(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】車両用回転シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B60N2/14
(21)【出願番号】P 2019218991
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 治希
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199163(JP,A)
【文献】特開2017-094875(JP,A)
【文献】特開2006-304538(JP,A)
【文献】特開2010-009866(JP,A)
【文献】特開2019-202724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体を支持するシートフレームと、当該シートフレームを支持し、貫通孔を備えた環状の回転部材と、その回転部材を下方から回転可能に支持するベース部材と、前記シートフレームおよび前記回転部材の少なくとも一方に取付けられる電装品とを備える車両用回転シート装置であって、
前記シート本体は、シートクッションと、シートバックとを含み、
前記シートフレームは、前記シートクッションを構成するとともに、上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材を備え、
前記回転部材の回転中心が通過する位置において、電線保持部材が前記クッション側受圧部材に
直接取付られ、
前記電装品に連なる複数の電線がそれぞれ、前記シート本体が載置される
床面から、前記回転部材の前記貫通孔を通過して前記クッション側受圧部材に延び、前記回転中心において前記電線保持部材に集約されて保持され、上面視で前記回転中心から放射状に延びている車両用回転シート装置。
【請求項2】
前記電線保持部材は前記電線をそれぞれ通過させて集約して保持する孔を備える請求項1に記載の車両用回転シート装置。
【請求項3】
前記電線の少なくとも一本は、前記クッション側受圧部材の下方、且つ、前記回転中心の後方から前方に延び、前記電線保持部材に保持された後、後方に延びている
請求項1又は請求項2に記載の車両用回転シート装置。
【請求項4】
前記クッション側受圧部材は、金属線を左右に蛇行するようにジグザグに湾曲して成るシートスプリングを有する請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の車両用シート回転装置。
【請求項5】
前記電装品は、前記回転部材を回転駆動させる回転用電気アクチュエータと、ブロワーと、前記シートフレームを昇降させる昇降用電気アクチュエータと、前記シートバックを前記シートクッションに対して傾動させる傾動用電気アクチュエータとの少なくとも一つを含む
請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載の車両用回転シート装置。
【請求項6】
前記ベース部材は前記
床面に前後方向に延びる左右一対のスライドレールを介して接続され、
前記シートフレームは、前記シートバックを構成するとともに、前方からの荷重を受けるバック側受圧部材を備え、
前記電線保持部材は左右一対の前記スライドレールの間、且つ、前記バック側受圧部材の前方に位置する
請求項1~請求項5のいずれか1つの項に記載の車両用回転シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体を支持するシートフレームと、当該シートフレームを支持する回転部材と、その回転部材を下方から回転可能に支持するベース部材と、前記シートフレームおよび前記回転部材の少なくとも一方に取付けられる電装品とを備える車両用回転シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートフレームを支持する回転部材と、その回転部材を回転可能に支持するベース部材と、前記回転部材を回転駆動する電動モータ等の電装品とを備える車両用回転シート装置が、たとえば特許文献1等で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両用回転シート装置では、シートフレーム側に電装品が取付けられることが多いが、シート本体およびシートフレームの回転時に、電装品に連なる電線に撓みが生じたり、無理な負荷がかかって損傷が生じたりすることは回避したい。