(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】架橋カーボンナノチューブセンサを備える消費者製品並びにそれを含むシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20241016BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N27/12 C
A61L9/00 Z
(21)【出願番号】P 2023528041
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 US2021072771
(87)【国際公開番号】W WO2022126094
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ピーコック、マーティン・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】グリュンバッハー、デイナ・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロブレス、エリック・サン・ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、レベッカ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】シャッファー、ミロ・セバスチャン・ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ストリンガー、デイヴィッド・マーク
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194620(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224376(US,A1)
【文献】米国特許第10031097(US,B1)
【文献】特開2005-003687(JP,A)
【文献】特開2005-162790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236399(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0198117(US,A1)
【文献】Hong-Wei Di et al.,European Polymer Journal,2019年,vol.116,pp.508-514,doi.org/10.1016/j.eurpolymj.2019.04.040
【文献】Maxim Polyakov et al.,Molecules,2020年04月29日,vol.25, no.2073,doi:10.3390/molecules25092073
【文献】Wei Ren et al.,J. Phys. Chem. C,2007年,vol.111, No.9,pp.3700-3704
【文献】Fei Wang and Timothy M. Swager,J. Am. Chem. Soc,2011年,vol.133,pp.11181-11193,dx.doi.org/10.1021/ja201860g
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
A61L 9/00
G01N 27/26 - 27/-49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費者製品を利用するためのシステムであって、
着信信号を受信し、発信命令を送信することができ、アルゴリズムを保存するように構成されているメモリと通信可能に接続されている中央通信ユニットと、
前記中央通信ユニットと通信可能に接続可能であり、対象の標的ガスの識別及び濃度を前記中央通信ユニットに警告する着信信号を前記中央通信ユニットに送信するように構成されているセンサであって、複数のカーボンナノチューブと、隣接するカーボンナノチューブを共有結合させる少なくとも1つのリンカーと、を含む架橋カーボンナノチューブネットワークを含
み、
前記架橋カーボンナノチューブネットワークがエアロゲルである、センサと、
前記対象の標的ガスを増強又は軽減することができる消費者製品と
を備える、システム。
【請求項2】
前記消費者製品が、無線通信リンクを介して前記中央通信と通信可能に接続可能であり、前記アルゴリズムが、前記センサから前記中央通信ユニットに送信された着信信号を使用して前記消費者製品を制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記消費者製品が、エアフレッシュナーデバイス、空気清浄化デバイス、歯ブラシ、カミソリ、おむつ、女性用ケア製品、クリーニング器具、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のカーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数のカーボンナノチューブが、一連の平行層に結合され、任意に、前記架橋カーボンナノチューブが、厚さ方向導電率より大きい面内導電率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記リンカーが、構造
*-A-
*の部分を有する共役リンカーであり、式中、Aが、1つ以上のアリール又はヘテロアリール環を含む二価共役系であり、
*が、前記カーボンナノチューブへの結合点である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
Aが、
【化1】
であり、
式中、
各環Bが、独立して、任意に置換されているアリール又はヘテロアリールであり、
環Cが、任意に置換されているポルフィリン環であり、
nが、1~5の整数であり、
*が、
前記カーボンナノチューブへの結合点を示し、
任意に、各環Bが、独立して、
【化2】
及び/又は
【化3】
であってもよく、
これらの各々が、任意に置換されていてもよく、Mが、Zn、Cu、Ni又はCoである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上のアリール又はヘテロアリール環が、C
1~C
20アルキル、アミノ(アルキルアミノ及びジアルキルアミノを含む)、カルボン酸、アミノ-C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルキル-COOH、及び-NHC(S)(NH
2)、又は貴金属ナノ粒子、ポルフィリン、カリックス[4]アレーン、若しくはクラウンエーテルを含む置換基のうちの1つ以上で置換されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記リンカーが、構造:
【化4】
の部分を有する共役リンカーであり、式中、Mが、Zn、Cu、Ni又はCoである、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記リンカーが、構造
*-Y-
*の部分を有する剛性リンカーであり、式中、Yが、多価剛性系であり、
*が、前記カーボンナノチューブへの結合点である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
Yが、シクロアルキル基又はポリ八面体シルセスキオキサンを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のカーボンナノチューブがフィルムを形成しており、前記フィルムが基板上に提供されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記フィルムが約1nm~約500nmの厚さを有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記無線通信リンクが、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee、6 LoWPAN、Thread、メッシュネットワーク、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
2に記載のシステム。
【請求項15】
温度、相対湿度、屋内の空気の質、屋外の空気の質、騒音、人間の存在、動き、室内の空気速度、前記空気中の粒子濃度、アレルゲン、及び/又は他の空中物質を測定する追加のセンサを更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架橋カーボンナノチューブセンサを備える消費者製品並びにそれを含むシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データの大量利用可能性は、人々が生活する方法を変化させており、周囲環境に存在するガスを、工業的にも家庭でも監視する能力から生じる大きな利点を伴う。したがって、高い感度及び選択性を達成し、しかも小さな寸法、低電力要件、及び手頃な製造経路を有するガスセンサデバイスに対する十分に示された必要性が現在存在する。
【0003】
更に、人々は、データを使用して、その者らの家庭及び事業における様々な消費者製品及び電化製品の動作を自動化している。したがって、高い感度及び選択性を達成するガスセンサデバイスを、空間内の標的ガスのレベルを軽減又は増強させることができる消費者製品、それを備えるシステム及び方法などと、合体する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
組み合わせ:
A.消費者製品を利用するためのシステムであって、
着信信号を受信し、発信命令を送信することができ、アルゴリズムを保存するように構成されているメモリと通信可能に接続されている中央通信ユニットと、
中央通信ユニットと通信可能に接続可能であり、対象の標的ガスの識別及び濃度を中央通信ユニットに警告する着信信号を中央通信ユニットに送信するように構成されているセンサであって、複数のカーボンナノチューブと、隣接するカーボンナノチューブを共有結合させる少なくとも1つのリンカーとを含む架橋カーボンナノチューブネットワークを含む、センサと、
対象の標的ガスを増強又は軽減することができる消費者製品と、を備える、システム。
B.消費者製品が、無線通信リンクを介して中央通信と通信可能に接続可能であり、アルゴリズムが、センサから中央通信ユニットに送信された着信信号を使用して消費者製品を制御する、段落Aに記載のシステム。
C.消費者製品が、エアフレッシュナーデバイス、空気清浄化デバイス、歯ブラシ、カミソリ、おむつ、女性用ケア製品、クリーニング器具、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、段落A又は段落Bに記載のシステム。
D.複数のカーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、段落A~Cのいずれかに記載のシステム。
E.複数のカーボンナノチューブが、一連の平行層に結合され、任意に、架橋カーボンナノチューブが、厚さ方向導電率より大きい面内導電率を有する、段落A~Dのいずれかに記載のシステム。
F.リンカーが、構造*-A-*の部分を有する共役リンカーであり、Aが、1つ以上のアリール又はヘテロアリール環を含む二価共役系であり、*が、カーボンナノチューブへの結合点である、段落A~Eのいずれかに記載のシステム。
G.Aが、
【0005】
【化1】
であり、
式中、
各環Bが、独立して、任意に置換されているアリール又はヘテロアリールであり、
環Cが、任意に置換されているポルフィリン環であり、
nが、1~5の整数であり、
*が、
カーボンナノチューブへの結合点を示し、
任意に、各環Bが、独立して、
【0006】
【0007】
【化3】
であってもよく、
これらの各々が、任意に置換されていてもよく、Mが、Zn、Cu、Ni又はCoである、段落Fに記載のシステム。
H.1つ以上のアリール又はヘテロアリール環が、C
1~C
20アルキル、アミノ(アルキルアミノ及びジアルキルアミノを含む)、カルボン酸、アミノ-C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルキル-COOH、及び-NHC(S)(NH
2)、又は貴金属ナノ粒子、ポルフィリン、カリックス[4]アレーン、若しくはクラウンエーテルを含む置換基のうちの1つ以上で置換されている、段落Gに記載のシステム。
I.リンカーが、構造:
【0008】
【化4】
の部分を有する共役リンカーであり、式中、Mが、Zn、Cu、Ni又はCoである、段落A~Hのいずれかに記載のシステム。
J.リンカーが、構造
*-Y-
*の部分を有する剛性リンカーであり、式中、Yが、多価剛性系であり、
*が、カーボンナノチューブへの結合点である、段落A~Iのいずれかに記載のシステム。
K.Yが、シクロアルキル基又はポリ八面体シルセスキオキサンを含む、段落Jに記載のシステム。
L.複数のカーボンナノチューブがフィルムを形成しており、フィルムが基板上に提供されている、段落A~Kのいずれかに記載のシステム。
M.フィルムが約1nm~約500nmの厚さを有する、段落Lに記載のシステム。
N.無線通信リンクが、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee、6 LoWPAN、Thread、メッシュネットワーク、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、段落A~Mのいずれかに記載のシステム。
O.センサを備える消費者製品であって、センサが、複数のカーボンナノチューブと、隣接するカーボンナノチューブを共有結合させる少なくとも1つのリンカーと、を含む架橋カーボンナノチューブネットワークを含む、消費者製品。
P.消費者製品が、エアフレッシュナーデバイス、空気清浄化デバイス、歯ブラシ、カミソリ、おむつ、女性用ケア製品、クリーニング器具、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、段落Oに記載の消費者製品。
Q.複数のカーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、段落O又は段落Pに記載の消費者製品。
R.複数のカーボンナノチューブが、一連の平行層に結合されており、任意に、架橋カーボンナノチューブが、厚さ方向導電率より大きい面内導電率を有する、段落O~Qのいずれかに記載の消費者製品。
S.リンカーが、構造
*-A-
*の部分を有する共役リンカーであり、式中、Aが、1つ以上のアリール又はヘテロアリール環を含む二価共役系であり、
*が、カーボンナノチューブへの結合点である、段落O~Rのいずれかに記載の消費者製品。
T.Aが、
【0009】
【化5】
であり、
式中、
各環Bが、独立して、任意に置換されているアリール又はヘテロアリールであり、
環Cが、任意に置換されているポルフィリン環であり、
nが、1~5の整数であり、
*が、
カーボンナノチューブへの結合点を示し、
任意に、各環Bが、独立して、
【0010】
【0011】
【化7】
であってもよく、
これらの各々が、任意に置換されていてもよく、式中、Mが、Zn、Cu、Ni又はCoである、段落Sに記載の消費者製品。
U.1つ以上のアリール又はヘテロアリール環が、C
1~C
20アルキル、アミノ(アルキルアミノ及びジアルキルアミノを含む)、カルボン酸、アミノ-C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルキル-COOH、及び-NHC(S)(NH
2)、又は貴金属ナノ粒子、ポルフィリン、カリックス[4]アレーン、若しくはクラウンエーテルを含む置換基のうちの1つ以上で置換されている、段落Tに記載の消費者製品。
V.リンカーが、構造:
【0012】
【化8】
の部分を有する共役リンカーであり、式中、Mが、Zn、Cu、Ni又はCoである、段落O~Uのいずれかに記載の消費者製品。
W.リンカーが、構造
*-Y-
*の部分を有する剛性リンカーであり、式中、Yが多価剛性系であり、
*が、カーボンナノチューブへの結合点である、段落O~Vのいずれかに記載の消費者製品。
X.Yが、シクロアルキル基又はポリ八面体シルセスキオキサンを含む、段落Wに記載の消費者製品。
Y.複数のカーボンナノチューブがフィルムを形成し、フィルムが基板上に提供される、段落O~Xのいずれかに記載の消費者製品。
Z.フィルムが、約1nm~約500nmの厚さを有する、段落Yに記載の消費者製品。
AA.センサからの着信信号に基づいて消費者製品の動作を制御する方法であって、着信信号が、標的ガスの濃度を識別し、センサ及び消費者製品が各々、中央通信ユニットと通信可能に接続可能であり、中央通信ユニットが、設定点を保存することができるメモリと通信可能に接続され、センサが、複数のカーボンナノチューブと、隣接するカーボンナノチューブを共有結合させる少なくとも1つのリンカーと、を含む架橋カーボンナノチューブネットワークを含み、リンカーが、カーボンナノチューブに直接共役した共役系を含み、方法が、
標的ガスの濃度設定点をメモリに設定するステップと、
センサを用いて標的ガスを識別して標的ガスの濃度を測定するステップと、
センサから中央通信ユニットに着信信号を送信するステップであって、着信信号が、標的ガスの濃度測定値を含む、送信するステップと、
濃度測定値を標的ガスの濃度設定点と比較するステップと、
標的ガスを軽減又は増強するための1つ以上の消費者製品を識別するステップと、を含む、方法。
BB.濃度測定値が標的ガスの濃度設定点とは異なる場合、消費者製品の動作を調整するステップを更に含む、段落AAに記載の方法。
CC.センサが、複数の標的ガスを識別及び測定することができるアレイとして構成される、段落AA又は段落BBに記載の方法。
DD.標的ガスを増強又は軽減することができる消費者製品の使用法についてユーザに通知するステップを更に含む、段落AA~CCのいずれかに記載の方法。
EE.中央通信ユニットが、2つ以上の消費者製品と通信し、方法が、
第1の標的ガスとは異なる第2の標的ガスの第2の濃度設定点をメモリに設定するステップと、
センサを用いて第2の標的ガスを識別して第2の標的ガスの濃度を測定するステップと、
センサから中央通信ユニットに第2の着信信号を送信するステップであって、着信信号が、第2の標的ガスの第2の濃度測定値を含む、送信するステップと、
標的ガスの第2の濃度測定値を第2の濃度設定点と比較するステップと、
第2の濃度測定値が第2の標的ガスの第2の濃度設定点とは異なる場合、第2の消費者製品をオンにするための、オフにするための、又はその動作を調整するための第2の発信命令を消費者製品に送信するステップと、を更に含む、段落AA~DDのいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】中央通信ユニットと、センサと、消費者製品と、を有するシステムを示す。
