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  • -めっき皮膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】めっき皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20241016BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20241016BHJP
   C23C 18/38 20060101ALI20241016BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C23C18/18
B32B15/04 A
B32B15/04 B
C23C18/38
C23C28/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023070142
(22)【出願日】2023-04-21
【審査請求日】2023-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 久光
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲司
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-241951(JP,A)
【文献】特開平10-245682(JP,A)
【文献】国際公開第2022/270253(WO,A1)
【文献】特開2009-024203(JP,A)
【文献】特開2003-107897(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001847(WO,A1)
【文献】特表2016-533429(JP,A)
【文献】特開2019-147978(JP,A)
【文献】特表2016-533430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/20
C23C 28/00
B32B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、
前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)、
前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、
前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)、および
前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する工程(5)
を含み、
前記工程(4)を行う雰囲気が、不活性ガス雰囲気であり、
前記工程(1)が、下記工程(1-2)、(1-3)を含み、下記工程(1-2)、(1-3)の順に行う工程である
めっき皮膜の製造方法。
工程(1-2):ガラス基板の表面に触媒を付与する。
工程(1-3):ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する。
ただし、「下記(1)~(4)の工程を含む電気銅めっき方法:
(1)亜鉛イオン、硝酸イオン及びアミンボラン化合物を含み、亜鉛イオン濃度が0.03~0.2モル/Lであって、硝酸イオンのモル濃度が亜鉛イオンのモル濃度の1~3倍の範囲内にある水溶液からなる酸化亜鉛膜形成用組成物を被処理物に接触させて、酸化亜鉛膜を形成する工程、
(2)上記(1)工程によって酸化亜鉛膜を形成した被処理物を、触媒金属を含有するpH3.5以上の水溶液からなる触媒付与液に接触させて触媒を付与する工程、
(3)上記(2)工程によって触媒を付与した後、被処理物を無電解めっき液に接触させて無電解めっき皮膜を形成する工程、
(4)上記(3)工程で無電解めっき皮膜を形成した後、酢酸銅、導電性塩及び塩化物イオンを含有する水溶液からなる電気銅めっき液を用いて電気銅めっき皮膜を形成する工程。」は除く。
【請求項2】
前記金属酸化物が、亜鉛を含有する酸化物である請求項1載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)が、亜鉛イオン、硝酸イオンおよびアミンボラン化合物を含む水溶液を用いて金属酸化物層を形成する工程である請求項1又は2記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)が、下記工程(3-1)、(3-2)を含み、下記工程(3-1)、(3-2)の順に行う工程である請求項1又は2記載のめっき皮膜の製造方法。
工程(3-1):金属酸化物層の表面に触媒を付与する。
工程(3-2):熱処理が施された金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する。
【請求項5】
前記工程(5)が、pH2.0以下の電解銅めっき浴を用いて電解銅めっき皮膜を形成する工程である請求項1又は2記載のめっき皮膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき皮膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント基板やパッケージ基板と称される基板の根幹材料は、樹脂とガラスクロスが混在した材料が中心である。従来材料において電解銅めっきによる回路形成の下地皮膜は、無電解銅めっきプロセスが使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-256122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の通信高速化に連れて、プリント基板やパッケージ基板の分野において高密度化が進行し、反り、熱膨張係数、平滑性、誘電率、コストなど様々な仕様要求事項のレベルが高まりつつある。通信の高速化には、高周波が用いられていることから、基板の平滑性が重要である。そのため、基板の根幹材料として、従来の樹脂とガラスクロスの混在材料ではなく、平滑性に優れるガラスが使用されるようになっている(例えば、特許文献1)。
【0005】
