磁性体が径方向内向きに着磁され、
前記周方向に沿った前記第1磁性体と前記第2磁性体との間には、第4磁性体が配置され、
前記周方向に沿った前記第1磁性体と前記第3磁性体との間には、第5磁性体が配置され、
前記補助コイルは、
前記第1着磁コイルと前記第2着磁コイルとの間に配置され、中心軸線が前記ロータの外周面の接線方向を向くように配置された第1補助コイルと、
前記第1着磁コイルと前記第3着磁コイルとの間に配置され、中心軸線が前記ロータの外周面の接線方向を向くように配置された第2補助コイルと、
を有し、
前記第1補助コイルは、前記第4磁性体に対して、前記補助磁界である第1補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させ、
前記第2補助コイルは、前記第5磁性体に対して、前記補助磁界である第2補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる、着磁装置。
【請求項3】
請求項2記載の着磁装置において、
複数の前記磁性体は、前記ロータの軸方向にそれぞれ延び、
前記第1補助コイル及び前記第2補助コイルの各々は、
前記軸方向に延びる第1直線部と、
前記第1直線部に対して前記径方向に間隔を空けて配置され、前記軸方向に延びる第2直線部と、
前記径方向に延び、前記第1直線部の一端と前記第2直線部の一端とを連結する第1連結部と、
前記径方向に延び、前記第1直線部の他端と前記第2直線部の他端とを連結する第2連結部と、
をそれぞれ有し、
前記径方向に沿った前記第1連結部の長さ及び前記第2連結部の長さは、前記軸方向に沿った前記第1直線部の長さ及び前記第2直線部の長さよりも短い、着磁装置。
【請求項4】
請求項1記載の着磁装置において、
前記補助コイルは、
前記第1着磁コイルと前記第2着磁コイルとの間に設けられ、前記ロータの軸方向に延びる第1直線部と、
前記第1着磁コイルと前記第3着磁コイルとの間に設けられ、前記ロータの軸方向に延びる第2直線部と、
前記第1直線部の一端と前記第2直線部の一端とを連結する第1連結部と、
前記第1直線部の他端と前記第2直線部の他端とを連結する第2連結部と、
を有し、
前記第1直線部には、前記第1着磁コイルのうちの前記第1直線部に隣接する部分を流れる電流と、前記第2着磁コイルのうちの前記第1直線部に隣接する部分を流れる電流とは逆方向の電流が流れ、
前記第2直線部には、前記第1着磁コイルのうちの前記第2直線部に隣接する部分を流れる電流と、前記第3着磁コイルのうちの前記第2直線部に隣接する部分を流れる電流とは逆方向の電流が流れる、着磁装置。
【請求項5】
請求項1記載の着磁装置において、
前記補助コイルは、前記第1着磁コイルを挟み込むように配置され、前記第1磁界を挟むように2つの前記補助磁界を前記ロータに印加する、着磁装置。
【請求項6】
請求項1記載の着磁装置において、
前記補助コイルは、前記第1着磁コイルを挟み込むように配置された第1補助コイルと、前記第2着磁コイル及び前記第3着磁コイルを挟み込むように配置された第2補助コイルとを有し、
前記第1補助コイルは、前記第1磁界を挟むように、前記補助磁界である2つの第1補助磁界を前記ロータに印加し、
前記第2補助コイルは、前記第2磁界及び前記第3磁界を挟むように、前記補助磁界である2つの第2補助磁界を前記ロータに印加する、着磁装置。
【請求項7】
請求項1記載の着磁装置において、
複数の前記磁性体は、前記周方向に隣接する磁性体が互いに異なる方向となるように、それぞれ着磁され、
前記第1着磁コイルが前記第1磁界で前記合成磁界を引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、前記第1着磁コイルと前記径方向に向かい合う第1磁性体が径方向外向きに着磁され、
前記補助コイルは、前記ロータに前記補助磁界を印加することで、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁性体を挟んで前記周方向に隣接する2つの磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる、着磁装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の着磁装置において、
前記補助磁界の大きさは、前記第1磁界、前記第2磁界及び前記第3磁界の大きさよりも小さい、着磁装置。
【請求項9】
周方向に配置された複数の磁性体を有するロータに対して、前記ロータの径方向の磁界を印加することで、複数の前記磁性体を着磁する着磁方法であって、
前記ロータの外周面と向かい合うように、第1着磁コイル、第2着磁コイル、第3着磁コイル及び補助コイルを配置する配置工程と、
前記第1着磁コイルで径方向外向きの第1磁界を発生させ、前記第2着磁コイルで径方向内向きの第2磁界を発生させ、前記第3着磁コイルで径方向内向きの第3磁界を発生させ、前記第2磁界と前記第3磁界とを合成した合成磁界を前記第1着磁コイルが前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁界、前記第2磁界又は前記第3磁界が通る磁性体を、前記径方向に沿った磁化方向に着磁する着磁工程と、
を有し、
前記着磁工程では、
前記第2磁界及び前記第3磁界による磁束のうち、前記第1磁界に引き込まれない磁束が、径方向外向きの漏れ磁束となり、
前記補助コイルは、径方向内向きの補助磁界を前記ロータに印加することで、複数の前記磁性体のうち、前記補助磁界が無いと仮定した場合に、前記漏れ磁束の通過によって磁化すべき方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる、着磁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着磁装置及び着磁方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においても、CO排出量の削減及びエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。このため、温室効果ガスを排出せず、環境性能に優れた電気自動車に注目が集まっている。電気自動車には、駆動源として、高出力なモータが搭載される。また、航空機及び作業用機器についても電動化が進められており、汎用機器の分野でも、エンジンからモータへの置き換えが進められている。
【0003】
モータの中でも、ロータに永久磁石を有するPMモータは、効率に優れ環境性能が高いとされる。このようなモータに用いられるロータは、製造工程の最終段階で永久磁石を磁化させる着磁工程を有する。例えば、特許文献1は、ロータに配列された多極の永久磁石に対する着磁装置及び着磁方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-224055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動化技術においては、モータの小型化及び高出力化を図り、エネルギー効率の改善に寄与するべく、モータの小径化及び高回転化を目指した研究が進められている。高回転型のモータは、遠心力によるロータの変形及び磁石の飛散を防止するために、ロータの周囲に飛散防止用のスリーブを設けることがある。この場合には、ステータとロータとの間のエアーギャップが広がることで、着磁への影響が生じる。また、磁石をロータの外側に配置するSPM型のモータの出現、磁石のハルバッハ配置による高出力化の試み、磁石の高性能化、及び極数の増加等により、ロータ構造の変化が起きている。ロータの小径化及び極数の増加は、永久磁石を着磁する際の磁気回路を小さくし、磁束が永久磁石の内部まで届きにくくなる問題を生じる。また、磁石の高性能化は、磁石を磁化させるために必要な磁界強度を増大させ、より強度の高い着磁用磁界を必要する。このように、従来の着磁装置では、着磁が難しいロータが現われてきている。
【0006】
