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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】ゲームプログラム、およびゲーム装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/54 20140101AFI20241017BHJP
   A63F 13/45 20140101ALI20241017BHJP
【FI】
A63F13/54
A63F13/45
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020215089
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100854
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 知久
(72)【発明者】
【氏名】大牟田 裕
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 浩亮
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-195210(JP,A)
【文献】特開2010-010844(JP,A)
【文献】特開2007-037728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 13/00-98
A63F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
複数のキャラクタを仮想空間内で動作させてゲームを進行させるゲーム進行部と、
所定の前記キャラクタに対して、音声データの対応付けを行う対応付部と、
前記キャラクタに対応付けられた音声データを再生する再生部と、
して機能させ、
前記音声データは、1または複数の発音が行われるように構成されおり、
前記対応付部は、前記再生部によって同時に再生される前記音声データの発音数の総計が、第1閾値を超えないように、前記キャラクタに対応付ける音声データを、ゲーム中に選択し、
前記対応付部による選択対象となる前記音声データには、音源が同じで且つ発音数が互いに異なるものが用意されている
ことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項2】
請求項のゲームプログラムにおいて、
前記対応付部は、前記仮想空間の所定範囲において、前記音声データを対応付ける前記キャラクタの数が変わった場合に、前記選択を行う
ことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項3】
請求項1または請求項2のゲームプログラムにおいて、
前記音声データを対応付ける前記キャラクタは、ノンプレイヤキャラクタであり、
前記対応付部は、プレイヤキャラクタとの距離が第2閾値以下である前記キャラクタに対して、前記音声データの対応付けを行う
ことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れかのゲームプログラムを記憶した記憶部と、
前記ゲームプログラムを実行する制御部と、
を備えたことを特徴とするゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラム、およびゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームプログラムの中には、複数の音源オブジェクトのそれぞれに関連付けられた音声を仮想空間における音源オブジェクト毎の位置において同じタイミングで再生するものがある(例えば特許文献1を参照)。特許文献1の例では、ステレオスピーカが接続される場合もあれば、サラウンドスピーカが接続される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-094160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲーム装置では、ゲームプログラムが実行されるハードウェアの仕様などに応じて、同時発音数の最大数が決定される。そのため、前記特許文献の例では、発音に関わる音源オブジェクトの数も制限される。そうすると、登場するキャラクタ(音源オブジェクト)の数が増えると、何れかのキャラクタの発音を犠牲にする必要がある。このような制限は、ゲームへの没入感の低下等に繋がる。
