(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよび制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 3/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B25J3/00 A
B25J3/00 D
(21)【出願番号】P 2024027334
(22)【出願日】2024-02-27
(62)【分割の表示】P 2020006778の分割
【原出願日】2020-01-20
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】板垣 岳人
(72)【発明者】
【氏名】山本 知之
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 豪
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-372380(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
該ロボットに対する操作指令を操作者に入力させる操作装置と、
該操作装置および前記ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記操作装置が、前記操作指令に対する反力を発生可能な反力発生部を備え、
前記制御装置が、前記操作装置に入力された前記操作指令に応じて前記ロボットを制御するロボット制御部と、前記ロボットの
制限速度を記憶する記憶部と、前記ロボット
の速度が前記制限速度よりも小さく、所定の閾値を超えると前記反力発生部に反力を発生させる反力制御部とを備
えるロボットシステム。
【請求項2】
前記反力制御部が
前記制限速度に近づくほど前記反力を大きくする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
操作者により入力された操作指令に応じてロボットを制御する制御装置であって、
前記ロボットの制限速度を記憶する少なくとも1つのメモリと、
少なくとも1つのプロセッサとを備え、
該プロセッサは、前記ロボットの速度が前記制限速度よりも小さく、所定の閾値を超えると前記操作指令に対する反力を発生させる制御装置。
【請求項4】
前記制限速度に近づくほど前記反力を大きくする請求項3に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステムおよび制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作者が回転操作する操作部に、モータおよび回転位置センサを備える教示装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
操作者が操作部を回転操作すると、その回転量および回転方向が回転位置センサにより検出され、検出された回転量および回転方向に応じてロボットが動作させられる。その一方で、ロボットのハンド等がハンドリングする部品等から反力を受けたときにその反力をモータのトルクに換算して操作者に力覚表示する。
【0003】
また、ロボットの可動領域とその内側に反力発生限界とを設定しておき、ロボットが反力発生限界を超えて可動領域に近接すると操作者に反力を力覚表示し、ロボットが可動領域に接触するとそれ以上の操作を禁止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-142905号公報
【文献】特開2017-13167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動領域の内側の所定距離に反力発生限界を設定する場合、可動領域と反力発生限界との距離が小さ過ぎると、操作者が反力を感じてロボットを停止させる方向に操作しても、ロボットの惰走によって可動領域を超えてしまうことがある。ロボットが可動領域を超えると、ロボットはアラーム停止してしまうので、その復旧作業に手間がかかる。
【0006】
また、制限速度を設定する場合、ロボットのツール先端(TCP)の速度が制限速度を超えるとアラーム停止してしまい、速度制限に引っかかってしまうと復旧作業に手間がかかる。
したがって、操作者による操作を過度に制限することなく、アラーム停止をより確実に防止することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、ロボットと、該ロボットに対する操作指令を操作者に入力させる操作装置と、該操作装置および前記ロボットを制御する制御装置とを備え、前記操作装置が、前記操作指令に対する反力を発生可能な反力発生部を備え、前記制御装置が、前記操作装置に入力された前記操作指令に応じて前記ロボットを制御するロボット制御部と、前記ロボットの制限速度を記憶する記憶部と、前記ロボットの速度が前記制限速度よりも小さく、所定の閾値を超えると前記反力発生部に反力を発生させる反力制御部とを備えるロボットシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットシステムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1のロボットシステムを示すブロック図である。
【
図3】
図1のロボットシステムにおいてロボットの周囲に設定された可動領域と動作制限領域とを説明する斜視図である。
【
図4】
図1のロボットシステムにおける反力発生領域を説明する図である。
【
図5】
図4の反力発生領域において発生させる反力と距離との関係の一例を示す図である。
【
図6】
図5の反力と距離との関係の変形例を示す図である。
【
図7】
