(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】軸受け及び封止デバイス
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20241016BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20241016BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20241016BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F16C33/78 D
F16J15/3204 201
F16J15/3232 201
F16J15/18 C
(21)【出願番号】P 2023535687
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2022072600
(87)【国際公開番号】W WO2022152319
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】202110062533.2
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シン リウ
(72)【発明者】
【氏名】リユアン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チエンチャン チャン
(72)【発明者】
【氏名】アオラン チン
(72)【発明者】
【氏名】ティン リ
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-148219(JP,A)
【文献】実開平03-044268(JP,U)
【文献】米国特許第04844485(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/72-33/82
F16J 15/16-15/32,15/324-15/3296,
15/46-15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置される
ように構成された封止デバイスであって、前記封止デバイスが、
フレームと、
封止部分と、を備え、前記封止部分の全体構造が、環状であり、前記封止部分が、弾性部分と、プラスチック部分と、を備え、前記弾性部分が、前記フレームに固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後に、前記プラスチック部分及び前記軸受け内側リングは接触封止部を形成し、前記弾性部分は前記プラスチック部分に対して固定されており、前記プラスチック部分の少なくとも一部が、半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記プラスチック部分の摩擦係数が、前記弾性部分の摩擦係数より小さ
く、
前記プラスチック部分の全体構造が、環状であり、前記プラスチック部分が、固定して接続された外側固定端及び内側自由端を備え、前記外側固定端が、前記内側自由端よりも半径方向外側で前記フレームの軸方向外側端部面に固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後、前記内側自由端が、前記封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり、かつ半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記弾性部分が、前記内側自由端に対して固定されており、
前記フレームに固定された停止リングを更に備え、前記停止リング及び前記フレームが、前記プラスチック部分の2つの軸方向端部にそれぞれ配置されている、封止デバイス。
【請求項2】
軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置されるように構成された封止デバイスであって、前記封止デバイスが、
フレームと、
封止部分と、を備え、前記封止部分の全体構造が、環状であり、前記封止部分が、弾性部分と、プラスチック部分と、を備え、前記弾性部分が、前記フレームに固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後に、前記プラスチック部分及び前記軸受け内側リングは接触封止部を形成し、前記弾性部分は前記プラスチック部分に対して固定されており、前記プラスチック部分の少なくとも一部が、半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記プラスチック部分の摩擦係数が、前記弾性部分の摩擦係数より小さく、
前記プラスチック部分の全体構造が、環状であり、前記プラスチック部分が、固定して接続された外側固定端及び内側自由端を備え、前記外側固定端が、前記内側自由端よりも半径方向外側で前記フレームの軸方向外側端部面に固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後、前記内側自由端が、前記封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり、かつ半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記弾性部分が、前記内側自由端に対して固定されており、
環状溝が、前記内
側自由端に画定され、前記内
