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特許7572595熱管理方法、システム、ドメインコントローラ及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】熱管理方法、システム、ドメインコントローラ及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/24 20190101AFI20241017BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241017BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20241017BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241017BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241017BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L58/26
B60L58/27
B60L15/20 J
B60L50/60
G01C21/36
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022553572
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2022094757
(87)【国際公開番号】W WO2023071164
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】202111250406.1
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳新偉
(72)【発明者】
【氏名】梁軼▲ギ▼
(72)【発明者】
【氏名】侯貽真
(72)【発明者】
【氏名】但志敏
(72)【発明者】
【氏名】顔▲ユー▼
(72)【発明者】
【氏名】婁其棟
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-027797(JP,A)
【文献】特開2021-110575(JP,A)
【文献】特開2022-116393(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113415125(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111769240(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103944225(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112459890(CN,A)
【文献】特開昭63-209956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0033417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱管理方法であって、車両に対象機器が搭載されており、
予測走行ルートを取得することと、
クラウドプラットフォームに前記予測走行ルートを送信し、かつ前記予測走行ルートの道路状況パラメータを要求することと、
前記道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定することと、
前記走行パラメータ、前記道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて対象機器の予測発熱値を決定することと、
前記対象機器の予測発熱値、前記対象機器の現在温度、環境温度と第3のフルビークルパラメータに基づいて対象機器動作温度の予測値を含む予測温度を取得することと、
前記予測温度に基づいて制御命令を出すことと、
を含み、
ここで、前記制御命令は熱管理モードを切り替えるために用いられ、前記熱管理モードは対象機器の動作温度を調整するために用いられ、
前記第1のフルビークルパラメータは、フルビークル重量、空気抵抗係数、摩擦係数、伝送損失の少なくとも1種を含み、
前記第2のフルビークルパラメータは、一定時間内で車両走行する過程において電池を流れる平均電流、電池の直流内部抵抗の少なくとも1種を含み、
前記第3のフルビークルパラメータは、電池比熱容量、モータシステム比熱容量、電池放熱パワー、モータ放熱パワーの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする熱管理方法。
【請求項2】
前記予測走行ルートを取得することは、
車両の現在位置に基づいて、前記車両がこれから予め設定された距離内で走行できる複数の走行ルートを取得することと、
前記クラウドプラットフォームにより提供された道路状況情報に基づいて前記予測走行ルートを決定するか、又は前記クラウドプラットフォームに記録された車所有者の常用ルートに基づいて前記予測走行ルートを決定することと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記走行パラメータはモータの機械的パワーと電力を含み、
前記道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定することは、
前記道路状況パラメータと前記第1のフルビークルパラメータに基づいて前記モータの出力トルクと出力回転角速度を決定することと、
前記出力トルクと前記出力回転角速度に基づいて前記機械的パワーを決定し、前記出力トルクと前記出力回転角速度に基づいて前記電力を決定することと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記道路状況パラメータと前記第1のフルビークルパラメータに基づいて前記モータの出力トルクと出力回転角速度を決定することは、