このような問題への対策として、電源容量を大きくし、着磁コイルに流す電流を増大させることで、必要な磁界強度を確保することが考えられる。しかしながら、電流の増大は、電源設備への投資の増加と共に、着磁コイルの寿命を縮める結果をもたらし、製造費用を増加させる。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、周方向に配置された複数の磁性体を有するロータに対して、前記ロータの径方向の磁界を印加することで、複数の前記磁性体を着磁する着磁装置であって、前記着磁装置は、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向外向きの第1磁界を発生させる第1着磁コイルと、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの第2磁界を発生させる第2着磁コイルと、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの第3磁界を発生させる第3着磁コイルと、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの補助磁界を発生させる補助コイルと、を備え、前記第2磁界と前記第3磁界とを合成した合成磁界を前記第1着磁コイルが前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁界、前記第2磁界又は前記第3磁界が通る磁性体は、前記径方向に沿った磁化方向に着磁され、前記第2磁界及び前記第3磁界による磁束のうち、前記第1磁界に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束であり、前記補助コイルは、前記ロータに前記補助磁界を印加することで、複数の前記磁性体のうち、前記補助磁界が無いと仮定した場合に、前記漏れ磁束の通過によって磁化すべき方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。
【0009】
本発明の第2の態様は、周方向に配置された複数の磁性体を有するロータに対して、前記ロータの径方向の磁界を印加することで、複数の前記磁性体を着磁する着磁方法であって、前記着磁方法は、前記ロータの外周面と向かい合うように、第1着磁コイル、第2着磁コイル、第3着磁コイル及び補助コイルを配置する配置工程と、前記第1着磁コイルで径方向外向きの第1磁界を発生させ、前記第2着磁コイルで径方向内向きの第2磁界を発生させ、前記第3着磁コイルで径方向内向きの第3磁界を発生させ、前記第2磁界と前記第3磁界とを合成した合成磁界を前記第1着磁コイルが前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁界、前記第2磁界又は前記第3磁界が通る磁性体を、前記径方向に沿った磁化方向に着磁する着磁工程と、を有し、前記着磁工程では、前記第2磁界及び前記第3磁界による磁束のうち、前記第1磁界に引き込まれない磁束が、径方向外向きの漏れ磁束となり、前記補助コイルは、径方向内向きの補助磁界を前記ロータに印加することで、複数の前記磁性体のうち、前記補助磁界が無いと仮定した場合に、前記漏れ磁束の通過によって磁化すべき方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2磁界と第3磁界とを合成した合成磁界を第1磁界で引き込むので、ロータの磁性体の内部にまで高強度の磁界が到達する。これにより、低コストで、磁性体の内部まで着磁することができる。この結果、複数の磁性体に対する着磁作業を効率よく行うことができる。
【0011】
また、第2磁界と第3磁界とを合成した合成磁界を第1磁界で引き込むときに、第1磁界に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束となる。複数の磁性体のうち、漏れ磁束が通過する磁性体は、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性がある。そこで、本発明では、複数の磁性体のうち、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。これにより、漏れ磁束は、当該磁性体を避けるようにロータ内を通過する。この結果、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体が発生することを回避することができる。
【0012】
従って、本発明では、ロータ内の第1着磁コイルに最も近接する磁性体を集中して着磁させつつ、漏れ磁束によってロータ内の他の磁性体が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る着磁装置の斜視図である。
図2図2は、ロータ、第1着磁コイル、第2着磁コイル、第3着磁コイル及び補助コイルの斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る着磁装置の磁界分布を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る着磁方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第1比較例の着磁装置の磁界分布を示す図である。
図6図6は、第2比較例の着磁装置の磁界分布を示す図である。
図7図7は、本実施形態、第1比較例及び第2比較例での磁束密度の分布を示すグラフである。
図8図8は、本実施形態の第1変形例に係る着磁装置の斜視図である。
図9図9は、ロータ、第1着磁コイル、第2着磁コイル、第3着磁コイル及び補助コイルの斜視図である。
図10図10は、本実施形態の第1変形例に係る着磁装置の磁界分布を示す図である。
図11図11は、第3比較例の着磁装置の磁界分布を示す図である。
図12図12は、第4比較例の着磁装置の磁界分布を示す図である。
図13図13は、本実施形態の第2変形例に係る着磁装置の磁界分布を示す図である。
図14図14は、本実施形態の第3変形例に係る着磁装置の斜視図である。
図15図15は、本実施形態の第3変形例に係る着磁装置の磁界分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る着磁装置10の斜視図である。
【0015】
本実施形態に係る着磁装置10は、着磁ヨーク12と、第1着磁コイル14と、第2着磁コイル16と、第3着磁コイル18と、補助コイル20と、制御部22とを備える。
【0016】
着磁ヨーク12は、円筒形のヨークである。着磁ヨーク12の中央部には、空洞部24が形成されている。空洞部24は、着磁ヨーク12の軸方向に沿って形成されている。空洞部24には、円筒形のロータ26(図2参照)が収容される。ロータ26の中央部には、不図示のシャフトが挿通する空洞部27が形成されている。図1に示すように、ロータ26は、着磁ヨーク12の軸方向に沿って、空洞部24に収容される。空洞部24の内径は、ロータ26の外径よりも僅かに大きい。
【0017】
ロータ26は、例えば、PMモータに用いられる。ロータ26は、ロータ本体28と複数の磁性体30とを有する。ロータ本体28は、軟磁性体よりなる円柱形の部材である。ロータ本体28の外周側には、複数の収容孔32が形成されている。複数の収容孔32は、ロータ本体28の周方向に等間隔に形成されている。複数の収容孔32の各々は、ロータ本体28を軸方向に貫通している。なお、図3に示すように、本実施形態では、第1磁性体34及び第1着磁コイル14が配置される角度位置を0°とする。また、図3に示すように、本実施形態では、ロータ26及び着磁ヨーク12の中心軸線回りで反時計方向の向きを、ロータ26の周方向の正方向とする。さらに、図3において、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16、第3着磁コイル18及び補助コイル20に図示されているX印及びドットは、電流の向きを示している。
【0018】
複数の収容孔32の各々には、磁性体30が挿入される。複数の磁性体30の各々は、収容孔32に挿入された状態で不図示の樹脂によって封止されることで、ロータ本体28に固定される。複数の磁性体30は、着磁装置10の着磁対象となる磁性体である。複数の磁性体30は、硬磁性体である。複数の磁性体30は、着磁装置10によって着磁されることで、永久磁石となる。ロータ本体28と複数の磁性体30の両端とは、炭素繊維複合材等よりなる不図示の補強層によって覆われている。
【0019】
本実施形態では、ロータ本体28に、例えば、8つの収容孔32が形成される。具体的には、8つの収容孔32は、平面視で、ロータ26の周方向に45°間隔で形成されている(図3参照)。従って、ロータ本体28には、ロータ26の周方向に45°間隔で、8個の磁性体30が収容される。なお、ロータ26は、SPMモータに使用されてもよい。また、磁性体30の数(ロータ26の極数)は8に限定されない。
【0020】
第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、着磁ヨーク12における空洞部24の近くに配置されている。第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、着磁ヨーク12の周方向に所定の角度を開けて配置される。図2及び図3に示すように、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の各々は、中心軸線がロータ26の径方向を向くように、ロータ26(ロータ本体28)の外周面36に向かい合っている。
【0021】
