(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】浮遊投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241016BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023120244
(22)【出願日】2023-07-24
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】502160992
【氏名又は名称】宏達國際電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】李 卓奕
(72)【発明者】
【氏名】劉 奎均
(72)【発明者】
【氏名】陳 緯峻
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-025776(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118698(WO,A1)
【文献】特表2007-501950(JP,A)
【文献】特開2022-072211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0286129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー構造と、
前記ミラー構造を覆い、前記ミラー構造との間に収容空間を形成する光学構造と、
前記光学構造上に設置され
、位相差フィルム層と、前記ミラー構造の内面と前記位相差フィルム層との間に設置される偏光選択反射フィルム層と、を備える光学コーティングと、
前記光学構造と前記ミラー構造との間に形成される前記収容空間に設置され、前記光学構造に向けて複数の画像ビームを送信するのに用いられるディスプレイと、
を備える浮遊投影装置。
【請求項2】
前記複数の画像ビームは、前記光学構造の内面上で1回目の反射を発生して、複数の第1の反射ビームを生成し、前記複数の第1の反射ビームは、前記ミラー構造の反射面上で2回目の反射を発生して、複数の第2の反射ビームを生成し、前記複数の第2の反射ビームは、前記光学構造の前記内面を通過して、実像の表示画像を形成する、請求項
1に記載の浮遊投影装置。
【請求項3】
前記ディスプレイは、第1の旋回性を有する円偏光の前記複数の画像ビームを投影して、前記位相差フィルム層は、前記複数の画像ビームを第1の方向の直線偏光に変換し、前記偏光選択反射フィルム層は、前記第1の方向の直線偏光の前記複数の画像ビームを反射して、前記複数の第1の反射ビームを生成し、前記位相差フィルム層は、前記複数の第1の反射ビームを前記第1の旋回性を有する円偏光にさらに変換する、請求項
2に記載の浮遊投影装置。
【請求項4】
前記ミラー構造の反射面は、前記複数の第1の反射ビームを反射して、第2の旋回性を有する円偏光の前記複数の第2の反射ビームを生成する、請求項
2に記載の浮遊投影装置。
【請求項5】
前記位相差フィルム層は、前記複数の第2の反射ビームを第2の方向の直線偏光に変換し、前記偏光選択反射フィルム層は、前記第2の方向の直線偏光の前記複数の第2の反射ビームを通過する、請求項
4に記載の浮遊投影装置。
【請求項6】
表示画像は、前記収容空間の外側で前記光学構造の外面に隣接して結像される、請求項
1に記載の浮遊投影装置。
【請求項7】
前記ミラー構造と前記光学構造は、第1の曲率半径及び第2の曲率半径をそれぞれ有し、前記第1の曲率半径と前記第2の曲率半径は非ゼロの実数である、請求項1に記載の浮遊投影装置。
【請求項8】
前記ミラー構造の凹面と前記光学構造の凹面とは互いに対向する、請求項
7に記載の浮遊投影装置。
【請求項9】
前記ミラー構造と前記光学構造のうちの一方は平面構造であり、前記ミラー構造と前記光学構造のうちの他方は一定の曲率半径を有し、前記曲率半径は非ゼロの実数である、請求項1に記載の浮遊投影装置。
【請求項10】
前記光学構造は、透明構造体である、請求項1に記載の浮遊投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊投影装置に関し、特に、表示効果を向上させることができる浮遊投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、浮遊投影装置は、互いに重畳された2つの凹面のミラー構造を有し、上層のミラー構造の中央部分に開口部が形成される。浮遊投影装置には実物が設置される。実物の画像は浮遊投影装置内で多重反射を起こし、上層のミラー構造の中央部分の開口部を通過して、浮遊投影装置の上方に実物に近い表示画像を結像する。
【0003】