【0005】
本発明の目的は、複数の音源オブジェクトへの音声関連付け手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、コンピュータを、
複数のキャラクタを仮想空間内で動作させてゲームを進行させるゲーム進行部と、
所定の前記キャラクタに対して、音声データの対応付けを行う対応付部と、
前記キャラクタに対応付けられた音声データを再生する再生部と、
して機能させ、
前記音声データは、1または複数の発音が行われるように構成されおり、
前記対応付部は、前記再生部によって同時に再生される前記音声データの発音数の総計が、第1閾値を超えないように、前記キャラクタに対応付ける音声データを、ゲーム中に選択する
ことを特徴とするゲームプログラムである。
【0007】
また、第1の態様において、
前記対応付部による選択対象となる前記音声データには、音源が同じで且つ発音数が互いに異なるものが含まれていてもよい。
【0008】
また、前記態様においては、
前記対応付部は、前記仮想空間の所定範囲において、前記音声データを対応付ける前記キャラクタの数が変わった場合に、前記選択を行ってもよい。
【0009】
また、前記態様においては、
前記音声データを対応付ける前記キャラクタは、ノンプレイヤキャラクタであり、
前記対応付部は、プレイヤキャラクタとの距離が第2閾値以下である前記キャラクタに対して、前記音声データの対応付けを行ってもよい。
【0010】
また、第2の態様は、前記態様の何れかのゲームプログラムを記憶した記憶部と、
前記ゲームプログラムを実行する制御部と、
を備えたことを特徴とするゲーム装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の音源オブジェクトへの音声関連付け手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のゲーム装置の構成を示すブロック図である。
図2】時刻T=0における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
図3】時刻T=1における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
図4】時刻T=2における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態にかかるゲームプログラム、およびゲーム装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態で説明するゲームプログラムは、例えば、パーソナルコンピュータ、プレイステーション(登録商標)、XBox(登録商標)、PlayStation Vita(登録商標)、Nintendo Switch(登録商標)などのゲーム装置において実行される。
【0015】
本実施形態で説明するゲームは、三次元のゲーム空間(以下、仮想空間VS)が舞台となっている。仮想空間VSは、画像としてディスプレイに表示される。仮想空間VSには、岩壁、洞窟、川といった地形を表すオブジェクトが設けられている。地形のオブジェクト上には、建物や樹木などの様々なオブジェクトも設けられている。
【0016】
本ゲームは、ユーザ(ここではプレイヤ)の操作を受けて、プレイヤキャラクタを三次元の仮想空間VSで活動させてノンプレイヤキャラクタである敵キャラクタと戦闘するアクションゲームである。本ゲームでは、プレイヤキャラクタ同士でグループを編成して敵キャラクタと戦闘を行う場合がある。本ゲームにおけるノンプレイヤキャラクタ(以下、参照符号としてNPCを付す)には、プレイヤキャラクタ(以下、参照符号としてPCを付す)と戦うモンスター等を例示できる。
【0017】
ユーザは、通信ネットワーク(図示を省略)を介して他のユーザとオンラインにてゲームを進めることができる。ユーザは、通信ネットワークを介さずに個人でゲームを進めることもできる。
【0018】
本ゲームでは、プレイヤキャラクタPCは、台詞を喋る場合がある。ノンプレイヤキャラクタNPCも台詞を喋る場合がある。ノンプレイヤキャラクタNPCは、吠え声などの台詞とは異なる音声を発する場合もある。
【0019】
