(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05B 13/02 20060101AFI20241017BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20241017BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B05B13/02
B05D3/02 B
B05D1/02 H
B05D1/02 B
(21)【出願番号】P 2021026167
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】滝本 慎哉
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-005683(JP,A)
【文献】特開2007-077433(JP,A)
【文献】特開2006-026521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 13/02
B05D 3/02
B05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを載置する載置面を有し、該載置面を介して前記ワークを下面から加熱する加熱テーブルと、
前記加熱テーブルの上方に設けられるともに、揮発性溶媒を含有する塗布液を前記載置面に載置される前記ワークの上面に吹き付けて塗布する噴霧ノズルと、
前記加熱テーブル及び前記噴霧ノズルを相対移動させる移動機構と、
前記ワークの上面から押圧して前記ワークを前記載置面に固定するための複数本のクランプと、
前記加熱テーブルにより前記ワークを加熱しながら、前記移動機構による相対移動の下で行われる、前記ワークに対する塗布の途中で、前記クランプの本数又は位置を変更するための変更手段と、
を備える塗布装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記噴霧ノズルによる吹き付け動作が一時的に停止している間、前記吹き付け動作の再開時に塗布を行おうとする塗布対象領域内にあるクランプの位置を、既に塗布が行われた塗布済み領域内にあるいずれかの位置に変更可能に構成される、
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記複数本のクランプは、前記ワークに対する塗布方向に沿って並んで配置され、
前記変更手段は、前記塗布対象領域が前記塗布方向に向かって順次シフトするように、前記複数本のクランプを前記塗布方向の上流側から順に、前記塗布方向とは反対方向に一本ずつ移動可能に構成される、
請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記複数本のクランプを独立して着脱可能なクランプ着脱機構であり、
前記クランプ着脱機構は、
前記塗布方向に沿って延びる支持バーと、
前記クランプの端部に設けられて前記支持バーと複数の箇所で着脱可能に係合する係合部と、を備える、
請求項2又は3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記塗布方向の上流側又は下流側に向かって、前記複数本のクランプを独立して移動可能なクランプ移動機構である、
請求項2又は3に記載の塗布装置。
【請求項6】
載置面を有する加熱テーブルを用いて、前記載置面に載置された板状のワークを下面から加熱する加熱工程と、
複数のクランプにより前記ワークの上面から押圧して前記ワークを前記載置面に固定した状態で、噴霧ノズルが揮発性溶媒を含有する塗布液を前記ワークの上面に吹き付けて塗布する塗布工程と、
前記加熱テーブルにより前記ワークを加熱しながら、前記加熱テーブル及び前記噴霧ノズルの間の相対移動の下で行われる、前記ワークに対する塗布の途中で、前記クランプの本数又は位置を変更する変更工程と、
を備える、塗工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの表面に塗布液を吹き付けて塗布する塗布装置が知られている。例えば、薄板状のワークが風圧によって移動しないように固定するための様々な固定機構が提案されている。
【0003】
