(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20241017BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20241017BHJP
B63C 9/20 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H04B1/04 E
B63B49/00 Z
B63C9/20 A
(21)【出願番号】P 2020191116
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】関山 良男
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175512(JP,A)
【文献】特開2002-141853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0304220(US,A1)
【文献】特開2007-004428(JP,A)
【文献】特開2006-295397(JP,A)
【文献】特開2017-163300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
B63B 49/00
B63C 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AIS(Automatic Identification System)に関する情報を受信するためのAIS受信部と、
DSC(Digital Selective Calling)通信を行うためのDSC通信部と、
前記DSC通信部が通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を、前記情報に基づき算出される、自装置と通信相手の船舶との距離に応じた値に設定する送信出力設定部と、を備え
、
前記送信出力設定部は、前記距離にかかわらず、ユーザの操作に応じて前記送信出力値を設定する通信装置。
【請求項2】
前記送信出力設定部は、前記距離
に変更が生じる毎に、前記送信出力値を該変更後の距離に応じた値に設定する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信出力設定部は、前記距離が短いほど前記送信出力値を小さい値に設定する、請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信出力設定部は、前記距離が下限閾値を下回るとき、前記送信出力値を最小値に設定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記送信出力設定部は、前記距離が上限閾値を超えるとき、前記送信出力値を最大値に設定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記送信出力設定部は、
前記距離が所定閾値を下回るときには前記送信出力値を低出力値に設定し、
前記距離が前記所定閾値を超えるとき、前記送信出力値を前記低出力値よりも大きい高出力値に設定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、特に船舶通信用の通信装置、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、目的の船舶が通信可能圏内に居るかどうかが簡単に判別する機能を有する船舶無線装置が開示されている。当該装置は、他船舶情報信号が入力される圏内判定部を有する。他船舶情報信号は、他の船舶それぞれについての運航情報および固有情報などを情報要素として配列した他船舶情報を含んでいる。圏内判定部は、他船舶情報に基づいて、予め設定された識別番号の船舶との距離が予め設定された通信可能圏内の距離以下であるかにより、当該船舶の位置が通信可能圏内かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている船舶無線装置では、通信可能圏内の船舶と通信を行う場合における、DSC(Digital Selective Calling)通信時の送信出力値の設定については何ら開示されていない。
【0005】
