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特許7572514抑制した回折次数を用いた多焦点回折眼用レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】抑制した回折次数を用いた多焦点回折眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023109915
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2022084987の分割
【原出願日】2015-01-30
(65)【公開番号】P2023123797
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】61/993,892
(32)【優先日】2014-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/575,333
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(72)【発明者】
【氏名】ユーアイ リュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ミョン-テク
(72)【発明者】
【氏名】シン ホン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/079537(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0187242(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0268155(US,A1)
【文献】特開2019-080970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び後面を有するレンズ、並びに
視力範囲に対応する少なくとも4つの連続する回折次数において強め合う干渉を供するように形状化された複数の環状帯域を含む回折プロファイルを備える眼内レンズであって、ここで
前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、遠-中間回折次数、近-中間回折次数、及び最高の回折次数を含み、
前記最高の回折次数は近見視力用近焦点に対応し、前記最低の回折次数は遠見視力用遠焦点に対応し、前記遠-中間回折次数は遠-中間焦点に対応し、前記近-中間回折次数は近-中間焦点に対応し、
前記最低の回折次数の回折効率は他のどの連続する回折次数の回折効率より高く、さらに
前記近-中間回折次数の回折効率は前記遠-中間回折次数の回折効率よりも高い、
眼内レンズ。
【請求項2】
前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数のそれぞれの回折効率が10~20%の範囲内である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項3】
前記最高の回折次数、前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数のそれぞれの回折効率が10~20%の範囲内である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項4】
前記最高の回折次数の回折効率が、前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数の少なくとも1つの回折効率よりも高い、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項5】
前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数の少なくとも1つの回折効率が10%未満である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項6】
前記遠-中間回折次数の回折効率が10%未満である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項7】
前記近-中間回折次数の回折効率が10%未満である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年5月15日に出願した米国仮出願第61/993892号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的には多焦点眼用レンズに関し、より具体的には、抑制した回折次数の多焦点回折眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