ガラス基板に対して、電解銅用下地めっきを実施するためには、従来の無電解銅めっきプロセスでは、充分な析出や密着を得ることが困難である。このように、平滑性に優れるガラス基材に対して、従来のプロセスを適用しても、良好な密着性を発揮するめっき皮膜を得ることは困難である。従って、ガラス基板に回路形成させる場合において、下地皮膜には無電解銅めっきプロセスではなく、銅スパッタプロセスが行われている。しかし、銅スパッタプロセスはプリント基板やパッケージ基板に存在するスルホール内への被覆性に乏しいため、その後の電解銅めっきプロセスで銅めっきが未析出となる場合や、ガラス基板との密着性が不充分となる場合があることも本発明者らの検討の結果明らかとなった。さらに、スパッタ装置は高価であり、量産には不向きである。
【0006】
以上の通り、本発明者らの検討の結果、従来の技術では、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造するという点では改善の余地があることが明らかとなった。
【0007】
本発明は、本発明者らが新たに見出した前記課題を解決し、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造可能な、めっき皮膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、
前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)、
前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、
前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)、および
前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する工程(5)
を含む
めっき皮膜の製造方法に関する。
【0009】
本発明(2)は、前記工程(1)が、下記工程(1-2)、(1-3)を含み、下記工程(1-2)、(1-3)の順に行う工程である本発明(1)記載のめっき皮膜の製造方法に関する。
工程(1-2):ガラス基板の表面に触媒を付与する。
工程(1-3):ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する。
【0010】
本発明(3)は、前記金属酸化物が、亜鉛を含有する酸化物である本発明(1)又は(2)記載のめっき皮膜の製造方法に関する。
【0011】
本発明(4)は、前記工程(1)が、亜鉛イオン、硝酸イオンおよびアミンボラン化合物を含む水溶液を用いて金属酸化物層を形成する工程である本発明(1)~(3)のいずれかに記載のめっき皮膜の製造方法に関する。
【0012】
本発明(5)は、前記工程(3)が、下記工程(3-1)、(3-2)を含み、下記工程(3-1)、(3-2)の順に行う工程である本発明(1)~(4)のいずれかに記載のめっき皮膜の製造方法に関する。
工程(3-1):金属酸化物層の表面に触媒を付与する。
工程(3-2):熱処理が施された金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する。
【0013】
本発明(6)は、前記工程(4)を行う雰囲気が、不活性ガス雰囲気である本発明(1)~(5)のいずれかに記載のめっき皮膜の製造方法に関する。
【0014】
本発明(7)は、前記工程(5)が、pH2.0以下の電解銅めっき浴を用いて電解銅めっき皮膜を形成する工程である本発明(1)~(6)のいずれかに記載のめっき皮膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)、前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)、および前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する工程(5)を含むめっき皮膜の製造方法であるので、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】めっき皮膜の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のめっき皮膜の製造方法は、
ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、
前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)、
前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、
前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)、および
前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する工程(5)
を含む。これにより、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できる。
本発明のめっき皮膜の製造方法は、前記工程(1)~(5)をこの順に行う製造方法であるが、前記工程(1)~(5)をこの順(工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)、工程(5)の順)に行う限り、各工程の間に他の工程を含んでもよい。また、後述する各工程の後は、水洗、乾燥等の通常の後処理の操作を行なうことができる。
【0018】
前記めっき皮膜の製造方法で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)を行うことにより、ガラス基板と金属酸化物間の密着性をより強固にできる。更に、前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)を行うことにより、金属酸化物層と無電解銅めっき皮膜間の密着性をより強固にできる。
