(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】膜-電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20241016BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20241016BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20241016BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20241016BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241016BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241016BHJP
C25B 11/032 20210101ALI20241016BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20241016BHJP
C25B 11/054 20210101ALI20241016BHJP
C25B 11/065 20210101ALN20241016BHJP
C25B 11/081 20210101ALN20241016BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241016BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 K
H01M4/90 M
H01M4/92
B01J37/02 301C
B01J37/08
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/054
C25B11/065
C25B11/081
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2023539064
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2021017896
(87)【国際公開番号】W WO2022145748
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189941
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム チョンホ
(72)【発明者】
【氏名】コ ギョンブン
(72)【発明者】
【氏名】キム チョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンイル
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ドンジュン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナクォン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソンヨン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0001492(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0032199(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜;及び
前記高分子電解質膜の少なくとも一面に配置された触媒層を含む膜-電極アセンブリであって、
前記触媒層は、第1複合体及び第2複合体を含み、
前記第1複合体は、
担体;
前記担体に担持された第1金属粒子を含む第1触媒;及び
前記第1触媒の表面にコーティングされた第1アイオノマー;
を含み、
前記第2複合体は
第2金属粒子を含み、担体に担持されていない第2触媒
を有し、
前記触媒層は更に、前記第2触媒の表面にコーティングされていない第2アイオノマーを含み、
前記第1アイオノマー及び前記第2アイオノマーは互いに同一であるか或いは異なっており、
前記触媒層は、前記高分子電解質膜と接する第1層;及び前記第1層上に配置された第2層を含み、前記第1層は前記第2触媒を含む、
膜-電極アセンブリ。
【請求項2】
前記第1アイオノマーと前記第2アイオノマーは互いに異なる、請求項1に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項3】
前記第1アイオノマーの当量(Equivalent weight;EW)及び前記第2アイオノマーの当量はそれぞれ独立的に、600~1100g/eqであり、
前記第1アイオノマーの当量と前記第2アイオノマーの当量は互いに異なる、請求項2に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項4】
前記第1アイオノマー及び前記第2アイオノマーのうちの一方はフッ素系アイオノマーであり、他方は炭化水素系アイオノマーである、請求項2に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項5】
前記第1アイオノマーは第1炭化水素系アイオノマーであり、
前記第2アイオノマーは、前記第1炭化水素系アイオノマーとは異なる第2炭化水素系アイオノマーである、請求項2に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項6】
前記第2アイオノマーの大きさは10~1500nm(ナノメートル)である、請求項1に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項7】
前記第2層は前記第2複合体を含まないか、或いは
前記第2層の単位体積当たりの第2複合体の含有量が、前記第1層の単位体積当たりの第2複合体の含有量より少ない、請求項
1に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項8】
前記触媒層は、第3アイオノマーをさらに含み、
前記第1層は、前記第3アイオノマーを含まないか、或いは
前記第1層の単位体積当たりの第3アイオノマーの含有量は、前記第2層の単位体積当たりの第3アイオノマーの含有量より少ない、請求項
1に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項9】
前記第1層の厚さは、10~800nm(ナノメートル)であり、
前記第2層の厚さは、0.5~20μm(マイクロメートル)である、
請求項
1に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項10】
前記触媒層は機能性添加剤をさらに
含み、
前記機能性添加剤は、ラジカルスカベンジャー(Radical scavenger)、ガスバリア(Gas barrier)粒子、親水性無機添加剤、酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction;OER)触媒及びこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つである、
請求項1に記載の膜-電極アセンブリ。
【請求項11】
合成触媒溶液を遠心分離して、担体と前記担体に担持された第1触媒を、担体に担持されていない第2触媒と分離するステップ;
前記担体と前記担体に担持された前記第1触媒を第1アイオノマー溶液と均質に混合し、
これらを分散させて第1均質混合物を形成するステップ;
前記第1均質混合物に、前記第2触媒が第2アイオノマー溶液に添加されて均質に混合された第2均質混合物を添加して、第3均質混合物を形成するステップ;及び、
前記第3均質混合物を分散してコーティング組成物を形成するステップを含む直接コーティング用触媒層の製造方法。
【請求項12】
前記第1アイオノマー溶液は、前記コーティング組成物の全体重量に対して、20~40重量%で含まれる、請求項
11に記載の直接コーティング用触媒層の製造方法。
【請求項13】
前記第2アイオノマー溶液は、前記コーティング組成物の全体重量に対して、0.1~10重量%で含まれる、請求項
11に記載の直接コーティング用触媒層の製造方法。
【請求項14】
前記合成触媒溶液は、遠心分離機によって10,000~30,000rpmの速度で分離される、請求項
