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特許7572534金属鋳造システムにおけるイベントの感知
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】金属鋳造システムにおけるイベントの感知
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20241016BHJP
   B22D 11/049 20060101ALI20241016BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B22D11/16 104R
B22D11/049
B22D46/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023503461
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021042955
(87)【国際公開番号】W WO2022020710
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】62/705,943
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/705,947
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】マッカラム,ジョン ロバート バスター
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ショックリー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ビショフ,トッド エフ
(72)【発明者】
【氏名】タクール,アドウェイト
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-514301(JP,A)
【文献】特開2005-088065(JP,A)
【文献】特表平10-507827(JP,A)
【文献】特開昭59-133959(JP,A)
【文献】特開昭58-205662(JP,A)
【文献】特開平11-114657(JP,A)
【文献】特開2010-012470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/16
B22D 11/049
B22D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造動作中にイベントを検出するための装置であって、
金型と、
溶融金属をインゴットに鋳造するために、前記溶融金属を前記金型に送達するように構成された導管と、
前記鋳造動作からの音響信号を感知するように構成されたセンサーであって、前記鋳造動作に関連付けられたセンサーデータをキャプチャする、前記センサーと、
メモリ内の非一時的コンピューター可読媒体に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサを含むコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記プロセッサにプロセッサ動作を行わせ、前記プロセッサ動作は、
前記センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することと、
前記比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、
前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、前記装置または前記鋳造動作を調整させることと、
前記調整された鋳造動作である別の鋳造動作を開始することと、
を含み、
前記特定のタイプのイベントは、ブリードアウト、ブリードオーバー、バットバウンス、バットカール、または水冷動作のうちの1つ以上を含み、
前記センサーは音響センサーを備え、前記音響センサーは、初期の鋳造期間にわたる複数の鋳造動作からの音響信号に関連付けられたセンサーデータをキャプチャするように構成され、
前記プロセッサ動作は、さらに、
初期の鋳造期間における音響信号を使用して、前記音響プロファイルのセットを生成することを含み、前記音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、前記初期の鋳造期間にわたる前記複数の鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられ、
前記センサーデータを前記音響プロファイルのセットと比較することは、前記鋳造動作に関してキャプチャされた前記音響信号の特徴を、過去の鋳造動作中にキャプチャされた音響信号の特徴と比較することを含み、
前記音響プロファイルのセットの音響プロファイルは、1つ以上の鋳造システムに関連付けられた特定のイベントの複数のインスタンスに関連付けられたデータを使用して生成された機械学習アルゴリズムを含む、装置。
【請求項2】
前記プロセッサ動作は、さらに、
前記センサーデータと、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかの判定とを使用して、前記音響プロファイルのセットを更新することを含む、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記音響信号の前記特徴は、周波数、ピッチ、ラウドネス、またはトーンのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の装置。
【請求項4】
特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することは、前記センサーデータに基づいて、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに関する状態と、前記特定のタイプのイベントが発生している尤度とを判定することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
造機または前記鋳造動作を調整させることは、前記鋳造機をシャットオフすること、または前記鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
溶融炉、均熱炉、及び脱気装置をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
鋳造動作中にイベントを検出するためのシステムであって、
請求項1に記載の鋳造機と、
鋳造システムの機器の1つ以上の部品と、
を備える、システム。
【請求項8】
金属の鋳造におけるイベントを検出する方法であって、
鋳造機を含む鋳造システムの機器の1つ以上の部品を使用して、鋳造動作を開始することであって、前記鋳造動作は、前記鋳造機における金型内でインゴットの鋳造を引き起こすまたは容易にする1つ以上のアクションを含む、前記開始することと、
音響センサーを使用して、前記鋳造動作を行う前記機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた1つ以上の音響信号に関連付けられたセンサーデータをキャプチャすることと、
前記センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することであって、前記音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、前記鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられる、前記比較することと、
前記比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、
前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、前記鋳造システムまたは前記鋳造動作を調整させることと、
前記調整された鋳造動作である別の鋳造動作を開始することと、
を含み、
前記特定のタイプのイベントは、ブリードアウト、ブリードオーバー、バットバウンス、バットカール、または水冷動作のうちの1つ以上を含み、
初期の鋳造期間における音響センサーを使用して、一定期間にわたって1つ以上の鋳造機を使用する複数の鋳造動作からのセンサーデータをキャプチャすることと、
前記センサーデータを使用して、前記音響プロファイルのセットを生成することと、
をさらに含み、
前記センサーデータを前記音響プロファイルのセットと比較することは、前記鋳造動作を行う前記機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた前記音響信号の特徴を、過去の鋳造動作中にキャプチャされた音響信号の特徴と比較することを含み、
前記音響プロファイルのセットの音響プロファイルは、1つ以上の鋳造システムに関連付けられた特定のイベントの複数のインスタンスに関連付けられたデータを使用して生成された機械学習アルゴリズムを含む、方法。
【請求項9】
前記センサーデータと、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかの判定とを使用して、前記音響プロファイルのセットを更新することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記音響信号の前記特徴は、周波数、ピッチ、ラウドネス、またはトーンのうちの1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することは、前記センサーデータに基づいて、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに関する状態と、前記特定のタイプのイベントが発生している尤度とを判定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記鋳造システムまたは前記鋳造動作を調整させることは、前記鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年7月23日に出願され、「SENSING EVENTS IN A METAL CASTING SYSTEM」と題された米国仮出願第62/705,943号、及び2020年7月23日に出願され、「Monitoring Casting Environment」と題された米国仮出願第62/705,947号の利益及び優先権を主張し、これらの出願の両方の内容は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、鋳造システムにおけるイベントの感知に関する。より具体的には、鋳造システムがインゴットを成形する間にイベントに関連付けられたデータをキャプチャし、イベントの特徴を判定し、イベントに基づいて、鋳造システム及び/または鋳造動作を改善するイベント検出システムに関するシステム及び方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
溶融金属を金型で成形して、金属インゴットを作成できる。これらの金属インゴットを製造する一般的な方法は、直接チル(DC)鋳造である。直接チル鋳造では、溶融金属を浅い水冷金型に流し込む。金型の底部は、油圧テーブルに取り付けられた底部ブロックであり、仮底が形成される。金属が金型に充填されると、インゴットの外側部が冷却されて凝固し、シェルが形成される。底部ブロックが下降すると、より多くの金属が金型の上部に供給され、インゴットの下部が冷却液に露出される。
【発明の概要】
【0004】