前記工程(1)~(4)により得られる、ガラス基板の表面上に形成されためっき皮膜は、ガラス基板と金属酸化物間の密着性、金属酸化物層と無電解銅めっき皮膜間の密着性が強固であり、ガラス基板に対して良好な密着性を有するため、電解銅めっき皮膜の下地として非常に好ましく、前記工程(1)~(4)により得られる、ガラス基板の表面上に形成されためっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成することにより、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できる。
また、前記工程(1)~(5)をこの順に行うめっき皮膜の製造方法では、被処理物の形状に関わらず、金属酸化物層および無電解銅めっき皮膜を均一に形成可能であるという理由から、ガラス基板表面や基板に存在するスルホール内への析出性及び密着性に優れている。
【0019】
本明細書において、ガラス基板の表面とは、ガラス基板上を意味し、他の同様の表現、例えば、金属酸化物層の表面も同様の意味で、金属酸化物層上を意味する。
【0020】
<ガラス基板>
ガラス基板としては特に限定されず、各種電子デバイスの回路基板として用いられる公知のガラス基板を用いることができる。ガラス基板は、好ましくは、例えば、配線を形成する基材であり、通信高速化が進んでいる電子機器の作製に用いるガラス基板である。
【0021】
ガラス基板は、シリカネットワークからなる非晶質基板であり、アルミニウム、ホウ素、リン等のネットワークフォーマー(網目形成酸化物)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マグネシウム等のネットワークモディファイヤー(網目修飾酸化物)を含んでいてもよい。
【0022】
ガラス基板を構成するガラスとしては、具体的には、例えば、ソーダガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等を用いる。ガラスは、また、好ましくは、強化ガラスとして用いられるアルミノシリケートガラス等のガラスからなるガラス基板が挙げられる。
【0023】
ガラス基板100質量%中のガラスの含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、ガラス基板中のガラスの含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて、それぞれ酸化物に換算して測定される。
【0024】
ガラス基板の厚みは特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができるが、通常は200~1000μm程度である。
【0025】
<工程(1)>
工程(1)では、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する。工程(1)は、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程であれば特に限定されないが、例えば、下記工程(1-1)~(1-3)を含む工程、例えば、下記工程(1-1)~(1-3)を含み、下記工程(1-1)、(1-2)、(1-3)の順に行う工程が挙げられる。なかでも、下記工程(1-2)、(1-3)を含むことが好ましく、下記工程(1-2)、(1-3)を含み、下記工程(1-2)、(1-3)の順に行う工程であることがより好ましい。
【0026】
<<工程(1-1)>>
工程(1-1)では、ガラス基板の表面からコンタミネーション(異物)を除去する。これにより、ガラス基板の表面に吸着している有機物残渣が除去され、ガラス基板の表面上のOH基が増加し、親水性が向上する。
【0027】
工程(1-1)では、例えば、ガラス基板の表面を有機溶媒、アルカリ性溶液、及び酸性溶液からなる群より選択される少なくとも1種で洗浄する。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ガラス基板の表面を有機溶媒で洗浄することにより、ガラス基板の表面に吸着している有機物残渣が除去される。また、ガラス基板の表面をアルカリ性溶液、酸性溶液で洗浄することにより、ガラス基板の表面に吸着している有機物残渣が除去されると共に、ガラス基板の表面上のOH基が増加し、親水性が向上する。
【0028】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンなどを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
有機溶媒によるガラス洗浄処理条件は特に限定されない。
【0030】
アルカリ性溶液としては、例えば、NaOH溶液、KOH溶液などを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
アルカリ性溶液によるガラス洗浄処理条件は特に限定されない。
【0032】
酸性溶液としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、過酸化水素/硫酸、過酸化水素/硝酸などを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
酸性溶液によるガラス洗浄処理条件は特に限定されない。
【0034】
<<工程(1-2)>>
工程(1-2)では、ガラス基板の表面に触媒(触媒金属)を付与する。これにより、ガラス基板の表面が活性化され、より好適にガラス基板の表面に金属酸化物層を形成することが可能となる。また、工程(1-2)を行うことにより、ガラス基板の表面を粗化させることなく金属酸化物層を形成することが可能となる。これにより、回路形成において配線パターンをファインピッチで形成させることが可能となり、高周波数帯での伝送損失に対する影響も低減できる。また、通常、ガラス基板の表面を粗化させるためには、フッ化物が使用されるが、フッ化物の使用は人体への安全性や環境保護の観点から不適切であり、工程(1-2)を行うことにより、フッ化物を使用することなく、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成することが可能となる。
【0035】
触媒金属としては、後工程の金属酸化物層形成に対して触媒活性を有する金属であれば特に限定されず、例えば、Ag、Pd、Pt、Auなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、Pd、Agが好ましく、Pdがより好ましい。