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、シート本体の回転時に電装品に連なる電線に撓みが生じたり、損傷が生じたりすることを回避し得るようにした車両用シート回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シート本体を支持するシートフレームと、当該シートフレームを支持する回転部材と、その回転部材を下方から回転可能に支持するベース部材と、前記シートフレームおよび前記回転部材の少なくとも一方に取付けられる電装品とを備える車両用回転シート装置において、前記電装品に連なる電線が、前記回転部材の回転中心に固定配置される電線保持部材で保持されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、複数の前記電装品に個別に連なる複数の前記電線が、単一の前記電線保持部材に集約して保持されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記シート本体の一部を構成するシートクッションの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材が、前記シートフレームの一部を構成して前記回転部材に支持されるシートクッションフレームに取付けられ、前記電線保持部材が前記クッション側受圧部材の下方で前記電線を保持する位置に配置されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記電線保持部材が前記クッション側受圧部材に直接取付けられることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記シート本体の一部を構成するシートクッションの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材が、前記シートフレームの一部を構成して前記回転部材に支持されるシートクッションフレームに取付けられ、前記電線保持部材が前記クッション側受圧部材に直接取付けられることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第3~第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記シートフレームが、前記回転部材に支持されるシートクッションフレームと、当該シートクッションフレームもしくは前記回転部材に支軸を介して傾動可能に取付けられるシートバックフレームとを備え、前記電装品である傾動用電気アクチュエータが、前記シートバックフレームを傾動駆動することを可能として前記シートバックフレームの下部に取付けられ、前記傾動用電気アクチュエータに連なる前記電線が、前記支軸の近傍で前記シートバックフレームもしくは前記回転部材に取付けられる中間保持部材を経て前記電線保持部材に保持されることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第3の特徴の構成に加えて、前記ベース部材に保持部材用支持部材が取付けられ、当該保持部材用支持部材に、前記電線保持部材が取付けられることを第7の特徴とする。
【0013】
本発明は、第7の特徴の構成に加えて、前記電線保持部材が、前記電線を前記保持部材用支持部材の上方で保持して当該保持部材用支持部材に取付けられることを第8の特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、第7の特徴の構成に加えて、前記電線保持部材が、前記電線を前記保持部材用支持部材の下方で保持して当該保持部材用支持部材に取付けられることを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、シートフレームおよび回転部材の少なくとも一方に取付けられる電装品に連なる電線が、回転部材の回転中心に在る電線保持部材で保持されるので、シート本体の回転時に電装品に連なる電線に撓みが生じたり、損傷が生じたりすることを回避することができる。
【0016】
また本発明の第2の特徴によれば、複数の前記電装品に個別に連なる複数の電線が、単一の電線保持部材に集約して保持されるので、複数の電線をコンパクトに集約して配線することができる。
【0017】
本発明の第3の特徴によれば、シートフレームの一部を構成するシートクッションフレームに取付けられるクッション側受圧部材の下方で電線を保持する位置に電線保持部材が配置されるので、乗員の座面側への電線保持部材の突出を抑え、座面に座った乗員への電線保持部材の干渉を避けることができる。
【0018】
本発明の第4の特徴によれば、電線保持部材がクッション側受圧部材の下方で電線を保持しつつクッション側受圧部材に直接取付けられるので、座面に座った乗員への電線保持部材の干渉を避けることができるとともに、電線保持部材を取り付けるための部材を新たに設けることなく、部品点数の増大を回避しながら電線保持部材を回転部材の回転中心に効率的に配置することができる。
【0019】
本発明の第5の特徴によれば、電線保持部材がクッション側受圧部材に直接取付けられるので、電線保持部材を取り付けるための部材を新たに設けることなく、部品点数の増大を回避しながら電線保持部材を回転部材の回転中心に効率的に配置することができる。
【0020】