【
図2】CCU(中央通信ユニット)の配置とは異なる部屋における、消費者製品及びセンサの配置を示す。
【
図4(a)】単層カーボンナノチューブの、(a)還元溶解及び共役リンカー前駆体との架橋、並びに(b)カーボンナノチューブ及びリンカーの交互層による分子層堆積を概略的に示す。
【
図4(b)】単層カーボンナノチューブの、(a)還元溶解及び共役リンカー前駆体との架橋、並びに(b)カーボンナノチューブ及びリンカーの交互層による分子層堆積を概略的に示す。
【
図5】ハウジング内に配置されたプロセッサ及びメモリを有する、例示的なCCUを示す。
【
図6】リモートメモリへの着信信号の複数の例示的なフローを示す。
【
図7】消費者製品及び/又はスマートデバイスの動作をセンサからの測定値と合体する例示的なアルゴリズムを示す。
【
図8】2つ以上のユーザインターフェースを有する例示的なシステムを示す。
【
図9(a)】(a)架橋及び堆積プロセスの概略図、(b)ガラス基板上に堆積されたエアロゲルフィルムのデジタル写真、(c)エアロゲル薄膜フィルムの紫外可視スペクトル、(d、e)エアロゲルフィルムの瘢痕縁部の原子間力顕微鏡高さ画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図9(b)】(a)架橋及び堆積プロセスの概略図、(b)ガラス基板上に堆積されたエアロゲルフィルムのデジタル写真、(c)エアロゲル薄膜フィルムの紫外可視スペクトル、(d、e)エアロゲルフィルムの瘢痕縁部の原子間力顕微鏡高さ画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図9(c)】(a)架橋及び堆積プロセスの概略図、(b)ガラス基板上に堆積されたエアロゲルフィルムのデジタル写真、(c)エアロゲル薄膜フィルムの紫外可視スペクトル、(d、e)エアロゲルフィルムの瘢痕縁部の原子間力顕微鏡高さ画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図9(d)】(a)架橋及び堆積プロセスの概略図、(b)ガラス基板上に堆積されたエアロゲルフィルムのデジタル写真、(c)エアロゲル薄膜フィルムの紫外可視スペクトル、(d、e)エアロゲルフィルムの瘢痕縁部の原子間力顕微鏡高さ画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図9(e)】(a)架橋及び堆積プロセスの概略図、(b)ガラス基板上に堆積されたエアロゲルフィルムのデジタル写真、(c)エアロゲル薄膜フィルムの紫外可視スペクトル、(d、e)エアロゲルフィルムの瘢痕縁部の原子間力顕微鏡高さ画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図10(a)】(a)統計的ラマン分光法、(b)モノリシックエアロゲルの熱重量分析を示す。
【
図10(b)】(a)統計的ラマン分光法、(b)モノリシックエアロゲルの熱重量分析を示す。
【
図11(a)】(a)受信時のHiPco SWCNT及びエアロゲル薄膜フィルムのフルXPS調査、(b)SWCNT-アニリンの高分解能スキャン、(c)SWCNT-フェニルC1sピーク及び対応するピーク当てはめ、(d)SWCNT-アニリンエアロゲルフィルムのN1sピークの高分解能スキャン、並びに(e)SWCNT-フェニルのI3dピークを示す。
【
図11(b)】(a)受信時のHiPco SWCNT及びエアロゲル薄膜フィルムのフルXPS調査、(b)SWCNT-アニリンの高分解能スキャン、(c)SWCNT-フェニルC1sピーク及び対応するピーク当てはめ、(d)SWCNT-アニリンエアロゲルフィルムのN1sピークの高分解能スキャン、並びに(e)SWCNT-フェニルのI3dピークを示す。
【
図11(c)】(a)受信時のHiPco SWCNT及びエアロゲル薄膜フィルムのフルXPS調査、(b)SWCNT-アニリンの高分解能スキャン、(c)SWCNT-フェニルC1sピーク及び対応するピーク当てはめ、(d)SWCNT-アニリンエアロゲルフィルムのN1sピークの高分解能スキャン、並びに(e)SWCNT-フェニルのI3dピークを示す。
【
図11(d)】(a)受信時のHiPco SWCNT及びエアロゲル薄膜フィルムのフルXPS調査、(b)SWCNT-アニリンの高分解能スキャン、(c)SWCNT-フェニルC1sピーク及び対応するピーク当てはめ、(d)SWCNT-アニリンエアロゲルフィルムのN1sピークの高分解能スキャン、並びに(e)SWCNT-フェニルのI3dピークを示す。
【
図11(e)】(a)受信時のHiPco SWCNT及びエアロゲル薄膜フィルムのフルXPS調査、(b)SWCNT-アニリンの高分解能スキャン、(c)SWCNT-フェニルC1sピーク及び対応するピーク当てはめ、(d)SWCNT-アニリンエアロゲルフィルムのN1sピークの高分解能スキャン、並びに(e)SWCNT-フェニルのI3dピークを示す。
【
図12(a)】(a)未加工のSWCNT粉末及び(b~d)架橋エアロゲルモノリス(孔径分布挿入図)のN2吸着/脱着等温線を示す。
【
図12(b)】(a)未加工のSWCNT粉末及び(b~d)架橋エアロゲルモノリス(孔径分布挿入図)のN2吸着/脱着等温線を示す。
【
図12(c)】(a)未加工のSWCNT粉末及び(b~d)架橋エアロゲルモノリス(孔径分布挿入図)のN2吸着/脱着等温線を示す。
【
図12(d)】(a)未加工のSWCNT粉末及び(b~d)架橋エアロゲルモノリス(孔径分布挿入図)のN2吸着/脱着等温線を示す。
【
図13(c)】(c)架橋なしの、及び(d、e)架橋ありのエアロゲルフィルムの走査型電子顕微鏡画像を示す。
【
図13(d)】(c)架橋なしの、及び(d、e)架橋ありのエアロゲルフィルムの走査型電子顕微鏡画像を示す。
【
図13(e)】(c)架橋なしの、及び(d、e)架橋ありのエアロゲルフィルムの走査型電子顕微鏡画像を示す。
【
図14a)】a)1層、b)架橋なしの2層、及びc)還元的架橋ステップを伴う2層からなるSWCNT薄膜フィルムのヘリウムイオン顕微鏡画像を示す。
【
図14b)】a)1層、b)架橋なしの2層、及びc)還元的架橋ステップを伴う2層からなるSWCNT薄膜フィルムのヘリウムイオン顕微鏡画像を示す。
【
図14c)】a)1層、b)架橋なしの2層、及びc)還元的架橋ステップを伴う2層からなるSWCNT薄膜フィルムのヘリウムイオン顕微鏡画像を示す。
【
図15a)】ヘリウムイオン顕微鏡画像のピクセル閾値化を示す。
【
図15b)】ヘリウムイオン顕微鏡画像のピクセル閾値化を示す。
【
図15c)】ヘリウムイオン顕微鏡画像のピクセル閾値化を示す。
【
図16a)】a)単層、b)2層(非架橋)、及びc)架橋2層フィルムのAFM画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図16b)】a)単層、b)2層(非架橋)、及びc)架橋2層フィルムのAFM画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図16c)】a)単層、b)2層(非架橋)、及びc)架橋2層フィルムのAFM画像及び対応する高さプロファイルを示す。
【
図17a)】a)単層フィルム及び2層フィルムの紫外可視吸収、b)1~10層からの多層フィルム、及びc)透過率対層数の対応するプロットを示す。
【
図17b)】a)単層フィルム及び2層フィルムの紫外可視吸収、b)1~10層からの多層フィルム、及びc)透過率対層数の対応するプロットを示す。
【
図17c)】a)単層フィルム及び2層フィルムの紫外可視吸収、b)1~10層からの多層フィルム、及びc)透過率対層数の対応するプロットを示す。
【
図18a)】a)SWCNTフィルムの単一点ラマンスペクトル、及びb)25点ラマンマップスキャンの統計的分析を示す。
【
図18b)】a)SWCNTフィルムの単一点ラマンスペクトル、及びb)25点ラマンマップスキャンの統計的分析を示す。
【
図19(a)】(a)アンモニア、(b)DMEA、(c)TEAという異なる揮発性アミンに対する架橋カーボンナノチューブネットワークの応答を示し、網掛け領域は、ガス分析物への曝露を示す。
【
図19(b)】(a)アンモニア、(b)DMEA、(c)TEAという異なる揮発性アミンに対する架橋カーボンナノチューブネットワークの応答を示し、網掛け領域は、ガス分析物への曝露を示す。
【
図19(c)】(a)アンモニア、(b)DMEA、(c)TEAという異なる揮発性アミンに対する架橋カーボンナノチューブネットワークの応答を示し、網掛け領域は、ガス分析物への曝露を示す。
【
図20(a)】(a)高濃度のAcOHに対するセンサ応答、(b)より低濃度のAcOHに対する応答、及び(c)ppb域のIVAを示す。
【
図20(b)】(a)高濃度のAcOHに対するセンサ応答、(b)より低濃度のAcOHに対する応答、及び(c)ppb域のIVAを示す。
【
図20(c)】(a)高濃度のAcOHに対するセンサ応答、(b)より低濃度のAcOHに対する応答、及び(c)ppb域のIVAを示す。
【
図21】各ガス(動的範囲)についての濃度に対する動的範囲の抵抗変化を示す。
【
図22】(左)アニリン架橋MNDフィルムの概略図、及び、(右)AcOH蒸気の上昇する濃度に対する6層フィルムの線形範囲及び感知応答(挿入図)を示し、理論的検出限界(LoD)が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の消費者製品、システム、及び方法がより完全に記載されるが、当業者であれば、本開示に記載される好ましい結果を依然として達成しながら、本明細書に記載の方法及びシステムを修正してもよいことを、以下の説明の冒頭で理解されたい。したがって、以下の説明は、当業者を対象とした広範な教示開示であり、本開示を限定するものとして理解されるべきではない。
【0015】
本発明のシステム、方法、及びデバイスは、高度に選択的かつ高感度のセンサを備える。センサは、標的ガスの存在を検出するために使用されてもよい。標的ガスは、ユーザが、エアフレッシュナーデバイス又は空気清浄化デバイスなどの1つ以上の消費者製品の存在をマスキング、除去、又は低減することのいずれかによって軽減することを望むことがある、望ましくないガスであってもよい。標的ガスは、ユーザがエアフレッシュナーデバイスなどの消費者製品の存在を増強又は増加させることを望む揮発性香料原料などの望ましいガスであってもよい。センサは、消費者製品と一体であってもよく、又はコントローラ、ユーザ若しくはユーザインターフェース、及び/若しくは消費者製品と無線通信する別個の構成要素として存在してもよい。
【0016】
消費者製品は、CCUと又は直接センサと通信することができるスマート消費者製品であってもよい。消費者製品はまた、条件が満たされたことをセンサがユーザに知らせると、ユーザの介入を必要とすることがある。
【0017】
システム及び方法は、1つ以上の消費者製品104及び/又は1つ以上のセンサと通信可能に接続可能な中央通信ユニット(CCU)を備えてもよい。CCUは、スマートフォン、コンピュータ、タブレット、サーモスタットなどの形態であってもよい。
図1は、無線通信リンク107を介してCCU 102と各々通信する、中央通信ユニット102と、1つ以上の消費者製品104と、1つ以上のセンサ106と、を含む、例示的な非限定的なシステム100を示す。
【0018】
例えば、センサ106は、着信信号をCCU 102に送信してもよい。センサ106からの着信信号に応答して、CCUは、消費者製品104に発信命令を送信して、消費者製品をオン若しくはオフにするか、又は消費者製品の動作を調整してもよい。例えば、センサ106が特定の標的ガスの存在及び濃度に関する着信信号をCCUに送信し、CCUが標的ガスに関する着信信号の値をその特定の標的ガスの設定点と比較する場合、CCUは、着信信号の値が標的ガスの設定点よりも高いか低いかに応じて、その特定の標的ガスのレベルを軽減又は増強させるために、消費者製品104に発信命令を送信してもよい。
【0019】
以下でより詳細に論じられるように、CCUは、設定点及びアルゴリズムを保存することができるメモリと、アルゴリズムを実行し、メモリから保存された設定点にアクセスすることができるプロセッサと、を備えてもよい。所望の結果に応じて様々なアルゴリズムをプログラムしてもよい。
【0020】
センサ及び消費者製品は、建物の内部又は外部の任意の場所に配置されてもよい。センサ及び消費者製品は、システムの他の構成要素と同じ部屋に配置されてもよく、システムの構成要素は、1つ以上の異なる部屋に配置されてもよい。
図2を参照すると、非限定的な例示的な例において、消費者製品104は、センサ106と同じ部屋に配置されてもよく、CCU 102とは異なる場所に配置されてもよい。消費者製品104及び/又はセンサ106は、ユーザの都合に応じて異なる部屋に移動可能であってもよい。システムは、建物内の様々な場所又は部屋に位置決めされた複数のセンサを備えてもよい。システムはまた、複数の消費者製品を備えてもよい。
【0021】
システムはまた、電化製品(冷蔵庫、洗濯機、ドライヤー、ストーブ、電子レンジ)、ファン、照明、電気コンセント、スイッチ、テレビ、HVACシステム、スピーカ、セキュリティシステム、ベビーモニタ、ガレージドアオープナー、ドアベル、カメラ、スマートウォッチ又はベビー睡眠モニタなどのウェアラブルなどの、建物に配置される追加のスマートデバイス109を備えてもよい。
【0022】
センサ
システム100は、センサ106を備えてもよい。センサ106は、対象の標的ガスの存在及びその濃度を測定するように構成されてもよい。対象の標的ガスは、ユーザが軽減することを望むことがある望ましくない対象の標的ガスであってもよく、又は対象の標的ガスは、ユーザが所望の濃度で増強又は維持することを望むことがある望ましいものであってもよい。望ましくない対象のガスを検出し、望ましい対象のガスから区別できることが望ましいことがある。対象の標的ガスは、トリメチルアミンなどのアミン(例えば、尿、魚臭由来)、アルデヒド/ケトン、例えば、2-ノネナール、ノナナール、オクタナール、ホルムアルデヒド、1-オクテン-3-オン、及び3-オクタノン(例えば、芳香剤成分由来)、酸、例えば、酢酸、イソ吉草酸、及びミリスチン(例えば、体臭、タバコ/葉巻の煙、ベーコン脂、及びペットの臭い由来)、アルコール、例えば、1-ドデカナール、1-オクテン-3-オール、3-メチル-1-ブタノール、及び2-メチルイソボルネオール(例えば、カビ/ウドンコ菌由来)、硫黄、例えば、ジメチルジスルフィド(例えば、ごみ、浴室、ペット由来)、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、ナフタレン、及びゲオスミン(例えば、タバコ/葉巻の煙及びベーコン脂由来)、アルケン、例えば、1-ペンタデセン、ラクトン、例えば、5-H-フラン-2-オン、ウンデカラクトン、NO2などの有害な空気の質のガス、などを含んでもよい。望ましい標的ガスは、アルデヒド、ケトン、エステル、アルコールなどの香料原料を含んでもよい。望ましい対象の標的ガスは、空気中の香料混合物の濃度を測定するためのマーカーとして使用してもよい。すなわち、対象の標的ガスの測定を使用して、空気中の香料混合物の総濃度を計算してもよい。
【0023】
システムは、温度、相対湿度、屋内の空気の質、屋外の空気の質、騒音、人間の存在、動き、室内の空気速度、空気中の粒子濃度、アレルゲン、及び/又は人間の健康に影響を及ぼす他の空中物質も測定するセンサを備えてもよい。
【0024】
これらのセンサソースの任意の及び/又は全ての組み合わせ、並びに標的ガスセンサ又は標的ガスセンサのアレイ(各々が固有の標的ガスを検出する複数のセンサ)からのデータを組み合わせることによって、空気の組成のより正確な予測を行い得ることが示された。例えば、人の動きを検出し、温度/湿度の上昇と共にストーブ上の調理の音を聞くことによって、固有の標的ガス感知及び粒子感知と共に、保存された知識ベースのアルゴリズムに基づいて、人が調理をしているとき、及び調理に関連付けて空気中に何の臭い又は化学物質があるかを正確に予測することができる。次いで、このセンサデータは、特定の臭気又は空気質事象を管理する方法に関するより正確な情報又は示唆をユーザに与えることができる。別の非限定的な例では、室内のより高い空気流並びに標的ガス及び微粒子感知と組み合わされた屋外音を検出することにより、窓が開いており、特定の事象が起こっている(例えば、森林火災の煙)か、又は固有の屋外汚染が屋内空間に入っていることを判定することができる。
【0025】
センサで認識され得る対象の特定の音としては、限定はしないが、ストーブ、オーブン、又は電子レンジによる調理、ペット(例えば、吠え声)、トイレの水洗、街頭騒音(例えば、車/交通)、人の存在及び人数、ドアの開閉、ファンの動作、テレビ又はラジオ、HVACの動作が挙げられる。特に、人間は、人の存在又は人が話していることを認識する能力を有するが、アルゴリズムは、プライバシーを保護するために、音声認識を実際に使用しないように、又は人が何を話しているかを記録しないように設計することができる。これは、音のタイプを監視するが、何が言われているかを監視又は解読しないことによって行うことができる。
【0026】
別の例では、空気流感知を用いて、窓が開いているか、ドアが開いているか、天井ファンが動作しているかを判定することができ、又はHVACユニット若しくは部屋内空気循環ファンが動作しているときを決定することができる。更に、Breezometerのような会社から入手可能なデータなど、家庭又は場所についての屋外の空気の質についてのデータを活用して、任意の特定の家庭又は企業の外部の空気の屋外の空気の質、花粉レベル、温度、湿度を予測することができる。
【0027】
センサデータ(例えば、騒音、空気流、空気の質)のこれらの異なるソースを標的ガスセンサと組み合わせるとき、必要とされる任意の是正措置について、消費者又は別のデバイスに対してより多くの情報による推奨を行うことができる。是正措置の非限定的な例は、消費者がキッチンベントをオンにすること、空気清浄機をオンにすること、空気清浄機又はHVACのフィルタを交換すること、窓を開けること、ファン/HVACをオンにすること、エアフレッシュナーを噴霧すること、又は全てのこれらのソースからの様々なセンサデータに基づく任意の数の措置、及びこれらの組み合わせであり得る。センサ106は、無線通信リンクを通してCCU及び/又はシステムの様々な構成要素と通信可能に接続可能であるために、無線通信モジュールを含んでもよい。
【0028】
センサ106は、電源によって電力供給されてもよい。センサ106は、消費者製品から独立して、又は消費者製品の同じ電源を通して電力供給されてもよい。センサ106は、独立して電力供給されてもよい。センサは、電池駆動式であってもよいし、電気コンセントを介して電力供給されてもよい。
