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  • 特許-粘着性フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】粘着性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241016BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241016BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20241016BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241016BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B5/18
B32B27/32 Z
C09J7/24
C09J7/29
C09J201/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023510996
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012886
(87)【国際公開番号】W WO2022210058
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2021055636
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 亮太
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-113817(JP,A)
【文献】特開2002-307554(JP,A)
【文献】特開2003-210382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A47L 25/00-25/12
C09J 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層、基材層、滑性層をこの順で有する粘着性フィルムであって、
前記粘着層は、弾性率が100MPa以下である粘着性樹脂を含有し、
前記基材層は、熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記滑性層はポリエチレン系樹脂を含み、厚みが8μm以下、かつ表面粗さが0.05μm以上、5μm以下であり、
前記粘着性フィルムは、流れ方向の弾性率E MD と垂直方向の弾性率E TD との差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である、粘着性フィルム。
【請求項2】
粘着層、基材層、滑性層をこの順で有する粘着性フィルムであって、
前記粘着層は、弾性率が100MPa以下である粘着性樹脂を含有し、
前記基材層は、ポリプロピレン系樹脂およびフィラーを含む熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記滑性層はポリエチレン系樹脂を含みかつ厚みが8μm以下であり、
前記粘着性フィルムは、流れ方向の弾性率E MD と垂直方向の弾性率E TD との差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である、粘着性フィルム。
【請求項3】
粘着層、塗布層、基材層、滑性層をこの順で有する粘着性フィルムであって、
前記粘着層は、弾性率が100MPa以下である粘着性樹脂を含有し、
前記塗布層が、ウレタン系樹脂、オレフィン系共重合体、スチレン系樹脂、およびエチレンイミン系樹脂から選ばれる1種以上を含有し、
前記基材層は、熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記滑性層はポリエチレン系樹脂を含みかつ厚みが8μm以下であり、
前記粘着性フィルムは、流れ方向の弾性率E MD と垂直方向の弾性率E TD との差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である、粘着性フィルム。
【請求項4】
粘着層、基材層、滑性層をこの順で有する粘着性フィルムであって、
前記粘着層は、弾性率が100MPa以下である粘着性樹脂を含有し、
前記基材層は、熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記滑性層はポリエチレン系樹脂を含み、厚みが8μm以下であり、かつ1軸延伸樹脂フィルムであり、
前記粘着性フィルムは、流れ方向の弾性率E MD と垂直方向の弾性率E TD との差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である、粘着性フィルム。
【請求項5】
前記基材層は多孔質である、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着性フィルム。
【請求項6】
前記粘着層と前記滑性層とが接するように、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着性フィルムが積層された、粘着性フィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
衣類、家具、内装材、日用品等のクリーニング対象物に付着した髪の毛、埃、ゴミ等を除去する手段として、粘着性フィルムを用いた粘着性クリーナーが知られている。
粘着性クリーナーはまた、電子機器のICチップ製造工程において切削や研磨などの加工処理によって発生する微細な屑を、ICチップ表面から除去する手段としても用いられている。
【0003】
粘着性クリーナーは、通常、基材と、基材の一方の面に形成された粘着層とを有する粘着性フィルムが、粘着層が外側を向くように巻回された構成を有する。粘着性クリーナーを対象物に押し付け、回転させながら、埃等を粘着層に転着させることでクリーニングできる。粘着層表面が埃等で満たされると、粘着性フィルムごと剥離して切断し、新たな粘着面を露出させて再び使用できる。
【0004】
ここで、基材の他方の面と粘着層とは、クリーナー保管時および使用時は剥離せず密着している必要があり、クリーナー使用後に粘着性フィルムを切り取る際は、粘着層の粘着性を損なうことなく剥離できる必要がある。基材の他方の面と粘着層とを剥離しやすくするために、基材の他方の面に、シリコーンやワックス等の離型剤(滑剤)を含有する層を設けることが試みられている。しかしながら、離型剤が粘着層側に転写され、粘着性が低下したり、ICチップを汚染するおそれがあることから、離型剤を用いない粘着性クリーナーが求められていた。
【0005】
特許文献1には、粘着剤の成分として二液型ウレタン系粘着剤を用い、離型面を形成する材料としてポリエチレンフィルムを用いることにより、離型剤を使用しない粘着性クリーナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2002-307554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の粘着性クリーナーでは、粘着性フィルムの切断性が不十分であり、人の手の力では直線的に切断することが困難となり、機械による裁断工程が別途必要であったり、粘着性フィルムに切断用の切れ目を別途設ける必要があるなど、コストアップにつながるおそれがある。
【0008】