本実施形態では、例えば、第1着磁コイル14の角度位置を0°としたときに、第2着磁コイル16が135°の角度位置に配置され、第3着磁コイル18が225°の角度位置に配置される。従って、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、平面視で、Y字の位置関係となるように配置される。
【0022】
なお、本実施形態では、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、着磁ヨーク12の周方向に所定の角度を開けて配置されてもよい。従って、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、任意の位置関係で配置されてもよい。また、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の角度位置は、着磁対象とする磁性体30の極数(及び配置角度)に応じて適宜調整されてもよい。
【0023】
第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、複数の磁性体30のうち、いずれか1つの磁性体30と向かい合う角度位置に配置されている。具体的には、第1着磁コイル14は、0°の角度位置に配置された磁性体30(第1磁性体34)と向かい合っている。第2着磁コイル16は、135°の角度位置に配置された磁性体30(第2磁性体38)と向かい合っている。第3着磁コイル18は、225°の角度位置に配置された磁性体30(第3磁性体40)と向かい合っている。
【0024】
制御部22は、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16、第3着磁コイル18に着磁用の磁界を発生させるための電流を供給する。また、制御部22は、補助コイル20に補助用の磁界(補助磁界)を発生させるための電流を供給する。
【0025】
第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18は、制御部22からの電流の供給によって、ロータ26の径方向に沿った磁界を発生する(図3参照)。発生した磁界は、ロータ26に印加される。
【0026】
具体的には、第1着磁コイル14は、径方向外向きの磁界(第1磁界42)を発生させ、発生した第1磁界42をロータ26に印加する。第1着磁コイル14と向かい合う第1磁性体34は、第1磁界42によって、径方向外向きに着磁される。
【0027】
第2着磁コイル16は、径方向内向きの磁界(第2磁界44)を発生させ、発生した第2磁界44をロータ26に印加する。第2着磁コイル16と向かい合う第2磁性体38は、第2磁界44によって、径方向内向きに着磁される。
【0028】
第3着磁コイル18は、径方向内向きの磁界(第3磁界46)を発生させ、発生した第3磁界46をロータ26に印加する。第3着磁コイル18と向かい合う第3磁性体40は、第3磁界46によって、径方向内向きに着磁される。
【0029】
本実施形態では、第1磁界42、第2磁界44及び第3磁界46の各々の向きは、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の各々の巻き方(巻回方向)によって決定される。この場合、第1着磁コイル14の巻回方向と、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の巻回方向とを互いに異なる方向にする。これにより、第1着磁コイル14は、径方向外向きの第1磁界42を発生させる。また、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の各々は、径方向内向きの磁界(第2磁界44、第3磁界46)を発生させる。
【0030】
なお、図1図3では、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18が模式的に図示されている。本実施形態では、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の各々の巻数は、1以上である。
【0031】
また、本実施形態では、制御部22から第1磁界42、第2磁界44及び第3磁界46に供給される電流の方向によって第1磁界42、第2磁界44及び第3磁界46の各々の向きが決定されてもよい。
【0032】
本実施形態では、例えば、図1図3に示す角度位置で着磁を行った後、人力等でロータ26を所定角度ずつ回転させ、着磁を繰り返し行う。そのため、周方向に並んだ複数の磁性体30は、ロータ26の外周側にN極とS極とが交互に現れるように磁化される。
【0033】
なお、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の巻数及び供給電流は同じであってもよい。また、本実施形態では、不図示の回転機構によってロータ26を該ロータ26の中心軸線回りに所定角度ずつ回転させることで、着磁を繰り返し行ってもよい。
【0034】
図2及び図3に示すように、補助コイル20は、ロータ26の外周面36と向かい合うように着磁ヨーク12に配置されている。補助コイル20は、第1補助コイル45と第2補助コイル47とを有する。
【0035】
第1補助コイル45は、第1着磁コイル14と第2着磁コイル16との間に配置されている。第1補助コイル45は、中心軸線がロータ26の外周面36の接線方向を向くように配置されている。第2補助コイル47は、第1着磁コイル14と第3着磁コイル18との間に配置されている。第2補助コイル47は、中心軸線がロータ26の外周面36の接線方向を向くように配置されている。従って、補助コイル20(第1補助コイル45及び第2補助コイル47)は、第1着磁コイル14を挟み込むように着磁ヨーク12に配置されている。
【0036】
第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々は、第1直線部50と、第2直線部52と、第1連結部54と、第2連結部56とを有する。第1直線部50は、ロータ26の軸方向に延びている。第2直線部52は、第1直線部50に対して、ロータ26の径方向外側に間隔を空けて配置されている。第2直線部52は、ロータ26の軸方向に延びている。第1連結部54は、ロータ26の径方向に延びている。第1連結部54は、第1直線部50の一端と第2直線部52の一端とを連結する。第2連結部56は、ロータ26の径方向に延びている。第2連結部56は、第1直線部50の他端と第2直線部52の他端とを連結する。なお、ロータ26の径方向に沿った第1連結部54及び第2連結部56の各々の長さは、ロータ26の軸方向に沿った第1直線部50及び第2直線部52の各々の長さよりも短い。
【0037】
第1補助コイル45の第1直線部50は、第1着磁コイル14と第2着磁コイル16との間に設けられている。詳しくは、第1補助コイル45の第1直線部50は、第1着磁コイル14のうちの該第1直線部50との隣接部分65と、第2着磁コイル16のうちの該第1直線部50との隣接部分66との間の角度位置に配置されていればよい。図1図3では、第1補助コイル45の第1直線部50は、ロータ26の外周面36のうち、周方向に沿って第1磁性体34から45°の角度位置に配置された磁性体30(第1磁性体34に隣接する一方の磁性体30である第4磁性体48)と、第1磁性体34から90°の角度位置に配置された磁性体30との間の部分に向かい合うように配置されている。なお、隣接部分65は、第1着磁コイル14のうち、ロータ26の周方向に沿った第2着磁コイル16に近接する部分でもある。また、隣接部分66は、第2着磁コイル16のうち、ロータ26の周方向に沿った第1着磁コイル14に近接する部分でもある。
【0038】
また、第2補助コイル47の第1直線部50は、第1着磁コイル14と第3着磁コイル18との間に設けられている。詳しくは、第2補助コイル47の第1直線部50は、第1着磁コイル14のうちの該第1直線部50との隣接部分67と、第3着磁コイル18のうちの該第1直線部50との隣接部分68との間の角度位置に配置されていればよい。図1図3では、第2補助コイル47の第1直線部50は、ロータ26の外周面36のうち、周方向に沿って第1磁性体34から-45°の角度位置に配置された磁性体30(第1磁性体34に隣接する他方の磁性体30である第5磁性体49)と、第1磁性体34から-90°の角度位置に配置された磁性体30との間の部分に向かい合うように配置されている。なお、隣接部分67は、第1着磁コイル14のうち、ロータ26の周方向に沿った第3着磁コイル18に近接する部分でもある。また、隣接部分68は、第3着磁コイル18のうち、ロータ26の周方向に沿った第1着磁コイル14に近接する部分でもある。
【0039】