【0029】
センサは、センサ測定値を着信信号の形態でCCUに送信するように構成されてもよい。センサ測定値は、様々な方法で使用することができる。例えば、センサ測定値は、生データとして見ることができ、空気処理デバイスを制御するための標的ガス濃度設定点などの設定点と比較することができ、又は、快適性及びエネルギー効率を考慮に入れて最適な設定点を推奨するための更なる分析のためにデータベースに保存することができる。
【0030】
図3は、構成要素からCCUへの信号の複数の可能なフローを示す。センサ測定値は、生ローカルセンサ測定値のために、構成要素からCCUを通ってユーザインターフェースに流れることができる。センサ測定値はまた、センサからCCUを通ってインターネット上の送信先サーバに渡されてもよく、そこで、消費者製品104及び/又はスマートデバイスを含むがこれらに限定されない様々な構成要素に命令を送信するために、メモリに保存されるか、又はプロセッサによって分析される。センサ測定値はまた、センサからCCUを通って消費者製品104に渡されてもよい。
【0031】
センサは、様々な異なる方法で構成されてもよい。センサは、空間全体にわたって移動可能なスタンドアロンデバイス又はユニットであってもよい。センサは、消費者製品又はスマートデバイスなどの別のデバイスに組み込まれてもよい。
【0032】
還元溶解は、sp
2π系を損傷することなく、高い質量負荷で高度に個別化されたカーボンナノチューブ溶液への経路を提供する。(Clancy,A.J.et al.Charged Carbon Nanomaterials:Redox Chemistry of Fullerenes,Carbon Nanotubes,and Graphenes.Chem.Rev.118,7363-7408(2018)、この全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。このような溶液は、例えばハロゲン化アルキル及びハロゲン化アリールとのグラフト反応し、結合部位の効率的な結合を可能にする。例えば、ビアリールハロゲン化物は、隣接するカーボンナノチューブを架橋するために利用されてもよく、十分に画定された細孔構造を有する高比表面積を示す自立三次元ネットワークをもたらす(
図4)。
【0033】
本明細書に記載されるように、架橋化学は、架橋カーボンナノチューブエアロゲル薄膜フィルムを達成するように適合された。薄いエアロゲル構造は、利用可能な多孔性への迅速なアクセスを伴う大きな活性表面積を有するセンサ材料を提供する。この戦略を通して、両方のガス(揮発性酸及びアミンなど)の検出の下限が実証された。
【0034】
薄膜フィルムエアロゲル構造は、高い表面積及びアクセス可能な多孔性から、ガス感知用途に理想的に適していると仮定される。
【0035】
追加の増強は、表面官能化を通して付与され得る。報告された固有の構造は、作為的な表面改質を通じて他のガス分子の特異的感知に更に適用してもよい。
【0036】
したがって、本発明は、架橋カーボンナノチューブネットワークを調製するためのプロセスであって、
複数の還元されたカーボンナノチューブを提供することと、
還元されたカーボンナノチューブを共役リンカー前駆体と反応させて、共役リンカー前駆体から形成されたリンカーによって共有結合されたカーボンナノチューブを含む架橋カーボンナノチューブネットワークを共有結合的に形成することであって、リンカーは、それが共有結合するカーボンナノチューブに直接結合された共役系を含む、架橋カーボンナノチューブネットワークを共有結合的に形成することと、を含む、プロセスを提供する。
【0037】
還元されたカーボンナノチューブを調製する方法は、当業者に知られている。例えば、方法は、Clancy,A.J.et al.Charged Carbon Nanomaterials:Redox Chemistry of Fullerenes,Carbon Nanotubes,and Graphenes.Chem.Rev.118,7363-7408(2018)に記載されている。
【0038】
還元されたカーボンナノチューブは、親カーボンナノチューブを還元剤で処理することによって調製することができる。
【0039】
還元剤は、I族又はII族の金属を含んでもよい。還元されたカーボンナノチューブを調製するために、I族金属(アルカリ金属)を使用することができる。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム又はこれらの合金を含んでもよい。カーボンナノチューブは反応して、付随する対イオンと還元種を形成する。金属は、蒸気、溶融金属、アマルガム、共晶合金又はプラズマとして導入することができる。II族金属(アルカリ土類金属)もまた、使用してもよい。
【0040】
溶媒和還元もまた使用してもよく、すなわち、カーボンナノチューブを溶媒の存在下、還元剤で処理してもよい。例えば、アルカリ金属をバーチ還元のために液体アンモニアに溶解することができる。
【0041】
還元剤は、電荷移動剤を更に含んでもよい。電荷移動剤は、エレクトライド形成を支持する薬剤である。電荷移動剤は芳香族を含んでもよい。そのような電荷移動剤の例は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル、アズレン又はこれらの組み合わせである。好ましくは、電荷移動剤はナフタレンである。
【0042】
還元に使用する溶媒は、好ましくは非プロトン性、例えばエーテル、アミド若しくはアミン溶媒、又はこれらの混合物であってもよい。エーテルは、アルキル又はシクロアルキルエーテルを含んでもよい。例示的なエーテルとしては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパン、1,3-ジメトキシプロパン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシプロパン、12-クラウン-4エーテル、15-クラウン-5エーテル、18-クラウン-6エーテル又はこれらの組み合わせが挙げられる。アミン溶媒が使用されてもよく、第三級アミンを含んでもよい。有用なアミンは、第三級アルキル又はシクロアルキルアミンを含んでもよい。例示的なアミンとしては、n-メチルピペリジン、n-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、又はこれらの組み合わせを含む第三級アミンが挙げられる。アミド溶媒を使用してもよい。例示的なアミドとしては、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。アミド溶媒は、好ましくはアルカリ金属に対して不活性である必要がある。溶媒はまた、電荷移動剤及び還元されたカーボンナノチューブ(還元剤での処理によって形成される)の両方の存在下で安定である必要がある。好ましいアミド系溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0043】
有機金属(例えば、n-BuLi及びC3H7NHLi)を使用してカーボンナノチューブを還元し、同時に有機基で官能化して、異なる表面部分の付加を可能にしてもよい。したがって、還元剤は、本明細書で定義される有機金属、好ましくはアルカリ金属有機金属であってもよい。
【0044】
カーボンナノチューブの還元は、代替的に電気化学的に行うことができ、これは、適切な溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、DMF)が使用される場合、カーボンナノチューブの還元と還元されたカーボンナノチューブの溶解とを同時に行うという利点を有する。
【0045】
好ましくは、還元されたカーボンナノチューブは溶液中で提供される。好ましくは、溶媒は上記のような極性非プロトン性溶媒である。好適な溶媒としては、N-N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(CHP)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルアセトアミド(DMAc)が挙げられる。カーボンナノチューブの同時還元及び溶解、すなわち還元溶解が有利なことがある。還元溶解は、ナノチューブの電気的特性が処理中に保存されるので、架橋ナノチューブのフィルムを製造するための好ましい方法である。
図4(a)を参照のこと。還元溶解は、高い還元されたカーボンナノチューブ濃度を達成するとともに抜群に優れた特性を保持し得る。
【0046】
N-N-ジメチルアセトアミドは、特に還元溶解の場合、還元されたカーボンナノチューブを安定化させることができるので、好ましい溶媒である。
【0047】
本発明によるカーボンナノチューブという用語は、実質的にsp2結合した炭素原子から作られたナノスケールチューブを指し、チューブになるように巻き付けられるか又はカールされたグラファイト基底面に基づく構造を有する。カーボンナノチューブは、任意のタイプのナノチューブであってもよく、すなわち、ナノメートルスケールで少なくとも1つの寸法測定値を有する任意の中空チューブ状構造であってもよい。
【0048】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2層カーボンナノチューブ又は3つ以上の層を有する多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、好ましくはSWCNT又は2層カーボンナノチューブであってもよい。好ましくは、カーボンナノチューブはSWCNTであり、したがって、還元されたカーボンナノチューブ種はナノチューバイド(SWCNTn-)である。
【0049】
本発明のナノチューブにおいて使用されるカーボンナノチューブは、約0.5nm~約50nm、例えば約0.5nm~約20nm、約0.7nm~約10nm、例えば約0.8nm~約2nmの最小内径測定値を有してもよい。小径カーボンナノチューブは、本明細書において、壁の数に関係なく、最大で約3nmの直径を有するカーボンナノチューブとして定義される。ナノチューブは任意の長さのものであってもよい。例えば、ナノチューブは、約5nm~約500μm、好ましくは約10nm~約100,000nm、好ましくは約100nm~約10,000nmの長さを有してもよい。好ましくは、本明細書で調製されるネットワーク中のナノチューブの75重量%超が、直前に記載された範囲の寸法を有する。
【0050】
カーボンナノチューブの寸法は、顕微鏡法(例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)又は透過型電子顕微鏡法(TEM)又は分光法、例えば、ラマン分光法又は吸光度/蛍光分光法)によって決定されてもよい。カーボンナノチューブは、測定される分布に影響を及ぼさない任意の好適な方法で分散されてもよい。例えば、還元溶解を使用してもよい。溶解され、基板(例えば、シリコンウェハ)上に堆積されると、長さ分布は、AFMで試料を撮像し、撮像されたCNTの長さを直接測定することによって確証し得る。同様に、直径分布は、試料をTEMで撮像し、存在する種の直径を決定することによって測定されてもよい。直径は、AFM(高さ測定を使用して)によって、ラマン分光法によって(いわゆる「ブリージングモード」振動数を介して)測定され得るか、又は可視/近赤外範囲における吸光度/蛍光分光法から推測され得る。
【0051】
還元されたカーボンナノチューブを共役リンカー前駆体と反応させて、共有結合的に架橋カーボンナノチューブネットワークを形成する。カーボンナノチューブネットワークは、共役リンカー前駆体から形成されたリンカーによって互いに共有結合したカーボンナノチューブを含む。リンカーは、カーボンナノチューブに直接結合した共役系を含む。リンカーは、リンカーとカーボンナノチューブとの間に非共役部分が存在しないように、カーボンナノチューブに直接結合する。したがって、2つの共役系(リンカー及びそれに共有結合しているカーボンナノチューブ)は直接隣接している。
【0052】
共役リンカー前駆体は、還元されたカーボンナノチューブの壁と反応してC-C共有結合を形成し、ひいては共有結合的に架橋されたネットワークを形成することができる少なくとも2つの官能基を含む。好ましくは、少なくとも2つの官能基は、2つの異なるナノチューブと反応する機会を最大にするために、リンカー分子の異なる原子上に、より好ましくはいくらか離れて配置される。
【0053】
理解されるように、共役リンカー前駆体は、還元されたカーボンナノチューブと反応して、官能基のないリンカーを形成する。リンカーは、C-C結合を介してカーボンナノチューブに直接結合して、リンカーが共有結合するカーボンナノチューブと隣接する共役系を形成する。したがって、リンカーは多価部分である。
【0054】
直接結合では、介在部分は存在しない。例えば、共役リンカー前駆体は、還元されたカーボンナノチューブと反応して、介在部分が存在しない直接的なC-C結合を形成する。
【0055】
官能基は、リンカー前駆体が、例えばスキーム1に示されるような求電子置換反応によって、還元されたナノチューブの側壁と直接反応することを可能にする好適な脱離基であってもよい。
【0056】
スキーム1:共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを形成するための、還元されたカーボンナノチューブと共役リンカー前駆体(R-Br)との間の反応。
【0057】
【0058】
ナノチューブ側壁への共役リンカーの直接結合は、導電率を補助する共役ネットワークの作製に特に適している。リンカーは、それがナノチューブに直接結合される場合、2つの共役系が隣接し、その結果、隣接するナノチューブ間で共役がある程度維持され得るように共役される。
【0059】
共役リンカー前駆体(ひいてはリンカー)は、官能基の各々の間の連続的な共役を含む。共役リンカー前駆体は、官能基の各々の間の連続共役の周辺に非共役置換基を含んでもよい。好ましくは、共役リンカー前駆体は、官能基の各々の間で全体的に共役している。
【0060】
リンカーは、多価(例えば、二価)共役系であり、例えば、任意に置換されていてもよい1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環を含む。1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環は、互いに直接結合していてもよく、又は三結合価sp2炭素基を介して結合していてもよい。
【0061】
共役リンカー前駆体は、構造:
X-A’-X
の化合物であってもよく、
式中、A’が二価共役系であり、各Xが独立して好適な脱離基である。Xが、ハライド、スルホキシド、又はトシレートを含んでもよい。あるいは、Xがパーオキシド又はジスルフィド部分であってもよい。
【0062】
共役リンカー前駆体は、構造:
X-A-X
の化合物であってもよく、
式中、Aが、1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環を含む二価共役系であり、Aが任意に置換されていてもよく、各Xが独立して好適な脱離基である。Xが、ハライド、スルホキシド、又はトシレートを含んでもよい。
【0063】
Aが、2つ以上のアリール環又はヘテロアリール環を含んでいてもよく、その各々は、互いに直接結合していてもよく、又は三結合価sp2炭素基(例えば、メチン)を介して結合していてもよい。
【0064】
Aが、当該1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環と、任意による三結合価sp2炭素基と、当該1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環上に存在する任意による置換基とから本質的になってもよい。
【0065】
Aが、1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環を含む共役部分である。Aが、構造:
【0066】
【化10】
を有してもよく、
式中、各環Bは、独立して、任意に置換されているアリール又はヘテロアリールであり、nが1~5の整数であり、
*が各Xへの結合点を示す。
【0067】
Aがポルフィリン環を含んでもよい。例えば、Aが、構造:
【0068】
【化11】
を有してもよく、
式中、
各環Bが、独立して、任意に置換されているアリール又はヘテロアリールであり、
環Cが、任意に置換されているポルフィリン環であり、
nが、1~5の整数であり、
*が、各Xへの結合点を示す。
【0069】
理解されるように、共役リンカー前駆体は、還元されたナノチューブの側壁と反応して、隣接するナノチューブを架橋し、ナノチューブは、構造*-A-*(式中、*が、脱離基Xが存在しない各ナノチューブへの、すなわちリンカー前駆体構造への結合点を示す)を有する共役リンカーによって結合される。
【0070】
共役リンカー前駆体のリンカー部分(例えば、基A)は置換されていてもよい。このような置換が共役していることは必須ではない。ネットワークがガス感知用途で使用される場合、置換基は、標的ガスに応じて調整することができる。置換基は、標的ガスに対する結合親和性を調整するように選択することができる。
【0071】
例えば、アミノ置換基は、揮発性酸性ガスに対する結合親和性を増大させ得る。カルボン酸基を含む置換基は、アミンへの結合を増加させ得る。チオ尿素基は、ケトンの結合を増加させ得る。貴金属ナノ粒子は、水素感知を向上させ得る。金属化ポルフィリン置換基は、CO又はアミンに対する結合を増加させ得る。カリックス[4]アレーンは、芳香族炭化水素及び塩素化炭化水素の選択的検出のために使用してもよい。長いアルキル鎖(例えば、C1~C20アルキル)は、脂肪族炭化水素の吸着を増加させるためのものであってもよい。クラウンエーテル基は、水素結合塩基性によりアルコールの結合を増強するために使用されてもよい。
【0072】
可能な置換基としては、C1~C20アルキル、アミノ(アルキルアミノ及びジアルキルアミノを含む)、カルボン酸、アミノ-C1~C6アルキル、C1~C6アルキル-COOH、及び-NHC(S)(NH2)、又は貴金属ナノ粒子、ポルフィリン、カリックス[4]アレーン若しくはクラウンエーテルを含む置換基が挙げられる。
【0073】
還元されたカーボンナノチューブの表面と反応することができる追加の官能基を提供する置換基、例えば好適な脱離基を使用してもよい。
【0074】
1つ以上のアリール環又はヘテロアリール環を含む基Aが、任意に置換されていてもよい。Aが、1つ以上の好適な脱離基(ハライドなど)を含む本明細書で定義される置換基で、任意に置換されていてもよい。
【0075】