人の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を介して光を屈折させ、その光を水晶体を通して網膜上に屈折させることにより、視力を提供するように機能する。合焦画像の質は、眼の大きさおよび形状、ならびに角膜および水晶体の透明度を含む多くの要因に依存する。加齢または疾病によって水晶体に異常を来すようになると、網膜上の画質の喪失により視力が低下する。このような眼の水晶体の光学品質の喪失は、医学的には白内障として知られている。このような症状に受け容れられている治療は、水晶体の外科的切除および人工眼内レンズ(IOL)による水晶体機能の置換である。眼は老化に伴い、遠近調節として知られるより近い箇所に焦点を変える能力もまた失われる可能性もある。この加齢による遠近調節の喪失は、老眼として知られている。
【0004】
米国では、白内障水晶体の大多数が水晶体超音波吸引術と呼ばれる外科的技術により除去される。この処置中、前嚢の一部分を除去して薄い水晶体超音波吸引術切削チップが患部の水晶体に挿入され、超音波振動される。振動する切削チップが水晶体の細胞核と表層とを液化または乳化し、水晶体を眼から吸引することができる。水晶体の患部の細胞核および表層は、一旦除去されると、人工眼内レンズ(IOL)により残存している嚢内(袋内)に置換される。近距離ではっきり見ることができる患者の能力を少なくとも部分的に回復させるために、移植されるIOLは多焦点レンズである可能性がある。
【0005】
ある一般的なタイプの多焦点レンズは、遠見視力と近見(または中間)視力とを提供する2焦点レンズ等の回折レンズである。3焦点回折レンズもまた利用可能で、追加の焦点および、少なくとも潜在的には、より広範囲の合焦視力を提供する。しかし、複数の焦点の間、特に3焦点レンズ内での光エネルギーの分割に関連する不都合が存在する。したがって、改善された多焦点回折レンズに対する必要性が依然存在している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の種々の実施形態において、多焦点眼用レンズは、眼用レンズと回折素子とを含む。眼用レンズは、基本度数に対応する基本曲率を有する。回折素子は、近見視力と遠見視力との間の視力範囲に対応する少なくとも4つの連続する回折次数について強め合う干渉を生じる。強め合う干渉は、近焦点と、眼用レンズの基本度数に対応する遠焦点と、近焦点と遠焦点との間の中間焦点とを生じる。回折次数のうちの少なくとも1つの回折効率は、10パーセント未満に抑制される。
本願は以下の発明を包含する:
(1)基本度数(base power)に対応する基本曲率を有する眼用レンズ;及び
前面及び後面の少なくとも1つに配置された回折プロファイルを備える眼内レンズであって、前記回折プロファイルは視力範囲に対応する少なくとも4つの連続する回折次数において強め合う干渉を供するように形状化された複数の環状帯域を含み、ここで
前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、最高の回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、そして
前記2つの中間回折次数のうちの少なとも1つが抑制された回折次数であり、
前記強め合う干渉は、各々が前記4つの連続する回折次数の一つとは異なる次数に対応する近焦点、前記眼内レンズの基本度数に対応する遠焦点、及び中間焦点を生成し、そして
前記連続する回折次数のうちの最低の回折次数は遠焦点に対応し、そして
前記最低の回折次数の回折効率は連続する回折次数の他のどれよりも高い;
眼内レンズ。
(2)前記回折次数の少なくとも1つの回折効率が10%未満に抑制されている、(1)に記載の眼内レンズ。
(3)前記抑制された次数に関連するエネルギーの少なくとも一部が、前記近焦点、中間焦点及び遠焦点の1もしくは複数に再分配される、(2)に記載のレンズ。
(4)前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、最高の回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、そして
前記少なくとも1つの抑制された回折次数が、前記2つの中間回折次数のうちの1つである、(1)に記載のレンズ。
(5)前記4つの連続する回折次数が以下の回折次数のうちの少なくとも2つを含む、(1)に記載の眼内レンズ:
-4、-3、-2、-1、0、+1、+2、+3。
(6)前記遠焦点が0回折次数に相当する、(1)に記載の眼内レンズ。
(7)前記遠焦点が0次数以外の回折次数に相当する、(1)に記載の眼内レンズ。
(8)前記域回折プロファイルが回折ステップの反復セットを含む、(1)に記載の眼内レンズ。
(9)前記近焦点が40cmでの視力に対応し、かつ、前記中間焦点が60cmでの視力に対応する、(1)に記載の眼内レンズ。
(10)基本度数に対応する基本曲率を有する眼用レンズ;及び
前面及び後面の少なくとも1つに配置された回折プロファイルを備える眼内レンズであって、前記回折プロファイルは視力範囲に対応する少なくとも4つの連続する回折次数において強め合う干渉を供するように形状化された複数の環状帯域を含み、ここで
前記強め合う干渉は、各々が前記4つの連続する回折次数の一つとは異なる次数に対応する近焦点、前記眼内レンズの基本度数に対する遠焦点、近-中間焦点及び遠-中間焦点を生成し、そして
前記近焦点、近-中間焦点及び遠-中間焦点はそれぞれ前記基本度数に対し異なる付加度数に対応し、