前記道路状況パラメータと前記第1のフルビークルパラメータに基づいて車両の受ける駆動力を決定することと、
前記駆動力と車両速度に基づいて前記車両の車輪の受けるモーメントと回転の角速度を決定することと、
前記車輪の受けるモーメントと前記回転角速度に基づいて前記出力トルクと前記出力回転角速度を算出することと、
を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記駆動力と車両速度に基づいて前記車両の車輪の受けるモーメントと回転角速度を決定することは、
以下の式に基づいて、前記車輪の受けるモーメントと前記回転角速度を算出することを含み、
【数19】
ここで、Twheelは前記車輪が受けるモーメントであり、Ftracは前記車両の受ける駆動力であり、前記駆動力は前記道路状況パラメータと前記第1のフルビークルパラメータによって算出されたものであり、rは前記車両の車輪半径であり、ωwheelは前記回転角速度であり、uは走行速度である、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記道路状況パラメータと前記第1のフルビークルパラメータに基づいて前記モータの出力トルクと出力回転角速度を決定することは、
以下の式に基づいて前記出力トルクを算出することと、
【数21】
以下の式に基づいて前記出力回転角速度を算出すること、
【数22】
を含み、
ここで、TMGは前記出力トルクであり、ωMGは前記出力回転角速度であり、Twheelは前記車輪が受けるモーメントであり、ωwheelは回転角速度であり、ifdは主減速比であり、ηDLは主減速ディファレンシャルの伝動効率である、ことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記の、前記出力トルクと前記出力回転角速度に基づいて前記機械的パワーを決定し、前記出力トルクと前記出力回転角速度に基づいて前記電力を決定することは、
以下の式に基づいて前記機械的パワーを算出することと、
【数23】
以下の式に基づいて前記電力を算出することと、
【数24】
を含み、
ここで、PMGは前記機械的パワーであり、Peは前記電力であり、ωMGは前記出力回転角速度であり、TMGは前記出力トルクであり、ηMGはモータ動作効率である、ことを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
車両走行ルートが前記予測走行ルートから外れる時、新しい予測走行ルートを改めて取得することと、
改めて取得した前記新しい予測走行ルートに基づいて前記予測温度を更新することと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
熱管理システムであって、車両に対象機器が搭載されており、
制御ユニットと通信ユニットとを含み、
前記制御ユニットは、予測走行ルートを取得するように構成され、
前記通信ユニットは、クラウドプラットフォームに前記予測走行ルートを送信し、かつ前記予測走行ルートの道路状況パラメータを要求するように構成され、
前記制御ユニットは、さらに前記道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定し、前記走行パラメータ、前記道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて前記対象機器の予測発熱値を決定し、前記予測発熱値、前記対象機器の現在温度、環境温度と第3のフルビークルパラメータに基づいて前記対象機器動作温度の予測値を含む予測温度を取得し、前記予測温度に基づいて制御命令を出すように構成され、ここで、前記制御命令は熱管理モードを切り替えるために用いられ、前記熱管理モードは対象機器の動作温度を調整するために用いられ、
前記第1のフルビークルパラメータは、フルビークル重量、空気抵抗係数、摩擦係数、伝送損失の少なくとも1種を含み、
前記第2のフルビークルパラメータは、一定時間内で車両走行する過程において電池を流れる平均電流、電池の直流内部抵抗の少なくとも1種を含み、
前記第3のフルビークルパラメータは、電池比熱容量、モータシステム比熱容量、電池放熱パワー、モータ放熱パワーの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする熱管理システム。
【請求項10】
前記制御ユニットは、
車両走行ルートが前記予測走行ルートから外れる時、新しい予測走行ルートを改めて取得し、
改めて取得した前記新しい予測走行ルートに基づいて前記予測温度を更新するために用いられる、ことを特徴とする請求項9に記載の熱管理システム。
【請求項11】
ドメインコントローラであって、プロセッサとメモリを含み、前記メモリはコンピュータプログラムを記憶するために用いられ、前記プロセッサは前記コンピュータプログラムを呼び出して請求項1に記載の熱管理方法を実行するために用いられる、ことを特徴とするドメインコントローラ。
【請求項12】
読み取り可能な記憶媒体であって、コンピュータプログラムを記憶するために用いられ、前記コンピュータプログラムは請求項1に記載の熱管理方法を実行するために用いられる、ことを特徴とする読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月26日に出願された、名称が「熱管理方法、システム、ドメインコントローラ及び記憶媒体」の中国特許出願202111250406.1の優先権を主張し、その出願の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は電池技術分野に関し、特に熱管理方法、システム、ドメインコントローラ及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギー自動車の迅速な発展に伴い、新エネルギー自動車における電池、モータなどのシステムに対する熱管理技術も、この分野の重要な研究方向の一つとなっている。しかしながら、現在、新エネルギー自動車の熱管理方法とシステムは、エネルギー消費が比較的に大きく、動作効率が比較的に低く、電池、モータなどのシステムの温度に対する効率的で信頼できる制御を実現しにくい。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、熱管理システムのエネルギー消費を減少させ、熱管理効率を向上させることができる熱管理方法、システム、ドメインコントローラ及び記憶媒体を提供する。
