(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】集塵機能を備える据付型丸鋸切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 47/00 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B23D47/00 A
(21)【出願番号】P 2024104763
(22)【出願日】2024-06-28
【審査請求日】2024-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524247031
【氏名又は名称】株式会社奥村機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 克敏
(72)【発明者】
【氏名】奥村 仁志
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-21835(JP,A)
【文献】中国実用新案第207087037(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107150378(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-2626478(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 47/00
B27G 3/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に開口する溝部が設けられ、地面に据え付けられるテーブルと、
鋸刃の上側が該テーブル面上に突出するように該溝部内に配置され、該溝部に沿って往復移動する丸鋸と、
該テーブルの下側に該溝部に沿って設けられ、該丸鋸の下側を囲うブレードケースと、を備え、
該丸鋸を回転させながら所定の始動位置から前進させることにより、該溝部を跨ぐようにして該テーブル上に配置される被加工物を切断する、据付型の丸鋸切断機であって、
側部に取込口が設けられる外筒、及び、該外筒の内側に配置され上下方向に開口する内筒を備えるサイクロン式分離器と、
上面に集塵口が設けられ、該外筒の下側開口部の下方に配置される集塵容器と、
下方に開口する吸気口、及び、側方に開口する排気口を備え、回転軸方向から気体を吸気し回転軸方向と直交する方向に排気する遠心送風機と、
を有し、
該ブレードケースは、該丸鋸の始動位置側の端部に設けられる給気口と、該丸鋸の前進方向側の端部に設けられる排出口とを備え、
該遠心送風機の排気口と該ブレードケースの給気口とを配管接続し、
該ブレードケースの排出口と該サイクロン式分離器の取込口とを配管接続し、
該サイクロン式分離器の内筒の上側開口部と該遠心送風機の吸気口とを接続し、
該サイクロン式分離器の外筒の下側開口部と該集塵容器の集塵口とを接続する
ことを特徴とする集塵機能を備える据付型丸鋸切断機。
【請求項2】
前記ブレードケースは、前記テーブルの裏面に固定された筐体であり、
前記ブレードケースの給気口が、前記丸鋸の始動位置側にある側面の底部近傍に開口すること、及び、前記ブレードケースの排出口が、前記丸鋸の前進方向側にある側面の底部近傍に開口する
ことを特徴とする請求項1記載の集塵機能を備える据付型丸鋸切断機。
【請求項3】
前記テーブルの上側に設けられ、前記テーブル面上に突出する前記丸鋸の上側を覆うブレードカバーを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の集塵機能を備える据付型丸鋸切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦方向に高速回転する丸鋸を用いてアルミ長尺形材等のワーク(被加工物)を切断加工したときに生じる切屑や粉塵(以下、まとめて「切り粉」という。)を回収するための集塵機能を備えた、地面上に据え付けて使用するテーブルソーに関し、特に、被加工物が載置されるテーブルの面上から鋸刃の上部が突出するアンダーカット型の丸鋸切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
