(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】新規なガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体及びこれを用いたイソロイシン生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20241016BHJP
C12N 15/77 20060101ALI20241016BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241016BHJP
C12P 13/06 20060101ALI20241016BHJP
C07K 14/34 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C12N15/77 Z
C12N1/21
C12P13/06 C
C07K14/34
(21)【出願番号】P 2023535385
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2021018520
(87)【国際公開番号】W WO2022124786
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173743
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12739P
(73)【特許権者】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンリム
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウソン
(72)【発明者】
【氏名】イ、グァン ウ
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Bacteriology,2014年,Vol.196, No.3,pp.515-526
【文献】"amino acid transporter [Corynebacterium glutamicum]",[online], retrieved from the Internet,2016年,retrieved on 2024.05.24,<URL;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/OKX83310.1>
【文献】"amino acid transporter [Corynebacterium glutamicum]",[online], retrieved from the Internet,2017年,retrieved on 2024.05.24,<URL;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ANU33332.1>
【文献】"gamma-aminobutyrate permease [Corynebacterium jeikeium K411]",[online], retrieved from the Internet,2015年,retrieved on 2024.05.24,<URL;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/CAI38123.1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P 13/00-13/24
C07K 14/00-14/825
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有し、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)
活性を有するガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体。
【請求項2】
請求項1に記載の変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項4】
請求項1に記載の変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター;のいずれか一つ以上を含む、微生物。
【請求項5】
前記微生物は、L-イソロイシンを生産
し、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物である、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
前記微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である、請求項4に記載の微生物。
【請求項7】
請求項4に記載の微生物を培地で培養する段階を含む、L-イソロイシン生産方法
であって、前記微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)である、L-イソロイシン生産方法。
【請求項8】
前記方法は、前記培地または微生物からL-イソロイシンを回収する段階をさらに含む、請求項
7に記載のL-イソロイシン生産方法。
【請求項9】
前記方法は、L-イソロイシン生産時に発生する副産物を減少させるものである、請求項
7に記載のL-イソロイシン生産方法。
【請求項10】
前記副産物は、アルファ-アミノ酪酸(α-aminobutyrate;AABA)、バリン、フェニルアラニン、及びロイシンで構成される群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項
9に記載のL-イソロイシン生産方法。
【請求項11】
請求項4に記載の微生物を培地で培養する段階を含む、L-イソロイシン生産時に発生する副産物を減少させる方法
であって、前記微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)である、方法。
【請求項12】
請求項4に記載の微生物または前記微生物の培養物を含む、L-イソロイシン生産用組成物
であって、前記微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)である、L-イソロイシン生産用組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体または
請求項4に記載の微生物のL-イソロイシン生産への使用
であって、前記微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、L-イソロイシン生産時に発生する副産物を減少させる新規なガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体、前記変異体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記変異体、ポリヌクレオチド、またはベクターを含む微生物、及び前記微生物を用いてL-イソロイシンを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-イソロイシンは、計20種類のアミノ酸中、分枝鎖アミノ酸(branched-chain amino acid)の一種類であり、必須アミノ酸に分類され、動物飼料、食品添加物及び医薬分野に用いられる。L-イソロイシンは、代謝後のエネルギー生成、ヘモグロビン生成、血糖調節、筋肉の生成及び修復などの機能をするため、輸液剤、栄養剤、スポーツ栄養剤だけでなく、動物飼料分野でも使用が増加している。
【0003】
このような傾向に基づいて、L-アミノ酸生産のために、多様な微生物及びその変異体が用いられるが(特許文献1)、このような場合にもL-イソロイシンを除いた副産物が多数生成され、これは、精製段階でL-イソロイシンの純度に影響を多く及ぼす物質であるため、副産物を除去できる方法が必要である。それに関連し、L-イソロイシンの純度を高めるために開発されたL-イソロイシン精製方法などは、別途の追加の精製過程が要求される短所があり(特許文献2)、L-イソロイシンの純度を増加させる方法の開発が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10113190号明細書
【文献】米国特許第6072083号明細書
【文献】韓国公開特許第10-2020-0136813号公報
【文献】米国特許第7662943号明細書
【文献】米国特許第10584338号明細書
【文献】米国特許第10273491号明細書
【文献】韓国登録特許第10-1996769号公報
【文献】韓国特許出願第10-2020-0078669号
【文献】米国特許第10662450号明細書
【文献】韓国登録特許第10-1335789号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pearson et al(1988)[Proc. Natl.Acad.Sci.USA85]:2444
【文献】Rice et al.、2000,Trends Genet. 16:276-277
【文献】Needleman and Wunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443-453
【文献】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research12:387(1984)
【文献】Atschul,[S.][F.,][ET AL,J MOLEC BIOL215]:403(1990)
【文献】Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,[ED.,]Academic Press,San Diego、1994
【文献】[CARILLO ETA/。](1988)SIAM J Applied Math48:1073
【文献】Smith and Waterman,Adv.Appl.Math(1981)2:482
【文献】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)
【文献】Gribskov et al(1986)Nucl.Acids Res.14:6745
【文献】J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989
【文献】F.M.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York
【文献】Sambrook et al.,supra、9.50-9.51,11.7-11.8
【文献】Sitnicka et al.Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology.2010,Vol.2.1-16
【文献】Sambrook et al.Molecular Cloning 2012
【文献】Nakashima N et al.,Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing.Int J Mol Sci.2014;15(2):2773-2793
【文献】「Manual of Methods for General Bacteriology」 by the American Society for Bacteriology(Washington D.C.,USA、1981)
【文献】Introduction to Biotechnology and Genetic Engineering,A J Nair、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微生物を用いたL-イソロイシン生産時に純度を増加させるために鋭意努力した結果、副産物であるアルファ-アミノ酪酸及びL-バリンなどを減少させ、L-イソロイシン生産に寄与できるガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)をコードする遺伝子aroPを確認し、純度をさらに増加させる変異を確保した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一つの目的は、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体を提供することにある。
本出願のもう一つの目的は、前記変異体をコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
【0008】
本出願の他の一つの目的は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供することにある。
本出願の他の一つの目的は、前記変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター;のいずれか一つ以上を含む、微生物を提供することにある。
【0009】
本出願の他の一つの目的は、L-イソロイシン生産方法を提供することにある。
本出願の他の一つの目的は、L-イソロイシン生産用組成物を提供することにある。
本出願の他の一つの目的は、前記変異体、前記変異体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、または前記微生物のL-イソロイシン生産への使用を提供することにある。
【発明の効果】
【0010】
本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体を発現する微生物は、これを発現しない菌株に比べてL-イソロイシンの純度を顕著に向上させるため、これを用いてL-イソロイシンを効果的に生産することができる。したがって、L-イソロイシンを活用する食品、飼料、及び医薬など広範囲な産業的活用を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本出願内容について具体的に説明すれば、次の通りである。一方、本出願で開示した一様態の説明及び実施形態は、共通した事項について異なる様態の説明及び実施形態にも適用することができる。また、本出願で開示された多様な要素のすべての組合せが本出願の範疇に属する。併せて、下記の具体的な記述により本出願の範疇が制限されるとは見られない。
【0012】
本出願の一様態は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体を提供する。
【0013】