本発明の第6の特徴によれば、シートクッションフレームもしくは回転部材に支軸を介して傾動可能に取付けられるシートバックフレームを傾動駆動するための傾動用電気アクチュエータがシートバックフレームの下部に取付けられ、その傾動用電気アクチュエータに連なる電線が、支軸の近傍でシートクッションフレームもしくは回転部材に取付けられる中間保持部材を経て電線保持部材に保持されるので、シート本体の回転およびシートバックフレームの傾動時に電線保持部材および傾動用電気アクチュエータ間の電線に撓みや損傷が生じないようにすることができる。
【0021】
本発明の第7の特徴によれば、電線保持部材がのその当該電線保持部材の上方で保持して前記保持部材用支持部材に取付けられるベース部材に取付けられる保持部材用支持部材に電線保持部材が取付けられるので、シート回転装置の組み立て時に電線保持部材を容易に組み付けることができ、作業性が向上する。
【0022】
本発明の第8の特徴によれば、電線保持部材が保持部材用支持部材の上方で電線を保持するので、電線をシート回転装置内にコンパクトに纏めて配線することができる。
【0023】
さらに本発明の第9の特徴によれば、電線保持部材が保持部材用支持部材の下方で電線を保持するので、シート回転装置の組み立て時にシート回転装置の横倒し状態で作業を行なうことで電線を電線保持部材に容易に保持することができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施の形態のシート本体を省略した状態で車両用シート回転装置を示す斜視図である。
【
図2】車両用シート回転装置の要部を上方から見た平面図である。
【
図3】
図2の3-3線に沿うシート回転装置の断面図である。
【
図4】シートクッションフレームおよびクッション側受圧部材を省略した状態での
図3の4矢視図である。
【
図5】
図4の5-5線に沿うシート回転装置の断面図である。
【
図6】第2の実施の形態の
図3に対応した断面図である。
【
図7】シートクッションフレームおよびクッション側受圧部材を省略した状態での
図6の7矢視図である。
【
図8】第3の実施の形態の
図3に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明で「前後」、「左右」および「上下」は、通常姿勢で着座した着座者の正面方向を前方としつつその状態で着座者から見た方向を言うものとする。
【0026】
本発明の第1の実施の形態について
図1~
図6を参照しながら説明すると、先ず
図1において、車両に搭載される車両用シートのシート本体11は、シートクッション11aと、そのシートクッション11aの上方に配置されるシートバック11bとを備え、シートバック11bの上部には乗員の頭部を受け止めるヘッドレスト11cが配設される。
【0027】
前記シート本体11を支持するシートフレーム15は、前記シートクッション11aを支持するシートクッションフレーム16と、前記シートバック11bを支持しつつ前記シートクッションフレーム16の後部に支軸12を介して連結されるシートバックフレーム17とを備え、車両前後方向に延びて車両の床面に設けられる左右一対のスライドレール13で車両前後方向にスライド可能なシート回転装置14を介して支持される。
【0028】
前記シートクッションフレーム16は、前記シート回転装置14が乗員を車両前後方向前方に向く姿勢とした状態で、前記スライドレール13の長手方向に沿って延びる左右一対のサイドフレーム16aと、それらのサイドフレーム16aの前端部間を連結するパンフレーム16bと、前記一対のサイドフレーム16aの後部間を連結する連結パイプ16cとを備える。
【0029】
前記シートバックフレーム17は、上下方向に延びるとともに前記サイドフレーム16aの後端部に前記支軸12を介して下端部が傾動可能に連結される左右一対のシートバックサイドフレーム17aと、それらのシートバックサイドフレーム17aの上端部間を連結するアッパーフレーム17bと、前記一対のシートバックサイドフレーム17aの下端部間を連結するロアフレーム17cとを備え、前記アッパーフレーム17bには、前記ヘッドレスト11cの上下移動を案内する左右一対の管部材18が固定される。
【0030】
図2および
図3を併せて参照して、前記シートクッションフレーム16の前記パンフレーム16bおよび前記リヤパイプ16c間には、前記シートクッション11aの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材19が掛け渡される。このクッション側受圧部材19は、金属線を左右に蛇行するようにジグザグに湾曲して成る複数(この実施の形態では4個)のシートスプリング20を有し、それらのシートスプリング20は、隣接するシートスプリング20同士が左右対称となるように配置され、インサート成形によってそれらのシートスプリング20と一体に成形される樹脂製の複数の中間部連結部材21で、隣接のシートスプリング20同士が連結される。
【0031】