遠-中間焦点に対応する第1付加度数は近焦点に対応する第3付加度数の2分の1未満であり、かつ
近-中間焦点に対応する第2付加度数は近焦点に対応する第3付加度数の2分の1より大きい、
眼内レンズ。
(11)前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、最高の回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、そして
前記回折次数のうちの1つが抑制されている、(10)に記載の眼内レンズ。
(12)前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、最高の回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、そして
前記少なくとも1つの抑制された回折次数は前記2つの中間回折次数のいずれかである、(11)に記載の眼内レンズ。
(13)前記少なくとも1つの抑制された次数に関連するエネルギーの少なくとも一部が、前記近焦点、中間焦点及び遠焦点の1もしくは複数に再分配される、(12)に記載の眼内レンズ。
(14)前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、最高の回折次数、及び2つの中間回折次数を含み、そして
前記最低の回折次数の回折効率は連続する回折次数の他のどれよりも高い、(10)に記載の眼内レンズ。
(15)前記4つの連続する回折次数が以下の回折次数のうちの少なくとも2つを含む、(10)に記載の眼内レンズ:
-4、-3、-2、-1、0、+1、+2、+3。
(16)前記遠焦点が0回折次数に相当する、(10)に記載の眼内レンズ。
(17)前記遠焦点が0次数以外の回折次数に相当する、(10)に記載の眼内レンズ。
(18)複数の環状帯域回折構造が複数の反復回折ステップを含む、(10)に記載の眼内レンズ。
(19)基本曲率、前面、及び後面を有する眼用レンズ、及び
前面及び後面の少なくとも1つに配置された回折素子を備える多焦点眼用レンズであって、前記回折素子は、前記基本曲率に対する対応するステップ高さをそれぞれ有する複数の環状回折ステップを含み、前記複数の環状回折ステップは、3つの回折ステップのうち少なくとも2つの反復セットを含み、各反復セットの前記3つの回折ステップのための前記ステップ高さは、以下の式:
【数1】
(式中、
Aiは前記基本曲率に対するステップ高さであり、
yiはセグメントi内のサグ(x軸上下の高さ)であり、
φiはx軸からの相対位相遅れであり、そして
xiはx軸に沿う前記ステップの位置である)に定義される、多焦点眼用レンズ。
さらに本願は以下の発明も包含する:
[請求項1]
前面及び後面を有するレンズ、並びに
視力範囲に対応する少なくとも4つの連続する回折次数において強め合う干渉を供するように形状化された複数の環状帯域を含む回折プロファイルを備える眼内レンズであって、ここで
前記4つの連続する回折次数が、最低の回折次数、遠-中間回折次数、近-中間回折次数、及び最高の回折次数を含み、
前記最高の回折次数は近見視力用近焦点に対応し、前記最低の回折次数は遠見視力用遠焦点に対応し、前記遠-中間回折次数は遠-中間焦点に対応し、前記近-中間回折次数は近-中間焦点に対応し、
前記最低の回折次数の回折効率は他のどの連続する回折次数の回折効率より高く、さらに
前記近-中間回折次数の回折効率は前記遠-中間回折次数の回折効率よりも高い、
眼内レンズ。
[請求項2]
前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数のそれぞれの回折効率が10~20%の範囲内である、請求項1に記載の眼内レンズ。
[請求項3]
前記最高の回折次数、前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数のそれぞれの回折効率が10~20%の範囲内である、請求項1に記載の眼内レンズ。
[請求項4]
前記最高の回折次数の回折効率が、前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数の少なくとも1つの回折効率よりも高い、請求項1に記載の眼内レンズ。
[請求項5]
前記遠-中間回折次数及び前記近-中間回折次数の少なくとも1つの回折効率が10%未満である、請求項1に記載の眼内レンズ。
[請求項6]
前記遠-中間回折次数の回折効率が10%未満である、請求項1に記載の眼内レンズ。
[請求項7]
前記近-中間回折次数の回折効率が10%未満である、請求項1に記載の眼内レンズ。
[請求項8]
基本曲率を有する眼用レンズと、
5つの連続する回折次数について強め合う干渉を生じさせる回折素子と、を備える、多焦点眼用レンズであって、
前記5つの連続する回折次数が、最低の回折次数と、最高の回折次数と、第1の中間回折次数と、第2の中間回折次数と、第3の中間回折次数とを含み、そして、
前記第3の中間回折次数が抑制されている、
多焦点眼用レンズ。
[請求項9]
前記第3の中間回折次数の回折効率が10%未満に抑制されている、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項10]