11に記載の直接コーティング用触媒層の製造方法。
【請求項15】
高分子電解質膜を提供するステップ;
前記高分子電解質膜の少なくとも一面にコーティング組成物で直接コーティングするステップ;及び
前記コーティング組成物がコーティングされた前記高分子電解質膜を乾燥するステップを含み、
前記コーティング組成物の製造方法は、
合成触媒溶液を遠心分離して、担体と前記担体に担持された第1触媒を、担体に担持されていない第2触媒と分離するステップ;
前記担体と前記担体に担持された前記第1触媒を第1アイオノマー溶液と均質に混合し、これらを分散させて第1均質混合物を形成するステップ;
前記第1均質混合物に、前記第2触媒が第2アイオノマー溶液に添加されて均質に混合された第2均質混合物を添加して、第3均質混合物を形成するステップ;及び、
前記第3均質混合物を分散するステップを含む
膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項16】
前記高分子電解質膜を乾燥するステップは、80~120℃で3~10時間行われる、請求項
15に記載の膜-電極アセンブリの製造方法。
【請求項17】
請求項1項~
10項のいずれか一項に記載の膜-電極アセンブリを含む燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜-電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池に関し、具体的には、担体に担持された触媒とアイオノマーからなる第1複合体及び、担体に担持されていない触媒とアイオノマーからなる第2複合体を含む触媒層を高分子電解質膜に直接コーティングすることにより、触媒の耐久性が強化され、高分子電解質膜と触媒層との界面の決着力と耐久性が改善される、膜-電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(Fuel cell)は、メタノール、エタノール、天然ガスといった炭化水素系の物質中に含まれている水素と酸素の化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電システムである。このような燃料電池の代表例としては、高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell;PEMFC)が挙げられる。PEMFCは次世代エネルギー源として脚光を浴びており、特に自動車関連分野において環境にやさしいというイメージなどの利点から、商用化に向けた研究が活発に行われている。
【0003】
燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させる膜-電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly;MEA)は、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を挟んで、アノード電極(通称「燃料極」又は「酸化電極」と言う)とカソード電極(通称「空気極」又は「還元電極」と言う)とが位置する構造を有する。
【0004】
各電極形成用組成物は、触媒、アイオノマー、溶媒及び添加剤からなっており、前記構成要素の中で、触媒は燃料電池の活性及び耐久性を決定する主要な因子である。酸化極(Anode)及び還元極(Cathode)に使用される白金系触媒としては、比表面積が大きく電気伝導性に優れた炭素支持体に白金ナノ粒子を担持させたPt/C触媒が最も広く使用されている。
【0005】
しかし、触媒の有効比表面積が増加するほど触媒の活性が向上し、そのためには担持触媒の使用量を増加させればいいが、この場合は使用される炭素担体の量が共に増加し、これにより電池の厚さも共に増加するため、電池の内部抵抗が増加することや、電極を形成する上で困難があることなどの問題が生じる。また、Pt/C触媒は高価な金属である純粋な白金を使用して製造されることから、触媒の価格を低減する上で制約があり、還元極の酸素還元反応によって白金表面に酸素が吸着して、白金酸化物が生成される過程で発生する過電圧によってかなりの量のエネルギー損失が発生して、商用化が遅れている。
【0006】
一方、燃料電池の商用化に向けて開発されている様々な技術の中で、高分子電解質膜に直接電極をコーティングする直接コーティング技術は、燃料電池の商用化のための新たなMEA製造技術として注目を集めている。直接コーティング技術の代表例としては、スロットダイコーティング、スプレーコーティングなどの方法がある。しかし、直接コーティングを効果的に具現化するためには、高分子電解質膜を扱う技術と共に、高分子電解質膜と触媒層との界面接着力を向上させることができる直接コーティング用電極組成物の開発が欠かせない。したがって、高分子電解質膜と触媒層との界面接着力を向上させることができるものに関する研究が継続的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、担体に担持された触媒及びアイオノマーからなる第1複合体を含む触媒層を高分子電解質膜に直接コーティングすることにより、触媒層の耐久性が強化された膜-電極アセンブリを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、担体に担持されていない触媒及びアイオノマーからなる第2複合体を含む触媒層を高分子電解質膜に直接コーティングすることにより、高分子電解質膜と触媒層との界面接着力と耐久性を改善し、水素イオン伝達を容易にする膜-電極アセンブリを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、通常使用されていない担体に担持されていない触媒をアイオノマー内に分散させて第2複合体を製造することにより、経済性が確保された膜-電極アセンブリを提供することにある。
【0010】
前記の目的と異なる本発明の目的は、前記膜-電極アセンブリを含む燃料電池を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、以上で言及した目的に限らず、言及されていない本発明の他の目的及び利点は下記の説明によって理解されるだろうし、本発明の実施例によってより明確に理解されることであろう。また、本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲で示す手段及びその組み合わせによって実現され得るということが簡単にわかるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための本発明の一実施例は、高分子電解質膜及び前記高分子電解質膜の少なくとも一面に配置された触媒層を含む膜-電極アセンブリであって、前記触媒層は、第1複合体及び第2複合体を含み、前記第1複合体は、担体、前記担体に担持された第1金属粒子を含む第1触媒、及び前記第1触媒の表面にコーティングされた第1アイオノマーを含み、前記第2複合体は第2金属粒子を含み、担体に担持されていない第2触媒、及び前記第2触媒の表面にコーティングされていない第2アイオノマーを含み、前記第1アイオノマー及び前記第2アイオノマーは互いに同一であるか或いは異なる。
【0013】
前記目的を達成するための本発明の他の実施例は、合成触媒溶液を遠心分離して、担体と前記担体に担持された第1触媒を、担体に担持されていない第2触媒と分離するステップ、前記担体と前記担体に担持された前記第1触媒を第1アイオノマー溶液と均質に混合し、これらを分散させて第1均質混合物を形成するステップ、前記第1均質混合物に、前記第2触媒が第2アイオノマー溶液に添加されて均質に混合された第2均質混合物を添加して、第3均質混合物を形成するステップ、及び前記第3均質混合物を分散してコーティング組成物を形成するステップを含む直接コーティング用触媒層の製造方法に該当する。
【0014】
前記目的を達成するための本発明の別の実施例は、高分子電解質膜を提供するステップ、前記高分子電解質膜の少なくとも一面に前記コーティング組成物で直接コーティングするステップ、及び前記コーティング組成物がコーティングされた前記高分子電解質膜を乾燥するステップを含む膜-電極アセンブリの製造方法に該当する。
【0015】
詳しくは、前記コーティング組成物の製造方法は、合成触媒溶液を遠心分離して、担体と前記担体に担持された第1触媒を、担体に担持されていない第2触媒と分離するステップ;前記担体と前記担体に担持された前記第1触媒を第1アイオノマー溶液と均質に混合し、これらを分散させて第1均質混合物を形成するステップ;前記第1均質混合物に、前記第2触媒が第2アイオノマー溶液に添加されて均質に混合された第2均質混合物を添加して、第3均質混合物を形成するステップ;及び前記第3均質混合物を分散するステップを含む。