本ゲームでは、プレイヤキャラクタPCの動作にともなって、効果音が再生される場合がある。同様に、ノンプレイヤキャラクタNPCの動作にともなって、効果音が再生される場合がある。
【0020】
例えば、足音、風切り音などが効果音の一例である。このゲームでは、風切り音は、プレイヤキャラクタPCが武器を振った時、モンスター(ノンプレイヤキャラクタNPC)が尻尾を振った時などに発せられる。
【0021】
〈ゲーム装置の構成〉
図1は、本実施形態のゲーム装置5の構成を示すブロック図である。ゲーム装置5は、ユーザの操作に基づいて所定のゲームを実行する。ゲーム装置5には、ディスプレイ61、スピーカ62およびコントローラ63が外部接続または内蔵される。
【0022】
ゲーム装置5では、例えば、インストールされたゲームプログラムおよびゲームデータに基づいてゲームが進行する。なお、ゲーム装置5同士も、通信ネットワーク(図示を省略)または近距離無線通信装置(図示せず)を用いて、互いにデータ通信を行うことができる。
【0023】
ゲーム装置5は、ネットワークインターフェース51、グラフィック処理部52、オーディオ処理部53、操作部54、記憶部55および制御部56を有する。ネットワークインターフェース51、グラフィック処理部52、オーディオ処理部53、操作部54および記憶部55は、バス59を介して制御部56と電気的に接続されている。
【0024】
ネットワークインターフェース51は、例えばゲーム装置5や外部のサーバ装置(図示を省略)との間で各種データを送受信するために、前記通信ネットワークに通信可能に接続される。
【0025】
グラフィック処理部52は、制御部56から出力されるゲーム画像情報に従って、プレイヤキャラクタPCおよびゲーム空間に関する各種オブジェクトを含むゲーム画像を、動画形式で描画する。グラフィック処理部52は、ディスプレイ61と接続されている。ゲーム画像は、ゲーム画面としてディスプレイ61上に表示される。
【0026】
オーディオ処理部53は、制御部56の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生および合成する。オーディオ処理部53はスピーカ62と接続されている。再生および合成されたゲーム音声は、スピーカ62から出力される。
【0027】
オーディオ処理部53は、多チャンネルの音声出力が可能である。具体的に、オーディオ処理部53は、5.1チャンネルの出力ができるように構成されている。ただし、オーディオ処理部53は、同時発音数の上限値(最大同時発音数)が定められている。同時発音数とは、同時に再生する音声の数である。
【0028】
スピーカ62は、多チャンネル分接続されている。本実施形態では、スピーカ62は、5.1チャンネル分が接続されているものとする。本実施形態のゲーム装置5は、いわゆるサラウンド再生が可能である。
【0029】
操作部54は、コントローラ63と接続され、操作入力に関するデータをコントローラ63との間で送受信する。例えば、ユーザは、コントローラ63に設けられたボタン等の操作子(図示略)を操作することにより、ゲーム装置5に操作信号を入力する。
【0030】
記憶部55は、HDD、RAMおよびROM等で構成される。記憶部55は、ゲームプログラムおよびゲームデータを記憶することができる。記憶部55には、他のゲーム装置5から受信した他アカウント情報なども記憶される。
【0031】
制御部56は、CPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータで構成されている。制御部56は、ゲーム装置5の動作を制御する。例えば、制御部56は、前記ゲームプログラムを実行することにより、グラフィック処理部52およびオーディオ処理部53等を動作させる。
【0032】
制御部56の制御に応じて、オーディオ処理部53は、ゲーム音声(以下、単に音声という場合もある)を再生する。オーディオ処理部53は、音声の再生において音像定位を行う。
【0033】
オーディオ処理部53は、音像定位を行うため、音声が聴取される仮想の受音点(以下、仮想マイクL)を仮想空間VSに設定する。この例では仮想マイクLは、プレイヤキャラクタPCの近傍に設定されている。仮想マイクLは、プレイヤキャラクタPCの移動にともなって移動する。
【0034】