側自由端が前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置されるとき、前記環状溝の開口が、前記軸受け内側リングに向かって面し、
前記プラスチック部分が、スラスト面を更に備え、前記スラスト面が、前記プラスチック部分及び前記軸受け内側リングが接触封止部を形成するときに、前記プラスチック部分の軸方向内側端部に位置し、
前記スラスト面が、前記プラスチック部分の周方向に沿って均等に配分され、隣接するスラスト面の傾斜面方向が、前記隣接するスラスト面の交線に対して対称的である、封止デバイス。
【請求項3】
前記プラスチック部分が、ポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項1
又は2に記載の封止デバイス。
【請求項4】
軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置されるように構成された封止デバイスであって、前記封止デバイスが、
フレームと、
封止部分と、を備え、前記封止部分の全体構造が、環状であり、前記封止部分が、弾性部分と、プラスチック部分と、を備え、前記弾性部分が、前記フレームに固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後に、前記プラスチック部分及び前記軸受け内側リングは接触封止部を形成し、前記弾性部分は前記プラスチック部分に対して固定されており、前記プラスチック部分の少なくとも一部が、半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記プラスチック部分の摩擦係数が、前記弾性部分の摩擦係数より小さく、
前記プラスチック部分の全体構造が、環状であり、前記プラスチック部分が、固定して接続された外側固定端及び内側自由端を備え、前記外側固定端が、前記内側自由端よりも半径方向外側で前記フレームの軸方向外側端部面に固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後、前記内側自由端が、前記封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり、かつ半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記弾性部分が、前記内側自由端に対して固定されており、
前記
外側固定端の軸方向外側端部面に固定された防塵リップを更に備え、前記内
側自由端が前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置されるときに、前記防塵リップが、軸方向において前記内
側自由端から離れ、かつ半径方向において前記軸受け内側リングに近い方向に延在する
、封止デバイス。
【請求項5】
軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置されるように構成された封止デバイスであって、前記封止デバイスが、
フレームと、
封止部分と、
ばねと、を備え、
前記封止部分の全体構造が、環状であり、前記封止部分が、弾性部分と、プラスチック部分と、を備え、前記弾性部分が、前記フレームに固定されており、前記封止デバイスが前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置された後に、前記プラスチック部分及び前記軸受け内側リングは接触封止部を形成し、前記弾性部分は前記プラスチック部分に対して固定されており、前記プラスチック部分の少なくとも一部が、半径方向において、前記軸受け内側リングと前記弾性部分との間に配置されており、前記プラスチック部分の摩擦係数が、前記弾性部分の摩擦係数より小さく、
前記ばねの全体構造が、環状であり、前記ばねが、前記弾性部分の外側リング面に外嵌され、前記弾性部分、前記プラスチック部分、及び前記軸受け内側リングが全て位置する断面内に配置されている
、封止デバイス。
【請求項6】
軸受け内側リングと、軸受け外側リングと、請求項1~
5のいずれか一項に記載
の封止デバイスと、を備え、前記封止デバイスが、前記軸受け内側リングと前記軸受け外側リングとの間に配置されている、軸受け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受け封止の技術分野、特に、軸受け及び封止デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボットは、多関節アームロボット又は多関節機械アームとしても知られており、今日の産業において最も一般的な形態の産業用ロボットの1つであり、様々な産業分野における機械自動化作業に好適である。多関節アーム軸受けは、ロボットの軸受け能力、動的性能、及び精度において決定的な役割を果たす。
【0003】
多関節アーム軸受けは、内側リング、外側リング、及び内側リングと外側リングとの間に配置された封止リングを含む。封止リングは、オイルの漏れを防止するために使用される。ロボットの多関節アームは、把持及び後退のロッカー動作を繰り返し達成する必要があるため、軸受けの回転方向を頻繁に切り替える必要があり、潤滑グリースが漏れるリスクが高くなる。
【0004】