本発明は、高い粘着特性と剥離特性に加え、優れた切断性を有する粘着性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の厚みを有するポリエチレン系樹脂含有フィルムを滑性層に用い、粘着性フィルムの配向性を特定範囲とすることで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記の粘着性フィルム等に関する。
[1] 粘着層、基材層、滑性層をこの順で有する粘着性フィルムであって、
前記粘着層は、弾性率が100MPa以下である粘着性樹脂を含有し、
前記基材層は、熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記滑性層はポリエチレン系樹脂を含みかつ厚みが8μm以下であり、
前記粘着性フィルムは、流れ方向の弾性率EMDと垂直方向の弾性率ETDとの差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である、粘着性フィルム。
[2] 前記滑性層は、表面粗さが0.05μm以上、5μm以下である、[1]に記載の粘着性フィルム。
[3] 前記基材層は、ポリプロピレン系樹脂およびフィラーを含む、[1]または[2]に記載の粘着性フィルム。
[4] 前記基材層は多孔質である、[1]~[3]のいずれか1に記載の粘着性フィルム。
[5] 前記粘着層と前記基材層の間に、塗布層をさらに有し、
前記塗布層が、ウレタン系樹脂、オレフィン系共重合体、スチレン系樹脂、およびエチレンイミン系樹脂から選ばれる1種以上を含有する、[1]~[4]のいずれか1に記載の粘着性フィルム。
[6] 前記滑性層は、1軸延伸樹脂フィルムである、[1]~[5]のいずれか1に記載の粘着性フィルム。
[7] 前記粘着層と前記滑性層とが接するように、[1]~[6]のいずれか1に記載の粘着性フィルムが積層された、粘着性フィルム積層体。
[8] 基材層、滑性層をこの順で有する積層フィルムであって、
前記基材層は、熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記滑性層はポリエチレン系樹脂を含みかつ厚みが8μm以下であり、
前記積層フィルムは、流れ方向の弾性率EMDと垂直方向の弾性率ETDとの差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である、積層フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い粘着特性と剥離特性に加え、優れた切断性を有する粘着性フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は粘着性フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の粘着性フィルムについて詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0013】
<粘着性フィルム>
図1は、本発明の粘着性フィルムの一例を示す。図1に示すように、粘着性フィルム10は、粘着層3、基材層1、滑性層2をこの順で有する。
粘着層3は、弾性率が100MPa以下である粘着性樹脂を含有する。かかる構成により、本発明のフィルムに粘着性を付与することができる。
基材層1は、熱可塑性樹脂フィルムである。
滑性層2は、ポリエチレン系樹脂を含みかつ厚みが8μm以下である。ポリエチレン系樹脂を含有することにより粘着性フィルムに剥離容易性を付与できる。また、滑性層が薄いことで粘着性フィルムの切断性が低下せず良好に維持できる。
【0014】
そして粘着性フィルム10は、流れ方向の弾性率EMDと垂直方向の弾性率ETDとの差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である。粘着性フィルムが特定の配向性を有し、その結果、粘着性フィルムの切断性が向上するため、人の手の力でも直線的に引き裂いて切断できる直線カット性に優れた粘着性フィルムが得られる。
【0015】
流れ方向とは、樹脂が流れる方向(machine diection)を意味し、垂直方向とは、流れ方向に対して垂直な方向(transverse diection)を意味する。それぞれの方向の弾性率に差|ΔE|がある場合、粘着性フィルムが直線カット性を得やすい。そして、弾性率差|ΔE|が500MPa以上であることで、粘着性フィルムの直線カット性が向上する。これは流れ方向と垂直方向とで引裂き強度差が生じることで、引裂き強度が低い方向に優先的に破壊されるためと考えられる。なお、粘着性フィルムの弾性率は、粘着性フィルムを縦30mm×幅15mmの試験片に切り出し、固体粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製:RSA-III)を用いて測定された貯蔵弾性率を意味する。測定条件は、チャック間距離20mm、測定周波数10Hz、歪量0.1%、昇温速度10℃/分、引張モードの条件とし、23℃とする。
弾性率差|ΔE|は、直線カット性の観点からは、大きい程よい。500MPa以上から直線カット性が良好となり、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは2000MPa以上である。一方、樹脂の延伸限界の観点から、通常は4000MPa以下である。
【0016】
弾性率が大きい方向は流れ方向と垂直方向のいずれでもよいが、製造時の巻取り方向と粘着性フィルム製品での巻取り方向を同一にでき、別途の工程を削減できる観点から、垂直方向の弾性率ETDが流れ方向の弾性率EMDよりも大きいことが好ましい。
すなわち下記関係式が成立することが好ましい。
TD-EMD≧500(MPa)
【0017】
また、粘着性フィルムは、切断方向(引き裂く方向)の弾性率が、好ましくは500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上、特に好ましくは2000MPa以上である。弾性率差|ΔE|が500MPa以上であり、かつ、切断方向の弾性率が高いことで、粘着性フィルムの直線カット性がさらに良好となる。切断方向は、流れ方向と垂直方向のいずれでもよいが、製造時の巻取り方向と製品での巻取り方向を同一にできる観点から、垂直方向であることが好ましい。
【0018】
なお、特定の弾性率差|ΔE|は、主に基材層の配向性により付与される特性であるため、上記弾性率差|ΔE|が特定以上となる粘着性フィルムを得るには、例えば、後述するように、配向性を有する基材層を備えることが挙げられる。
【0019】
また、基材層および滑性層をこの順で有する本発明の積層フィルムも、粘着性フィルム積層体と同様に、流れ方向の弾性率EMDと垂直方向の弾性率ETDとの差の絶対値|ΔE|が500MPa以上である。
【0020】
以下、各層について説明する。
【0021】
<粘着層>
粘着層は、粘着性樹脂を含有し、フィルムに粘着性を付与する機能を有する。ここで、粘着性樹脂の弾性率は100MPa以下、好ましくは80MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。弾性率が上記範囲であることで、粘着性がより高まる傾向にある。また、弾性率は、粘着層の強度維持及び過剰な粘着性を有さない観点から好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。なお、粘着性樹脂の弾性率は、ナノインデンターにて測定された粘着層表面の厚さ方向の押込弾性率を意味する。
【0022】