複数の前記シートスプリング20の前端部は、前記シートフレーム15における前記パンフレーム16bに設けられる係止部22にそれぞれ係合される。また相互に隣接するシートスプリング20の後端部は、前記シートフレーム15および前記シートバックフレーム17間の前記支軸12に係合されるとともにインサート成形によってシートスプリング20と一体に成形される樹脂製の後端部連結部材23で連結されており、前記後端部連結部材23が、前記支軸12を覆うように形成される。
【0032】
再び
図1に注目して、前記シートバックフレーム17が備える一対のシートバックサイドフレーム17a間には、樹脂等によって弾性変形可能に形成されるバック側受圧部材24が配置されており、このバック側受圧部材24は、上部連結ワイヤ25および下部連結ワイヤ26を介して左右の前記シートバックサイドフレーム17a間に架け渡される。
【0033】
ところで前記スライドレール13は、車両前後方向に延びる固定レール45と、その固定レール45に摺動可能に嵌合される可動レール46とから成り、前記固定レール45の前部は車両の床面47に前部ブラケット48を介して固定され、前記固定レール45の後部は前記床面47に後部ブラケット49を介して固定される。しかも前記前部ブラケット48は、前記後部ブラケット49よりも高く形成されており、前記固定レール45すなわち前記スライドレール13は、車両前後方向後方に向かうにつれて低くなるように傾斜して車両前後方向に延びる。
【0034】
図4および
図5を併せて参照して、前記シートクッションフレーム16は、前記シート回転装置14上に載置されており、このシート回転装置14は、前記スライドレール13に沿って移動可能なベース部材29と、前記シートクッションフレーム16を支持して前記ベース部材29に回転可能に支持される環状の回転部材30と、当該回転部材30の一部を上方から覆って前記ベース部材29に固定されるカバー部材31とを備える。
【0035】
前記ベース部材29は、環状である第1の底壁部29aと、第1の底壁部29aの外周部から上方に立ち上がる円筒状の第1の側壁部29bと、第1の側壁部29bの上端部から外側方に張り出す第1の鍔部29cとを有し、第1の鍔部29cは矩形状に形成される。
【0036】
また前記カバー部材31は、前記ベース部材29の第1の底壁部29aに上方から当接される環状の第2の底壁部31aと、第2の底壁部31aの外周から上方にわずかに立ち上がる円筒状の第2の側壁部31bと、上方に向かうにつれて大径となるように形成されて第2の側壁部31bの上端部に連なる第1のテーパ部31cと、第1のテーパ部31cの上端部から側方に張り出す環状の第1の平坦壁部31dと、第1の平坦壁部31dの外周から上方に立ち上がる円筒状の第3の側壁部31eとを有し、前記第2の底壁部31aは前記ベース部材29の前記第1の底壁部29aに複数のリベット32で結合される。
【0037】
前記回転部材30は、前記カバー部材31の前記第1のテーパ部31cに外側方から対向する位置に配置されて上方に向かうにつれて大径となるように形成される第2のテーパ部30aと、前記カバー部材31の前記第3の側壁部31eに外側方から対向するようにして前記第2のテーパ部30aの上端部から上方に立ち上がる円筒状の第4の側壁部30bと、第4の側壁部30bから外側方に張り出す第2の鍔部30cとを有し、第2の鍔部30cは矩形状に形成される。
【0038】
前記回転部材30における前記第2の鍔部30cには、前記シートクッションフレーム16の前記サイドフレーム16aと平行に延びるフレーム支持部材33が複数ずつの第1のボルト34および第2のナット35で締結される。このフレーム支持部材33には、前記サイドフレーム16aが、昇降可能かつ相対回転不能に支持される。
【0039】
前記回転部材30は、前記ベース部材29が有する環状の回転支持部36に軸受37を介して回転可能に支持されており、前記回転支持部36は、前記ベース部材29における第1の底壁部29aと、前記第1の側壁部29bとで横断面形状が略L字状となるように形成される。
【0040】
前記軸受37は、環状のリテーナ38の周方向複数箇所にボール39が保持されて成り、前記回転部材30における前記第1のテーパ部31cには、前記ボール39を転動させるための環状凹部40が形成される。
【0041】
ところで、前記回転部材30の中央部には、前記回転部材30における前記第2のテーパ部30aおよび前記第4の側壁部30bによって、上方に開放するとともに下方にも開放するように構成されており、前記カバー部材31はその収容部41内に収容、配置される。
【0042】
また前記ベース部材29の前記第1の鍔部29cが、複数ずつの第2のボルト42および第2のナット43で前記可動レール46に締結される。
【0043】
前記回転部材30は、前記シートフレーム15および前記回転部材30の少なくとも一方(この実施の形態では前記回転部材30)に取付けられる第1の電装品としての回転用電気アクチュエータ50が発揮する動力で回転駆動されるものであり、この回転用電気アクチュエータ50が備える出力ギヤ51に、前記ベース部材29に設けられる入力ギヤ52が噛合される。