上記従来技術の浮遊投影装置では、生成される表示画像の視角がある程度限定される。さらに、ユーザが表示画像を上方から観察する場合、その開口部分から同時に浮遊投影装置内部の実物が容易に観察されるため、視覚的な干渉の現象が発生する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、表示効果を効果的に向上させることができる浮遊投影装置を提供する。
【0005】
本発明の浮遊投影装置は、ミラー構造と、光学構造と、光学コーティングと、ディスプレイと、を備える。光学構造はミラー構造を覆い、ミラー構造との間に収容空間を形成する。光学コーティングは、光学構造上に配置される。ディスプレイは、光学構造とミラー構造との間に形成される収容空間に設置され、光学構造に向けて複数の画像ビームを送信するために用いられる。
【0006】
以上に基づいて、本発明の浮遊投影装置は、上方の光学構造上に光学コーティングを設置する。光学コーティングは、ビームの偏光方向に応じて、画像ビームを反射又は通過させ、浮遊投影装置の上方に表示画像を結像することができる。このようにして、浮遊投影装置が生成する表示画像の視角を大幅に向上することができ、表示画像の品質を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の結像方法の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の画像ビームの進行詳細の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の結像距離離の概略図である。
【
図5A】本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の概略図である。
【
図5B】
図5Aの浮遊投影装置500にかかる画像ビームの進行経路の概略図である。
【
図6A】本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の概略図である。
【
図6B】
図6Aの浮遊投影装置600にかかる画像ビームの進行経路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、
図1は、本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の概略図である。浮遊投影装置100は、ミラー構造110と、光学構造120と、光学コーティング130と、ディスプレイ140と、を備える。本実施形態において、光学構造120は、ミラー構造110の上方に設置される。ここで、光学構造120はミラー構造110を覆い、ミラー構造110との間に収容空間Z1を形成する。光学コーティング130は光学構造120上に設置される。ここで、光学コーティング130は光学構造120がミラー構造110に向かう内面SI上に設置される。ディスプレイ140は収容空間Z1に設置される。ディスプレイ140は、光学構造120に向けて複数の画像ビームIMBを送信するために用いられる。
【0009】
本実施形態において、光学コーティング130は、位相差フィルム層と、偏光選択反射フィルム層と、を備える。ここで、偏光選択反射フィルム層は、位相差フィルム層とミラー構造110の内面SIとの間に設置される。位相差フィルム層は、受信するビームの偏光形態を変更することができ、偏光選択反射フィルム層は、受信するビームの偏光形態に応じて、受信するビームを反射するか又は通過するかを選択するように配置される。
【0010】
本実施形態において、ディスプレイ140が送信する画像ビームIMBは、ミラー構造110及び光学コーティング130において、複数回の反射及び1回の通過の動作を発生することができ、ミラー構造110と光学構造120との間で形成される収容空間Z1の外側で、光学構造120の外面SOに近い結像平面IMP上において、実像の表示画像を形成することができる。
【0011】
上記結像方法により、さまざまな角度から見ることができる実際の物体に近い表示画像を生成することができ、これをホログラム(hologram)と呼ぶことができる。
【0012】
本実施形態において、光学構造120は透明構造体であって良い。また、本実施形態において、ミラー構造110及び光学構造120はいずれも凹面構造であって良く、且つ、ミラー構造110の凹面と光学構造120の凹面とは互いに対向していても良い。ミラー構造110及び光学構造120は、第1の曲率半径及び第2の曲率半径をそれぞれ有していても良く、ここで、第1の曲率半径及び第2の曲率半径は非ゼロの実数である。また、ディスプレイ140は液晶ディスプレイであって良い。
【0013】
本発明の実施形態のビームの進行経路に関して、本発明の実施形態の浮遊投影装置の結像方法の概略図を示す
図2を参照できる。