前記変異体は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目のアミノ酸がスレオニンで置換、114番目のアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目のアミノ酸がバリンで置換されたものであってもよく、具体的には、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸であるグリシンがスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸であるイソロイシンがフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸であるアラニンがバリンで置換されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0014】
前記変異体は、配列番号3、配列番号20及び配列番号21で構成される群から選択されるいずれか一つ以上の配列からなるものであってもよいが、これに制限されない。
具体的には、配列番号1のアミノ酸配列で212番目のアミノ酸であるグリシンがスレオニンで置換された変異体は、配列番号3、配列番号1のアミノ酸配列で114番目のアミノ酸であるイソロイシンがフェニルアラニンで置換された変異体は、配列番号20、及び配列番号1のアミノ酸配列で28番目のアミノ酸であるアラニンがバリンで置換された変異体は、配列番号21からなるものであってもよいが、これに制限されない。
【0015】
本出願の変異体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼで212番、114番目、または28番目に対応する位置のアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、副産物の吸収が増加することにより、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ活性が強化されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0016】
本出願において用語、「L-イソロイシン」は必須アミノ酸の一つであり、構造的にL-バリン、L-ロイシンと共に分枝鎖アミノ酸に該当する化学式HO2CCH(NH2)CH(CH3)CH2CH3であるL-アミノ酸を意味する。
【0017】
本出願において用語「ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)」とは、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ活性を有するポリペプチドまたはタンパク質であり、アルファ-アミノ酪酸(α-aminobutyrate)またはL-バリンを吸収(uptake)する活性を有するタンパク質またはポリペプチドを意味する。前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼは、L-イソロイシン生産時に発生する副産物であるアルファ-アミノ酪酸(α-aminobutyrate)またはL-バリンだけでなく、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-トリプトファン、またはL-ヒスチジンも吸収する活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよいが、これに制限されない。前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼは、環状アミノ酸パーミアーゼ(aromatic amino-acid permease)と混用され得、前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼをコードする遺伝子はaroP遺伝子と混用され、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼはAroPと混用され得る。
【0018】
前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼは、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。前記配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質は配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号1のアミノ酸配列で構成されるタンパク質と混用され得る。
【0019】
具体的には、前記配列番号1は、aroP遺伝子によりコードされるガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼのアミノ酸配列であってもよく、前記配列番号1のアミノ酸配列は、公知のデータベースであるNCBI GenBankなど多様なデータベースからその配列を得ることができるが、これに制限されない。一例として、前記配列番号1のアミノ酸配列は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)由来であってもよく、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来であってもよいが、これに制限されず、前記配列番号1のアミノ酸配列と同一の活性を有する配列は、制限なく含まれ得る。また、本出願におけるガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ活性を有するタンパク質は、配列番号1のアミノ酸を含むポリペプチドまたはタンパク質と記載したが、配列番号1のアミノ酸配列前後での無意味な配列追加または自然的に発生しうる突然変異、またはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質と互いに同一または対応する活性を有する場合であれば、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ活性を有するポリペプチドまたはタンパク質に該当することは当業者に自明である。具体的には、例えば、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列またはこれと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであってもよい。また、このような相同性または同一性を有し、前記ポリペプチドに対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも本出願のポリペプチドの範囲内に含まれることは自明である。
【0020】
本出願において「特定配列番号で記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはタンパク質」、「特定配列番号で記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはタンパク質」または「特定配列番号で記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはタンパク質」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同一あるいは対応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、保存的置換または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本出願において用いられることは自明である。例えば、前記アミノ酸配列N-末端そして/またはC-末端にタンパク質の機能を変更しない配列追加、自然的に発生しうる突然変異、そのサイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換を有する場合である。
【0021】
本出願において、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(gamma-aminobutyrate permease)を確保する方法は、当該分野でよく知られた多様な方法が適用可能である。その方法の例としては、酵素発現に通常的に広く利用される微生物で酵素を高効率で確保することができるようにコドン最適化が含まれた遺伝子合成技術そして微生物の大量遺伝体情報をベースに生物情報学的方法により有用酵素資源のスクリーニング方法を通じて変異株を確保することができ、これに制限されるものではない。
【0022】
本出願において用語、「変異」または「変異体」は、遺伝的または非遺伝的に一つの安定した表現型的変化を示す培養物や個体を意味し、具体的には、本出願においては配列番号1のアミノ酸配列を有するガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(gamma-aminobutyrate permease)のアミノ酸が変異され、その活性が野生型と比較して効率的に増加した変異体であってもよいが、これに制限されない。
【0023】
本出願において用語、「変異体(variant)」または「変異型ポリペプチド(modified polypeptide)」は、一つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/又は変形(modification)において前記列挙された配列(the recited sequence)と相違するが、前記タンパク質の機能(functions)または特性(properties)が維持されるタンパク質を指す。前記変異体は、数個のアミノ酸置換、欠失または付加により識別される配列(identified sequence)と相違する。このような変異体は、一般に、前記タンパク質のアミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸を変形し、前記変形されたタンパク質の特性を評価して識別することができる。すなわち、変異体の能力は、原タンパク質(native protein)に比べて増加したり、変わらなかったり、または減少することがある。また、一部の変異体は、N-末端リーダー配列または膜貫通ドメイン(transmembrane domain)のような一つ以上の部分が除去された変異型ポリペプチドを含むことができる。他の変異体は、成熟タンパク質(mature protein)のN-及び/又はC-末端から一部分が除去された変異体を含むことができる。前記用語「変異体」または「変異型ポリペプチド」は、変異型、変形、変異されたタンパク質、変異などの用語(modification,modified protein,mutant,mutein,divergent,variantなど)が混用され得、変異された意味で用いられる用語であれば、これに制限されない。
【0024】
本出願の目的上、前記変異体は、天然の野生型または非変形タンパク質に比べて変異されたタンパク質の活性が増加したものであってもよいが、これに制限されない。
本出願において用語「保存的置換(conservative substitution)」は、あるアミノ酸を類似の構造的及び/又は化学的性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。前記変異体は、一つ以上の生物学的活性を相変らず保有しながら、例えば、一つ以上の保存的置換を有することができる。このようなアミノ酸の置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて発生し得る。
【0025】
例えば、電荷を帯びる側鎖(electrically charged amino acid)を有するアミノ酸中、正で荷電された(塩基性)アミノ酸はアルギニン、リシン、及びヒスチジンを、負で荷電された(酸性)アミノ酸はグルタミン酸及びアスパラギン酸を含み;電荷を帯びない側鎖(uncharged side chain)を有するアミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンを含むものに分類することができる。
【0026】
また、変異体は、ポリペプチドの特性と2次構造に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含むことができる。例えば、ポリペプチドは、翻訳と同時に(co-translationally)または翻訳後に(post-translationally)タンパク質の移転(transfer)に関与するタンパク質N-末端のシグナル(またはリーダー)配列とコンジュゲートすることができる。また、前記ポリペプチドは、ポリペプチドを確認、精製、または合成できるように他の配列またはリンカーとコンジュゲートできる。
【0027】
本出願の変異体は、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)活性を有することができ、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)活性が増加したものであってもよいが、これに制限されない。
【0028】
本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ活性を有する変異体は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたポリペプチドまたはタンパク質と記載したが、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたアミノ酸配列前後での無意味な配列追加または自然的に発生しうる突然変異、またはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質と互いに同一または対応する活性を有する場合であれば、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ活性を有するポリペプチド、タンパク質、または変異体に該当することは当業者に自明である。具体的には、例えば、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの活性を有するポリペプチドまたは変異体は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたアミノ酸配列またはこれと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであってもよい。また、このような相同性または同一性を有し、前記ポリペプチドに対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも本出願のポリペプチドの範囲内に含まれることは自明である。