【0005】
第1の態様によれば、本出願は、対象機器動作温度の予測値を含む予測温度を取得することと、予測温度に基づいて制御命令を出すこととを含み、制御命令は熱管理モードを切り替えるために用いられ、熱管理モードは対象機器の動作温度を調整するために用いられる、熱管理方法を提供する。
【0006】
本出願の実施例により、熱管理対象機器の動作温度の予測値を取得し、該予測値に基づいて対象機器に対する熱管理モードの切り替えを行い、対象機器に対して加熱又は冷却を行う熱管理方法を実現することができる。本出願の実施例は、自動車熱管理システムの慣性が大きく、温度の過渡応答が遅いという特性を利用し、対象機器への予測温度を利用して熱管理を行うことで、熱管理システムのエネルギー消費を効果的に減少させ、温度調整パワーの平滑化を実現することができ、それによって熱管理効率を向上させる。
【0007】
一可能な実施例において、上記の、予測温度を取得することは、予測走行ルートを取得することと、クラウドプラットフォームに該予測走行ルートを送信し、かつ該予測走行ルートの道路状況パラメータを要求することと、該予測走行ルートの道路状況パラメータに基づいて予測温度を取得することとをさらに含む。
【0008】
上記実施例において、車両の予測走行ルートを取得し、クラウドプラットフォームによって、該当する予測走行ルートの道路状況パラメータを取得でき、予測走行ルートに対応する道路状況パラメータを利用して対象機器の予測温度を得る。車両予測走行ルートの道路状況情報に基づいて対象機器の動作温度を予測することによって、対象機器の予測温度をさらに正確にし、上記予測式熱管理の確実性を効果的に高める。
【0009】
一つの可能な実施例において、上記の、予測走行ルートの道路状況パラメータに基づいて、予測温度を取得することは、該道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定することと、該走行パラメータ、道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて予測発熱値を決定することと、該予測発熱値、対象機器の現在温度、環境温度と第3のフルビークルパラメータに基づいて予測温度を取得することとをさらに含む。
【0010】
上記実施例において、車両予測走行ルートに対応する道路状況パラメータとフルビークルパラメータを結び付けて対象機器の予測発熱値を得て、対象機器の予測発熱値によって対象機器の予測温度を得る。車両の現在状態を基礎として、車両予測走行ルートの道路状況情報を結び付けて、モデルを利用してリアルタイムに演算し、対象機器の温度計画を実現することで、熱管理効率と車両効率を向上させる。
【0011】
一可能な実施例において、上記方法は、車両走行ルートが予測走行ルートから外れる時、予測走行ルートを改めて取得することと、改めて取得した予測走行ルートに基づいて予測温度を更新することとをさらに含む。
【0012】
上記実施例において、車両の走行状態に基づいて予測走行ルートを即時に調整し、さらに対象機器の予測温度を即時に更新し、それに応じて熱管理モードを切り替えることで、熱管理の効率をさらに高め、予測式熱管理の確実性を向上させる。
【0013】
第2の態様によれば、本出願は、熱管理システムをさらに提供する。このシステムは、制御ユニットを含み、この制御ユニッは、対象機器動作温度の予測値を含む予測温度を取得するために用いられ、さらに前記予測温度に基づいて制御命令を出すために用いられ、ここで、制御命令は熱管理モードを切り替えるために用いられ、熱管理モードは対象機器の動作温度を調整するために用いられる。
【0014】
一可能な実施例において、上記制御ユニットはさらに予測走行ルートを取得するために用いられ、上記熱管理システムは通信ユニットをさらに含み、該通信ユニットはクラウドプラットフォームに予測走行ルートを送信し、かつ該予測走行ルートの道路状況パラメータを要求するために用いられる。
【0015】
一可能な実施例において、上記制御ユニットはさらに、道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定し、該走行パラメータ、道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて予測発熱値を決定し、該予測発熱値、対象機器の現在温度、環境温度と第3のフルビークルパラメータに基づいて予測温度を取得するために用いられる。
【0016】
一可能な実施例において、上記制御ユニットはさらに、車両走行ルートが予測走行ルートから外れる時、予測走行ルートを改めて取得し、改めて取得した予測走行ルートに基づいて予測温度を更新するために用いられる。
【0017】
第3の態様によれば、本出願は、ドメインコントローラをさらに提供する。該ドメインコントローラは、プロセッサとメモリを含み、メモリはコンピュータプログラムを記憶するために用いられ、プロセッサはコンピュータプログラムを呼び出して上記第1の態様又は第1の態様の任意の可能な実現形態における熱管理方法を実行するために用いられる。
【0018】
第4の態様によれば、本出願は、コンピュータプログラムを記憶するための読み取り可能な記憶媒体を提供する。該コンピュータプログラムは、上記第1の態様又は第1の態様の任意の可能な実現形態における方法を実行するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本出願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【0020】