粘着性樹脂は、上述したように弾性率が100MPa以下のある程度柔らかい樹脂であれば何を使用してもよい。その中でも、例えば、アクリル系樹脂、エラストマー系樹脂、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、好ましくは、アクリル系樹脂、又はエラストマー系樹脂であり、より好ましくは、アクリル系樹脂である。これらを1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0024】
エラストマー系樹脂としては熱可塑性を有するとともに、常温ではゴム状弾性を有するものであれば特に限定されず、各種公知のものを用いることがでる。具体例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなるハードセグメント成分と、これとは別のポリオレフィン、1-ブテン等のα-オレフィン又はエチレン-プロピレンゴム等のソフトセグメント成分とを有するオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0025】
粘着層の厚みとしては、成形性や粘着力維持の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、コスト抑制、直線カット性維持および剥離性維持の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0026】
<基材層>
基材層は、熱可塑性樹脂フィルムであり、粘着性フィルムの支持体として設けられる。
【0027】
基材層は、粘着性フィルムが上記特定の弾性率差|ΔE|を満たしやすく直線カット性を有する観点から、配向性を有することが好ましい。具体的には、基材層も弾性率差|ΔE|が500MPa以上であることが好ましく、より好ましくは1000MPa以上、特に好ましくは2000MPa以上である。一方、樹脂の延伸限界の観点から、通常は4000MPa以下である。
【0028】
また、基材層は、切断方向(引き裂く方向)の弾性率が、好ましくは500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上、特に好ましくは2000MPa以上である。弾性率差|ΔE|が500MPa以上であり、かつ、切断方向の弾性率が高いことで、基材層の直線カット性がさらに良好となる。切断方向は、流れ方向と垂直方向のいずれでもよいが、製造時の巻取り方向と製品での巻取り方向を同一にできる観点から、垂直方向であることが好ましい。
【0029】
基材層の弾性率差|ΔE|を500MPa以上とするには、例えば、基材層が少なくとも1軸方向に延伸された延伸樹脂フィルムであることが挙げられ、1軸方向に延伸されてもよく、2軸方向に延伸されてもよいが、基材層の強度やコシ向上・多孔化の観点から2軸延伸樹脂フィルムであることが特に好ましい。
【0030】
基材層を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されない。例えば、成形性・コストの観点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0031】
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はポリメチル-1-ペンテン等が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がさらに好ましい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂としては、主なモノマーにプロピレンが用いられる樹脂であれば特に限定されない。例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体等が挙げられる。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、又は1-ブテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等を使用することもできる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。中でも、プロピレン単独重合体が好ましい。なお、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とを併用してもよい。
【0033】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば密度が0.940g/cm~0.965g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.920g/cm~0.935g/cmの中密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm以上0.920g/cm未満の直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体、又はマレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0034】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、その樹脂フィルムの接着性又は成形性の向上の観点から、グラフト変性物を必要に応じて使用することもできる。
グラフト変性には公知の手法を用いることができる。具体的には、グラフトモノマーとして不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いたグラフト変性物を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸等を挙げることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物、又は金属塩等を挙げることができる。
【0035】
具体的なグラフトモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸モノエチルエステル、又はフマル酸モノメチルエステル等を挙げることができる。
【0036】
グラフトモノマーは、ポリオレフィン系樹脂に対して、通常0.005質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%用いることができる。
【0037】
基材層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、上記の中から1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。成形性、機械的強度又はコスト減等の観点からは、基材層は、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂の樹脂フィルムであることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。なかでも、プロピレン単独重合体が基材層の主原料として取扱いやすく、好ましい。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂の樹脂フィルムには、フィルム成形性の観点から、プロピレン単独重合体と融点が同等程度以下の樹脂を併用することが可能である。そのような樹脂としてはポリエチレン系樹脂、具体的には高密度又は低密度のポリエチレンが挙げられる。ポリエチレン系樹脂の配合量は、例えば2質量%~25質量%とすることができる。