【0029】
本出願において用語「対応する(corresponding)」または「対応する位置(corresponding position)」は、タンパク質またはポリペプチドで列挙される位置のアミノ酸残基であるか、またはタンパク質またはポリペプチドで列挙される残基と類似または同一または相同のアミノ酸残基を指す。本出願に用いられた「対応領域」は、一般に、関連タンパク質またはレファレンスタンパク質における類似または対応する位置を指す。
【0030】
本出願において、本出願に用いられるタンパク質内のアミノ酸残基位置に特定番号付けが用いられる。例えば、比較しようとする対象タンパク質と本出願のタンパク質のポリペプチド配列を整列させることにより、本出願のタンパク質のアミノ酸残基位置に対応する位置に対して再番号付けすることが可能である。
【0031】
本出願において用語、「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列に関連した程度を意味し、百分率で表示することができる。用語、相同性及び同一性はしばしば相互交換的に用いられる。
【0032】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられる。実質的に、相同性を有したり(homologous)または同一の(identical)配列は、一般に、配列全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%により中程度または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイゼーションすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドで一般のコドンまたはコドン縮退性を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドも含まれることが自明である。
【0033】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al(1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA85]:2444でのようなデフォルトパラメータを利用して「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定することができる。またはEMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000,Trends Genet.16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を用いて決定することができる(GCGプログラム パッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research12:387(1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul,[S.][F.,][ET AL,J MOLEC BIOL215]:403(1990);Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,[ED.,]Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/。](1988)SIAM J Applied Math48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを利用して相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0034】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math(1981)2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al.(1970)、J Mol Biol.48:443のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは(1)2進法比較マトリックス(同一性のために1そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)により開示された通り、Gribskov et al(1986)Nucl.Acids Res.14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0035】
また、任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは定義されたストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験により配列を比較することにより確認することができ、定義される適切なハイブリダイゼーション条件は、当該技術範囲内であり、当業者によく知られている方法(例えば、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989;F.M.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York)で決定することができる。
【0036】
本出願の他の一つの様態は、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。具体的には、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0037】
前記配列番号1のアミノ酸配列、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ、及び変異体については、前述した通りである。
本出願において、前記配列番号1のアミノ酸配列は、例えば、配列番号2の塩基配列(nucleic acid sequence)を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよく、前記配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換された、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体は、配列番号22~配列番号24のいずれか一つの塩基配列(nucleic acid sequence)を含むポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、これに制限されない。
【0038】
前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号22~配列番号24のいずれか一つの塩基配列を含んでもよいが、これに制限されない。
【0039】
本出願において用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)であり、一定長さ以上のDNAまたはRNA鎖を意味する。本出願において、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの活性を示すポリペプチドをコードするものであってもよいが、これに制限されない。
【0040】
前記ポリヌクレオチドは、本出願によるガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであれば、制限なく含まれ得る。本出願において、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子はaroP遺伝子であり、前記遺伝子はコリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物由来であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)由来であってもよいが、これに制限されない。
【0041】
具体的には、前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記配列番号1または配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたアミノ酸をコードする塩基配列を含むことができる。前記ポリヌクレオチドはコドンの縮退性(degeneracy)により、または前記ポリペプチドを発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形がなされ得る。前記ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2の塩基配列を含むことができ、これと相同性または同一性が80%、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、96%以上、97%以上、98%以上またはさらに具体的には99%以上である塩基配列からなってもよいが、これに制限されない。
【0042】
また、本出願のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子配列から製造することができるプローブ、例えば、前記塩基配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下にハイブリダイゼーションし、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換されたアミノ酸配列をコードする配列であれば、制限なく含まれ得る。
【0043】
具体的には、配列番号1のアミノ酸配列で、212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換された変異体をコードする配列は配列番号22、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換された変異体をコードする配列は配列番号23、28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された変異体をコードする配列は、配列番号24を含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0044】
前記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J.Sambrook et al.、同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性または同一性が高いポリヌクレオチド同士、40%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、さらに具体的には99%以上の相同性または同一性を有するポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションと、それより相同性または同一性が低いポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、具体的に60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より具体的に68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0045】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーにより塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、二つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語「相補的」は、互いにハイブリダイゼーションが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに用いられる。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンに相補的で、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願のポリヌクレオチドは、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、全体配列に相補的な単離された核酸断片を含むことができる。
【0046】
具体的には、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、前記Tm値は60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適切に調節することができる。
【0047】
ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性程度に依存し、変数は当該技術分野によく知られている(Sambrook et al.,supra、9.50-9.51,11.7-11.8を参照)。
【0048】
本出願のもう一つの態様は、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。具体的には、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0049】
前記配列番号1のアミノ酸配列、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ、変異体、ポリヌクレオチドは、前述した通りである。
本出願において用いられた用語「ベクター」とは、適した宿主内で目的ポリペプチドを発現させるように適した発現調節領域(または発現調節配列)に作動可能に連結された前記目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記発現調節領域は転写を開始できるプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含むことができる。ベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムと関係がなく複製されたり機能することができ、ゲノムそれ自体に統合することができる。
