(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】二重螺旋バーナが配列されたガス化炉
(51)【国際特許分類】
F23D 23/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
F23D23/00 A
(21)【出願番号】P 2023521430
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 CN2021075402
(87)【国際公開番号】W WO2022126848
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202011467612.3
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521438869
【氏名又は名称】中国華能集団清潔能源技術研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUANENG CLEAN ENERGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】Lab Block A, Huaneng Base, Beiqijia Future Science Park, Changping District, Beijing 102209, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羅 麗珍
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬杰
(72)【発明者】
【氏名】許 世森
(72)【発明者】
【氏名】陶 継業
(72)【発明者】
【氏名】任 永強
(72)【発明者】
【氏名】李 小宇
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲ゆぇん▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 智
(72)【発明者】
【氏名】樊 強
(72)【発明者】
【氏名】袁 広武
(72)【発明者】
【氏名】張 皓
(72)【発明者】
【氏名】範 ▲かい▼
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041784(JP,A)
【文献】実開平01-094443(JP,U)
【文献】特公昭33-000175(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0240825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D14/00-14/84,23/00
C10J3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重螺旋バーナが配列されたガス化炉であって、
ガス化炉本体(3)と、
異なる螺旋線に沿ってガス化炉本体(3)の内壁に配列された、いくつかの第1のバーナ(1)及びいくつかの第2のバーナ(2)と、を含み、
いくつかの第1のバーナ(1)が配列された螺旋線と、いくつかの第2のバーナ(2)が配列された螺旋線との旋回方向が同じであり、第1のバーナ(1)及び第2のバーナ(2)のバーナ口は、いずれもガス化炉本体(3)の中心
軸に向かっており、ガス化炉本体(3)内の同一層の水平面において、各第1のバーナ(1)が、ガス化炉本体(3)の中心点に対して1つの第2のバーナ(2)と中心対称に分布され、第1のバーナ(1)及び第2のバーナ(2)が、いずれも同じ角度でガス化炉本体(3)の内壁に向かって斜め上向きに偏向し、第1のバーナ(1)及び第2のバーナ(2)の偏向方向は、それぞれの配列螺旋線の旋回方向と同じであ
り、隣接する第1のバーナ(1)の間の高度差が等しい、
ことを特徴とする二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項2】
第1のバーナ(1)及び第2のバーナ(2)が配列された螺旋線は、いずれも等ピッチ螺旋線である、
ことを特徴とする請求項1に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項3】
0<隣接する第1のバーナ(1)
の間の高度差であり、第1のバーナ(1)及び第2のバーナ(2)が配列された
全高≦ガス化炉本体(3)の全高の1/10である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項4】