【0039】
<フィラー>
基材層は、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで基材層内部に空孔が形成されやすく、多孔質の基材層が得られる。これにより、フィルムの白色度又は不透明度の調整が容易となり、また、基材層、ひいては粘着性フィルムの軽量化が可能となる。使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。
【0040】
<<無機フィラー>>
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、又はガラスファイバー等の無機粒子を使用することができる。無機フィラーのレーザー回折による粒度分布計で測定した平均粒径は、通常は0.01μm~15μmであり、好ましくは0.1μm~5μmである。
【0041】
<<有機フィラー>>
有機フィラーとしては、基材層の主成分であるポリオレフィン系樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。そのような有機フィラーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、又はポリメタクリレート等のポリマーであって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170~300℃)又は高いガラス転移温度(例えば170~280℃)を有し、かつ非相溶の有機粒子を使用できる。
【0042】
フィラーとしては、上記無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
基材層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、白色度向上によってクリーニングロール上の汚れを視認しやすくなる観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。一方で、紙粉を抑制する観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
<その他の成分>
基材層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、又はアミン系酸化防止剤等を、通常0.001質量%~1質量%の範囲内で使用することができる。
光安定剤としては、例えば立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、又はベンゾフェノン系光安定剤を、通常0.001質量%~1質量%の範囲内で使用することができる。
分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等が挙げられる。これらは、例えばフィラーを分散させる目的で、通常0.01質量%~4質量%の範囲内で使用することができる。
【0044】
<基材層の構造>
基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。多層化により、機械特性、筆記性、耐擦過性又は2次加工適性等の様々な機能を基材層に付与することが可能となる。
【0045】
また、基材層の厚みは、強度やコシの観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。一方、直線カット性やロール巻きした際の巻数の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0046】
<延伸フィルム>
基材層は、上述の弾性率差|ΔE|が生じやすく直線カット性の観点からは、1軸延伸フィルムであることが好ましい。一方で、基材層がフィラーを含む場合は、延伸軸数が大きいほど多孔質化よる軽量化や白色化が期待できる観点から、2軸延伸フィルムが好ましい。ただし、2軸延伸を行うと、1軸延伸で生じた上述の弾性率差|ΔE|が縮まり直線カット性を損なわれやすい側面を有する。したがって、2軸延伸を行う場合は直線カット性を損なわない程度が好ましい。
基材層が多層構造である場合、各層の延伸軸数は、同じであっても異なっていてもよい。延伸軸数の異なる層を組み合わせることで、1軸延伸の利点と2軸延伸の利点の両方を備えた基材層を設計することが可能となる。各層の延伸軸数としては、たとえば、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、又は2軸/2軸/2軸が挙げられる。
【0047】
<空孔率>
軽量化又は白色度の向上等の観点からは、基材層の空孔率は、0%を超えることが好ましい一方、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。空孔率は、電子顕微鏡で観察したフィルムの断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めることができる。
【0048】
<滑性層>
滑性層は、基材の他方の面に形成される。滑性層には、粘着性フィルム積層時には粘着層と密着していること、粘着性フィルム剥離時には粘着層の粘着性を損なうことなく剥離できること、すなわち耐剥離性と剥離容易性の両立が求められる。
【0049】
かかる特性を両立する観点から、滑性層はポリエチレン系樹脂を含む。
滑性層がポリエチレン系樹脂を含むことで、滑り性が向上し、滑剤(離型剤)の含有量を抑えることができるため、粘着層の粘着性を損なうことなく容易に剥離できる。これにより滑剤量を低減しても優れた剥離容易性を有する滑性層を得ることができる。
また、厚みが8μm以下に薄膜化されることで、滑性層の強度が低下し、基材層の切断性を損ねるおそれがなく好ましい。
【0050】
ポリエチレン系樹脂としては、上述の基材層におけるポリエチレン系樹脂が挙げられる。なかでも、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0051】
また、ポリエチレン系樹脂としては、樹脂フィルムの接着性または成形性の向上の観点から、グラフト変性物を必要に応じて使用することもできる。グラフト変性の手法および具体的なグラフトモノマーは、基材層におけるポリオレフィン系樹脂の説明で例示したグラフト変性の手法およびグラフトモノマーと同様である。
【0052】
滑性層は、ポリエチレン系樹脂を主成分として含むことが好ましい。ここで主成分として含むとは、滑性層中におけるポリエチレン系樹脂の含有量が50質量%以上であることを意味する。滑性層の主成分がポリエチレン系樹脂であることで、剥離性が適正となる。
なお、滑性層は、本発明の効果を妨げない範囲で、他の樹脂を含有してもよく、例えば、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0053】
滑性層は、表面粗さが好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。一方、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。表面粗さが上記下限以上であれば粘着性フィルム積層時に滑性層と粘着層との接触面積が減少し、剥離性が向上する。一方、表面粗さが上記上限以下であれば、滑性層の表面粗さ形状が粘着層に移って粘着力を低下させることを防止できる。なお、表面粗さは、JIS-B-0601:2001に基づく三次元中心面平均粗さ(SRa)である。
【0054】