【0050】
本出願で用いられるベクターは、特に限定されず、当業界に知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを使用することができる。具体的にはpDCM2(韓国公開特許番号第10-2020-0136813号)、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを使用することができる。
【0051】
一例として、細胞内染色体挿入用ベクターを通じて染色体内に目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体内に挿入することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組換え(homologous recombination)により行うことができるが、これに限定されない。前記染色体挿入の有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、すなわち、目的核酸分子の挿入の有無を確認するためのものであり、薬品耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面ポリペプチドの発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが用いられる。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞だけ生存したり他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0052】
本出願において「発現カセット」とは、プロモーターと目的遺伝子を含んでおり、プロモーターに作動可能に連結されている目的遺伝子を発現させる単位カセットを意味する。このような遺伝子発現カセットの内部または外部には、前記目的遺伝子の効率的な発現に役立つ多様な因子が含まれ得る。前記遺伝子発現カセットは、通常、前記目的遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)以外に転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含んでもよいが、これに制限されない。
【0053】
本出願において用語「形質転換」とは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞あるいは微生物内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現できさえすれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置したり染色体外に位置したりに関係なく、これらすべてを含むことができる。また、前記ポリヌクレオチドは、目的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、いかなる形態でも導入することができる。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自主的に発現するのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入することができる。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含むことができる。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクター形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに制限されない。
【0054】
また、前記において用語「作動可能に連結」されたとは、本出願の目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0055】
本出願のベクターを形質転換させる方法は、核酸を細胞内に導入するいかなる方法も含まれ、宿主細胞により当分野において公知となった通り、適した標準技術を選択して行うことができる。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)の沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)の沈殿、微量注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポソーム法、及び酢酸リチウム-DMSO法などがあるが、これに制限されない。
【0056】
本出願のもう一つの態様は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター;のいずれか一つ以上を含む、微生物を提供する。
【0057】
一つの具体例として、本出願の微生物は、L-イソロイシンを生産する微生物であってもよいが、これに制限されない。具体的には、本出願の微生物は、目的産物としてL-イソロイシンを生産する微生物であってもよく、本出願の前記変異体、ポリヌクレオチド;及びベクターのいずれか一つ以上を含み、L-イソロイシン生産能が増加した微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0058】
前記配列番号1のアミノ酸配列、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、及びL-イソロイシンは、前述した通りである
本出願において用語「微生物」は、野生型微生物や、自然的または人為的に遺伝的変形が起きた微生物をすべて含み、外部遺伝子が挿入されたり内在的遺伝子の活性が強化したり弱化するなどの原因により特定の機序が弱化したり強化した微生物をすべて含む概念である。本出願において微生物は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター中の一つ以上が導入されたり含まれる微生物であれば、制限なく含まれ得る。
【0059】
本出願において、前記微生物は、前記ポリペプチド;これをコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を含むことができる。
本出願の微生物は、前記ポリペプチド;これをコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を含み、目的タンパク質または前記目的タンパク質が生産に関与する目的産物の生産能を有する微生物であってもよいが、これに制限されない。前記微生物は、自然的に目的タンパク質または目的産物生産能を有している微生物、または目的タンパク質または目的産物生産能がない親株に目的タンパク質または目的産物生産能が付与された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0060】
前記微生物は、本出願のポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換され、例えば、目的タンパク質を発現する細胞または微生物であり、本出願の目的上、前記宿主細胞または微生物は、前記目的タンパク質を含み目的産物を生産できる微生物であれば、いずれも可能である。
【0061】
前記微生物は、組換え微生物であってもよく、前記組換えは、形質転換のような遺伝的変形(genetically modification)により行われてもよい。
本出願において用語、「目的タンパク質または目的産物を生産する微生物」は、野生型微生物や自然的または人為的に遺伝的変形が起きた微生物をすべて含み、外部遺伝子が挿入されたり内在的遺伝子の活性が強化されたり不活性化されるなどの原因により特定の機序が弱化したり強化した微生物であり、目的とするタンパク質または産物の生産のために遺伝的変形(modification)を含む微生物であってもよい。
【0062】
当該微生物は、前記ポリペプチド、これをコードするポリヌクレオチド、及び前記ポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を通じて遺伝的に変形された微生物;前記ポリペプチド、またはこれをコードするポリヌクレオチドを発現するように変形された微生物;前記ポリペプチド、またはこれをコードするポリヌクレオチドを発現する組換え微生物;または前記ポリペプチド活性を有する組換え微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0063】
本出願の目的上、前記目的タンパク質または目的産物を生産する微生物は、前記本出願のポリヌクレオチドを含み、目的タンパク質または目的産物生産能が増加したことを特徴とする微生物であってもよい。具体的には、本出願において目的タンパク質または目的産物を生産する微生物、または目的タンパク質または目的産物生産能を有する微生物は、目的タンパク質または目的産物生合成経路内の遺伝子の一部が強化または弱化したり、目的タンパク質または目的産物分解経路内の遺伝子の一部が強化または弱化した微生物であってもよい。
【0064】
本出願の微生物は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター中の一つ以上を含む微生物であってもよいが、これに制限されない。また、本出願の微生物は、目的産物としてL-イソロイシンを生産する微生物であってもよく、非変形または野生型微生物に比べてL-イソロイシン生産性の増加またはL-イソロイシン生産時に発生する副産物が減少したものであってもよいが、これに制限されない。
【0065】
本出願において用語、タンパク質が「発現するように/する」とは、目的タンパク質が微生物内に導入されたり、微生物内で発現するように変形された状態を意味する。前記目的タンパク質が微生物内に存在するタンパク質である場合、内在的または変形前に比べてその活性が強化された状態を意味する。
【0066】
本出願のタンパク質変異体を発現する微生物は、タンパク質変異体を発現するように変形された微生物であってもよく、したがって、本出願の他の一つの様態は、本出願のタンパク質変異体を発現する微生物の製造方法を提供する。
【0067】
本出願において「タンパク質の導入」とは、微生物が本来有していなかった特定タンパク質の活性を示すようになること、または当該タンパク質の内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すようになることを意味する。例えば、特定タンパク質が導入されたり、特定タンパク質をコードするポリヌクレオチドが微生物内染色体に導入されたり、特定タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが微生物内に導入され、その活性が示されることであってもよい。
【0068】
本出願において用語、ポリペプチドまたはタンパク質活性の「強化」とは、ポリペプチドまたはタンパク質の活性が内在的活性に比べて増加することを意味する。前記強化は、上向き調節(up-regulation)、過発現(overexpression)、増加(increase)などの用語と混用され得る。ここで、増加は、本来有していなかった活性を示すようになること、または内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すようになることをすべて含むことができる。前記「内在的活性」は、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する場合、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定ポリペプチドまたはタンパク質の活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドまたはタンパク質の活性が内在的活性に比べて「強化」または「増加」するということは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定ポリペプチドまたはタンパク質の活性に比べて向上したことを意味する。一例として、前記形質変化前の親株または非変形微生物のタンパク質活性に比べて最小1%、3%、5%、10%、25%、50%、75%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、または500%、最大1000%または2000%まで向上したことであってもよいが、これに制限されない。前記用語「約(about)」は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などをすべて含む範囲であり、約という用語の後に出てくる数値と同等または類似の範囲の数値をすべて含むが、これに制限されない。
【0069】
前記「活性増加」は、外来のポリペプチドまたはタンパク質を導入したり、内在的なポリペプチドまたはタンパク質の活性強化を通じて達成することができるが、具体的には、内在的なポリペプチドまたはタンパク質の活性強化を通じて達成することであってもよい。前記ポリペプチドまたはタンパク質の活性の強化の有無は、当該ポリペプチドまたはタンパク質の活性程度、発現量または当該タンパク質から排出される産物の量の増加から確認することができる。
【0070】
前記ポリペプチドまたはタンパク質の活性の強化は、当該分野によく知られた多様な方法の適用が可能であり、目的ポリペプチドまたはタンパク質の活性を変形前の微生物より強化させることができる限り、制限されなくてもよい。前記方法は、これに制限されるものではないが、分子生物学の日常的方法である当業界の通常の技術者によく知られた遺伝子工学及び/又はタンパク質工学を用いたものであってもよい(Sitnicka et al.Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology.2010,Vol.2.1-16,Sambrook et al. Molecular Cloning 2012など)。
【0071】
前記遺伝子工学を利用してポリペプチドまたはタンパク質活性を強化する方法は、例えば、
1)前記ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加、
2)前記ポリペプチドまたはタンパク質をコードする染色体上の遺伝子発現調節領域を活性が強力な配列で交換する方法、
3)前記ポリペプチドまたはタンパク質の開始コドンまたは5’-UTR領域の塩基配列を変形させる方法、
4)前記ポリペプチドまたはタンパク質活性が増加するように染色体上のポリヌクレオチド配列を変形させる方法、