図1】本出願の実施例による熱管理方法のフローチャートである。
図2】本出願の実施例による別の熱管理方法のフローチャートである。
図3】本出願の実施例によるまた別の熱管理方法のフローチャートである。
図4】本出願の実施例による熱管理方法の具体的な実現形態のフローチャートである。
図5】本出願の実施例による熱管理方法の別の具体的な実現形態のフローチャートである。
図6】本出願の実施例による熱管理システムの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下は、図面と実施例を結び付けながら本出願の実施形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施例についての詳細な記述及び添付図面は、本出願の原理を例示的に説明するために用いられるが、本出願の範囲を限定するものではなく、即ち本出願は記述した実施例に限定されない。
【0022】
本出願の記述において、指摘すべきこととして、特に説明されていない限り、「複数」は、2つ以上を意味し、用語「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などで指示される方位又は位置関係は、本出願を容易に説明し、かつその説明を簡略化するために用いられ、示された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構造と操作されなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本出願を制限するものとして理解すべきではない。なお、用語「第1」、「第2」、「第3」などは、説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示するものとして理解すべきではない。「垂直」は、厳密な意味での垂直ではなく、誤差の許容範囲内にあるものである。「平行」は、厳密な意味での平行ではなく、誤差の許容範囲内にあるものである。
【0023】
市場における新エネルギー自動車の動力電池は、充電可能な蓄電池であることが多く、最もよく見られるものはリチウム電池、例えばリチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池などである。電池の温度及び温度場の均一性は、動力電池の性能と耐用年数などに対して大きな影響を与えている。動力電池が過度に低い温度で動作する場合、電池の性能劣化を招き、充電時に電池のリチウム析出を引き起こすこともあり、電池の容量と耐用年数に影響を及ぼす。動力電池が過度に高い温度で動作する場合、熱暴走を引き起こし、安全上の潜在的なリスクが生じることがある。車両においては、電池、モータ及び乗客室の温度が車両の性能とエネルギー消費に影響を与えており、効率的な熱管理が必要不可欠である。現在、一般的な熱管理システムは、複数の分散したコントローラから構成され、それぞれがリアルタイムに温度信号を収集し、リアルタイムな温度信号に基づいて加熱又は冷却を行うのである。電池管理システム(Battery Management System、BMS)は電池の熱管理を担当し、その他のデバイスの熱管理は車両制御ユニット(Vehicle Control Unit、VCU)によって処理し制御される。一方では、このような熱管理システムは、制御モジュールが分散しており、廃熱回収し難く、かつ熱システム素子の回路設定が煩雑で、通信ノードが多く、ネットワーク負荷が大きい。他方では、車両熱管理システムの慣性が比較的に大きいため、各デバイスに対して熱管理を行う時、デバイスやシステムの温度が最適温度区間に到達するには一定の時間が必要であり、温度調整効率が低く、システムのエネルギー消費が比較的に大きい。
【0024】
上記問題を解決し、熱管理システムのエネルギー消費を減少させ、熱管理効率と確実性を向上させるために、本出願の実施例は、熱管理方法、システム、ドメインコントローラ及び記憶媒体を提供する。
【0025】
図1では、本出願の実施例による熱管理方法100が示されている。具体的には、以下のステップの一部又は全部を含む。
【0026】
ステップ110では、予測温度を取得する。
【0027】
ここで、予測温度は対象機器動作温度の予測値であり、対象機器は電池、モータ電子制御システム、又は熱管理する必要のある他のデバイスやシステムであってもよい。
【0028】
ステップ120では、予測温度に基づいて熱管理モードを切り替えるように制御命令を出す。
【0029】
ここで、熱管理モードは対象機器の動作温度を調整するために用いられ、具体的には、対象機器の加熱又は冷却の需要に応じて、対象機器を適宜な温度区間内で動作させるように熱管理素子又は回路を制御することができる。例えば、熱管理モードは以下を含んでもよい。モータの冷却を必要とするモードでは、熱管理モードは、モータの水冷システムが動作を開始するよう設定され、電池の冷却を必要とするモードでは、熱管理モードは、電池の水冷システムが動作を開始するよう設定され、モータの冷却を必要とするが電池の加熱を必要とするモードでは、熱管理モードは、モータと電池の水冷システムが同時に動作し、かつモータの冷却液を電池の加熱に用いるよう設定される。
【0030】
対象機器動作温度の予測値を取得し、該予測温度に基づいて熱管理モードの切り替えを行い、対象機器に対して対応する加熱又は冷却を行う。対象機器の昇温曲線を最適化し、温度調整パワーの平滑化を実現することによって、絶縁システムと電気化学物質の劣化速度を低減できるだけでなく、予測値を利用して限られた冷却リソースを合理的に調整制御することによって、熱管理システムのエネルギー消費を効果的に減少させ、熱管理システムを効率的に動作させ、熱管理効率を向上させることもできる。
【0031】