【0036】
ガラス基板の表面に触媒(触媒金属)を付与することが重要であるため、ガラス基板の表面に触媒を付与する方法も特に限定されず、例えば、金属イオンをガラス基板上へ吸着させて金属へ還元する方法、金属コロイドをガラス基板上へ吸着させる方法等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、同様の理由から、触媒付与処理条件も特に限定されない。
【0037】
工程(1-2)の具体的な方法としては、例えば、クリーナーコンディショニング(触媒吸着の促進、均一に触媒を吸着させる)、プレディップ、触媒付与(アクチベーター)、活性化処理(アクセレレーター)をこの順に行えばよい。
【0038】
<<工程(1-3)>>
工程(1-3)では、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する。これにより、金属酸化物層をガラスと無電解銅めっきの中間層とすることで、ガラスと無電解銅めっきとの密着性を容易に向上させることができる。
工程(1-3)では、触媒(触媒金属)が付与されたガラス基板の表面に金属酸化物層を形成することが好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0039】
金属酸化物としては、亜鉛を含有する酸化物であることが好ましく、例えば、酸化亜鉛、又は、チタン、アルミニウム、ケイ素、スズ、ジルコニウム、ニッケル、インジウム、バナジウム、クロム、鉄、マンガン、コバルト、及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の金属と亜鉛を含む合金の酸化物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、インジウム、チタン、ケイ素、スズ、マンガン、コバルトからなる群より選択される少なくとも1種の金属と亜鉛を含む合金の酸化物、酸化亜鉛が好ましく、酸化亜鉛がより好ましい。
【0040】
金属酸化物層の膜厚は、好ましくは0.05~0.5μm、より好ましくは0.1~0.3μmである。これにより、生産効率よく、良好な密着性が得られる傾向がある。
【0041】
金属酸化物層は、例えば、触媒を付与したガラス基板を金属酸化物層形成用処理液に浸漬させることで形成される。金属酸化物層形成用処理液としては、亜鉛イオン、硝酸イオンおよびアミンボラン化合物を含む水溶液が好ましい。
【0042】
亜鉛イオン源としては、水溶性亜鉛塩を用いればよく、例えば、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。なかでも、硝酸亜鉛が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
硝酸イオン源としては、硝酸、水溶性硝酸塩等を用いればよく、例えば、硝酸、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸尿素等が挙げられる。なかでも、硝酸亜鉛が好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、亜鉛イオン及び硝酸イオンの両方のイオン源として、硝酸亜鉛を単独で用いることが好ましい。
【0044】
金属酸化物層形成用処理液における亜鉛イオン及び硝酸イオンの濃度は広い範囲で調整できるが、いずれか一方でもイオン濃度が低すぎると金属酸化物膜を形成することができず、又、いずれか一方でもイオン濃度が高すぎると水酸化金属膜が形成され易くなって金属酸化物膜の純度が低下しやすい。このため亜鉛イオン及び硝酸イオンのそれぞれの濃度は、0.001mol/l~0.5mol/l(亜鉛分換算で0.065~32.7g/l)程度の範囲内にあることが好ましく、0.01mol/l~0.2mol/l(亜鉛分換算で0.65~13g/l)程度の範囲内にあることがより好ましい。
【0045】
アミンボラン化合物としては、水溶性の化合物であればよく、例えば、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルアミンボランが好ましい。
【0046】
金属酸化物層形成用処理液におけるアミンボラン化合物の濃度は、好ましくは0.3~20g/L、より好ましくは0.5~5g/Lである。これにより、生産効率よく、良好な金属酸化物の析出性が得られる傾向がある。
【0047】
金属酸化物層形成用処理液のpHは、好ましく3.0~7.0、より好ましくは4.0~7.0である。これにより、生産効率よく、良好な金属酸化物の析出性が得られる傾向がある。
【0048】
金属酸化物形成処理の温度は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~85℃である。これにより、アミンボラン化合物の分解反応速度を適度な範囲内とでき、良好な金属酸化物の析出性が得られる傾向がある。
【0049】
金属酸化物形成処理の時間は、好ましくは2~180分、より好ましくは5~60分、更に好ましくは10~30分である。2分間以上であると、金属酸化物層が充分な厚さとなり、ガラス基板と金属酸化物間で十分な密着性が得られる傾向がある。一方、通常、金属酸化物層の形成には、180分を超える時間が必要となるが、本発明では、金属酸化物層形成用処理液として、亜鉛イオン、硝酸イオンおよびアミンボラン化合物を含む水溶液を使用することにより、処理時間を短くでき、生産効率よく、またコスト面で有利に、金属酸化物層を形成できる。
【0050】
上記工程(1-2)、(1-3)により、フッ化物を使用することなく、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成することが可能となる。前記金属酸化物層中のフッ素含有量は、金属酸化物層を100質量%として、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、含有しない(0質量%である)ことが更に好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、フッ素含有量は、フッ素イオン電極を用いて測定される。
【0051】