第1のバーナ(1)と第2のバーナ(2)とは、水平面における偏向方向が同じであり、鉛直面における偏向方向が同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項5】
ガス化炉本体(3)の中心軸に対する第1のバーナ(1)の水平方向における偏向角度は1°~5°である、
ことを特徴とする請求項
4に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項6】
第1のバーナ(1)が位置する水平面に対する第1のバーナ(1)の鉛直方向における偏向角度は0.5°~5°である、
ことを特徴とする請求項
4に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項7】
第1のバーナ(1)の数は、
3または4個である、
ことを特徴とする請求項1に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【請求項8】
最下端の第1のバーナ(1)及び第2のバーナ(2)とガス化炉のスラグ口との距離はガス化炉本体(3)の全高の1/6~1/5である、
ことを特徴とする請求項1に記載の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化技術の分野に関し、具体的には、二重螺旋バーナが配列されたガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化技術は、石炭のクリーンで効率的な利用の核心技術であり、先進的なクリーン石炭発電、石炭化学工業、石炭ベースポリジェネレーションなどのエネルギーシステムを発展させるための重要な技術であり、各システムの動作の信頼性及び経済性に重要な影響を与える。現代の石炭ガス化学工業プロジェクトの急速な発展によって駆動され、石炭ガス化技術は、大型化、クリーンで高効率、幅広い石炭種の適応性の方向に発展しつつある。石炭ガス化技術の発展は百花斉放の局面を呈しているが、現段階での高効率でクリーンな石炭ガス化技術の発展過程において、ガス化効率の向上、装置の動作の信頼性の強化、汚染物の排出削減などの課題は、依然として存在している。
【0003】
主流の石炭ガス化技術に存在する重要な技術的課題は、乾式微粉炭気流層ガス化の高効率ノズルの重要な技術を突破することが、主流の石炭ガス化技術の石炭ガス化効率及びシステムの信頼性を向上させ、ガス化石炭種の適用範囲を広げ、ガス化過程の汚染物の排出を低減させ、石炭のクリーンで高効率な利用分野の工事及び技術サービス能力を強化するキーポイントとなっている。
【0004】
現在、ほとんどのガス化炉のバーナは、主に対向噴流の方式で配列されており、宇宙炉、GPSなどのガス化炉内に衝突流とジェット流が混合する流れ場が形成されており、ガス化炉のバーナ対向噴流の組み合わせ方式は、ガス化炉の中心温度を大幅に上昇させ、飛灰の発生量を大幅に増加させる。シェル炉などの小部分のガス化炉は、バーナに偏向角度を設けてガス化炉の中心温度を下げ、飛灰の発生量を減らすが、この方式では、バーナを同一平面において偏向させ、1つの平面の接円を形成するだけであり、スラグ捕捉効率の向上には限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、ガス化炉の中心温度を下げる一方、灰粒子を径方向に拡散させ、飛灰量を大幅に減らし、スラグの発生量を向上させる二重螺旋バーナが配列されたガス化炉の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術的解決手段によって実現される。
本発明は、二重螺旋バーナが配列されたガス化炉を開示し、二重螺旋バーナが配列されたガス化炉は、ガス化炉本体と、同じ旋回方向の螺旋線に沿ってガス化炉本体の内壁に配列された、いくつかの第1のバーナ及びいくつかの第2のバーナと、を含み、第1のバーナ及び第2のバーナのバーナ口は、いずれもガス化炉本体の中心に向かっており、ガス化炉本体内の同一層の水平面において、各第1のバーナが、ガス化炉本体の中心点に対して1つの第2のバーナと中心対称に分布され、第1のバーナ及び第2のバーナが、いずれも同じ角度でガス化炉本体の内壁に向かって斜め上向きに偏向し、第1のバーナ及び第2のバーナの偏向方向は、それぞれの配列螺旋線の旋回方向と同じである。
【0007】
好ましくは、第1のバーナ及び第2のバーナが配列された螺旋線は、いずれも等ピッチ螺旋線である。
【0008】
好ましくは、隣接する第1のバーナの高度差が等しい。
【0009】
さらに好ましくは、0<隣接する第1のバーナの高度差であり、第1のバーナ及び第2のバーナが配列された螺旋線の全高≦ガス化炉本体の全高の1/10である。