本特許で使用される「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許の主題の全て及び下記の特許請求の範囲を広義に指すことが意図される。これらの用語を含む記述は、本明細書に説明される主題を制限するものではない、または下記の本特許の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を制限するものではないと理解されたい。本特許の適用を受ける本発明の実施形態は、この発明の概要ではなく、下記の特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、本発明の様々な実施形態の高水準の概要であり、下記の発明を実施するための形態のセクションにさらに説明する概念の一部を紹介している。この発明の概要は、主張される主題の重要な、または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、主張される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。主題は、本特許の明細書全体、図面のいずれかまたは全て、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されたい。
【0005】
本技術の例示的な実施形態は、鋳造動作中にイベントを検出するための装置を含み得る。本装置は、金型と、溶融金属をインゴットに鋳造するために、溶融金属を金型に送達するように構成された導管と、鋳造動作中に音響信号を感知するように構成された音響センサーであって、センサー(例えば、音響センサー)は、初期期間にわたる複数の鋳造動作からの音響信号に関連付けられた初期センサーデータをキャプチャするように構成され、センサー(例えば、音響センサー)は鋳造動作に関連付けられたセンサーデータをキャプチャする、音響センサーと、メモリ内の非一時的コンピューター可読媒体に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサを含むコントローラと、を備え得る。コントローラはプロセッサに動作を行わせ得、動作は、例えば、初期音響信号を使用して、音響プロファイルのセットを生成することであって、音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、初期期間にわたる複数の鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられる、生成することと、センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することと、比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、鋳造機または鋳造動作を調整させることと、調整された鋳造機または鋳造動作を使用して、第2の鋳造動作を開始することと、を含む。
【0006】
追加動作は、さらに、センサーデータと、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかの判定とを使用して、音響プロファイルのセットを更新することを含み得る。追加の態様では、センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することは、鋳造動作に関してキャプチャされた音響信号の特徴を、過去の鋳造動作中にキャプチャされた音響信号の特徴と比較することを含む。追加の態様では、音響信号の特徴は、周波数、ピッチ、ラウドネス、またはトーンのうちの1つ以上を含む。追加の態様では、音響プロファイルのセットの音響プロファイルは、1つ以上の鋳造システムに関連付けられた特定のイベントの複数のインスタンスに関連付けられたデータを使用して生成された機械学習アルゴリズムを含む。追加の態様では、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することは、センサーデータに基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに関する推奨と、特定のタイプのイベントが発生している尤度とを判定することを含む。追加の態様では、鋳造機または鋳造動作を調整させることは、鋳造機をシャットオフすることを含む。追加の態様では、鋳造機または鋳造動作を調整させることは、鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含む。追加の態様では、特定のタイプのイベントは、ブリードアウト、ブリードオーバー、バットバウンス、バットカール、または水冷動作のうちの1つ以上を含む。本装置は、さらに、溶融炉、均熱炉、脱気装置、及びフィルタを含み得る。
【0007】
別の例示的な実施形態は、金属の鋳造におけるイベントを検出する方法を含み得る。本方法は、例えば、鋳造機を含む鋳造システムの機器の1つ以上の部品を使用して、鋳造動作を開始することであって、鋳造動作は、鋳造機における金型内でインゴットの鋳造を引き起こすまたは容易にする1つ以上のアクションを含む、開始することと、音響センサーを使用して、鋳造動作を行う機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた1つ以上の音響信号に関連付けられたセンサーデータをキャプチャすることと、センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することであって、音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられる、比較することと、比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、鋳造システムまたは鋳造動作を調整させることと、調整された鋳造システムまたは鋳造動作を使用して、第2の鋳造動作を開始することと、を含み得る。
【0008】
追加の態様は、さらに、初期音響センサーを使用して、一定期間にわたって1つ以上の初期鋳造機を使用する複数の鋳造動作からセンサーデータをキャプチャすることと、センサーデータを使用して、音響プロファイルのセットを生成することと、を含み得る。
【0009】
追加の態様では、1つ以上の初期鋳造機は鋳造機を含む。追加の態様は、さらに、センサーデータと、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかの判定とを使用して、音響プロファイルのセットを更新することを含み得る。追加の態様では、センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することは、鋳造動作を行う機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた音響信号の特徴を、過去の鋳造動作中にキャプチャされた音響信号の特徴と比較することを含む。追加の態様では、音響信号の特徴は、周波数、ピッチ、ラウドネス、またはトーンのうちの1つ以上を含む。追加の態様では、音響プロファイルのセットの音響プロファイルは、1つ以上の鋳造システムに関連付けられた特定のイベントの複数のインスタンスに関連付けられたデータを使用して生成された機械学習アルゴリズムを含む。追加の態様では、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することは、センサーデータに基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに関する推奨と、特定のタイプのイベントが発生している尤度とを判定することを含む。追加の態様では、鋳造システムまたは鋳造動作を調整させることは、鋳造システムをシャットオフすることを含む。追加の態様では、鋳造システムまたは鋳造動作を調整させることは、鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含む。追加の態様では、特定のタイプのイベントは、ブリードアウト、ブリードオーバー、バットバウンス、バットカール、または水冷動作のうちの1つ以上を含む。追加の態様では、機器の1つ以上の部品は、溶融炉、均熱炉、脱気装置、及びフィルタを含む。
【0010】
別の例示的な実施形態は、鋳造動作中にイベントを検出するためのシステムを含み得る。本システムは、例えば、鋳造機を含む鋳造システムの機器の1つ以上の部品であって、鋳造動作は、鋳造機における金型内でインゴットの鋳造を引き起こすまたは容易にする1つ以上のアクションを含む、1つ以上の部品と、鋳造動作からの音響信号を感知するように構成されたセンサーであって、鋳造動作に関連付けられたセンサーデータをキャプチャするセンサーと、メモリ内の非一時的コンピューター可読媒体に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサを含むコントローラと、を備え得る。コントローラはプロセッサに動作を行わせ得、動作は、センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することと、比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、鋳造システムまたは鋳造動作を調整させることと、調整された鋳造システムまたは鋳造動作を使用して、第2の鋳造動作を開始することと、を含む。
【0011】
本開示に説明される様々な実施態様は、追加のシステム、方法、特徴、及び利点を含み得、これらは、必ずしも本明細書で明示的に開示できないが、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討すれば、当業者には明らかであろう。そのようなシステム、方法、特徴、及び利点の全ては、本開示の範囲内に含まれ、及び添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0012】
以下の図を参照することによって、様々な実施形態の性質及び利点のさらなる理解を実現し得る。図の特徴及びコンポーネントは、本開示の一般的原理を強調するために示される。添付図では、同様のコンポーネントまたは機能について、同じ参照符号が付けられ得る。さらに、同じタイプの様々なコンポーネントは、参照符号の後にダッシュを付け、同様のコンポーネントを区別する第2の符号を付けることで区別され得る。本明細書で第1の参照符号だけが使用される場合、説明は、第2の参照符号に関係なく、同じ第1の参照符号を有する同様のコンポーネントのいずれか1つに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本技術の実施形態による、例示的な直接チル鋳造システム及びプロセスを示すブロックフロー図である。
図2】本技術の例示的な実施形態による、データセンサーを伴うDC鋳造システムの例示的な図である。
図3】様々な例による、鋳造動作の終了に向けて見られる直接チル鋳造機の概略図である。
図4】様々な例による、デジタル的に及びプログラム可能に実装されたコントローラの概略図である。
図5】本技術の実施形態による、インゴットを成形するための鋳造動作中のDC鋳造機の例である。
図6】本技術の例示的な実施形態による、例示的なブリードアウトの時間経過を示す折れ線グラフである。
図7】本技術の実施形態による、インゴットを成形するための鋳造動作中のDC鋳造機の例である。
図8A】本技術の実施形態による、膜沸騰及び核沸騰を受ける例示的なインゴットの写真である。
図8B】本技術の実施形態による、インゴットの鋳造中の対流プロセスの段階を示すグラフィックである。
図8C】本技術の実施形態による、インゴットの鋳造中の対流プロセスの段階を示すグラフである。
図9】本技術の実施形態による、例示的なプロセスの例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例の主題は、法定要件を満たすために特異性を用いて本明細書に説明されるが、この説明は、必ずしも、特許請求の範囲を制限することを意図していない。主張される主題は、他の方法で具現化され得、異なる要素またはステップを含み得、他の既存の技術または今後の技術と併せて使用され得る。この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に説明されるときを除き、様々なステップまたは要素の中のまたはそれらの間の特定の順序または配置を暗示するとして解釈するべきではない。