【0016】
前記目的を達成するための本発明の一実施例は、前記膜-電極アセンブリを含む燃料電池に該当する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、担体に担持された触媒とアイオノマーからなる第1複合体、及び担体に担持されていない触媒とアイオノマーからなる第2複合体を含む触媒層を、高分子電解質膜に直接コーティングすることにより、触媒層の耐久性が強化され、高分子電解質膜と触媒層との界面接着力が改善された膜-電極アセンブリを提供することができる。
【0018】
前述した効果に加えて、本発明の具体的な効果は、以下で発明を実施するための具体的な内容を説明しながら共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリを示す断面図である。
【0020】
【
図2】本発明の一実施例に係る触媒層と高分子電解質膜との界面を示す模式図である。
【0021】
【
図3】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリを示す断面図である。
【0022】
【
図4】本発明の他の実施例に係る膜-電極アセンブリを示す断面図である。
【0023】
【
図5】本発明の一実施例に係る触媒層を形成するコーティング組成物を製造するステップを示すフローチャートである。
【0024】
【
図6】合成触媒を遠心分離によって担体担持触媒と未担持触媒とに分離するステップを示す模式図である。
【0025】
【
図7】触媒層を形成する本発明に係るコーティング組成物を高分子電解質膜にコーティングし乾燥するステップを示す模式図である。
【0026】
【
図8】本発明の一実施例に係る燃料電池を説明するための模式図である。
【0027】
【
図9】本発明の一実施例に係る担体に担持された第1触媒の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【0028】
【
図10】本発明の一実施例に係る担体に担持されていない第2触媒の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【0029】
【
図11】本発明の一実施例に係る触媒層と高分子電解質膜との界面を観察した透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【0030】
【
図12】本発明の一実施例に係る触媒層と高分子電解質膜との界面を観察した透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【0031】
【
図13】実施例1及び比較例1に係る膜-電極アセンブリについて引張評価の前後の電極表面の顕微鏡写真である。
【0032】
【
図14】実施例1及び3に係る膜-電極アセンブリに対する電極表面の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の各構成をさらに詳しく説明するが、これは一つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容によって制限されない。
【0034】
本発明の一実施例は、高分子電解質膜及び前記高分子電解質膜の少なくとも一面に配置された触媒層を含む膜-電極アセンブリであって、前記触媒層は、第1複合体及び第2複合体を含み、前記第1複合体は、担体、前記担体に担持された第1金属粒子を含む第1触媒、及び前記第1触媒の表面にコーティングされた第1アイオノマーを含み、前記第2複合体は第2金属粒子を含み、担体に担持されていない第2触媒、及び前記第2触媒の表面にコーティングされていない第2アイオノマーを含み、前記第1アイオノマー及び前記第2アイオノマーは互いに同一であるか或いは異なる膜-電極アセンブリを提供する。
【0035】
以下では、図面を参考にしながら本発明の構成をさらに詳しく説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリを示す断面図である。
【0037】
図1を参考にすると、本発明に係る膜-電極アセンブリ100は、高分子電解質膜10、第1触媒層25、第2触媒層25'、第1ガス拡散層40、及び第2ガス拡散層40'を含むことができる。
【0038】
本発明に係る高分子電解質膜10はイオン伝導体を含むことができる。前記イオン伝導体は、フッ素系アイオノマー、炭化水素系アイオノマー、及びこれらの混合物からなる群から選択された一つに該当し得る。
【0039】
前記フッ素系アイオノマーは、陽イオン交換基又は陰イオン交換基を有する主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子、又はポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などといった、部分フッ素化された高分子に該当し得る。前記フッ素系アイオノマーは、例えば、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、及び脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン又はこれらの混合物を含むフッ素系高分子に該当し得る。
【0040】
前記陽イオン交換基は、水素イオンといった陽イオンを伝達できる官能基であって、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基などといった酸性基(Acidic group)であってもよく、一般にスルホン酸基又はカルボキシル基であってもよい。
【0041】
前記陰イオン交換基は、ヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートといった陰イオンを移送させることができる高分子であって、陰イオン交換基は、ヒドロキシド又はハライド(一般にクロライド)の形態が商業的に入手可能であり、前記陰イオン交換基は、産業的浄水(Water purification)、金属分離又は触媒工程などに使用することができる。
【0042】
前記陰イオン交換基を含む高分子としては、一般に金属水酸化物がドーピングされた高分子を使用することができ、具体的には金属水酸化物がドーピングされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系高分子、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンゾイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを使用することができる。
【0043】
前記炭化水素系アイオノマーは、陽イオン交換基又は陰イオン交換基を有する炭化水素系高分子に該当し得る。例えば、前記炭化水素系高分子は、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン、及びポリフェニルキノキサリンからなる群から選択される少なくとも一つを主鎖に含む炭化水素系高分子に該当し得る。
【0044】
前記炭化水素系アイオノマーは、スルホン化されたポリイミド(Sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(Sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(Sulfonated polyetheretherketone、S-PEEK)、スルホン化されたポリベンゾイミダゾール(Sulfonated polybenzimidazole、S-PBI)、スルホン化されたポリスルホン(Sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(Sulfonated polystyrene、S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(Sulfonated polyphosphazene)、スルホン化されたポリキノキサリン(Sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化されたポリケトン(Sulfonated polyketone)、スルホン化されたポリフェニレンオキシド(Sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化されたポリエーテルスルホン(Sulfonated polyether sulfone)、スルホン化されたポリエーテルケトン(Sulfonated polyether ketone)、スルホン化されたポリフェニレンスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィド(Sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテル(Sulfonated polyarylene ether)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルスルホンケトン(Sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子が挙げられるが、本発明の技術的思想がこれに制限されるものではない。