本発明のめっき皮膜の製造方法は、フッ化物を使用する必要がないため、金属酸化物層のフッ素を除去する工程が不要である。すなわち、本発明のめっき皮膜の製造方法は、金属酸化物層のフッ素を除去する工程を含まないことにより、生産効率よく、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できる。
【0052】
<工程(2)>
工程(2)では、前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う。具体的には、工程(2)では、前記工程(1)により得られた、表面に金属酸化物層が形成されたガラス基板に対して、第1回目の熱処理を行う。これにより、前記工程(1)の金属酸化物層形成において、一部金属水酸化物のままであったものが脱水反応により金属酸化物となり、ガラス基板と金属酸化物との間でOH基の縮合による化学結合を形成させることでガラス基板と金属酸化物間の密着性をより強固にできる。
【0053】
工程(2)を行う雰囲気は特に限定されないが、脱水反応を促進するために、酸素が存在することが好ましい。よって、例えば、工程(2)は大気中で行えばよい。
【0054】
熱処理の温度は、好ましくは100~800℃、より好ましくは200~600℃、更に好ましくは250~500℃、特に好ましくは300~450℃、最も好ましくは300~350℃である。100℃以上であると、脱水反応が充分に進行し、ガラス基板と金属酸化物間の密着性がより良好となる傾向がある。また、800℃以下であると、ガラス基板の反り、歪みなどの寸法変化をより抑制できる傾向がある。
【0055】
熱処理の時間は、好ましくは5~180分、より好ましくは15~90分、更に好ましくは25~90分である。これにより、生産効率を下げることなく、脱水反応が充分に進行し、ガラス基板と金属酸化物間の密着性がより良好となる傾向がある。
【0056】
<工程(3)>
工程(3)では、前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する。具体的には、工程(3)では、前記工程(2)の後に、熱処理が施された金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する。
【0057】
工程(3)は、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程であれば特に限定されないが、例えば、下記工程(3-1)、(3-2)を含む工程、例えば、下記工程(3-1)、(3-2)を含み、下記工程(3-1)、(3-2)の順に行う工程が挙げられる。
【0058】
<<工程(3-1)>>
工程(3-1)では、金属酸化物層の表面に触媒(触媒金属)を付与する。これにより、金属酸化物層の表面が活性化され、より好適に金属酸化物層の表面に無電解銅めっき皮膜を形成することが可能となる。また、工程(3-1)を行うことにより、金属酸化物層の表面を粗化させることなく無電解銅めっき皮膜を形成することが可能となる。これにより、高周波数帯での伝送損失に対する影響も低減できる。
【0059】
触媒金属としては、後工程の無電解銅めっき皮膜形成に対して触媒活性を有する金属であれば特に限定されず、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Pt、Auなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、Pd、Ag、Pd、Ptが好ましく、Pdがより好ましい。
【0060】
金属酸化物層の表面に触媒(触媒金属)を付与することが重要であるため、触媒を付与する方法としては特に限定されず、例えば、金属イオンを金属酸化物上に置換させる方法があり、(1)金属イオン置換後に、(2)還元剤の溶液に浸漬させることで、触媒金属を活性化させてもよい。触媒付与浴もその組成は特に限定されない。
【0061】
触媒付与浴のpHは、好ましくは3.0~13、より好ましくは4.0~7.0である。これにより、金属酸化物層の溶解をより抑制でき、密着性の低下をより抑制できる。
なお、本明細書において、pHは、25℃において測定される値である。
【0062】
なお、本明細書において、金属濃度や金属の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置により測定される。
また、本明細書において、液中の各化合物の濃度は、液体クロマトグラフィー(島津製作所社製)により測定される。
【0063】
金属酸化物層の表面と、触媒付与浴とを接触させることにより、金属酸化物層の表面に触媒(触媒金属)を付与できる。具体的な方法については、特に限定されないが、通常は、触媒付与浴中に被処理物を浸漬すればよい。その他、無電解めっき対象材料の表面に該触媒付与浴を噴霧や塗布する方法などによっても触媒付与処理を行うことができる。
【0064】
触媒付与処理の温度は、好ましくは10~60℃、より好ましくは20~40℃である。10℃以上であると、触媒付与量が充分量となり、無電解銅めっきの良好な析出性が得られる傾向がある。60℃以下であると、金属酸化物層の溶解をより抑制でき、密着性の低下をより抑制できる。
【0065】
触媒付与処理の時間は、好ましくは10秒~10分、より好ましくは30秒~5分である。10秒以上であると、触媒付与量が充分量となり、無電解銅めっきの良好な析出性が得られる傾向がある。10分以下であると、金属酸化物層の溶解をより抑制でき、密着性の低下をより抑制できる。
【0066】
(1)金属イオン置換後に触媒金属を活性化させる場合、(2)還元剤としては、例えば、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、ヒドラジン、ギ酸ナトリウム等を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
触媒金属を活性化させる処理条件(温度、その他)はpHが3.0以上の浴種であれば特に限定されない。pHが3.0以上の場合、金属酸化物層の溶解をより抑制でき、密着性の低下をより抑制できる。
【0068】
本発明では、第1回目の熱処理を行った後に、金属酸化物層の表面に触媒(触媒金属)を付与する工程(3-1)を行うことも特徴の1つである。これにより、生産効率よく、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できる。