【0015】
図1は、本技術の実施形態による、例示的な直接チル鋳造システム及びプロセスを示すブロックフロー図100である。図100、ひいては直接チル鋳造システムは、1つ以上の炉(例えば、溶融炉、均熱炉等)、1つ以上(またはゼロ)の処理デバイス(例えば、脱気装置、フィルタ)、DC鋳造機、及び/または冷却水循環システムを含み得る。これらのデバイスは、それぞれ、数あるプロセスのうち特に、溶融金属を金属インゴットに鋳造するプロセスの一部を行い得る。本明細書の特定のデバイスは直接チル(「DC」)鋳造機と呼ばれ得るが、半連続鋳造機、連続鋳造機(例えば、ツインベルトキャスター、ツインロールキャスター、ツインブロックキャスター、または任意の他の連続キャスターを使用することを含む)、電磁キャスター、ホットトップキャスター、または任意の他の鋳造機等、任意の他の鋳造法に適切なデバイスが使用され得る。
【0016】
固体金属は、溶融炉101等の金属溶融炉内で溶融金属に溶融され得る。1つだけの溶融炉が図1に示されているが、2つ以上の溶融炉は、また、同様のDC鋳造システムの一部として使用され得る。溶融炉(例えば、直接投入反射炉)は、放射線、直火、及び/または他の発熱体を使用して炉の内容物を加熱し得る。例えば、スクラップまたは他のアルミニウムが溶融炉内で溶解され、溶融金属が生成され得る。溶融炉101から、溶融金属は、DC均熱炉102等の均熱炉に送達され得る。DC均熱炉102は、溶融炉101によって過去に溶融された多量の溶融金属を貯蔵し得る。溶融金属は、また、溶融炉または均熱炉のどちらかにおいて、様々な異なる方法で処理され得る。例えば、ある生成物は、溶融金属が鋳造される前に、またはそうでなければ鋳造プロセスの後の段階中に使用される前に、溶融金属の化学的性質を変えるために、溶融金属に注入され得る。
【0017】
DC均熱炉102から、溶融金属は、ゼロ、1つ、または2つ以上の処理デバイス103に送達され得る。例えば、処理デバイス103は、脱気装置、フィルタ、または他のデバイスを含み得る。より具体的には、溶融金属は、Alcanコンパクト脱気装置(ACD)111、Alcanベッドフィルタ/ディープベッドフィルタ(ABF/DBF)112、及び/またはセラミックフォームフィルタ(CFF)113に送達され得る。ACD、ABF/DBF、及びCFFは、それぞれ、溶融金属を処理し、次に、溶融金属から異なるタイプの粒子を除去する。例えば、ACDは溶融金属からハイドロベンを除去する。別の例では、ABF/DBFは溶融金属から含有物を除去する。別の例では、CFFはまた含有物を溶融金属から除去するが、ABF/DBFと同様に機能しない場合がある。
【0018】
溶融金属が随意に1つ以上の処理デバイス103を通過した後、処理された溶融金属は、DC鋳造機104に送達され得る。DC鋳造機104は、図3に示される直立型DC鋳造機304と同様であり得る、または、異なる鋳造機であり得る。DC鋳造機104は、鋳造動作を行い、溶融金属からインゴットを鋳造するように構成され得る。鋳造動作中にインゴットを成形するプロセスの一部として、DC鋳造機104は、冷却水循環システム105と連動し得る。溶融金属が1つ以上の炉からDC鋳造機104に移送されるとき、溶融金属は非常に高温になり得る。さらに、溶融金属を固体の金属インゴットに鋳造するために、溶融金属を液体から固体に変える必要があり、これは冷却が必要である。したがって、冷液(例えば、水)を使用して、溶融金属を固体インゴットに変換するプロセス中に金属の温度を下げ得る。
【0019】
冷却水循環システム105を使用して液体を冷却した後、液体をDC鋳造機104に供給し、DC鋳造機104では、液体はDC鋳造プロセスの一部として使用され得る。例えば、液体は、成形インゴットに噴霧してインゴットを冷却する1セット以上のジェットに供給され得る。冷却水循環システム105は、システムの一部として1つ以上の追加のコンポーネントを含み得る。例えば、液体を成形インゴットに噴霧する前に、高温のインゴット用の水を準備するために、または鋳造ピットに噴霧した後に、液体は他のデバイスによって処理され得る。例えば、液体は、インゴットに噴霧される前に、鋳造前のピットストレーナに供給され得る。別の例では、液体は、鋳造ピット内のインゴットに噴霧された後に、そして液体がDC鋳造機104に戻される前に、米国石油協会(API)のセパレーター、サージタンク、及び/または冷却塔に供給され得る。冷却水循環システム105は、DC鋳造システムの一部及び/もしくは具体的には、DC鋳造機104の一部として見なされ得る、または別個のシステムと見なされ得る。
【0020】
図2は、本技術の例示的な実施形態による、データセンサーを伴うDC鋳造システム200の例示的な図である。DC鋳造システム200は、数あるシステムのうち特に、例えば、溶融炉201、均熱炉202、ACD211、ABF/DBF212、及びDC鋳造機204等を含み得る。また、DC鋳造システム200はDC鋳造制御デバイス210に接続され得、DC鋳造制御デバイス210は手動で(例えば、ユーザーによって)もしくは自動的に、のどちらかで、またはその一部で、DC鋳造システム200を制御し得る。例えば、鋳造制御デバイス210は、DC鋳造システム200内の個々のデバイスのそれぞれの様々な特徴、またはDC鋳造システムにおける異なるデバイスがDC鋳造動作を完了するために連動する挙動の様々な特徴の制御を支援し得る。例えば、鋳造制御デバイス210は、起こり得ることのうち特に、DC鋳造システム200の1つ以上の炉の温度、溶融金属がDC鋳造機204に送達される速度もしくは頻度、及び/またはDC鋳造プロセス自体の特徴を制御し得る。
【0021】
DC鋳造システム200は、また、1つ以上のセンサー208を含み得る。センサー208は、DC鋳造システム200内のデバイスのいずれかに物理的または電子的に接続され得る。例えば、1つ以上のセンサー208は、溶融炉201、均熱炉202、DC鋳造機204、またはDC鋳造システム200内の任意の他のデバイスに結合され得る、またはそうでなければ物理的に接続され得る。センサー208は、DC鋳造システム200及び/またはインゴットの鋳造中等のDC鋳造プロセスに関連付けられたデータをキャプチャし得る。例えば、センサー208は、DC鋳造システム200におけるDC鋳造プロセスの異なる部分からインフラサウンド及び/または超音波データをキャプチャする1つ以上のマイクロフォンを含み得る。センサー208は、インフラサウンド及び/もしくは超音波自体をキャプチャし得る、またはそれらの音に関連付けられた特徴もしくは他のデータをキャプチャし得る。センサー208によってキャプチャされたデータが何であっても、記憶媒体に記録され得、またはそうでなければキャプチャされ得、DC鋳造システム200の内側または外側にある1つ以上のデバイス上のローカルメモリまたは外部メモリに保存され得る。例えば、センサー208でキャプチャされたデータは、鋳造制御デバイス210に記憶され得る。センサー208によってキャプチャされたデータを受信する鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、そのデータを処理し、受信データに基づいて、判定、計算、または他の決定を行うように構成され得る。例えば、センサー208が、DC鋳造システムによる鋳造動作中に起きたイベントに関連付けられたデータをキャプチャする場合、鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、キャプチャされたデータに基づいてイベントが起きたことを判定し、そのデータに基づいて、アクションを起こすように構成され得る。例えば、鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、DC鋳造システム200もしくはシステムの1つ以上の個々のコンポーネントをシャットオフする、またはコマンド信号もしくは他の通知を1つ以上の他のデバイスに伝送して、イベントに関連付けられたリスクもしくは損傷を最小にするように構成され得る。
【0022】
センサー208(及び本明細書に説明される他のセンサー)は、様々な異なるタイプのセンサーを含み得る。例えば、センサーは、音をキャプチャするマイクロフォンまたは他のデバイスを含み得る。マイクロフォンは、指向性、双方向、無指向性、ダイナミック、コンデンサ、または他のタイプであり得る。他のセンサーは、オシロスコープ、加速度計、振動センサー、または他のタイプのセンサーを含み得る。鋳造システムから音、振動、または他のデータをキャプチャできる場所に存在することも可能である任意のタイプのセンサーを使用し得る。
【0023】
図2のセンサー208が、DC鋳造システム200内の特定のデバイス上の特定の場所に設置されるように示されているが、当業者は、センサー208がDC鋳造システム200の異なる場所に結合され得る、またはそうでなければ存在し得ることを理解するだろう。さらに、特定の数のセンサー208が図2に示されているが、より少ない数またはより多い数のセンサー208がシステムに含まれ得る。
【0024】
図3は、鋳造動作の終了に向けた状態が示される、直立型DC鋳造機304の単純化された概略垂直断面図である。上述のように、場合によっては、開示されたプロセス及びシステムを連続鋳造プロセスで使用できる。本装置は、金型311(例えば、DC鋳造金型)及び底部ブロック312を含み得、底部ブロック312は、金型311の下端314を最初に閉じて密閉する上方位置から、鋳造インゴット315を支持する下方位置(示される位置)までの鋳造動作中に、適切な支持手段(図示しない)によって徐々に垂直に下方に移動する。金型311は、長方形の環状形態(図3に断面図で示されている)もしくは円形、または他の形状であり得る。インゴットは、金型の上端316に垂直中空噴出口318または同様の金属供給機構を通して溶融金属を導入することによって鋳造動作で製造され得る一方、インゴットが成形され凝固するにつれて、底部ブロック312は下降する。溶融金属319は、金属溶融炉(図3には示されていないが、図1の溶融炉101または図2の溶融炉201と同様であり得る)から、金型311の上に水平チャネルを形成するランダー320または他のデバイスを介して、噴出口318に供給される。
【0025】
噴出口318は、噴出口を通る溶融金属の流れを調節して終了できる制御ピン321の下端を取り囲む。一例では、制御ピン321の遠位端を形成するセラミックプラグ等のプラグは、噴出口318の内部チャネル内に受けられ得る。チャネルは先細りになり得、その結果、制御ピン321が上昇するとき、プラグと噴出口318の開口端との間のエリアが増加するため、溶融金属がプラグの周りを流れ、噴出口318の下部先端317から流出することが可能になる。制御ピン321を適切に上昇または下降することによって、溶融金属の流れ及び流量は正確に制御され得る。制御ピン321の上昇または下降は、鋳造制御デバイス210(図2参照)によって制御され得るが、金型311への溶融金属の流れを制御するために、他の望ましいデバイス、構造、または機構が使用され得る。例えば、DC鋳造機304は随意にピン制御デバイス322を含み得、ピン制御デバイス322は、制御ピン321の制御と、制御ピン321が開いているまたは閉じているかどうかの状態、そのタイミング、またはその期間とに寄与する1つ以上の機構を含み得る。ピン制御デバイス322は、金型311のプール324内の溶融金属のレベルを判定し得る金属レベルセンサー等のセンサー308以外の追加のセンサー(図示しない)によって影響を受け得る。追加のセンサー(複数可)は、また、鋳造動作または他のアクションを終了するためのアクションを正当化するエラーまたは他のイベントが存在するかどうかの判定に使用され得る。ピン制御デバイス322は、また、コントローラ、アクチュエータ、または他の機構等の他の機構を含み得る。コントローラは比例積分微分(PID)コントローラであり得、これは、従来のPIDコントローラであり得る、または、デジタル的に及び/もしくはプログラムで必要に応じて実装されるPIDコントローラであり得る。
【0026】