【0045】
本発明に係る高分子電解質膜10は、高分子フィブリルの微細構造又はフィブリルによって節が互いに連結された微細構造を有するe-PTFEのようなフッ素系多孔性支持体又は電界紡糸などによって製造された多孔性ナノウェブ支持体のような、多孔性支持体の空隙をアイオノマーで埋めている強化複合膜形態であり得る。
【0046】
本発明に係る高分子電解質膜10は、前記第1触媒層25及び前記第2触媒層25'の間に配置することができる。言い換えれば、前記第1触媒層25は、前記高分子電解質膜10の一面に配置することができ、前記第2触媒層25'は前記高分子電解質膜10の他方の面に配置することができる。したがって、前記高分子電解質膜10の少なくとも一面に第1触媒層25又は第2触媒層25'を配置することができる。
【0047】
本明細書において、第1方向D1は膜の厚さ方向と定義することができ、第2方向D2は前記第1方向D1と交差する方向と定義することができる。例えば、前記第2方向D2は第1方向D1と垂直する方向に該当し得る。
【0048】
前記高分子電解質膜10の厚さは3~100μm(マイクロメートル)に該当し得、好ましくは5~20μm(マイクロメートル)に該当し得る。
【0049】
本発明に係る第1触媒層25は、水素気体を伝達してもらって水素イオンと電子を生成するアノード(Anode)として機能することができる。本発明に係る第2触媒層25'は、前記高分子電解質膜10及び外部回路(図示せず)を介して前記水素イオン及び前記電子をそれぞれ伝達してもらって、外部から供給される酸素気体を還元させて水を生成するカソード(Cathode)として機能することができる。
【0050】
本発明に係る第1触媒層25は、第1層20及び第2層30を含むことができる。前記第2層30は前記第1層20の上に配置することができる。具体的には、前記第2層30は、前記第1層20の真上(directly on)に配置できるか、又は前記第1層20と一体を構成することができる。ここで「真上(directly on)」の意味は、前記第1層20及び前記第2層30の間にいかなる部材も介在しないことを意味する。言い換えれば、前記第2層30は、前記高分子電解質膜10と対向して配置することができる。したがって、前記第1層20は、前記第2層30及び前記高分子電解質膜10の間に配置することができる。また、前記第1層は、不規則な形で前記高分子電解質膜10と一体を構成することができる。
【0051】
本発明に係る第1層20の厚さは、10~800nm(ナノメートル)に該当し得、好ましくは30~500nm(ナノメートル)に該当し得る。前記第1層20の厚さが前記数値範囲未満である場合、界面接着力強化の効果が現れない可能性があり、前記数値範囲を超える場合、アイオノマーの量が多くなって物質伝達が阻害される問題が生じる可能性がある。
【0052】
本発明に係る第2層30の厚さは、0.5~20μm(マイクロメートル)に該当し得、好ましくは1~15μm(マイクロメートル)に該当し得る。前記第2層30の厚さが前記数値範囲未満である場合、電極のローディング量が低くなって活性が減少する可能性があり、前記数値範囲を超える場合、物質伝達が円滑に行われなくなって抵抗が増大し性能が低下する可能性がある。
【0053】
本発明に係る第2触媒層25'は、第3層20'及び第4層30'を含むことができる。前記第4層30'は前記第3層20'の上に配置することができる。具体的には、前記第4層30’は、前記第3層20’の真上(directly on)に配置することができる。ここで「真上(directly on)」の意味は、前記第3層20’及び前記第4層30’の間にいかなる部材も介在しないことを意味する。言い換えれば、前記第4層30’は、前記高分子電解質膜10と対向して配置することができる。したがって、前記第3層20は、前記第4層30’及び前記高分子電解質膜10の間に配置することができる。
【0054】
本発明に係る第3層20’の厚さは、10~800nm(ナノメートル)に該当し得、好ましくは30~500nm(ナノメートル)に該当し得る。前記第3層20’の厚さが前記数値範囲未満である場合、界面接着力強化の効果が現れない可能性があり、前記数値範囲を超える場合、アイオノマーの量が多くなって物質伝達が阻害される問題が生じる可能性がある。
【0055】
本発明に係る第4層30'の厚さは、0.5~20μm(マイクロメートル)に該当し得、好ましくは1~15μm(マイクロメートル)に該当し得る。前記第4層30'の厚さが前記数値範囲未満である場合、電極のローディング量が低くなって活性が減少する可能性があり、前記数値範囲を超える場合、物質伝達が円滑に行われなくなって抵抗が増大し性能が低下する可能性がある。
【0056】
本明細書における「第1~第4層」は説明の便宜のために区別したものであって、触媒層の各領域と定義することができる。したがって、図面に限定されるものではなく、第1及び第2層は互いに一体化して第1触媒層を構成することができ、第3及び第4層も同様に互いに一体化して第2触媒層を構成することができる。
【0057】
本発明に係る第1及び第2触媒層25、25'は、機能性添加剤をさらに含むことができる。前記機能性添加剤は、ラジカルスカベンジャー(Radical scavenger)、ガスバリア(Gas barrier)粒子、親水性無機添加剤、酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction;OER)触媒及びこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも一つに該当し得る。
【0058】
前記ラジカルスカベンジャーは、金属系過酸化物分解促進剤、有機系過酸化物分解促進剤、過酸化物分解促進塩化合物からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0059】
前記金属系過酸化物分解促進剤は、セリウムイオン、ニッケルイオン、タングステンイオン、コバルトイオン、クロムイオン、ジルコニウムイオン、イットリウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、チタンイオン、バナジウムイオン、モリブデンイオン、ランタンイオン、ネオジムイオン、銀イオン、白金イオン、ルテニウムイオン、パラジウムイオン及びロジウムイオンからなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0060】
前記金属系過酸化物分解促進剤は、金属又は貴金属の酸化物を含むことができる。前記金属又は貴金属の酸化物は、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ランタン及び酸化ネオジムからなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0061】
前記過酸化物分解促進塩化合物は、遷移金属又は貴金属を含む金属の塩を含むことができ、前記金属の炭酸塩、酢酸塩、塩化塩、フッ化塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、水酸化塩、酢酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩及びアセチルアセトネート塩、過マンガン酸塩からなる群から選択されるいずれか一つであってもよく、具体的には、セリウムを例として挙げれば、炭酸セリウム、酢酸セリウム、塩化セリウム、酢酸セリウム、硫酸セリウム、酢酸アンモニウムセリウム、硫酸アンモニウムセリウムなどが挙げられ、有機金属錯塩としてセリウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0062】