理解されるように、共役リンカー前駆体(例えば、A)が1つ以上の好適な脱離基(ハライドなど)で、任意に置換されている場合、好適な脱離基置換基は、還元されたカーボンナノチューブの表面と反応することができる官能基として機能してもよい。
【0076】
共役リンカー前駆体は、還元されたカーボンナノチューブの表面と反応することができる3つ以上の官能基を有してもよい。例えば、共役リンカー前駆体は、構造:
A-(-X)m
の化合物であってもよく、
式中、A及びXが本明細書で定義した通りであり、mは2以上の整数、例えば3又は4である。
【0077】
共役リンカー前駆体の組み合わせを本発明のプロセスにおいて使用してもよい。
【0078】
架橋カーボンナノチューブネットワーク中のリンカーは、例えば、ネットワークがガス感知用途において使用される場合、標的ガス分析物に対する増大した感度を提供することができる。リンカー構造の選択及びリンカー上の置換は、異なるガスに対する結合親和性の調整を可能にする。
【0079】
結合部分を変化させることは、得られるフィルム形態に有意に影響し得、特性の調整を可能にする。更に、架橋反応は、架橋カーボンナノチューブネットワークに追加の官能基を組み込む有用な経路を提供する。
【0080】
還元されたカーボンナノチューブと共役リンカー前駆体との間の架橋反応は、溶液中で実行され得る。例えば、還元されたカーボンナノチューブを溶解するために使用されるような極性非プロトン性溶媒である。
【0081】
架橋プロセスは、例えば、反応が反応溶媒の沸点未満の温度で実行される限り、任意の妥当な温度で実行されてもよく、反応を完了するのに必要な任意の長さの時間放置されてもよい。反応は、10℃~60℃、好ましくは15℃~30℃の温度で実行される。反応時間は、好ましくは0.1時間~50時間又はそれ以上である。
【0082】
反応の過程で、カーボンナノチューブは架橋してゲル相を形成する。「ゲル」は、乾燥プロセス中にその形状を保持する組成物を指し、当業者に知られている。ゲル相は、溶媒内で共有結合したナノチューブの連続ネットワークによって形成される。
【0083】
ゲル相中で共有結合架橋のプロセスを実行することによって、得られるカーボンナノチューブは、溶媒の除去中にそれらの構造的一体性を保持することができる。架橋反応は、微細孔構造の毛細管崩壊及び利用可能な表面積の低減をもたらすことがある溶媒蒸発を回避するために、飽和溶媒環境中で有利に実行され得る。
【0084】
プロセスは、基板の表面上に架橋カーボンナノチューブネットワークを堆積させることを更に含んでもよい。
【0085】
架橋反応を反応させることは、複数の還元されたカーボンナノチューブを共役リンカー前駆体と単一ステップで接触させることを含んでもよい。
【0086】
あるいは、架橋反応は、還元されたカーボンナノチューブを共役リンカー前駆体と接触させ、続いて更なる還元されたカーボンナノチューブと接触させて架橋カーボンナノチューブネットワークを形成する、2つ以上のステップを含んでもよい。プロセスは、例えば、以下の、
基板を提供するステップと、
基板の表面上に還元されたカーボンナノチューブを堆積させるステップと、
還元されたカーボンナノチューブを共役リンカー前駆体と接触させて、共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを形成するステップと、
共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを更なる還元されたカーボンナノチューブと接触させて、共役リンカー前駆体から形成されたリンカーによって共有結合的に結合されたカーボンナノチューブを含む架橋カーボンナノチューブネットワークを共有結合的に形成するステップであって、リンカーが、カーボンナノチューブに直接結合された共役系を含む、架橋カーボンナノチューブネットワークを共有結合的に形成するステップと、を含む、層ごとの堆積プロセスを含んでもよい。
【0087】
各接触ステップを繰り返して、三次元架橋カーボンナノチューブネットワークを構築してもよい。プロセスは、例えば、
架橋カーボンナノチューブネットワークを更なる共役リンカー前駆体と反応させ、次いで、得られた材料を更なる還元されたカーボンナノチューブと反応させるステップを更に含んでもよい。
【0088】
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のための層ごとの堆積(分子層堆積としても記載される)プロセスが
図4(b)に示される。第1のSWCNT層を、基板(例えば、シラン化ガラス)上にナノチューバイドを(例えば、スピンコーティングによって)堆積させる。次いで、この荷電層をリンカー前駆体の浴に浸漬し、表面電荷が枯渇するまで利用可能な表面を単官能化する。これにより、共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブが形成される。残留脱離基部分(例えば、ハライド)は、次のSWCNT層へのグラフト化のために共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブ上で利用可能である。モノグラフト化リンカーからバイグラフト化リンカーへの収率は、架橋剤分子の濃度が非常に高く、第1のグラフト化の反応速度が速くなるために高いと推測される。堆積されたSWCNTは、基板の官能化(例えば、ヨードプロピルシラン層)による共有結合相互作用の結果として、基板に有利に固定されてもよい。この立体制限は、リンカー前駆体が同じ層内のSWCNTを架橋しないことを確保するのに役立つことがある。モノグラフト化リンカーの層の堆積に続いて、過剰な試薬は、SWCNTの次の層が添加される前に、好適な溶媒(DMAcなど)中への浸漬によって除去され得る。溶液中の荷電ナノチューブは、リンカー前駆体から残っている残留脱離基と反応する。この反応は、SWCNTの第2の別個の層を形成し、これは、リンカーによって前のSWCNT層に共有結合される。SWCNTは、脱離基が使い尽くされるまで堆積され、堆積を単一層に制限する。各後続の架橋層の追加のためにサイクルを繰り返し、制御可能な厚さ及び透明度を有するフィルムを堆積させる。
【0089】
分子層堆積プロセスを使用することによって、カーボンナノチューブ結合(すなわち、架橋剤)が一連の平行層で接続されるように、架橋カーボンナノチューブネットワーク内に層ごとの構造を形成し得る。分子層堆積は、AFM及び紫外可視分光法で観察されるように、結果として生じる架橋カーボンナノチューブネットワークフィルムの厚さ及び透明度に対する高レベルの制御を可能にする。架橋カーボンナノチューブネットワークは、任意の以前から知られているプロセスとは異なり、(層状に組織化された)異方性ネットワークとして記載され得る。それは、多数の分子結合が並列に結び付けられることを可能にする。これらの結合部が分析物の存在下で「スイッチをオン」にする場合、高感度が予想される。分析物の存在下で「スイッチをオフ」にする場合、追加の層が感度を提供する。直列及び並列分子結合(及びプローブのいずれか)のバランスを調整する能力は、本発明の利点である。
【0090】
代替の実施形態では、共役架橋剤前駆体は、基板の表面上に堆積されてもよく、架橋カーボンナノチューブネットワークは、そこから構築されてもよい。
【0091】
架橋カーボンナノチューブネットワークは、基板上に堆積される。堆積は、例えば、ドロップキャスティング又はスピンコーティングによって実行することができる。堆積は、必要な任意の時間にわたって実行することができる。基板の存在下で架橋反応を実行することによって、架橋カーボンナノチューブネットワークは、それが形成されるときに堆積されてもよい。したがって、堆積は、架橋反応と同時に起こり得る。
【0092】
好ましくは、堆積は、架橋カーボンナノチューブが基板の表面上に形成されるように、架橋反応中に起こる。これは、基板の存在下で架橋反応を実行することによって達成され得る。これにより、均質なフィルムを形成することができる。
【0093】
有利なことに、層ごとの堆積プロセスは、高度に制御された様式で均質なフィルムを形成する基板の表面上の架橋カーボンナノチューブネットワークのその場での(in-situ)形成を可能にする。
【0094】
任意の好適な基板を使用してもよい。基板は不活性基板であってもよい。例えば、基板はガラス基板であってもよい。基板は、シリコンウェハ又はアルミナ基板などの非導電性金属酸化物であってもよい。
【0095】
基板は、好ましくは非導電性基板である。
【0096】
しかしながら、エアロゲルが金属接点(例えば、金属基板又はインジウムスズ酸化物などの導電性酸化物)上に堆積される、上から下への輸送測定を使用することも可能である。このような導電性基板は、多層構造に特に適していることがあり、その場合、厚さ方向の測定では意図された平行モード結合を使用する。この場合、ソース及びドレイン電極は薄膜フィルムの上部及び底部に位置決めされ、層方向輸送が測定されることを可能にする。
【0097】
基板は、例えば、架橋カーボンナノチューブネットワークによる基板の濡れを助けるために、堆積前に官能化されてもよい。基板の官能化はまた、堆積された架橋カーボンナノチューブネットワークの均質性を補助し得る。基板は、シラン材料で官能化されてもよく、すなわちシラン化されてもよい。好適なシラン材料としては、ハロ-アルコキシシラン又は(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)が挙げられる。好ましくは、シラン材料は、3-ヨードプロポキシシラン又は(3-ブロモプロピル)トリメトキシシランなどのハロ-アルコキシシランである。あるいは、官能化はチオールを用いて実行されてもよい。
【0098】
基板は、濡れを助けるために、堆積前に還元されたカーボンナノチューブで飽和されてもよい。例えば、プロセスは、堆積前に、基板を還元されたカーボンナノチューブと好適な時間接触させて、還元されたカーボンナノチューブの基板への吸着を、直接的に又は基板表面上の官能化を介して確保する初期ステップを含んでもよい。あるいは、基板を架橋剤前駆体で飽和させてもよい。これは、層ごとの堆積プロセスが使用される場合、特に有利である。
【0099】
本明細書に記載のプロセスは、任意の好適な条件下で実行してもよい。例えば、プロセスは、不活性条件下、例えばアルゴンガス下で実行してもよい。
【0100】
本明細書に記載されるプロセスは、光起電装置、センサ及び触媒から導電性インク及びコーティングまでの様々な潜在的な用途のためのフィルムを形成するために使用されてもよい。
【0101】
本発明のプロセスによって調製された架橋カーボンナノチューブネットワークも本明細書において提供される。架橋カーボンナノチューブネットワークは、
本明細書に記載される複数のカーボンナノチューブと、
隣接するカーボンナノチューブを共有結合させる、本明細書に記載の少なくとも1つのリンカーであって、リンカーが、カーボンナノチューブに直接結合した共役系を含む、少なくとも1つのリンカーと、を含む。
【0102】
本明細書で提供される架橋カーボンナノチューブネットワークは、吸着のための大きな利用可能な表面積を提供する、還元化学によって達成される高度の個別化を有する。これは、束のネットワークを生じると報告された他の方法とは対照的である。架橋反応は、画定された開放細孔構造を提供し、開放ネットワークを通した拡散を可能にする。リンカーの構造を変更することによって、細孔構造を調整することができる。
【0103】
架橋カーボンナノチューブネットワークの表面積は、BET法によって測定してもよい。理想的には、架橋カーボンナノチューブネットワークは、表面積を測定するために、バルクモノリシック形式に形成される。本明細書に記載されるプロセスは、薄膜フィルム形状に加えてバルクモノリシックネットワークの提供を可能にする。表面積はまた、キャパシタンス測定から電気化学的に測定してもよい。
【0104】
架橋カーボンナノチューブネットワークは、約500Sm-1以上、好ましくは約600Sm-1以上、好ましくは約700Sm-1以上、好ましくは約800Sm-1以上、好ましくは約900Sm-1以上、好ましくは約1000Sm-1以上の導電率を有してもよい。導電率は、最大約1000000Sm-1であってもよい。
【0105】
架橋カーボンナノチューブネットワークの導電率は異方性であってもよい。
【0106】
本明細書に記載の分子層堆積プロセスによって調製された架橋カーボンナノチューブネットワークでは、導電率は約10Sm-1以上であってもよい。
【0107】
導電率は、4点プローブを使用してフィルム抵抗を測定することによって決定し得る。この方法では、フィルムに4本のワイヤを接触させ、外側の2本のワイヤに電流を印加し得る。次いで、2つの内側ワイヤ間の電圧降下が測定され、シート抵抗を決定するために使用される。導電率は、シート抵抗から計算することができる。
【0108】
理解されるように、より長いカーボンナノチューブの使用、CNTの整列、及び化学的ドーピングによって、より大きな導電率を達成することができる。架橋カーボンナノチューブネットワークフィルムの重要な電気的特徴は、カーボンナノチューブ間結合部に分子要素、すなわちリンカー基が存在し、異なる分析物への曝露時に電気輸送を変調することである。センサ用途では、変調が重要であることがある。より高いベースライン導電率は、より安価な電子機器を提供するのに役立つことがある。本明細書に記載の架橋カーボンナノチューブネットワークフィルムは、高い感度及び高い選択性を提供する。これは、ネットワークを通じた電子輸送を助ける結合部に選択的結合部位を有することによって達成され得る。
【0109】
これは、多数の分子結合を一緒に結び付けることとして説明することができる。分子電子工学において、分子結合は興味をそそるが、測定は困難である。多数の分子結合を測定するための実用的な方法が本明細書に記載される。
【0110】
本明細書に記載の架橋カーボンナノチューブネットワークの物理的特性は、炭素種及び微細フィラメント構造の個別化の程度において、他の薄膜フィルムとは別個であることがある。紫外可視における顕著なvan Hoveバンド(明確なピーク/隆起)は、カーボンナノチューブの大部分が固体状態で個々の種及び小さな束として残っていることを示す。これは、本明細書に記載される還元溶解及び架橋プロセスの直接的な結果である。走査型電子顕微鏡法は、微細なカーボンナノチューブ足場構造の更なる証拠を提供し、大きな束又は凝集体がほとんど観察されない。高レベルの個別化及び微細孔構造は、ガス感知用途に理想的に適した特性である大きな活性表面積を示す。
【0111】
有利には、架橋カーボンナノチューブネットワークは、カーボンナノチューブが一連の平行層で接続されるように、分子層堆積プロセスを使用して形成される。これは、面内導電率を厚さ方向導電率と比較することによって決定され得る。面内導電率は、フィルムの同じ表面上に両方の接点を作製することによって測定してもよく、厚さ方向の測定では、フィルムの上面上に一方の接点を、底面上に他方の接点を必要とする。厚さ方向導電率よりも著しく大きい面内導電率は、カーボンナノチューブが架橋剤の交互層を有する別個の層に配置されていることを示す。厚さ方向導電率は後続の各層で減少するが、面内導電率は増大することが予測される。
【0112】
架橋カーボンナノチューブネットワークの堆積後、溶媒を除去してもよく、例えば、ネットワークを乾燥させてもよい。
【0113】
溶媒の除去は、例えば、最初の溶媒よりも低い表面張力を有する少なくとも1つの溶媒との溶媒交換の第1のステップを含んでもよい。用語「表面張力」は、本明細書で使用するとき、表面下の分子によって表面/空気界面の分子に及ぼされる任意の液体における引力を指し、この力は、液体が流れるのを抑制する傾向がある。本明細書で使用するとき、用語「低表面張力」は、25℃及び大気圧で測定したとき、約30mN/m以下の表面張力を有する液体を指し得る。溶媒交換後、カーボンナノチューブネットワークを乾燥させてもよい。
【0114】
いくつかのネットワークは溶媒交換なしで乾燥されてもよく、他のものは非常に低い表面張力を必要とする。特定のネットワークがこのような溶媒交換を必要とするか否かは、ネットワーク、すなわちゲルの個々の特性に応じて異なる。低密度、高表面積のネットワークは、より望ましい特性を有するが、ロバスト性が低くなる傾向があるため、溶媒交換又は当業者によく知られている他の制御された乾燥技術を必要とすることがある。ネットワークの特性は、カーボンナノチューブの寸法及び架橋密度に応じて異なる。
【0115】
本発明による架橋カーボンナノチューブネットワークは、好ましくはエアロゲルである。本明細書で使用するとき、「エアロゲル」という用語は、ゲルを形成し、次いでゲル構造を実質的に保持しながらゲルから液体を除去することによって調製される、低密度の高多孔性材料を指す。好ましくは、本発明による「エアロゲル」は、ゲルの乾燥時の体積変化が約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満、好ましくは約5%未満である、カーボンナノチューブネットワークを含む。エアロゲルは、連続気泡微多孔性構造又はメソ多孔性構造を有する。典型的には、それらは、約1000nm未満の孔径及び1グラム当たり約100m2超の表面積を有してもよい。好ましくは、それらは、約200nm未満の孔径及び1グラム当たり約400nm2超の表面積を有してもよい。それらは、多くの場合低い密度、例えば、約1000mg/cm3から約1mg/cm3程度まで、好ましくは約15mg/cm3~500mg/cm3の範囲の密度を有してもよい。例外的に、他の既存のエアロゲルとは異なり、カーボンナノチューブから製造されたエアロゲルは、低い密度、高い表面積を有してもよく、但し、大きな孔径を有してもよい。
【0116】
孔径は、より大きなマクロ細孔(直径>50nm)に適した水銀ポロシメトリーによって測定されてもよい。より小さいメソ細孔(約2~50nm)及びミクロ細孔(<2nm)については、窒素ポロシメトリーを使用してもよい。Brunauer-Emmett-Teller(BET)理論を吸着-脱着等温線に適用することにより、比表面積を決定することができる。次いで、孔径分布は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法又は密度汎関数理論(DFT)などの更なる分析を使用して、実験的等温線から計算される。
【0117】
好ましくは、エアロゲルは、超臨界条件下でゲルから液体が除去された材料である。
【0118】
堆積されたネットワークの乾燥は、好ましくはエアロゲルを形成するために、超臨界乾燥又は凍結乾燥によって実行されてもよい。超臨界乾燥の最も一般的な方法は、超臨界二酸化炭素による溶媒の除去を伴い、これを本発明において使用してもよい。臨界点乾燥では、液相-気相境界を横切ることなく溶媒を除去し、ネットワーク微細構造に力を加えてカーボンナノチューブの再束化を引き起こすことがある力を潜在的に回避する。
【0119】