便宜上、噴出口318に対する制御ピン321の位置を制御する「導管」または「制御ピン」という用語は、本文書では、コントローラからのコマンド信号によって金型311への溶融金属の流れまたは流量を調節することが可能であるが、ピン/制御ピンに限定されない、任意の機構または構造を指すために使用され得る。ピン制御デバイス322(例えば、制御ピンポジショナ)は、また、金型への溶融金属の流れまたは流量を調節するために提供され得る。また、コマンド信号は、あらゆる方法で、あらゆるデバイス、構造、または機構を使用して、金型への溶融金属の流れまたは流量を制御するために、あらゆるタイプのアクチュエータにも提供され得る。鋳造の完了時、またはシステムもしくはシステムのユーザーに鋳造動作の終了もしくは一時停止を開始させるイベントが検出されたとき、制御ピン321をより低い位置に移動させ得、そこでは、噴出口318をブロックし、溶融金属が噴出口318を通過するのを完全に防止し得ることによって、金型311のプール324への溶融金属の流れを終了させる。そのように位置付けられるとき、底部ブロック312は下降しない場合がある、または少しだけさらに下降し得る。そして、新たに鋳造されたインゴット315は、底部ブロック312によって支持された場所に留まり得、その上端は金型311内にあるままである。この時点で、インゴット315のヘッドから噴出口318を引き出すために、ランダー320を上昇させ得る。
【0027】
図2に関して述べたように、DC鋳造機は1つ以上のセンサーを含み得る。図3を参照すると、DC鋳造機304は、また、1つ以上のセンサー308を含み得る。センサー308は、インゴットの鋳造プロセス中等、DC鋳造機304に関連付けられたデータ(すなわち、センサーデータ)をキャプチャし得る。例えば、センサー308は、DC鋳造プロセスからインフラサウンド及び/または超音波データをキャプチャする1つ以上のマイクロフォンであり得る、またはそれを含み得る。センサー308は、インフラサウンド及び/もしくは超音波自体をキャプチャし得る、またはそれらの音に関連付けられた特徴もしくは他のデータをキャプチャし得る。とりわけ、ビデオデータをキャプチャするビデオカメラ、写真データをキャプチャするスチルカメラ等、他のタイプのセンサーも使用して、データをキャプチャし得る。上記に説明したように、センサー308によってキャプチャされたデータが何であっても、記憶媒体に記録され得、またはそうでなければキャプチャされ得、DC鋳造機304の外部にある1つ以上のデバイス上のローカルメモリまたは外部メモリに保存され得る。例えば、センサー308でキャプチャされたデータは、図2に示される鋳造制御デバイス210に伝送され、それに記憶され得る。センサー208によってキャプチャされたデータを受信する鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、そのデータを処理し、受信データに基づいて判定、計算、または他の決定を行うように構成され得る。例えば、センサー308が、DC鋳造システムによる鋳造動作中に起きたイベントに関連付けられたデータをキャプチャする場合、鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、キャプチャされたデータに基づいてイベントが起きたことを判定し、そのデータに基づいて、アクションを起こすように構成され得る。例えば、鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、DC鋳造機304及び/もしくはシステムの1つ以上の他のコンポーネントをシャットオフする、またはコマンド信号もしくは他の通知を1つ以上の他のデバイスに伝送して、イベントに関連付けられたリスクもしくは損傷を最小にするように構成され得る。一例では、ピン制御デバイス322は、制御ピン321を下降させ、溶融金属のランダー320への流れを停止させ得る。言い換えれば、センサー308によって収集されたデータを使用して、噴出口318に対して制御ピン321を制御し得る。
【0028】
センサー308は、DC鋳造機304の異なる部分から来る音を検出するために、DC鋳造機304の異なる部分に結合された1つ以上のセンサーを含み得る。例えば、底部ブロックの近くで発生するイベントを検出するために、センサーは底部ブロック312の上にまたはその近くに位置し得る。別の例では、金型壁の近くで発生するイベントを検出するために、センサーは金型壁の上にまたはその近くに位置し得る。別の例では、金型の上部分でまたはその近くでイベントを検出するために、センサーは金型の上部にまたはその近くに位置し得る。別の例では、数あるセンサーの中でも、噴出口でまたはその近くでイベントを検出するために、センサーは噴出口にまたはその近くに位置し得る。1つ以上のセンサーは、DC鋳造機304の任意の他の部分にまたはその近くに位置し得る。これらのセンサー308が検出し得る特定のタイプのイベントは、下記でさらに詳細に説明される。
【0029】
センサー308は、DC鋳造機304上の特定の場所に設置されるように示されているが、センサー308は、DC鋳造機304の異なる場所に結合され得る、またはそうでなければ存在し得る。センサーの場所によって、異なるセンサーのタイプまたはセンサーの異なる保護材が必要になり得る。例えば、センサーが金型311内、金型311上、または金型311の近くに位置する場合、極度の熱の影響を受けない場合があるセンサー、または極度の熱からセンサーを保護するための追加材料が必要になり得る。さらに、特定の数のセンサー308が図3に示されているが、より少ない数またはより多い数のセンサー308がシステムに含まれ得る。
【0030】
図4はコントローラ410の例であり、コントローラ410は、特定の例(例えば、図1図3に示されるような機器を含む)に関連してデジタル的に及びプログラムで実装され、そのような例のプロセスを実行し得る。例えば、コントローラ410は、図2に示される鋳造制御デバイス210等の処理デバイスに実装され得る、または実装されない場合がある。コントローラ410はプロセッサ412を含み得、プロセッサ412は、メモリ418の有形のコンピューター可読媒体(または、数ある媒体のうち特に、ポータブル媒体、サーバー上、またはクラウド内等の他の場所)に記憶されたコードを実行して、コントローラ410にデータを受信して処理させ、アクションを行わせることができる、及び/または図1図3に示されるような機器のコンポーネントを制御させることができる。コントローラ410は、データを処理し、産業機器を制御する等のアクションを行う一連の命令であるコードを実行できる任意のデバイスであり得る。非限定的な例として、コントローラ410は、デジタル的に及びプログラム可能に実装されたPIDコントローラ、プログラマブル論理コントローラ、マイクロプロセッサ、サーバー、デスクトップまたはラップトップパーソナルコンピューター、ハンドヘルドコンピューティングデバイス、及びモバイルデバイスの形態を取り得る。
【0031】
プロセッサ412の例は、任意の所望の処理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理、ステートマシン、または他の好適な回路を含む。プロセッサ412は、1つのプロセッサまたは任意の数のプロセッサを含み得る。プロセッサ412は、バス414を介してメモリ418に記憶されたコードにアクセスできる。メモリ418は、コードを有形に具体化するように構成された任意の非一時的コンピューター可読媒体であり得、電子デバイス、磁気デバイス、または光学デバイスを含み得る。メモリ418の例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、フロッピーディスク、コンパクトディスク、デジタルビデオデバイス、磁気ディスク、ASIC、構成されたプロセッサ、または他の記憶デバイスを含む。
【0032】
命令は、実行可能コードとしてメモリ418またはプロセッサ412に記憶できる。命令は、任意の適切なコンピュータープログラミング言語で書かれたコードからコンパイラ及び/またはインタプリタによって生成されたプロセッサ固有の命令を含み得る。命令は、一連の設定点、鋳造プロセスのパラメータ、及びプロセッサ412によって実行されるときコントローラ410が任意の数の動作を制御することが可能になるプログラムされたステップを含むアプリケーションの形式を取り得る。動作は、例えば、鋳造システムへの電力の伝送、鋳造システムによる電力の受信、金型への金属の流れ、金型への金属の流量、底部ブロックの移動速度、1セット以上のジェットの制御等の冷却水循環システムの一部、及び他の動作を含み得る。鋳造関連パラメータをコントローラ410に入力して、これらの様々な動作を制御するために、図3に示される装置の一部を制御し得る。
【0033】
図4に示されるコントローラ410は入出力(I/O)インターフェース416を含み、インターフェース416を経由して、コントローラ410はコントローラ410の外部にあるデバイス及びシステムと通信でき、それらのデバイス及びシステムは、センサー208もしくは308、及び/または他の金型装置コンポーネント等のコンポーネントを含む。I/Oインターフェース416は、また、他の外部ソースから入力データを受信できる。そのようなソースは、制御パネル、他のヒューマン/マシンインターフェース、コンピューター、サーバー、または他の機器を含み、それらは、例えば、コントローラ410に命令及びパラメータを送信し、その性能及び動作を制御して、本明細に開示される特定の例のプロセス等に関連して、コントローラ410が鋳造システムの態様を制御させる命令をアプリケーション内で実行することを可能にするそのアプリケーションのプログラミングを記憶及び容易にすることができる。そして、上記のそのようなソースは、図3の金型311等の金型の動作または鋳造プロセスの他の部分を制御するために、コントローラ410がその機能を実行する際に必要または有用な他のデータソースを含み得る。そのようなデータは、ネットワークを介して、有線で、無線を介して、バスを介して、またはそうでなければ他の所望のものを介して、I/Oインターフェース416に通信できる。金型の動作を制御することは、実際に金型自体の動作を制御すること(例えば、金型の形状またはサイズ等、金型を調整する技術)、または他のデバイス及び/もしくは物質が金型と相互作用する挙動を制御することを含み得る。例えば、金型への水の流れを調整し得、金型内のスプリットジェットをイネーブル/ディスエーブルにし得、金型に入れる金属を調整し得、金型から金属を取り出す速度を調整し得る等が考えられる。
【0034】
述べたように、I/Oインターフェース416は、コントローラ410を他のデバイス及び/またはシステムに通信可能に接続し得る。例えば、I/Oインターフェース416は、コントローラ410を、DC鋳造機304等のDC鋳造機の特定のコンポーネントに接続し得る。例えば、I/Oインターフェース416は、コントローラ410をセンサー308に通信可能に接続し得、その結果、コントローラ410は、センサー308によってキャプチャされたデータを収集し得る。別の例では、I/Oインターフェース416がコントローラ410をDC鋳造システムの他のコンポーネントに直接通信可能に接続し得、その結果、検出されたイベントが発生する場合、コントローラ410はそれらのコンポーネントを制御(例えば、その電源をオフ、調整等)し得る。例えば、I/Oインターフェース416は、制御ピン321、底部ブロックアクチュエータ(例えば、底部ブロックが移動するタイミング、移動する速度を制御し得る)、液体冷却剤ジェット、及び/または他のコンポーネントに、コントローラ410を通信可能に接続し得る。より具体的には、コントローラ410は、制御ピン321を一定量だけ上昇または下降させ、イベントに関連付けられ得る受信データに基づいて、溶融金属の流れを停止、開始、減速、または加速させ得る。別の例では、コントローラ410は、鋳造動作の特徴(例えば、鋳造動作に関連付けられた鋳造アルゴリズムまたはレシピによって定義された特徴)に基づいて、底部ブロック312を(例えば、底部ブロックアクチュエータを介して)移動を開始もしくは停止させ、または上昇もしくは下降を遅くもしくは速くさせ得る。鋳造動作の「レシピ」は、鋳造動作に影響を与えるプロセスの様々な所定の特徴及び/またはステップを含み得る。例えば、特徴は、鋳造動作に関連付けられた量、期間、特定の酸化物、または他の特徴を含み得る。別の例では、コントローラ410は、成形インゴットの冷却が遅くもしくは速くなるように、ウォータージェットからの水の流れを遅くもしくは速くさせ得る、またはウォータージェットからの水の流れを開始もしくは停止させ得る。