【0044】
前記回転用電気アクチュエータ50は、車幅方向に延びる回転軸線を有する電動モータ53と、当該電動モータ53のケース54に連結されるギヤボックス55と、回転軸線を前記回転部材30の回転中心Cと平行にして前記ギヤボックス55から突出される出力軸56とを備え、前記出力ギヤ51は前記出力軸56に設けられる。前記ギヤボックス55内には、前記電動モータ53の回転動力を減速しながら回転方向を90度変換して前記出力軸56に伝達するようにしたギヤ減速機構(図示せず)が収容され、このギヤ減速機構は、出力軸56側からの回転動力が前記電動モータ53側に伝達されるのを阻止するようにしてウォームギヤを含む構成とされている。
【0045】
前記回転部材30は180度の範囲で回転駆動されるものであり、前記入力ギヤ52は、内周部にギヤ部52aを有して略180度にわたる円弧状に形成され、前記ベース部材29が備える第1の底壁部29aの内周部下面に前記ギヤ部52aを前記第1の底壁部29aの内周から半径方向内方に突出させるようにして固定される。
【0046】
前記入力ギヤ52の前記ベース部材29への固定にあたっては、前記カバー部材31の前記第2の底壁部31aを前記ベース部材29の前記第1の底壁部29aに結合するようにした複数のリベット32の一部が、前記第1の底壁部29aを挟んで前記第2の底壁部31aおよび前記入力ギヤ52を前記第1の底壁部29aに共に結合するために用いられる。
【0047】
ところで前記回転部材30には、平面視で前記回転部材30の外周30dよりも内側に配置される取付け部材58が取付けられ、前記電動モータ53を含む前記アクチュエータ50が前記取付け部材58に取付けられる。すなわち前記アクチュエータ50の前記ギヤボックス55が前記取付け部材58の上面に取付けられ、前記取付け部材58を貫通する前記出力軸56に前記出力ギヤ51が設けられる。
【0048】
前記取付け部材58は、前記回転部材30の回転中心Cよりも前方に配置される。この取付け部材58は、前記回転部材30における前記第3鍔部30cの上面に結合される被結合板部58aを両端部に有して前記スライドレール13の長手方向と直交するように延びるものであり、一対の前記被結合板部58aと、前記回転部材30の半径方向内方に向かうにつれて下方位置となるように傾斜しつつ上端部が前記被結合板部58aに連設される左右一対の傾斜板部58bと、それらの傾斜板部58bの下端間を結ぶ平坦な支持板部58cを一体に有するように形成される。
【0049】
前記回転用電気アクチュエータ50の前記電動モータ53に連なる電線59は、前記回転部材30の回転中心Cに固定配置される電線保持部材60で保持される。
【0050】
ところで前記カバー部材31の前記第1のテーパ部31cと、前記回転部材30の前記第2のテーパ部30aとの間には、それらのテーパ部31c,30aにそれぞれ摺接する環状のスライダー61が介装される。このスライダー61は、前記回転用電気アクチュエータ50による電動力に代えて前記シート回転装置14に人力を作用させることで前記回転部材30を回転させるようにした車両用シート装置と、前記カバー部材31および前記回転部材30を共用化させるために用いられるものであり、人力による回転を可能とした車両用シート装置では回転部材30の回転を阻止するロック状態において前記回転部材30のがたつきを抑制するための機構の一部を構成する環状の部材が、前記スライダー61に代えて前記第1のテーパ部31cおよび前記第2のテーパ部30a間に介装される。
【0051】
また前記シートフレーム15および前記回転部材30の少なくとも一方、この実施の形態では前記シートフレーム15における前記シートクッションフレーム16の前記パンフレーム16bには、第2の電装品であるブロワー65が取付けられており、このブロワー65に一端部66aが接続されるダクト66の他端部66bに吹き出し口となる開口部67が形成される。
【0052】
前記ブロワー65は、
図3で示すように、前記パンフレーム16bの下部にブロワー支持部材68を介して取付けられており、前記開口部67は、平面視で前記環状回転部材30の径方向内側であって前記カバー部材31の径方向内側に配置される。しかも前記開口部67は、前記シートクッション11a側に向けて開口するものであり、平面視では
図2で明示するように、前記クッション側受圧部材19を構成する複数のシートスプリング20のうち相互に隣接する一対のシートスプリング20相互間に配置される。
【0053】
また前記ダクト66の他端部66bは、前記クッション側受圧部材19よりも上方にわずかに突出するものであり、前記開口部67の上端開口縁67aが、側面視で前記環状回転部材30よりも上方に配置される。
【0054】
前記ブロワー65の電動モータ(図示せず)に連なる電線69は、前記回転部材30の回転中心Cに固定配置される前記電線保持部材60で保持される。