図5の反力と距離との関係の他の変形例を示す図である。
【
図8】
図3の反力発生領域の変形例を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係るロボットシステムの変形例におけるロボットのツール先端の速度とトルクとの関係を示す図である。
【
図10】
図9のロボットのツール先端の速度とトルクとの関係の変形例を示す図である。
【
図11】
図9のロボットのツール先端の速度とトルクとの関係の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態に係るロボットシステム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットシステム1は、
図1に示されるように、ロボット2と、操作装置3と、制御装置4とを備えている。
【0010】
ロボット2は、例えば、垂直6軸多関節型のロボットであり、先端にツールSを備えている。ここで、ロボット2というときは、先端のツールSまで含むものとする。
ロボット2の各軸はサーボモータ(図示略)によって駆動され、サーボモータには、各軸の回転角度位置を検出するエンコーダ(図示略)が備えられている。
【0011】
操作装置3は、ダイヤル5の回転角度に応じた数のパルスを発生する手動のパルス発生器6を備えている。また、操作装置3は、ダイヤル5に接続された反力用モータ(反力発生部)7を備えている。
制御装置4は、
図2に示されるように、ロボット2の動作を制御するロボット制御部8と、操作装置3の反力用モータ7を制御する反力制御部9と、ロボット2の3次元モデルの情報および動作制限領域の情報を記憶する記憶部10とを備えている。ロボット制御部8および反力制御部9はプロセッサにより構成され、記憶部10はメモリにより構成されている。
【0012】
ロボット制御部8は、操作装置3のダイヤル5の回転によって発生したパルスを受け取って、パルス数に応じた距離だけツール先端点(TCP)を移動させるようロボット2を制御する。また、ロボット制御部8は、操作装置3のダイヤル5の回転速度に対応するパルスの頻度に応じた速度でTCPを移動させるようロボット2を制御する。
【0013】
動作制限領域は、ロボット2が動作できる空間(可動領域)の外側に位置する領域であって、周囲の物体との関係で予め設定されている。
図3に示す例では、可動領域は直方体状の空間によって設定されており、動作制限領域は、可動領域の輪郭を形成している各平面を境界としてその外側に設定されている。可動領域および動作制限領域は、任意の形状でよい。
【0014】
ロボット制御部8は、エンコーダにより検出された各軸の回転角度位置および記憶部10に記憶されている3次元モデルの情報に基づいて、各時刻におけるロボット2の外面の位置を算出する。そして、ロボット制御部8は、算出されたロボット2の外面が、いずれかの位置において動作制限領域と干渉しているか否かを監視し、干渉している場合には、アラームを出してロボット2を停止(アラーム停止)させる。
【0015】
反力制御部9は、動作制限領域を構成する境界の内側(可動領域内)に、境界面に対して平行に間隔をあけて反力の発生を開始する反力発生境界面(境界面)を設定する。そして、反力制御部9は、ロボット制御部8により算出されたロボット2の外面の情報を受け取る。
【0016】
反力制御部9は、受け取ったロボット2の外面が、いずれかの位置において反力発生境界面と動作制限領域の境界との間の領域(反力発生領域)内に位置しているか否かを監視する。ロボット2の外面が反力発生領域内に位置している場合には、反力制御部9は、操作装置3の反力用モータ7を駆動し、ダイヤル5に反力を発生させる。
【0017】
本実施形態においては、反力制御部9は、操作装置3のダイヤル5の回転によって動作するロボット2のTCPの移動速度に基づいて、その移動速度で移動しているロボット2を非常停止させたときの動作制限領域に近接する方向の惰走距離を算出する。そして、反力制御部9は、
図4に示されるように、動作制限領域の境界から反力発生境界面までの距離(反力発生距離)として、算出された惰走距離よりも大きな値を設定する。例えば、反力発生距離としては惰走距離+α(αは正の実数)の値を設定する。
【0018】
反力発生境界面は、ロボット2の表面が反力発生境界面に接触するまで、例えば、一定のサンプリングタイム毎に逐次更新される。また、反力発生境界面は、ロボット2の表面が一旦、反力発生領域内に進入した後には、次にロボット2の表面が反力発生領域から離脱するまで、維持される。
【0019】
そして、反力制御部9は、ロボット2の外面の一部が反力発生領域内に位置する状態では、
図5に示されるように、ロボット2の外面と動作制限領域との距離が近接するに従って大きな反力を発生させるよう反力用モータ7を制御する。すなわち、ロボット2が動作制限領域に向かって動作している場合には、ロボット2の外面が反力発生境界面に接触した位置において、反力用モータ7が作動させられて、比較的小さい反力が発生する。ロボット2がさらに反力発生領域内を移動して動作制限領域までの距離が小さくなってくると、反力用モータ7により発生する反力が増大させられていく。
【0020】
一方、ロボット2の外面の一部が反力発生領域内に位置する状態では、動作制限領域から離れる方向にロボット2を動作させるダイヤル5の操作時には、反力は発生しない。したがって、操作者は、ロボット2を動作制限領域から離れる方向に移動させて、ロボット2を反力発生領域から容易に離脱させることができる。
【0021】
このように構成された本実施形態に係るロボットシステム1の作用について以下に説明する。
本実施形態によれば、操作者が操作装置3のダイヤル5を回転させてロボット2を動作させているときに、反力用モータ7の作動によりダイヤル5に反力が与えられることにより、ロボット2の外面が動作制限領域に近づいたことを操作者に認識させることができる。