【0035】
I/Oインターフェース416は、また、信号発生器及び/または信号受信機に通信可能に接続され得る。鋳造システム及び/または鋳造動作によって生成された音をキャプチャする代わりに、ユーザーは、鋳造システム、鋳造プロセス、部分的または完全に成形されたインゴット、または他のコンポーネントの特定の特徴をユーザーが測定することが可能になるように、鋳造システム内で信号を生成し得る。例えば、信号発生器を使用して、インゴットを経由する制御信号を開始し得、信号受信機を使用して、生成信号がインゴットを通過するとすぐにその信号を受信し得る。自己開始制御信号は、例えば、衝撃波、超音波パルス等を含み得る。信号受信機または別の関連デバイスは、受信した信号を分析して、インゴットの特徴を判定するように構成され得る。例えば、受信信号を生成信号と比較して、信号が金属インゴットを移動していた間に変化する信号の挙動を判定し得る。信号の違いは、インゴットに関連付けられた特定の特徴または一連の特徴を表し得る。この分析により、ユーザーは、インゴットが適切に鋳造されたか、または今後のインゴットの成形をどのように調整または改善し得るかを(例えば、そのインゴットに関連付けられた鋳造システムまたは鋳造プロセスを調整することによって)判定し得る。信号発生器及び/または信号受信機は、金型の一部等、鋳造機に結合され得る、または鋳造システム内の他の場所に位置し得る。
【0036】
鋳造制御デバイス210に関して本明細書に説明されるように、センサー208でキャプチャされたデータは鋳造制御デバイス210に記憶され得、鋳造制御デバイス210は、コントローラ410と同様のデバイスまたは機能であり得る、または組み込み得る。センサー208によってキャプチャされたデータを受信する鋳造制御デバイス210または別のデバイスは、そのデータを処理し、受信データに基づいて、判定、計算、または他の決定を行うように構成され得る。下記により詳細に説明されるように、センサー208または308によってキャプチャされたデータは、インフラサウンドもしくは超音波等の音、他の音響、または他のデータ(まとめてまたは個別に、本明細書では、音、音声信号、音響信号、信号等と呼ばれ得る)を含み得、これらのデータは、鋳造動作中に鋳造システムによってインゴットの鋳造中に起きるイベントを示す。
【0037】
鋳造制御デバイス210は、図2に示される制御室209等の制御室に位置し得る。しかしながら、鋳造制御デバイス210は、また、物理的に鋳造システムの一部でもあり得(例えば、鋳造機上に位置する)、または鋳造システムから離れた別の場所に位置し得、無線で鋳造システムと通信し得る。さらに、鋳造制御デバイス210の使用により、制御室209に示されるように、ユーザーによって開始し得る、または、鋳造制御デバイス210にプログラムされたソフトウェア及び/もしくはアルゴリズムに基づいて自動的に動作を行い得る。別の例では、鋳造制御デバイス210は、特定のデータが受信されるとき、または特定のタイプのデータが受信されるとき、特定のデータの処理を始めるようにプログラムされ得る。
【0038】
音(例えば、インフラサウンド、超音波)等のセンサーデータが鋳造システムにおける1つ以上のセンサーによってキャプチャされた後、センサーデータは1つ以上のデータ記憶デバイス及び/または制御デバイスに伝送され、様々な異なる方法でセンサーデータが処理され得る。例えば、センサーデータの特徴及び/またはセンサーデータによって表された音の特徴を判定するために、センサーデータを分析し得る。より具体的には、とりわけ、周波数、ピッチ、ラウドネス、デシベルレベル、またはトーン等の特徴を判定するために、音を分析し得る。センサーデータ及びセンサーデータの特徴を使用して、1つ以上のプロファイルを生成し得る。プロファイルは、例えば、鋳造システムにおける鋳造機または他のデバイスを使用する鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられ得る。言い換えれば、プロファイルは、特定の音もしくはその音の特徴、またはその両方を、鋳造動作または鋳造システムに関連付けられた特定のイベントに相関し得る。
【0039】
プロファイルは、プロファイルが関連付けられるイベントに関連付けられた音の特徴の1つ以上の範囲(例えば、周波数の範囲)の識別を含み得る。別の例では、プロファイルは、キャプチャされたサウンドデータの特徴のパターンを識別し得る。範囲またはパターンは、制御デバイスが、プロファイルと比較されている他のセンサーデータがプロファイルデータと同様であり得るタイミングを識別することを支援し得る。これらの特徴、及びそれらの特徴に関連付けられた範囲またはパターンのいずれかは、機械学習を使用して経時的に改良され得る。例えば、センサーデータの量は、複数の異なる鋳造動作または複数の異なる鋳造システムからのセンサーデータのアグリゲーションを使用して、経時的に増加し得る。例えば、特定の音の特徴(例えば、特定の周波数、トーン等)を伴う1つの音が1回の鋳造動作中に発生し得るが、同様であるが異なる音が発生し得、その音はわずかに(または大いに)異なる特徴がある。外れ値のセンサーデータは、異常として除外され得る、または同様にプロファイルに含まれ得る。経時的に、特定のイベントに関連付けられたプロファイルは、新しいセンサーデータに基づいて調整及び改良され得る。この改良により、センサーデータを使用して今後のイベントまたは今後のイベントの特徴をより正確に予測することが可能になるため、ユーザーはそのようなイベントに対してより正確もしくは効果的に準備することが可能であり得る、またはそれらのイベントを完全に防止することが可能であり得る。例えば、特定のタイプのすべてまたはほぼすべてのイベントの前または最中に特定の音が発生する場合、ユーザーは、制御デバイスからの通知に基づいて、音が発生する場合にイベントが発生することを予測することが可能であり得る。プロファイル、鋳造動作、または鋳造システムが新しいセンサーデータに基づいて調整された後、調整された鋳造システム及び/または鋳造動作を使用して別の鋳造動作が開始し得る。
【0040】
さらに、鋳造システム(例えば、制御デバイスまたは他のデバイス)は、判定された今後起こりそうなイベントに基づいて自動的にアクションを起こすようにプログラムされ得る。例えば、特定の起こり得るイベント及び/またはイベントの尤度をユーザーに通知する代わりに(または通知に加えて)、システムは、イベントが識別されたとき、または特定のイベントの尤度の閾値が発生したとき、システムが実行するようにプログラムされている特定のアクションを自動的に起こし得る。例えば、特定のイベントの尤度が75%である閾値がユーザーによって(または制御デバイス等の鋳造システムによって開発された機械学習アルゴリズムによって)設定され、制御システムが特定の鋳造動作中に発生するイベントの尤度が76%であると判定した場合、制御デバイスは、起こり得るフォローアップイベントの中でも、イベントが再び発生するのを防止するために、鋳造システムの1つ以上のデバイスへの損傷を防止するために、またはユーザーへの傷害を防止するために、自動的にアクションを起こし得る。
【0041】
特定のイベントの検出に応答して、鋳造システムまたは鋳造動作/プロセスに対して様々な異なる調整または変更がなされ得る。例えば、鋳造システム、または鋳造システム内の個々の装置をシャットダウンし得る。別の例では、特定の鋳造動作のための特定のレシピを調整し得る。例えば、底部ブロックの指定速度は、底部ブロックの速度によって少なくとも部分的に生じるイベントに基づいて、または別の方法で、速くまたは遅く移動するように(または完全に停止するように)調整され得る。別の例では、噴出口から流れる溶融金属の速度を調整し得る。システムのユーザー、制御デバイス、または他のコンポーネントは、センサーデータの分析により検出されたイベントに基づいて、システムにおける個々のデバイスを含む鋳造システム、または1つ以上の鋳造動作/プロセスの任意の態様を調整するように構成され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、特定のタイプのイベントが発生していることを判定することは、必然的に判定論的であり得る、または100パーセント未満の判定論的であり得る。例えば、イベントが発生したことを決定的に判定する代わりに、システムは、どのイベントまたは一連のイベントが発生し得えたかについての推奨を判定し得る。判定は、イベントまたは複数のイベントが起きた可能性について、計算された確率または近似確率を含み得る。イベントが起きたという判定は、確率または尤度を閾値と比較した結果であり得る。閾値は、予め決められ得る、または、機械学習を使用して経時的にシステムによって判定され得、同じ鋳造動作または追加の鋳造動作のどちらかから新しいセンサーデータが受信されるとき、経時的に更新され得る。
【0043】
図5は、本技術の実施形態による、インゴットを成形するための鋳造動作中のDC鋳造機504の例である。インゴット515(例えば、部分的に成形されたインゴット)は図5に示されるDC鋳造動作によって成形される。また、図5は、鋳造動作中に発生し得るイベント、またはそのイベントに関連付けられた結果として生じる構造も示す。本明細書で述べたように、DC鋳造システムでDC鋳造プロセスを使用して金属を鋳造するプロセス中に、多くの異なるタイプのイベントが発生し得る。例えば、イベントは、インゴットの変形または他のタイプのエラーを生じさせるイベントを含み得る。本明細書に説明される鋳造イベント検出システムは、これらのイベントに関連付けられた1つ以上の音をキャプチャすることによって、これらのイベントの1つ以上を検出し得る。音は、周波数が20Hz未満のもの等のインフラサウンドを含み得る。音は、また、20,000Hzを超える周波数のもの等の超音波も含み得る。音は、また、可聴周波数等の可聴音も含み得る。
【0044】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得るイベントのタイプの一例は「ブリードアウト」であり、そうなければ当業者には「ヨーアウト」として知られている。ブリードアウトで部分的に成形されたインゴットの例は、例えば、図5の部分531に示される。ブリードアウトは、インゴットが成形されているときのインゴットシェル530(すなわち、インゴットの外層)の破裂または裂け目による溶融金属のいずれかの損失を含み得る。例えば、インゴットシェルの溶融または引き裂きは、金型内の溶融金属の内側プール等、インゴットサンプ(すなわち、インゴットが成形されている間のインゴットの内側プールまたは内側トラフ524)から出る溶融金属の損失を生じさせ得る。ブリードアウトは、インゴットサンプから出る少量の溶融金属の流れを含み得、またはインゴットサンプから出る大量の溶融金属を含み得、これは、サンプから溶融金属が空になるまでのことが含まれる。そのように溶融金属をサンプから空にすることは「ヨーアウト」と呼ばれ得る。ブリードアウトまたはヨーアウトは、爆発または他の反応を生じさせ得る。
【0045】
ブリードアウトイベントが起きるとき、そのイベントにより、スー音のタイプ等の明確な高周波音が発生し得る。ブリードアウトがヨーアウトに進行する場合、スー音がより深くなり、周波数が低くなり得る。そのイベントは、また、大きなドスンというタイプの音も発生させ得る。ブリードアウトまたはヨーアウトの後、ユーザーによる手動または自動的に、のどちらかで、金属の鋳造プロセスが停止し得る。鋳造プロセスを停止するために、制御ピン(例えば、図3の制御ピン321等)はゼロパーセントまで下降し得、その結果、噴出口(例えば、図3の噴出口318)の下部先端(例えば、図3の下部先端317)の底部の開口部が閉じられる。鋳造システムの他の部分が同様に停止し得る及び/またはシャットオフし得る。ブリードアウトまたはヨーアウトの後、鋳造システムはインゴットの成形を完了することが不可能であり得、次に、部分的に成形されたインゴットは再利用され得る。また、ブリードアウトまたはヨーアウトにより、金型が位置するピットと、鋳造が行われている場所とを掃除する必要性がユーザーに生じ得る。