5)前記ポリペプチドまたはタンパク質の活性を示す外来ポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドのコドン最適化された変異型ポリヌクレオチドの導入、または
6)前記方法の組合せなどにより実行され得るが、これに制限されない。
【0072】
前記タンパク質工学を利用してポリペプチドまたはタンパク質活性を強化する方法は、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の三次構造を分析し、露出部位を選択して変形したり化学的に修飾する方法などにより実行されるが、これに制限されない。
【0073】
前記1)ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドの細胞内コピー数の増加は、当業界に知られている任意の方法、例えば、当該ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主と関係がなく複製され、機能できるベクターが宿主細胞内に導入されることにより行われ得る。または前記遺伝子が作動可能に連結された、宿主細胞内の染色体内に前記遺伝子またはポリヌクレオチドを挿入させるベクターが遺伝子宿主細胞内に導入されることにより実行されるが、これに制限されない。前記ベクターは、前述した通りである。
【0074】
前記2)ポリペプチドまたはタンパク質をコードする染色体上の遺伝子発現調節領域(または発現調節配列)を活性が強力な配列で交換する方法は、当業界に知られている任意の方法、例えば、前記発現調節領域の活性をより一層強化するように核酸配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せで配列上の変異を誘導して行ったり、より一層強い活性を有する核酸配列で交換することにより行われ得る。前記発現調節領域は、特に、これに制限されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写及び解読の終結を調節する配列などを含むことができる。前記方法は、具体的には、本来のプロモーターの代わりに強力な異種プロモーターを連結させることであってもよいが、これに制限されない。
【0075】
公知となった強力なプロモーターの例としては、cj1~cj7プロモーター(米国登録特許US7662943 B2)、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、gapAプロモーター、SPL7プロモーター、SPL13(sm3)プロモーター(米国登録特許US10584338 B2)、O2プロモーター(米国登録特許US10273491 B2)、tktプロモーター及びyccAプロモーターなどがあるが、これに制限されない。
【0076】
前記3)ポリペプチドまたはタンパク質の開始コドンまたは5’-UTR領域の塩基配列を変形させる方法は、当業界に知られている任意の方法、例えば、前記ポリペプチドまたはタンパク質の内在的開始コドンを前記内在的開始コドンに比べてポリペプチドまたはタンパク質発現率がさらに高い他の開始コドンで置換することもできるが、これに制限されない。
【0077】
前記4)前記ポリペプチドまたはタンパク質活性が増加するように染色体上のポリヌクレオチド配列を変形させる方法は、当業界に知られている任意の方法、例えば、前記ポリヌクレオチド配列の活性をより一層強化するように核酸配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せで発現調節配列上の変異を誘導して行ったり、より一層強い活性を有するように改良されたポリヌクレオチド配列で交換することにより行われ得る。前記交換は具体的に相同組換えにより前記遺伝子を染色体内に挿入することもできるが、これに制限されない。
【0078】
この時に用いられるベクターは、染色体挿入の有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。前記選別マーカーは、前述した通りである。
【0079】
前記5)前記ポリペプチドまたはタンパク質の活性を示す外来ポリヌクレオチドの導入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、前記ポリペプチドまたはタンパク質と同一/類似の活性を示すポリペプチドまたはタンパク質をコードする外来ポリヌクレオチド、またはそのコドン最適化された変異型ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入して行われ得る。前記外来ポリヌクレオチドは前記ポリペプチドまたはタンパク質と同一/類似の活性を示す限り、その由来や配列に制限なく用いられる。また、導入された前記外来ポリヌクレオチドが宿主細胞内で最適化された転写、翻訳が行われるようにそのコドンを最適化して宿主細胞内に導入することができる。前記導入は、公知となった形質転換方法を当業者が適切に選択して実行することができ、宿主細胞内で前記導入されたポリヌクレオチドが発現することによりポリペプチドまたはタンパク質が生成され、その活性を増加させることができる。
【0080】
最後に、6)前記方法の組合せは、前記1)~5)のいずれか一つ以上の方法を共に適用して行われ得る。
このようなポリペプチドまたはタンパク質活性の強化は、対応するポリペプチドまたはタンパク質の活性または濃度が野生型や変形前の微生物菌株で発現したポリペプチドまたはタンパク質の活性または濃度を基準として増加したり、当該ポリペプチドまたはタンパク質から生産される産物の量の増加することであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0081】
本出願において用語「変形前の菌株」または「変形前の微生物」は微生物に自然的に発生しうる突然変異を含む菌株を除くものではなく、野生型菌株または天然型菌株自体や、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する前の菌株を意味する。前記「変形前の菌株」または「変形前の微生物」は「非変異菌株」、「非変形菌株」、「非変異微生物」、「非変形微生物」または「基準微生物」と混用され得る。
【0082】
一つの具体例において、本出願の微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)であってもよいが、これに制限されない。
本出願の「コリネバクテリウム属」は、すべてのコリネバクテリウム属微生物を含むことができる。具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・スタチオニス(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singulare)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)またはコリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)であってもよく、さらに具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・クレナタム(Corynebacterium crenatum)、またはコリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)であってもよい。
【0083】
本出願において前記微生物の親株は、L-イソロイシンの生産量を増加させるために、さらにL-イソロイシンの生合成経路を強化させた微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0084】
具体的には、前記微生物は、前記L-イソロイシンの生合成経路を強化させるために、例えば、aroPプロモーターをgapAプロモーターで置換してプロモーターの機能を強化させたり、イソロイシンの前駆体であるスレオニンのフィードバック阻害解消のためにホモセリンデヒドロゲナーゼをコードするhom遺伝子に遺伝的変異(R407H)(大韓民国登録特許第10-1996769号)をさらに導入したり、L-スレオニンデヒドラターゼをコードするilvA遺伝子に遺伝的変異(T381A、F383A)を導入したり(大韓民国特許出願第10-2020-0078669号)、アスパルトキナーゼをコードするlysC遺伝子に遺伝的変異(L377K)(米国登録公報US10662450 B2)をさらに導入した微生物であってもよい。しかし、前記に制限されず、当業界に公知となった遺伝子発現調節方法でL-イソロイシンの生産量を増加させることができる。
【0085】
L-イソロイシンの生産量を増加させるためのもう一つの例として、本出願において前記微生物の親株は、L-イソロイシンの生産量を増加させるために、さらにL-イソロイシンの生合成経路を弱化させる遺伝子を不活性化させた微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0086】
本出願において用語、ポリペプチドまたはタンパク質の「不活性化」または「弱化」は内在的活性に比べて活性が減少したりまたは活性がないことをすべて含む概念である。前記不活性化または弱化は、下向き調節(down-regulation)、減少(decrease)、低下(reduce)などの用語と混用され得る。前記不活性化または弱化は、前記タンパク質をコードする遺伝子の変異などでタンパク質自らの活性が本来微生物が有しているタンパク質の活性に比べて減少または除去された場合と、これをコードする遺伝子の発現阻害または翻訳(translation)阻害などで細胞内で全体的なタンパク質活性程度が天然型菌株に比べて低い場合、前記遺伝子の発現が全く行われない場合、及び発現されても活性がない場合も含むことができる。前記「内在的活性」とは、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する場合、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定ポリペプチドまたはタンパク質の活性を意味する。これは、「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドまたはタンパク質の活性が内在的活性に比べて「減少」するということは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定ポリペプチドまたはタンパク質の活性に比べて低くなったことを意味する。一例として、前記形質変化前の親株または非変形微生物のタンパク質活性に比べて低くなったことであってもよいが、これに制限されない。
【0087】
このようなタンパク質の不活性化または活性の弱化は、これに制限されるものではないが、当該分野によく知られた多様な方法の適用により達成することができる(Nakashima N et al.,Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing.Int J Mol Sci.2014;15(2):2773-2793,Sambrook et al.Molecular Cloning 2012など)。
【0088】
前記方法の例として、
1)前記タンパク質をコードする前記遺伝子の全体または一部を欠失させる方法;
2)前記タンパク質をコードする前記遺伝子の発現が減少するように発現調節領域(または発現調節配列)の変形、
3)前記タンパク質の活性が除去または弱化するようにタンパク質をコードする前記遺伝子配列の変形、
4)前記タンパク質をコードする前記遺伝子の転写体に相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)の導入;
5)前記タンパク質をコードする前記遺伝子のシャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列前端にシャイン・ダルガノ配列と相補的な配列を付加して2次構造物を形成させてリボソーム(ribosome)の付着を不可能にさせる方法;
6)前記タンパク質をコードする前記遺伝子のポリヌクレオチド配列のORF(open reading frame)の3’末端に反対方向に転写するプロモーターを付加する方法(Reverse transcription engineering,RTE)などがあり、これらの組合せでも達成することができるが、これに特に制限されるものではない。
【0089】
具体的には、前記タンパク質をコードする前記遺伝子の一部または全体を欠失する方法は、微生物内染色体挿入用ベクターを通じて染色体内内在的目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを一部ヌクレオチド配列が欠失したポリヌクレオチドまたはマーカー遺伝子で交換することにより行われ得る。このようなポリヌクレオチドの一部または全体を欠失する方法の一例として相同組換えによりポリヌクレオチドを欠失させる方法が用いることができるが、これに限定されない。
【0090】
また、前記遺伝子の一部または全体を欠損させる方法は、紫外線のような光または化学物質を利用して突然変異を誘発し、得られた突然変異体から目的遺伝子が欠損された菌株を選別して行われ得る。前記遺伝子欠損方法にはDNA組換え技術による方法が含まれる。前記DNA組換え技術には、例えば、目的遺伝子と相同性があるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列またはベクターを前記微生物に注入して相同組換え(homologous recombination)が起きるようにすることにより行われ得る。また、前記注入されるヌクレオチド配列またはベクターには優性選別マーカーを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0091】
また、前記発現調節配列を変形する方法は、当該分野によく知られた多様な方法の適用で達成することができる。前記方法の例として、前記発現調節領域(または発現調節配列)の活性をより一層弱化するようにポリヌクレオチド配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せで発現調節領域(または発現調節配列)上の変異を誘導して行ったり、より一層弱い活性を有するポリヌクレオチド配列で交換することにより行うことができる。前記発現調節領域には、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、及び転写と解読の終結を調節する配列を含むが、これに限定されるものではない。