【0022】
また、操作者が、ダイヤル5における反力を感じながらもダイヤル5の回転を継続すると、ダイヤル5に加えられる反力が大きくなっていくので、ロボット2の外面が動作制限領域にさらに近づいていることを操作者に認識させることができる。
そして、操作者がダイヤル5の反力を感じてダイヤル5を停止させると、ロボット2は惰走して動作制限領域に近接する。
【0023】
この場合において、本実施形態に係るロボットシステム1によれば、反力発生距離が、惰走距離+αに設定されているので、ロボット2が惰走しても動作制限領域に進入させることなくロボット2を停止させることができる。これにより、ロボット2のアラーム停止を防止することができるという利点がある。
【0024】
ロボット2の表面が動作制限領域に近接するに従ってダイヤル5に加わる反力が大きくなるので、操作者は反力に抗してダイヤル5を回転させることが困難になっていく。ロボット2の動作速度は、ダイヤル5の回転速度に応じて設定されるので、ロボット2の表面が動作制限領域に近接するとロボット2の動作速度は次第に低下していき、惰走距離が短くなる。したがって、動作制限領域に近接する位置においてロボット2を停止させた場合にも、ロボット2が動作制限領域に進入して、アラーム停止することを防止できる。
【0025】
なお、本実施形態においては、ロボット2の表面が反力発生領域内に位置する状態では、ロボット2の表面が動作制限領域に近づくに従って発生する反力を大きくすることとした。この場合の反力は、反力発生境界面からの距離に比例して線形的に反力を増大させることにしてもよいし、
図6に示されるように非線形に増大させることにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態においては、反力発生距離を惰走距離+αに等しく設定したが、これに代えて、惰走距離に1よりも大きい比例係数を乗算することにより反力発生距離を算出してもよい。
また、本実施形態においては、ロボット2の表面が動作制限領域に一致するときに反力が最大となることとした。これに代えて、
図7に示されるように、ロボット2の表面が動作制限領域から所定距離βだけ離れた位置に配置されているときに、発生する反力を最大にしてもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、動作制限領域に対して平行に、ロボット2の惰走距離よりも大きく離れた位置に反力発生境界面を生成した。
これに代えて、制御装置4が、ロボット2の動作に同期して仮想空間内において3次元モデルを動作させ、
図8に示されるように、反力制御部9が、3次元モデルの周囲に、占有領域を設定してもよい。占有領域は、仮想空間内において3次元モデルが惰走して停止するまでに占有する領域である。
【0028】
そして、動作制限領域に対して平行に、所定距離γだけ離れた位置に反力発生境界面を生成し、占有領域と反力発生領域とが重複する状態で、ダイヤル5に反力を与えることにしてもよい。これにより、本実施形態と同様の効果を奏する。
また、反力発生境界面を設定することなく、3次元モデルの外面から占有領域の外面までの距離を、惰走距離よりも大きく設定してもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、ロボット2の表面が動作制限領域に近接するに従ってダイヤル5に加わる反力が大きくなるものを例示したが、これに代えて、ロボット2のツール先端点TCPの速度増加に応じてダイヤル5に加わる反力が大きくなるものを採用してもよい。
【0030】
この場合、記憶部10には操作者によって設定されたロボット2のツール先端点TCPの制限速度が記憶される。そして、ロボット2のツール先端点TCPの速度が所定速度(所定の閾値)を超えると反力用モータ7に反力を発生させる。発生させる反力は、ロボット2のツール先端点TCPの速度増加に応じて増加し、記憶部10に設定されている制限速度を超えない走行速度になるように付与される。
【0031】
これにより、操作者が操作装置3のダイヤル5を回転させてロボット2を動作させているときに、反力用モータ7の作動によりダイヤル5に反力が与えられることにより、ロボット2のツール先端点TCPの速度が制限速度に近づいたことを操作者に認識させることができる。
【0032】
また、操作者が、ダイヤル5における反力を感じながらもダイヤル5の回転を継続すると、ダイヤル5に加えられる反力が大きくなっていくので、ロボット2のツール先端点TCPの速度が制限速度にさらに近づいていることを操作者に認識させることができる。
したがって、ロボット2のツール先端点TCPの速度が増加しても制限速度を超えることなくロボット2を停止させることができる。これにより、ロボット2のアラーム停止を防止することができるという利点がある。
【0033】
また、ロボット2のツール先端点TCPの速度が所定速度を超えた状態では、ロボット2のツール先端点TCPの速度が制限速度に近づくに従って発生する反力を大きくすることとした。この場合の反力は、
図9に示されるように、ロボット2のツール先端点TCPの速度に比例して線形的に反力を増大させることにしてもよいし、
図10に示されるように非線形に増大させることにしてもよい。
【0034】
また、
図11に示されるように、ロボット2のツール先端点TCPの速度に応じてデジタル的にトルクを付与して反力を発生させてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 ロボットシステム
2 ロボット
3 操作装置
4 制御装置
7 反力用モータ(反力発生部)
8 ロボット制御部
9 反力制御部
10 記憶部