本発明の一態様は、DSC通信時の送信出力値を適切に設定することにより消費電力を低減する通信装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る通信装置は、AIS(Automatic Identification System)に関する情報を受信するためのAIS受信部と、DSC通信を行うためのDSC通信部と、前記DSC通信部が通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を、前記情報に基づき算出される、自装置と通信相手の船舶との距離に応じた値に設定する送信出力設定部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る通信装置の制御方法は、通信装置が、AISに関する情報を受信すること、DSC通信を行うこと、および、DSC通信が通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を、前記情報に基づき算出される、自装置と通信相手の船舶との距離に応じた値に設定すること、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る通信装置などによれば、DSC通信時の送信出力値を適切に設定することにより消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る通信装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る通信装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図3】通信距離と送信出力値との関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
(通信装置1の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る通信装置1の要部の構成を示すブロック図である。通信装置1は、船舶通信用のハンドヘルド式の通信装置を想定しているが、これに限らない。
図1に示すように、通信装置1は、AIS受信部11、DSC通信部12、表示部13、入力受付部14、制御部15、および記憶部16を備える。また、通信装置1は、音声の入力を受け付けるマイク、音声を出力するスピーカ、GPS(Global Positioning System)機能などの、通信装置が通常備える構成要素を有しているが、図示を省略している。
【0012】
AIS受信部11は、AISに関する情報を受信するための受信回路である。AISとは、船舶間の衝突を回避するためのシステムである。AISに関する情報の例として、船舶の識別情報(MMSI(Marine Mobile Service Identity)コード)、船名、位置、針路、速力、目的地などが挙げられる。
【0013】
DSC通信部12は、DSC無線通信を行うための回路である。DSC無線通信は、VHF(Very High Frequency)無線通信に、デジタル通信による自動呼出機能(DSC機能)を付加したもので、船舶の遭難、緊急、安全通信等に用いることができる。
【0014】
DSC通信部12による通信は、以下の手順で行われる。最初に、呼び出し用チャンネルで通信相手の船舶を呼び出し、通話に用いる通話用チャンネルを指定する。その後、指定された通話用チャンネルでDSC通信を行う。上記の手順のうち、呼び出し用チャンネルで通信相手の船舶を呼び出すときは、送信出力値を最大出力値とすることが規格により定められており、変更することはできない。一方、通話用チャンネルで通信を行うときは、送信出力値は規格により定められておらず、適宜変更可能である。このため、送信出力値は必ずしも最大出力値に設定される必要はない。以下の説明では、通話用チャンネルでDSC通信を行うときの送信出力値を、単に「送信出力値」と称する。
【0015】
表示部13は、画像によりユーザに対して情報を表示する表示装置である。表示部13が表示する情報の具体例として、AISに関する情報が挙げられる。その一例とて、通信装置1が通信可能な船舶のリストが挙げられる。当該リストは、通信装置1が通信可能な全ての船舶のリストであってもよく、通信装置1が通信可能かつフレンド登録されている船舶のみのリストであってもよい。フレンド登録されている船舶とは、通信装置1が搭載されている船舶と何らかの関係があるものとして登録されている船舶である。表示部13は、例えば液晶ディスプレイ、または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。
【0016】
入力受付部14は、通信装置1に対するユーザの入力を受け付ける入力装置である。入力受付部14は、例えばボタンまたはタッチパネルである。入力受付部14が受け付けるユーザの入力の例としては、表示部13に表示された通信可能な船舶のリストから通信相手の船舶を選択するための入力が挙げられる。
【0017】
制御部15は、通信装置1の動作を制御する。制御部15は、例えばユーザの入力に基づいて、DSC通信部12による通信を制御する。また、制御部15は、AIS情報表示制御部15a、距離算出部15b、および送信出力設定部15cを備える。
【0018】