据付型の丸鋸切断機は、地面等の安定した土台に固定され、テーブル上に載せられた被加工物であるワークに対して高速回転する丸鋸を押し当てて切断加工する装置である。かかる装置には、上下に開口する溝部をテーブルに設け、その溝部から鋸刃の上部を突出させるようにしたものがある。丸鋸は高速回転しながら溝部に沿って往復移動することが可能であり、溝部を跨ぐようにして載置された被加工物に向けて丸鋸を前進させることにより、被加工物に鋸刃を押し当てて切断する。
【0003】
通常、丸鋸は、被加工物の上面側から底面側に向けて鋸刃が当たる方向に回転させる。切り粉は、被加工物の素材に応じて、樹脂(塩ビ、アクリル)や、木材(住宅用構造材など)、金属(鉄鋼材料、非鉄金属材料)等からなり、サイズが細かく、風で動いて飛散し易いという特徴がある。丸鋸で加工したときに生じる切り粉は、丸鋸が回転することにより生じる気流により下方に吹き飛ばされることから、従来、丸鋸の下側を囲うブレードケースをテーブルの下側に溝部に沿って取り付けておくことにより、下方に吹き飛ばされた切り粉が溝部を通ってブレードケース内に収容されるようにしたものがある。
【0004】
従来、ブレードケース内に収容された切り粉を回収するための集塵装置として、ブレードケースに集塵袋を取り付け、丸鋸が回転することにより生じる気流により切り粉が集塵袋に流れ込むようにしたものが知られているが、集塵袋のフィルターが切り粉により目詰まりし易く、徐々に集塵効率が低下し、メンテナンスが負担であるという問題があった。
【0005】
この点、フィルターを用いることなく切り粉を回収するための技術として、特許文献1が知られている。この技術は、切断材(被加工物)を載置するためのテーブルと、該テーブルの下方に設置されて鋸刃を該テーブルの上面から突き出させた切断機本体を備えた据付型の切断機における集塵装置であって、鋸刃の下部を覆うブレードケースに接続されて、前記鋸刃の回転に伴い発生する空気の流れを旋回させつつ切り粉を空気から遠心分離する作用を利用した集塵装置である(段落[0009]第2段落目参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される技術は、集塵手段としてサイクロン作用を利用する点では優れているが、集塵装置を通過した後の空気(内筒3の下端部を経て排気口3aから外部へ排気される空気)が、そのまま大気中に放出される点で不十分なものである。すなわち、この技術は、ひとたび、サイクロン式分離器を通過させれば切り粉を分離回収することが可能であるという技術的思想を背景とするが、切り粉を遠心分離するための旋回流を、鋸刃の回転に伴い発生する空気の流れにより発生させるものとしているため、気流が弱い場合には集塵装置内で切り粉が分離されないうちに内筒に吸い込まれ、内筒の上側開口部から切り粉を含んだ空気を外部にまき散らしてしまう可能性がある。
【0008】
この点、送風機を組み込んで、集塵装置内に供給する気流を強くする(旋回力を高める)方法が検討されるが、単に強力な送風機を組み込む方法では、装置全体の大形化やコストの上昇を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンパクトな構成で、集塵能力を向上させることが可能な、集塵機能を備える据付型丸鋸切断機を提供すること、即ち、装置全体の大型化を抑制しつつ、切り粉の取りこぼしを防いで切り粉の回収率を向上させることが可能な、集塵機能を備える据付型丸鋸切断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の集塵機能を備える据付型丸鋸切断機は、上下に開口する溝部が設けられ、地面に据え付けられるテーブルと、鋸刃の上側が該テーブル面上に突出するように該溝部内に配置され、該溝部に沿って往復移動する丸鋸と、該テーブルの下側に該溝部に沿って設けられ、該丸鋸の下側を囲うブレードケースと、を備え、該丸鋸を回転させながら所定の始動位置から前進させることにより、該溝部を跨ぐようにして該テーブル上に配置される被加工物を切断する、据付型の丸鋸切断機であって、側部に取込口が設けられる外筒、及び、該外筒の内側に配置され上下方向に開口する内筒を備えるサイクロン