【0092】
また、前記遺伝子配列を変形する方法は、前記ポリペプチドの活性をより一層弱化するように遺伝子配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せで配列上の変異を誘導して行ったり、より一層弱い活性を有するように改良された遺伝子配列または活性がないように改良された遺伝子配列で交換することにより行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0093】
例えば、遺伝子配列内変異を導入して終結コドンを形成させることにより、遺伝子の発現を阻害したり弱化させることができる。
本出願のもう一つの態様は、L-イソロイシン生産方法を提供する。具体的には、前記方法は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター中の一つ以上を含む微生物を培地で培養する段階を含む、方法を提供する。
【0094】
本出願のもう一つの態様は、L-イソロイシン生産時に発生する副産物を減少させる方法を提供する。具体的には、前記方法は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター中の一つ以上を含む微生物を培地で培養する段階を含む、方法を提供する。
【0095】
前記L-イソロイシン、配列番号1のアミノ酸、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、微生物は、前述した通りである。
前記微生物は、前記微生物はコリネバクテリウム属であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムであってもよいが、これに制限されない。これについては、前述した通りである。
【0096】
本出願において、用語「培養」とは、前記微生物を適当に調節された環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当業界に知られている適当な培地と培養条件により行われ得る。このような培養過程は、選択される菌株により当業者が容易に調整して用いることができる。具体的には、前記培養は、回分式、連続式及び流加式であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0097】
本出願において用語、「培地」とは、前記微生物を培養するために必要とする栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水を始めとして栄養物質及び発育因子などを供給する。具体的には、本出願の微生物の培養に用いられる培地及びその他培養条件は通常の微生物の培養に用いられる培地であれば、特別な制限なくいずれも用いられるが、本出願の微生物を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有した通常の培地内で好気性条件下で温度、pHなどを調節して培養することができる。
【0098】
本出願において前記炭素源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトースなどのような炭水化物;マンニトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などのような有機酸;グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのようなアミノ酸などが含まれ得る。また、デンプン加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米ぬか、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液のような天然の有機栄養源を使用することができ、具体的には、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(すなわち、還元糖に転換された糖蜜)などのような炭水化物が用いられ、その他の適正量の炭素源を制限なく多様に利用することができる。これら炭素源は、単独で用いられたり2種以上が組合せわせて用いられ、これに限定されるものではない。
【0099】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのような無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのようなアミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などのような有機窒素源が用いられる。これら窒素源は単独で用いられたり2種以上が組合せわせて用いられ、これに限定されるものではない。
【0100】
前記リン源としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、またはこれに対応するナトリウム含有塩などが含まれ得る。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが用いられ、その他にアミノ酸、ビタミン及び/又は適切な前駆体などが含まれ得る。これら構成成分または前駆体は、培地に回分式または連続式で添加することができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0101】
また、前記微生物の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などのような化合物を培地に適切な方式で添加し、培地のpHを調整することができる。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培地の好気状態を維持するために、培地内に酸素または酸素含有気体を注入したり嫌気及び微好気状態を維持するために気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入することができ、これに限定されるものではない。
【0102】
培地の温度は20℃~50℃、具体的には30℃~37℃であってもよいが、これに制限されない。培養期間は、有用物質の目的とする生成量が得られるまで続けることができ、具体的には、10時間~100時間であってもよいが、これに制限されない。
【0103】
具体的には、コリネバクテリウム属菌株に関する培養培地は、文献[「Manual of Methods for General Bacteriology」 by the American Society for Bacteriology (Washington D.C.,USA、1981)]で調べることができるが、これに制限されない。
【0104】
一つの具体例として、前記L-イソロイシン生産方法、L-イソロイシン製造方法、またはL-イソロイシン生産時に発生する副産物を減少させる方法は、前記培地または微生物からL-イソロイシンを回収する段階をさらに含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0105】
前記L-イソロイシンを回収する方法は、本出願の微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式培養方法などにより当該技術分野に公知となった適切な方法を利用して目的とするL-イソロイシンを収集(collect)することであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLC及びこれらの方法を組み合わせて用いることができ、当該分野に公知となった適切な方法を利用して培地または微生物から目的とするL-イソロイシンを回収することができる。
【0106】
前記生産方法は、さらに精製工程を含むことができる。前記精製工程は、当該技術分野に公知となった適切な方法を利用し、回収されたL-イソロイシンを精製することができる。前記の回収されるL-イソロイシンは、精製された形態、あるいは目的産物を含有した微生物発酵液であってもよい。(Introduction to Biotechnology and Genetic Engineering,A J Nair、2008)
一つの具体例として、前記L-イソロイシン生産方法または製造方法は、L-イソロイシン生産時に発生する副産物を減少させることもできるが、これに制限されない。
【0107】
本出願において用語「副産物」は、L-イソロイシン生産時に発生しうるあらゆる物質を含む。前記副産物は、アルファ-アミノ酪酸(α-aminobutyrate;AABA)及びL-イソロイシン以外の他のアミノ酸であるアルギニン(Arg,R)、ヒスチジン(His,H)、グルタミン酸(Glu,E)、アスパラギン酸(Asp,D)、グリシン(Gly,G)、アラニン(Ala,A)、バリン(Val,V)、ロイシン(Leu,L)、メチオニン(Met,M)、フェニルアラニン(Phe,F)、トリプトファン(Trp,W)、プロリン(Pro,P)、セリン(Ser,S)、システイン(Cys,C)、チロシン(Tyr,Y)、アスパラギン(Asn,N)及びグルタミン(Gln,Q)から選択されるいずれか一つ以上であってもよいが、これに制限されない。本出願の目的上、前記副産物は、アルファ-アミノ酪酸(α-aminobutyrate;AABA)、バリン、フェニルアラニン、及びロイシンで構成される群から選択されるいずれか一つ以上であってもよく、具体的には、アルファ-アミノ酪酸またはバリンであってもよいが、これに制限されない。
【0108】
本出願のもう一つの態様は、L-イソロイシン生産用組成物を提供する。具体的には、前記組成物は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクター中の一つ以上を含む微生物または前記微生物の培養物を含むことを提供する。
【0109】
前記配列番号1のアミノ酸、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、微生物、及び培養については、前述した通りである。
前記L-イソロイシン生産用組成物は、本出願のガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体によりL-イソロイシンを高効率で生産できる組成物を意味し得る。前記組成物は、前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの変異体または前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ変異体を作動させる構成を制限なく含むことができる。前記ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼの変異体は、導入された宿主細胞で作動可能に連結された遺伝子を発現させるようにベクター内に含まれた形態であってもよい。
【0110】
前記組成物は、凍結保護剤または賦形剤をさらに含むことができる。前記凍結保護剤または賦形剤は、非自然的に発生した(non-naturally occurring)物質または自然に発生した物質であってもよいが、これに制限されるものではない。また、一つの具体例として、前記凍結保護剤または賦形剤は、前記菌株が自然的に接触しない物質、または前記菌株と自然的に同時に含まれない物質であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0111】
本出願のもう一つの態様は、配列番号1のアミノ酸配列で212番目の位置に対応するアミノ酸がスレオニンで置換、114番目の位置に対応するアミノ酸がフェニルアラニンで置換、または28番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換された、ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(γ-aminobutyrate permease)変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;及び前記ポリヌクレオチドを含むベクターまたは前記変異体、前記変異体をコードするポリヌクレオチド、及び前記ポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を含む、微生物のL-イソロイシン生産への使用を提供することにある。
【0112】
前記変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、微生物、及びイソロイシンは、前述した通りである。
以下、本出願を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例及び実験例は、本出願を例示的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれら実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0113】
参考例1:aroP遺伝子過発現のためのベクター製作
本出願の目的に応じてガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼ(gamma-aminobutyrate permease)をコードするaroP遺伝子及びその変異体による形質変化をさらに明確に確認するために、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株でaroP遺伝子を過発現した。
【0114】
ガンマ-アミノ酪酸パーミアーゼをコードするaroP遺伝子を過発現するために、aroP遺伝子プロモーターをgapAプロモーターで交換してaroPプロモーターを強化したプラスミドベクターを製作した。
【0115】
aroPプロモーターをgapAプロモーターで置換した菌株を製作するために、ATCC13032の染色体を鋳型として配列番号4及び配列番号5、配列番号6及び配列番号7、または配列番号8及び配列番号9のプライマーを用いてPCRをそれぞれ行った。前記それぞれのPCRを行うために用いられたプライマーは、下記表1に示した通りである。
【0116】
【0117】