AIS情報表示制御部15aは、AIS受信部11が受信したAISに関する情報を、表示部13に表示させる。距離算出部15bは、AIS受信部11が受信したAISに関する情報に基づき、通信装置1と、通信可能圏内の船舶のそれぞれとの距離を算出する。
【0019】
送信出力設定部15cは、送信出力値を、通信装置1と通信相手の船舶との距離(以下では「通信距離」と称する。)に応じた値に設定する。上述したとおり、送信出力値は、必ずしも最大出力値に設定される必要はない。そこで、送信出力設定部15cは、送信出力値を、DSC通信に支障を来さない範囲で、通信距離に応じて多段階に設定する。具体的には、送信出力設定部15cは、相対的に通信距離が短いほど送信出力値を小さい値に設定する。よって、通信装置1は、送信出力値を常に最大出力値に設定する場合と比べて、消費電力を低減することができる。送信出力設定部15cの具体的処理については後述する。
【0020】
記憶部16は、通信装置1の制御に必要な情報を記憶する記憶部である。記憶部16は、例えばフレンド登録されている船舶の情報を記憶する。また、記憶部16は必要に応じて、例えばAIS受信部11により受信した、AISに関する情報、およびDSC通信部12による通信において受信した情報を記憶する。ただし、通信装置1は必ずしも記憶部16を備える必要はなく、記憶部16と同様の情報を記憶する外部の記憶装置にアクセス可能に構成されてもよい。
【0021】
(送信出力設定部15cの具体的処理)
通信装置1による通信中、通信装置1を搭載した船舶および/または通信相手の船舶が移動することにより、通信距離は変わり得る。そこで、送信出力設定部15cは、通信距離が変わる毎に、送信出力値を変更後の通信距離に応じた値に設定してもよい。このように送信出力値を自動的に変更することで、通信装置1は、変更後の通信距離に応じた適切な送信出力値を設定できる。
【0022】
送信出力設定部15cは、通信距離が短いほど送信出力値を小さい値に設定してもよい。一般に、通信距離が短い場合には、通信距離が長い場合と比較して、相対的に小さい送信出力値で通信可能である。送信出力値をこのように設定することで、通信距離が短いときほど通信装置1の消費電力を低減できる。
【0023】
また、送信出力設定部15cは、通信距離が下限閾値を下回るとき送信出力値を最小値に設定してもよい。最小値の一例は0.6Wである。送信出力値をこのように設定することで、通信装置1は、通信距離が下限閾値を下回っても必要最小限の送信出力値を維持し、DSC通信に支障を来さない。
【0024】
また、送信出力設定部15cは、通信距離が上限閾値を超えるとき送信出力値を最大値に設定してもよい。最大値の一例は6Wである。送信出力値をこのように設定することで、通信装置1は、通信距離が上限閾値を超える船舶に対しては最大限の送信出力値で通信を行うことができる。
【0025】
上述した下限閾値および上限閾値は、通信装置1の出荷時に設定されてもよく、ユーザにより設定されてもよい。また、下限閾値と上限閾値とは同一値(以下では「閾値T」と称する。)であってもよい。すなわち、送信出力設定部15cは、一つの所定閾値Tを用いて送信出力値を設定してもよい。閾値Tの一例としては、通信装置1を有するユーザの船舶から通信相手の船舶を視認可能な最大距離が挙げられる。また、閾値Tの別の例としては、1海里(約1.8km)が挙げられる。この場合、送信出力設定部15cが設定する送信出力値は、LowとHiとの2段階となる。つまり、送信出力設定部15cは、通信距離が閾値Tを下回るときには送信出力値をLow(低出力値)(一例として0.6W)に設定し、通信距離が閾値T以上のときは送信出力値をLowよりも大きいHi(高出力値)(一例として6W)に設定する。
【0026】
また、下限閾値および上限閾値をそれぞれ設ける場合、下限閾値と上限閾値との間に、さらなる1または複数の閾値を設けてもよい。この場合、送信出力設定部15cは、通信距離が閾値を跨ぐ毎に、送信出力値を再設定すればよい。
【0027】
上述した、通信距離に基づく判定は、デンジャラスゾーンについての判定と同様である。デンジャラスゾーンは、通信装置1を搭載している船舶と他の船舶とが衝突する可能性がある領域を意味する。デンジャラスゾーンは、通信装置1と他の船舶との相対位置および相対速度、および通信装置1のユーザの設定などに基づいて、他の船舶のそれぞれについて個別に定められる。送信出力設定部15cは、他の船舶のそれぞれがデンジャラスゾーンに存在するか否かの判定と同様にして、通信距離について判定し、判定結果に基づいて送信出力値を設定する。
【0028】
なお、送信出力値の決め方は、閾値との対比によるものである必要はなく、例えば、通信距離と送信出力値との関係を規定する数式に基づくものであってもよい。
【0029】