【0055】
図1に注目して、前記シート回転装置14の前記回転部材30および前記シートフレーム15間にはリンク機構71が設けられており、このリンク機構71は、前記シートフレーム15における前記シートクッションフレーム16が有する一対のサイドフレーム16aの内側で前記連結パイプ16cに一端部が回動可能に連結される左右一対のリンク部材72を備え、それらのリンク部材72の他端部は、前記回転部材30に固定される前記フレーム支持部材33に連結ピン73を介して回動可能に連結される。すなわち前記シートフレーム15における前記シートクッションフレーム16の前記サイドフレーム16aは、前記回転部材30に固定された前記フレーム支持部材33に昇降可能に支持される。
【0056】
前記シートフレーム15および前記回転部材30の少なくとも一方、この実施の形態では前記シートフレーム15における一対の前記サイドフレーム16aの一方の外側面には、第3の電装品である昇降用電気アクチュエータ74が、前記シートフレーム15を昇降させる動力を発揮することを可能として取付けられる。
【0057】
前記回転部材30に固定されるフレーム支持部材33および前記シートフレーム15間に設けられる前記リンク機構71が有する一対のリンク部材72のうち前記一方のサイドフレーム16a側のリンク部材72には、前記連結ピン73の軸線まわり回転し得るセクタギヤ(図示せず)が一体に設けられており、前記昇降用電気アクチュエータ74は前記セクタギヤに噛合する駆動ギヤ(図示せず)を備え、その駆動ギヤの回転によって前記セクタギヤを前記リンク部材72とともに前記連結ピン73の軸線まわりに回動駆動し、それによって前記シートフレーム15を昇降することができる。
【0058】
前記昇降用電気アクチュエータ74が有する電動モータ75に連なる電線76は、前記一方のサイドフレーム16aに形成された挿通孔77から前記シート回転装置14の内側に導かれ前記電線保持部材60で保持される。
【0059】
前記シートフレーム15の前記シートバックフレーム17の下部には、第4の電装品である傾動用電気アクチュエータ78が取付けられる。この実施の形態では前記シートバックフレーム17が備える一対のシートバックサイドフレーム17aの一方の下部に、前記傾動用電気アクチュエータ78が取付けられる。
【0060】
前記傾動用電気アクチュエータ78が有する電動モータ79に連なる電線80は前記シート回転装置14の内側に延出され、前記電線保持部材60で保持される。
【0061】
また前記シートクッションフレーム15に前記シートバックフレーム17を傾動可能に連結する前記支軸12の近傍で、前記シートバックフレーム17もしくは前記回転部材30(この実施の形態では前記シートバックフレーム17における前記一方のシートバックサイドフレーム17aの下部)には、中間保持部材81が取付けられ、前記電線80はこの電線保持部材81を経て前記電線保持部材60に保持される。
【0062】
ところで第1の電装品である前記回転用電気アクチュエータ50、第2の電装品である前記ブロワー65、第3の電装品である前記昇降用電気アクチュエータ74ならびに第4の電装品である前記傾動用電気アクチュエータ78に個別に連なる電線59,69,76,80は、単一の前記電線保持部材60に集約して保持される。
【0063】
しかも前記電線保持部材60は、前記クッション側受圧部19の下方で前記電線59,69,76,80を保持する位置に配置されるものであり、前記クッション側受圧部材19に直接取付けられる。
【0064】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、シート本体11を支持するシートフレーム15ならびに当該シートフレーム15を支持する回転部材30の少なくとも一方に取付けられる電装品が取付けられるものであり、この実施の形態では、前記シートフレーム15に電装品であるブロワー65、昇降用電気アクチュエータ74および傾動用電気アクチュエータ78が取り付けられ、前記回転部材30に電装品である回転用電気アクチュエータ50が取り付けられるのであるが、前記回転用電気アクチュエータ50に連なる電線59、前記ブロワー65に連なる電線69、前記昇降用電気アクチュエータ74に連なる電線76ならびに前記傾動用電気アクチュエータ78に連なる電線80が、前記回転部材30の回転中心Cに固定配置される電線保持部材60で保持されるので、シート本体11の回転時に電線59,69,76,80に撓みが生じたり、損傷が生じたりすることを回避することができる。
【0065】
また複数の電装品である前記回転用電気アクチュエータ50、前記ブロワー65、前記昇降用電気アクチュエータ74および前記傾動用電気アクチュエータ78に個別に連なる電線59,69,76,80が、単一の前記電線保持部材60に集約して保持されるので、複数の前記電線59,69,76,80をコンパクトに集約して配線することができる。
【0066】