式分離器と、上面に集塵口が設けられ、該外筒の下側開口部の下方に配置される集塵容器と、下方に開口する吸気口、及び、側方に開口する排気口を備え、回転軸方向から気体を吸気し回転軸方向と直交する方向に排気する遠心送風機と、を有し、該ブレードケースは、該丸鋸の始動位置側の端部に設けられる給気口と、該丸鋸の前進方向側の端部に設けられる排出口とを備え、該遠心送風機の排気口と該ブレードケースの給気口とを配管接続し、該ブレードケースの排出口と該サイクロン式分離器の取込口とを配管接続し、該サイクロン式分離器の内筒の上側開口部と該遠心送風機の吸気口とを接続し、該サイクロン式分離器の外筒の下側開口部と該集塵容器の集塵口とを接続することを特徴とする。
【0011】
前記ブレードケースは、好ましくは、前記テーブルの裏面に固定された筐体であり、前記ブレードケースの給気口が、前記丸鋸の始動位置側にある側面の底部近傍に開口すること、及び、前記ブレードケースの排出口が、前記丸鋸の前進方向側にある側面の底部近傍に開口するものである。
また、本発明は、望ましくは、前記テーブルの上側に設けられ、前記テーブル面上に突出する前記丸鋸の上側を覆うブレードカバーを有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンパクトな構成で、集塵能力を向上させることが可能な、集塵機能を備える据付型丸鋸切断機を提供することができる。集塵手段としてフィルターが不要であるため、前述のフィルターによる目詰まりやメンテナンスの負担といった問題を生じないが、本発明は次の効果を有する点で従来にはない優れた効果を発揮する。
【0013】
すなわち、本発明によれば、鋸刃が高速回転することにより発生する気流により、切断加工により生じた切り粉のほとんどは、該溝部を通ってブレードケース内に取り込まれる。そして、丸鋸が前進することにより生じる前進方向の気流や、遠心送風機による送風により、ブレードゲース内には始動位置側の端部(給気口)から前進方向側の端部(排出口)に向かう気流が発生する。そのため、ブレードゲース内の切り粉は、ブレードケースの前進方向側(排出口側)に流れ、排出口に配管接続されたサイクロン式分離器(外筒)内に流れ込む。該分離器内では、空気よりも比重の重い切り粉のほとんどが分離されて集塵容器内に落下する。サイクロン式分離器内の空気は遠心送風機により内筒を通じて吸気され、該排気口からブレードケースの始動位置側の端部に設けられた給気口に再度流れ込み、ブレードケース内の切り粉を吹き飛ばしながら、再度、サイクロン式分離器内に流れ込むという循環が行われる。すなわち、サイクロン式分離器内で分離し切れずに内筒から吸い込まれた切り粉は、ブレードケース内に再び送り込まれ、再度、サイクロン式分離器内に送り込まれる。
【0014】
遠心送風機が作動中は上記空気の循環が継続する。本発明は、ひとたび、サイクロン式の分離器を通過させれば切り粉を分離して回収可能であることを前提とするものではなく、空気を装置内で循環させることにより、繰り返しサイクロン式分離器を通過させて切り粉の取りこぼしを減らすことを技術的特徴とするものであり、切り粉の回収率(集塵能力)の向上を図ることができる。本発明は、切り粉の移動に遠心送風機による送風を利用するものであるが、丸鋸の回転に伴い生じる気流(回転流)や、丸鋸が前進することにより生じる気流をも利用するものであり、かつ、空気が装置内を循環し、何度もサイクロン式分離器内を通過するように構成しているため、大型の送風機や吸引機を導入しなくとも十分な集塵能力を発揮することができ、コンパクトな構成の丸鋸切断機を提供することができる。
【0015】
遠心送風機は、回転軸方向から気体を吸気し回転軸方向と直交する方向に排気する送風機であり、例えば、シロッコファンやターボファンなどである。遠心送風機の吸気口は下方に開口しており、この吸気口に上下方向に開口する内筒が接続され、更に外筒の下側開口部の下方に集塵容器を配置するように構成しているため、遠心送風機内の切り粉が集塵容器内にストレートに落下しやすい点でも、集塵能力の向上を図ることができる。その他、遠心送風機の送風により、ブレードゲース内には前進方向(始動位置側の端部から前進方向側の端部に向かう方向)の気流を発生させるので、ブレードケース内に切り粉が堆積し難いという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】丸鋸切断機の外観を背面側から簡略的に示す図である。