また、送信出力設定部15cは、通信距離にかかわらず、ユーザの操作に応じて送信出力値を設定してもよい。例えば、通信が途切れそうであるとユーザが判断した場合に、送信出力設定部15cは、ユーザの操作により送信出力値を現在値より大きい値に設定する。このように送信出力値を設定することで、通信装置1は、ユーザの判断に応じた適切な送信出力値を設定できる。この場合、送信出力設定部15cは、通信距離が変わったとしても、送信出力値を通信距離に応じて自動的に変更しなくてもよい。
【0030】
(制御部15における処理)
図2は、通信装置1の制御方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、通信装置1において、制御部15は、AIS受信部11に関する処理(S1)とDSC通信部12に関する処理(S2~S9)とを並列に実行する。
【0031】
AIS受信部11に関する処理は以下のとおりである。制御部15は、AIS受信部11により、AISに関する情報を受信する(S1)。制御部15は、通信装置1の電源がオンである間、ステップS1を繰り返す。
【0032】
DSC通信部12に関する処理は以下のとおりである。制御部15は、DSC通信部12によるDSC通信が開始されたか判定する(S2)。DSC通信が開始されていない場合(S2でNO)、制御部15はステップS2を繰り返す。
【0033】
DSC通信が開始された場合(S2でYES)、送信出力設定部15cは、通信相手を呼び出し用チャンネルで呼び出した後の、通話用チャンネルで通信するときのDSC通信部12の送信出力値を、通信距離に応じた値に設定する(S3)。その後、制御部15は、通話用チャンネルで通信する(S4)。
【0034】
DSC通信中、送信出力設定部15cは、通信距離が変化したか否かを判定する(S5)。通信距離が変化した場合(S5でYES)、送信出力設定部15cは、送信出力値を、変化後の通信距離に応じた値に設定する(S6)。通信距離が変化していない場合(S5でNO)、送信出力設定部15cはステップS6をスキップする。
【0035】
さらに送信出力設定部15cは、送信出力値を設定する操作を受け付けたか判定する(S7)。送信出力値を設定する操作を受け付けた場合(S7でYES)、送信出力設定部15cは、送信出力値を、操作に応じた値に設定する(S8)。送信出力値を設定する操作を受け付けていない場合(S7でNO)、送信出力設定部15cはステップS8をスキップする。
【0036】
その後、制御部15は、DSC通信部12による通信が終了したか判定する(S9)。DSC通信が終了していない場合(S9でNO)、制御部15はステップS4から処理を繰り返す。DSC通信が終了した場合(S9でYES)、制御部15はステップS2から処理を繰り返す。
【0037】
以上の処理により、送信出力設定部15cは、通信距離、またはユーザの操作に基づいて、通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を設定する。なお、ステップS5~S8の処理は必須ではなく省略可能である。
【0038】
図3は、通信距離と送信出力値との関係の例を示すグラフである。
図3のグラフにおいて、横軸は通信距離、縦軸は送信出力値である。
【0039】
符号31に示す例は、送信出力値が多段階に設定される例である。この例では、送信出力値は通信距離に応じて4段階に分かれる。送信出力設定部15cは、通信距離が下限閾値T1を下回るときには、送信出力値を最小値Pminに設定する。また、送信出力設定部15cは、通信距離が下限閾値T1以上かつ閾値T3未満のときには、送信出力値をP1に設定する。また、送信出力設定部15cは、通信距離が閾値T3以上かつ上限閾値T2未満のときには、送信出力値をP2に設定する。また、送信出力設定部15cは、通信距離が上限閾値T2を超えるときには、送信出力値を最大値Pmaxに設定する。なお、通信距離の閾値の大小関係は、0<T1<T3<T2である。また、送信出力値の大小関係は、0<Pmin<P1<P2<Pmaxである。
【0040】
符号32に示す例は、送信出力値が2段階に設定される例である。この例では、送信出力値は、通信距離の閾値Tを境界として2段階に分けられている。送信出力設定部15cは、通信距離が閾値Tを下回るときには、送信出力値を低出力値Lowに設定する。また、送信出力設定部15cは、通信距離が閾値Tを超えるときには、送信出力値を高出力値Hiに設定する。なお、送信出力値の大小関係は、0<Low<Hiである。
【0041】
符号33に示す例は、送信出力値が通信距離に対して単調増加する例である。送信出力設定部15cは、通信距離が下限閾値T1を下回るときには、送信出力値を最小値Pminに設定する。また、送信出力設定部15cは、通信距離が下限閾値T1を超え、かつ上限閾値T2を下回るときには、送信出力値を、最小値Pminから最大値Pmaxの範囲内で、通信距離に対して単調増加するように設定する。また、送信出力設定部15cは、通信距離が上限閾値T2を超えるときには、送信出力値を最大値Pmaxに設定する。