特許文献1には、高分子材料を含むスラリーを固体高分子膜にエアスプレーにより直接吹き付け、スクリーン印刷又はブレード法により塗布する方法が開示されている。具体的には、一定温度に保持した多孔質板上に真空引きにより固体高分子膜を保持する旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワークとして剛性が比較的高い金属板を用いる場合、ワークの下面から加熱することで、ワークが下凸状に僅かに湾曲・変形することがある。そうすると、特許文献1で開示される真空引きによる固定方法では、ワークの下面と載置面との間の密着性が低下し、ワークを十分に固定できないという問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、板状のワークを下面から加熱することで生じるワークの熱変形を抑制しつつも、ワークの上面に対して塗布液を隈なく吹付可能な塗布装置及び塗工物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様における塗布装置は、板状のワークを載置する載置面を有し、該載置面を介して前記ワークを下面から加熱する加熱テーブルと、前記加熱テーブルの上方に設けられるともに、揮発性溶媒を含有する塗布液を前記載置面に載置される前記ワークの上面に吹き付けて塗布する噴霧ノズルと、前記加熱テーブル及び前記噴霧ノズルを相対移動させる移動機構と、前記ワークの上面から押圧して前記ワークを前記載置面に固定するための複数本のクランプと、前記加熱テーブルにより前記ワークを加熱しながら、前記移動機構による相対移動の下で行われる、前記ワークに対する塗布の途中で、前記クランプの本数又は位置を変更するための変更手段と、を備える。
【0008】
本発明の第二態様における塗布装置では、前記変更手段は、前記噴霧ノズルによる吹き付け動作が一時的に停止している間、前記吹き付け動作の再開時に塗布を行おうとする塗布対象領域内にあるクランプの位置を、既に塗布が行われた塗布済み領域内にあるいずれかの位置に変更可能に構成される。
【0009】
本発明の第三態様における塗布装置では、前記複数本のクランプは、前記ワークに対する塗布方向に沿って並んで配置され、前記変更手段は、前記塗布対象領域が前記塗布方向に向かって順次シフトするように、前記複数本のクランプを前記塗布方向の上流側から順に、前記塗布方向とは反対方向に一本ずつ移動可能に構成される。
【0010】
本発明の第四態様における塗布装置では、前記変更手段は、前記複数本のクランプを独立して着脱可能なクランプ着脱機構であり、前記クランプ着脱機構は、前記塗布方向に沿って延びる支持バーと、前記クランプの端部に設けられて前記支持バーと複数の箇所で着脱可能に係合する係合部と、を備える。
【0011】
本発明の第五態様における塗布装置では、前記変更手段は、前記塗布方向の上流側又は下流側に向かって、前記複数本のクランプを独立して移動可能なクランプ移動機構である。
【0012】
本発明の第六態様における塗工物の製造方法は、載置面を有する加熱テーブルを用いて、前記載置面に載置された板状のワークを下面から加熱する加熱工程と、複数のクランプにより前記ワークの上面から押圧して前記ワークを前記載置面に固定した状態で、噴霧ノズルが揮発性溶媒を含有する塗布液を前記ワークの上面に吹き付けて塗布する塗布工程と、前記加熱テーブルにより前記ワークを加熱しながら、前記加熱テーブル及び前記噴霧ノズルの間の相対移動の下で行われる、前記ワークに対する塗布の途中で、前記クランプの本数又は位置を変更する変更工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、板状のワークを下面から加熱することで生じるワークの熱変形を抑制しつつも、ワークの上面に対して塗布液を隈なく吹き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における塗布装置の全体構成図である。
【
図2】
図1の塗布装置を通じて実行される塗工物の製造方法に関するフローチャートである。
【
図3】加熱工程(
図2のステップSP12)におけるワークの固定状態を示す図である。
【
図4】一回目の変更工程(
図2のステップSP14)におけるワークの固定状態を模式的に示す図である。
【
図5】二回目の変更工程(
図2のステップSP14)におけるワークの固定状態を模式的に示す図である。
【
図6】五回目の変更工程(
図2のステップSP14)におけるワークの固定状態を模式的に示す図である。
【
図7】第一変形例におけるクランプの配置を示す図である。
【
図8】第二変形例における変更手段の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0016】