さらに、上記実施例は、図2に示す熱管理方法200として拡張されてもよい。具体的には、以下のステップの一部又は全部を含む。
【0032】
ステップ210では、予測走行ルートを取得する。
【0033】
ここで、予測走行ルートは、乗客が目的地に基づいて設定した走行ルートであってもよい。
【0034】
任意選択的に、乗客が目的地に基づいて走行ルートを設定していない場合、車両の現在位置に基づいてこれからの一定距離内の車両走行ルートを予測し、そして該ルートを予測走行ルートとしてもよい。具体的には、車両の現在位置に基づいて、車両がこれから予め設定された距離内で走行する可能性のある複数の走行ルートを取得し、クラウドプラットフォームにより提供された道路状況情報に基づいて、最も可能性のある走行ルートを選択して予測走行ルートとしてもよく、又は、クラウドプラットフォームに記録された車所有者の常用ルートに基づいて、最も可能性のある走行ルートを選択して予測走行ルートとしてもよい。例えば、車両が高速道路を走行する時、一定距離内で走行可能なルートは直進と右折があり、この時、クラウドプラットフォームで提供された道路状況情報により、多数の運転者が直進する(即ち直進するルートの交通量が多い)ことが示されれば、当車両の最も可能な走行ルートは直進であり、すると、直進するルートを予測走行ルートとし、この時、クラウドプラットフォームに記録された車所有者の常用ルートが右折であれば、右折するルートを予測走行ルートとする。
【0035】
ステップ220では、クラウドプラットフォームに予測走行ルートを送信し、かつ予測走行ルートの道路状況パラメータを要求する。
【0036】
具体的には、予測走行ルートの道路状況パラメータは、駐車段階を含まない平均走行速度、駐車段階を含まない平均走行時間と平均駐車時間であってもよい。予測精度を向上させるために、要求する道路状況パラメータは最大速度、車両加速段階の最大加速度、車両減速段階の最小減速度、走行時間割合、1キロメートル当たりの平均発停回数など、クラウドプラットフォームのビッグデータにより収集できる他のパラメータをさらに含んでもよい。
【0037】
ステップ230では、予測走行ルートの道路状況パラメータに基づいて予測温度を取得する。
【0038】
具体的には、予測走行ルートの道路状況情報に基づいて必要な予測走行ルートの道路状況パラメータを取得し、対象機器の予測発熱値を得ることによって、対象機器の予測温度を得てもよい。
【0039】
ステップ240:予測温度に基づいて熱管理モードを切り替えるように制御命令を出す。
【0040】
上記実施例は、車両予測走行ルートを取得することによって、車両の走行状態を得ることができ、これにより、予測温度を取得する。車両予測走行ルートの道路状況情報に基づいて対象機器の動作温度に対して予測と計画を行うことで、上記予測式熱管理の確実性を効果的に高める。
【0041】
任意選択的に、さらに最適化して、図3に示す熱管理方法300を得ることができる。ここで、上記実施例のステップ230は、ステップ331からステップ333までのように拡張されてもよい。熱管理方法300は、具体的には、以下のステップの一部又は全部を含む。
【0042】
ステップ310:予測走行ルートを取得する。
【0043】
ステップ320:クラウドプラットフォームに予測走行ルートを送信し、かつ予測走行ルートの道路状況パラメータを要求する。
【0044】
ステップ331:道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定する。
【0045】
ここで、第1のフルビークルパラメータは、フルビークル重量、空気抵抗係数、摩擦係数、伝送損失などを含み、走行パラメータは、モータの機械的パワーと電力を含む。
【0046】
具体的には、フルビークル動力学の基本的なモデルに基づいて、第1のフルビークルパラメータと予測走行ルートの道路状況パラメータを結び付けてモータの出力トルクと出力回転角速度を得ることができ、さらにモータの機械的パワーと電力を算出することができる。
【0047】
以下に式を示す。
【数1】
ここで、Frollは転がり抵抗であり、mは自動車の半積重量であり、fは車輪転がり抵抗係数であり、θは走行路面の勾配であり、Faeroは空気抵抗であり、Afは風上面積であり、Cdは空気抵抗係数であり、uは走行速度であり、Fgradeは坂道抵抗であり、Finertiaは加速抵抗であり、δは回転質量変換係数である。
【0048】
上記式に基づいて自動車の受ける駆動力Ftracを得ることができる。
【0049】
自動車の車輪が受けるモーメントTwheel及び回転角速度ωwheelと、自動車走行駆動力及び速度との関係は、以下のように表されてもよい。
【数2】
【0050】
ここで、rは車輪半径である。
【0051】
モータのトルクTMGと回転角速度ωMGは、下式によって得ることができる。
【数3】
【数4】
【0052】
ここで、ifdは主減速比であり、ηDLは主減速ディファレンシャルの伝動効率である。
【0053】
モータの動作効率ηMGは以下のとおりである。
【数5】
【0054】
ここで、fMGは効率ルックアップ関数である。効率Mapテーブルをサーチすることによってモータのこの時の動作効率を得ることができる。
【0055】
モータの機械的パワーPMGと電力Peはそれぞれ以下のとおりである。
【数6】
【数7】
【0056】
ステップ332:走行パラメータ、道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて対象機器の予測発熱値を決定する。
【0057】
ここで、第2のフルビークルパラメータは、一定時間内で車両走行する過程において電池を流れる平均電流、電池の直流内部抵抗などのパラメータを含む。
【0058】
現在の走行状態における対象機器の発熱値Q1と中間予測発熱値Q2に対してフィッティングを行うことによって対象機器の予測発熱値Q3を得ることができる。
【0059】
即ち、下式によって対象機器の予測発熱値Q3を決定する。
【数8】
【0060】