【0042】
〔ソフトウェアによる実現例〕
通信装置1の制御ブロック(制御部15、特に送信出力設定部15c)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0043】
後者の場合、通信装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0044】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る通信装置は、AISに関する情報を受信するためのAIS受信部と、DSC通信を行うためのDSC通信部と、前記DSC通信部が通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を、前記情報に基づき算出される、自装置と通信相手の船舶との距離に応じた値に設定する送信出力設定部と、を備える。
【0045】
上記の構成によれば、送信出力設定部は、DSC通信部が通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を、通信装置と通信相手の船舶との距離に応じた値に設定する。したがって、通信装置は、送信出力値を、距離に応じて多段階に設定できるため、送信出力値を常に最大出力値に設定する場合と比べて消費電力を低減することができる。
【0046】
また、本発明の態様2に係る通信装置は、態様1において、前記送信出力設定部は、前記距離が変わる毎に、前記送信出力値を該変更後の距離に応じた値に設定することが好ましい。
【0047】
上記の構成によれば、通信装置は、通信装置と通信相手の船舶との距離に変更が生じても、送信出力値を変更後の距離に応じた適切な値に設定できる。
【0048】
また、本発明の態様3に係る通信装置は、態様1または2において、前記送信出力設定部は、前記距離が短いほど前記送信出力値を小さい値に設定することが好ましい。
【0049】
上記の構成によれば、送信出力設定部は、通信装置と通信相手の船舶との距離が短い場合に、送信出力値を小さい値に設定する。一般に、通信装置と通信相手の船舶との距離が短い場合には、当該距離が長い場合と比較して、小さい送信出力での通信が可能である。したがって、通信装置は、通信装置と通信相手の船舶との距離が短い場合の通信における送信出力値を小さくすることで、通信装置の消費電力を低減できる。
【0050】
また、本発明の態様4に係る通信装置は、態様1から3のいずれかにおいて、前記送信出力設定部は、前記距離が下限閾値を下回るとき、前記送信出力値を最小値に設定することが好ましい。
【0051】
上記の構成によれば、通信装置と通信相手の船舶との距離が下限閾値を下回るときに送信出力値を最小値に設定する。したがって、通信装置は、通信距離が下限閾値を下回っても必要最小限の送信出力値を維持し、DSC通信に支障を来さない。
【0052】
また、本発明の態様5に係る通信装置は、態様1から4のいずれかにおいて、前記送信出力設定部は、前記距離が上限閾値を超えるとき、前記送信出力値を最大値に設定することが好ましい。
【0053】
上記の構成によれば、送信出力設定部は、通信装置と通信相手の船舶との距離が上限閾値を超えるときに送信出力値を最大値に設定する。したがって、通信装置は、通信距離が上限閾値を超える船舶に対しては最大限の送信出力値で通信を行うことができる。
【0054】
また、本発明の態様6に係る通信装置は、態様1から3のいずれかにおいて、前記送信出力設定部は、前記距離が所定閾値を下回るときには前記送信出力値を低出力値に設定し、前記距離が前記所定閾値を超えるとき、前記送信出力値を前記低出力値よりも大きい高出力値に設定してもよい。
【0055】
上記の構成によれば、通信装置と通信相手の船舶との距離についての所定閾値に基づいて、送信出力値が2段階に設定される。
【0056】
また、本発明の態様7に係る通信装置は、態様1から6のいずれかにおいて、前記送信出力設定部は、前記距離にかかわらず、ユーザの操作に応じて前記送信出力値を設定することが好ましい。
【0057】
上記の構成によれば、通信装置は、ユーザの判断に応じて送信出力値を適切に設定できる。
【0058】
また、本発明の態様8に係る通信装置の制御方法は、通信装置が、AISに関する情報を受信すること、DSC通信を行うこと、および、DSC通信が通話用チャンネルで通信するときの送信出力値を、前記情報に基づき算出される、自装置と通信相手の船舶との距離に応じた値に設定すること、を含む。
【0059】
上記の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0060】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 通信装置
11 AIS受信部
12 DSC通信部
15c 送信出力設定部