堆積されたネットワークの乾燥は、室温及び/又は周囲圧力で実行されてもよい。ネットワークは、特にネットワークが本明細書に記載される層ごとの堆積プロセスによって形成された場合、不活性ガス流(N2流など)によって乾燥されてもよい。
【0120】
このプロセスは、超臨界CO2又は凍結真空プロセスを必要としないので、エアロゲルを製造するためのより多用途の手順であり得る。エアロゲルは、ゲルを単に乾燥させることによって得ることができる。目的は、ゲルからエアロゲルを得る際に最小の体積低減をもたらす溶媒を蒸発させることである。
【0121】
本発明に従って調製されたエアロゲルは、ゲルが所定の形状にキャストされることを可能にする。その考え方は、ゲル相における形状を制御することによって最終形状を制御することである。本発明のプロセスはまた、大きなエアロゲルを形成するための大きなゲルの形成を可能にする。
【0122】
得られるカーボンナノチューブネットワークは、可能な限り少ない不純物を含むことが望ましい。このような不純物としては、残留試薬、界面活性剤、添加剤、ポリマー結合剤などが挙げられる。これらの不純物の存在は、カーボンナノチューブネットワークの密度の増加、並びにカーボンナノチューブエアロゲルの導電率及び表面積の低減をもたらし得る。不純物は、溶媒交換プロセス中に除去してもよい。本発明によるプロセスは、除去が困難であることが多いこのような添加剤又は試薬のかなりの量の使用を必要としないので、高い導電率、大きな表面積及び低密度を有するカーボンナノチューブネットワークを得ることができる。カーボンナノチューブネットワーク中に存在する不純物の総量は、好ましくは溶媒が除去された後に測定して、5重量%未満、更により好ましくは1重量%未満であってもよい。
【0123】
好ましくは、本発明で使用される各カーボンナノチューブは、高い導電率を有し、10MA/cm2より大きい、好ましくは100MA/cm2より大きい電流密度で電流を流すことができる。したがって、カーボンナノチューブのネットワークは、既存のカーボンエアロゲルと比較して、優れた導電率及び電流密度を示すと考えられる。
【0124】
加えて、カーボンナノチューブは、低密度で、高い強度、剛性、及び可撓性を含む望ましい固有の機械的特性を有する。これらの特性は、カーボンナノチューブを多くの工業用途に望ましいものにし、得られるエアロゲルネットワークに望ましい特性を与える。
【0125】
エアロゲル又はキセロゲルの形状は、ゲル化ステップ中に使用される容器の形状を制御することによって制御することができる。最終エアロゲルの密度は、初期ゲル内のナノチューブの体積分率を変えることによって制御することができる。
【0126】
架橋カーボンナノチューブネットワークは、本明細書に記載されるような基板上に提供(例えば、堆積)されてもよい。架橋カーボンナノチューブネットワークは、基板上のフィルムとして提供されてもよい。
【0127】
本明細書では、架橋カーボンナノチューブネットワークを含むフィルムも提供される。フィルムの厚さは、約1nm~約10μmであってもよく、例えば、約1nm~約500nmであってもよい。
【0128】
フィルムの厚さは、フィルムに切れ目を入れて瘢痕又はステップを作ることによって測定することができる。基板とフィルム表面との間の高さの差は、非常に薄いフィルム(<1μm)についてはAFMによって、より厚いフィルムについては表面プロファイラを用いて、正確に決定することができる。あるいは、電子顕微鏡法を使用してフィルム断面の厚さを測定することができる。
【0129】
また、本明細書では、架橋ナノチューブネットワークを形成するための層ごとの堆積プロセス(分子層堆積プロセス)が提供であって、プロセスが、
本明細書に記載されるように、基板の表面上に還元されたカーボンナノチューブを堆積させることと、
還元されたカーボンナノチューブをリンカー前駆体と接触させて、共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを形成することと、
共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを更なる還元されたカーボンナノチューブと接触させて、リンカー前駆体から形成されたリンカーによって共有結合的に結合されたカーボンナノチューブを含む架橋カーボンナノチューブネットワークを共有結合的に形成することと、を含む、プロセスが提供される。
【0130】
各接触ステップを繰り返して、三次元架橋カーボンナノチューブネットワークを構築してもよい。プロセスは、例えば、
架橋カーボンナノチューブネットワークを更なるリンカー前駆体と反応させ、次いで、得られた材料を更なる還元されたカーボンナノチューブと反応させるステップを更に含んでもよい。
【0131】
リンカーは、還元されたカーボンナノチューブの壁と反応してC-C共有結合、ひいては架橋ネットワークを形成することができる少なくとも2つの官能基を含む多価(例えば二価)部分である。
【0132】
好ましくは、リンカーは剛性リンカーである。剛性リンカーは、「バックバイティング」を回避するのに十分に剛性であり、それによって、以下のスキーム2に示すように、脱離基が同じカーボンナノチューブで反応する。
【0133】
スキーム2:非剛性リンカーのバックバイティング
【0134】
【0135】
理解されるように、剛性リンカーは、脱離基が剛性リンカーの同じ側に出現するのを回避するために、十分に剛性である必要がある。したがって、本明細書で使用するとき、「剛性」とは、リンカー分子の配座制限及び立体障害が、単一のカーボンナノチューブへの2つの結合を形成するのではなく、2つのカーボンナノチューブへの結合に有利に働くことを意味する。好ましくは、少なくとも2つの官能基は、2つの異なるナノチューブと反応する機会を最大にするために、リンカー分子の異なる原子上に、より好ましくはいくらか離れて配置される。
【0136】
剛性リンカー前駆体は共役リンカー前駆体であってもよく、その結果、プロセスは上述のプロセスに従い、共有結合的架橋カーボンナノチューブネットワークは、共役リンカー前駆体から形成された共役リンカーによって共有結合的に結合されたカーボンナノチューブを含むことが理解される。しかしながら、このプロセスを、共役リンカー前駆体に限定する必要はない。
【0137】
剛性リンカー前駆体は、構造:
X-Y-X
の化合物であってもよく、
式中、Yが多価剛性系であり、各Xが独立して本明細書に記載される好適な脱離基である。
【0138】
リンカーの剛性は、1つ以上のシクロアルキル基又はアリール基によって提供され得る。
【0139】
Yが、シクロアルキル基を含んでもよい。Yが本質的にシクロアルキル基からなってもよい。例示的なシクロアルキル基としては、シクロヘキシル及びアダマンタンが挙げられる。Yが、ポリ八面体シルセスキオキサンを含んでいてもよい(好ましくは、本質的にそれからなってもよい)。
【0140】
Yが、構造
*-Y’-CH2-Y’-*
の基であってもよく、
式中、各Y’は独立して、C6~C10単環式若しくは二環式アリール環又は5~10員単環式若しくは二環式ヘテロアリール環であり、*が各Xへの結合点を示す。各Yが独立して、フェニル又はチオフェニルであってもよい。
【0141】
剛性リンカー前駆体は、1,4-ジハロシクロヘキサン、例えば、1,4-ジヨードシクロヘキサンであってもよい。剛性リンカー前駆体は、ビス(4-ブロモフェニル)メタン又は5,5-ジブロモ-2,2-ジチエニルメタンであってもよい。
【0142】
剛性リンカー前駆体の組み合わせを本発明のプロセスにおいて使用してもよい。
【0143】
理解されるように、剛性リンカー前駆体は、還元されたナノチューブの側壁と反応して、隣接するナノチューブを架橋し、ナノチューブは、構造*-Y-*(式中、*が、脱離基Xが存在しない各ナノチューブへの、すなわち剛性リンカー前駆体構造への結合点を示す)を有する剛性リンカーによって結合される。
【0144】
剛性リンカー前駆体の剛性リンカー部分(例えば、基Y)が、本明細書に記載のように置換されていてもよい。理解されるように、剛性リンカー前駆体(例えば、Y)が、1つ以上の好適な脱離基(ハライドなど)で、任意に置換されている場合、好適な脱離基置換基は、還元されたカーボンナノチューブの表面と反応することができる官能基として機能し得る。
【0145】
剛性リンカー前駆体は、還元されたカーボンナノチューブの表面と反応することができる3つ以上の官能基を有してもよい。例えば、剛性リンカー前駆体は、構造:
Y-(-X)m
の化合物であってもよく、
式中、Y、X及びmが、本明細書で定義した通りである。
【0146】
リンカー前駆体が剛性リンカーであることは、必須ではない。リンカーの完全なバックバイティングは、カーボンナノチューブの表面をリンカー前駆体で飽和させて、飽和した共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを形成することによって回避され得る。したがって、還元されたカーボンナノチューブの壁と反応してC-C共有結合を形成することができる少なくとも2つの官能基を含む限り、任意のリンカー前駆体を使用してもよい。
【0147】
したがって、還元されたカーボンナノチューブをリンカー前駆体と接触させて共有結合的に官能化されたカーボンナノチューブを形成する各ステップは、還元されたカーボンナノチューブをリンカー前駆体と、カーボンナノチューブがリンカーの共有結合的官能化で飽和されるように、すなわち、立体的要件に従うナノチューブ表面上の全ての利用可能な部位が共有結合的に官能化され、グラフト化リンカー分子上の反応性官能基を露出させたままにするように、十分な時間接触させることを含んでもよい。理解されるように、カーボンナノチューブが飽和される程度は、リンカー分子の立体的制約に応じて異なる。
【0148】
プロセスは、上記のような任意の好適な条件下、例えば不活性条件下で実行されてもよい。
【0149】
このプロセスは、上述したように、光起電装置、センサ及び触媒から導電性インク及びコーティングまでの様々な潜在的用途のためのフィルムを形成するために使用されてもよい。
【0150】
本明細書では、このプロセスによって調製された架橋カーボンナノチューブネットワークも提供される。架橋カーボンナノチューブネットワークは、
本明細書に記載される複数のカーボンナノチューブと、
隣接するカーボンナノチューブを共有結合させる、本明細書に記載されるような少なくとも1つのリンカーとを含む。架橋カーボンナノチューブネットワークは、還元されたカーボンナノチューブを使用して形成され、それにより、層ごとのアプローチは、上述したように、多孔性、均質性及びコンダクタンスに関して多くの利点を共有する。
【0151】
ガス感知用途
本明細書に記載の架橋カーボンナノチューブネットワーク及びフィルムは、ガス感知用途に使用してもよい。したがって、本明細書に記載される架橋カーボンナノチューブネットワーク及びフィルムは、ガスセンサとして、又はガスを感知するために使用されてもよい。
【0152】
本明細書では、本明細書に記載のカーボンナノチューブネットワーク又はフィルムを含むガスセンサも提供される。本明細書に記載のガスセンサ(例えば、標的ガスを感知するためのガスセンサ)は、
第1の電極及び第2の電極と、
本明細書に記載の(好ましくはフィルムとしての)カーボンナノチューブネットワークと、を含んでもよく、
第1の電極及び第2の電極が、カーボンナノチューブネットワークと電気的に接触している。センサは、センサアレイの形態であってもよい。
【0153】
使用中、ガスセンサ又はセンサアレイが標的ガスに曝露されると、標的ガスは、カーボンナノチューブネットワークによって結合される。これは、第1の電極と第2の電極との間のカーボンナノチューブネットワークのインピーダンスを変化させる。このインピーダンスの変化を測定して、標的ガスの濃度又は存在を決定するために使用することができる。したがって、ガスセンサ又はセンサアレイのカーボンナノチューブネットワークは、ケミレジスタであってもよい。
【0154】
ガスセンサ又はセンサアレイのカーボンナノチューブネットワークは、トランジスタであってもよい。例えば、センサ又はセンサアレイは、化学電界効果トランジスタ(ChemFET)であってもよい。架橋カーボンナノチューブネットワークは、トランジスタ内のソース電極とドレイン電極との間に導電チャネルを提供し得る。使用中、第3の「ゲート」電極に電圧を印加してもよく、ソース-ドレインチャネルにおける導電率の変調を可能にする。チャネル電流は、ある範囲のゲート電圧でガスに曝露されると測定され、高感度で標的ガスの濃度又は存在の正確な決定を可能にする。
【0155】
任意の好適な電極材料を使用してもよい。例えば、各電極は独立して、金、銀、ニッケル、又は白金などの金属電極、及び一部が一般的に使用されているいくつかのパラジウムであってもよい。クロム上に堆積させた金を電極材料として使用してもよい。概して、不活性で仕事関数の高い金属が好ましい。金属とカーボンナノチューブネットワークとの間の結合は、感知活性に寄与し得る。
【0156】
架橋カーボンナノチューブネットワークは、本明細書に記載されるような基板上に提供されてもよい。基板は不活性であってもよい。
【0157】
理解されるように、基板は、センサ又はセンサアレイ内の電極として機能してもよく、したがって、任意の好適な電極材料から形成されてもよい。
【0158】
トランジスタの場合、基板は、「バックゲート」として機能してもよく、したがって、好適な電極材料から形成してもよい。しかしながら、好ましくは、ゲート電極は基板に加えて設けられる。
【0159】
ガスセンサ又はセンサアレイは、電圧源を更に備えてもよく、電圧源は、第1の電極と第2の電極との間に電位を印加するように構成されている。
【0160】
本明細書に記載のガスセンサ又はセンサアレイは、機械学習と組み合わされて、試料中、例えば空気中に存在するガスのフィンガープリントを提供し得る。
【0161】
また、本明細書で、標的ガスを感知するためのプロセスであって、
標的ガスがカーボンナノチューブネットワークによって結合されるように、本明細書に記載のガスセンサ又はセンサアレイを、標的ガスを含むガス試料に曝露することと、
カーボンナノチューブネットワークに電位を印加することによって、カーボンナノチューブネットワーク層のインピーダンスを測定することと、
カーボンナノチューブネットワーク層のインピーダンスに基づいて、標的ガスの濃度を決定することと、を含む、プロセスが提供される。
【0162】
標的ガスの濃度は、分圧、重量百分率、体積百分率、単位体積当たりのモル数又は単位質量当たりのモル数として、パーツパー表記、例えば100万分率で測定され得る。
【0163】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、用語「備える」及び「含む」、並びにこれらの用語の変形、例えば「備え」及び「備える」は、「含む/備えるが、これに限定されない」ことを意味し、他の構成要素を排除することを意図しない(かつ排除しない)。
【0164】
本発明の前述の実施形態に対する変形が、本発明の範囲内に依然として含まれながら実行され得ることが理解される。本明細書に開示された各特徴は、別段の記載がない限り、同じ、同等又は同様の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別段の記載がない限り、開示される各特徴は、包括的な一連の同等又は同様の特徴の一例にすぎない。
【0165】
本明細書に開示される特徴の全ては、そのような特徴及び/又はステップのうちの少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組み合わせで使用してもよい。同様に、本質的でない組み合わせで記載された特徴は、別々に(組み合わせずに)使用されてもよい。
【0166】
上述の特徴、特に好ましい実施形態の特徴の多くは、それら自体で進歩性があり、本発明の実施形態のほんの一部としてのものではないことが理解される。独立した保護が、現在特許請求されている任意の発明に加えて、又はその代替として、これらの特徴に対して求められ得る。
【0167】
定義
本明細書で使用するとき、アルキルは、直鎖又は分枝鎖の炭化水素鎖を指す。アルキルは、1個~10個の炭素原子、任意に1個~6個の炭素原子を有してもよい。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルは、非置換であってもよく、又は本明細書で定義される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0168】
本明細書で使用するとき、アリールは、芳香族炭化水素環を指す。本明細書で使用するとき、ヘテロアリールは、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、S又はN)を含むアリール環を指す。アリール基及びヘテロアリール基は、単核、すなわち、1つの芳香環のみを有するもの(例えば、フェニル又はフェニレン)、又は多核、すなわち、縮合していてもよい(例えば、ナフチル又はナフチレン)、個々に共有結合していてもよい(例えば、ビフェニル)、及び/若しくは縮合芳香環と個々に結合した芳香環との両方の組み合わせであってもよい、2つ以上の芳香環を有するものであってもよい。アリール基は、6個~20個の炭素原子、又は6個~12個の炭素原子を含んでもよい。アリールは、1つ以上のアリール環又はシクロアルキル環に縮合して、多環式環系を形成し得る。例示的なアリール基としては、フェニル、ビフェニレン、トリフェニレン、[1,1’:3’,1”]ターフェニル-2’-イレン、ナフタレン、アントラセン、ビナフチレン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アリールはフェニルである。例示的なヘテロアリール基としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル及びピリミジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ヘテロアリールは、チオフェニル又はピロリルである。アリール又はヘテロアリールは、非置換であってもよく、又は本明細書で定義される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0169】
本明細書で使用するとき、シクロアルキルは、環状アルキル基を指す。シクロアルキルは、3~20個の炭素原子、又は3~15個の炭素原子、又は3~10個の炭素原子を有してもよい。シクロアルキルとしては、デカリン、ノルボルナン及びスピロ[5.4]デカンなどの架橋、縮合及び/又はスピロ環系が挙げられる。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、デカリン、ノルボルナン及びスピロ[5.4]デカンなどが挙げられる。シクロアルキルは、非置換であっても、本明細書で定義される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0170】