したがって、多関節アーム軸受けの封止性能を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、軸受けの封止性能を改善する軸受け及び封止デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態は、軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置されるのに好適な軸受けを提供する。本封止デバイスは、フレームと、封止部分と、を含む。封止部分の全体構造は、環状である。封止部分は、弾性部分と、プラスチック部分と、を含む。弾性部分は、フレームに固定されている。封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後、プラスチック部分及び軸受け内側リングは接触封止部を形成し、弾性部分はプラスチック部分に対して固定されており、プラスチック部分の少なくとも一部は、半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置されている。プラスチック部分の摩擦係数は、弾性部分の摩擦係数よりも小さい。
【0007】
それに応じて、本発明は、軸受け内側リングと、軸受け外側リングと、軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された上記封止デバイスと、を含む軸受けを更に提供する。
【発明の効果】
【0008】
従来技術と比較して、本発明の技術的解決策は、以下の利点を有する、すなわち、本発明の実施形態による封止デバイスにおいて、封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後に、プラスチック部分及び軸受け内側リングは接触封止部を形成し、弾性部分はプラスチック部分に対して固定されており、プラスチック部分の少なくとも一部は、半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置されている。軸受けの動作中、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間に相対回転が生じる。プラスチック部分の摩擦係数は、弾性部分の摩擦係数よりも小さいので、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦は、弾性部分と軸受け内側リングとの間の摩擦よりも小さく、プラスチック部分の、軸受け内側リングと接触する表面は、しわになりにくい。したがって、軸受けがその回転方向を急激に変化させ、グリースが回転方向に対して時間的に変化しない場合であっても、グリースがしわのポンプ作用によって軸方向に移動する現象が発生せず、これにより、軸受け内側リングが回転方向を急激に変化させるときの軸受け内側リングとプラスチック部分との間からのグリース漏れを抑制することができ、そのため、封止デバイスの封止効果を改善することができる。更に、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦が低減され、これにより、封止デバイスの耐用年数を更に延ばすことができる。
【0009】
プラスチック部分の全体構造は、環状である。プラスチック部分は、固定して接続された外側リング固定端及び内側リング自由端を含む。外側リング固定端は、フレームの軸方向外側端部面に固定されている。封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後、内側リング自由端は、封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり、かつ半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置されており、弾性部分は、内側リング自由端に対して固定されている。プラスチック部分をフレームに固定することによって、堅固さが改善され、プラスチック部分が軸方向に移動することが防止され、かつ、プラスチック部分の端部面が軸受けの他の構成要素(軸受け内側リング及び軸受け外側リング)の軸方向端部面と平行であることが確実にされる。取り付け後、内側リング自由端は、封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり、かつ半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置され、これにより、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の接触面積を増加させ、その後に内側リング自由端に環状溝を画定するための空間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】異なる回転方向における封止デバイスと軸受け内側リングとの間の相互作用を示す概略図である。
【
図2】異なる回転方向における封止デバイスと軸受け内側リングとの間の相互作用を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、封止デバイスの概略構造図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、封止デバイスの別の概略構造図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、封止デバイスの別の概略構造図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、軸受けの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
背景技術によれば、多関節アーム軸受けの封止性能を改善する必要がある。
【0012】
以下、
図1及び
図2を参照して、軸受けの封止性能が低い理由を分析する。
【0013】
図1及び
図2は、異なる回転方向における封止デバイスと軸受け内側リングとの間の相互作用を示す概略図である。
【0014】