図2において、ディスプレイ140は、光学コーティング130に向けて画像ビームIMB1及びIMB2を送信することができる。光学コーティング130は、画像ビームIMB1及びIMB2をそれぞれ反射して、反射ビームRB11及びRB21を生成することができる。反射ビームRB11及びRB21はミラー構造110に向けて前進する。ミラー構造110は、反射ビームRB11及びRB21を反射して、反射ビームRB12及びRB22をそれぞれ生成するためにも用いられる。
【0014】
次いで、反射ビームRB12及びRB22は、光学コーティング130及び光学構造120を通過することができ、収容空間Z1の外側で表示画像を生成することができる。
【0015】
さらなる説明のために、
図3に図示される本発明の実施形態の浮遊投影装置の画像ビームの進行の詳細にかかる概略図を参照されたい。本実施形態において、ディスプレイが生成する画像ビームIMBは第1の旋回性を有する円偏光であり、第1の旋向性は、例えば右旋性である。画像ビームIMBが位相差フィルム層QWPに送信されるとき、位相差フィルム層QWPは画像ビームIMBを第1の方向の直線偏光に変更することができ、第1の方向は、例えば垂直方向である。本実施形態において、位相差フィルム層QWPは1/4位相差板であって良い。
【0016】
次いで、偏光選択反射フィルム層IQPSは、垂直方向に直線偏光された画像ビームIMBを受信し、画像ビームIMBの反射を選択して、反射ビームRB1を生成することができる。反射ビームRB1は、位相差フィルム層QWPを通過して、位相差フィルム層QWPは反射ビームRB1を右旋性の円偏光に変換することができる。
【0017】
右旋性の円偏光の反射ビームRB1は、ミラー構造310の反射面に送信することができる。ミラー構造310は、反射ビームRB1を反射し、反射ビームRB2を生成するために用いられる。ここで、反射ビームRB2は、第2の旋向性(左旋回)の円偏光である。次いで、反射ビームRB2は、位相差フィルム層QWPを通過し、位相差フィルム層QWPは反射ビームRB2を第2の方向の直線偏光に変換することができ、第2の方向は、例えば水平方向である。
【0018】
水平方向の直線偏光である反射ビームRB2は、偏光選択反射フィルム層IQPSに送信されることができる。さらに、偏光選択反射フィルム層IQPSは、反射ビームRB2を通過して、反射ビームRB2を結像平面IMP上に結像して、表示画像を形成することができる。
【0019】
本発明の実施形態における浮遊投影装置の結像距離の算出に関しては、本発明の実施形態の浮遊投影装置の結像距離の概略図を示す
図4を参照されたい。本実施形態において、浮遊投影装置400のミラー構造410及び光学構造420はいずれも凹面構造であり、曲率半径R2及びR1をそれぞれ有する。ミラー構造410と結像平面IMPの垂直距離はL(像距離)であり、ミラー構造410と光学コーティング430との間の垂直距離はAである。
【式1】
【0020】
【0021】
式1に基づき、次の関係式1が得られる。式中、Aは正であり、R1は負であり、R2は正である。
【式2】
【0022】
【0023】
式中、I1は一次結像の像距離であり、FR1は光学構造420の焦点距離である。
【0024】
関係式1より、一次結像における像距離を次の通り算出することができる。
【式3】
【0025】
【0026】
次いで、一次結像の像距離I1に基づき、二次結像の像距離をさらに算出することができる。
【式4】
【0027】
ここで、浮遊投影の要求によれば、像距離Lは距離Aよりも大きい必要がある。したがって、設計においては、適当な曲率半径R2を有するミラー構造410及び曲率半径R1を有する光学構造420を選択することができ、浮遊投影装置400は、表示画像をホログラム画像として効果的に生成することができる。
【0028】
図5A及び
図5Bを参照すると、
図5Aは、本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の概略図であり、
図5Bは、
図5Aの浮遊投影装置500の画像ビームの進行経路の概略図である。
図5Aにおいて、浮遊投影装置500は、ミラー構造510と、光学構造520と、光学コーティング530と、ディスプレイ540と、を備える。
図1の実施形態とは異なり、本実施形態において、ミラー構造510は平面構造であって良く、光学構造520及び光学コーティング530は凹面構造であって良く、光学構造520及び光学コーティング530により形成される凹面は、ミラー構造510の反射面に面する。
【0029】
図5Bでは、ディスプレイ540が生成する画像ビームは、可在光学コーティング530とミラー構造510との間で、複数回の反射及び単回の通過を発生し、結像平面IMP上に表示画像を形成することができる。本実施形態において、浮遊投影装置500の光学コーティング530は、曲率半径R1を有する。ミラー構造510と結像平面IMPの垂直距離はL(像距離)であり、ミラー構造510と光学コーティング530との間の垂直距離はAである。上記公式1に基づき、関係式2を得ることができる。
【式5】
【0030】