補助コイル20は、制御部22からの電流の供給によって、第1磁界42を挟むように、2つの補助磁界を発生する。詳しくは、第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々において、第1直線部50は、制御部22から供給される電流によって径方向内向きの補助磁界を発生する。本実施形態では、補助磁界の向きは、第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々の巻き方(巻回方向)によって決定される。この場合、第1着磁コイル14の巻回方向に対して、第1補助コイル45及び第2補助コイル47の巻回方向を異なる方向にする。これにより、第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々は、径方向内向きの補助磁界を発生させる。
【0040】
各補助磁界の強度は、第1磁界42~第3磁界46の強度よりも小さい。本実施形態では、補助磁界の強度は、補助コイル20(第1補助コイル45、第2補助コイル47)の巻数によって決定される。そのため、補助コイル20の巻数が小さくなる程、補助磁界の強度は弱くなる。つまり、本実施形態では、第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々の巻数を適宜調整することで、各補助磁界の強度を第1磁界42~第3磁界46の強度よりも小さくしている。
【0041】
発生した各補助磁界は、ロータ26に印加される。第1磁性体34を挟んで周方向に隣接する第4磁性体48及び第5磁性体49には、補助磁界による径方向内向きの磁束58が通過する。
【0042】
なお、図3に示すように、磁束58は、第1直線部50を中心として周回する磁束である。そのため、第4磁性体48と第2磁性体38の間に配置された磁性体30には、磁束58が径方向外向きに通過する。また、第5磁性体49と第3磁性体40の間に配置された磁性体30には、磁束58が径方向外向きに通過する。つまり、これらの磁性体30から見れば、第1補助コイル45及び第2補助コイル47は、径方向外向きの磁界(補助磁界)を印加していることになる。
【0043】
図1図3では、一例として、第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々の巻数が1である場合を示し、以下同様とする。
【0044】
なお、本実施形態では、制御部22から第1補助コイル45及び第2補助コイル47に供給される電流の方向によって補助磁界の向きが決定されてもよい。
【0045】
本実施形態の着磁装置10は、以上のように構成される。次に、本実施形態の着磁方法について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
図4のステップS1の配置工程では、着磁装置10(図1及び図3参照)にロータ26が固定される。具体的には、8個の磁性体30を有するロータ26が空洞部24に配置される。この場合、複数の磁性体30のうち、3つの磁性体30が第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18とロータ26の径方向に向かい合うように、着磁ヨーク12に対してロータ26を周方向に位置決めする。これにより、第1着磁コイル14に対してロータ26の径方向に向かい合う磁性体30が第1磁性体34となる。第2着磁コイル16に対して該径方向に向かい合う磁性体30が第2磁性体38となる。第3着磁コイル18に対して該径方向に向かい合う磁性体30が第3磁性体40となる。換言すれば、ステップS1の配置工程では、ロータ26の外周面36と向かい合うように、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16、第3着磁コイル18及び補助コイル20(第1補助コイル45、第2補助コイル47)が配置される。その後、ロータ26は、不図示の固定部材で着磁ヨーク12に固定される。
【0047】
次のステップS2の着磁工程では、1回目の着磁作業が行われる。着磁工程では、制御部22は、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18に電流を供給する。
【0048】
第1着磁コイル14は、制御部22から電流が供給されているときに、径方向外向きの第1磁界42を発生させる。第1磁界42が発生すると、径方向外向きの磁束が第1磁性体34を通過する。これにより、第1磁性体34は、径方向外向きに着磁される。すなわち、第1磁性体34は、径方向外側がN極となり、径方向内側がS極となる向きに磁化される。
【0049】
第2着磁コイル16は、制御部22から電流が供給されているときに、径方向内向きの第2磁界44を発生させる。第2磁界44が発生すると、径方向内向きの磁束が第2磁性体38を通過する。これにより、第2磁性体38は、径方向内向きに着磁される。すなわち、第2磁性体38は、径方向内側がN極となり、径方向外側がS極となる向きに磁化される。
【0050】
第3着磁コイル18は、制御部22から電流が供給されているときに、径方向内向きの第3磁界46を発生させる。第3磁界46が発生すると、径方向内向きの磁束が第3磁性体40を通過する。これにより、第3磁性体40は、径方向内向きに着磁される。すなわち、第3磁性体40は、径方向内側がN極となり、径方向外側がS極となる向きに磁化される。
【0051】
着磁工程では、図3に白抜きの矢印で示すように、第1磁性体34を通る磁界(第1磁界42)と、第2磁性体38を通る磁界(第2磁界44)と、第3磁性体40を通る磁界(第3磁界46)とによって、平面視で、ロータ26の内部にY字状の磁気回路60が形成される。これにより、比較的径の小さいロータ26に対しても、第1磁性体34、第2磁性体38及び第3磁性体40の中心側にまで、着磁用の磁界が到達する。この結果、より効果的に第1磁性体34、第2磁性体38及び第3磁性体40を磁化することができる。
【0052】
また、第1着磁コイル14は、第2磁界44及び第3磁界46を合成した合成磁界62を、第1磁界42で引き込む。これにより、第1着磁コイル14の近傍に磁束線が集中し、第1着磁コイル14の近傍の磁界強度が大幅に増大する。また、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18の近傍の磁界強度も増大する。この結果、第1磁性体34、第2磁性体38及び第3磁性体40に対する磁化率を高めることができ、より磁束密度の高い高性能の永久磁石を形成することができる。
【0053】
さらに、着磁工程では、第1着磁コイル14が第1磁界42で合成磁界62を引き込むときに、第1磁界42に引き込まれない磁束は、破線で示すように、径方向外向きの漏れ磁束64となる。複数の磁性体30のうち、一部の磁性体30では、漏れ磁束64の通過によって、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性がある。
【0054】
具体的には、第1磁性体34を挟むように周方向に隣接する第4磁性体48及び第5磁性体49は、本来、径方向内向きに磁化される。しかしながら、第4磁性体48及び第5磁性体49に対して径方向外向きの漏れ磁束64が通過すると、第4磁性体48及び第5磁性体49は、本来の径方向内向きの磁化方向とは逆方向(径方向外向きの方向)に磁化される可能性がある。
【0055】
なお、漏れ磁束64は、第1磁性体34に対して90°の角度位置、180°の角度位置、及び、270°の角度位置に配置された各磁性体30にも通過する。但し、これらの磁性体30は、本来の磁化方向が径方向外向きの方向である。そのため、これらの磁性体30は、径方向外向きの漏れ磁束64が通過しても、本来の磁化方向(径方向外向きの方向)と逆方向に磁化されることはない。
【0056】
そこで、着磁工程では、制御部22は、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18に加え、補助コイル20にも電流を供給する。補助コイル20は、制御部22から電流が供給されているときに、径方向内向きの補助磁界を発生させる。
【0057】
具体的には、制御部22は、第1補助コイル45及び第2補助コイル47に電流を供給する。
【0058】
第1補助コイル45の巻回方向は、第1着磁コイル14及び第2着磁コイル16の巻回方向とは異なる。そのため、第1補助コイル45の第1直線部50を流れる電流は、第1着磁コイル14の隣接部分65及び第2着磁コイル16の隣接部分66に流れる電流とは逆方向の電流となる。第1補助コイル45の第1直線部50に電流が流れることで、該第1直線部50の周囲には、第1補助磁界が発生する。第1補助磁界が発生することで、ロータ26の周方向に沿って第1磁性体34に隣接する第4磁性体48に径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、当該第4磁性体48を避けるようにロータ26内を通過する。この結果、第4磁性体48が本来の磁化方向(径方向内側の方向)とは逆方向に磁化されることを回避することができる。