[塗布装置10の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置10の全体構成図である。この塗布装置10は、板状のワークWの表面に塗布液Lを吹き付けて塗布することで、塗工物を製造するための装置である。塗工物の種類及びワークWの材料はこれに限られない。例えば、塗工物が燃料電池用の金属セパレータである場合、ワークWは、ステンレス鋼板(SUS;Stainless Used Steel)である。
【0017】
この塗布装置10は、具体的には、遮蔽カバー12と、加熱テーブル14と、噴霧ノズル16と、複数本のクランプ18と、移動機構20と、換気機構22と、制御装置24と、を含んで構成される。
【0018】
遮蔽カバー12は、塗布液Lが含有する溶媒(特に、人体の健康に影響を与え得る有機溶媒)が外部に放出されるのを防止するために設けられる。遮蔽カバー12は、ワークWを搬入又は搬出するための開閉扉(不図示)を有する。
【0019】
加熱テーブル14は、平面視にて矩形状の載置面26を有し、該載置面26に載置されたワークWを下面から加熱する。この加熱により、塗布液Lに含まれる溶媒が揮発する。なお、ワークWの下面に押圧痕が発生しないように、載置面26には、低硬度かつ耐熱性があるシート材(例えば、シリコンシート)が貼付される。
【0020】
噴霧ノズル16は、加熱テーブル14の上方にて固定されるとともに、タンク28に貯蔵される塗布液Lを下方に向けて吹き付ける。これにより、載置面26にあるワークWの上面に塗布液Lが塗布される。本図の例では、一個の噴霧ノズル16のみが設けられるが、噴霧ノズル16の個数は二以上であってもよい。例えば、複数個の噴霧ノズル16が一線状に並んで設けられてもよい。
【0021】
クランプ18は、ワークWの上面から押圧してワークWを載置面26に固定するための長尺な棒状部材である。ワークWの上面に押圧痕が発生しないように、クランプ18の当接面30には、低硬度かつ耐熱性があるシート材(例えば、シリコンシート)が貼付される。
【0022】
クランプ18の両端部には、二本の支持バー32,32と任意の箇所で着脱可能に係合する係合部34が設けられる。二本の支持バー32は、ワークWの搬送方向(ここでは、加熱テーブル14の長尺方向)に沿って延びるとともに、加熱テーブル14を介して対向配置される。これにより、支持バー32及び係合部34は、複数本のクランプ18を独立して着脱可能なクランプ着脱機構36(変更手段)として機能する。
【0023】
移動機構20は、例えばボールねじ機構からなり、加熱テーブル14及び支持バー32を二軸方向(X-Y方向)に移動させる駆動機構である。これにより、噴霧ノズル16は、加熱テーブル14がなす矩形領域内にある任意の位置にアクセス可能になる。なお、移動機構20は、制御装置24から供給される制御信号に従って自動的に駆動してもよいし、作業者による操作(例えば、ハンドル操作)を通じて手動で駆動してもよい。
【0024】
換気機構22は、排気に含まれる溶媒を捕捉しつつ、遮蔽カバー12の内部空気を循環可能に構成される。これにより、塗布液Lが含有する溶媒は、遮蔽カバー12の外側に漏れ出すことなく回収される。
【0025】
制御装置24は、例えばプロセッサ及びメモリを含んで構成され、塗布装置10を構成する各部を統括的に制御するコントローラである。例えば、制御装置24は、[1]加熱テーブル14に対する加熱制御、[2]噴霧ノズル16に対する吹付制御、又は[3]移動機構20に対する駆動制御などを行う。
【0026】
[塗布装置10の動作]
この実施形態における塗布装置10は、以上のように構成される。続いて、この塗布装置10の動作を通じて実行される塗工物の製造方法について、
図2のフローチャート及び
図3~
図6を参照しながら説明する。
【0027】
図2のステップSP10において、ワークWを載置する「載置工程」が行われる。具体的には、作業員は、被塗布物としてのワークWを把持し、加熱テーブル14の載置面26に載置する。ここでは、短辺方向が「X方向」に、長辺方向が「Y方向」にそれぞれ一致するように、矩形状のワークWが配置されたとする。以下、塗布装置10は、加熱テーブル14をX方向に往復走査させながらY方向(搬送方向)に搬送させることで、ワークWに対する塗布動作を行う。この場合、ワークWの塗布方向は、搬送方向とは反対の向きになる点に留意する。
【0028】
ステップSP12において、ステップSP10にて載置したワークWを予備的に加熱する「加熱工程」が行われる。具体的には、作業者は、クランプ着脱機構36を介して複数本のクランプ18を取り付けてワークWを固定させた後、加熱テーブル14の加熱動作を「オン」にする操作を行う。ワークWを前もって加熱することで、塗布液Lの乾燥が促進される。一方、ワークWが金属板である場合、この加熱により、ワークWが下凸状に僅かに湾曲・変形し得る点に留意する。