前記有機系過酸化物分解促進剤は、シリンガ酸(Syringic acid)、バニリン酸(Vanillic acid)、プロトカテク酸(Protocatechuic acid)、クマル酸(Coumaric acid)、コーヒー酸(Caffeic acid)、フェルラ酸(Ferulic acid)、クロロゲン酸(Chlorogenic acid)、シナリン(Cynarine)、没食子酸(Gallic acid)、及びこれらの混合物からなる群から選択された一つ以上に該当し得る。
【0063】
前記ガスバリア粒子は、クレイ(Clay)、モンモリロナイト(Montmorillonite)、サポナイト(Saponite)、ラポナイト(Laponite)、マイカ(Mica)、フルオロヘクトライト(Fluorohectorite)、カオリナイト(Kaolinite)、バーミキュライト(Vermiculite)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであり得る。
【0064】
前記親水性無機添加剤は、SnO2、シリカ(Silica)、アルミナ(Alumina)、ジルコニア(Zirconia)、雲母(Mica)、ゼオライト(Zeolite)、ホスホタングステン酸(Phosphotungstic acid)、シリコンタングステン酸(Silicon tungstic acid)、ジルコニウムヒドロゲンホスフェート(Zirconium hydrogen phosphate)及びこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくともいずれか一つに該当し得る。前記親水性無機添加剤は、高温低加湿条件で水素イオンの伝導度が低下する現象を防止することができる。
【0065】
前記酸素発生反応触媒は、触媒層内で微粒化又は均一に分散されて、効果的な水分解反応によって触媒層の耐久性を向上させることができる。前記酸素発生反応触媒は、下記のような白金系金属及び/又は非白金系金属の活性物質を含むことができる。
【0066】
前記白金系金属(Platinum-based metal)としては、白金(Pt)及び/又はPtーM合金を使用することができる。前記Mは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)及びロジウム(Rh)からなる群から選択されるいずれか一つ以上に該当し得る。
【0067】
具体的には、前記Pt-M合金としては、Pt-Pd、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ni、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Ru-Ir-Ni、Pt-Co、Pt-Co-Mn、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、Pt-Cr-Ir、又はこれらのうち、二つ以上の混合物を使用することができる。
【0068】
前記非白金系金属(Non-platinum metal)としては、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及び非白金合金(Non-platinum alloy)からなる群から選択される一つ以上を使用することができる。前記非白金合金としては、Ir-Fe、Ir-Ru、Ir-Os、Co-Fe、Co-Ru、Co-Os、Rh-Fe、Rh-Ru、Rh-Os、Ir-Ru-Fe、Ir-Ru-Os、Rh-Ru-Fe、Rh-Ru-Os、Fe-N、Fe-P、Co-N、又はこれらのうち、二つ以上の混合物を使用することができる
【0069】
前記第1触媒層25及び前記第2触媒層25'は、水素気体酸化反応及び/又は酸素気体還元反応に触媒として使用できるものならいかなるものを使用しても構わず、好ましくは、前記のような白金系金属及び/又は非白金系金属を使用することができる。本発明に係る第1触媒層25及び第2触媒層25'は、それぞれ金属粒子を担体に担持させて使用されたものに該当し得る。前記金属粒子は、担体の表面上に配置することもでき、担体の内部気孔(Pore)を埋めながら担体の内部に浸透したものに該当し得る。
【0070】
前記担体は、炭素系担体、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、又はゼオライトであり得る。前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーピー(Super P)、炭素繊維(Carbon fiber)、炭素シート(Carbon sheet)、カーボンブラック(Carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(Acetylene black)、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube;CNT)、炭素球(Carbon sphere)、炭素リボン(Carbon ribbon)、フラーレン(Fullerene)、活性炭素、カーボンナノファイバー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノボール、カーボンナノホーン、カーボンナノケージ、カーボンナノリング、規則性ナノ多孔性炭素(Ordered nano-/meso-porous carbon)、カーボンエアロゲル、メソポーラスカーボン(Mesoporous carbon)、グラフェン、安定化カーボン、活性化カーボン、及びこれらの一つ以上の組み合わせから選択することができるが、これに限定されるものではなく、本技術分野で使用可能な担体なら制限なく使用することができる。
【0071】
前記担体の表面積は50m2/g以上に該当することが好ましく、平均粒径は10~300nm(ナノメートル)に該当することが好ましい。前記担体の表面積が前記数値範囲未満である場合、金属粒子の均一な分布を得ることができない。
【0072】
本発明に係る第1ガス拡散層40は、第1触媒層25上に配置することができる。具体的には、前記第1ガス拡散層40は、前記第2層30を挟んで、前記第1層20と対向して配置することができる。言い換えれば、前記第1触媒層25は、前記第1ガス拡散層40及び前記高分子電解質膜10の間に配置することができる。
【0073】
本発明に係る第2ガス拡散層40'は、第2触媒層25'上に配置することができる。具体的には、前記第2ガス拡散層40'は、前記第4層30'を挟んで、前記第3層20'と対向して配置することができる。言い換えれば、前記第2触媒層25'は、前記第2ガス拡散層40'及び前記高分子電解質膜10の間に配置することができる。
【0074】
前記第1ガス拡散層40及び前記第2ガス拡散層40'は、それぞれ水素気体又は酸素気体の円滑な供給が行われるよう、多孔性の導電性基材を使用することができる。その代表例として、炭素ペーパー(Carbon paper)、炭素布(Carbon cloth)、炭素フェルト(Carbon felt)、又は金属布(繊維状態の金属布からなる多孔性のフィルム又は高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0075】
また、前記第1ガス拡散層40及び前記第2ガス拡散層40'は、フッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが、燃料電池の駆動時に発生する水によって反応物の拡散効率が低下することを防止できるので好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオリドアルコキシビニルエーテル、フルオリネイテッドエチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はこれらのコポリマーを使用することができる。
【0076】
図2は、本発明の一実施例に係る触媒層と高分子電解質膜との界面を示す模式図である。前述した部分と重複する説明は、簡略に説明するか或いは省略する。
【0077】