【0059】
第2補助コイル47の巻回方向は、第1着磁コイル14及び第3着磁コイル18の巻回方向とは異なる。そのため、第2補助コイル47の第1直線部50を流れる電流は、第1着磁コイル14の隣接部分67及び第3着磁コイル18の隣接部分68に流れる電流とは逆方向の電流となる。第2補助コイル47の第1直線部50に電流が流れることで、該第1直線部50の周囲には、第2補助磁界が発生する。第2補助磁界が発生することで、ロータ26の周方向に沿って第1磁性体34に隣接する第5磁性体49に径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、当該第5磁性体49を避けるようにロータ26内を通過する。この結果、第5磁性体49が本来の磁化方向(径方向内側の方向)とは逆方向に磁化されることを回避することができる。
【0060】
第1磁性体34を挟むように隣接する第4磁性体48及び第5磁性体49に対して、径方向内向きの磁束58が通過することにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、第4磁性体48及び第5磁性体49を避けるようにロータ26内を通過する。これにより、第4磁性体48及び第5磁性体49が本来の磁化方向(径方向内側の方向)とは逆方向に磁化されることを回避することができる。
【0061】
以上のように1回目の着磁作業が終了した後、次のステップS3において、ステップS2の着磁工程を繰り返すか否かが判定される。
【0062】
ステップS2の着磁工程を繰り返す場合(ステップS3:YES)、2回目の着磁工程の実行が決定される。次のステップS4では、人力等によってロータ26が-90°回転される。これにより、1回目の着磁工程で90°の角度位置に配置されていた磁性体30は、第1着磁コイル14と向かい合う。すなわち、1回目の着磁作業で着磁されなかった3つの磁性体30が、新たな第1磁性体34~第3磁性体40として、第1着磁コイル14~第3着磁コイル18とロータ26の径方向に向かい合う。
【0063】
その後、ステップS2に戻り、1回目の着磁作業と同様の方法で、2回目の着磁作業が実行される。以下同様に、2回目の着磁作業の終了後、ロータ26を-90°回転させた後に、3回目の着磁作業が実行される。また、3回目の着磁作業の終了後、ロータ26を-90°回転させた後に、4回目の着磁作業が実行される。このように、着磁作業を4回実行することにより、全ての磁性体30が着磁される。
【0064】
4回目の着磁作業の終了後、ステップS3において、着磁作業の終了が決定される(ステップS3:NO)。その後、着磁装置10は、ステップS5に進む。
【0065】
ステップS5において、ロータ26は、着磁装置10から取り外される。
【0066】
図5は、第1比較例の着磁装置70での磁界分布を示す図である。なお、第1比較例において、本実施形態と同じ構成については、同じ参照符号を付けて説明し、以下同様とする。
【0067】
第1比較例では、8個の着磁コイル72を有する着磁装置70が使用される。8個の着磁コイル72は、8個の磁性体30のそれぞれと向かい合うように配置される。着磁装置70では、制御部22から8個の着磁コイル72に同時に電流が供給される。つまり、第1比較例では、8個の磁性体30への着磁が同時に行われる。しかしながら、第1比較例では、本実施形態(図3参照)と比較して、磁気回路が小さくなる。磁性体30の内方に十分な磁界を印加することができない。
【0068】
これに対して、本実施形態では、図3に示すように、周方向に離れた第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18に電流を供給する。しかも、本実施形態では、大きな磁気回路60を形成することができる。そのため、第1磁性体34~第3磁性体40の内方まで効果的に磁化することができる。また、第2磁性体38及び第3磁性体40を通過する磁束を第1磁性体34に集中させることができるので、第1磁性体34により高い着磁用の磁界を印加することができる。
【0069】
図6は、第2比較例の着磁装置80での磁界分布を示す図である。第2比較例では、補助コイル20が設けられていない点で、本実施形態(図3参照)とは異なる。第2比較例では、第1磁界42に引き込まれない径方向外向きの漏れ磁束64が、第1磁性体34に隣接する第4磁性体48及び第5磁性体49を通過する。これにより、第2比較例では、第4磁性体48及び第5磁性体49が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化される。
【0070】
これに対して、本実施形態では、図3に示すように、補助コイル20を構成する第1補助コイル45及び第2補助コイル47の各々の第1直線部50の周辺に発生する径方向内向きの補助磁界(第1補助磁界、第2補助磁界)によって、径方向内向きの磁束58が第4磁性体48及び第5磁性体49を通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、径方向内向きの磁束58を避けるように、ロータ26内を通過する。この結果、第4磁性体48及び第5磁性体49が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化されることを阻止することができる。
【0071】
図7は、シミュレーション計算によって求めた磁界強度(磁束密度)の分布を示す。図7は、本実施形態(図3参照)、第1比較例(図5参照)及び第2比較例(図6参照)について、ロータ26内部の測定線90に沿った磁界強度の分布を示す。図7において、本実施形態の磁界強度を実線で示す。第1比較例の磁界強度を破線で示す。第2比較例の磁界強度を一点鎖線で示す。
【0072】
本実施形態では、白抜きの矢印で示すように、第1磁性体34(0°の角度位置)、第2磁性体38(135°の角度位置)及び第3磁性体40(225°の角度位置)のいずれにおいても、第1比較例よりも高い着磁用の磁界を与えることが分かる。また、磁界が集中する第1磁性体34の磁界強度は、第1比較例の磁界強度の2倍程度となり、第1磁性体34をより効果的に磁化できることが分かる。
【0073】
さらに、太い黒線の矢印で示すように、本実施形態では、第2比較例と比較して、第1磁性体34(0°の角度位置)に隣接する第4磁性体48(45°の角度位置)及び第5磁性体49(315°(-45°)の角度位置)が、本来の磁化方向とは逆方向に磁化することを回避していることが分かる。
【0074】
図8は、本実施形態の第1変形例に係る着磁装置92の斜視図である。着磁装置92は、補助コイル20が1つの補助コイル94である点で、着磁装置10(図1図3参照)とは異なる。
【0075】
補助コイル94は、第1着磁コイル14を挟み込むように着磁ヨーク12に配置されている。補助コイル20は、第1直線部50と、第2直線部52と、第1連結部54と、第2連結部56とを有する。
【0076】
第1直線部50は、第1着磁コイル14と第2着磁コイル16との間に設けられている。第1直線部50は、第1着磁コイル14の隣接部分65と、第2着磁コイル16の隣接部分66との間の角度位置に配置されている。図8図10では、第1直線部50は、ロータ26の外周面36のうち、第4磁性体48と、第1磁性体34から90°の角度位置に配置された磁性体30との間の部分に向かい合うように配置されている。
【0077】
第2直線部52は、第1着磁コイル14と第3着磁コイル18との間に設けられている。第2直線部52は、第1着磁コイル14の隣接部分67と、第3着磁コイル18の隣接部分68との間の角度位置に配置されている。図8図10では、第2直線部52は、ロータ26の外周面36のうち、第5磁性体49と、第1磁性体34から-90°の角度位置に配置された磁性体30との間の部分に向かい合うように配置されている。
【0078】
補助コイル94は、制御部22から電流が供給されているときに、第1磁界42を挟むように、2つの補助磁界を発生する。詳しくは、第1直線部50及び第2直線部52の各々は、制御部22から電流が供給されているときに、径方向内向きの補助磁界を発生する。各補助磁界の強度は、第1磁界42~第3磁界46の強度よりも小さい。発生した各補助磁界は、ロータ26に印加される。第1磁性体34を挟んで周方向に隣接する第4磁性体48及び第5磁性体49には、補助磁界による径方向内向きの磁束58が通過する。
【0079】