前記PCR反応のための重合酵素としてPfuUltraTMハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で1分間の重合反応であり、このような条件の変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返した。その結果、gapAプロモーターの部分とaroP遺伝子開始コドンを中心に5’上端部位の1000bp DNA断片と3’下端部位の1392bp DNA断片をそれぞれ得た。増幅された三種類のDNA切片を鋳型とし、配列番号4及び配列番号9のプライマーでPCRを再び行った。PCR条件として95℃5分間変性の後、95℃で30秒間変性;及び72℃で2分間重合を6回繰り返した後、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で2分間重合を20回繰り返した後、72℃で5分間の重合反応を行った。その結果、gapAプロモーターを含むaroP遺伝子をコードする2.4kbのDNA断片が増幅された。増幅産物をQUIAGEN社のPCR Purification kitを用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。
【0118】
一方、ベクターに制限酵素smaIを処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクターと前記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにしてタカラ(TaKaRa)のInfusion Cloning Kitを用いて提供されたマニュアルによりクローニングしてaroPプロモーターがgapAプロモーターで置換されて染色体上に導入するためのベクターpDCM2-PgapA-aroPを製作した。
【0119】
参考例2:L-イソロイシン生産菌株製作
野生型のコリネバクテリウム・グルタミカムは、L-イソロイシンを生産する能力はあるが、過量生産は行わない。したがって、本出願の目的に応じてL-イソロイシン生産能を増加させる遺伝形質を確認するために、L-イソロイシン生産能が増加した菌株を活用した。
【0120】
まず、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032からL-イソロイシン生産菌株を開発した。具体的には、L-イソロイシン生合成経路でイソロイシンの前駆体であるスレオニンのフィードバック阻害解消のために、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserine dehydrogenase)をコードする遺伝子homを変異し、ホモセリンデヒドロゲナーゼの407番目のアミノ酸であるアルギニンをヒスチジンで置換した(大韓民国登録特許第10-1996769号)。具体的には、hom(R407H)をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号10に示した。
【0121】
具体的には、hom(R407H)変異が導入された菌株を製作するために、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の染色体を鋳型として配列番号11及び配列番号12または配列番号13及び配列番号14のプライマーを用いてPCRをそれぞれ行った。前記それぞれのPCRを行うために用いられたプライマー配列は、下記表2に示した通りである。
【0122】
【0123】
PCR反応のための重合酵素としては、PfuUltraTMハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び重合反応72℃で1分間の重合反応であり、このような条件の変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返した。その結果、hom遺伝子の変異を中心に5’上端部位の1000bp DNA断片と3’下端部位の1000bpのDNA断片をそれぞれ得た。
【0124】
増幅された二種類のDNA切片を鋳型とし、配列番号11及び配列番号14のプライマーでPCRを行った。PCR条件として95℃5分間変性の後、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で2分間重合を28回繰り返した後、72℃で5分間の重合反応を行った。
【0125】
その結果、407番目のアルギニンがヒスチジンで置換されたホモセリンデヒドロゲナーゼ変異体をコードするhom遺伝子の変異を含む2kbのDNA断片が増幅された。増幅産物をPCR精製キット(PCR Purification kit,QUIAGEN)を用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。精製した増幅産物を制限酵素smaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクター(韓国公開特許番号第10-2020-0136813号)と前記増幅産物である挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにし、インフュージョンクローニングキット(Infusion Cloning Kit,TaKaRa)を用いて提供されたマニュアルによりクローニングしてhom(R407H)変異を染色体上に導入するためのベクターpDCM2-R407Hを製作した。
【0126】
製作されたベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上でhom(R407H)変異を含む菌株を得、これをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 hom(R407H)と命名した。
【0127】
製作したATCC13032 hom(R407H)菌株にL-イソロイシンに対するフィードバック解除と活性を増加させるために、L-スレオニンデヒドラターゼ(L-threonine dehydratase)をコードする遺伝子であるilvAを変異し、L-スレオニンデヒドラターゼ(配列番号25)の381番目のアミノ酸であるスレオニンをアラニンで置換及び383番目のアミノ酸であるフェニルアラニンをアラニンで置換した。具体的には、ilvA(T381A、F383A)が導入された菌株を製作し、ilvA(T381A、F383A)をコードするポリヌクレオチドは配列番号15に示した。
【0128】
具体的には、前記ilvA(T381A、F383A)変異が導入された菌株を製作するために、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の染色体を鋳型として配列番号16及び配列番号17または配列番号18及び配列番号19のプライマーを用いてPCRをそれぞれ行った。前記それぞれのPCRを行うために用いられたプライマー配列は、下記表3に示した通りである。
【0129】
【0130】
PCR反応のための重合酵素としては、PfuUltraTMハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;55℃で30秒間変性;及び72℃で1分間の重合反応であり、このような条件の変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返した。その結果、ilvA遺伝子の変異を中心に5’上端部位の1126bp DNA断片と3’下端部位の286bpのDNA断片をそれぞれ得た。
【0131】
増幅された二種類のDNA切片を鋳型とし、配列番号16及び配列番号19のプライマーでPCRを行った。PCR条件として95℃で5分間変性の後、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で2分間重合を28回繰り返した後、72℃で5分間の重合反応を行った。
【0132】
その結果、381番目のスレオニンがアラニンで及び383番目のフェニルアラニンがアラニンで置換されたL-スレオニンデヒドラターゼ変異体をコードするilvA遺伝子の変異を含む1.4kbのDNA断片が増幅された。増幅産物をPCR精製キット(PCR Purification kit,QUIAGEN)を用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。精製した増幅産物を制限酵素smaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクター(韓国公開特許番号第10-2020-0136813号)と前記増幅産物である挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにし、インフュージョンクローニングキット(Infusion Cloning Kit,TaKaRa)を用いて提供されたマニュアルによりクローニングしてhom(R407H)変異を染色体上に導入するためのベクターpDCM2-ilvA(T381A、F383A)を製作した。
【0133】
製作されたベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 hom(R407H)に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上でilvA(T381A、F383A)変異を含む菌株を得、これをコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101と命名した。
【0134】
前記菌株CA10-3101は、2020年5月27日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に国際寄託してKCCM12739Pとして寄託番号が与えられた。
【0135】
参考に、前記ilvA(T381A、F383A)をL-イソロイシン生産菌株に導入することがL-イソロイシンに対するフィードバック解除と活性を増加させ、L-イソロイシン生産性の効率を増加させるかを確認するために、次のような実験を行った。具体的には、NTG(N-Methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine)処理されたL-イソロイシン生産菌株であるKCJI-38(KCCM11248P、大韓民国登録特許第10-1335789号)菌株に前記ilvA(T381A、F383A)変異を電気パルス法で導入したKCCM11248P/pECCG117-ilvA(T381A、F383A)菌株培養液中のL-イソロイシン及びL-スレオニン濃度を測定した結果を下記表4に示した。
【0136】
【0137】
前記表4に示されるように、ilvA(T381A、F383A)変異を導入したKCCM11248P/pECCG117-ilvA(T381A、F383A)菌株は、KCCM11248PまたはKCCM11248P/pECCG117-ilvA(F383A)菌株に比べてL-イソロイシン生産が顕著に増加し、L-スレオニン分解率が高いことを確認した。言い換えれば、本出願の目的上、ilvA(T381A、F383A)変異は、L-イソロイシンに対するフィードバック解除と活性を増加させるために導入したことが確認された。
【0138】
実施例1:aroP遺伝子が過発現されたL-イソロイシン生産菌株の製作及びaroPがL-イソロイシンの発酵純度に及ぼす影響の確認
L-イソロイシンの生産時、aroP過発現または変異が副産物を減少させ、L-イソロイシンの純度を増加させるかどうかを確認するために、aroP遺伝子を強化した。このために、前記参考例2で製作したL-イソロイシン生産菌株であるCA10-3101を対象にした。具体的には、参考例1で製作したベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上でaroPプロモーターが強化された菌株を得、これをコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3117と命名した。親株(CA10-3101)及び前記aroP強化株(CA10-3117)をイソロイシン生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを製造した。本実施例で用いた生産培地の組成は、下記の通りである。
【0139】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH7.2
培養終了後、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)を利用してL-イソロイシン及び副産物の生産量を測定し、実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシンと副産物の濃度は、下記表5に示した。
【0140】
【0141】
その結果、前記表5で示されるように、親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101は2.5g/lの濃度でL-イソロイシンを生産し、主な副産物であるアルファ-ケト酪酸(AABA)及びL-バリンがそれぞれ0.9g/l及び1.4g/l検出されるのに対し、本実施例で製作したaroP強化株コリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3117は2.7g/lの濃度でL-イソロイシンを生産し、親株に比べてL-イソロイシン生産性が108%増加したことを確認した。また、副産物であるアルファ-ケト酪酸及びバリンがそれぞれ0.4g/l及び1.1g/l検出され、親株に比べて副産物であるアルファ-ケト酪酸及びバリンがそれぞれ55%及び21%減少することを確認した。
【0142】
前記の結果に基づいて、aroP遺伝子がL-イソロイシンの副産物を減少させ、L-イソロイシンの生産性を増加させてL-イソロイシンの発酵純度を増加させる対象になることを確認した。これにより、aroPをさらに改良して優れたaroP変異型を開発するために、ランダム突然変異法を用いた。
【0143】
実施例2:変異型aroPライブラリーベクター製作
前記参考例1で製作したベクターを基盤に、aroP変異ライブラリーを製作した。このために、ライブラリーはerror-prone PCR kit (clontech Diversify(商標) PCR Random Mutagenesis Kit)を利用して製作し、変異が発生しうる条件で配列番号8及び配列番号9をプライマーにしてPCR反応を行った。
【0144】