前記5つの連続する回折次数が以下の回折次数のうちの少なくとも2つを含む、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ:
-4、-3、-2、-1、0、+1、+2、及び+3。
[請求項11]
前記強め合う干渉が、近焦点、遠焦点、第1の中間焦点、及び第2の中間焦点を生じ、それぞれが、前記5つの連続する回折次数の異なる1つに対応している、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項12]
前記第3の中間回折次数の回折効率が10%未満に抑制され、
前記抑制された回折次数に関連するエネルギーの少なくとも一部が、前記近焦点、前記遠焦点、前記第1の中間焦点、及び前記第2の中間焦点の1もしくは複数に再分配される、請求項11に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項13]
前記遠焦点が0回折次数に相当する、請求項11に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項14]
前記遠焦点が0回折次数以外の回折次数に相当する、請求項11に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項15]
前記最低の回折次数の回折効率は、他のどの連続する回折次数の回折効率より高い、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項16]
前記眼用レンズが眼内レンズである、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項17]
前記5つの連続する回折次数が0、+1、+2、+3、及び+4である、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項18]
前記5つの連続する回折次数が+1、+2、+3、+4、及び+5である、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項19]
前記最高の回折次数の回折効率が、前記第1の中間回折次数、前記第2の中間回折次数、及び前記第3の中間回折次数の回折効率よりも高い、請求項8に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項20]
基本曲率を有する眼用レンズと、
4つの連続する回折次数について強め合う干渉を生じさせる回折素子と、を備える、多焦点眼用レンズであって、
前記強め合う干渉が、近焦点、遠焦点、及び前記近焦点と前記遠焦点との間の中間焦点を生じ、
前記4つの連続する回折次数の第1の回折次数の回折効率が少なくとも37%であり、
前記4つの連続する回折次数の第2の回折次数の回折効率が3%と10%の間であり、
前記4つの連続する回折次数の第3の回折次数の回折効率が10%と20%の間であり、さらに、
前記4つの連続する回折次数の第4の回折次数の回折効率が15%と30%の間である、多焦点眼用レンズ。
[請求項21]
前記4つの連続する回折次数が(0、+1、+2、及び+3)である、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項22]
前記4つの連続する回折次数が(-1、0、+1、及び+2)である、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項23]
前記4つの連続する回折次数が(+1、+2、+3、及び+4)である、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項24]
前記第1の回折次数が前記遠焦点に対応し、
前記第3の回折次数が前記中間焦点に対応し、そして
前記第4の回折次数が前記近焦点に対応する、
請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項25]
前記4つの連続する回折次数が(0、+1、+2、及び+3)であり、
前記第1の回折次数が0次数で前記遠焦点に対応し、
前記第2の回折次数が+1次数で抑制されており、
前記第3の回折次数が+2次数で前記中間焦点に対応し、そして
前記第4の回折次数が+3次数で前記近焦点に対応する、
請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項26]
前記+1次数に関連するエネルギーの少なくとも一部が、前記遠焦点に再分配される、請求項25に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項27]
前記回折素子が、前記4つの連続する回折次数において強め合う干渉を供するように形状化された複数の環状帯域を含む、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項28]
前記複数の環状帯域が複数の反復回折ステップを含む、請求項27に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項29]