第1変形例では、着磁工程において、第1直線部50には、第1着磁コイル14の隣接部分65を流れる電流と、第2着磁コイル16の隣接部分66を流れる電流とは逆方向の電流が流れる。これにより、第1直線部50の周囲には、補助磁界が発生する。第1直線部50の周囲に補助磁界が発生することで、ロータ26の周方向に沿って第1磁性体34に隣接する第4磁性体48に径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、当該第4磁性体48を避けるようにロータ26内を通過する。この結果、第4磁性体48が本来の磁化方向(径方向内側の方向)とは逆方向に磁化されることを回避することができる。
【0080】
また、第1変形例では、着磁工程において、第2直線部52には、第1着磁コイル14の隣接部分67を流れる電流と、第3着磁コイル18の隣接部分68を流れる電流とは逆方向の電流が流れる。これにより、第2直線部52の周囲には、補助磁界が発生する。第2直線部52の周囲に補助磁界が発生することで、ロータ26の周方向に沿って第1磁性体34に隣接する第5磁性体49に径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、当該第5磁性体49を避けるようにロータ26内を通過する。この結果、第5磁性体49が本来の磁化方向(径方向内側の方向)とは逆方向に磁化されることを回避することができる。
【0081】
図11は、第3比較例の着磁装置100の磁界分布を示す図であり、図12は、第4比較例の着磁装置110の磁界分布を示す図であり、図13は、本実施形態の第2変形例に係る着磁装置120の磁界分布を示す図である。第3比較例、第4比較例及び第2変形例では、12個(12極)の磁性体30を有するロータ26に対して着磁作業を行う場合を図示している。この場合、12個の磁性体30は、ロータ26の周方向に30°間隔で配置されている。
【0082】
図11の第3比較例では、12個の着磁コイル72が12個の磁性体30のそれぞれと向かい合っている。第3比較例では、制御部22から12個の着磁コイル72に同時に電流が供給され、12個の磁性体30への着磁が同時に行われる。しかしながら、第3比較例では、第1比較例(図5参照)と同様に、磁気回路が小さくなり、磁性体30の内方に十分な磁界を印加することができない。
【0083】
図12の第4比較例では、第2比較例(図6参照)と同様に、補助コイル20が設けられていない。第4比較例では、第1磁界42に引き込まれない径方向外向きの漏れ磁束64が、第1磁性体34に隣接する2つの磁性体30(第1磁性体34に対して+30°の角度位置に配置された第4磁性体48、-30°(330°)の角度位置に配置された第5磁性体49)を通過する。また、第4比較例では、第1磁性体34に対して+90°の角度位置に配置された磁性体30(第6磁性体112)と、第1磁性体34に対して-90°(270°)の角度位置に配置された磁性体30(第7磁性体114)とにも、漏れ磁束64が通過する。これにより、第4比較例では、合計で4つの磁性体30(第4磁性体48、第5磁性体49、第6磁性体112、第7磁性体114)が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化される。
【0084】
これに対して、図13の第2変形例に係る着磁装置120では、補助コイル20は、第1補助コイル122と第2補助コイル124とを有する。第1補助コイル122は、図8に示す第1変形例の補助コイル94と同様に、第1着磁コイル14を挟み込むように配置されている。第2補助コイル124は、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18を挟み込むように配置されている。なお、第1補助コイル122及び第2補助コイル124も、第1直線部50及び第2直線部52等を有する。
【0085】
第2変形例において、制御部22は、第1着磁コイル14、第2着磁コイル16及び第3着磁コイル18に加え、第1補助コイル122及び第2補助コイル124に電流を供給する。
【0086】
第1補助コイル122は、制御部22からの電流の供給を受けて、補助磁界である2つの第1補助磁界を発生する。2つの第1補助磁界は、第1磁界42を挟むように、第1補助コイル122の第1直線部50及び第2直線部52の周囲に発生する。第4磁性体48及び第5磁性体49には、径方向内向きの第1補助磁界が印加される。第4磁性体48及び第5磁性体49には、第1補助磁界によって、径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、漏れ磁束64は、径方向内向きの磁束58を避けるように、ロータ26の内部を通過する。
【0087】
また、第2補助コイル124は、制御部22からの電流の供給を受けて、補助磁界である2つの第2補助磁界を発生する。2つの第2補助磁界は、第2補助コイル124の第1直線部50及び第2直線部52の周囲に発生する。第6磁性体112及び第7磁性体114には、径方向内向きの第2補助磁界が印加される。第6磁性体112及び第7磁性体114には、第2補助磁界によって、径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、漏れ磁束64は、径方向内向きの磁束58を避けるように、ロータ26の内部を通過する。
【0088】
このように、第2変形例では、第1補助コイル122及び第2補助コイル124の周辺に発生する径方向内向きの第1補助磁界及び第2補助磁界によって、径方向内向きの磁束58が第4磁性体48、第5磁性体49、第6磁性体112及び第7磁性体114を通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64は、径方向内向きの磁束58を避けるように、ロータ26内を通過する。この結果、第4磁性体48、第5磁性体49、第6磁性体112及び第7磁性体114が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化されることを阻止することができる。
【0089】
図14は、本実施形態の第3変形例に係る着磁装置130の斜視図であり、図15は、第3変形例に係る着磁装置130の磁界分布を示す図である。なお、図14では、着磁ヨーク12の図示を省略している。
【0090】
第3変形例では、補助コイル20は、第1補助コイル132と第2補助コイル134とを有する。第3変形例では、第1磁性体34に隣接する第4磁性体48及び第5磁性体49と向かい合うように、第1補助コイル132と第2補助コイル134とが配置されている。第1補助コイル132は、中心軸線が径方向を向くように、第4磁性体48と向かい合っている。第2補助コイル134は、中心軸線が径方向を向くように、第5磁性体49と向かい合っている。
【0091】
第3変形例では、制御部22から第1補助コイル132及び第2補助コイル134に電流を流したときに、第1補助コイル132の周囲に第1補助磁界が発生すると共に、第2補助コイル134の周囲に第2補助磁界が発生する。第1補助磁界及び第2補助磁界は、径方向内向きの磁界である。第1補助磁界及び第2補助磁界が発生することで、第4磁性体48及び第5磁性体49には、径方向内向きの磁束58が通過する。これにより、径方向外向きの漏れ磁束64が径方向内向きの磁束58を避けるようにロータ26内を通過するので、第4磁性体48及び第5磁性体49が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化されることを阻止することができる。
【0092】
本実施形態及び第1~第3変形例は、以下の効果を有する。
【0093】
図3図10図13及び図15に示すように、本実施形態及び第1~第3変形例では、第2磁界44と第3磁界46とを合成した合成磁界62を第1磁界42で引き込むので、ロータ26の磁性体30の内部にまで高強度の磁界が到達する。これにより、低コストで、磁性体30の内部まで着磁することができる。この結果、複数の磁性体30に対する着磁作業を効率よく行うことができる。
【0094】
また、第2磁界44と第3磁界46とを合成した合成磁界62を第1磁界42で引き込むときに、第1磁界42に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束64となる。複数の磁性体30のうち、漏れ磁束64が通過する磁性体30は、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性がある。そこで、本実施形態及び第1~第3変形例では、複数の磁性体30のうち、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体30(第4磁性体48、第5磁性体49、第6磁性体112、第7磁性体114)に対して、補助磁界による径方向内向きの磁束58を通過させる。これにより、漏れ磁束64は、当該磁性体30を避けるようにロータ26内を通過する。この結果、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体30が発生することを回避することができる。