本発明に係る第1及び第2触媒層25、25'は、水素イオンの伝達を容易にし、触媒層と高分子電解質膜10との間の接着力を向上させるためにアイオノマーを含むことができる。
【0078】
図2を参考にすると、本発明に係る第1及び第2触媒層25、25'は、第1複合体18及び第2複合体28を含むことができる。
【0079】
前記第1複合体18は、担体12、前記担体12に担持された第1金属粒子を含む第1触媒16及び前記第1触媒16の表面にコーティングされた第1アイオノマー14を含むことができる。
【0080】
前記第2複合体28は、第2金属粒子を含み、担体に担持されていない第2触媒26及び前記第2触媒26の表面にコーティングされていない第2アイオノマー24を含むことができる。言い換えれば、前記第2金属粒子を含む第2触媒26は、第2アイオノマー24内に分散され得る。
【0081】
前記第1金属粒子及び前記第2金属粒子は、前述した白金系金属及び非白金系金属の中で選択された一つに該当し得る。前記第1金属粒子及び前記第2金属粒子は互いに同一であるか或いは異なり得る。
【0082】
本発明に係る第1及び第2触媒層25、25'は、第3アイオノマー27をさらに含むことができる。具体的には、前記第3アイオノマー27は、触媒及び担体に結合されず、単独で自由に存在するフリーアイオノマー(Free ionomer)に該当し得る。前記第2アイオノマー24も、前記第3アイオノマー27と同様に、担体に結合されないフリーアイオノマー(Free ionomer)に該当し得る。
【0083】
図1及び
図2を参考にすると、前記第1層20は、前記第3アイオノマー27を含まないか、或いは前記第1層20の単位体積当たりの第3アイオノマーの含有量は、前記第2層30の単位体積当たりの第3アイオノマーの含有量より少ない可能性がある。
【0084】
前記第1~第3アイオノマー14、24、27はそれぞれ独立的に、フッ素系アイオノマー、炭化水素系アイオノマー、及びこれらの混合物からなる群から選択された一つに該当し得る。前記第1~第3アイオノマーは、前述した前記高分子電解質膜10のイオン伝導体の構成と同一であるか或いは異なり得る。したがって、前記第1アイオノマー14及び前記第2アイオノマー24は互いに同一であるか或いは異なり得る。
【0085】
例えば、前記第1アイオノマー14及び前記第2アイオノマー24のうちの一方はフッ素系アイオノマーであり、他方は炭化水素系アイオノマーに該当し得る。別の例として、前記第1アイオノマー14は第1炭化水素系アイオノマーであり、前記第2アイオノマー24は、前記第1炭化水素系アイオノマーとは異なる第2炭化水素系アイオノマーに該当し得る。
【0086】
例えば、前記第1アイオノマー14と前記第2アイオノマー24は互いに異なり得る。前記第1アイオノマー14の当量(Equivalent weight;EW)及び前記第2アイオノマーの当量はそれぞれ独立的に、600~1100g/eqに該当し得る。したがって、前記第1アイオノマー14の当量と前記第2アイオノマー24の当量は互いに異なり得る。
【0087】
前記第2及び第3アイオノマー24、27の当量(Equivalent weight;EW)は、前記第1アイオノマー14とは独立的に、それぞれ600~1100g/eqに該当し得る。
【0088】
前記第2及び第3アイオノマー24、27の大きさは10~1500nm(ナノメートル)に該当し得、好ましくは30~800nm(ナノメートル)であり得る。前記第2及び第3アイオノマーの大きさが前記数値範囲から外れる場合、物質伝達を妨げる可能性があり、第1及び第3層20、20'の生成位置を調整することが難しい可能性がある。
【0089】
前記第2及び第3アイオノマー24、27は、球形、楕円体形、棒状及びコイル状からなる群から選択されるいずれか一つの形態を有することができる。特に、前記第2及び第3アイオノマー24、27が楕円形及び/又は棒状形態を有する場合、物質伝達を改善する効果をさらに向上させることができる。
【0090】
図1及び
図2を参考にすると、本発明に係る第1及び第2触媒層25、25'は、高分子電解質膜10の少なくとも一面10aに配置することができる。したがって、本発明に係る第1触媒層25は、前記高分子電解質膜10と接する第1層20及び前記第1層20上に配置された第2層30を含むことができる。本発明に係る第2触媒層25'は、前記高分子電解質膜10と接する第3層20'及び前記第3層20'上に配置された第4層30'を含むことができる。
【0091】
本発明に係る第1触媒16は、前記第1触媒層25の全体重量に対して20~80重量%に該当し得、同様に第2触媒26は前記第2触媒層25'の全体重量に対して20~80重量%に該当し得る。前記触媒が前記数値範囲未満である場合、性能が低下する可能性があり、前記数値範囲を超える場合、前記触媒の凝集によって活性面積が減少して、触媒活性が逆に低下する可能性がある。
【0092】
前記第1層20は前記第2複合体28を含むことができる。前記第2層30は前記第2複合体28を含まないか、或いは前記第2層30の単位体積当たりの第2複合体の含有量が前記第1層20の単位体積当たりの第2複合体の含有量より少ない可能性がある。同様に、前記第4層30'は前記第2複合体28を含まないか、或いは前記第4層30'の単位体積当たりの第2複合体の含有量が前記第3層20'の単位体積当たりの第2複合体の含有量より少ない可能性がある。
【0093】
前記第2複合体28は、不規則な形で前記第1及び第2触媒層25、25'内に含まれ得る。
【0094】
本発明に係る第1及び第3層20、20'は、それぞれ第2及び第4層30、30'より相対的に自由に存在する単位体積当たりのフリーアイオノマー(Free ionomer)の含有量が大きいので、高分子電解質膜10と第1及び第2触媒層25、25'との界面接着力及び耐久性を改善させることができる。界面接着力が改善されることにより、界面耐久性が増加し得、水素イオンのような物質の伝達が容易に起こり得る。
【0095】
また、本発明に係る第1複合体18は、担体と比較的弱い結合をする触媒と、担体と結合しない触媒とを、担持されない触媒に分離して相対的に担体と強い結合を形成した触媒のみを担体に担持された触媒として残して、第1及び第2触媒層25、25'の耐久性を改善させることができる。
【0096】
図3は、本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリを示す断面図である。前述した部分と重複する説明は、省略するか或いは簡略に説明する。
【0097】
図3を参考にすると、第1触媒層25及び第2触媒層25'の間に高分子電解質膜10を配置することができ、前記第1触媒層25は二重層構造に該当しない可能性がある。
【0098】
図4は、本発明の他の実施例に係る膜-電極アセンブリを示す断面図である。前述した部分と重複する説明は、省略するか或いは簡略に説明する。
【0099】
図4を参考にすると、第1触媒層25及び第2触媒層25'の間に高分子電解質膜10を配置することができ、前記第2触媒層25'は二重層構造に該当しない可能性がある。
【0100】
図5は、本発明の一実施例に係る直接コーティング用触媒層の製造方法を示すフローチャートである。
【0101】
本発明の一実施例に係る直接コーティング用触媒層の製造方法は、合成触媒溶液又は製造された触媒を分散した溶液を遠心分離して、担体及び前記担体に担持された第1触媒と担体に担持されていない第2触媒を分離するステップ(S1)、第1アイオノマー溶液と前記担体及び担体に担持された第1触媒を均質に混合するステップ(S2)、前記(S2)ステップの混合物を、高圧分散機を用いて一次分散するステップ(S3)、前記(S3)ステップの混合物を乾燥した後、熱処理するステップ(S4)、前記(S4)ステップの混合物を溶媒と均質に混合するステップ(S5)、前記(S5)ステップの混合物(又は、第1均質混合物)に、前記第2触媒が第2アイオノマー溶液に添加されて均質に混合された第2均質混合物を添加してこれらを均質に混合して第3均質混合物を形成するステップ(S6)、及び前記(S6)ステップの混合物を二次分散してコーティング組成物を形成するステップ(S7)を含むことができる。
【0102】
具体的には、前記(S1)ステップは、合成触媒溶液を遠心分離容器に入れた後、10,000~30,000rpmの速度で前記合成触媒溶液を遠心分離して、担体及び担体に担持された第1触媒と担体に担持されていない第2触媒を分離するステップに該当し得る。前記合成触媒溶液は、担体及び担体に担持された第1触媒と担体に担持されていない第2触媒がランダム(Random)に混合された状態に該当し得る。例えば、前記合成触媒溶液は、市販のPt/C触媒を反応容器に入れ水で湿らせた溶液に該当し得る。