【0046】
図6は、本技術の例示的な実施形態による、例示的なブリードアウトの時間経過を示す折れ線グラフ600である。グラフ600は、金属レベルの進行(線651)、制御ピン(例えば、図3の制御ピン321)が開いている割合(線652)、及び溶融金属の鋳造中のブリードアウトが発生している期間の溶融金属の鋳造の長さ(線653)を示す。折れ線グラフによって示されるように、ブリードアウトが発生した後、金型の金属レベルが低下し、金型の正しい溶融金属レベルを維持しようと応答するとピンが開く。ピンが特定の閾値期間よりも長く特定の閾値割合を超えて開いている場合(例えば、5秒よりも長く60%を超えている場合)、鋳造プロセスは制御デバイスによって自動的に途中停止する。
【0047】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、「ブリードオーバー」である。ブリードオーバーで部分的に成形されたインゴットの例は、例えば、図5の部分532に示される。ブリードオーバーは、成形インゴットまたは完全に成形されたインゴットの端の凝固金属上に溶融金属の流れを含み得る。ブリードオーバーは、凝固した成形インゴットと金型との間にギャップを残すバットカールによって生じ得る。ブリードオーバーは、また、ブリードアウトを生じさせ得る。しかしながら、溶融金属がインゴットシェルの穴を介してインゴットサンプから出る場合があるブリードアウトとは異なり、溶融金属は、ブリードアウトにおいてインゴットの上部を越えて側面を流れ落ち得る。ブリードアウトの後と同様に、鋳造プロセスが停止し得る。より具体的には、鋳造システムは、ブリードオーバーに関連付けられた音を検出した結果として停止し得る。ブリードオーバー等のイベントが検出された後に結果として生じるアクションの1つは、ピンを下降させ、噴出口を通る金型への金属の流れを停止しようとすることである。ブリードオーバー(またはブリードアウト)が回復する場合、金属レベルが再び上昇し得、鋳造プロセスが継続し得る。ブリードオーバーが発生するとき、ブリードオーバーにより独特の音を生じさせ得、その音は、ブリードオーバーが始まると鳴り始め、ブリードオーバーが終わると停止し得る。
【0048】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、「バットバウンス」である。ブロック(図5の底部ブロック512等)と成形中のインゴットとの間のギャップで蒸気等のエネルギーまたはガス(例えば、爆発)の放出が発生するとき、バットバウンドが発生し得る。そのようなエネルギーまたはガスの放出は、ギャップ内の熱及び/または蒸気の蓄積が原因であり得、蒸気を急速に膨張させることにより、ギャップ内の凝固金属または溶融金属を加圧し得る及び/またはそれらと反応し得る。このタイプの爆発は、水分が溶融金属の下に閉じ込められたとき発生する。水分は過熱し、次に、溶融金属を投げることによって溶融金属から逃げる。バットバウンドを生じさせる爆発は、蒸気爆発またはスチームトラップ爆発と呼ばれ得る。1回以上の爆発により、インゴットをブロックから持ち上げさせ得る。
【0049】
蒸気爆発は、ブリードアウトまたはブリードオーバー等、本明細書に説明される他のイベント中に発生し得る。さらに、蒸気爆発により、アルミニウムのテルミット反応等、1つ以上の追加の爆発を生じさせ得る。アルミニウムのテルミット反応は、溶融アルミニウムと、酸化鉄または酸化銅等の金属酸化物との反応により発生し得る。溶融アルミニウムとさび(酸化鉄)との間でアルミニウムのテルミット反応が発生し得る。開始ヘッドまたは開始ヘッドベースにさびが存在する可能性があり、そして、不適切なレシピ、過剰なカール、またはバットバウンスによってブリードアウトが発生する場合、結果として生じる爆発は、蒸気関連のものではなくテルミットである可能性がある。この結果は、ブリードアウトを早期に聞き取り、システムをシャットダウンして補正することの重要性を示す。鋳造システムのユーザーが鋳造プロセスの1つ以上の特徴(例えば、鋳造パラメータ)を調整して、バットバウンス、またはバットバウンスを生じさせる少なくとも1回以上の爆発を回避し得るように、バットバウンスを検出することが重要であり得る。バットバウンス中に発生する小さな蒸気爆発の強さを聞き取ることで、バットバウンスの発生の重大度を示し得、オペレータは特定の鋳造パラメータの変更を促される。
【0050】
バットバウンス(及び、本明細書に説明される他のイベント)は、ユーザーに危険であり得、またはインゴットの亀裂もしくはそうでなければ損傷により、インゴットの損失を生じさせ得る。バットバウンスに関連付けられた特定の音を受信して分析することによって、バットバウンス、及びバットバウンスの重大度を検出し得る。例えば、爆発及びバットバウンドの音が大きくなるにつれて、それらはより深刻になり、ひいては、それらはより危険になり得る及び/または損傷がより大きくなり得る。バットバウンスが検出されるとき、鋳造プロセスは停止し得、これは、ピンを閉じることによって生じ得る(及び、場合によって、炉が後ろに傾く、ランダーからの排水、プラテンの停止のうちの1つ以上を含む他のステップによって停止する)。より具体的には、鋳造システムは、バットバウンスに関連付けられた音を検出した結果として停止し得る。別の例では、鋳造機または鋳造動作を調整させることは、鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含み得る。鋳造動作に関するレシピを修正することは、本明細書に説明される任意の検出されたイベントの結果であり得る。別のアプローチでは、イベントに関連付けられた音を検出し得、音を金属レベルシステムフィードバックで補間され得、音及び金属レベルフィードバックの両方の重大度に基づいてシステムをシャットダウンさせるようにパラメータを設定し得る。これらのパラメータ、フィードバック、及び分析は、次の鋳造のレシピ変更を促進して、これらの重大度を下げる。
【0051】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、「バットカール」である。バットカールの結果として部分的に成形された例示的なインゴット515は、例えば、図5の部分533に示される。インゴットの鋳造中に発生するバットカールにより、インゴットのバットが変形し得る。例えば、この変形は、インゴットの1つ以上の端の上向き(インゴットの底部)のカールまたは内向き(インゴットの側面)のカールを含み得る。上向きのカールが発生するとき、インゴットが上向きにカールして底部ブロックから離れ得る。インゴットが金型から出るとき、水等の液体がインゴットに接触するとき、変形が発生し得る。冷液によって生じる急速な冷却は、インゴットの周囲で急速な凝固及び収縮を生じさせ得る。本明細書で述べたように、ブロックと成形中のインゴットとの間のギャップで蒸気等のエネルギーまたはガスの放出(例えば、爆発)が発生するとき、バットバウンドが発生し得る。しかしながら、インゴットの1つ以上の表面を洗い流す膜沸騰によって(それに加えて、またはその代わりに)変形が発生し得る。バットカールが発生した後、インゴットの端の一部が底部ブロックと接触しない場合があるため、バットカールによってインゴットを前後に「揺れ」させ得る。バットカールは鋳造機のセンサーによって検出され得る特定の音を発生させ得、そのようなイベントを検出することで、システムをシャットダウンさせる、または、次もしくは今後の他の鋳造動作で過度のバットカールを回避するようにシステムを調整させ得る。
【0052】
別の例では、音声センサー(複数可)がイベントに関連付けられた音を検出しない場合でも、鋳造機システムのセンサーは、バットカール等の特定のタイプのイベントを検出するビデオまたは他の同様のカメラを含み得る。例えば、視覚データ(例えば、写真、ビデオ等)がキャプチャされる場合、ソフトウェアを使用して、収集されたデータのシステムのオブジェクトまたは他の態様を識別するために認識を行わせ得る。例えば、認識を使用して、写真でバットカールまたはビデオでバットバウンスを識別し得る。また、そのようなビデオまたは他の視覚センサーを使用して、本明細書に説明される他のイベントのいずれかを検出し得る。
【0053】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、ウォータージェットの開放、または水冷が始まった後のインゴットの水冷に関連付けられた他のイベントである。水冷により部分的に成形された例示的なインゴット515は、例えば、図5の部分534及び部分535に示される。ジェットからの水(または他の液体)を使用して、インゴットの鋳造中に溶融金属を冷却し得る。鋳造システムの金型は、ジェットをオンにすることが可能になるように作動し得る空気圧弁を含み得、水または他の液体がジェットを通って流れることを可能にする。特定の実施形態では、空気圧弁を使用して、デュアルジェットをイネーブル/ディスエーブルにするが、シングルジェットをディスエーブルしない。1セット以上のジェットを使用して、鋳造中にインゴットを冷却し得る。例えば、ジェットは、一次セットのウォータージェット及び二次セットのウォータージェットを含み得る。2セットのジェットは異なる場所にあり得る、または異なる角度で保持され得る。その結果、2セットのジェットからの水は、インゴットの異なる角度でまたは異なる部分でインゴットに接触する。
【0054】
インゴットの冷却中、鋳造システムは、ジェット及びインゴットの冷却に関連付けられた様々な異なる音を発生させ得る。例えば、数あるイベントの中でも、液体がジェットから流出し始めることによって、インゴットまたはインゴットの一部が異なる温度にあるとき、液体がインゴットに接触することによって、バルブを作動させることによって独特の音が生成され得る。さらに、ジェットの異なるセットは、異なる場所、異なる角度、または他の理由により、わずかに異なる音を発生させ得る。別の例では、ジェットの2つ以上の異なるセットがオンになり得、ひいては、異なる時間に水が流れ始まる。したがって、ジェットの2つ以上の異なるセットは、異なる時間にそれらのイベントに関連付けられた音を発生させ得る。別の例では、1つ以上のジェットが故障して水流が止まる場合、1セットのジェットに関連付けられた音が変化し得る。そのような音は、ジェットが故障したことを示し得、鋳造プロセス中または鋳造後にユーザーがジェットを修理することを促し得る。ウォータージェットによって発生する音は、また、インゴットが鋳造システム内を移動する速度(底部ブロックの動きによって生じる速度)に基づいて変化し得る。例えば、インゴットの移動が速くなるにつれて、システムが生成する熱が多くなり得、インゴットを冷却するために必要な水が多くなり、及び/またはインゴットを冷却するための水が冷たくなり得る。
【0055】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、鋳造プロセス中に金型内にある空気である。例えば、空気は、金型511の領域(複数可)536内にあり得る。インゴットの鋳造中のインゴットの冷却前及び冷却中に、金型の一部(例えば、領域(複数可)536)が部分的または完全に水で満たされ得、その結果、ジェットから出る水流は均一であり、インゴットの均一の冷却をもたらす。金型が水で満たされておらず、代わりに、空気が金型の一部を満たしている場合、1つ以上のイベントが発生し得る。空気の流れ、または水及び空気の組み合わせの流れは、センサーによってキャプチャされ得る独特の音を発生させ得る。例えば、そのような音は、水流がオンになっているとき、庭のホースから流出する水と同様であり得る。この理由は、水がホースを通って流れるまで、ホース内に空気があり得るためである。
【0056】