本明細書で使用するとき、ハライドは、-F、-Cl、-Br、-Iからなる群から選択され得る。
【0171】
本明細書中で使用するとき、ポルフィリンは、4つのメチン基によってα位を介して結合されて芳香族大環状構造を形成する、4つのピロール環を含む基である。
【0172】
ここで、以下の実施例を参照し、これにより非限定的な様式で本発明を例示する。
【0173】
消費者製品
本発明の消費者製品としては、エアフレッシュナー、エアフレッシュナーデバイス、空気清浄化デバイス、空気濾過デバイス、歯ブラシ及び歯磨き粉を含む口腔ケア製品、うがい薬、ボディウォッシュ、シャンプー、コンディショナー、制汗剤及び脱臭剤を含むパーソナルケア製品、おむつ及び成人用失禁物品を含む吸着物品、女性用ケア製品、カミソリ、食器洗剤、洗剤、柔軟剤、ドライヤーシート、芳香増強剤を含む布地ケア製品、ダスター及びモップを含むクリーニング器具、表面クリーナ、洗浄ワイプ、並びに紙タオル及びティッシュを含む紙製品、などを挙げることができる。
【0174】
消費者製品は、コントローラ及び/又はセンサと無線で接続されるスマート消費者製品、デバイス、又はその両方であってもよい。消費者製品は、システムを通して接続及び自動化され、本開示の方法に含まれるように、無線通信モジュールを備えてもよい。消費者製品は、CCUと通信可能に接続可能であってもよい。
図5を参照すると、消費者製品は、CCU及び/又は消費者製品組成物ディスペンサ104と通信するために、無線通信モジュール136を備えてもよい。スマート消費者製品は、歯ブラシ、カミソリ、吸着物品、女性用ケア製品、クリーニング器具、エアフレッシュナーデバイス、又は空気清浄化デバイスとして構成されてもよい。
【0175】
センサは、消費者製品上に物理的に配置されてもよく、又はセンサは、消費者製品から独立して移動可能なシステムの別個の要素であってもよい。センサを消費者製品上に直接配置することにより、消費者製品が任意の所与の時間にどこに位置決めされていても、消費者製品に非常に近接し読み取りを可能にし、センサ及び消費者製品が同時に移動されることを可能にし得る。
【0176】
消費者製品104は、センサ106によって生成されたデータに応答するためにユーザの介入を必要とすることがある。例えば、センサ106は、着信信号をCCUに送信し得る。CCUからの着信信号は、標的ガス濃度の設定点と比較して、センサを囲む空間内の高レベル又は低レベルの標的ガス濃度を読み取り得る。CCUは、ユーザに警告し、ユーザに、特定の標的ガスの濃度を軽減又は増強することができる特定の消費者製品を選択及び使用することによって応答させ得る。
【0177】
消費者製品104は、消費者製品組成物ディスペンサの形態であってもよい。消費者製品組成物ディスペンサは、消費者製品組成物を大気に又は無生物表面上に送達するために使用されてもよい。このような消費者製品組成物ディスペンサは、様々な方法で構成されてもよい。例えば、消費者製品組成物ディスペンサは、通電式ディスペンサ(すなわち、電気によって電力供給される、又は触媒燃料システムなどの化学反応、又は太陽光発電などによって電力供給される)として構成されてもよい。例示的な通電式消費者製品組成物ディスペンサは、加熱要素、圧電素子、サーマルインクジェット要素、ファンアセンブリ、エアロゾル化するための空気ポンプを用いた冷気拡散、自動噴霧器、自動エアロゾル、水素燃料電池などを備えてもよい、電力供給支援手段を備える。より具体的には、消費者製品組成物ディスペンサは、電気壁コンセント消費者製品組成物ディスペンサであってもよく、電気壁コンセント消費者製品組成物ディスペンサの非限定的な例としては、米国特許第7,223,361号に記載されている、加熱及び/又はファン要素を有する電池(充電式電池を含む)駆動式消費者製品組成物ディスペンサがある。通電式デバイスでは、消費者製品組成物ディスペンサは、揮発性材料を拡散するための電力供給支援手段の近くに配置してもよい。供給支援手段で最適に拡散するために、揮発性材料を配合してもよい。例示的な消費者製品組成物ディスペンサとしては、エアフレッシュニングディスペンサが挙げられる。
【0178】
消費者製品組成物ディスペンサは、非通電式ディスペンサとして構成されてもよい。例示的な非通電式消費者製品組成物ディスペンサは、揮発性材料が空気中に受動的に(すなわち、通電式手段なしで)拡散するのを助けるために、リザーバと、任意に、毛細管、ウィッキング手段、又は発散面と、を備える。消費者製品組成物ディスペンサの更に具体的な例としては、米国特許第8,709,337号及び同第8,931,711号に開示されるように、揮発性材料を収容するための液体リザーバ及び液体リザーバを囲む微多孔性膜を有する供給エンジンが挙げられる。
【0179】
消費者製品組成物ディスペンサ104はまた、エアロゾル噴霧器又は非エアロゾル噴霧器として使用するように構成されてもよい。消費者製品組成物ディスペンサ104は、消費者製品組成物を大気に自動的に供給するようにプログラムすることができる。噴霧器は、使用者によって手動で操作されてもよく、又は電気機械的手段によって自動的に操作されてもよい。
【0180】
空気清浄化デバイスは、電離、濾過、プラズマ、紫外光(UV光)(例えば、UVC、UVA、UVB)触媒コーティング、金属酸化物コーティング、及び/又はヒドロキシルラジカル技術を利用して、個々の部屋又は小空間(例えば、寝室、浴室、自動車など)、及び/又は家全体の中央空調/暖房システム(例えば、HVAC)で使用してもよい。空気を殺菌するための空気清浄化の場合、空気清浄化デバイスは、過酸化水素、グリコール、トリエチレングリコール、ヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸、精油、オゾン、第四級アミン、正及び/又は負電荷のイオン、又は空気を殺菌若しくは消毒するための他の活性物質の、気化又はエアロゾル化された液滴などの粒子を分配してもよい。空気清浄化デバイスはまた、その部屋の空気を排出することが所望である浴室又はキッチンエリアの換気デバイス(すなわち、空気を換気するための浴室排気又はストーブ上のキッチンフード)であり得る。
【0181】
消費者製品組成物ディスペンサ及び/又は空気清浄化デバイスを備える消費者製品はまた、センサが設定点外の1つ以上の標的ガスを読み取っている場所に行き、1つ以上の利用可能な技術を使用して、センサの場所における標的ガスの濃度を増強又は軽減し得る、移動ロボットとして構成されてもよい。例えば、移動ロボットは、センサが高レベル又は低レベルの標的ガスを検出している場所において、エアフレッシュニング、空気清浄化、及び/又は空気衛生化技術を利用してもよい。
【0182】
システムは、1つ以上の消費者製品を備えてもよい。システムは、ハウジング又は建物内の異なる部屋に移動可能であってもよい消費者製品のアレイを備えてもよい。更に、家又は建物は、同じ部屋又は異なる部屋に位置決めされる1つ以上の消費者製品組成物ディスペンサを備えてもよい。
【0183】
フレッシュニング組成物ディスペンサは、少なくとも2つの異なる消費者製品組成物、又は少なくとも2つの異なる消費者製品組成物、又は少なくとも3つの消費者製品組成物を含む、2つ以上の消費者製品組成物を収容し、分離された状態に保つことが可能であり得る。
【0184】
消費者組成物は、香料組成物及び/又は悪臭制御組成物を含むエアフレッシュニング組成物であってもよい。消費者組成物は、虫除け剤を含んでもよい。消費者組成物は、殺生物剤を含んでもよい。
【0185】
消費者製品組成物は、揮発性材料を含んでもよい。例示的な揮発性材料としては、香料材料、揮発性色素、殺虫剤として機能する材料、調湿、修正、若しくは別の方法で環境を修正するように(例えば、睡眠、起床、呼吸器の健康状態などの状態を補助するように)機能する精油若しくは材料、脱臭剤若しくは悪臭制御組成物(例えば、反応性アルデヒドなどの臭気中和材料(米国特許出願公開第2005/0124512号に開示される)、臭気遮断材料、臭気マスキング材料、又はイオノンなどの知覚改善材料(同じく米国特許出願公開第2005/0124512号に開示される))が挙げられる。
【0186】
消費者製品組成物は、空気中に望ましい香りを提供するために香料混合物の香料原料を含んでもよい。消費者製品組成物は、真正の悪臭中和をもたらすように設計された揮発性アルデヒドの混合物を含む(単に臭気を覆い隠す又はマスクすることによって機能するものではない)。真正の悪臭中和は、感覚的な、及び分析的に測定可能な(例えば、ガスクロマトグラフ)悪臭低減をもたらす。したがって、消費者製品組成物が真正の悪臭中和をもたらす場合、消費者製品組成物は、気相及び/又は液相中の悪臭を低減する。消費者製品組成物は、化学反応を介して気相及び/又は液相中の悪臭を中和する揮発性アルデヒドの混合物を含んでもよい。このような揮発性アルデヒドは、反応性アルデヒドとも呼ばれる。反応性アルデヒドは、シッフ塩基形成経路に従って、アミン系臭気と反応し得る。揮発性アルデヒドはまた、イオウ系臭気とも反応し、気相及び/又は液相中に、チオールアセタール、ヘミチオールアセタール、及びチオールエステルを形成し得る。
【0187】
消費者製品組成物は、界面活性剤、酸触媒、ポリマー、緩衝剤、可溶化剤、抗菌性化合物、保存剤;湿潤剤;水性キャリア、希釈剤など、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な他の成分を含んでもよい。
【0188】
中央通信ユニット
CCU 102は、様々な異なる方法で構成され得る。CCU 102は、システム100の1つ以上の構成要素から着信信号を受信し、システム100の1つ以上の構成要素、例えば、システム内の消費者製品及び/又はスマートデバイスに発信命令を送信するように構成されてもよい。
【0189】
図5を参照すると、CCU 102は、無線通信リンク107を使用して、センサ106と、ユーザインターフェース108と、消費者製品104と、を備える、システム100の様々な構成要素と通信可能に接続可能であってもよい。802.11(Wi-Fi)、802.15.4(ZigBee、6LoWPAN、Thread、JennetIP)、Bluetooth、これらの組み合わせなどを含む様々な無線通信リンクが使用され得る。接続は、アドホックメッシュネットワークプロトコルを介してもよい。CCU 102は、システムの様々な構成要素でのCCU 102との無線通信リンク107を確立するために、無線通信モジュール116を備えてもよい。通信リンクを確立するために、当該技術分野において既知の任意のモジュールを利用することができる。
【0190】
CCU 102は、プロセッサ122を備えてもよい。プロセッサ122は、本明細書で記載されるシステム100の1つ以上の有利な機能を実行するように、及び/又は実行させるように構成及びプログラムされ得る。プロセッサ122は、CCU 102内に物理的に配置されてもよく、又はコンピュータ、特殊コンピュータ、電話又はタブレットなどのスマートデバイス、サーバ、イントラネット、ボーダールータ、クラウドベースシステムなど、又はこれらの組み合わせ上に遠隔に配置されてもよい。プロセッサ122は、ローカルメモリ、専用プロセッサ又は特定用途向け集積回路に保存されたアルゴリズム、非同期JavaScript及びXML又は同様のプロトコルを使用してクラウドサーバから提供される命令を実行するJava仮想マシンを実行することなどによって、中央サーバ又はクラウドベースシステムによって遠隔で実行又は管理されるアルゴリズム、を実行することができる。アルゴリズムは、特定の時間間隔などで定期的に繰り返されてもよい。アルゴリズムは、毎時間、毎日、毎週などで繰り返してもよく、1日のうちの異なる時間又は週のうちの異なる日に異なるスケジュールで動作するように構成されてもよい。ユーザが空間に存在するか否かに応じて、異なるアルゴリズムが使用されてもよい。
【0191】
CCU 102は、メモリ124を備えてもよい。メモリは、設定点、センサ測定値及びステータスインジケータなどの着信信号、アルゴリズムなどを保存するように構成されてもよい。メモリは、フラッシュドライブ、ハードドライブ、読み出し専用メモリ、又はランダムアクセスメモリなど、CCU 102内のローカルメモリであってもよい。又は、メモリは、コンピュータ上、電話若しくはタブレットなどのスマートデバイス上、サーバ上、又はクラウドベースシステム上のリモートメモリとして構成されてもよい。メモリ124は、様々な方法でプロセッサ122にアクセス可能であり得る。
【0192】
CCU 102のプロセッサ及び/又はメモリは、CCU 102のハウジング内に配置されてもよい。CCU 102は、システム100の様々な構成要素と接続されてもよいし、システム100の様々な構成要素から分離されてもよい。例えば、CCU 102は、消費者製品と物理的に接続されてもよい。CCU 102は、例えば、スマートデバイス及び/又は消費者製品104などの他の構成要素とは別個の部屋又は場所の建物に恒久的に位置決めされてもよい。CCU 102は、スマートサーモスタットとして構成されてもよい。CCUとして、スマートフォンやタブレットを使用してもよい。CCUは、コンピュータ、スマートフォン、又はタブレットと通信可能に接続可能であってもよい。
【0193】
CCUは、クロックを備えてもよく、又はクロックと無線通信してもよい。CCUは、コンピュータ、スマートデバイス、又はインターネット上のクロックと通信可能に接続可能であってもよい。
【0194】
図5は、ハウジング128内に配置されたプロセッサ122及びメモリ124を有する例示的なCCU 102を示す。
図5に示すCCU 102は、消費者製品104又はスマートデバイス109の上又は内部に配置されてもよい。
図5は、ハウジング128内に配置されたプロセッサ122及びメモリ124を示すが、プロセッサ122及び/又はメモリ124は、CCU 102に対して遠隔に配置されてもよいことを理解されたい。
【0195】
着信信号は、着信信号をリモートメモリに送信する送信機を備えるCCUユニットを通して渡され得る。着信信号はまた、信号を送信する構成要素と無線通信している構成要素によって直接受信され得る。
【0196】
図6は、システム100の様々な構成要素からリモートメモリへの着信信号の複数の例示的なフローを示す。着信信号は、センサ106、消費者製品104、スマートデバイス109、又は様々な他の構成要素から、無線通信リンクを介して、コンピュータ又はスマートデバイスに直接、又はCCUの送信機を介してリモートメモリに流れ得る。プロセッサ122は、メモリ124からの着信信号にアクセスし得る。プロセッサ122は、有線又は無線通信リンクを介してメモリ124にアクセスし得る。
【0197】
プロセッサ122は、着信信号をメモリ124に保存された設定点と比較するように構成されてもよい。プロセッサは、保存された設定点をメモリ124から取得して取り上げることができる。
【0198】
システムは、ユーザが適切な設定点を選択するのを補助するユーザフィードバックループを含んでもよい。例えば、ユーザは、特定の標的ガスの適切なレベルが何であるべきかを理解していないことがある。ユーザインターフェース又はCCUは、ユーザが、質問に答えること、又はユーザの所望の対象に関する異なるプロンプトから選択することを可能にし得る。例示的な質問又はプロンプトは、香り強度に関するユーザの好み、ユーザが特定の匂いに対して有し得る感受性の識別及び定量化、ユーザが空気中の特定の香り又は空気の向上した清浄化を望み得る時刻又は活動に関連し得る。ユーザからの応答に基づいて、CCUは、特定の設定点を選択してもよく、又は機械学習を通してなど、設定点を変更してもよい。ユーザフィードバックループは、ユーザが設定点を修正することを可能にし、消費者製品の後続の動作は、ユーザからの設定点修正に応答して調整されてもよい。
【0199】
消費者フィードバックループは、アルゴリズム選択を助けるために動作の開始前に、及び/又は設定点が消費者のニーズ又は関心を依然として満たしていることをチェックするために動作中に、発生し得る。
【0200】
上述したように、CCUは、センサ106からの着信信号に応答して1つ以上の消費者製品104を動作させる様々なアルゴリズムを実行するように構成されてもよい。
図7は、センサ106からの着信信号に基づいて消費者製品104及び/又はスマートデバイス109を制御するためにCCU 102によって使用され得る、例示的なアルゴリズムを示す。センサは、対象の1つ以上の標的ガスに対して構成されてもよい。センサが標的ガスを検出する場合、センサ106は、標的ガス及び標的ガスの濃度を識別し、それらの詳細を着信信号としてCCUに送信してもよい。
【0201】
引き続き
図7を参照すると、ユーザによって選択されるか、又はユーザからのフィードバックに基づいてプロセッサによって選択されるかのいずれかの例示的アルゴリズムでは、プロセッサ122は、特定の標的ガスに関するセンサ106からの着信信号を、メモリ124内に保存された標的ガスについての設定点と比較するように構成されてもよい。CCU 102への着信信号の値が、メモリ124内に保存された標的ガス濃度又は濃度範囲設定点とは異なる場合、プロセッサ122は、特定の標的ガスのレベルを軽減又は増強させることができるものとしてCCUによって識別される、特定の消費者製品104又はスマートデバイス109への発信命令を送信する。CCUは、特定の消費者製品104の所望の結果及び有用性に応じて、消費者製品104をオン又はオフのいずれかにするために、選択された消費者製品104に発信命令を送信してもよい。センサ106からの着信信号の値が、その特定の標的ガスの設定点濃度に等しいか、又は実質的に等しい場合、プロセッサ122は、消費者製品又はスマートデバイスに発信命令を送信してオン若しくはオフのいずれかにするか、又は消費者製品104に発信命令を送信して、流量、強度などの消費者製品の動作設定を変更する。記載されているものなどのアルゴリズムは、毎時間、毎日、毎週などの設定された時間スケジュールで繰り返されてもよく、1日のうちの異なる時間若しくは週のうちの異なる日に異なるスケジュールで動作するように構成されてもよく、及び/又はユーザが空間内に存在するか又は存在しないときに異なって動作してもよい。
【0202】
「実質的に等しい」は、アルゴリズムにプログラムされ得る設定点とセンサによって測定される濃度との間の許容可能な公差を含んでもよい。したがって、設定点に実質的に等しいセンサ濃度測定値は、プロセッサによって設定点に等しいものとして処理され得る。
【0203】
メモリ124は、複数の設定点を保存するように構成されてもよい。例えば、異なる時間、1日の期間に対して異なる設定点があってもよく、異なる曜日に対して異なる設定点があってもよい。CCUは、クロックを使用して、特定の時刻及び/又は曜日にどの設定点を使用すべきかを決定し得る。