【0095】
従って、本実施形態及び第1~第3変形例では、ロータ26内の第1着磁コイル14に最も近接する磁性体30(第1磁性体34)を集中して着磁させつつ、漏れ磁束64によってロータ26内の他の磁性体30が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを抑制することができる。
【0096】
図10及び図13に示すように、第1変形例及び第2変形例では、第1着磁コイル14及び第2着磁コイル16のうちの第1直線部50との隣接部分65、66に流れる電流とは逆方向の電流が第1直線部50に流れる。また、第1着磁コイル14及び第3着磁コイル18のうちの第2直線部52との隣接部分67、68に流れる電流とは逆方向の電流が第2直線部52に流れる。これにより、径方向内向きの補助磁界を容易に発生させることができる。この結果、第1磁界42に引き込まれない漏れ磁束64が磁性体30を通過することを効率よく回避することができる。
【0097】
図8図10及び図13に示すように、第1変形例及び第2変形例では、第1磁界42を挟むように2つの補助磁界がロータ26に印加される。これにより、第1磁界42に引き込まれない漏れ磁束64は、2つの補助磁界を避けるようにロータ26内を通過する。これにより、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体30が発生することを確実に抑制することができる。
【0098】
図13に示すように、第2変形例では、第1磁界42を挟むように2つの第1補助磁界がロータ26に印加されると共に、第2磁界44及び第3磁界46を挟むように2つの第2補助磁界がロータ26に印加される。これにより、第1磁界42に引き込まれない漏れ磁束64は、2つの第1補助磁界及び2つの第2補助磁界を避けるようにロータ26内を通過する。この結果、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体30が発生することを確実に抑制することができる。
【0099】
第1磁性体34を径方向外向きに着磁するときに、第1磁界42に引き込まれない漏れ磁束64が第1磁性体34に隣接する2つの磁性体30(第4磁性体48、第5磁性体49)を径方向外向きに通過し、2つの磁性体30が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化される可能性がある。そこで、図3図10図13及び図15に示すように、本実施形態及び第1~第3変形例では、2つの磁性体30に対して、径方向内向きの磁束58を通過させることにより、漏れ磁束64は、径方向内向きの磁束58を避けるようにロータ26内を通過する。これにより、2つの磁性体30が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを確実に抑制することができる。
【0100】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0101】
(付記1)
周方向に配置された複数の磁性体(30)を有するロータ(26)に対して、前記ロータの径方向の磁界を印加することで、複数の前記磁性体を着磁する着磁装置(10、92、120、130)であって、前記ロータの外周面(36)と向かい合うように配置され、径方向外向きの第1磁界(42)を発生させる第1着磁コイル(14)と、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの第2磁界(44)を発生させる第2着磁コイル(16)と、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの第3磁界(46)を発生させる第3着磁コイル(18)と、前記ロータの外周面と向かい合うように配置され、径方向内向きの補助磁界を発生させる補助コイル(20)と、を備え、前記第2磁界と前記第3磁界とを合成した合成磁界(62)を前記第1着磁コイルが前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁界、前記第2磁界又は前記第3磁界が通る磁性体(34、38、40)は、前記径方向に沿った磁化方向に着磁され、前記第2磁界及び前記第3磁界による磁束のうち、前記第1磁界に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束(64)であり、前記補助コイルは、前記ロータに前記補助磁界を印加することで、複数の前記磁性体のうち、前記補助磁界が無いと仮定した場合に、前記漏れ磁束の通過によって磁化すべき方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束(58)を通過させる。
【0102】
本発明によれば、第2磁界と第3磁界とを合成した合成磁界を第1磁界で引き込むので、ロータの磁性体の内部にまで高強度の磁界が到達する。これにより、低コストで、磁性体の内部まで着磁することができる。この結果、複数の磁性体に対する着磁作業を効率よく行うことができる。
【0103】
また、第2磁界と第3磁界とを合成した合成磁界を第1磁界で引き込むときに、第1磁界に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束となる。複数の磁性体のうち、漏れ磁束が通過する磁性体は、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性がある。そこで、本発明では、複数の磁性体のうち、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。これにより、漏れ磁束は、当該磁性体を避けるようにロータ内を通過する。この結果、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体が発生することを回避することができる。
【0104】
従って、本発明では、ロータ内の第1着磁コイルに最も近接する磁性体を集中して着磁させつつ、漏れ磁束によってロータ内の他の磁性体が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを抑制することができる。
【0105】
(付記2)
付記1に記載の着磁装置において、前記第1着磁コイルが前記合成磁界を前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、前記第1着磁コイルと前記径方向に向かい合う第1磁性体(34)が径方向外向きに着磁され、前記第2着磁コイルと前記径方向に向かい合う第2磁性体(38)が径方向内向きに着磁され、前記第3着磁コイルと前記径方向に向かい合う第3磁性体(40)が径方向内向きに着磁され、前記周方向に沿った前記第1磁性体と前記第2磁性体との間には、第4磁性体(48)が配置され、前記周方向に沿った前記第1磁性体と前記第3磁性体との間には、第5磁性体(49)が配置され、前記補助コイルは、前記第1着磁コイルと前記第2着磁コイルとの間に配置され、中心軸線が前記ロータの外周面の接線方向を向くように配置された第1補助コイル(45)と、前記第1着磁コイルと前記第3着磁コイルとの間に配置され、中心軸線が前記ロータの外周面の接線方向を向くように配置された第2補助コイル(47)と、を有し、前記第1補助コイルは、前記第4磁性体に対して、前記補助磁界である第1補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させ、前記第2補助コイルは、前記第5磁性体に対して、前記補助磁界である第2補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させてもよい。
【0106】
第1補助コイルが第4磁性体に対して第1補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させると共に、第2補助コイルが第5磁性体に対して第2補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。これにより、第1磁界に引き込まれない漏れ磁束が第4磁性体及び第5磁性体を通過することを確実に回避することができる。
【0107】
(付記3)
付記2に記載の着磁装置において、複数の前記磁性体は、前記ロータの軸方向にそれぞれ延び、前記第1補助コイル及び前記第2補助コイルの各々は、前記軸方向に延びる第1直線部(50)と、前記第1直線部に対して前記径方向に間隔を空けて配置され、前記軸方向に延びる第2直線部(52)と、前記径方向に延び、前記第1直線部の一端と前記第2直線部の一端とを連結する第1連結部(54)と、前記径方向に延び、前記第1直線部の他端と前記第2直線部の他端とを連結する第2連結部(56)と、をそれぞれ有し、前記径方向に沿った前記第1連結部の長さ及び前記第2連結部の長さは、前記軸方向に沿った前記第1直線部の長さ及び前記第2直線部の長さよりも短くてもよい。