このゲームでは、仮想空間VS内に存在する音源(仮想の音源)から音声が発せられたように、音響的な演出が行われる。オーディオ処理部53は、仮想の音源から発せられた音声を、あたかも仮想マイクLで集音したかのような音響表現で、スピーカ62に出力する。本ゲームでは、プレイヤキャラクタPC、ノンプレイヤキャラクタNPCなどが音源の一例である。仮想マイクLは、仮想の聴取者であり、オーディオ処理部53による音像定位の基準点である。
【0035】
本ゲームでは、仮想空間VSにて繰り広げられる各キャラクタの動作、各キャラクタの位置、キャラクタの状態などに応じて、各場面に適した台詞が出力される。台詞などのデジタルデータ(音声データ)は、ゲームデータとして記憶部55に格納されている。本ゲームでは、モンスターの吠える声、足音などを再生するための音声データが用意されている。
【0036】
音声データは、1または複数の発音が行われるように構成されている。音声データには、基になる音源が同じで、且つ発音数が互いに異なるものが用意されている。本実施形態では、例えば、同じ吠え声に対して、モノラル再生用、ステレオ再生用(2チャンネル再生用)、およびサラウンド再生用(例えば5.1チャンネル用)の音声データが用意されている。
【0037】
モノラル再生用の音声データの発音数は、1と考えてよい。ステレオ再生用の音声データの発音数は、2と考えてよい。また、5.1チャンネル用の音声データの発音数は、6と考えてよい。
【0038】
〈制御部の機能的構成〉
制御部56は、ゲームプログラムを実行することにより、ゲーム進行部561、対応付部562、および再生部563として機能する。
【0039】
ゲーム進行部561は、操作部54から入力された操作信号(命令)に応じて、プレイヤキャラクタPCを仮想空間VSにおいて動作させてゲームを進行させる。ゲーム進行部561は、ノンプレイヤキャラクタNPCも、仮想空間VSにおいて動作させる。
【0040】
本ゲームプログラムの下では、仮想空間VS内には、仮想の音源として機能するオブジェクト(以下、音源オブジェクト)が存在する。対応付部562は、所定範囲内(後述)に存在し、且つ音源オブジェクトとなり得る所定のキャラクタに対して、音声データの対応付けを行う。ここで、音源オブジェクトとなり得るキャラクタには、プレイヤキャラクタPC、およびノンプレイヤキャラクタNPCの双方を含む。対応付部562による、音声データとキャラクタとの対応付けについては後述する。
【0041】
再生部563は、対応付部562が選択した音声データを、キャラクタの発声として再生する。具体的には、再生部563は、再生する音声データを特定する情報をオーディオ処理部53に通知する。更に、再生部563は、再生開始をオーディオ処理部53に指示する。
【0042】
〈音声データの対応付け〉
対応付部562は、ノンプレイヤキャラクタNPC(例えばモンスター)に関しては、仮想空間VSの所定範囲(以下、探索範囲という)に存在するものに対して、音声データの対応付けを行う。「対応付け」とは、発音させるノンプレイヤキャラクタNPCの決定と、発音の内容(鳴き声、足音など)の決定(使用する音声データの決定)を行うことことである。
【0043】
探索範囲は、この例では、プレイヤキャラクタPCを中心として、半径が所定値(以下、距離閾値Th2という)の仮想球体(あるいは仮想の円)の内部である。すなわち、対応付部562は、プレイヤキャラクタPCとの距離dが、距離閾値Th2以下のノンプレイヤキャラクタNPCに音声データの対応付けを行う。対応付部562は、プレイヤキャラクタPCとの距離dが、距離閾値Th2よりも大きなノンプレイヤキャラクタNPCに対しては「対応付け」を行わない。
【0044】
対応付部562は、「対応付け」を行う場合には、同時に再生される音声データの発音数の総計が、所定値(発音数閾値Th1)を超えないように、キャラクタに対応付ける音声データを選択する。音声データの選択については、その動作例を後述する。
【0045】
対応付部562は、ゲーム中に、動的に対応付けを行う。本ゲームプログラムの下では、対応付部562は、探索範囲内において、発音が想定されるノンプレイヤキャラクタNPCの数が変わった場合に、発音させるノンプレイヤキャラクタNPCの決定と、対応付ける音声データの選択(再選択を含む)を行う。対応付部562は、所定のタイミング(例えば一定周期ごと)で、探索範囲内に存在する、発音が想定されるノンプレイヤキャラクタNPCの数を確認する。
【0046】
〈動作例〉