【0029】
図3は、加熱工程(
図2のステップSP12)におけるワークWの固定状態を示す図である。本図の例では、X方向に延びる五本のクランプ18が、Y方向に沿って略等間隔に並んで配置される。以下、個々のクランプ18を区別するため、図面の左側から右側にわたって、参照符号を18a,18b,18c,18d,18eとそれぞれ表記する。ワークWの全体領域50に対して塗布液Lを塗布する場合、初期状態において、塗布をまだ行っていない領域(以下、「未塗布領域52」という)は、全体領域50と一致する。
【0030】
図2のステップSP14において、ステップSP12にて使用したクランプ18の個数又は位置を変更する「変更工程」が行われる。具体的には、一回目の「変更工程」では、作業者は、クランプ着脱機構36を介して、Y方向の最も下流側にある一本のクランプ18aのみを取り外す操作を行う。
【0031】
ステップSP16において、ステップSP14にてクランプ18の個数又は位置を変更した後、ワークWに対して塗布液Lを吹き付ける「塗布工程」が行われる。
【0032】
図4は、一回目の変更工程(
図2のステップSP14)におけるワークWの固定状態を示す図である。ここで、破線で示す丸印は、ワークWの上面に対する噴霧ノズル16の投影位置を示している。噴霧ノズル16が位置P1にある状態にて吹き付け動作を開始し、噴霧ノズル16が位置P2にある状態にて吹き付け動作を一時的に停止する。ここで、一本のクランプ18aが既に取り外されているので、塗布液Lを吹き付ける際にクランプ18aによる遮蔽箇所がなくなっている。これにより、噴霧ノズル16による吹き付け動作の開始時に塗布を行おうとする領域(以下、「塗布対象領域54」という)にて連続的にかつ漏れなく塗布される。
【0033】
図2のステップSP18において、ステップSP16にて全体領域50が塗布されたか否かを判定する「判定工程」が行われる。
図4に示す状況では未塗布領域52が残存しており、塗布が終了していないので(ステップSP18:NO)、ステップSP14に戻る。
【0034】
二回目の変更工程(ステップSP14)では、作業者は、クランプ着脱機構36を介して、Y方向の最も下流側にある一本のクランプ18bを、以前にクランプ18aがあった位置に移動させる操作を行う。そうすると、隣り合う二本のクランプ18b,18cの間に、新たな塗布対象領域54が形成される。
【0035】
図5は、二回目の変更工程(
図2のステップSP14)におけるワークWの固定状態を模式的に示す図である。本図から理解されるように、クランプ18bは、既に塗布が行われた領域(以下、「塗布済み領域56」という)に配置される。ここで、加熱テーブル14からの加熱によって溶媒が揮発することで、クランプ18bの当接面30には塗布液Lが殆ど転移しない点に留意する。
【0036】
噴霧ノズル16が位置P2にある状態にて吹き付け動作を再開し、噴霧ノズル16が位置P3にある状態にて吹き付け動作を一時的に停止する。ここで、一本のクランプ18bが既に移動しているので、塗布液Lを吹き付ける際にクランプ18bによる遮蔽箇所がなくなっている。これにより、噴霧ノズル16による吹き付け動作の再開時に塗布を行おうとする領域(つまり、塗布対象領域54)にて連続的にかつ漏れなく塗布される。
【0037】
以下、塗布対象領域54が塗布方向に向かって順次シフトするように、複数本のクランプ18を塗布方向の上流側から順に、塗布方向とは反対方向に一本ずつ移動させる。そして、クランプ18の移動及び塗布液Lの吹き付け動作を順次繰り返すことで、全体領域50の上流側から下流側に向かって順次塗布が行われる。
【0038】
図6は、五回目の変更工程(
図2のステップSP14)におけるワークWの固定状態を模式的に示す図である。噴霧ノズル16が位置P4にある状態にて吹き付け動作を再開し、噴霧ノズル16が位置P5にある状態にて吹き付け動作を終了する。そうすると、塗布対象領域54の塗布液Lが乾燥した状態において、塗布済み領域56は全体領域50と一致する。
【0039】
なお、
図6の例では、二回目以降の変更工程にて、四本のクランプ18の位置を順次変更させているが、これに代えて、クランプ18の本数を増加又は減少させてもよい。例えば、三回目の変更工程にてクランプ18cを、四回目の変更工程にてクランプ18dをそれぞれ取り外してもよい。
【0040】
図2のステップSP18に戻って、
図6に示すように未塗布領域52が残存せず、全体領域50での塗布が終了した場合(ステップSP18:YES)、ステップSP20に進む。
【0041】