一方、金属酸化物層の表面に触媒(触媒金属)を付与した後に、第1回目の熱処理を行った場合には、触媒が酸化されて無電解銅めっき皮膜が充分に形成できなくなるため、熱処理後に還元処理を行う必要が生じ、生産効率が低下してしまう。
【0069】
<<工程(3-2)>>
工程(3-2)では、熱処理が施された金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する。これにより、金属酸化物層上が導電化され、電解銅めっきが可能となる。
工程(3-2)では、触媒(触媒金属)を付与された金属酸化物層の表面に、無電解銅めっき皮膜を形成することが好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0070】
無電解銅めっき皮膜の膜厚は、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.5~1μmである。0.1μm以上であると、強酸性タイプの電解銅めっき使用時においても金属酸化物層が溶解することをより抑制でき、密着性の低下を抑制できる傾向がある。2μm以下であると、無電解銅めっき皮膜の応力によってガラス基板と金属酸化物間の密着性が不十分となることをより抑制できる。
【0071】
無電解銅めっき皮膜は、例えば、触媒(触媒金属)を付与された金属酸化物層の表面に無電解銅めっき浴を接触させることで形成される。
【0072】
無電解銅めっき浴としては特に限定されない。無電解銅めっきの処理条件(温度、pH、その他)も特に限定されない。
【0073】
<工程(4)>
工程(4)では、前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う。具体的には、工程(4)では、前記工程(3)により得られた、表面に無電解銅めっき皮膜が形成されたガラス基板に対して、第2回目の熱処理を行う。これにより、金属酸化物層と無電解銅めっき皮膜との間に拡散層を形成でき、金属酸化物と無電解銅めっき間の密着性をより強固にできる。
【0074】
工程(4)を行う雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気下で工程(4)を行うことにより、無電解銅めっき皮膜の過剰な酸化を抑制でき、ガラス基板に対してより良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できる傾向がある。
【0075】
熱処理の温度は、好ましくは100~600℃、より好ましくは200~500℃、更に好ましくは300~450℃である。100℃以上であると、拡散層が充分に形成され、金属酸化物と無電解銅めっき間の密着性がより良好となる傾向がある。また、600℃以下であると、ガラス基板の反り、歪みなどの寸法変化をより抑制できる傾向がある。
【0076】
熱処理の時間は、好ましくは5~180分、より好ましくは15~90分、更に好ましくは25~90分である。これにより、生産効率を下げることなく、拡散層が充分に形成され、金属酸化物と無電解銅めっき間の密着性がより良好となる傾向がある。
【0077】
<工程(5)>
工程(5)では、前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する。具体的には、工程(5)では、前記工程(4)の後に、熱処理が施された無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する。
【0078】
電解銅めっき皮膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば、10~20μmである。
【0079】
電解銅めっき皮膜は、例えば、無電解銅めっき皮膜に電解銅めっき浴を接触させることで形成される。
【0080】
電解銅めっき浴としては、特に限定されないが、水溶性銅塩、硫酸、及び塩化物イオンを含むことが好ましい。
【0081】
水溶性銅塩は、銅イオン供給源として含まれ、例えば硫酸銅、塩化銅、酸化銅、炭酸銅、ピロリン酸銅、ホウフッ化銅、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅、イセチオン酸銅、プロパノールスルホン酸銅等の銅化合物塩が挙げられる。これらの銅化合物は、1種単独あるいは2種以上を併せて用いることができる。銅めっき浴における水溶性銅塩の濃度は、例えば硫酸銅の場合、硫酸銅5水塩として30~300g/Lであることが好ましく、70~90g/Lであることがより好ましい。
【0082】
電解銅めっき浴中の硫酸濃度は、好ましくは30~300g/L、より好ましくは180~220g/Lである。硫酸濃度が30g/L以上であると、被めっき処理面内の銅膜厚が均一になる傾向があり、硫酸濃度が300g/L以下であると、水溶性銅塩を充分に溶解させることができる傾向がある。
【0083】
電解銅めっき浴中の塩化物イオン濃度は、好ましくは5~150mg/L、より好ましくは20~100mg/L、更に好ましくは30~60mg/Lである。塩素イオン濃度が150mg/L以下の場合、アノード表面に塩化銅が生成してアノードの不動態化が起こることをより抑制できる傾向がある。一方で、5mg/L以上の場合には、抑制作用が部分的に働くことを抑制でき、段地めっきになるおそれをより低減できる傾向がある。
【0084】
電解銅めっき浴は、前記成分に加え、レベラー(レベリング剤)を含むことが好ましい。ここで、レベラーとは、含窒素化合物からなる添加剤であり、酸性のめっき浴中においてカチオンとして働いて、電流密度の高い部分、例えば被めっき物のviaやスルホールの表面側に電気的に集中して活性化過電圧を増加させ、銅の析出を抑制する。一方で、レベラーは、微細溝や穴の底等においてはその吸着量が少なくなり、銅の析出を優先させてボトムアップの析出状態とすることによって、レベリング性を発揮する。
【0085】