【
図2】丸鋸切断機の外観を右側面側から簡略的に示す図である。
【
図3】丸鋸切断機の外観を上面側から簡略的に示す図である。
【
図4】丸鋸切断機の内部構成を正面側から簡略的に示す図である。
【
図5】丸鋸切断機の内部構成を右側面側から簡略的に示す図であり、送風管や案内管の作図は省略してある。
【
図6】丸鋸切断機の構成を右側面側から簡略的に示す図であり、特に、切断加工前の待機状態及び配管内の空気の流れ方向を示す。
【
図7】丸鋸切断機の構成を右側面から簡略的に示す図であり、特に、被加工物を切断した後の状態及び配管内の空気の流れ方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の集塵機能を備える据付型丸鋸切断機について図面に基づいて具体的に説明するが、本発明の実施例はこれらに限定されるものではない。
図1は、丸鋸切断機1の外観を背面側から一部省略して簡略的に示す図である。
図2は、丸鋸切断機1の外観を右側面側から一部省略して簡略的に示す図である。
図3は、丸鋸切断機の外観を上面側から一部省略して簡略的に示す図である。
図4は、丸鋸切断機1の内部構成を正面側から一部省略して簡略的に示す図である
図5は、丸鋸切断機1の内部構成を右側面側から一部省略して簡略的に示す図であり、後述する動力機構を説明するため、送風管91や案内管92の作図は省略してある。
図6は、丸鋸切断機1の構成を右側面側から簡略的に(一部省略して)示す図であり、特に、切断加工前の待機状態及び配管内の空気の流れ方向を示す。
図7は、丸鋸切断機1の構成を右側面から簡略的に(一部省略して)示す図であり、特に、被加工物を切断した後の状態及び配管内の空気の流れ方向を示す。
図1、
図3、
図6、
図7に示す矢印は装置1内を循環する空気の流れを示す。
【0018】
本発明は、
図1、
図3、
図6、
図7に矢印で示すとおり、装置1内を空気が循環し、繰返しサイクロン式分離器60内を通過するように構成しているため、切り粉の取りこぼしを防いで切り粉の回収率を向上させることができ、大型の送風機や吸引機を導入しなくとも十分な集塵能力を発揮することができ、装置全体としてコンパクトな構成の丸鋸切断機を提供することができる。
【0019】
丸鋸切断機1は、縦回転する丸鋸31を用いてアルミ長尺形材等のワーク(被加工物)を切断加工したときに生じる切り粉を分離回収するための集塵機能を備えた、地面上に据え付けて使用する加工装置であり、地面等の安定した土台に固定され、テーブル20上に載せられた被加工物Wに対して高速回転する丸鋸31を押し当てることにより切断加工するアルミ形材用アンダーカット式切断機である。テーブル20の下側には、丸鋸31を高速回転及び往復移動させる動力機構を備え、テーブル20の上側には、テーブル20上の被加工物Wを押圧して所定の位置に保持する昇降機構を備え、テーブル20の後ろ側(
図2では右方)には、集塵機構のうち切り粉を分離回収するサイクロン式分離機60や集塵容器70、シロッコファン80を備える。
【0020】
丸鋸切断機1は、上下に開口する溝部201が設けられ、地面に据え付けられるテーブル20と、鋸刃の上側がテーブル面上に突出するように溝部201内に配置され、溝部201に沿って往復移動する丸鋸31と、テーブル20の下側に溝部201に沿って設けられ、丸鋸31の下側を囲うブレードケース40と、を備える。丸鋸31は、被加工物の上面側から底面側に向けて鋸刃が当たる方向(
図2に示す場合には反時計回り)に回転させる。丸鋸31を所定の始動位置から前進方向(被加工物に接触する方向)に移動させることにより、溝部201を跨ぐようにしてテーブル20上に配置される被加工物Wを切断する。丸鋸切断機1は、側部に取込口611が設けられる外筒61、及び、外筒61の内側に配置され上下方向に開口する内筒64を備えるサイクロン式分離器60と、外筒61の下側開口部の下方に配置される集塵容器70と、下方に開口する吸気口801、及び、側方に開口する排気口802を備え、回転軸方向から気体を吸気し回転軸方向と直交する方向に排気する遠心送風機としてのシロッコファン80と、を有する。