ここで、Q1は、車両が予測ルート範囲内で現在の走行状態を保持すると仮定した場合で発生する対象機器の発熱値であり、Q2は、予測走行ルートの道路状況パラメータに基づいて得られた中間予測発熱値であり、kは補正係数(0≦k≦1)である。
【0061】
具体的には、モータに対して、以下のとおりである。
【数9】
【0062】
ここで、PMG1とPe1は、現在一定時間内の走行中(非駐車)のモータの平均機械的パワーと電力であり、tは、駐車段階を含まない平均走行時間である。
【数10】
【0063】
ここで、Pe2とPMG2は、クラウドにより与えられた道路状況パラメータに基づいて対応するモータ電力とモータ機械的パワーである。tは、駐車段階を含まない平均走行時間である。
【0064】
モータの予測発熱値Qm3は以下のとおりである。
【数11】
【0065】
電池に対して、以下のとおりである。
【数12】
【0066】
I1は、現在一定時間内で走行中(非駐車)において電池を流れる平均電流であり、R1は、I1での電池のDCRであり、tは、駐車段階を含まない平均走行時間である。
【数13】
【0067】
I2は、クラウドにより与えられた道路状況パラメータ及び駐車段階を含まない平均走行速度uに基づいて対応する電池を流れる電流I2であり、R2は、I2での電池のDCRであり、tは駐車段階を含まない平均走行時間である。
【0068】
電池の予測発熱値Qb3は以下のとおりである。
【数14】
【0069】
ステップ333:対象機器の予測発熱値、対象機器の現在温度、環境温度、第3のフルビークルパラメータに基づいて対象機器の予測温度を取得する。
【0070】
ここで、第3のフルビークルパラメータは、電池比熱容量、モータシステム比熱容量、電池放熱パワー、モータ放熱パワーなどのパラメータを含んでもよい。
【0071】
具体的には、対象機器の予測発熱値、対象機器の放熱値と対象機器の比熱容量に基づいて、サンプリングした対象機器の現在温度と環境温度を結び付けて、最終的に対象機器の予測温度を算出することができる。ここで、対象機器の放熱値は、対象機器の放熱パワーと駐車段階を含まない平均走行時間に基づいて算出することができる。
【0072】
例えば、電池の予測温度Tbatに対して、下式によって得ることができる。
【数15】
【数16】
【0073】
ここで、Qdbは駐車段階を含まない平均走行時間t内において電池が放出する熱量であり、Qb3は電池の予測発熱値であり、Cbatは電池比熱容量であり、Tbat1は電池の現在温度である。
【0074】
モータの予測温度Tmotに対して、下式によって得ることができる。
【数17】
【数18】
【0075】
ここで、Qdmは駐車段階を含まない平均走行時間t内においてモータが放出する熱量であり、Qm3はモータの予測発熱値であり、Cmotはモータ比熱容量であり、Tmot1はモータの現在温度である。
【0076】
ステップ340:予測温度に基づいて熱管理モードを切り替えるように制御命令を出す。
【0077】
上記実施例は、第1のフルビークルパラメータ、第2のフルビークルパラメータ及び車両予測走行ルートに対応する道路状況パラメータに基づいて、関連する中間データを算出し、フィッティングして対象機器の予測発熱値を得て、さらに第3のフルビークルパラメータとサンプリングした温度を考慮して、最終的に対象機器の予測温度を得る。車両の現在走行状態の上で、車両予測走行ルートの道路状況情報を結び付けて対象機器の動作温度に対して予測を行い、モデルを利用してリアルタイムに演算し、対象機器の温度計画を実現することで、熱管理効率とフルビークル効率を大幅に向上させる。
【0078】
任意選択的に、車両の走行ルートが予測走行ルートから外れる時、予測走行ルートを改めて取得し、改めて取得した予測走行ルートに基づいて予測温度を更新し、熱管理モードを切り替えてもよい。車両の走行状態に基づいて予測走行ルートを即時に調整し、さらに対象機器の予測温度を即時に更新し、それに応じて熱管理モードを切り替えることで、熱管理の効率をさらに高め、予測式熱管理の確実性を向上させる。
【0079】
本出願の実施例による熱管理方法は、具体的に実施する過程において、2つの実現形態を有してもよい。以下は、図面を結び付けながら2つの可能な実現形態を説明する。
【0080】
図4では、本出願の熱管理方法による一実現可能な概略フローチャートである。この実現形態において、車両予測走行ルートは乗客によって選定されたままであり、対象機器の予測温度を取得することによって、対象機器に対する熱管理を実現する。図4における類似ステップについては、前述の実施例を参照してもよい。簡潔のために、ここで説明を省略する。
【0081】
ステップ401:乗客によって予測走行ルートを設定し、車両が一定時間走行した後、熱管理を開始する。
【0082】
乗客が走行目的地を決定したら、予測走行ルートは、乗客が目的地に基づいて設定した走行ルートとなる。
【0083】
ステップ402:予測走行ルートを取得する。
【0084】
ステップ403:クラウドプラットフォームに予測走行ルートを送信し、かつ予測走行ルートの道路状況パラメータを要求する。
【0085】
ステップ404:道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定する。
【0086】
ステップ405:走行パラメータ、道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて対象機器の予測発熱値を決定する。
【0087】
ステップ406:対象機器の予測発熱値、対象機器の現在温度、環境温度、第3のフルビークルパラメータに基づいて対象機器の予測温度を取得する。
【0088】
ステップ407:予測温度に基づいて熱管理モードを切り替えるように制御命令を出す。
【0089】
ステップ408:車両が予測走行ルートから外れたか否かを判断する。
【0090】
車両が目的地に到着していなければ、ステップ404に進み、引き続いて乗客により設定された予測走行ルートに基づいて対象機器の熱管理を行う。車両が目的地に到着したら、ステップ409に進む。