式中、I1は一次結像の像距離であり、FR1は光学コーティング530の焦点距離である。さらに、次の通り導出することができる。
【式6】
【0031】
【0032】
上記の導出から、光学コーティング530の結像距離はAPに等しいことが分かる。表示画像の浮遊の要求を満足するために、光学コーティング530の結像は、ミラー構造510の反射動作を介して、光学構造520の上方に生成することができる。したがって、光学コーティング530の結像距離は2Aよりも大きい必要がある。また、本発明で生成される表示画像は実像であるので、距離Aは曲率半径R1の2分の1よりも大きい必要がある。上記各要素を組み合わせると、関係式3を導出することができる。
【式7】
【0033】
【0034】
すなわち、上記の関係式を満たす光学コーティング530の曲率半径R1を選択することにより、浮遊投影装置500は表示画像をホログラム画像として効果的に生成することができる。
【0035】
図6A及び
図6Bを参照すると、
図6Aは、本発明の一実施形態にかかる浮遊投影装置の概略図を示し、
図6Bは、
図6Aの浮遊投影装置600における画像ビームの進行経路の概略図を示す。
図6Aにおいて、浮遊投影装置600は、ミラー構造610と、光学構造620と、光学コーティング630と、ディスプレイ640と、を備える。
図1の実施形態とは異なり、本実施形態において、ミラー構造610は凹面構造であって良く、光学構造620及び光学コーティング630は平面構造であって良く、ミラー構造610により形成される凹面は、光学構造620及び光学コーティング630に面していても良い。
【0036】
図6Bにおいて、ディスプレイ640が生成する画像ビームは、可在光学コーティング630とミラー構造610との間で、複数回の反射及び単回の通過を発生し、結像平面IMP上に表示画像を形成することができる。本実施形態において、浮遊投影装置600のミラー構造610は、曲率半径R2を有する。ミラー構造610と結像平面IMPの垂直距離はL(像距離)であり、ミラー構造610と光学コーティング630との間の垂直距離はAである。上記公式1に基づき、関係式4を得ることができる。
【式8】
【0037】
式中、I1は一次結像の像距離であり、FR2はミラー構造610の焦点距離である。さらに、次の通り導出することができる。
【式9】
【0038】
【0039】
表示画像の浮遊の要求を満足するために、一次結像の像距離I1は距離Aよりも大きい必要がある。本発明で生成される表示画像は実像であるので、距離Aは曲率半径R2の4分の1よりも大きい必要がある。上記各要素を組み合わせると、関係式5を導出することができる。
【式10】
【0040】
【0041】
すなわち、上記の関係式を満たすミラー構造610の曲率半径R2を選択することにより、浮遊投影装置600は表示画像をホログラム画像として効果的に生成することができる。
【0042】
本発明の浮遊投影装置は、対応して設置されるミラー構造及び光学構造を有する。光学構造上に設置された光学コーティングにより、ディスプレイが生成する画像ビームは、光学コーティングと光学構造との間で複数回反射して、画像ビームの偏光形態を変換することができる。光学コーティングは、特定の偏光形態を有する画像ビームを浮遊投影装置の上方に送信し、浮遊投影装置の上方でホログラム画像を生成することができる。これにより、浮遊投影装置が生成する表示画像は、比較的広い視野角を有することができ、ディスプレイが生成する画像ビームが直接ユーザの目に入ることがなくなるので、視覚的干渉の発生を効果的に回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、浮遊投影の関連製品に応用することができ、浮遊投影装置の画像表示品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
100、400、500、600:浮遊投影装置
110、410、510、610:ミラー構造
120、420、520、620:光学構造
130、430、530、630:光学コーティング
140、440、540、640:ディスプレイ
A、L:距離
IMB、IMB1、IMB2:画像ビーム
IMP:結像平面
IQPS:偏光選択反射フィルム層
QWP:位相差フィルム層
RB1、RB2、RB11、RB21、RB12、RB22:反射ビーム
SI:内面
SO:外面
Z1:収容空間
【要約】 (修正有)
【解決手段】浮遊投影装置は、ミラー構造と、光学構造と、光学コーティングと、ディスプレイと、を備える。光学構造はミラー構造を覆い、ミラー構造体との間に収容空間を形成する。光学コーティングは、光学構造上に配置される。ディスプレイは、光学構造ミラー構造体との間に形成される収容空間に配置され、光学構造に向けて複数の画像ビームを送信するために用いられる。
【効果】表示効果を効果的に向上させることができる浮遊投影装置を提供する。
【選択図】
図1