また、シートクッション11aの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材19が、前記シートフレーム15の一部を構成して前記回転部材30に支持されるシートクッションフレーム16に取付けられ、前記電線保持部材60が前記クッション側受圧部材19の下方で前記電線59,69,76,80を保持する位置に配置されるので、乗員の座面側への前記電線保持部材60の突出を抑え、座面に座った乗員への前記電線保持部材60の干渉を避けることができる。
【0067】
しかも前記電線保持部材60が前記クッション側受圧部材19に直接取付けられるので、前記電線保持部材60を取り付けるための部材を新たに設けることなく、部品点数の増大を回避しながら前記電線保持部材60を前記回転部材30の回転中心Cに効率的に配置することができる。
【0068】
さらに前記シートフレーム15が、前記回転部材30に支持されるシートクッションフレーム15と、当該シートクッションフレーム15に支軸12を介して傾動可能に取付けられるシートバックフレーム17とを備え、電装品である傾動用電気アクチュエータ78が、前記シートバックフレーム17を傾動駆動することを可能として前記シートバックフレーム17の下部に取付けられ、前記傾動用電気アクチュエータ78に連なる前記電線80が、前記支軸12の近傍で前記シートバックフレーム17に取付けられる中間保持部材81を経て前記電線保持部材60に保持されるので、シート本体11の回転およびシートバックフレーム17の傾動時に前記電線保持部材60および前記傾動用電気アクチュエータ78間の電線80に撓みや損傷が生じないようにすることができる。
【0069】
本発明の第2の実施の形態について
図6および
図7を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0070】
シート回転装置14におけるベース部材29には、保持部材用支持部83が取り付けられ、当該保持部材用支持部材83に、電線保持部材84が取付けられる。
【0071】
前記保持部材用支持部材83は、前記回転部材30の回転中心Cを通るようにして前記ベース部材29に取り付けられており、前記電線保持部材84は、前記回転中心Cに配置されるようにしつつ、電装品である回転用電気アクチュエータ50、ブロワー65、昇降用電気アクチュエータ74および傾動用電気アクチュエータ78に個別に連なる電線59,69,76,80を、前記保持部材用支持部材83の上方で保持して当該保持部材用支持部材83に取り付けられる。
【0072】
この第2の実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態と同様に、シート本体11の回転時に電線59,69,76,80に撓みが生じたり、損傷が生じたりすることを回避することができるとともに、複数の前記電線59,69,76,80をコンパクトに集約して配線することができる。それに加えてシート回転装置14の組み立て時に電線保持部材84を容易に組み付けることができ、作業性が向上し、電線保持部材84が保持部材用支持部材83の上方で電線59,69,76,80を保持するので、電線59,69,76,80をシート回転装置14内にコンパクトに纏めて配線することができる。
【0073】
本発明の第3の実施の形態として、
図8で示すように、電装品である回転用電気アクチュエータ50、ブロワー65、昇降用電気アクチュエータ74および傾動用電気アクチュエータ78に個別に連なる電線59,69,76,80を保持する電線保持部材86が、シート回転装置14におけるベース部材29に取り付けられた保持部材用支持部材85に取り付けられ、前記電線59,69,76,80が、当該保持部材用支持部材85の下方かつ前記回転部材30の回転中心Cに在るようにして前記電線保持部材86で保持される。
【0074】
この第3の実施の形態によれば、上述の第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる上に、シート回転装置14の組み立て時にシート回転装置14の横倒し状態で作業を行なうことで電線59,69,76,80を電線保持部材86に容易に保持することができ、作業性が向上する。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0076】
11・・・シート本体
11a・・・シートクッション
12・・・支軸
15・・・シートフレーム
16・・・シートクッションフレーム
17・・・シートバックフレーム
19・・・クッション側受圧部材
29・・・ベース部材
30・・・回転部材
50・・・電装品である回転用電気アクチュエータ
59,69,76,80・・・電線
60,84,86・・・電線保持部材
65・・・電装品であるブロワー
74・・・電装品である昇降用電気アクチュエータ
78・・・電装品である傾動用電気アクチュエータ
81・・・中間保持部材
83,85・・・保持部材用支持部材
C・・・回転中心