【0021】
テーブル20は、架台21によりその上面が水平になるように支持される。被加工物Wはテーブル20の上面に載置する。テーブル20には、その上面及び下面に開口し直線状に延びる溝部201を設ける。テーブル20の上面には、コラム23と、複数のL字型の背当て定規22とが設けてある。コラム23は、溝部201の上方に配置され溝部201の延設方向に延びる装着部23aと、装着部23aを支持し架台21に固定される立設部23bと、により構成される。昇降機構は装着部23aに設ける。昇降機構は、上下方向に伸縮するエアシリンダ24である。エアシリンダ24の下端には被加工物の形状に応じて変形するパッドを備える材料押え25が装着され、背当て定規22に被加工物Wをあてがった状態で、材料押え25を降下させて被加工物Wを押圧することにより、被加工物Wを所定の位置に保持する。材料押え25は、ブレードカバー50の一部を兼ねており(
図7参照)、丸鋸31が通過できるように正面側からみて断面逆凹字状であり、側面には切断の状況を視認するための窓部251が設けてある。
【0022】
丸鋸31は、その鋸刃の上側が溝部201から突出するように取り付ける。丸鋸31は動力機構により作動する。動力機構は、丸鋸31を高速回転させる刃物モータ32と、刃物モータ32が設置されるスライダ33と、溝部201と平行に配置されスライダ33が往復動自在に装着されるガイド34と、スライダ33を往復移動させるエアハイドロシリンダ35と、エアハイドロシリンダ35に接続されるハイドロタンク36(
図5参照)とを備える。刃物モータ32の作動により丸鋸31が回転し、エアハイドロシリンダ35の作動により刃物モータ32とこれに装着された丸鋸31とが溝部201に沿って前後進(
図2、
図5―
図7では左右方向に移動)する。なお、丸鋸31は、被加工物Wの寸法や材質に応じて付け替え可能である。
【0023】
切り粉の飛散を防ぐため、テーブル20の上側には、テーブル面上に突出する丸鋸31の上側を覆うブレードカバー50を設ける。ブレードカバー50は、後部刃物カバー51と、材料押え25と、前部刃物カバー52とにより構成される。後部刃物カバー51は、始動位置側にある丸鋸31の上側を覆う、正面側からみて断面逆凹字状の部材であり、テーブル20面上の後端側に固定してある。前部刃物カバー52は、前進後の位置にある丸鋸31の上側を覆う、正面側からみて断面逆凹字状の部材であり、テーブル20面上の前端側に固定してある。材料押え25は、後部刃物カバー51と前部刃物カバー52との間に配置する。材料押え25は、材料加工時に降下させ、加工終了後に上昇させる。刃物カバー51、52と降下した状態の材料押え25とにより、その内部を丸鋸31(の上側)が往復動可能な空間を区画形成する。丸鋸31をブレードカバー50で覆った状態で切断作業を行うことができ、安全である。図示する場合には、材料押え25と前部刃物カバー52とを別体として構成しているが、一体でも良い。また、前部刃物カバーや後部刃物カバーは、材料押え25と同様、エアシリンダにより昇降可能に構成しても良い。
【0024】
ブレードケース40は、テーブル20の下側に溝部201に沿って設けられ、丸鋸31の下側を囲う部材である。ブレードケース40は、丸鋸31を挟み込むようにして溝部201と略並行に配置される左側面部41及び右側面部42と、底面部43と、丸鋸の始動位置側に配置される後端面部45と、丸鋸の前進方向側に配置される前端面部44とを備え、上面が溝部201に開口する箱形の部材である。ブレードケース40に収容される丸鋸31を回転させるため、左側面部41には、刃物モータ32の回転軸が挿入される開口部411(
図4参照)をスライダ33の進行方向に沿って設ける。ブレードケース40は、丸鋸31の始動位置側の端部に設けられる給気口451と、丸鋸31の前進方向側の端部に設けられる排出口441とを備える。好ましくは、図示するように、給気口451は、丸鋸31の始動位置側にある側面の底部近傍(後端面部45の底面近傍)に開口するように設け、排出口441は、丸鋸31の前進方向側にある側面の底部近傍(前端面部44の底面近傍)に開口するように設ける。切り粉を集めやすくするため、底面部43を略V字状や略U字状に形成するようにしても良い。