封止デバイスは、概して、フレームと、フレームに接合されたゴム構成要素と、軸受け内側リング2に接触するゴム封止リップ1と、を含む。封止デバイスは、軸受け内側リング2と軸受け外側リングとの間に配置され、封止リップ1と軸受け内側リング2との間に接触封止部が形成されている。機械アームに取り付けられた軸受けを例にとると、機械アームは、把持及び後退のロッカー動作を達成する必要があるので、軸受けは、概して、30rpm未満の低速で2つの方向にゆっくりと回転する必要があり、回転方向は頻繁に切り替えられる。
図1に示すように、白抜き矢印Aは、軸受けの回転方向を表し、封止リップ1の上方の実線矢印Bは、半径方向の力(封止リップ1を軸受け内側リング2に当接させる力)を表す。軸受けが回転すると、グリースが軸受け内側リングに追従して回転する。封止リップ1と軸受け内側リング2との間の摩擦により、封止リップ1は、軸受け内側リング2に沿って引き伸ばされ変形してしわを形成し(
図1の波状の破線によって示される)、しわは、封止リップ1上のグリースを軸受けの内側(すなわち、
図1の左側)に押し戻すことができる。軸受け内側リング2の下の密集した矢印Cは、圧力分布図を表しており、図中のしわの形状によって圧力分布が判定される。
図2に示すように、回転方向が急激に切り替わると、軸受け内側リング2の回転方向(白抜き矢印Aの方向)が直ちに変化し、それに伴って、封止リップ1の、軸受け内側リング2に接触するしわの波打ち方向が切り替わる。しかしながら、回転速度が遅いため、グリースの移動方向は、短時間で変化させることができない。グリースが、変化された方向を有するしわ(
図2の波状の破線によって示される)に遭遇すると、グリースは、しわのポンプ作用の下で軸受けの外側(すなわち、
図2の右側)に向かって移動し、したがって、グリースは漏れやすくなる。
【0015】
多関節アーム軸受けの封止性能を改善するために、本発明の実施形態による封止デバイスが提供される。軸受けの動作中、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間に相対回転が生じる。プラスチック部分の摩擦係数は、弾性部分の摩擦係数よりも小さいので、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦は、弾性部分と軸受け内側リングとの間の摩擦よりも小さく、プラスチック部分の軸受け内側リングと接触する表面は、しわになりにくい。したがって、軸受けがその回転方向を急激に変化させ、グリースが回転方向に対して時間的に変化しない場合であっても、グリースがしわのポンプ作用によって軸方向に移動する現象が発生せず、これにより、軸受け内側リングが回転方向を急激に変化させるときの軸受け内側リングとプラスチック部分との間からのグリース漏れを抑制することができ、そのため、封止デバイスの封止効果を改善することができる。更に、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦が低減され、これにより、封止デバイスの耐用年数を更に延ばすことができる。
【0016】
本発明の実施形態における技術的解決策は、本発明の実施形態における図面と併せて、以下で明確かつ完全に記載される。明らかに、以下に記載される実施形態は、全ての実施形態ではなく、本発明のいくつかの実施形態にすぎない。本発明の実施形態に基づいて、いかなる創造的な努力も伴わずに当業者によって行われる他の実施形態の全ては、本発明の保護の範囲に入る。
【0017】
別途指定されない限り、軸方向、半径方向及び周方向とは、それぞれ封止デバイスの軸方向、半径方向、及び周方向を指すことに留意されたい。軸方向外側端部とは、
図3~
図7における右側を指し、軸方向内側端部とは、
図3~
図7における左側を指す。半径方向外側とは、半径方向において、封止デバイスの中心軸から離れる側(
図3~
図7における上側)を指し、半径方向内側とは、半径方向において、封止デバイスの中心軸に近い側(
図3~
図7における下側)を指す。
【0018】
本発明の実施形態は、軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置されるのに好適な封止デバイスを提供する。封止デバイスは、
フレームと、
封止部分と、を含む。封止部分の全体構造は、環状である。封止部分は、弾性部分と、プラスチック部分と、を含む。弾性部分は、フレームに固定されている。封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後、プラスチック部分及び軸受け内側リングは接触封止部を形成し、弾性部分はプラスチック部分に対して固定されており、プラスチック部分の少なくとも一部は、半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置されている。プラスチック部分の摩擦係数は、弾性部分の摩擦係数よりも小さい。
【0019】
弾性部分は、プラスチック部分に対して固定されており、これは、封止デバイスの動作中に弾性部分がプラスチック部分に対して静止していることを意味することに留意されたい。したがって、封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置される前に、弾性部分及びプラスチック部分は互いに直接固定され得るか、又は、封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後に弾性部分がプラスチック部分に対して固定される限り、接触していない場合がある。例えば、一実施形態では、弾性部分及びプラスチック部分が互いに直接接合され得、プラスチック部分は、半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置される。別の実施形態では、弾性部分及びプラスチック部分は、2つの別個の構成要素であり得、弾性部分は、プラスチック部分に対する弾性部分の固定を達成するために、プラスチック部分が軸受け内側リングに取り付けられた後に、他の外力(ばね力など)の助けを借りてプラスチック部分に当接する。代替的に、別の実施形態では、弾性部分及びプラスチック部分の両方は、プラスチック部分に対する弾性部分の固定を達成するために、フレームに固定され得る。