【0204】
設定点は、特定の対象の標的ガスに望ましい又は許容可能な濃度若しくは濃度範囲であってもよい。メモリは、1つ以上の対象の標的ガスの設定点を保存してもよく、1つ以上のセンサは、複数の対象の標的ガスを同時に識別及び測定するために使用されてもよい。
【0205】
アルゴリズムは、発信信号をセンサに送信して、1日のうちの特定の時間に、又は1日全体を通して設定された間隔でセンサ測定値を取得するようにプログラムされ得る。
【0206】
CCUは、家又は建物内に配置された異なるセンサからのセンサ測定値を使用するように構成されてもよい。異なるセンサが、1日のうちの異なる時間及び/又は異なる曜日に使用されてもよく、あるいは異なるセンサが同時に測定値を取得してもよい。
【0207】
設定点を使用して、消費者製品がいつオンにされる時点、及びオンにされる期間の長さを制御してもよい。特定の消費者製品がオンにされてもよい持続時間は、約5分~約60分の範囲、又は約10分~約30分の範囲であってもよい。例えば、設定点は、消費者製品がオンにされた後の所定の持続時間として構成されてもよく、その結果、消費者製品は、予めプログラムされた持続時間でオフにされてもよい。
【0208】
標的ガスが設定点の外にあるという着信信号をセンサから受信すると、CCUは、提案された動作をユーザに提供するように構成されてもよい。例えば、CCUは、システムに接続されている消費者製品のタイプを認識してもよく、又はユーザは、ユーザが自由に使用してもよい消費者製品のリストをCCUに指示してもよい。消費者製品のそのリストに基づいて、CCUは、特定の標的ガスを軽減又は増強するのに有用であり得る特定の消費者製品をユーザに警告し得る。CCUは、1つ以上の無線接続されている消費者製品に発信命令を自動的に送信することができ、及び/又は1つ以上の識別された消費者製品でユーザにより提案された手動動作についての通知又は命令をユーザに送信してもよい。CCUはまた、窓を開くか、又は家の中の換気を増加させるために、発信命令をユーザに送信してもよい。
【0209】
CCUは、
図2に示されるサーモスタットなどのサーモスタットとして構成されてもよい。サーモスタットは、プロセッサ若しくはメモリを備えてもよく、又はサーモスタットは、リモートプロセッサ及び/若しくはメモリと通信してもよい。サーモスタットは、ユーザインターフェースを含んでもよい。サーモスタットは、NEST(登録商標)学習サーモスタット、LUTRON(登録商標)サーモスタットなどであってもよい。プロセッサは、標的ガス濃度のユーザ選好に基づいて、アルゴリズムから最適設定点を計算してもよい。
【0210】
機械学習アルゴリズムは、例えば、1日のうちの様々な時間及び/若しくは1週間のうちの様々な曜日におけるユーザの好ましい設定点を学習することができ、並びに/又はよりエネルギー効率の高いアルゴリズムをプログラムするために使用することができる。例示的な学習システムは、NEST(登録商標)学習サーモスタットで使用される。例示的な学習システムはまた、米国特許第9,115,908号にも記載されている。次に、プロセッサは最適な設定点をメモリに送信し、メモリは次に設定点を保存する。機械学習アルゴリズムは、標的ガスの感度及び選択性を増大させるために、ユーザフィードバック及び/又は較正を通して、センサ測定のドリフト及びバックグラウンドレベルについての調整及び較正を行うために使用されてもよい。
【0211】
消費者製品と、センサと、スマートデバイスと、を備える、システム内のデバイスは、1つのデバイスによって検出された事象が別のデバイスの動作に影響を及ぼし得るように、又は1つのデバイスの現在のステータスが別のデバイスの動作に影響を及ぼし得るように、CCUを通して互いに相互作用してもよい。
【0212】
ユーザインターフェース
本開示のシステム及び方法は、1つ以上のユーザインターフェース108を含んでもよい。ユーザインターフェース108は、様々な異なる形態で構成されてもよい。ユーザは、ユーザインターフェース108と相互作用して、設定点を調整するとともに、ユーザインターフェース上で生センサデータを見るために、CCU 102を通して、センサ106を接続することができる。CCU 102はまた、インターネット又はイントラネットに接続し、ユーザインターフェース108上での遠隔監視のために、センサ測定値及び設定点などの情報をサーバに渡すことができる。ユーザインターフェースは、CCUと一体であってもよく、又は別個であってもよい。1つ以上のユーザインターフェースがシステムに接続されてもよい。
【0213】
図8は、2つ以上のユーザインターフェースを有する例示的なシステムを示す。
図8において、第1のユーザインターフェースはCCUに接続され、第2のユーザインターフェースはリモートユーザインターフェースである。リモートユーザインターフェースは、コンピュータ又はハンドヘルドスマートデバイスの形態であってもよい。
【0214】
CCUがサーモスタットとして構成されている場合、サーモスタットは、ユーザが、例えば、ボタンを押すか、又はダイヤルを回すことによって、温度設定点を調整することができる、ユーザインターフェースを含んでもよい。
【0215】
ユーザインターフェースは、プログラム、HTMLウェブサイト、又はコンピュータ若しくはハンドヘルドスマートデバイスを通してユーザによってアクセス可能であるネイティブアプリケーションとして構成されてもよい。ハンドヘルドスマートデバイスは、iPhone(登録商標)、iPad(登録商標)、又はAndroid(登録商標)若しくはMicrosoft(登録商標)ベースのシステムを含んでもよい。ユーザインターフェースは、デスクトップ、ラップトップ、又はタブレットなどのコンピュータ上でアクセス可能であり得る。
【0216】
CCU、センサ、及び/又はユーザインターフェースは、センサのうちの1つ以上が設定点外の標的ガス濃度を測定していることをユーザに警告するために、インジケータライト又は一連のインジケータライトを備えてもよい。ユーザは、消費者製品を選択して使用することによってインジケータライトに応答して、標的ガスを軽減又は増強し得る。
【0217】
本開示のシステムは、プロセッサ122、メモリ124、及び/又はユーザインターフェース108を含むCCU 102を備えるハンドヘルドスマートデバイス又はコンピュータを備えてもよい。
【実施例】
【0218】
材料及び方法
精製HiPcoをNanointegrisから購入し、グローブボックスに導入する前に、高真空下(10-6mbar)、500℃で10時間脱気した。ナトリウム(99.95%インゴット)、DMAc(無水99.8%)、ナフタレン(99%)、p-ジヨードベンゼン(99%)、及び2,5-ジブロモアニリン(97%)は、Sigma Aldrich Ltd.(UK)から購入した。エタノール(96%)及びアセトン(99.8%)は、VWR Ltd.(USA)から購入した。乾燥空気(O2/N2 20/80v/v)は、BOCから購入した。還元溶解及びエアロゲルフィルム堆積は、グローブボックス内の不活性条件下で行った(mBraun、O2<0.1ppm、H2O<0.1ppm)。
【0219】
測定
TGAは、METTLER Toledo TGA-DSC 1を使用してN2雰囲気下で行った。試料を、100℃でN2下、30分間流速60mL/分で保持し、次いで10℃/分で800℃まで昇温した。XPS分光計は、MXR3 Al Kα単色化X線源(hν=1486.6eV)を備えていた。X線銃電力を72W(6mA及び12kV)に設定した。電荷補償は、低エネルギー電子とイオンフラッド源との組み合わせを使用するFG03フラッド銃を使用して達成された。試料のアルゴンエッチングは、標準EX06アルゴンイオン源を使用し、500Vの加速電圧及び1μAのイオン銃電流を使用して行った。200eVのパスエネルギー、1eVのステップサイズ及び100ms(50ms×2スキャン)の滞留時間を使用して、調査スキャンを取得した。全ての高分解能スペクトル(C1s及びO1s)を、20eVのパスエネルギー、0.1eVのステップサイズ及び1秒(50ms×20スキャン=1000ms)の滞留時間を使用して取得した。試料を両面粘着性炭素系テープ上にプレスすることによって、試料を調製した。XPSスペクトル測定中の圧力は、1×10-8mbar以下であった。データ解釈にはThermo Avanceソフトウェアを使用した。CASA XPSソフトウェア(バージョン2.3.16)を使用して、データを処理した。定量分析は、シャーリー又は2点線形バックグラウンドタイプを使用してベースラインを差し引いた後に実行された。ピークは、GL(30)線形、ガウス関数(70%)とローレンツ関数(30%)との組み合わせを使用して当てはめられた。全てのXPSスペクトルは、C1sシグナル284.5eVにおけるC-C黒鉛状炭素の当てはめられた寄与を参照することによって電荷補正された。
【0220】
ラマン分光法は、Renishaw InVia Raman Spectrometer及び532nmレーザーを用いて、1800ライン/mm格子で行った。>100μm×100μmの面積のマップを含む複数のスペクトルから、DバンドとGバンドとの相対強度を比較することによって、統計的D/G測定を行った。走査型電子顕微鏡(SEM)法は、10keVの加速電圧で、Zeiss Gemini Sigma300で行った。試料を、カーボンタブを有するアルミニウムスタブに接着し、フィルムを銀塗料と接触させた。原子間力顕微鏡(AFM)法は、Nanosensorタッピングモードプローブを使用して、AFMコントローラ(NanoMagnetics Instruments、英国)を備えたhpAFM上で、動的モードで行った。顕微鏡画像をNMI Image Analyzer(v1.4、NanoMagnetics Instruments)で処理し、内蔵の高さ及び線補正機能並びに瘢痕除去機能を利用した。
【0221】
実施例1-架橋及び堆積
還元溶解及び架橋
典型的な合成において、等モル量のナトリウムインゴット(30mg、1.30mmol)及びナフタレン(167mg)をDMAc(15.0mL)に添加することによってバルク溶液を調製し、2mgNamLDMAc
-1のナトリウム濃度を得た。暗緑色の溶液を18時間撹拌した。次いで、ナトリウムナフタリド溶液(2.24mL、2.24mmolNa)を脱気したSWCNT粉末(40mg)に添加して、ナトリウム:炭素化学量論比1:10を得た。次いで、溶液を追加のDMAcで希釈して、1.8mgSWCNT mLDMAc
-1の濃度及び15mMの最適[Na]を得た。溶液をガラス撹拌棒で一晩撹拌して、使用前に均質な溶液を得た。
【0222】
共役リンカー前駆体合成
BocDBAは、Fracaroli,A.M.et al.Metal-organic frameworks with precisely designed interior for carbon dioxide capture in the presence of water.J.Am.Chem.Soc.136,8863-8866(2014)に従って合成された。手順を、Fracaroli et al.から適合した。簡単に説明すると、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)を窒素でスパージすることによって脱気した後、1,5-ジブロモアニリン(2.00g、8.0mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(98mg、0.8mmol)及びジ-t tブチルデカーボネート(di-tbutyl decarbonate)(5.2g、24mmol)を添加した。反応混合物を40℃で5時間撹拌した。減圧下THFを除去した後、MeCN(80mL)及びLiBr(2.14g、24.6mmol)を添加した。懸濁液を65℃で18時間撹拌した後、室温に冷却し、蒸発乾固させた。粗生成物をDCMに溶解し、ヘキサン:AcOEt(20:1)で溶出するフラッシュシリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物を淡黄色固体として得た(2.81g、35%)。1HnmR(400MHz,CDCl3),[ppm]:1.54(s,9H),6.99(br s,1H),7.02(dd,J=8.5,2.4Hz,1H),7.34(d,J=8.5Hz,1H),8.40(d,J=2.4Hz,1H)。
【0223】
エアロゲルフィルム堆積
ガラス顕微鏡スライドを正方形に切断し、ピラニア溶液(25:75のH2O2(30%):H2SO4(94%)))中に20分間浸漬した後、HPLC水で3回すすいだ。基板を真空下で乾燥させた後、過剰の3-ヨードプロピル-トリメトキシシランを上面にドロップキャスティングした。30分後、残留シランをDMAcで洗い流した後、真空下で乾燥させた。
【0224】
エアロゲルフィルム:カーボンナノチューバイド(1.8mg
SWCNT mL
DMAc
-1)(150μL)をバイアルに添加し、等モル量(架橋リンカー:Na)の架橋剤を溶液中でナノチューバイドに添加した。12μLのこのゲル化ナノチューバイドを、次いで、DMAc飽和雰囲気中に含まれる予めシラン化されたガラス基板上に、24時間で、速やかにドロップキャストした。次いで、フィルムを一連の溶媒交換(MeOH、MeOH/HCl0.1M)、イソプロピルアルコール/H
2O)に供し、続いてアセトンに24時間供した後、液体CO
2で超臨界乾燥した。
図9(a)。
【0225】
得られた半透明薄膜フィルムの紫外可視分光法は、M
11及びS
22遷移に対応する顕著なVan Hove特異点ピークを示す(
図9(c))。これらの吸着バンドによって、臨界点乾燥後に固体状態で保持される、個別化されたSWCNT及び小径束の存在を明らかにする。フィルムは低密度であり、測定された厚さは240nm(
図9(d、e))であるが、35%の透明度を保持している。
【0226】
架橋カーボンナノチューブネットワークの官能化及び特徴付け
機能的結合部位のないネットワークを提供するために、p-ジヨードベンゼン(DIB)を使用し、アミン結合サイトを提供するためにBoc保護2,5-ジブロモアニリン(BocDBA)を使用して、エアロゲルフィルムを製造した。統計的ラマン分光法(SRS)は、非架橋フィルムと初期のSWCNT材料との両方と比較した場合、両方の官能化フィルムについて欠陥誘起モード(約1350cm
-1)の相対強度の増加を示し、SWCNTへの共有結合グラフト化を示している。より高い強度の欠陥モードがBocDBAよりもDIBについて観察され、これはヨウ化アリールのナノチューバイドとのより高い反応性に起因する。各々の場合において、Dバンドの増加は、特に非架橋エアロゲルフィルムについて比較的小さく、還元溶解経路が概してsp
2格子に対して非破壊的であることを示している。X線光電子分光法(XPS)によって、それぞれp-DIB及びBocDBA架橋フィルム中の少量の残留ヨード及び臭素を明らかにし、モノグラフト化種を示す。アニリン架橋ネットワークは、0.84%の窒素原子を含み、90個のSWCNT炭素原子当たり1個のグラフト化単位の推定値を与えた。各フィルムの酸素含有量のわずかな増加は、酸素官能基がエアロゲルフィルム合成中に付加され、酸素放出ステップが寄与因子である可能性が高いことを示す。架橋剤グラフト化の更なる証拠は、モノリシック形式で生成された架橋ネットワークの熱重量分析(TGA)で提供される(
図10(b))。19%及び14%のより大きな質量損失が、それぞれフェニル及びアニリン架橋ネットワークについて観察され、p-DIBがBocDBAよりも高い収率でグラフトするというTGAからの証拠を補強する。大きくはない質量損失のみが非架橋対照試料について観察され、単離における還元溶解が多くの追加の官能基を導入しないことを示す。
【0227】
微細構造
-X線光電子分光法(XPS)
SWCNT試料のXPSは、大きなC1sピーク(285eV)、より小さなO1sピーク(532eV)、及び表面官能化に対応する更なるピークを含む(
図11)。C1sスキャンによって、SWCNTフィルムから予想されるように、試料が主にsp2混成炭素から構成されることを明らかにする。アニリン接続ネットワークは、400eVに強いN1sピークを含み、窒素原子が1.8at(%)に等しく、53個のSWCNT炭素原子当たり1個のグラフト化架橋剤の推定値を与え、試料中の結合部位の存在を確認する。架橋フィルムのXPSによって、p-DIB及びBocDBA官能化フィルム中の少量の残留ヨード及び臭素をそれぞれ明らかにし、試料中に存在する少数のモノグラフト化種を示す。
【0228】
-N2等温線/BET
N2ポロシメトリーによって、架橋エアロゲルバルクモノリスが、吸着-脱着ヒステリシスによって区別される特徴的なタイプIV等温線を有するメソ多孔性材料であることを明らかにした(
図12)。HiPco出発材料は、443m2 g-1のBET比表面積(SSA)を示し、これは、閉じたSWCNTについての1315m2 g-1の理論的限界よりも著しく小さく、SEMによって観察された材料の高度に束ねられた状態を反映している。657m2 g-1のSSAが、非架橋バルクモノリスについて記録され、未加工のSWCNTに対する活性表面の実質的な増加であり、束を剥離し、開放ネットワークを保持する際の還元溶解経路の有効性を強調している。アニリン架橋ネットワークは747m2 g-1のBET比表面積(SSA)を有していたが、フェニル架橋エアロゲルは956m2 g-1のより大きなSSAを示した。両方の架橋ネットワークは、非架橋エアロゲルよりも大きな活性表面を示し、開放微細構造を保持する際の架橋ステップの重要性を繰り返し述べることとなった。アニリンネットワークと比較した場合のフェニルネットワークのより大きなSSAは、観察されたより高い架橋収率を反映している。付加された構造的結合は、SWCNTフレームワークを規定の位置に固定し、崩壊を防止し、SSAを改善し、これは、変化した微細構造についてSEMを用いて実行された観察を補強する。架橋エアロゲルの孔径分布は、ここでも、ネットワークが主にメソ細孔を含むことを示す。
【0229】
架橋エアロゲルモノリスのN
2収着等温線によって、フェニル架橋ネットワークについて956±2m
2g
-1の比表面積(SSA)を有するメソ多孔性材料を明らかにした(
図12(c))。これは、SWCNTフレームワークを規定された位置に固定する構造的架橋の存在による、非架橋対照に対する増加を示す。2つの架橋試料間で観察された差は、SWCNT側壁にグラフトされた架橋の数がより多いことに起因する。高倍率で、エアロゲル薄膜フィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)法によって、小径の束の高度に相互接続されているランダムネットワークを明らかにする(