【0091】
ステップ409:熱管理を終了する。
【0092】
図5では、本出願の熱管理方法の別の実現可能な概略フローチャートが示されている。車両予測走行ルートが設定されていない場合、図5に示すステップにしたがって対象機器に対する熱管理を実現してもよい。図5における類似ステップについては、前述の実施例を参照してもよい。簡潔のために、ここで説明を省略する。
【0093】
ステップ501:予測走行ルートが設定されておらず、車両が一定時間走行した後、熱管理を開始する。
【0094】
ステップ502:車両の現在位置に基づいて、これからの一定距離内の車両の走行ルートを予測し、該ルートを予測走行ルートとする。
【0095】
乗客が目的地に基づいて走行ルートを設定していない場合、車両の現在位置に基づいて、車両がこれから予め設定された距離内で走行する可能性のある複数の走行ルートを取得し、クラウドプラットフォームにより提供された道路状況情報に基づいて、最も可能性のある走行ルートを選択して予測走行ルートとしてもよく、又は、クラウドプラットフォームに記録された車所有者の常用ルートに基づいて、最も可能性のある走行ルートを選択して予測走行ルートとしてもよい。
【0096】
ステップ503:クラウドプラットフォームに予測走行ルートを送信し、かつ予測走行ルートの道路状況パラメータを要求する。
【0097】
ステップ504:道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定する。
【0098】
ステップ505:走行パラメータ、道路状況パラメータ、第2のフルビークルパラメータに基づいて対象機器の予測発熱値を決定する。
【0099】
ステップ507:予測温度に基づいて熱管理モードを切り替えるように制御命令を出す。
【0100】
ステップ508:車両が予測走行ルートの終点まで走行したか否かを判断する。
【0101】
車両が予測走行ルートの終点まで走行していない場合、ステップ509に進む。車両が予測走行ルートの終点まで走行した場合、ステップ502に進み、車両の現在位置及びこれから一定距離内で車両が走行する可能性のある複数のルートを改めて取得し、最も可能性のある走行ルートを選択して予測走行ルートとし、かつ改めて取得した予測走行ルートに基づいて予測温度と熱管理モードを更新する。
【0102】
ステップ509:車両が予測走行ルートから外れたか否かを判断する。
【0103】
車両が予測走行ルートから外れていない場合、ステップ510に進む。車両が予測走行ルートから外れた場合、ステップ502に進み、車両の現在位置及びこれから一定距離内で車両が走行する可能性のある複数のルートを改めて取得し、最も可能性のある走行ルートを選択して予測走行ルートとし、かつ改めて取得した予測走行ルートに基づいて予測温度と熱管理モードを更新する。
【0104】
ステップ510:車両が走行を終了したか否かを判断する。
【0105】
車両が走行を終了していない場合、ステップ504に進み、引き続いて熱管理を行う。フルビークルが走行を終了した場合、ステップ511に進む。
【0106】
ステップ511:熱管理を終了する。
【0107】
以上から分かるように、本出願の実施例は、様々な走行条件で対象機器に対して予測式熱管理を行い、様々な運転習慣に沿った車両の熱管理を満たすことができる対象機器の昇温曲線を最適化し、温度調整パワーの平滑化を実現することによって、絶縁システムと電気化学物質の劣化速度を低減させ、熱管理システムのエネルギー消費を減少させ、熱管理効率を向上させることができる。
【0108】
本出願の実施例は、熱管理システムをさらに提供する。図6に示すように、このシステムは、制御ユニットを含み、この制御ユニットは、対象機器動作温度の予測値を含む予測温度を取得するために用いられ、さらに予測温度に基づいて制御命令を出すために用いられ、ここで、制御命令は熱管理モードを切り替えるために用いられ、熱管理モードは対象機器の動作温度を調整するために用いられる。
【0109】
可能な一実施例において、制御ユニットはさらに予測走行ルートを取得するために用いられる。上記熱管理システムは通信ユニットをさらに含み、該通信ユニットはクラウドプラットフォームに予測走行ルートを送信し、かつ該予測走行ルートの道路状況パラメータを要求するために用いられる。
【0110】
可能な一実施例において、制御ユニットはさらに、道路状況パラメータと第1のフルビークルパラメータに基づいて走行パラメータを決定し、該走行パラメータ、道路状況パラメータと第2のフルビークルパラメータに基づいて予測発熱値を決定し、該予測発熱値、対象機器の現在温度、環境温度と第3のフルビークルパラメータに基づいて予測温度を取得するために用いられる。
【0111】
可能な一実施例において、制御ユニットはさらに、車両走行ルートが予測走行ルートから外れる時、予測走行ルートを改めて取得し、改めて取得した予測走行ルートに基づいて予測温度を更新するために用いられる。
【0112】
本出願の実施例は、ドメインコントローラをさらに提供する。このドメインコントローラは、プロセッサとメモリを含み、メモリはコンピュータプログラムを記憶するために用いられ、プロセッサはコンピュータプログラムを呼び出して上記任意の可能な実現形態における熱管理方法を実行するために用いられる。
【0113】
具体的には、このドメインコントローラ(Domain Control Unit、DCU)は、以下のように構成されてもよい。ハード線又は信号線を介して圧縮機、バルブスイッチ、放熱ファンに接続され、信号線を介してダッシュボード、モータコントローラユニット(Motor Controller Unit、MCU)、温度センサ、車載TBOX(Telematics BOX、TBOX)に接続され、車載TBOXは、無線信号を介してクラウドプラットフォームと通信する。ドメインコントローラにゲートウェイ機能がさらに統合された場合、車載TBOXを無線信号受信機に置き換えてもよく、無線信号受信機は無線信号を介してクラウドプラットフォームと通信する。各温度センサは、環境温度、モータ温度、電池温度、乗客室温度、各主要バルブの出入り口の水温、他のパワーデバイス温度などの信号をドメインコントローラに送信する。クラウドプラットフォームは、車載TBOX又は無線信号受信機を介して、ドメインコントローラに道路状況パラメータ信号を送信する。ドメインコントローラは、信号を受信すると、内部で処理を実行して熱管理の需要を判定し、熱管理の動作モードを切り替え、制御量を計算してバルブ開閉信号、放熱ファン開閉信号、循環ポンプ回転数信号などの制御信号を出力する。