レベラーは、窒素含有有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリビニルイミダゾール及びその誘導体、ポリビニルアルキルイミダゾール及びその誘導体、ビニルピロリドンとビニルアルキルイミダゾール及びその誘導体とのコポリマー、ヤヌスグリーンBなどの染料、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄共重合体、部分3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル化ジアリルアミン塩酸塩・ジアリルジメチルアンモニウムクロリド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、アリルアミン塩酸塩重合体、アリルアミン(フリー)重合体、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアミンとエポキシの重合物、モルホリンとエピクロロヒドリンの重合物、ジエチレントリアミン、アジピン酸及びε-カプロラクタムからなる重縮合物のエピクロロヒドリン変性物等が挙げられる。
【0086】
電解銅めっき浴中のレベラー濃度は、好ましくは0.01~3000mg/Lである。
【0087】
電解銅めっき浴は、前記成分に加え、ブライトナーを含むことが好ましい。ブライトナーとは、めっき析出において結晶成長を抑制し、成長核の生成を促進することによってめっき皮膜を微結晶で緻密なものとする添加剤であり、光沢皮膜が得られるようになる。
【0088】
ブライトナーは、硫黄含有有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、下式に示す硫黄含有化合物等が挙げられる。
【化1】
(式中、R1は水素原子、又は-(S)m-(CH2)n-(O)p-SO3Mで示される基、R2は各々独立して炭素数1~5のアルキル基、Mは水素原子又はアルカリ金属、mは0又は1、nは1~8の整数、pは0又は1である。)
【0089】
電解銅めっき浴中のブライトナー濃度は、好ましくは0.01~1000mg/Lである。
【0090】
電解銅めっき浴は、前記成分に加え、キャリアーを含むことが好ましい。キャリアーとは、塩化物イオンとの相互作用により銅表面に吸着し、単分子膜を形成することで結晶成長を均一に抑制する添加剤であり、均一電着性を向上させる。
【0091】
キャリアーは、ポリエーテル化合物であれば特に限定されないが、例えば、ポリエーテル化合物であれば、-O-を4個以上含有するポリアルキレングリコールを含む化合物が挙げられ、さらに具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらのコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
【0092】
電解銅めっき浴中のキャリアー濃度は、好ましくは5~5000mg/Lである。
【0093】
電解銅めっきの処理条件は特に限定されない。ただし、電解銅めっき浴のpHは、好ましくは6.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.5以下であり、下限は特に限定されない。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。また、電解銅めっきの処理の温度は、好ましくは37~43℃、電流密度は、好ましくは3~5A/dmである。
【0094】
<<他の工程>>
本発明のめっき皮膜の製造方法は、前記工程(1)~(5)をこの順に行う製造方法であるが、前記工程(1)~(5)をこの順に行う限り、他の工程を含んでもよい。
【0095】
他の工程としては、前記工程(2)と(3)の間に無電解ニッケルめっき、無電解銀めっき、無電解コバルトめっき、無電解パラジウムめっきを行う工程等が挙げられる。各工程で使用される薬液は公知のものから適宜選択できる。
【0096】
本発明のめっき皮膜の製造方法により製造される、めっき皮膜(めっき皮膜積層体)の総膜厚は、特に限定されないが、例えば、10~20μmである。
【0097】
本明細書において、めっき皮膜等の膜厚、総膜厚は、蛍光X線分光分析装置により測定される5箇所の測定値の平均値である。
【0098】
以上に説明した処理における処理条件や、各種の濃度設定に関しては、以上のような条件に限られるものではなく、形成する皮膜の厚み等によって適宜変更できることは言うまでもない。
【0099】
本発明のめっき皮膜の製造方法により製造される、めっき皮膜は、ガラス基板に対して密着性が良好である。そのため、本発明のめっき皮膜は、好ましくは電子機器のプリント基板やパッケージ基板、より好ましくは高密度プリント配線板に用いられる。本発明のめっき皮膜は、ガラス基材に対して、良好な密着性を発揮するめっき皮膜(配線)を形成することができるため、通信高速化が進んでいる電子機器の作製に最適である。
【0100】
電子機器としては、例えば、家電機器、車載機器、送電システム、輸送機器、通信機器等が挙げられ、具体的には、エアコン、エレベーター、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車、発電装置用のパワーコントロールユニット等のパワーモジュール、一般家電、パソコン等が挙げられる。
【実施例
【0101】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0102】
50mm×50mmのサイズに裁断した無アルカリガラス(ABC-1、日本電気硝子株式会社製)をガラス基板として使用した。表1、2に示す条件に従い、ガラス基板上にめっき皮膜を形成した。ここで、表1では、上から順に工程が行われる。なお、本文中の記載と、表に示す条件に齟齬がある場合には、表に示す条件が優先される。
【0103】
(実施例)
(工程(1-1))
ガラス基板の表面をエタノールを用いて25℃、5分の条件下でアルコール洗浄を行い、次いで、温度25℃の水で1分間洗浄した。次に、ガラス基板の表面を水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃、5分の条件下で、アルカリ洗浄を行い、次いで、温度25℃の水で1分間洗浄した。
【0104】
(工程(1-2))