図7は、本技術の実施形態による、インゴットを成形するための鋳造動作中のDC鋳造機704の例である。別のタイプのイベントの例は、「ハングアップ」または「ハングアップドロップ」である。ハングアップで部分的に成形されたインゴットの例は、例えば、図7の部分760に示される。インゴット715が底部ブロック712の上に成形される間、底部ブロック712はインゴット715と共に移動し得、そのとき、インゴット715が成形されている間、インゴット715が金型711を通って下方に移動する。部分的に成形されたインゴット715が金型711に、例えば、金型/インゴットの接触点761及び762で固着するとき、ハングアップが発生し得、インゴットを「支持」させ、底部ブロックから分離させる。言い換えれば、インゴット715はハングアップすると移動が止まるが、底部ブロック712の移動は止まらないため(底部ブロック712が金型711に接触しないため)、底部ブロック712はインゴット715の底部から分離する。ハングアップは鋳造機のセンサーによって検出され得る特定の音を発生させ得、そのようなイベントを検出することで、システムをシャットダウンさせる、または、次もしくは今後の他の鋳造動作でハングアップを回避するようにシステムを調整させ得る。他のタイプのセンサーは、また、異なるタイプのデータを使用してハングアップを検出し得る。例えば、温度センサーは、インゴット715と底部ブロック712との間の空気流が2つの物体間の空間に起因して増加した等のため、底部ブロック712またはインゴット715の底部の近くの温度が変化していることを検出し得る。別の例では、ビデオまたは画像センサーは、ビデオまたは写真データをキャプチャすることによって、インゴット715と底部ブロック712との間の分離を検出し得る(センサーまたは制御デバイス等の別のデバイスによって分析された後に検出される)。
【0057】
底部ブロックがインゴットに重要な冷却源となり得るため、インゴットが底部ブロックから分離した後、インゴットはかなりの熱を保持し得、インゴットが変形し得る。例えば、インゴットの底部に穴が生成され得、ブリードアウトを生じさせる(すなわち、穴を通ってインゴットの底部から溶融金属を流出させる)。特定の実施形態では、底部ブロックが凝固中のインゴット用の制御された熱除去システムであるため、インゴットは熱を保持することと、凝固及び変形(例えば、バットカール)中に再加熱することと、の両方を行う。例えば、インゴットが開始ヘッドから引き離されると、凝固材料はすぐに少しも冷却されなくなる一方、新しい溶融金属はさらにインゴットのサンプの上に導入される。溶融材料が凝固インゴットバットによって燃焼し、開始ヘッド及び鋳造システムの両方の上にこぼれる可能性がある場合、再加熱を行うことができる。このイベントはブリードアウトとして聞き取られ得る。開始ヘッドは冷却水を含み、溶融金属がこの水に導入され、爆発の可能性がある。
【0058】
ハングアップの後、インゴット715が金型711への固着から解放され、落下して底部ブロック712に及び/または金型の底部で底部ブロック712上に蓄積している液体(例えば、熱水、溶融金属、または他の液体)に再接触するとき、ハングアップドロップが発生し得る。インゴット715が金型711の底部(例えば、底部ブロック712の上または他の場所)で液体に接触するとき、ハングアップドロップはまた爆発も生じさせ得る。ハングアップドロップは、金型711の底部のブロック及び/もしくは液体に再接触するインゴット715に関連付けられた音、またはインゴット715が液体に接触した後の液体の飛沫からの音を含む、独特の音を発生させ得る。これらのイベントは、インゴット715の変形または亀裂からの音を含む、他の音を発生させ得る。十分な重量がインゴットを開始ヘッドに押し戻すとき、ハングアップ解除が発生し得る。さらに、ハングアップ解除時の金属レベルシフトが激しいため、溶融金属の導入と一緒にハングアップすると、多くの音が聞こえ得る。例えば、インゴットが開始ヘッドに再接触することに関連する音、ブリードアウト音、インゴットが開始ヘッドを移動する際に開始ヘッドから飛び散る水、及び爆発に関連する音が聞こえ得る。
【0059】
イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、鋳造システムの脱気フードの損傷または破損を含み得る。脱気フードはトラフまたは脱気ユニットのどちらかに設置され得ることで、ローターが溶融金属に入ることが可能になる。脱気フードのローター(例えば、グラファイトローター)は、アルゴン及び塩素を溶融金属にパージして、水素等、溶融金属に不要な汚染物質の微量元素を除去し得る。しかしながら、ローターが溶融金属から凝固した金属で満たされる場合、ローターが破損し得、金属を洗浄することが不可能になり得る。脱気の不足(例えば、ローターの破損または詰まり等による脱気の不足)により、ローターを洗浄または交換できるまで、ユーザーは鋳造プロセスを停止させ得る。脱気フードは、とりわけ、ローターの破損に関連付けられた音等、独特の音を発生させ得る。
【0060】
図8Aは、本技術の実施形態による、膜沸騰及び核沸騰を受ける例示的なインゴットの写真である。イベント検出システムのセンサーによって検出され得る別のタイプのイベントの例は、「膜確立」、「膜沸騰」、または「完全な膜洗い流し」である。インゴットの成形中、溶融金属がインゴットサンプに供給されている間、液体または水冷のプロセスを使用して、成形中のインゴットを冷却し得る。このプロセスは、溶融金属を冷却するためにインゴットの外側に冷液(例えば、水)を噴霧することを含み得、それにより、溶融金属が凝固してインゴットの一部として凝固金属になる。冷却された表面(例えば、インゴット)の温度が、表面に噴霧される液体の沸点よりも高いとき、膜沸騰が発生し得る。そのような状況では、液体が気化し得、表面に蒸気の連続膜または連続層が形成される。蒸気の層は、後で表面に噴霧される液体が、膜が形成された後に表面に直接接触するのを防止し得る。
【0061】
過度のカール(例えば、バットカール)の発生等の他のイベントによるインゴットの変形を防止するために、鋳造プロセスの開始の少し前に意図的に膜沸騰を使用し得る。例えば、膜沸騰は、液体がインゴットに噴霧されている間、インゴットからの熱除去の速度を遅くし得、ユーザーに、鋳造プロセス及び鋳造中に起こり得るイベントをより精密に制御させ得る。膜沸騰が起きるとき、膜沸騰により、ジュージューのタイプの独特の音を発生させ得る(例えば、フライパン等の高温の表面に冷水が接触するときと同様に発生する)。
【0062】
図8Bは、本技術の実施形態による、インゴットの鋳造中の対流プロセスの段階を示すグラフである。図8Cは、本技術の実施形態による、インゴットの鋳造中の対流プロセスの段階を示すグラフである。図8B及び図8Cに示されるように、膜沸騰は鋳造プロセス中に使用される対流プロセスの第1段階にすぎず、膜沸騰は350~450℃で起こり得る。例えば、鋳造プロセスの第1の部(例えば、成形されるインゴットの最初の12インチ)で膜沸騰を使用し得るが、鋳造プロセスの他の部分の期間中、核沸騰を使用し得る。核沸騰は、成形インゴットの表面から、膜沸騰よりも高い熱伝達を生じさせ得る。例えば、核沸騰は個別の蒸気泡を形成させ得、液体がインゴットの表面により直接的に接触して、インゴットをより迅速に冷却することが可能になる。対照的に、膜沸騰中、インゴットの表面の温度が非常に高くなり得るため、液体水が表面に接触できない。膜沸騰と核沸騰との間の移行時、膜がインゴットの側面を洗い流し始め得る。プロセスが核沸騰に移行すると、インゴットは「完全な膜の洗い落とし」を受け得、これは、例えば約250℃で発生し得る。さらに、核沸騰が起きるとき(例えば、250℃未満で起きるとき)、核沸騰は、膜沸騰によって発生する音とは異なる、別の特徴的な音を生じさせ得る。
【0063】
また、イベント検出システムのセンサーによって、鋳造中に発生する本明細書に説明されていない他のイベントも検出され得る。
【0064】
図9は、本技術の実施形態による、例示的なプロセスの例示的なフロー図である。ステップ902は、例えば、鋳造機を含む鋳造システムの機器の1つ以上の部品を使用して、鋳造動作を開始することを含み得、鋳造動作は、鋳造機における金型内でインゴットの鋳造を引き起こすまたは容易にする1つ以上のアクションを含む。鋳造動作は、例えば、溶融金属を使用してインゴットを鋳造するプロセスを含み得る。ステップ904は、例えば、音響センサーを使用して、鋳造動作を行う機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた1つ以上の音響信号に関連付けられたセンサーデータをキャプチャすることを含み得る。音響センサー以外の他のセンサーを使用し得、これらの追加のセンサーは、音声データ以外の異なるタイプのデータをキャプチャし得る。データは、イベント検出システムでキャプチャ、記憶、及び分析され得、その分析の結果は、このプロセスの後のステップで使用され得る。ステップ906は、例えば、センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することを含み得、音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられる。本明細書に説明されるように、音響プロファイルは、それぞれ、異なるタイプのイベントに関連付けられ得る。また、追加の鋳造動作から収集された追加データを使用して、プロファイルを経時的に調整し得る。システムによって収集、分析、及び生成されたプロファイル及び他の鋳造データは、鋳造システム全体で共有され、鋳造システムのより正確なデータ及び分析のコンパイルを支援し得る。ステップ908は、例えば、比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することを含み得る。より具体的には、センサーから収集及び/または分析されたデータは、生成または受信されたプロファイルと比較され得る。例えば、センサーで収集されたデータ(例えば、特定の閾値を超えるデータ、または特定の範囲内のデータ)がプロファイルと一致する場合、イベントが起きたと判定され得る。ステップ910は、例えば、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、鋳造システムまたは鋳造動作を調整させることを含み得る。調整は、鋳造動作のシャットダウン、または特定の特徴の変更等のシステムへのそれほど極端でない変更を含み得る。システム自体を変更する代わりに、動作のプロセス(例えば、レシピ)への変更を変える場合もある。そして、ステップ912は、例えば、調整された鋳造システムまたは鋳造動作を使用して、第2の鋳造動作を開始することを含み得る。
【0065】
上述の態様は、実施態様の考えられる単なる例であり、単に、本開示の原理を明確に理解するために記述されている。本開示の主旨及び原理から実質的に逸脱することなく、上述の例(複数可)に多くの変形及び修正を加えることができる。そのような修正及び変形の全ては、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、要素またはステップの個々の態様または組み合わせに対する考えられる全ての請求項は、本開示によって立証されることが意図される。さらに、特定の用語が本明細書及び以下の特許請求の範囲で使用されるが、それらは一般的及び説明的な意味だけで使用されており、説明された発明、また以下の特許請求の範囲を制限する目的ではない。
【0066】