上記特定の表面粗さの滑性層とするには、例えば、滑性層表面をエンボス加工すること、滑性層がフィラーを含有すること等が挙げられ、これらの方法を単独で用いても併用してもよい。
【0055】
エンボス加工の形状としては特に限定されず、上記所望の表面粗さとなるように施されることが好ましい。またエンボス加工の方法は公知の方法が用いられる。
【0056】
滑性層が含有できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられ、無機フィラーおよび有機フィラーの具体例は、上述の基材層における無機フィラーおよび有機フィラーと同様である。なお、滑性層ではなく、滑性層より内側の層にフィラーを配合することで、滑性層の表面を間接的に粗くすることも可能である。
【0057】
フィラーとしては、上記無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
滑性層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、1質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~10質量%がより好ましい。
【0058】
<その他の成分>
滑性層は、基材層同様に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
【0059】
<滑性層の構造>
滑性層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。
滑性層の厚みは、上記したとおり切断性の観点から、8μm以下、好ましくは5μm以下であり、また、基材層の露出を防止する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。
【0060】
<延伸フィルム>
滑性層の主成分であるポリエチレン系樹脂は配向しにくい樹脂であることから、延伸されても弾性率差が生じにくく、滑性層自体の直線カット性の変化は小さいと考えられる。
一方、滑性層の厚みは薄い方が基材層の直線カット性を阻害しにくいため好ましい。したがって、滑性層の厚みを上記したように8μm以下とするために、滑性層は延伸フィルムであってもよい。
ただし、直線カット性を阻害しない、という観点では、薄い方がよく、薄くするための最も一般的な手段は延伸である。
【0061】
<その他の層>
本発明の粘着性フィルムは、上記粘着層、基材層、滑性層以外に、その他の層を有してもよい。例えば、粘着層と基材層との密着性を高める目的で、粘着層と基材層の間に塗布層を有してもよい。
【0062】
<塗布層>
塗布層は、密着性を有する樹脂を含む。密着性を有する樹脂としては、ウレタン系樹脂、オレフィン系共重合体、スチレン系樹脂、およびエチレンイミン系樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
塗布層は、塗工液を、基材層の表面に塗工し、乾燥することにより形成され得る。
【0063】
密着性を有する樹脂が、エチレンイミン系樹脂等の水溶性の樹脂である場合、かかる樹脂を水に溶解させて塗工液を調製できる。塗工液中のエチレンイミン系樹脂の含有量は、固形分換算で、2質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい一方、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。同含有量がこの範囲内であれば十分な密着性が得られやすい。
【0064】
密着性を有する樹脂が、ウレタン系樹脂、オレフィン系共重合体、スチレン系樹脂等の非水溶性樹である場合、かかる樹脂を分散媒に分散させたエマルジョンを含む塗工液を調製できる。この場合、塗布層は、樹脂粒子のエマルジョン(以下、単にエマルジョンということがある。)由来の成分を含むことになる。
【0065】
ここで、エマルジョン由来の成分とは、塗布層用の塗工液中のエマルジョンの分散媒が揮発した後の残留成分である。例えば、残留成分は、エマルジョン中の樹脂粒子、及び必要に応じて添加されるその他の成分である。これらの成分は塗布層を形成する過程で変性した変性体を含んでいてもよい。残留成分中の樹脂粒子は、塗布層において粒子状に存在するが、印刷時の過熱によって溶融し、変形することがある。
【0066】
エマルジョンは、分散媒中に微粒子状の樹脂粒子が乳化又は分散した液体である。本発明において、樹脂粒子とは、分散媒中に分散してエマルジョンを構成する微粒子状の樹脂をいう。取り扱いの容易性の観点からは、水性分散媒中に樹脂粒子が乳化又は分散したO/W系エマルジョンが好ましい。
【0067】
塗布層がエマルジョン由来の成分を含有することで、各種積層体との密着性を得ることができる。
【0068】
エマルジョンに含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、取扱い性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、また、製膜性及びインク密着性の観点から、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下である。樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定される。
【0069】
エマルジョンにおける樹脂粒子の含有量は、上述した粒径のエマルジョンを得やすい観点から5質量%~80質量%が好ましい。
塗布層におけるエマルジョンに由来する成分の固形分の含有量は、印刷性及びエマルジョン調整の容易さの観点から塗布層の固形分全量に対して10質量%~99質量%が好ましい。
【0070】
なお、塗工液は、上記水溶液またはエマルジョンの一方を単独で用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。
【0071】
<<その他の成分>>
塗布層は、必要に応じて帯電防止剤等のその他の添加剤を、密着性を損なわない範囲で含有してもよい。
【0072】
<<<帯電防止剤>>>
帯電防止剤は、フィルム表面の帯電による埃の付着、又は印刷時の静電気によるトラブル等を減らすことができる。
帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン型、アニオン型、両性型、又はノニオン型の帯電防止剤等を用いることができる。
帯電防止剤として、好ましくは窒素含有ポリマー型帯電防止剤が用いられ、より好ましくは第三級窒素又は第四級窒素含有アクリル系樹脂が用いられる。
これらの帯電防止剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
塗工液における帯電防止剤の添加量は、固形分換算で、5質量部以上であることが好ましい一方、60質量部以下であることが好ましい。帯電防止剤の添加量が上記下限以上であれば帯電防止性能を得られやすく、上記上限以下であれば十分な密着性が得られやすい。
【0073】
<<塗布層の厚み>>
塗布層の厚みは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。一方、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。厚みがこの範囲内であれば十分な密着性が得られやすい。
【0074】
<粘着性フィルムの特性>
上記構成を有する本発明の粘着性フィルムは、高い粘着特性と剥離特性に加え、優れた切断性を有する。