図2から図4は、本ゲームプログラムの動作を説明する図である。これらの図は、モンスターM1~M6(6体)の動作を時系列で示している。モンスターM1~M6は、何れもノンプレイヤキャラクタNPCである。これらの図に示した円(半径=Th2)は、探索範囲(仮想球体)を表している。
【0047】
図2は、時刻T=0(時間の単位は任意。以下同様)における、プレイヤキャラクタPCと、モンスターM1~M6との位置関係を示している。図2の例では、プレイヤキャラクタPCとの距離dが距離閾値Th2以下であるノンプレイヤキャラクタNPCは、モンスターM1のみである。
【0048】
時刻T=0において、対応付部562は、ノンプレイヤキャラクタNPCに関しては、モンスターM1に対してのみ音声データを対応付ける。その他のモンスターM2~M6に対しては、対応付部562は、音声データを対応付けない。
【0049】
対応付部562は、再生部563によって同時に再生される音声データの発音数の総計が、発音数閾値Th1を超えないように、モンスターM1に対応付ける音声データを選択する。ここでは、キャラクタに割り当て可能な発音数が6以上であったとする。
【0050】
この場合、対応付部562は、モンスターM1用の音声データ(例えば吠える声)として、5.1チャンネル用の音声データ(発音数=6)を対応付ける。これにより、再生部563は、モンスターM1用の音声(吠える声)として、サラウンド再生(5.1チャンネル再生)を行う。
【0051】
図3は、時刻T=1における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1~M6との位置関係を示している。図3の例では、プレイヤキャラクタPCとの距離dが距離閾値Th2以下であるノンプレイヤキャラクタNPCは、モンスターM1,M2,M5である。
【0052】
時刻T=1において、対応付部562は、ノンプレイヤキャラクタNPCに関しては、モンスターM1,M2,M5に対して音声データを対応付ける。モンスターM1に対しては、音声データの再選択が検討される。つまり、対応付部562は、仮想空間VSの所定範囲(探索範囲)において、音声データを対応付けるキャラクタの数が変わった場合に、前記選択を行う。その他のモンスターM3,M4,M6に対しては、対応付部562は、音声データを対応付けない。
【0053】
対応付部562は、再生部563によって同時に再生される音声データの発音数の総計が、発音数閾値Th1を超えないように、モンスターM1,M2,M5に対応付ける音声データを選択する。ここでは、モンスターM1,M2,M5の3体に割り当て可能な発音数が6であったとする。
【0054】
この場合、対応付部562は、モンスターM1,M2,M5のそれぞれの音声データ(例えば吠える声)として、2チャンネル用の音声データ(発音数=2)を対応付ける。換言すると、対応付部562は、3体のノンプレイヤキャラクタNPCのために、6つの発音数を割り当てる。これにより、再生部563は、モンスターM1,M2,M5のそれぞれの音声(吠える声)として、ステレオ再生(2チャンネルの再生)を行う。
【0055】
なお、複数のノンプレイヤキャラクタNPC(モンスター等)に発音数を割り当てる場合には、ノンプレイヤキャラクタNPCによって、発音数の割当数を異ならせてもよい。例えば、時刻T=1において、モンスターM1,M2,M5の3体に割り当て可能な発音数が8であったとする。この場合においては、一例として、モンスターM1に5.1チャンネル用の音声データ(発音数=6)を対応付け、モンスターM2,M5の両モンスターにモノラル再生用の音声データ(発音数=1)を対応付けることが考えられる。
【0056】
図4は、時刻T=2における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1~M6との位置関係を示している。図4の例では、プレイヤキャラクタPCとの距離dが距離閾値Th2以下であるノンプレイヤキャラクタNPCは、モンスターM1~M5である。
【0057】
時刻T=2では、対応付部562は、ノンプレイヤキャラクタNPCに関しては、モンスターM1~M5に対して音声データを対応付ける。モンスターM1,M2,M5に対しては、音声データの再選択が検討される。対応付部562は、モンスターM6に対しては、音声データを対応付けない。
【0058】