【0010】
好ましくは、第1のバーナが配列される層数は1~4である。
【0011】
好ましくは、第1のバーナと第2のバーナとは、水平面における偏向方向が同じであり、鉛直面における偏向方向が同じである。
【0012】
さらに好ましくは、第1のバーナの水平方向における偏向角度は1°~5°である。
【0013】
さらに好ましくは、第1のバーナの鉛直方向における偏向角度は0.5°~5°である。
【0014】
好ましくは、第1のバーナの数は、1~4個である。
【0015】
好ましくは、最下端の第1のバーナ及び第2のバーナとガス化炉のスラグ口との距離はガス化炉本体の全高の1/6~1/5である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来技術に比べて、以下の有益な技術的効果を有する。
本発明によって開示される二重螺旋バーナが配列されたガス化炉では、第1のバーナ及び第2のバーナがそれぞれガス化炉の内壁に螺旋線に沿って配列された多次元配列形態は、微粉炭がガス化された後に、外側に拡散する相互促進の二重サイクロンを形成させ、火炎高温域をガス化炉本体の内部において径方向に向かって拡散させ、ガス化炉本体内の火炎をより充実させ、ガス化炉本体の中心領域の火炎温度とバーナヘッド及びバーナカバーの輻射熱強度とを大幅に低減させることができ、サイクロンは、灰粒子を径方向に拡散させ、壁面によって捕捉されやすく、飛灰量を大幅に減らし、スラグの発生量を向上させる。二重螺旋多次元配置されたバーナは、ガス化炉本体内の同一層の水平面において、各第1のバーナと第2のバーナがガス化炉本体の中心点に対して中心対称であるため、ガス化炉の熱量を同じ高さで均一に分布させ、同じ高さで互いに偏向する2つのバーナは、火炎がガス化炉の壁面に吹き付けられないように対噴流の勢いを形成し、同一水平面に安定したサイクロンが形成され、ガス化炉の制御可能性及び可塑性を向上させ、ガス化炉の温度を螺旋線に均一に分布させ、螺旋線の高さに温度が均一な反応場が形成され、温度が均一な反応場に安定したスラグ膜が形成され、ガス化炉の動作の安定性が向上する。
【0017】
さらに、第1のバーナ及び第2のバーナが配列された螺旋線は、等ピッチ螺旋線であり、気流が各セグメントで均一に力を受け、サイクロンの安定を確保する。
【0018】
さらに、隣接する第1のバーナと第2のバーナとの高度差が等しく、サイクロンに継続的な上向きの均一な動力を提供し、サイクロンが上向きに均一に旋回できるようにする。
【0019】
さらに、0<隣接する第1のバーナの高度差であり、第1のバーナ及び第2のバーナが配列された螺旋線の全高≦ガス化炉本体の全高の1/10であり、高度差は、第1のバーナと第2のバーナとの配列が過密又は過疎にならないように合理的な数値範囲を選択し、形成されるサイクロン効果を向上させることができる。
【0020】
さらに、第1のバーナ及び第2のバーナが配列される層数が1~4であり、多すぎるとコストが高くなる。
【0021】
さらに、第1のバーナと第2のバーナとは、水平面における偏向方向が同じであり、鉛直面における偏向方向が同じであり、協同性がよく、形成されたサイクロンのパラメータが近く、相互促進性がよい。
【0022】
さらに、バーナの水平方向における偏向角度が1°~5°であり、灰スラグに壁面への遠心力を提供することができ、角度が大きすぎるとガス化炉の壁面を焼損しやすい。
【0023】
さらに、バーナの鉛直方向における偏向角度が0.5°~5°であり、気流に斜め上向きの動力を提供することができ、角度が大きすぎると、微粉炭のガス化炉における滞留時間を減少させ、鉛直上向きの偏向角度α=arctan(h/r)であり、hがバーナの高度差であり、rがガス化炉の内径であり、ちょうど次のバーナのサイクロンと関連して促進することができる。
【0024】
さらに、第1のバーナと第2のバーナの数は、それぞれ1~4個であり、数が少なすぎると、形成されたサイクロンが不安定になり、多すぎるとコストを増大させることになる。
【0025】
さらに、最下端の第1のバーナ及び第2のバーナとガス化炉のスラグ口との距離がガス化炉の全高の1/6~1/5であり、当該位置は、微粉炭のガス化炉における滞留時間を増加させて、反応時間を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本発明の
ガス化炉本体内の各水平面における第1のバーナと第2のバーナとの位置関係の概略平面図である。
【
図4】本発明の
ガス化炉本体内に形成されたサイクロンの概略図である。
【