なお本発明の粘着性フィルムの厚みは、強度やコシの観点から好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、特に好ましくは60μm以上であり、直線カット性やロール巻時の巻数を増やせる観点から好ましくは550μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは150μm以下、最も好ましくは100μm以下である。
【0075】
<粘着特性>
本発明の粘着性フィルムは、粘着力が好ましくは50mN/25mm以上、より好ましくは80mN/25mm以上であり、また、好ましくは1000mN/25mm以下、より好ましくは500mN/25mm以下である。粘着力が上記下限以上であることで、良好な粘着効果が得られる。一方、上記上限以下であると、強力すぎて取り扱いが不便という事がなくなる。なお、粘着力はJIS Z 0237:2000年に準拠して測定される。
【0076】
<剥離特性>
本発明の粘着性フィルムは、2枚の粘着性フィルムを、一方の滑性層と他方の粘着層とが重なるように積層したときの剥離力が、好ましくは0.01mN/15mm以上、より好ましくは0.1mN/15mm以上である。上記剥離力が上記下限以上であることで、使用時の耐剥離性に優れた粘着性フィルムが得られる。
また、上記剥離力が、好ましくは3mN/15mm以下、より好ましくは1mN/15mm以下である。上記上限以下であることで、剥離容易性に優れた粘着性フィルムが得られる。
なお剥離力はテンシロン万能試験機(商品名:RTM-250、オリエンテック社製)を用いて測定できる。
【0077】
<粘着性フィルム積層体>
本発明の粘着性フィルム積層体は、複数の上記本発明の粘着性フィルムが、粘着層と滑性層とが接するように積層された、積層体である。積層数は、特に限定されず、例えば粘着性クリーナーとして用いる場合、3~500が好ましい。積層体としては、複数の粘着性フィルムの積層体でも、また、細長い帯状の粘着性フィルムを巻回した積層体でもよい。
【0078】
<粘着性フィルムの製造方法>
本発明の粘着性フィルムは、粘着層、基材層、滑性層をこの順に積層することにより製造することができ、その製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の粘着性フィルムは、基材層および滑性層をこの順で有する積層フィルムを形成して、基材層上に粘着層形成用の塗工液を塗工して粘着層を形成することにより、製造することができる。
【0079】
<フィルム成形と積層>
フィルムの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いることができる。また、熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルムが成形されてもよい。
【0080】
フィルムの積層方法としては、共押出法、押出ラミネーション法、塗工法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。共押出法は、別々の押出機において溶融混練された各層の樹脂組成物をフィードブロック又はマルチマニホールド内で積層して押し出し、フィルム成形と積層を並行に行う。押出ラミネーション法は、予め形成されたフィルム上に樹脂組成物を押出成形してフィルムを積層する。塗工法は、樹脂の溶液、エマルジョン又はディスパージョンをフィルム上に塗工して乾燥することにより、フィルムを形成及び積層する。
【0081】
<延伸>
各層は、積層前に個別に延伸されていてもよいし、積層後にともに延伸されてもよい。また、無延伸層と延伸層とが積層された後に再び延伸されてもよい。
【0082】
フィルムを延伸する場合の延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、同時二軸延伸法等が挙げられる。また、同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0083】
延伸を実施するときの延伸温度は、フィルムに使用する樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0084】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20m/分~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、上限が通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、上限が通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0085】
<塗布層の形成>
粘着層と基材層の間に塗布層を設ける場合は、塗布層形成用の塗工液を調製し、基材層上に塗工することで形成できる。塗工液は、上述した樹脂水溶液または樹脂粒子のエマルジョンに、必要に応じて添加剤などを配合することにより、調製できる。
【0086】
カチオン性のウレタン系樹脂の樹脂粒子を使用する場合、ポリウレタン樹脂骨格にカチオン性の親水性基を導入した共重合体を水に分散させることにより、エマルジョンを調製できる。具体的には、目的の重合体を構成するモノマーを水に乳化分散させて重合させる方法、塊状重合等により目的の重合体を得たのち、二軸押出機を使用して原料樹脂の溶融混練と乳化を逐次行う方法等が挙げられる。
【0087】
オレフィン系共重合体の樹脂粒子を使用する場合のエマルジョンの調製方法は、特に限定されないが、例えば下記(1)又は(2)の方法を用いることができる。
【0088】
(1)芳香族炭化水素系溶剤にオレフィン系共重合体を投入して加熱溶解し、樹脂溶液を調製する。この樹脂溶液に、分散剤を添加して混合撹拌し、引き続き水を添加しながら相転換させる。その後、芳香族炭化水素系溶剤を留去し、得られた水性分散液をエマルジョンとして使用する。
【0089】
(2)オレフィン系共重合体を、二軸押出機を用いて溶融した後、分散剤の水溶液を添加し、混練することで水性分散液を得てエマルジョンとして使用する(日本国特公昭62-29447号公報参照)。
【0090】
これらの方法によりエマルジョンを調製する場合、分散剤としてカチオン系水溶性高分子等の高分子乳化剤を用いることが好ましく、さらに上記(2)の二軸押出機による分散法を用いることが好ましい。これにより、エマルジョン中のオレフィン系共重合体の樹脂粒子の体積平均粒径を、0.01μm~3.00μmに容易に調整することができる。上記(2)の方法において、エマルジョン中のオレフィン系共重合体の樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、二軸押出機の運転条件のうち、オレフィン系共重合体に対する水の量、シリンダー温度とそのプロフィル、押出機中での樹脂の滞留時間、押出機のバレル回転数等を制御することによって調整することができる。
【0091】
塗工液の固形分濃度は、塗工液全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、また、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0092】
塗工液の塗工は、例えば、ロールコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、スプレーコーター等の塗工装置を用いて行うことができる。
【0093】