【0114】
本出願の実施例は、コンピュータプログラムを記憶するための読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。このコンピュータプログラムは、上記第1の態様又は第1の態様の任意の可能な実現形態における方法を実行するために用いられる。
【0115】
指摘すべきこととして、本出願は、以上で説明され、図示された特定の構成及び処理に限定されるものではない。簡潔のために、ここでは、既知の方法についての詳細な説明を省略した。上記実施例において、例としていくつかの具体的なステップが説明及び記述されている。しかし、本出願の方法過程は、説明及び記述した具体的なステップに限定されるものではなく、当業者であれば、本出願の精神を理解したうえで、いろいろな変更、修正及び追加を行うか、又はステップ間の順序を変えてもよい。
【0116】
以上の構成ブロックに示される機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ハードウェアの形態で実現される時、それは例えば、電子回路、専用集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、適切なハードウェア、プラグイン、機能カードなどであってもよい。ソフトウェアの形態で実現される時、本出願の要素は、必要なタスクの実行に用いられるプログラム又はコードセグメントである。プログラム又はコードセグメントは、機器読み取り可能な媒体に記憶されてもよく、又は搬送波に載せられたデータ信号によって伝送媒体や通信リンク上で伝送されてもよい。「マシン読み取り可能な媒体」は、情報を記憶又は伝送することができるいかなる媒体を含んでもよい。マシン読み取り可能な媒体の例として、電子回路、半導体メモリデバイス、ROM、フラッシュメモリ、消去可能なROM(EROM)、フレキシブルディスク、CD-ROM、光ディスク、ハードディスク、光ファイバー媒体、無線周波数(Radio Frequency、RF)リンクなどを含む。コードセグメントは、インターネット、イントラネットのようなコンピュータネットワークを介してダウンロードされてもよい。
【0117】
さらに説明すべきことは、本出願で言及した例示的な実施例は、一連のステップ又は装置に基づいていくつかの方法又はシステムを記述するものである。しかし、本出願は、上述したステップの順序に限定されるものではなく、つまり、実施例で言及した順序にしたがってステップを実行してもよく、実施例における順序とは異なってもよく、又はいくつかのステップを同時に実行してもよい。
【0118】
以上は、本開示の実施例による方法、装置、機器とコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して記述されたものである。理解すべきことは、フローチャート及び/又はブロック図における各ブロック、及びフローチャート及び/又はブロック図における各ブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実現されてもよい。これらのコンピュータプログラムコマンドは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されることによりマシンを生成してもよい。それによって、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサで実行されるこれらの命令は、フローチャート及び/又はブロック図における一つ又は複数のブロックに指定された機能/動作の実現を可能にする。このプロセッサは、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、特殊アプリケーションプロセッサ又はフィールドプログラマブルプ回路であってもよいが、これらに限定されない。さらに理解できるように、ブロック図及び/又はフローチャートにおける各ブロック、及びブロック図及び/又はフローチャートにおける各ブロックの組み合わせは、指定された機能又は動作を実行する専用ハードウェアによって実現されてもよく、専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実現されてもよい。
【0119】
最後に説明すべきこととして、以上の各実施例は、本出願の技術案を説明するためにのみ用いられ、それを限定するためのものではない。前述した各実施例を参照しながら本出願について詳細に説明したが、当業者であれば理解できるように、それは依然として前述した各実施例に記載の技術案を修正し、又はそのうち一部又は全部の技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術案の本質を本出願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではなく、それは全て本出願の特許請求の範囲及び明細書の範囲内に含まれるものとする。特に、構造的矛盾が存在しない限り、各実施例で言及した各技術的特徴を、任意の形態で組み合わせてもよい。本出願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の全ての技術案を含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6