【0025】
丸鋸切断機1は、集塵機構として、前述のブレードカバー50、ブレードケース40に加え、サイクロン式分離器60、集塵容器70、シロッコファン80(遠心送風機)、ブレードケース40の給気口451とシロッコファン80の排気口802とを配管接続する塩ビ製の送風管91、ブレードケース40の排出口441とサイクロン式分離器60の取込口611とを配管接続する案内管92、サイクロン式分離器60の外筒61の下側開口部と集塵容器70の集塵口701とを配管接続する廃棄管94とを備える。案内管92は、架台21の内部に配置され一端が排出口441に接続されるスパイラルダクト921と、一端がスパイラルダクト921の他端に接続され他端がサイクロン式分離器60の取込口611に接続される塩ビ製のダクトホース922とにより構成される。サイクロン式分離器60の内筒64の上側開口部は、シロッコファン80の吸気口801に直接接続されているが、配管を介して接続しても良い。なお、外筒61の下側開口部と集塵容器70の集塵口701とは直接接続しても良い。
【0026】
サイクロン式分離器60は、側部に取込口611が設けられる外筒61、及び、外筒61の内側に配置され上下方向に開口する内筒64を備える。取込口611は、外筒61の中心軸に対して偏心した位置に設ける。取込口611から外筒61内に流れ込んだ切り粉を含む気流は、比重の大きな切り粉が外筒61の内周面に沿って周方向に旋回しながら徐々に落下するとともに、分離器60内の空気が内筒64の下側開口部から上側開口部を通ってシロッコファン80により吸引される。
【0027】
集塵容器70は、外筒61の下側開口部の下方に配置する。集塵容器70の上面には集塵口701を設ける。集塵容器70としては、例えばペール缶を利用可能である。内筒64の下側開口部に廃棄管94の上端を接続し、廃棄管94の下端に集塵口701を着脱可能に接続する。下側開口部から落下した切り粉は、廃棄管94を通って集塵容器70内に収容する。集塵容器70を廃棄管94から取り外し、収容された切り粉を廃棄する。
【0028】
シロッコファン80は、下方に開口する吸気口801、及び、側部に開口する排気口802を備え、複数の羽根を内蔵する多翼送風機である。シロッコファン80を作動させると、吸気口801から排気口802に向けて気流が発生し、回転軸方向から気体を吸気し回転軸方向と直交する方向に排気する。吸気口801側が負圧となり、内筒64を介して分離器60内の空気を吸引する。好ましくは、刃物モータ32の作動中はシロッコファン80を作動させることにより、丸鋸31回転中は常時、シロッコファン80による上述の空気の流れが生じるようにする。
【0029】
サイクロン式分離器60にて分離された切り粉や、集塵容器70内に収容された切り粉が、シロッコファン80により吸い込まれて、再び、ブレードケース40内に環流することを抑制するため、シロッコファン80の吸気口801が下方に開口し、この吸気口801に上下方向に開口する内筒64を接続し、外筒61の下側開口部の下方に集塵容器70を配置するように構成している。シロッコファン80内では気流の流れが回転軸方向(上方向)からこれと直交する方向(左右方向)に変化し、また、上下方向にサイクロン式分離機60や集塵容器70が並ぶように構成されているので、シロッコファン80内の切り粉がストレートに集塵容器70内に落下しやすい。
【0030】
更に好ましくは以下の構成をとるようにしても良い。すなわち、外筒61は、内径の等しい上側円筒部62と、上側円筒部62に連設され下方に向かうほど内径が小さくなるテーパ面を備える下側円筒部63と、を備える構成とする。上側円筒部62に取込口611を設ける。内筒64の下側開口部63が外筒61の上側円筒部62内に配置されるように各種寸法を設定することにより、下側円筒部63にて分離された切り粉が内筒64内に吸引され難くする。また、上側円筒部62に比して下側円筒部63を縦長に形成するとともに、廃棄管94を十分な長さのものとすることにより、シロッコファン80の吸引力により集塵容器70に収容された切り粉が吸引され難くして逆流を抑制する。
【0031】
以下、本発明の実施手順の一例を説明する。切断加工前の待機状態では、丸鋸31は、