本発明を示す文脈中で(特に、以下の特許請求の範囲の文脈中で)の「a」及び「an」及び「the」という用語、ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を対象とすると解釈するべきである。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に記載がない限り、無制限型用語(すなわち、「限定ではないが、~を含む(including,but not limited to)」を意味する)と解釈するべきである。「接続される(connected)」という用語は、介在するものがある場合でも、部分的にまたは全体的に、内部に含有される、取り付けられる、一緒に接合されると解釈するべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、単に、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に指す簡潔な方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの別個の値は、本明細書に個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に説明される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書に提供される、任意の及び全ての例、または例を示す表現(例えば、「等」)の使用は、単に、本発明の実施形態をより良好に明らかにすることを意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる表現も、非請求要素を本発明の実践に必須であるとして示すと解釈するべきではない。
【0067】
本明細書に説明される概念に従って様々な例のタイプの追加の説明を提供する「EC」(実施例の組み合わせ)として明示的に列挙された少なくとも一部を含む例示的な例の集合を下記に提供する。これらの例は、相互に排他的、網羅的、または限定的であることを意味しておらず、本発明は、これらの例示的な例に制限されるのではなく、むしろ発行された特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の考えられる全ての修正及び変形を包含する。
【0068】
態様1は、鋳造動作中にイベントを検出するための装置であって、金型と、溶融金属をインゴットに鋳造するために、前記溶融金属を前記金型に送達するように構成された導管と、前記鋳造動作からの音響信号を感知するように構成されたセンサーであって、前記鋳造動作に関連付けられたセンサーデータをキャプチャする、前記センサーと、メモリ内の非一時的コンピューター可読媒体に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサを含むコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記プロセッサにプロセッサ動作を行わせ、前記プロセッサ動作は、前記センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することと、前記比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、前記装置または前記鋳造動作を調整させることと、前記調整された鋳造システムまたは鋳造動作を使用して、第2の鋳造動作を開始することと、を含む、前記装置である。
【0069】
態様2は、前記センサーは音響センサーを備え、前記音響センサーは、初期期間にわたる複数の鋳造動作からの音響信号に関連付けられた初期センサーデータをキャプチャするように構成され、前記プロセッサ動作は、さらに、前記初期音響信号を使用して、前記音響プロファイルのセットを生成することを含み、前記音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、前記初期期間にわたる前記複数の鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられる、態様(複数可)1(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0070】
態様3は、前記プロセッサ動作は、さらに、前記センサーデータと、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかの判定とを使用して、前記音響プロファイルのセットを更新することを含む、態様(複数可)2(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0071】
態様4は、前記センサーデータを前記音響プロファイルのセットと比較することは、前記鋳造動作に関してキャプチャされた前記音響信号の特徴を、過去の鋳造動作中にキャプチャされた音響信号の特徴と比較することを含む、態様(複数可)2(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0072】
態様5は、前記音響信号の前記特徴は、周波数、ピッチ、ラウドネス、またはトーンのうちの1つ以上を含む、態様(複数可)4(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0073】
態様6は、前記音響プロファイルのセットの音響プロファイルは、1つ以上の鋳造システムに関連付けられた特定のイベントの複数のインスタンスに関連付けられたデータを使用して生成された機械学習アルゴリズムを含む、態様(複数可)2(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0074】
態様7は、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することは、前記センサーデータに基づいて、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに関する推奨と、前記特定のタイプのイベントが発生している尤度とを判定することを含む、態様(複数可)1(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0075】
態様8は、前記鋳造機または前記鋳造動作を調整させることは、前記鋳造機をシャットオフすること、または前記鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含む、態様(複数可)1(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0076】
態様9は、前記特定のタイプのイベントは、ブリードアウト、ブリードオーバー、バットバウンス、バットカール、または水冷動作のうちの1つ以上を含む、態様(複数可)1(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0077】
態様10は、溶融炉、均熱炉、及び脱気装置をさらに備える、態様(複数可)1(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の装置である。
【0078】
態様11は、鋳造動作中にイベントを検出するためのシステムであって、態様(複数可)1に記載のシステムと、鋳造システムの機器の1つ以上の部品と、を備える、前記システムである。
【0079】
態様12は、金属の鋳造におけるイベントを検出する方法であって、鋳造機を含む鋳造システムの機器の1つ以上の部品を使用して、鋳造動作を開始することであって、前記鋳造動作は、前記鋳造機における金型内でインゴットの鋳造を引き起こすまたは容易にする1つ以上のアクションを含む、前記開始することと、音響センサーを使用して、前記鋳造動作を行う前記機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた1つ以上の音響信号に関連付けられたセンサーデータをキャプチャすることと、前記センサーデータを音響プロファイルのセットと比較することであって、前記音響プロファイルのセットの各音響プロファイルは、前記鋳造動作に関連付けられたイベントのタイプに関連付けられる、前記比較することと、前記比較に基づいて、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することと、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに基づいて、前記鋳造システムまたは前記鋳造動作を調整させることと、前記調整された鋳造システムまたは鋳造動作を使用して、第2の鋳造動作を開始することと、を含む、前記方法である。
【0080】
態様13は、初期音響センサーを使用して、一定期間にわたって1つ以上の初期鋳造機を使用する複数の鋳造動作からセンサーデータをキャプチャすることと、前記センサーデータを使用して、前記音響プロファイルのセットを生成することと、をさらに含む、態様(複数可)12(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0081】
態様14は、前記1つ以上の初期鋳造機は前記鋳造機を含む、態様(複数可)13(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0082】
態様15は、前記センサーデータと、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかの判定とを使用して、前記音響プロファイルのセットを更新することをさらに含む、態様(複数可)12(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0083】
態様16は、前記センサーデータを前記音響プロファイルのセットと比較することは、前記鋳造動作を行う前記機器の1つ以上の部品に関してキャプチャされた前記音響信号の特徴を、過去の鋳造動作中にキャプチャされた音響信号の特徴と比較することを含む、態様(複数可)12(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0084】
態様17は、前記音響信号の前記特徴は、周波数、ピッチ、ラウドネス、またはトーンのうちの1つ以上を含む、態様(複数可)16(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0085】
態様18は、前記音響プロファイルのセットの音響プロファイルは、1つ以上の鋳造システムに関連付けられた特定のイベントの複数のインスタンスに関連付けられたデータを使用して生成された機械学習アルゴリズムを含む、態様(複数可)12(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0086】
態様19は、特定のタイプのイベントが発生しているかどうかを判定することは、前記センサーデータに基づいて、前記特定のタイプのイベントが発生しているかどうかに関する推奨と、前記特定のタイプのイベントが発生している尤度とを判定することを含む、態様(複数可)12(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0087】
態様20は、前記鋳造システムまたは前記鋳造動作を調整させることは、前記鋳造動作に関して修正されたレシピを生成することを含む、態様(複数可)12(または、個々のもしくは組み合わせた先行もしくは後続のいずれかの他の態様)に記載の方法である。
【0088】
本発明を実施するために発明者らに知られている最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態が本明細書に説明される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読む際に、当業者に明らかになり得る。発明者らは、必要に応じて、当業者がそのような変形を使用することを予期し、発明者らにより、本発明は、本明細書に具体的に説明されるのとは別の方法で実践することが意図される。したがって、本発明は、適用法によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲で列挙される主題の全ての修正及び等価物を含む。さらに、それらの考えられる全ての変形における、上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包括される。
【0089】
本明細書で引用される出願公開、特許出願、特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照によって個々に及び具体的に組み込まれるものと示され、全体として本明細書で記載されているのと同じ程度に参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9