【0108】
周方向に沿った第1連結部の長さ及び第2連結部の長さが、軸方向に沿った第1直線部の長さ及び第2直線部の長さよりも短いので、第1補助コイル及び第2補助コイルの全長を短くすることができる。
【0109】
(付記4)
付記1に記載の着磁装置において、前記補助コイルは、前記第1着磁コイルと前記第2着磁コイルとの間に設けられ、前記ロータの軸方向に延びる第1直線部(50)と、前記第1着磁コイルと前記第3着磁コイルとの間に設けられ、前記ロータの軸方向に延びる第2直線部(52)と、前記第1直線部の一端と前記第2直線部の一端とを連結する第1連結部(54)と、前記第1直線部の他端と前記第2直線部の他端とを連結する第2連結部(56)と、を有し、前記第1直線部には、前記第1着磁コイルのうちの前記第1直線部に隣接する部分(65)を流れる電流と、前記第2着磁コイルのうちの前記第1直線部に隣接する部分(66)を流れる電流とは逆方向の電流が流れ、前記第2直線部には、前記第1着磁コイルのうちの前記第2直線部に隣接する部分(67)を流れる電流と、前記第3着磁コイルのうちの前記第2直線部に隣接する部分(68)を流れる電流とは逆方向の電流が流れてもよい。
【0110】
第1着磁コイル及び第2着磁コイルのうちの第1直線部に隣接する部分を流れる電流とは逆方向の電流を第1直線部に流すと共に、第1着磁コイル及び第3着磁コイルのうちの第2直線部に隣接する部分を流れる電流とは逆方向の電流を第2直線部に流す。これにより、径方向内向きの補助磁界を容易に発生させることができる。この結果、第1磁界に引き込まれない漏れ磁束が磁性体を通過することを効率よく回避することができる。
【0111】
(付記5)
付記1又は4に記載の着磁装置において、前記補助コイルは、前記第1着磁コイルを挟み込むように配置され、前記第1磁界を挟むように2つの前記補助磁界を前記ロータに印加してもよい。
【0112】
第1磁界を挟むように2つの補助磁界がロータに印加されるので、第1磁界に引き込まれない漏れ磁束は、2つの補助磁界を避けるようにロータ内を通過する。これにより、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体が発生することを確実に抑制することができる。
【0113】
(付記6)
付記1に記載の着磁装置において、前記補助コイルは、前記第1着磁コイルを挟み込むように配置された第1補助コイル(122)と、前記第2着磁コイル及び前記第3着磁コイルを挟み込むように配置された第2補助コイル(124)とを有し、前記第1補助コイルは、前記第1磁界を挟むように、前記補助磁界である2つの第1補助磁界を前記ロータに印加し、前記第2補助コイルは、前記第2磁界及び前記第3磁界を挟むように、前記補助磁界である2つの第2補助磁界を前記ロータに印加してもよい。
【0114】
第1磁界を挟むように2つの第1補助磁界がロータに印加されると共に、第2磁界及び第3磁界を挟むように2つの第2補助磁界がロータに印加される。これにより、第1磁界に引き込まれない漏れ磁束は、2つの第1補助磁界及び2つの第2補助磁界を避けるようにロータ内を通過する。この結果、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体が発生することを確実に抑制することができる。
【0115】
(付記7)
付記1~6のいずれか1つに記載の着磁装置において、複数の前記磁性体は、前記周方向に隣接する磁性体が互いに異なる方向となるように、それぞれ着磁され、前記第1着磁コイルが前記第1磁界で前記合成磁界を引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、前記第1着磁コイルと前記径方向に向かい合う第1磁性体(34)が径方向外向きに着磁され、前記補助コイルは、前記ロータに前記補助磁界を印加することで、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁性体を挟んで前記周方向に隣接する2つの磁性体(48、49)に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させてもよい。
【0116】
第1磁性体を径方向外向きに着磁するときに、第1磁界に引き込まれない漏れ磁束が第1磁性体に隣接する2つの磁性体を径方向外向きに通過し、2つの磁性体が本来の磁化方向(径方向内向きの方向)とは逆方向に磁化される可能性がある。そこで、2つの磁性体に対して、径方向内向きの磁束を通過させることにより、漏れ磁束は、径方向内向きの磁束を避けるようにロータ内を通過する。これにより、2つの磁性体が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを確実に抑制することができる。
【0117】
(付記8)
付記1~7のいずれか1つに記載の着磁装置において、前記補助磁界の大きさは、前記第1磁界、前記第2磁界及び前記第3磁界の大きさよりも小さくてもよい。
【0118】
補助磁界の大きさを第1磁界、第2磁界及び第3磁界の大きさよりも小さくすることにより、第1磁性体~第3磁性体に対する着磁作業を妨げることなく、第1磁界に引き込まれない漏れ磁束によって他の磁性体が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを抑制することができる。
【0119】
(付記9)
周方向に配置された複数の磁性体を有するロータに対して、前記ロータの径方向の磁界を印加することで、複数の前記磁性体を着磁する着磁方法であって、前記ロータの外周面と向かい合うように、第1着磁コイル、第2着磁コイル、第3着磁コイル及び補助コイルを配置する配置工程(S1)と、前記第1着磁コイルで径方向外向きの第1磁界を発生させ、前記第2着磁コイルで径方向内向きの第2磁界を発生させ、前記第3着磁コイルで径方向内向きの第3磁界を発生させ、前記第2磁界と前記第3磁界とを合成した合成磁界を前記第1着磁コイルが前記第1磁界で引き込むことにより、複数の前記磁性体のうち、少なくとも、前記第1磁界、前記第2磁界又は前記第3磁界が通る磁性体を、前記径方向に沿った磁化方向に着磁する着磁工程(S2)と、を有し、前記着磁工程では、前記第2磁界及び前記第3磁界による磁束のうち、前記第1磁界に引き込まれない磁束が、径方向外向きの漏れ磁束となり、前記補助コイルは、径方向内向きの補助磁界を前記ロータに印加することで、複数の前記磁性体のうち、前記補助磁界が無いと仮定した場合に、前記漏れ磁束の通過によって磁化すべき方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、前記補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。
【0120】
本発明によれば、第2磁界と第3磁界とを合成した合成磁界を第1磁界で引き込むので、ロータの磁性体の内部にまで高強度の磁界が到達する。これにより、低コストで、磁性体の内部まで着磁することができる。この結果、複数の磁性体に対する着磁作業を効率よく行うことができる。
【0121】
また、第2磁界と第3磁界とを合成した合成磁界を第1磁界で引き込むときに、第1磁界に引き込まれない磁束は、径方向外向きの漏れ磁束となる。複数の磁性体のうち、漏れ磁束が通過する磁性体は、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性がある。そこで、本発明では、複数の磁性体のうち、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される可能性のある磁性体に対して、補助磁界による径方向内向きの磁束を通過させる。これにより、漏れ磁束は、当該磁性体を避けるようにロータ内を通過する。この結果、本来の磁化方向とは逆方向に磁化される磁性体が発生することを回避することができる。
【0122】
従って、本発明では、ロータ内の第1着磁コイルに最も近接する磁性体を集中して着磁させつつ、漏れ磁束によってロータ内の他の磁性体が本来の磁化方向とは逆方向に磁化されることを抑制することができる。
【0123】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0124】
10、92、120、130…着磁装置
14…第1着磁コイル
16…第2着磁コイル
18…第3着磁コイル
20…補助コイル
26…ロータ
30…磁性体
36…外周面
42…第1磁界
44…第2磁界
46…第3磁界
58…磁束
62…合成磁界
64…漏れ磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15