前記4つの連続する回折次数が以下の回折次数のうちの少なくとも2つを含む、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ:
-4、-3、-2、-1、0、+1、+2、及び+3。
[請求項30]
前記眼用レンズが眼内レンズである、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項31]
前記近焦点が40cmでの視力に対応し、かつ、前記中間焦点が60cmでの視力に対応する、請求項20に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項32]
前記近焦点が40cmでの視力に対応し、かつ、前記中間焦点が60cmでの視力に対応する、請求項26に記載の多焦点眼用レンズ。
[請求項33]
基本曲率、前面、及び後面を有する眼用レンズ、及び
前面及び後面の少なくとも1つに配置された回折素子を備える多焦点眼用レンズであって、前記回折素子は、前記基本曲率に対する対応するステップ高さをそれぞれ有する複数の環状回折ステップを含み、前記複数の環状回折ステップは、3つの回折ステップのうち少なくとも2つの反復セットを含み、各反復セットの前記3つの回折ステップのための前記ステップ高さは、以下の式:
【数2】
(式中、
Aiは前記基本曲率に対するステップ高さであり、
yiはセグメントi内のサグ(x軸上下の高さ)であり、
φiはx軸からの相対位相遅れであり、そして
xiはx軸に沿う前記ステップの位置である)に定義される、多焦点眼用レンズ。
【0007】
本発明の種々の実施形態の他の特長および利点は、以下の説明から当業者に対して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の特定の実施形態による眼内レンズを示す。
図2】本発明の特定の実施形態による回折ステップ配置を示す。
図3】本発明の特定の実施形態による特定の回折ステップ配置を示す表である。
図4】本発明の特定の実施形態による特定の回折ステップ配置を示す表である。
図5】本発明の特定の実施形態による特定の回折ステップ配置を示す表である。
図6】本発明の特定の実施形態による特定の回折ステップ配置を示す表である。
図7】本発明の特定の実施形態による特定の回折ステップ配置を示す表である。
図8】本発明の特定の実施形態による特定の回折ステップ配置を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の種々の実施形態は、少なくとも1つの抑制した回折次数を備える多焦点回折眼用レンズを提供する。1つの回折次数を抑制することにより、レンズの性能を従来の回折レンズに対して適合させることができる。公知の3焦点回折レンズでは、例えば、(-1、0、+1)次焦点または(0、+1、+2)次焦点等、多数の回折焦点の間で光を分割している。
【0010】
対照的に、本発明の種々の実施形態では、回折次数に対応する少なくとも3つの焦点を提供し、少なくとも1つの中間回折次数を抑制する。このことは、遠見視力または近見視力により近い中間焦点を提供し、それぞれの焦点周囲により広範囲の視力を提供する。更に、他の中間次数の抑制により、より多いエネルギーを他の焦点に分配して、より有用な視力を提供し得る。以下の説明では、眼用レンズの焦点への言及は、(基本的に、有限距離からの共線状光線としてモデル化される)30cm前後の通常の近方目視から遠方視力まで広がる視力範囲内の対応回折焦点を示す。このことは、不必要な光効果のみしか提供することのない、視力範囲外に存在する回折レンズの不要波の高次数を除外する。したがって、例えば、公称上2焦点の回折レンズでも、強め合う干渉からの高次数回折焦点を含むが、本明細書の目的により、それらを眼用レンズの焦点とはみなすべきではない。
【0011】
他の実施形態では、多焦点回折レンズは、最至近付加度数の2分の1未満の少なくとも1つの焦点と、最至近付加度数の2分の1より大きい少なくとも1つの他の焦点とを含む、少なくとも4つの連続する回折次数に対応する焦点を生じる。このことは、最至近付加度数の半分の付加度数を有する従来の3焦点レンズよりも、有利であるかもしれない。この中間視力は、近見視距離の2倍に相当するので、近付加度数が40cmの作用距離に相当するとすれば、従来の読取距離である中間目視距離は80cmであろう。共通の中間作用距離が60cmにあるとすると、これは近焦点と中間焦点との間に収まるであろう最も一般的な作用距離での明瞭な焦点は提供しないであろう。対照的に、近付加度数の2/3に相当する焦点のレンズは、中間作用距離に相当する60cmで焦点を提供する。
【0012】
図1は、回折素子102を含む多焦点回折眼用レンズ(IOL)100の特定の実施形態を示す。回折素子102は、特徴焦点で強め合う干渉を生じさせるための特徴半径方向分離を有する回折ステップ104(帯域としても公知)を備える。原理としては、干渉帯域での移相を介して強め合う干渉を生じる、多くはホログラムと呼ばれる、任意の回折素子は、そうした多焦点回折眼用レンズでの使用に適合し得る。また、回折素子は環状帯域で示すが、帯域は半円形またはセクタ分割等、部分的なものとしても考え得る。以下の説明は環状回折ステップ103を含む回折素子102に関するが、本明細書に開示するいかなる実施形態においても適当な置換を行っても構わないことが当業者により理解されるべきである。