【0103】
具体的には、前記(S2)ステップは、前記コーティング組成物の全体重量に対して、第1アイオノマー溶液20~40重量%を容器に入れ、担体及び担体に担持された第1触媒と均質に混合するステップに該当し得る。
【0104】
具体的には、前記(S3)ステップは、均質混合機を用いて前記第1アイオノマーを前記第1触媒の表面にコーティングすることによって、第1複合体を形成するステップに該当し得る。前記(S3)ステップは、前記第1服合体を含む合成触媒溶液を、高圧分散機を用いて一次分散させるステップに該当し得る。
【0105】
具体的には、前記(S4)ステップは、前記(S3)ステップの混合物を80~120℃で3~8時間乾燥するステップを含むことができる。前記乾燥ステップの温度が前記数値範囲未満であるか、或いは乾燥時間が前記数値範囲未満である場合、十分に乾燥した触媒層を形成できない可能性があり、前記乾燥温度が前記数値範囲を超えるか、或いは前記乾燥時間が前記数値範囲を超える場合は、工程時間が不要に長くなり、触媒層に亀裂などが発生する可能性がある。
【0106】
前記乾燥ステップは、熱風乾燥、真空(Vacuum)乾燥、赤外線(IR)乾燥などの様々な乾燥方式を、前記乾燥ステップのために適用することができる。乾燥のための温度と時間は、使用される溶媒の沸点に応じて適切に調整することができる。
【0107】
さらに、前記(S4)ステップは、前記乾燥ステップの結果物を80~120℃で3~10時間熱処理するステップを含むことができる。前記熱処理ステップの温度範囲及び時間範囲が前記数値範囲から外れる場合、第1触媒-第1アイオノマー間の結合が強化されない可能性がある。
【0108】
具体的には、前記(S5)ステップは、前記(S4)ステップの混合物を溶媒と均質に混合するステップに該当し得る。前記溶媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒、及びこれらのうち、二つ以上の混合物からなる群から選択される溶媒であり得る。
【0109】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和炭化水素を主鎖として含むアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドからなる群から選択される一つ以上の官能基を有するものであってもよく、これらは、脂肪族(Aliphatic)又は芳香族(Aromatic)の環状化合物(Cyclic compound)を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。例えば、アルコールはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシエタノール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、1,2-プロパンジオール、1-ペンタノール、1,5-ペンタンジオール、又は1,9-ノナンジオールであってもよく、ケトンはヘプタノン又はオクタノンであってもよく、アルデヒドはベンズアルデヒド又はトルアルデヒドであってもよく、エステルはメチルペンタノエート又はエチル-2-ヒドロキシプロパノエートであってもよく、カルボン酸はペンタエン酸又はヘプタン酸であってもよく、エーテルはメトキシベンゼン又はジメトキシプロパンであってもよく、アミドはプロパンアミド、ブチルアミド、又はジメチルアセトアミドであってもよい。
【0110】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、及びこれらのうち、二つ以上の混合物から選択することができる。
【0111】
前記溶媒は、前記コーティング組成物の全体重量に対して80~95重量%で含有することができ、好ましくは85~93重量%であることが好ましい。前記溶媒の含有量が前記数値範囲未満である場合は、固形分の含有量が高すぎて触媒層形成の際、亀裂及び高粘度による分散問題が生じる可能性があり、前記数値範囲を超える場合は、触媒層の活性に不利となる可能性がある。
【0112】
具体的には、前記(S6)ステップは、前記コーティング組成物の全体重量に対して、第2触媒1~20重量%、第2アイオノマー溶液0.1~10重量%を添加して、これらを均質に混合するステップに該当し得る。
【0113】
具体的には、前記(S7)ステップは、前記(S6)ステップの混合物に均質混合機、高圧分散機、ボールミル、パウダーミキサー、共鳴音響混合機からなる群から選択された一つの方法を用いて、第2アイオノマー溶液を二次に分散させるステップに該当し得る。前記(S7)ステップは、第2アイオノマー内に第2触媒が分散された形態の第2複合体を形成するステップに該当し得る。
【0114】
さらに、前記(S7)ステップは、前記(S6)ステップの混合物に機能性添加剤を添加するステップをさらに含むことができる。前記機能性添加剤は、前記コーティング組成物の全体重量に対して0.05~20重量%添加することができる。
【0115】
また、前記(S7)ステップは、第3アイオノマーを形成するステップをさらに含むことができる。本明細書における第3アイオノマーは、前記第2アイオノマー溶液に由来するフリーアイオノマーに該当し得る。
【0116】
本発明の別の実施例は、前記直接コーティング用触媒層の製造方法を用いて膜-電極アセンブリを製造する方法に該当し得る。
【0117】
本発明に係る膜-電極アセンブリの製造方法は、高分子電解質膜を提供するステップ、前記高分子電解質膜の少なくとも一面に前記コーティング組成物で直接コーティングするステップ、及び前記コーティング組成物がコーティングされた高分子電解質膜を乾燥するステップを含むことができる。
【0118】
具体的には、前記コーティング組成物を高分子電解質膜の一面にコーティングした後、乾燥ステップを経ると、前記第2複合体がコーティングされた触媒の隙間に沈降して、高分子電解質膜及び触媒層の間に第1層又は第3層を形成することができる。したがって、前記第1層又は第3層は、それぞれ相対的に第2層又は第4層より単位体積当たりのアイオノマーの含有量が大きい可能性がある。したがって、前記第1層又は第3層はアイオノマー-リッチ層(Ionomer-rich layer)に該当し得る。
【0119】
したがって、前記アイオノマー-リッチ層が高分子電解質膜と触媒層との界面に配置されることにより、高分子電解質膜と触媒層との接着力を改善させることができる。これにより、膜-電極アセンブリの耐久性を改善させることができる。
【0120】
図6は、合成触媒を遠心分離によって担体担持触媒と未担持触媒とに分離するステップを示す模式図である。前述した部分と重複する説明は、簡略に説明するか或いは省略する。
【0121】
図6を参考にすると、前記(S1)ステップで遠心分離機を用いて合成触媒を未担持触媒と担体担持触媒とに区分することができる。
【0122】
図7は、触媒層を形成する本発明に係るコーティング組成物を高分子電解質膜にコーティングし乾燥するステップを示す模式図である。
【0123】
図7を参考にすると、前記乾燥ステップを通じてフリーアイオノマー(Free ionomer)内に分散された白金(Pt)又は白金-金属合金(Pt-M)を含む第2複合体は、高分子電解質膜の一面へ沈降し得る。
【0124】
コーティング組成物を乾燥するステップは、80~120℃で3~10時間乾燥するステップに該当し得る。前記乾燥ステップの温度が前記数値範囲未満であるか、或いは乾燥時間が前記数値範囲未満である場合、十分に乾燥した触媒層を形成できない可能性があり、前記乾燥温度が前記数値範囲を超えるか、或いは前記乾燥時間が前記数値範囲を超える場合は、工程時間が不要に長くなり、前記触媒層に亀裂などが発生する可能性がある。
【0125】
前記乾燥ステップは、熱風乾燥、真空(Vacuum)乾燥、赤外線(IR)乾燥などの様々な乾燥方式を、前記乾燥ステップのために適用することができる。乾燥のための温度と時間は、使用される溶媒の沸点に応じて適切に調整することができる。
【0126】
図8は、本発明の一実施例に係る燃料電池を説明するための模式図である。
【0127】
図8を参考にすると、本発明の別の実施例は、前記膜-電極アセンブリを含む燃料電池に該当し得る。
【0128】