図13(c~e))。両方の架橋された場合において、微細で均一な細孔構造が観察される一方で、架橋剤の非存在下では、より粗いネットワークが見られ、より大きな程度の再束化が明らかであり、これはSSAにも反映される。架橋ネットワークの平均孔径が約5nmである場合、構造全体にわたる効率的なガス拡散のために十分な間隔を維持しながら、高い表面積が達成される。各架橋ネットワーク、並びに非架橋対照及び脱気出発材料の特徴付けデータの概要を表1に示す。
【0230】
【0231】
実施例2-層ごとの堆積方法
材料及び方法
精製HiPcoをNanointegrisから購入し、グローブボックスに導入する前に、高真空下10-6mbar、500℃で10時間脱気した。ナトリウム(99.95%インゴット)、DMAc(無水99.8%)、ナフタレン(99%)及びp-ジヨードベンゼン(99%)は、Sigma Aldrich Ltd.(UK)から購入した。イソプロパノール及び脱イオン水は、VWR Ltd.(USA)から購入した。乾燥空気(O2/N2 20/80 v/v)は、BOCから購入した。還元溶解及び分子ナノ層堆積は、グローブボックス内の不活性条件下で実施した(mBraun、O2<0.1ppm、H2O<0.1ppm)。全ての反応は室温で実行され、ラマン分光法に使用される多層フィルムはシリコンウェハ上に堆積された。
【0232】
還元溶解
バルク「ナノチューバイド」溶液を、等モル量のナトリウムインゴット(30mg、1.30mmol)及びナフタレン(167mg)をDMAc(15.0mL)に添加することによって調製し、2mgNamLDMAc
-1のナトリウム濃度を得た。暗緑色の溶液を18時間撹拌した。次いで、ナトリウムナフタリド溶液(2.24mL、2.24mmolNa)を脱気したSWCNT粉末(40mg)に添加して、ナトリウム:炭素化学量論比1:10を得た。次いで、溶液を追加のDMAcで希釈して、1.8mgSWCNT mLDMAc
-1の濃度及び15mMの最適[Na]を得た。溶液をガラス撹拌棒で一晩撹拌して、使用前に均質な溶液を得た。
【0233】
分子ナノ層堆積
還元されたSWCNTを更にDMAcで希釈して、0.2mgmL-1の質量投入量を得た。3-ヨードプロピルトリメトキシシランでシラン化されたガラス基板上に、200μLの希釈SWCNTをスピンコーティングすることによって、第1の層を堆積させた。次いで、基板を架橋剤p-DIBの15mg/mL-1溶液中に10分間浸漬し、続いて純DMAc中に更に5分間浸漬した。10分間のナノチューバイドの浴中への基板の浸漬、続いて再び5分間の純DMAc中への浸漬で、単一の架橋サイクルを完了した。4回の個々の浸漬を、SWCNT及び架橋剤の各々の後続の層について繰り返した。次に、多層フィルムをグローブボックスから除去し、残留充填物を乾燥酸素ガス(20:80のO2:N2 v:v)でクエンチした。最後に、フィルムを脱イオン水及びイソプロピルアルコールで洗浄した後、窒素流下で乾燥させた。
【0234】
微細構造
多層フィルムのヘリウムイオン顕微鏡法によって、高度に個別化されたSWCNT種及び小さな束の多孔性ネットワークを明らかにする。大きな程度の個別化は、より大きな束を分離するのに非常に効果的である還元的剥離経路を反映している。
図14Aは、SWCNTの最初の層を示し、ほとんどの領域において、フィルムは、単一のナノチューブ又は非常に少数の積層されたSWCNTのいずれかからなるように見える。第2の層を追加した後、架橋剤が存在しない場合(
図14b)、第1の層の上に追加のSWCNTが存在するように見えるが、ナノチューブによる絶対的な被覆率はほとんど変化していない。逆に、架橋されたフィルム(
図14c)は、第2の層へのSWCNTのより多くの付加及び炭素材料のはるかに大きい密度を示す。堆積される材料の量は、架橋層を使用する場合に増加し、共有結合グラフト化が堆積を制御していることを示しており、かなりの量のSWCNTをフィルムに固定するために必要とされる。
【0235】
顕微鏡画像を黒色及び白色ピクセルに閾値化することによって(
図15)、基板バックグラウンドと比較したSWCNTの総被覆率の値を決定することができ、第2の層中に存在するSWCNTの量に関する指標を与える。単一層のSWCNT被覆率(C
SWCNT)は、1.35であると決定されたが、第2の層が架橋剤なしで追加された場合、1.44のわずかに高い被覆率のみが計算された。架橋されたフィルムは、1.81のC
SWCNTを生じ、着信層へのグラフト化に利用可能なヨード基がある場合、はるかに多くの材料が堆積されることを示す。
【0236】
原子間力顕微鏡法(AFM)を利用して、最初のSWCNT層の厚さ、次いで後続の層の厚さを決定した(
図16)。HIMと同様に、AFMによって、個々のSWCNT及び小径の束の高度に相互接続されているネットワークを明らかにする。スピンコーティングによって堆積された第1の層は、4nm~6nmの厚さを有し、粗さは1.6nmであった。第2の層を追加すると、厚さは、架橋フィルム及び非架橋フィルムの両方について6~9nmに増加したが、架橋フィルムについての2.1nmと比較して、架橋層の非存在下では2.9nmのより大きな粗さが観察された。これは架橋剤とのグラフト反応の結果であり、SWCNTをフィルムの平面に引き込み、粗さを低減させると仮定される。一方、非架橋フィルムは、より多くの材料が面外に位置し、粗さを増加させる。第2の層の追加による2~3nmの厚さの増加は、SWCNTの単層が追加された後、炭素-ハライド結合が枯渇して反応が終了することを示唆する。
【0237】
紫外可視分光法
架橋反応が堆積を制御しているという論点を補強するために、紫外可視分光法を行った(
図17)。顕著なVan Hove単一バンドがフィルムにおいて観察され、これはここでも、顕微鏡法を通して観察される高度の個別化を反映する。これらの離散したエネルギー準位の存在は、典型的には溶液中で観察されるが、固体状態におけるそれらの存在は、分子層堆積が著しい再束化を妨げることを示す。550nmでのSWCNTフィルムの透過率は、フィルム中に存在する材料の量に対する良好な指標を与える。非架橋フィルムの場合よりもより大きな透過率の低減が、架橋2層の場合に観察され、堆積を制御する際の架橋の役割を再確認する。透過率の線形低下が、最大で合計10層の各後続層について観察され、フィルム厚及び透明度にわたって達成され得る制御の程度を実証する(
図17b、c)。
【0238】
ラマン分光法
MNDの性質は、振動モードを測定する技術であるラマン分光法によって更に精査され、構造中に存在する結合のタイプの決定を可能にした。1300cm
-1に現れる欠陥誘起モードは、sp
2炭素格子への損傷の指標であり、1600cm
-1付近に現れるこのピークの黒鉛ピークに対する比(I
D/I
G
+)を使用して、側壁官能化の程度を決定する。統計的ラマン分光法によると、平均I
D/I
G
+が0.11±0.015から0.17±0.016にシフトするので、架橋試薬による第1のSWCNT層の官能化を確認する(
図18b)。架橋二重層は、単官能化SWCNT層よりも小さいDバンドを示し、追加のSWCNT材料が堆積されたことを示す。0.13±0.010のI
D/I
G
+は、単一層について観察されたものよりも大きく、第1の層の残留ハライド物基との反応を示す。
【0239】
還元的架橋化学を利用する、高度に相互接続されている架橋SWCNTフィルムの層ごとの分子ナノ層堆積(MND)のための方法が、本明細書で報告される。層の上にフィルムを組み立てることは、高度に調整可能な交差機能性(cross-functionality)、例えば導電率、光透過率及び厚さを有する階層構造への経路を提供する。還元溶解は、高度に個別化された種の溶液を生じ、これは誘電子剤(dielectrophiles)との架橋を介して多層フィルムに組み立てることができる。AFM、HIM、紫外可視分光法及びラマン分光法の組み合わせを用いて堆積プロセスを特徴付け、架橋剤との共有結合反応がSWCNTの堆積を駆動することを明らかにした。層ごとのアプローチは、フィルム特性に対する非常に厳密な制御を提供し、厚さ及び透明度は層の数に応じて異なる。更に、室温反応条件及び単純な浴浸漬コーティングプロセスは、堆積の潜在的なスケールアップを容易にする。示された方法は、光起電装置、センサ及び触媒から導電性インク及びコーティングまでの様々な潜在的用途の範囲のための薄膜フィルムに適用してもよい。
【0240】
実施例3-ガス感知
ガス感知測定
SWCNT試料を特注のフローセルに配置し、様々なガス分析物に曝露しながら4線測定を使用して抵抗を記録した(Keysight4410A DMM)。ガス混合物は、再調整されたKinTek H2O Span Pacにおいて窒素キャリアガスを使用して透過チューブ及び拡散チューブから生成された。
【0241】
センサを、窒素流下で100℃に加熱することによってゼロ合わせした。測定値は、分析物の連続的な6分間の曝露、続いて純粋なキャリアガスの6分間の曝露で取得した。分析物濃度は、透過デバイスの温度及び希釈ガス流量を制御することによって調整した。
【0242】
アミンに対する分析応答
エアロゲルフィルムは、SWCNT表面をソース及びドレインコンタクトプローブと接触させることによって、ケミレジスタガスセンサの活性構成要素に形作られた。低い10億分率(ppb)から100万分率(ppm)までの範囲の様々な濃度のガス分析物を、乾燥窒素キャリアガス中でセンサに供給した。フェニル架橋ネットワークは、臭気アミン、アンモニア、n,n-ジメチルエチルアミン(DMEA)及びトリエチルアミン(TEA)に対して高い感度を示した(
図19)。アンモニアは、非架橋及びフェニル架橋ネットワークの両方について、0.1ppmという低濃度で検出された。DMEA及びTMEAの両方は、それぞれ55ppmから4.5ppmまで、及び32ppmから2ppmまで強い応答を誘発する。フェニル架橋は、分析物結合に有意に寄与する官能基を含まないので、信号変換は、SWCNT表面へのアミンの吸着によって引き起こされる。抵抗が増加する傾向は、SWCNTの電子構造によって説明され、アミンの表面吸着は、電子のSWCNTネットワークへの部分電荷移動を引き起こす。これは、p型ネットワーク内の主要電荷キャリアである正孔の利用可能性を低減し、電気コンダクタンスを制限する。非常に高い感度が観察され、これは、還元的に剥離され、続いて架橋された、アミン吸着のための大きな表面を提供するSWCNTに起因し得る。
【0243】
非架橋ネットワークは、依然として良好な性能を示すが、それらが更に同じ個別化プロセスを経ることを考慮すると、デバイス感度は、再束化を防止するために架橋剤が使用された場合よりも依然として測定可能な程度に低い。より個別化されたセンサネットワークの感度増強の別の理由は、より多数のCNT結合であり得る。高導電性ネットワークでは、導電率はチューブ-チューブ結合部で制限されるので、これらの位置で電子構造を摂動させると、より顕著な応答が得られる。より大きな程度の再束化は、チューブ内感知応答を優勢な効果にするが、より剥離された架橋ネットワークでは、チューブ内効果がより優勢である。
【0244】
揮発性酸の感知
VOCである、酢酸及びイソ吉草酸でのエアロゲルフィルムのガス感知挙動に対し更なる調査を行った。アニリン架橋で架橋されたネットワークは、遊離アミン部位を使用して酸分子に対する結合親和性を増大させる試み、及びチューブ結合部への結合事象を局在化させ、チューブ間感知機構の優勢を増大させる試みの両方において利用された。Boc保護アニリンを合成に使用して、C-Brと荷電SWCNT表面との間のグラフト化を促進し、窒素含有基での不要な副反応を排除した。遊離アミンがXPSで検出され(表1)、選択的結合部位が試料中に存在することを示した。酢酸に曝露すると、強いシグナルが観察され、有意な線形抵抗変化が、1ppmから最大16ppm(
図20(a))及び0.15ppm~2.4ppmのより低濃度の範囲の両方で見られた。導電率の増大は、アミン分子への曝露時に見られる効果と対照的であり、SWCNTから吸着された電子求引性酸への電荷移動が起こるという説明に有利になる。電子密度の低減は、ネットワークにおける正孔導電率を増大させ、より低い抵抗の形態で応答を誘発する。アニリン架橋を含まないエアロゲルフィルムと比較して、感度の大幅な増大が観察される。この増大は、遊離アミン結合部位と吸着された酸との間の相補的相互作用により、ネットワーク上への酸の追加の吸着が存在することを示す。加えて、酢酸分子がアミン部位で相互作用している場合、共役ネットワークからの電荷移動があり、ドーピング効果に加えて、より大きな感知応答を与える。分析物結合部位をチューブ間結合部に位置決めすることによって、単一の結合事象が、浸透経路全体に沿った輸送を変調し得る。このタイプの結合は、電気輸送が制限されない側壁位置での吸着よりも大きな応答を誘発すると仮定される。セレクタ部分を含まないネットワークは、低ppm範囲の酢酸に対して依然として高感度であるが、感度は2~3倍減少し、アミン官能基が応答において果たす重要な役割を強調する。
【0245】
同様の挙動が、別の低分子量カルボン酸であるイソ吉草酸で観察され、抵抗の測定可能な低下は7ppbと低いと分かり、線形応答は110ppbまでの動的範囲をカバーした。アニリンリンカーを欠く制御ネットワークは、28ppbへの曝露まで有意な抵抗変化を示さず、抵抗変化率(%)はアニリン架橋試料よりも小さかった。
【0246】
アニリン架橋エアロゲルフィルムセンサは、再現性があり、6ヶ月より長い期間安定であった。両方の酸分析物について同様の挙動が観察され、分子とSWCNTネットワークとの間の結び付きが同じであることを示し、カルボキシル基からの電荷移動を指し示した。酢酸応答の動的範囲を外挿することにより、検出限界はイソ吉草酸と同じ領域にあるように見える。検出限界は、このような有害な悪臭化合物に極めて高感度であるように数千年にわたって進化してきたヒト嗅覚系の検出限界、7ppbに達する。酸分子に対する感度を増強することによって、ある程度の選択性が感知材料に付与された。
【0247】
両方のタイプのエアロゲル薄膜フィルムセンサの全動的範囲は、低いppbからppmまでの広い濃度範囲にわたって、電子豊富分析物及び電子不足分析物の両方に対して感度を示す(
図19)。それは、実際の試料中のガスの定量化を可能にする、測定された各分析物についての分析物濃度と測定された抵抗応答との間の線形関係を示す。酸及びアミン分析物について見られる逆の傾向は、電荷移動機構を示す。
【0248】
エアロゲルフィルムの仕事関数は、表面電子が光電効果によって遊離する、周囲圧力光電子分光法(APS)によって決定される。光電子放出の開始エネルギーは、仕事関数エネルギーを提供する。
【0249】
要約すると、還元されたカーボンナノチューブ(SWCNT)の溶液が三次元ネットワークに架橋される、固有のエアロゲル薄膜フィルム堆積が実証された。SWCNTエアロゲルフィルムは、均一なメソ多孔性構造を有する高度の個別化を示す。活性材料において観察されたこれらの特性は、ppb域において様々な酸及びアミンガスに対して高感度である化学センサをもたらした。遊離アミン結合部位による官能化は、酸化合物に対する感度を増強し、このクラスの分子に対してある程度の選択性を付与する。2つのクラスの化合物についてのラマンGピーク位置のシフト及び抵抗の反対の変化は、信号伝達が、吸着された分析物分子からの化学ドーピングに応じて異なることを示す。架橋モチーフを改変することによって、このネットワーク構造は、任意のクラスの分析物の選択的感知に適用されてもよい。セレクタ取り付けの容易さと合体した高感度は、この技術が効果的な固体状態ガスセンサの開発に使用され得ることを意味する。
【0250】
実施例4
MNDガス感知
分子ナノ層堆積(MND)プロセスをBocDBAにより適用して、アニリン架橋多層フィルムを形成した。アニリン架橋フィルムを低濃度の酢酸蒸気に曝露して、固体状態ガスセンサにおける新しい構造の有用性を評価した。
【0251】
6層のMNDフィルムは高い感度を示し、2.5ppmのAcOHに曝露されたときに1.3%の抵抗変化を誘発した(
図22)。デバイスは、0.16ppmの低AcOH濃度で0.18%の有意な抵抗応答を示し、シグナルノイズは最小であった。抵抗応答は、測定された濃度範囲にわたって高度に線形であった。このデバイスの感知応答を使用して線形範囲をプロットし、LoDの決定を可能にした。高感度及び低ノイズは、臭気閾値をはるかに上回る10ppbの理論的検出限界をもたらした。また、応答は非常に可逆的であり、初期抵抗は純粋な窒素の6分サイクル後にほぼ完全に回復した。
【0252】
本明細書において範囲の両端として開示される値は、列挙される正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。代わりに、特に明記しない限り、各数値範囲は、列挙された値、明記された範囲内の、及び明記された範囲を有する任意の範囲内の任意の整数の両方を意味するよう意図されている。例えば、「1~10」として開示されている範囲は、「1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10」を意味するように意図されている。本明細書全体を通して与えられる全ての最大数値限定は、全てのより低い数値限定を、かかるより低い数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように包含することを理解すべきである。本明細書の全体を通して与えられる全ての最小数値制限は、全てのより高い数値制限を、あたかもこのようなより高い数値制限が本明細書に明示的に記載されているかのように含むものとする。本明細書の全体を通して与えられる全ての数値範囲は、このような広い数値範囲内に入るあらゆる狭い数値範囲を含み、あたかもこのような狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのようである。
【0253】
本明細書において範囲の両端として開示される値は、列挙される正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。代わりに、特に明記しない限り、各数値範囲は、列挙された値、明記された範囲内の、及び明記された範囲を有する任意の範囲内の任意の整数の両方を意味するよう意図されている。例えば、「1~10」として開示されている範囲は、「1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10」を意味するように意図されている。
【0254】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0255】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0256】
本開示の特定の実施形態について例示し記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。