塗工液の塗工量は、乾燥後の固形分量として0.05g/m以上であることが好ましく、0.10g/m以上であることがより好ましく、0.15g/m以上であることが特に好ましく、また、1.40g/m以下であることが好ましく、0.50g/m以下であることがより好ましく、0.30g/m以下であることがより好ましく、0.24g/m以下であることが特に好ましい。
【0094】
<粘着層の形成>
粘着層は、コーティング(塗工や散布)や接着剤を介して接着する方法などの公知な方法により形成できる。
【実施例
【0095】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0096】
[原料]
実施例及び比較例にて使用した原料は以下の表のとおりである。
【0097】
【表1】
【0098】
[塗布層用塗工液の調製]
(分散剤(H))
冷却器、窒素導入管、撹拌機及びモノマー滴下ロート及び加熱用のジャケットを装備した内容積150Lの反応器にイソプロパノール((株)トクヤマ製:商品名トクソーIPA)40kgを仕込んだ。次いで、撹拌しながら、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三洋化成工業(株)製:商品名メタクリレートDMA)12.6kg、ブチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製:商品名アクリエステルB)12.6kg、及び高級アルコールメタクリル酸エステル(三菱レイヨン(株)製:商品名アクリエステルSL、メタクリル酸ラウリルとメタクリル酸トリデシルの混合物)2.8kgを仕込んだ。窒素置換を行った後、内温を80℃まで上昇させ、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製:商品名V-60(AIBN))0.3kgを添加して重合を開始した。
【0099】
反応温度を80℃に保って4時間重合を行った後、得られた共重合体を、氷酢酸(和光純薬工業(株)製)4.3kgを用いて中和した。次いで、イソプロパノールを留去しながらイオン交換水48.3kgを添加して系内を置換し、(メタ)アクリル酸系共重合体からなるカチオン性高分子乳化剤の中和物の水溶液(固形分濃度35重量%)を分散剤(H)として得た。得られた高分子乳化剤の重量平均分子量は40,000であった。
【0100】
(ウレタン系共重合体樹脂のエマルジョン(E1))
カチオン性ポリウレタン水分散体(商品名:ハイドランCP-7050、DIC(株)製)を、エマルジョン(E1)として使用した。このエマルジョン(E1)の固形分は25質量%、エマルジョン(E1)中の樹脂粒子の体積平均粒径は0.07μmであった。体積平均粒径は、レーザー回折型粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD-2200)を用いて測定した。
【0101】
(エチレンイミン系樹脂溶液(F))
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミン P-1000)25質量%水溶液100質量部、1-クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部を導入した。て次いで、窒素気流下で撹拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行った。次いでこの溶液に水を添加して固形分濃度を20質量%に調整し、エチレンイミン系樹脂の溶液(F)を得た。
【0102】
(帯電防止剤(G))
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35質量部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25質量部、エチルアルコール150質量部と、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部を、撹拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに導入した。系内を窒素置換し、窒素気流下にて80℃で6時間重合反応を行なった。次いで3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50質量%水溶液85質量部(和光純薬工業(株)製、試薬)を加えた。更に80℃で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、固形分濃度20質量%の第四級アンモニウム塩型共重合体からなる帯電防止剤の溶液を得た。
【0103】
(塗工液)
上記ウレタン系樹脂のエマルジョン(E1)を13質量%、エチレンイミン系樹脂溶液(F)を0.5質量%、帯電防止剤(G)を0.5質量%含む水溶液を調製し、塗工液(1)として用いた。なお、上記各成分の濃度は、塗工液全体に対する各成分の固形分濃度を表す。
【0104】
[粘着性フィルムの製造]
(実施例1)
80質量部のポリプロピレン系樹脂(ノバテックPP FY-4)と20質量部のフィラー1(ソフトン1800)とからなる樹脂組成物を、230℃に設定した押出機にて溶融混練した。その後、250℃に設定した押出ダイに供給してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して流れ方向(縦方向)に5倍延伸し、基材層1を形成した。
【0105】
次いで、60質量部のポリプロピレン系樹脂と40質量部のフィラー1とからなる樹脂組成物を、250℃に設定した押出機において溶融混練した後、基材層1上にシート状に押し出した。これにより、樹脂組成物からなる基材層2が基材層1上に積層された。
【0106】
一方、100質量部のポリエチレン系樹脂(ノバテックLD LC540)を250℃に設定した一方の押出機において溶融混練し、60質量部のポリプロピレン系樹脂と40質量部のフィラー1とからなる樹脂組成物を250℃に設定した他方の押出機において溶融混練した後、ポリエチレン系樹脂からなる滑性層、樹脂組成物からなる基材層3をこの順に重ねてシート状に2層共押出ししながら、上記基材層1の主面のうち、基材層2が積層された主面とは反対側の主面上に、シート状に押し出した。その直後に、金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロール(1インチあたり150線、逆グラビア型)に通し、滑性層表面に0.17mm間隔のパターンをエンボス加工した。これにより、基材層2/基材層1/基材層3/滑性層の順に積層された4層シートが得られた。
【0107】
得られた4層シートを、冷却装置により60℃まで冷却した後、テンターオーブンを用いて積層シートを約150℃に加熱し、流れに垂直方向(横方向)に8.5倍延伸した。その後、160℃まで加熱して熱処理を行った後、60℃まで冷却し、耳部をスリットした。
次に、連続塗工設備を用い、4層シートの基材層2にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理は、印加エネルギー密度を4200J/mとした。次いで、基材層2上に、塗工液を塗工し、60℃の熱風送風乾燥設備において乾燥し、塗布層を形成した。乾燥後の塗布層の固形分は、0.2g/mであった。
これにより、塗布層/基材層2/基材層1/基材層3/滑性層の順に積層された5層シートを得た。
全層合計厚み:74μm
各層厚み:-/20μm/30μm/20μm/4μm
各層の延伸軸数:-/1軸/2軸/1軸/1軸
【0108】
塗布層上に、アクリル系樹脂(オリバインBPS5978)を、乾燥膜厚5μmとなるよう塗布、乾燥して粘着層を積層した。