図5及び
図6に示すように始動位置にある。かかる状態において、テーブル20上に被加工物Wを載置し、材料押え25を降下させて被加工物Wを所定の位置に保持する。材料押え25のパッドは被加工物の形状に応じて変形する。次に、シロッコファン80及び動力機構を作動させて、ブレードケース40内に前進方向に向かう気流を発生させる。そうすると、
図1、
図3、
図6にて矢印で示す方向の気流が発生し、丸鋸切断機1内に空気が循環する。その後、丸鋸31を反時計回りに高速回転させながら、被加工物を切断するが、この際に発生する切り粉のほとんどは、丸鋸31の回転流や(
図7参照)、ブレードケース40内の空気の流れにより、溝部201内に吸い込まれる。丸鋸31の上側はブレードカバー50に囲われており(
図7参照)、切り粉は飛び散り難い。
【0032】
ブレードケース40に収容された切り粉は、丸鋸31の回転流、丸鋸31が前進方向に移動することにより生じる気流に加え、給気口451から排出口441に向けて流れるシロッコファン80による送風により、案内管92を通じて、サイクロン式分離器60内に流れ込む。給気口451が始動位置側にある側面(後端面部45)の底部近傍に開口し、排出口441が前進方向側にある側面(前端面部44)の底部近傍に開口し、空気がブレードケース40の底面部43を這うように流れるため、切り粉がブレードケース40内に堆積し難い。分離器60内では、空気と切り粉とが分離され、比重の重い切り粉が集塵容器70内に落下するとともに、集塵機内の空気は内筒64を通じてシロッコファン80に取り込まれるが、分離し切れなかった切り粉を含む空気は、再度、ブレードケース40内に送り込まれる。
【0033】
このように、本発明によれば、装置内を空気が循環し、サイクロン式分離器60内で分離し切れなかった切り粉が再びサイクロン式分離器60を通過する構成である。繰り返しサイクロン式分離器60内を通過することで、切り粉の取りこぼしを少なくすることができ、集塵力を高めることができる。このように装置内の空気が循環して何度もサイクロン式分離器60内を通過する構成とすることにより、大型の送風機や吸引機を導入しなくとも十分な集塵能力を発揮することができ、コンパクトな構成の丸鋸切断機を提供することができ、狭い場所でもコンパクト設置できる。
【0034】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0035】
本発明は、アルミフレーム、アルミサッシ建材、伸銅、塩ビやアクリル等の樹脂材料、住宅用構造材等の木材や、その他各種材料の切断に用いられる据付型丸鋸切断機に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 集塵機能を備える丸鋸切断機
20 テーブル
201 溝部
21 架台
24 エアシリンダ
31 丸鋸
40 ブレードケース
44 前端面部
441 排出口
45 後端面部
451 給気口
50 ブレードカバー
51 後部刃物カバー
52 前部刃物カバー
60 サイクロン式分離器
61 外筒
611 取込口
64 内筒
70 集塵容器
701 集塵口
80 シロッコファン(遠心送風機)
801 吸気口
802 排気口
91 送風管
92 案内管
94 廃棄管
W 被加工物
【要約】
【課題】コンパクトな構成で、集塵能力を向上させることが可能な、集塵機能を備える据付型丸鋸切断機を提供する。
【解決手段】丸鋸切断機1は、ブレードケース40と、サイクロン式分離器60と、シロッコファン80(遠心分離機)と、を有しており、ブレードケース40の始動位置側の端部には給気口451を設け、丸鋸31の前進方向側の端部には排出口441を設ける。側部に開口するシロッコファン80の排気口802とブレードケース40の給気口451とを配管接続し、ブレードケース40の排出口441とサイクロン式分離器60の取込口611とを配管接続し、サイクロン式分離器60の内筒64の上側開口部と下方に開口するシロッコファン80の吸気口801とを接続し、サイクロン式分離器60の外筒61の下側開口部と集塵容器70の集塵口701とを接続する。装置1内の空気が循環し、何度もサイクロン式分離器60内を通過する。
【選択図】
図1