本発明に係る燃料電池200は、燃料と水とが混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的な反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含むことができる。
【0129】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと、酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備えることができる。
【0130】
各単位セルとは、電気を発生させる単位のセルを意味するものであり、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜-電極接合体と、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜-電極接合体に供給するための分離板(又はバイポーラープレート(Bipolar plate)とも呼ばれ、以下「分離板」と称する)を含むことができる。前記分離板は前記膜-電極接合体を中心に置き、その両側に配置される。このとき、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特にエンドプレートと呼ぶこともある。
【0131】
前記分離板の中で前記エンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管232が設けられ、他方のエンドプレートには、複数の単位セルで最終的に反応せずに残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1排出管233と、前記単位セルで最終的に反応せずに残った酸化剤を外部に排出させるための第2排出管234が設けられ得る。
【0132】
前記燃料電池において、前記電気発生部を構成するセパレータ、燃料供給部及び酸化剤供給部は、通常の燃料電池で使用されるものであるので、本明細書では詳しい説明は省略する。
【0133】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例について詳しく説明するが、これは一つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容によって制限されない。
【0134】
[製造例:膜-電極アセンブリの製造]
【0135】
下記の表1に示すように、実施例及び比較例に係る膜-電極アセンブリを製造した。
【0136】
<比較例1>
【0137】
田中(Tanaka)社の市販のPt/C触媒10gを反応容器に入れ、水で湿らして合成触媒溶液を製造した。無定形の第1アイオノマー溶液(10wt%)40gを前記反応容器に入れ、均質混合機及び高圧分散機を用いて分散させて分散混合物を製造した。前記分散工程を通して、第1アイオノマーが前記触媒表面にコーティングされた。これにより、前記触媒表面に第1アイオノマーがコーティングされた第1複合体を含むコーティング用組成物で高分子電解質膜の両面にコーティングして膜-電極アセンブリを製造した。
【0138】
<実施例1>
【0139】
田中(Tanaka)社の市販のPt/C触媒10gを反応容器に入れ、水で湿らして合成触媒溶液を製造した。前記合成触媒溶液を遠心分離容器に入れ、20,000rpmの速度で担体と担体に担持された第1触媒を担体に担持されていない第2触媒(未担持触媒)と分離した。
【0140】
第1アイオノマー溶液(10wt%)30gを反応容器に入れ、担体に担持された第1触媒9gを200gの水に分散させた。前記第1アイオノマー溶液(EW725)と前記分散混合物を均質に混合した後、高圧分散機を用いて一次分散した。前記一次分散ステップを通して、第1アイオノマーは第1触媒の表面にコーティングされて第1複合体を形成することができる。前記第1複合体を含む溶液を80℃で8時間乾燥した後、120℃で2時間熱処理して溶媒と均質に混合した。前記均質混合ステップを経た混合物に、担体に担持されていない第2触媒(未担持触媒)1g及び第2アイオノマー(EW725)溶液(10wt%)10gを添加して均質に混合して第2複合体を形成した。その後、高圧分散機を用いて前記均質混合物を二次分散してコーティング用組成物を製造した。前記コーティング用組成物で高分子電解質膜の両面に直接コーティングした後、90℃で5分間乾燥ステップを経て、前記組成物からなる触媒層を含む膜-電極アセンブリを製造した。
【0141】
<実施例2>
【0142】
実施例1と同様の方法で膜-電極アセンブリを製造するが、ラジカルスカベンジャーである硝酸セリウム(Cerium nitrate)を前記第2複合体に0.1g添加した。
【0143】
<実施例3>
【0144】
実施例1と同様の方法で膜-電極アセンブリを製造するが、前記第1アイオノマーの当量は725g/eqであり、前記第2アイオノマーの当量は800g/eqに該当する。
【0145】
[実験例1:遠心分離によって分離された第1触媒及び第2触媒のTEM写真]
【0146】
図9は、本発明の一実施例に係る担体に担持された第1触媒の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
図10は、本発明の一実施例に係る担体に担持されていない第2触媒の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【0147】
図9及び
図10を参考にすると、合成触媒が遠心分離によって第1触媒及び第2触媒に分離されることを観察することができる。
【0148】
[実験例2:触媒層-高分子電解質膜界面のTEM写真]
【0149】
図11は、本発明の一実施例に係る触媒層と高分子電解質膜との界面を観察した透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
図12は、本発明の一実施例に係る触媒層と高分子電解質膜との界面を観察した透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)写真である。
【0150】
図11を参考にすると、本発明に係る第2複合体28が触媒層と高分子電解質膜との界面に配置されることを観察することができる。
【0151】
図12を参考にすると、第1及び第2触媒層25、25'と高分子電解質膜10との界面の間に第2複合体28が不規則に配置されることがわかる。
【0152】
[実験例3:膜-電極アセンブリの引張評価]
【0153】
図13は、実施例1及び比較例1に係る膜-電極アセンブリについて引張評価の前後の電極表面の顕微鏡写真である。
【0154】
前記
図13を参考にすると、実施例1に係る膜-電極アセンブリは、比較例1に係る膜-電極アセンブリに比べて引張評価後も安定した界面を示し、触媒層の脱離がほとんど観察されない。一方、前記比較例1に係る膜-電極アセンブリは、引張後に高分子電解質膜と触媒層との界面が離れて触媒層が脱離する様子を示している。
【0155】
[実験例4:DOEの化学的耐久性評価結果OCV減少率]
【0156】
【0157】
化学的耐久性を、米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)の耐久性評価プロトコル(OCV holding、90℃、H2/Air、30%RH_AN/30%RH_CA、50kPa)に基づいて評価した。具体的には、膜-電極アセンブリの化学的耐久性を評価するためにOCV保持法(OCV hold method)を500時間行った後、電圧損失(Voltage loss)をそれぞれ測定し、その測定値を前記表1に示した。
前記表1に示すように、比較例1に係る膜-電極アセンブリより、実施例1~3に係る膜-電極アセンブリは、DOE基準(電圧減少A20%@500hr)を満たし、より少ない電圧損失の化学的耐久性を示した。
前記のような評価結果から、実施例1~3に係る膜-電極アセンブリは、比較例1と対比して、化学的耐久性が改善された。
【0158】
[
実験例5:膜-電極アセンブリの電極表面の顕微鏡写真]
図14は、実施例1及び3に係る膜-電極アセンブリに対する電極表面の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)写真である。
図14に示すように、実施例1及び3に係る膜-電極アセンブリの電極表面は実質的に外観、性能に大きな差がない。
【0159】
以上、本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。