【0109】
以上より、実施例1の粘着性フィルムを製造した。
【0110】
(実施例2)
基材層1上に押し出すポリエチレン系樹脂の押出量を調整することで、滑性層の膜厚を後述の表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0111】
(実施例3)
滑性層形成にあたり、92質量部のポリエチレン系樹脂と8質量部のフィラー2とを含む組成物を用いたこと、エンボス加工を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0112】
(実施例4)
滑性層形成にあたり、エンボス加工を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0113】
(比較例1)
基材層1上に押し出すポリエチレン系樹脂の押出量を調整することで、滑性層の膜厚を後述の表に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0114】
(比較例2)
滑性層形成にあたり、ポリエチレン系樹脂に替えてポリプロピレン系樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0115】
(比較例3)
滑性層形成にあたり、溝深さが8倍のエンボスロールに変更したこと以外は比較例2と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0116】
(比較例4)
滑性層形成にあたり、90質量部のポリプロピレン系樹脂と10質量部の滑剤(ステアリン酸アルミニウム)とを含む組成物を用いたこと、エンボス加工を施さなかったこと以外は比較例2と同様にして粘着性フィルムを製造した。
【0117】
<粘着層の弾性率評価>
粘着性フィルムにおけるアクリル系樹脂の弾性率は、下記方法により測定した。
測定装置の支持体層表面に瞬間接着剤(東亞合成株式会社製、アロンアルファ(登録商標)、プロ用耐衝撃)を1滴塗布し、支持体層と粘着性フィルムの粘着層とを瞬間接着剤を介して接着することで粘着性フィルムを測定装置専用のサンプル固定台に固定した後、粘着層の押込弾性率を測定した。測定装置は(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT-2100」を用いた。測定条件は、稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用い、測定モード:負荷-除荷試験、最大荷重:3μN、最大荷重に達した時の保持時間:1秒、荷重速度・除荷速度:10μN/secとし、得られた測定データを測定装置に附属している専用解析ソフト(version 6.18)により処理することで、アクリル系樹脂の弾性率(厚さ方向の押込弾性率)(MPa)を求めた。
【0118】
<粘着性フィルムの弾性率評価>
粘着性フィルムを縦30mm×幅15mmの試験片に切り出し、固体粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製:RSA-III)を用いて、流れ方向と垂直方向それぞれについて動的粘弾性測定を行った。測定条件は、チャック間距離20mm、測定周波数10Hz、歪量0.1%、昇温速度10℃/分、引張モードの条件とし、23℃における貯蔵弾性率を引張弾性率とした。
【0119】
<滑性層の表面粗さ評価>
滑性層の表面粗さは、JIS-B-0601:2001に準拠して測定した。
【0120】
<粘着層の粘着力評価>
粘着性フィルムにおける粘着層の粘着力は、2枚の粘着性フィルムを、一方の滑性層と他方の粘着層とが重なるように積層し、加圧した後、剥離した後に測定した。
加圧条件:接着面積200mm×25mm、圧力4MPa、加圧時間5分
剥離条件:剥離角度180°、剥離速度300mm/分
剥離後の粘着層の剥離力を、JIS Z 0237:2000年に準拠して測定した。具体的には、粘着性フィルムを縦200mm×幅25mmの試験片に切り出し、粘着層部分を、トルエンで表面を洗浄した被着体SUS430BA板に貼付し、支持体層表面に2kgのローラを1往復させて被着体を圧着した。圧着から30分後に、300mm/分の引張速度で試験片を180度方向に剥離して粘着力を測定した。粘着力は下記基準で評価した。
A:50[mN/25mm]以上(良好)
C:50[mN/25mm]未満(不可)
【0121】
<滑性層と粘着層との剥離性評価>
2枚の粘着性フィルムを、一方の滑性層と他方の粘着層とが重なるように積層し、加圧した後、剥離させた。
加圧条件:接着面積200mm×15mm、圧力4MPa、加圧時間5分
剥離条件:剥離角度180°、剥離速度300mm/分
上記の条件で剥離力を3回測定し、その平均値を剥離力[mN/15mm]とした。測定装置としてはテンシロン万能試験機を用いた。
【0122】
剥離力の値に対して、以下2つの観点で評価を行った。
(使用時のズレにくさ(耐剥離性))
A:0.01[mN/15mm]以上(良好)
C:0.01[mN/15mm]未満(不可)
(剥離時の滑らかさ(剥離容易性))
A:1[mN/15mm]以下(良好)
B:1[mN/15mm]超3[mN/15mm]未満(可)
C:3[mN/15mm]以上(不可)
【0123】
<粘着性フィルムの直線カット性(切断性)>
以下の手順で評価実験を行い直線カット性を評価した。
(1)粘着性フィルムを幅20mm×長さ297mmの試験サンプルに切り出したものを10セット準備した。
(2)サンプル短辺側の中央部にカッターで1mmの切込みを入れて、流れ方向と垂直の方向(TD方向)に引き裂けるように準備した。
(3)300m/minの速度で180°の角度をつけて、切込みを起点にTD方向に引き裂いた。
反対側の短辺まで引き裂けたら1点加算することとし、同様の試験を10回行い、下記基準に基づき評価した。
A:9点以上(良好)
B:7~8点(可)
C:6点以下(不可)
【0124】
各評価結果を下記表に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
上記結果より、実施例の粘着性フィルムはいずれも、粘着層の粘着力、剥離性、直線カット性が全てA(良好)またはB(可)であった。また、実施例4と実施例1および実施例3との対比から、エンボス加工やフィラー添加により滑性層の表面粗さを適切な範囲とすることで、剥離性のうち、使用後の剥離容易性がさらに向上することが分かった。
一方、滑性層の膜厚が大きい比較例1の粘着性フィルムは、直線カット性が低下した。滑性層にプロピレン系樹脂を用いた比較例2および比較例3の粘着性フィルムは、滑性層にエンボス加工を施しても使用時の耐剥離性が低下したまま向上せず、エンボス加工を強く施した比較例3では粘着性能がかえって悪化した。滑性層にプロピレン系樹脂を用い滑剤を含有する比較例4の粘着性フィルムは、剥離性および直線カット性は良好であるが、粘着性能が著しく低い結果となった。
【0127】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2021年3月29日出願の日本特許出願(特願2021-055636)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の粘着性フィルムは、埃、繊維、微粒子等を除去するための粘着性クリーナーに有用である。
本発明の粘着性フィルムはまた、セロハンテープや付箋として用いることもできる。
【符号の説明】
【0129】
10…粘着性フィルム、1…基材層、2…滑性層、3…粘着層
図1