【0020】
特に、
図3を参照すると、
図3は、本発明の一実施形態による封止デバイスの部分的な概略図である。当業者であれば、封止デバイスの部分断面図のみが
図3に示されていることを理解することができる。
【0021】
図3に示すように、具体的な実施形態では、プラスチック部分20の全体構造は、環状であり、固定して接続された外側リング固定端210及び内側リング自由端220を含む。外側リング固定端210は、フレーム30の軸方向外側端部面に固定されている。封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後、内側リング自由端220は、封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり(
図5参照)、かつ半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分10との間に配置されており、弾性部分10は、内側リング自由端220に対して固定されている。プラスチック部分20をフレーム30に固定することによって、堅固さが改善され、プラスチック部分20が軸方向に移動することが防止され、かつ、プラスチック部分20の端部面が軸受けの他の構成要素(軸受け内側リング及び軸受け外側リング40)の端部面と平行であることが確実にされる。取り付け後、内側リング自由端220は、封止デバイスの軸方向に沿って屈曲可能であり、かつ半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分10との間に配置され、これにより、プラスチック部分20と軸受け内側リングとの間の接触面積を増加させ、その後に内側リング自由端220に環状溝200を画定するための空間を提供することができる。
【0022】
内側リング自由端220と軸受け内側リングとの間の接触力を改善するために、封止デバイスは、全体構造が環状であるばね80を更に含み得る。ばねは、弾性部分10の外側リング表面上に外嵌され、弾性部分10、プラスチック部分20、及び軸受け内側リングが全て位置する断面内に配置される。
図7を例にとると、ばね80は、弾性部分10、内側リング自由端220、及び軸受け内側リング50が全て位置する断面上に配置されている。
【0023】
図4及び
図5を参照すると、取り付け中に、プラスチック部分20は、まず、取り付けツールの助けを借りて
図5に示すように曲げられ、次いで、取り付けツールが引き抜かれ、その結果、プラスチック部分20の内側リング自由端220は、(
図7に示すように)軸受け内側リング50と密接に接触する。同時に、プラスチック部分20と軸受け内側リングとの接触力は、負荷ばね80で取り付けられた弾性部分10がプラスチック部分20に当接することによって改善される。
【0024】
プラスチック部分20の摩擦係数は、弾性部分10の摩擦係数よりも小さい。具体的には、プラスチック部分20は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる。PTFEの摩擦係数は極めて低く、これにより、封止デバイスの摩擦トルクを大幅に低減し、プラスチック部分20の摩耗を低減し、かつ封止デバイスの寿命を改善することができる。代替的に、他の実施形態では、摩擦による軸受け内側リングとの接続部でのプラスチック部分の変形の可能性を低減するように、プラスチック部分は、摩擦係数の低い他の材料からなり得、それにより、封止デバイスの封止性能を改善する。
【0025】
本発明の実施形態による封止デバイスでは、封止デバイスが軸受け内側リングと軸受け外側リングとの間に配置された後、プラスチック部分及び軸受け内側リングは接触封止部を形成し、弾性部分はプラスチック部分に対して固定されており、プラスチック部分の少なくとも一部は、半径方向において、軸受け内側リングと弾性部分との間に配置されている。軸受けの動作中、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間に相対回転が生じる。プラスチック部の摩擦係数は、弾性部の摩擦係数よりも小さいので、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦は、弾性部分と軸受け内側リングとの間の摩擦よりも小さく、プラスチック部分の、軸受け内側リングと接触する表面は、しわになりにくい。したがって、軸受けがその回転方向を急激に変化させ、グリースが回転方向に対して時間的に変化しない場合であっても、グリースがしわのポンプ作用によって軸方向に移動する現象が発生せず、これにより、軸受け内側リングが回転方向を急激に変化させるときの軸受け内側リングとプラスチック部分との間からのグリース漏れを抑制することができ、そのため、封止デバイスの封止効果を改善することができる。更に、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦が低減され、これにより、封止デバイスの耐用年数を更に延ばすことができる。
【0026】