【0013】
IOL100は、また、光学部品104を含み、この上に回折素子102が位置付けられる。光学部品104はレンズの基本光学度数を決定し、それが一般的には患者の遠見視力に対応する。このことは常に該当する必要はなく、例えば、よく見えない方の眼がIOLを有していて、患者の両側の眼の全体両眼視力を改善するために基本光学度数が対応する距離度数よりわずかに少ないこともある。それにも拘わらず、基本光学度数に関してIOLの付加度数を規定できる。ハプティック106は、IOL100を適所に保持し水晶体嚢内に安定的に定着させる。ハプティックアームを実施例に示すが、後眼房移植と相性のよい水晶体嚢または毛様溝用の任意の適当なハプティック定着構造体もまた、後眼房IOLに使用可能である。
【0014】
以下の実施例は後眼房IOL100を扱うが、多焦点回折眼鏡および多焦点回折コンタクトレンズを含む他の眼用レンズもまた同じ手法からの便益を受けることができる。光軸に対するこの公知で決まったレンズ位置は、角膜内、前眼房、および後眼房レンズを含む眼内レンズに対してこのような応用を好都合にする。しかし、このことにより他の応用での多焦点の有用性が排除されることはない。
【0015】
図2は、図1のIOL100等の眼用レンズに有用な回折ステップ構造体をより詳細に示す。特に、図2は、視力範囲内に4つの別個の焦点で強め合う干渉用の位相関係を生じる3ステップ反復回折構造体を示す。r2-空間内で測られる、スケール化された半径方向軸(x軸)に沿う連続的な半径方向ステップ境界におけるステップ関係は、以下の通りであり、
【数2】
【0016】
式中、Aiは基本レンズの基本曲率(基本光学度数)に対する対応するステップ高さ(一定位相遅れφiを除く)であり、yiは対応するセグメント内のサグ(x軸上下の高さ)であり、φiはx軸からの相対位相遅れであり、xiはx軸に沿うステップの位置である。回折光学の当業者に明らかなように、式中に示された半径方向位置は、帯域間隔で予見されるような、r2-空間(即ち、放物線状にスケール化)内のものである。特定の実施形態では、パラメータが選択されるので、焦点のうちの1つは抑制され、つまり合焦画像がもはや視認されないように、光エネルギーが焦点の中の区分について減少される。これは、入射光エネルギーの10%未満の光エネルギーに相当し、入射光エネルギーの10%未満の不要波の回折次数の2焦点レンズでは別個に視認可能な画像の結果をもたらさない事実によっても示唆される。特定の次数で合焦される入射光エネルギーの分率を、「回折効率」と呼ぶことにする。
【0017】
列記した位相関係は、IOLの基本度数により決まる基本曲線に関して与えられ、レンズの零次回折焦点に対応する。構成部品間での相対的位相関係の調節を、焦点間のエネルギー分布を僅かに修正する技術で公知な方法で、変え得るが、帯域xiの半径方向間隔は通常は、回折付加度数により決まるr2―空間内の通常のフレネル帯域間隔に基づいて決定される。以下に列記する実施例では、この間隔は、4つの焦点を生じるための公知なフレネルパターンにしたがって想定すべきである。これは、例えば、米国特許第5、344、447号および第5、760、817号およびPCT公開公報WO第2010/0093975号で説明されている3焦点手法に類似しており、これらの全ては参照により組み入れられている。回折ステップも、米国特許第5、699、142号に説明されている仕方でエネルギーを近焦点へ累進的に減少させることにより、アポダイズ(公称位相関係に対してステップ高さについて徐々に減少)されてグレアを減少させ得る。
【0018】
図3~8は、+1次が抑制される、(0、+1、+2、+3)回折レンズに対する例示的な多焦点実施形態を提供する。これは、近付加度数の2/3で中間焦点を優位に提供し、60cmおよび40cmの距離での合焦画像にそれぞれ対応する。とりわけ、遠見視力(零次)焦点に対する回折効率を、従来の2焦点レンズの回折効率に匹敵するほぼ40%にでき、抑制された一次焦点に対する回折効率を5%未満にでき、一方で依然60cmおよび40cmの正規作用距離での可視中間および近焦点をそれぞれ提供している。従来の多焦点に比べて、これは、患者が老眼状態でない場合に使用するであろう作用視力の全範囲に上手く近似する。
【0019】
本明細書では特定の実施形態を説明したが、当業者ならば数多くの変形は可能であることを理解するだろう。特に、本明細書で説明した実施形態は、+1次を抑制した(0、+1、+2、+3)回折次数を用いた多焦点後眼房IOLである。この4つの次数の実施形態は、例えば-4~-1からの次数で始まるような、異なる連続的な回折次数を使用できる。零次を遠見視力に含ませるのが望ましいが、そのような条件は必要的な制約ではない。最後に、本手法は原則的に5つ以上の回折次数に適用でき、例えば、5つの次数の回折レンズでは、2つの中間度数、近度数、および抑制した中間度数を含む付加度数を有し得る。
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図8