対応付部562は、再生部563によって同時に再生される音声データの発音数の総計が、発音数閾値Th1を超えないように、モンスターM1~M5に対応付ける音声データを選択する。ここでは、モンスターM1~M5の5体に割り当て可能な発音数が6であったとする。
【0059】
この場合、対応付部562は、モンスターM1~M5のそれぞれの音声データ(例えば吠える声)として、モノラル再生用の音声データ(発音数=1)を対応付ける。換言すると、対応付部562は、5体のノンプレイヤキャラクタNPCのために、5つの発音数を割り当てる。これにより、再生部563は、モンスターM1~M5のそれぞれの音声(吠える声)として、モノラル再生(1チャンネルの再生)を行う。
【0060】
以上をまとめると、本件発明は、コンピュータ(ゲーム装置5)を、複数のキャラクタを仮想空間VS内で動作させてゲームを進行させるゲーム進行部561と、所定の数の前記キャラクタに対して、音声データの対応付けを行う対応付部562と、前記キャラクタに対応付けられた音声データを再生する再生部563と、して機能させ、前記音声データは、1または複数の発音が行われるように構成されおり、前記対応付部562は、前記再生部563によって同時に再生される前記音声データの発音数の総計が、発音数閾値Th1(第1閾値)を超えないように、前記キャラクタに対応付ける音声データを、ゲーム中に選択することを特徴とするゲームプログラムである。
【0061】
〈本実施形態の効果〉
以上のように、本実施形態によれば、ノンプレイヤキャラクタNPC等による発音数の総計が最大同時発音数を超えないように、再生される音声データ(モノラル、ステレオ等)が選択される。それにより、本実施形態のゲームプログラムは、複数の音源オブジェクトに関連付けて音声を再生する場合に、発音を犠牲にする音声をなるべく少なくすることができる。
【0062】
[その他の実施形態]
発音数を調整するためには、選択する音の種類(内容)を変更してもよい。例えば、モンスター用の音声データとして、吠える声の音声データ(例えば5.1チャンネル用)と、足音の音声データ(例えば5.1チャンネル用)を用意しておく。割り当て可能な発音数に余裕がある場合には、吠える声の音声データと、足音の音声データの両方を1体のモンスターに対応付ける。
【0063】
発音数を抑制したい場合に、仮に、そのキャラクタ(モンスター)からの発音を完全になくすと、臨場感などが低下する。このような臨場感低下を抑制しつつ発音数を抑制するには、そのモンスターに割り当てる音の種類(内容)を制限するとよい。
【0064】
例えば、モンスターに関わる音声として、足音の音声データの再生を取りやめて、吠える声の音声データのみを再生することが考えられる。そうすると、ユーザにはモンスターの吠える声は聞こえるので、ユーザは、モンスターの存在を認識できる。それにより、モンスターからの発音を完全になくす場合と比べ、臨場感が向上する。
【0065】
再生部563では、BGM(background music)を再生するようにしてもよい。BGMの再生の際には、ノンプレイヤキャラクタNPC(例えばモンスター)の音声として、歌声を再生することができる。ノンプレイヤキャラクタNPCの歌声は、再生されているBGMのコードに合わせた音程とするのが望ましい。具体的には、同じ歌声(曲)について、互いに音程が異なる複数の音声データを用意する。そして、それらの音声データの中から、BGMのコードに合うものを選択するとよい。そうすることで、ノンプレイヤキャラクタNPC(モンスター)の声として認識させつつ、ノンプレイヤキャラクタNPCの声と曲との親和性を保つことが可能になる。
【0066】
ゲームの中には、複数人(複数台のゲーム装置)でプレイするものがある。このようなゲームでは、主役となって動作するプレイヤキャラクタPCがゲーム状況に応じて入れ替わる場合がある。例えば、第1プレイヤのプレイヤキャラクタPCが敵モンスターと戦い、第2プレイヤのプレイヤキャラクタPCが脇で控えている場合には、第1プレイヤが主役であり、第2プレイヤが脇役である。ゲームの進行状況に応じて、この主役と脇役とが入れ替わる。
【0067】
再生部563は、何れのプレイヤキャラクタPCがゲームの主役であるかに応じて、再生する音声を切り替えてもよい。例えば、第1プレイヤが操作するゲーム装置5の再生部563は、第1プレイヤが操作中のプレイヤキャラクタPCが、プレイ(戦闘)の主役か否かに応じて再生する音声を切り替える。
【0068】