具体的には、1000bp当たり0~3個の変異が発生する条件で94℃で30秒間pre-heating後、94℃で30秒間、68℃で1分30秒間の過程を25回繰り返して行った。そのとき、得られた産物をmegaprimer(500~125ng)を利用して95℃で50秒間、60℃で50秒間、68℃で12分間の過程を25回繰り返して行った後、DpnI処理し、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25mg/L)が含まれたLB固体培地に塗抹した。形質転換されたコロニー20種を選別した後、プラスミドを取得してポリヌクレオチド配列を分析した結果、2mutations/kbの頻度で互いに異なる位置に変異が導入されたことを確認した。約20,000個の形質転換された大腸菌コロニーを取ってプラスミドを抽出し、これをpTOPO-aroP-libraryと命名した。
【0145】
実施例3:aroPライブラリーが導入されたL-イソロイシン菌株の製作
前記実施例2で製作されたpTOPO-aroP-libraryをコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)CA10-3101に電気穿孔法で形質転換した後、カナマイシン25mg/Lを含有した栄養培地に塗抹して変異遺伝子が挿入された菌株5,000個のコロニーを確保し、各コロニーをCA10-3101/pTOPO-aroPm1からCA10-3101/pTOPO-aroPm5000までと命名した。
【0146】
確保された5,000個のコロニー中、L-イソロイシン生産性の増加及び副産物が低減されるコロニーを確認するために、それぞれのコロニーに対して下記のような方法で発酵力価の評価を進めた。イソロイシン生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び前記変異株を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを製造した。本実施例で用いた生産培地の組成は、下記の通りである。
【0147】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH7.2
培養終了後、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)を利用してL-イソロイシン及びL-スレオニンの生産量を測定し、実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシンとL-バリン及びAABA濃度は、下記表6に示した。
【0148】
【0149】
-副産物の比率:副産物(AABA、L-バリン)濃度/(イソロイシン+副産物)濃度
その結果、前記表6で示されるように、親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101に比べてL-イソロイシン生産性が増加して副産物であるAABA及びL-バリンが減少した変異3種菌株を確認した。前記変異3種菌株に対するシークエンシングを進め、aroP遺伝子を野生型ATCC13032と比較した結果、前記変異3種菌株はaroP遺伝子に変異を含んでいることを確認した。
【0150】
具体的には、CA10-3101/pTOPO-aroPm138菌株は、aroPのアミノ酸配列で212番目のアミノ酸であるグリシンがスレオニンで置換(G212T)、CA10-3101/pTOPO-aroPm2542菌株はaroPのアミノ酸配列で114番目のアミノ酸であるイソロイシンがフェニルアラニンで置換(I114F)、及びCA10-3101/pTOPO-aroPm3798菌株はaroPのアミノ酸配列で28番目のアミノ酸であるアラニンがバリンで置換(A28V)されることを確認した。前記結果に基づいて、前記変異3種の菌株が親株に比べて高効率及び高収率でL-イソロイシンを生産し得ることを確認した。さらに具体的には、aroP(G212T)、aroP(I114F)、及びaroP(A28V)が導入されたそれぞれの菌株を親株と比較すると、L-イソロイシンは類似の濃度で生産したが、AABA濃度は33%、78%、及び56%減少し、L-バリンは0%、42%、及び8%減少し、副産物(AABA,Valine)の比率が16%、44%、22%減少し、aroP(G212T)、aroP(I114F)、またはaroP(A28V)が導入された菌株の副産物低減の効果が非常に優れることを確認した。
【0151】
実施例4:変異型aroPが導入されたL-イソロイシン菌株の製作
前記実施例3で製作したaroP変異型菌株中、L-イソロイシン生産性と副産物低減率が最も高いaroP(I114F)変異をコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101に形質転換した。
【0152】
具体的には、参考例1のようにATCC13032の染色体を鋳型として配列番号4及び配列番号5、配列番号6及び配列番号7のプライマーを用い、またはpTOPO-aroPm2542の染色体を鋳型として配列番号8及び配列番号9のプライマーを用いてPCRをそれぞれ行った。PCR反応のための重合酵素としては、PfuUltraTMハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;アニーリング55℃で30秒間変性;及び重合反応72℃で1分間であり、このような変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返した。その結果、gapAプロモーターの部分とaroP遺伝子開始コドンを中心に5’上端部位の1000bp DNA断片と3’下端部位の1392bpのDNA断片をそれぞれ得た。増幅された三種類のDNA切片を鋳型とし、配列番号4及び配列番号9のプライマーでPCRを行った。PCR条件は95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性;及び72℃で2分間重合を6回繰り返した後、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で2分間重合を20回繰り返した後、72℃で5分間の重合反応を行った。その結果、gapAプロモーターを含むaroP遺伝子をコードする2.4kbのDNA断片が増幅された。増幅産物をQUIAGEN社のPCR Purification kitを用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。一方、制限酵素smaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクターと前記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにしてタカラ(TaKaRa)のInfusion Cloning Kitを用いて提供されたマニュアルによりクローニングして変異型aroPプロモーターがgapAプロモーターで置換され、染色体上に導入するためのベクターpDCM2-PgapA-aroP(I114F)を製作した。
【0153】
前記で製作されたベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上で変異型aroPプロモーターが強化された菌株を得、CA10-3101::PgapA-aroP(I114F)菌株をCA10-3118と命名した。L-イソロイシン生産親株(CA10-3101)、実施例1で製作したaroP強化株(CA10-3117)、及び本実施例で製作したaroP(I114F)変異体導入菌株(CA10-3118)に対し、L-イソロイシン生産性の増加及び副産物低減の効果を確認するために、それぞれの菌株を下記のような方法で発酵力価の評価を行った。イソロイシン生産培地を25ml含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び前記菌株を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを製造した。本実施例で用いた生産培地の組成は、下記に示した。
【0154】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH7.2
培養終了後液体高速クロマトグラフィー(HPLC)を利用してL-イソロイシン、AABA、L-バリン濃度を測定した結果は下記表7に示した。
【0155】
【0156】
-副産物の比率:副産物(AABA、L-バリン)濃度/(イソロイシン+副産物)濃度
前記表7で示されるように、親株(CA10-3101)に比べてaroP強化株(CA10-3117)、aroP(G212T)変異体導入菌株、aroP(I114F)変異体導入菌株(CA10-3118)、及びaroP(A28V)変異体導入菌株で生産されたL-イソロイシンは増加し、副産物であるAABA及びL-バリンの濃度は減少することを確認した。
【0157】
具体的には、aroP(G212T)変異体導入菌株が生産するL-イソロイシンは親株及びaroP強化菌株に比べてそれぞれ15%及び7%増加し、AABAは親株に比べて44%減少しただけでなく、L-バリンは親株に比べて20%減少することを確認した。
【0158】
aroP(I114F)変異体導入菌株が生産するAABAは親株及びaroP強化菌株に比べてそれぞれ88%及び50%減少しただけでなく、L-バリンは親株及びaroP強化菌株に比べてそれぞれ42%及び30%減少することを確認した。
【0159】
aroP(A28V)変異体導入菌株が生産するL-イソロイシンは親株及びaroP強化菌株に比べてそれぞれ19%及び11%増加し、AABAは親株に比べて56%減少しただけでなく、L-バリンは親株及びaroP強化菌株に比べてそれぞれ25%及び10%減少することを確認した。
【0160】
また、それぞれの変異菌株がL-イソロイシン及び副産物(AABA、L-バリン)生産量比副産物(AABA、L-バリン)の比率が、aroP(G212T)変異体導入菌株、aroP(I114F)変異体導入菌株、及びaroP(A28V)変異体導入菌株が親株に比べてそれぞれ29%、47%、及び33%減少し、aroP強化菌株に比べてそれぞれ3%、27%、及び9%減少し、aroP(G212T)、aroP(I114F)、またはaroP(A28V)変異体導入菌株での副産物は減少し、L-イソロイシン生産性及び純度は顕著に増加することを確認した。
【0161】
前記菌株CA10-3118は2020年12月1日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に国際寄託してKCCM12857Pで寄託番号の付与を受けた。
【0162】
実施例5:L-イソロイシン生産菌株でaroP強化菌株及び変異型aroP導入菌株の製作
実施例4のaroP強化(gapAプロモーター導入)及びL-イソロイシン生産能の増加及び副産物の減少が最も優れたことが明らかになったaroP変異体(aroP(I114F)変異体)それぞれをNTG(N-Methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine)処理されたL-イソロイシン生産菌株であるKCJI-38(KCCM11248P、大韓民国登録特許第10-1335789号)菌株に電気パルス法で導入した後、カナマイシン25mg/Lを含有した選別培地に塗抹して形質転換し、2次交差過程を経て染色体上でaroPプロモーター強化及びaroP変異型強化株を取得した。その後、実施例1と同様の方法で培養液中のL-イソロイシンと副産物濃度を測定し、その結果を下記表8に示した。
【0163】
【0164】
-副産物の比率:副産物(AABA、L-バリン)濃度/(イソロイシン+副産物)濃度
前記表8で示されるように、aroPを導入したKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP菌株は親株であるKCCM11248PよりL-イソロイシン生産が増加して副産物が減少することを確認し、aroP変異体を導入したKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(G212T)、KCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(I114F)、及びKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(A28V)菌株はKCCM11248P及びKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP菌株に比べてL-イソロイシン生産が増加することを確認した。
【0165】
KCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(I114F)菌株はKCCM11248P及びKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP菌株に比べて、副産物であるAABAが約57%及び25%減少し、L-バリンが約33%及び20%減少し、
KCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(G212T)及びKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(A28V)菌株はKCCM11248P菌株に比べて副産物であるAABAがそれぞれ約43%及び43%減少し、L-バリンが約8%及び17%減少し、aroP変異体を導入した菌株の副産物低減率が顕著に高いことを確認した。
【0166】
また、各変異菌株のL-イソロイシン及び副産物(AABA、L-バリン)生産量比副産物(AABA、L-バリン)の比率はKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(G212T)、KCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(I114F)、及びKCCM11248P△Pn-aroP::PgapA-aroP(A28V)菌株が親株に比べてそれぞれ23%、34%、及び2%減少し、aroP強化菌株に比べてそれぞれ23%、16%、及び2%減少し、aroP(G212T)、aroP(I114F)、またはaroP(A28V)変異体導入菌株での副産物は顕著に減少し、L-イソロイシン生産性及び純度は顕著に増加することを確認した。
【0167】
前記結果から本出願のaroP強化株及びその変異体がL-イソロイシンの生産を増加させることを確認した。また、aroP強化株及びその変異体がL-イソロイシンの生産及び精製工程で純度を高めることに役立つ変異であることを確認することにより、前記変異は、L-イソロイシンの生産を増加させる役割をすることを確認した。
【0168】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0169】
【0170】
【配列表】