図5】本発明の第1のバーナと第2のバーナとの偏向角度の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面と組み合わせて本発明をさらに詳しく説明し、その内容は、本発明を限定するものではなく、説明するものである。
【0028】
図1及び
図3に示すように、本発明の二重螺旋バーナが配列されたガス化炉は、ガス化炉本体3と、同じ旋回方向の螺旋線に沿ってガス化炉本体3の内壁に配列された、いくつかの同一仕様の第1のバーナ1及びいくつかの第2のバーナ2と、を含み、第1のバーナ1及び第2のバーナ2のバーナ口は、いずれも
ガス化炉本体の中心に向かっており、好ましくは、第1のバーナ1及び第2のバーナが配列された螺旋線は、等ピッチ螺旋線である。好ましくは、隣接する第1のバーナ1の高度差が等しく、隣接する第2のバーナの高度差が等しく、一般的に、0<隣接する第1のバーナ1の高度差であり、第1のバーナ1及び第2のバーナ2が配列された螺旋線の全高≦ガス化炉本体3の全高の1/10である。第2のバーナ2は、第1のバーナ1と一致して分布される。一般的に、第1のバーナ1が配列される層数が1~4である。
【0029】
図2に示すように、
ガス化炉本体内の同一水平面において、各第1のバーナ1が、
ガス化炉本体の中心点に対して1つの第2のバーナと中心対称に分布されている。
【0030】
第1のバーナ1及び第2のバーナ2は、いずれも同じ角度で
ガス化炉本体3の内壁に向かって斜め上向きに偏向し、第1のバーナ1及び第2のバーナ2の偏向方向は、それぞれの配列螺旋線の旋回方向と同じである。第1のバーナ1と第2のバーナ2とは、水平面における偏向方向が同じであり、鉛直面における偏向方向が同じである。好ましくは、第1のバーナ1の水平方向における偏向角度が1°~5°であり、第1のバーナ1の鉛直方向における偏向角度が0.5°~5°である。
図5に示すように、デザイン選択では、β=arctan(h/r)であり、hがバーナの高度差であり、rがガス化炉の内径であり、鉛直上向きの偏向角度α=arctan(h/r)であり、hがバーナの高度差であり、rがガス化炉の内径であり、ちょうど次のバーナのサイクロンと関連して促進することができる。
【0031】
第1のバーナの数は、1~4個であり、第2のバーナ2と第1のバーナ1との数が等しく、最下端の第1のバーナ1及び第2のバーナ2とガス化炉のスラグ口との距離はガス化炉本体3の全高の1/6~1/5である。
【0032】
図4に示すように、第1のバーナ1と第2のバーナ2との上記の二重螺旋多次元配列形態は、微粉炭がガス化された後に、外側に拡散する相互促進の二重サイクロンを形成させる。
【0033】
以下に、具体的な一実施例と組み合わせて本発明をさらに詳しく説明する。
【0034】
ある1000t/日の乾式微粉炭ガス化炉は、ガス化炉の直径が3mであり、高さが18mであり、現在、供給第1のバーナ1を3つ設け、供給第2のバーナ2を3つ設け、隣接する第2のバーナ2がπ/3の角度でガス化炉の横断面に均一に分布されており、隣接する第2のバーナの鉛直方向における高度差が0.1m(バーナの内径が0.05m)であり、第2のバーナ2の水平方向の偏向角度が1.5°であり、鉛直方向の偏向角度が2°(α=arctan(h/r))であり、第1のバーナ1及び第2のバーナ2が供給された後に、合成ガスがガス化炉本体内に1つのサイクロンを形成している。
【0035】
二重螺旋多次元配置された第1のバーナ1及び第2のバーナ2がガス化炉本体3に形成された相互促進の二重サイクロンは、火炎高温域をガス化炉本体の内部において径方向に向かって拡散させ、ガス化炉本体内の火炎をより充実させ、同時に、ガス化炉本体の中心領域の火炎温度が350℃低下し、バーナの平均温度が170℃低下した。これにより、バーナヘッド及びバーナカバーの輻射熱強度が低減される。
【0036】
同時に、合成ガスによって形成されたサイクロンは、灰粒子を径方向に拡散させ、壁面によって捕捉されやすく、飛灰量が60%減少し、スラグの発生量が大幅に増加している。
【0037】
統計によると、当該技術案は、従来の技術案と比べて、冷ガス効率≧82.5%であり、灰における炭素含有量≦20%である。
【0038】
なお、以上は、本発明の実施形態の一部にすぎず、本発明に説明されたシステムに基づいて行われた等価的な変化は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれている。本発明が属する技術分野の技術者は、説明された具体的な実施例を同様の方法で代替することができ、本発明の構成から逸脱しなく、又は特許請求の範囲に定義された範囲を超えない限り、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0039】
1 第1のバーナ
2 第2のバーナ
3 ガス化炉本体