図3を参照すると、具体的な実施形態では、環状溝200は、内側リング自由端220に画定される。内側リング自由端220が軸受け内側リングと軸受け外側リング40との間に配置されるとき、環状溝200の開口は、軸受け内側リングに向かって面する。少量のグリースが軸方向外側に流れると、グリースは環状溝200内に保持され得、軸方向に外側に更に流れることはなく、これにより、封止デバイスの封止効果を更に改善する。
【0027】
環状溝200の形状は、限定されず、環状溝200の数は、1つ又は少なくとも2つであり得る。
【0028】
図4及び
図5を参照すると、プラスチック部分20の固定効果を高めるために、具体的な実施形態では、封止デバイスは、フレーム30に固定された停止リング70を更に含む。停止リング70及びフレーム30は、プラスチック部分20の2つの軸方向端部にそれぞれ配置されている。封止デバイスが軸受け内側リングに取り付けられている間、プラスチック部分の内側リング自由端220の軸方向の曲げ中に、プラスチック部分の外側リング固定端210は、フレーム30及び停止リング70によって画定された軸方向面積内に制限され、これにより、外側リング固定端210がフレーム30から軸方向に離れて移動する傾向によってフレーム30から脱落することを防止することができる。
【0029】
具体的には、停止リング70は、固定して接続された軸方向部分及び半径方向部分を含み得る。停止リング70の半径方向部分は、フレーム30と締まり嵌め状態にあり、プラスチック部分20は、軸方向部分とフレーム30との間に位置し、停止リング70の軸方向部分は、プラスチック部分20と締まり嵌め状態にあり、プラスチック部分20は、フレーム30と停止リング70との間に直接接合され得る。代替的に、他の実施形態では、コストを低減するために、封止デバイスは、停止リングを含まない場合があり、プラスチック部分の外側リング固定端部面は、フレームの半径方向部分の外側端部面に直接接合される。
【0030】
図5を参照すると、具体的な実施形態では、プラスチック部分20は、スラスト面60を更に含む。スラスト面60は、プラスチック部分20及び軸受け内側リングが接触封止部を形成するときに、プラスチック部分20の軸方向内側端部に位置する。
【0031】
スラスト面が傾斜面であること、すなわち、スラスト面が軸方向に対して垂直ではなく、軸と夾角(直角ではない)を形成することは、容易に理解される。
図5を例にとると、グリースは、
図5の左側に位置している。グリースがプラスチック部分20の内側リング自由端220に蓄積するとき、傾斜面としてのスラスト面は、グリースを遮ることができ、スラスト面60は、グリースが軸方向外側端部に向かって更に流れることを防止するのに有益である。
【0032】
更に、
図5を参照すると、軸受けが2つの方向にゆっくりと回転する必要がある作動状態下では、スラスト面60は、プラスチック部分20の周方向に沿って均等に配分され、隣接するスラスト面60の傾斜面方向は、隣接するスラスト面60の交線に対して対称的である。したがって、軸受けが順方向又は逆方向のいずれの方向に回転しても、常にスラスト面60が存在し、このスラスト面60がグリースを軸方向内側端部に押し戻し、グリースが、軸方向外側端部に向かって更に流れるのを防止する役割を果たす。
【0033】
図6を参照すると、具体的な実施形態では、プラスチック部分20は、
環状固定端の軸方向外側端部面に固定された防塵リップ230を更に含む。内側リング自由端220が軸受け内側リングと軸受け外側リング40との間に配置されるとき、防塵リップ230は、軸方向において内側リング自由端220から離れ、かつ半径方向において軸受け内側リングに近い方向に延在する。防塵リップ230が軸方向外側端部に配置されているので、防塵リップ230は、粉塵及び少量の水しぶきを遮ることができ、それによって、封止デバイスの封止効果を更に改善する。
【0034】
図7を参照すると、上記の問題を解決するために、本発明の一実施形態による軸受けが更に提供され、この軸受けは、軸受け内側リング50と、軸受け外側リング40と、上記の封止デバイスと、を含む。封止デバイスは、軸受け内側リングと軸受け外側リング50との間に配置されている。
【0035】
軸受けの動作中、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間に相対回転が生じる。プラスチック部分の摩擦係数は、弾性部分の摩擦係数よりも小さいので、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦は、弾性部分と軸受け内側リングとの間の摩擦よりも小さく、プラスチック部分の軸受け内側リングと接触する表面は、しわになりにくい。したがって、軸受けがその回転方向を急激に変化させ、グリースが回転方向に対して時間的に変化しない場合であっても、グリースがしわのポンプ作用によって軸方向に移動する現象が発生せず、これにより、軸受け内側リングが回転方向を急激に変化させるときの軸受け内側リングとプラスチック部分との間からのグリース漏れを抑制することができ、そのため、軸受けの封止効果を改善することができる。更に、プラスチック部分と軸受け内側リングとの間の摩擦が低減され、軸受けの耐用年数を更に延ばすことができる。
【0036】
本発明の実施形態を上記のように開示したが、本発明はそれらに限定されるものではない。当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。したがって、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲によって定義される範囲に従うべきである。