ガラス基板の表面に、上村工業株式会社製スルカップ MTE-1Aを用いて、50℃、5分の条件下で、クリーナーコンディショニングを行い、次いで、温度40℃の水で1分間洗浄し、更に、温度25℃の水で1分間洗浄した。次に、ガラス基板の表面に、上村工業株式会社製スルカップ PED-104を用いて、25℃、2分の条件下で、プレディップを行い、次いで、上村工業株式会社製スルカップ AT-105を用いて、30℃、8分の条件下で、アクチベーターを行い、次いで、温度25℃の水で1分間洗浄した。次に、ガラス基板の表面に、上村工業株式会社製スルカップアクセレレーター ALF-406-Aを用いて、25℃、3分の条件下で、アクセレレーターを行い、次いで、温度25℃の水で1分間洗浄した。工程(1-2)により、ガラス基板の表面にパラジウム(Pd)を付与した。
【0105】
(工程(1-3))
表1に示す金属酸化物層形成用処理液(硝酸亜鉛六水和物、ジメチルアミンボラン含有、pH6.0)に、触媒を付与したガラス基板を80℃、20分の条件下で浸漬させた。次いで、温度25℃の水で1分間洗浄し、更に、温度60℃、10分間乾燥器を用いて乾燥した。これにより、ガラス基板の表面に金属酸化物層(酸化亜鉛層、膜厚0.3μm)を形成した。
【0106】
(工程(2))
金属酸化物層が形成されたガラス基板を表2に記載の条件で第1回目の熱処理を行った。
【0107】
(工程(3-1))
触媒付与浴(上村工業株式会社製アルカップ アクチベーターMAT-2-A、pH5.0)に、工程(2)により熱処理を行ったガラス基板を25℃、1分の条件下で浸漬させた。次いで、温度25℃の水で1分間洗浄した。これにより、金属酸化物層の表面にパラジウム(Pd)を付与した。
【0108】
(工程(3-2))
上村工業株式会社製スルカップ PEA ver.2に、工程(3-1)で得られたガラス基板を36℃、20分の条件下で浸漬させた。次いで、温度25℃の水で1分間洗浄し、更に、温度60℃、10分間乾燥器を用いて乾燥した。これにより、金属酸化物層の表面に無電解銅めっき皮膜(膜厚0.7μm)を形成した。
【0109】
(工程(4))
無電解銅めっき皮膜が形成されたガラス基板を表2に記載の条件で第2回目の熱処理を行った。
【0110】
(工程(5))
硫酸を用いて、工程(4)で得られたガラス基板を25℃、10秒の条件下で洗浄した後、上村工業株式会社製スルカップ ECD-H(pH1.0以下)に、40℃、23分、電流密度3A/dmの条件下で浸漬させた。次いで、温度25℃の水で1分間洗浄し、更に、温度60℃、10分間乾燥器を用いて乾燥し、200℃で60分間大気中で熱処理を行った。これにより、無電解銅めっき皮膜の表面に電解銅めっき皮膜(膜厚15μm)を形成した。なお、表1中の上村工業株式会社製スルカップ ECD-1A、スルカップ ECD-4B、スルカップ ECD-Hは、それぞれ、前述のレベラー、ブライトナー、キャリアーに相当する。
【0111】
(比較例1、2)
表2に示す条件に従って、実施例と同様にめっき皮膜を形成した。
【0112】
(比較例3)
50mm×50mmのサイズに裁断した無アルカリガラス(ABC-1、日本電気硝子株式会社製)をガラス基板として使用した。ジオマテック株式会社にてガラス基板上にTi100nmをスパッタし、更にその上にCu200nmをスパッタした。硫酸を用いて、TiおよびCuをスパッタしたガラス基板を25℃、10秒の条件下で洗浄した後、上村工業株式会社製スルカップ ECD-H(pH1以下)に、40℃、23分、電流密度3A/dmの条件下で浸漬させた。次いで、温度25℃の水で1分間洗浄し、更に、温度60℃、10分間乾燥器を用いて乾燥し、200℃で60分間大気中で熱処理を行った。これにより、Cuスパッタ表面に電解銅めっき皮膜(膜厚15μm)を形成した。
【0113】
<皮膜の膜厚の測定>
皮膜の膜厚は、蛍光X線分光分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名:SFT-9550)により、5箇所の測定値の平均値として算出した。
【0114】
<密着性評価>
めっき皮膜の密着性は、めっき皮膜を形成したガラス基板にカッターナイフで10mm幅の切り込みを入れ、電解銅めっき皮膜を引張試験機(AGS-X、(株)島津製作所)でめくり、ピール強度を測定することで評価した。密着性は下記評価基準で評価した。ピール強度値が高いほど密着性に優れていると判定される。結果を表2に示した。
◎:ピール強度が300gf/cm以上である
○:ピール強度が200gf/cm以上、300gf/cm未満である。
△:ピール強度が100gf/cm以上、200gf/cm未満である。
×:ピール強度が100gf/cm未満である。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表2より、ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)、前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)、および前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する工程(5)を含む実施例のめっき皮膜の製造方法では、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造できることが分かった。
【0118】
実施例1のめっき皮膜を電子顕微鏡で観察した写真を図1(a)に示し、銅スパッタプロセスにより形成された比較例3のめっき皮膜を電子顕微鏡で観察した写真を図1(b)に示した。比較例3では、基板に存在するスルホール内への被覆性に乏しい一方、図1(a)より、本願の製造方法では、基板に存在するスルホール内への析出性及び密着性に優れていることが分かった。
【要約】
【課題】ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を製造可能な、めっき皮膜の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板の表面に金属酸化物層を形成する工程(1)、
前記工程(1)の後に、第1回目の熱処理を行う工程(2)、
前記工程(2)の後に、金属酸化物層上に無電解銅めっき皮膜を形成する工程(3)、
前記工程(3)の後に、第2回目の熱処理を行う工程(4)、および
前記工程(4)の後に、無電解銅めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を形成する工程(5)
を含む
めっき皮膜の製造方法。
【選択図】図1
図1