ここで、第1プレイヤに着目すると、第1プレイヤのプレイヤキャラクタPCが「主役」となるケースとしては以下を例示できる。
【0069】
(1)第1プレイヤのプレイヤキャラクタPCが操作可能である場合(他のキャラクタは操作できないものとする)
(2)第1プレイヤのプレイヤキャラクタPCが仮想カメラの注視点として設定されている場合(換言すると、ゲーム画面がそのプレイヤキャラクタPC中心になる場合)
また、プレイヤがひとりであり、且つプレイヤが操作するキャラクタの切り替え可能なゲームの場合には、プレイヤが操作中のキャラクタがプレイヤキャラクタPCである。プレイヤが操作していないキャラクタは、プレイヤが操作できないか、あるいは、ノンプレイヤキャラクタNPCとして動作する。このようなゲームでは、プレイヤが操作中のキャラクタが「主役」である。
【0070】
より具体的には、第1プレイヤのプレイヤキャラクタPCが主役で第2プレイヤのプレイヤキャラクタPCが脇役の場合は、第1プレイヤのゲーム装置5では、爽快なBGMを再生する。第2プレイヤが主役で第1プレイヤが脇役の場合は、第1プレイヤのゲーム装置5では、控えめなBGMを再生する。
【0071】
こうすることで、ゲームへの没入感を向上させることが可能になる。なお、BGMの他に、風切り音、ヒット音(攻撃が当たった音)等の効果音も、プレイヤが主役であるか脇役であるかに応じて変更してもよい。
【0072】
ゲームでは、ノンプレイヤキャラクタNPC間で重要度が異なる場合がある。例えば、モンスターの登場するゲームでは、プレイヤの難敵となるモンスター(ここでは便宜上、大型のモンスターとする)、プレイヤにとってあまり脅威でないモンスター(ここでは、便宜上、小型モンスターとする)が設定される。
【0073】
そのようなゲームでは、大型のモンスターの音声の音量は、小型モンスターの音声の音量よりも大きく設定されることが多い。そうすると、大型モンスター(音量設定が相対的に大きなノンプレイヤキャラクタNPC)と、小型モンスター(音量設定が相対的に小さなノンプレイヤキャラクタNPC)との両方が登場する場面では、小型モンスターの音声が聞こえにくくなる。
【0074】
そのような場合には、再生部563は、音量設定が相対的に大きなノンプレイヤキャラクタNPC(例えば大型モンスター)の数に応じて、(音量設定が相対的に小さなノンプレイヤキャラクタNPC)の音声の音量、再生方法(フィルター処理の有無など)を調整するとよい。
【0075】
具体的には、大型モンスターの数に応じて、小型モンスターの音量を、通常よりも大きくする。小型モンスターの音がよりクリアに聞こえるようにフィルターの設定を変更する。こうすることで、ゲームにおける臨場感、没入感を向上させることができる。
【0076】
ゲームには、ユーザが仮想のカメラを操作できるものが多い。このようなゲームでは、例えば、ノンプレイヤキャラクタNPCとプレイヤキャラクタPCとの距離が大きいほど、ノンプレイヤキャラクタNPCの音声とした再生する音のボリュームを下げるとよい。また、仮想カメラに写らないノンプレイヤキャラクタNPCの音声は、ボリュームを下げたり、フィルター処理(こもって聞こえるようなフィルター処理)を加えたりする。
【0077】
こうすることで、ノンプレイヤキャラクタNPC(例えばモンスター)との距離感や位置関係、高低差をプレイヤに認識させることが可能になる。換言すると、ゲームにおける臨場感、没入感を向上させることができる。
【0078】
ゲームは、3次元の画像で表現されるものには限定されない。ゲームは、2次元の画像で表現されるものでもよい。
【0079】
ゲームプログラムは、いわゆるオンラインゲーム用のゲームプログラムとして実装してもよい。ゲームプログラムがオンラインゲーム用である場合には、制御部56で行っていた処理をそれらに代わってサーバ側で行ってもよいし、サーバ側とクライアント(ゲーム装置5)側とで分担してもよい。
【0080】
これらの他の実施形態を採用した場合においても、本発明の作用効果は発揮される。また、本実施形態と他の実施形態、および他の実施形態同士を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
5 ゲーム装置(コンピュータ)
55 記憶部
56 制御部
561 ゲーム進行部
562 対応付部
563 再生部
Th1 発音数閾値(第1閾値)
Th2 距離閾値(第2閾値)
図1
図2
図3
図4