ステップSP20において、ステップSP18にて塗布が終了したワークWを取り外す「取外工程」が行われる。具体的には、作業者は、クランプ着脱機構36を介して複数本のクランプ18をすべて取り外してワークWを解放させた後、塗布済みのワークWを遮蔽カバー12から取り出す。このようにして、ワークWに対する一連の塗布動作(
図2のフローチャート)が終了する。
【0042】
[塗布装置10による作用効果]
以上のように、塗布装置10は、板状のワークWを載置する載置面26を有し、該載置面26を介してワークWを下面から加熱する加熱テーブル14と、加熱テーブル14の上方に設けられるとともに、載置面26に載置されるワークWの上面に向けて塗布液Lを吹き付けて塗布する噴霧ノズル16と、加熱テーブル14及び噴霧ノズル16を相対移動させる移動機構20と、ワークWの上面から押圧してワークWを載置面26に固定する複数のクランプ18と、加熱テーブル14によりワークWを加熱しながら、移動機構20による相対移動の下で行われる、ワークWに対する塗布の途中で、クランプ18の本数又は位置を変更する変更手段(例えば、クランプ着脱機構36)と、を備える。
【0043】
このように、複数のクランプ18を用いてワークWの上面から押圧することで、ワークWが下凸状に湾曲する熱変形を抑制することができる。そうすると、ワークWの下面と載置面26との間の密着性を維持可能となり、ワークWに対する高い固定力が継続されやすくなる。
【0044】
その一方、複数本のクランプ18を用いることで、上方から塗布液Lを吹き付ける際に塗布液Lを塗布できない遮蔽箇所が発生してしまう。そこで、ワークWに対する塗布の途中で、クランプ18の本数又は位置を変更する変更手段を設けることで、遮蔽箇所を解消しながらワークWの上面に対して塗布液Lを隈なく吹き付けることができる。
【0045】
つまり、上記のように構成することで、板状のワークWを下面から加熱することで生じるワークWの熱変形を抑制しつつも、ワークWの上面に対して塗布液Lを隈なく吹き付けることができる。
【0046】
また、変更手段は、噴霧ノズル16による吹き付け動作が一時的に停止している間、当該吹き付け動作の再開時に塗布を行おうとする塗布対象領域54内にあるクランプ18の位置を、既に塗布が行われた塗布済み領域56内にあるいずれかの位置に変更可能に構成されてもよい。加熱テーブル14による加熱を通じて溶媒の揮発が促進されることで、クランプ18を塗布済み領域56に配置させた場合であっても、ワークWの上面に塗布された塗布液Lがクランプ18に転移されにくくなる。
【0047】
また、複数本のクランプ18が、ワークWに対する塗布方向に沿って並んで配置される場合、変更手段は、塗布対象領域54が塗布方向に向かって順次シフトするように、複数本のクランプ18を塗布方向の上流側から順に、塗布方向とは反対方向に一本ずつ移動可能に構成されてもよい。これにより、クランプ18の移動回数又は移動量を極力少なくしつつも、ワークWの上面に対して塗布液Lを隈なく吹き付けることができる。
【0048】
また、変更手段が、複数本のクランプ18を独立して着脱可能なクランプ着脱機構36である場合、このクランプ着脱機構36は、塗布方向(Y方向)に沿って延びる支持バー32と、クランプ18の端部に設けられて支持バー32と複数の箇所で着脱可能に係合する係合部34と、を備えてもよい。これにより、人手によってクランプ18の本数又は位置を変更する場合における作業性が向上する。
【0049】
[変形例]
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0050】
上記した実施形態では、
図1の移動機構20が加熱テーブル14のみを移動させる場合を例に挙げて説明したが、移動機構20の移動対象はこれに限られない。具体的には、移動機構20は、[1]加熱テーブル14を固定したまま噴霧ノズル16のみを二軸方向に移動させてもよいし、[2]加熱テーブル14及び噴霧ノズル16の両方を移動させてもよい。後者の例では、噴霧ノズル16をX方向に、加熱テーブル14をY方向にそれぞれ移動させる場合が挙げられる。
【0051】
上記した実施形態では、
図1のクランプ18が両端部で固定される場合を例に挙げて説明したが、クランプ18の固定方法はこれに限られない。例えば、係合部34の一端部に回動機構を設けておき、他端部が解放されたクランプ18が支持バー32を軸中心として回動するように構成されてもよい。これにより、支持バー32との係合状態を保ちながらクランプ18を退避させることができる。
【0052】
図7は、第一変形例におけるクランプ58の配置を示す図である。
図3の場合と同様に、X方向に延びる複数本のクランプ18(ここでは、二本)が、Y方向に沿って並んで配置される。ところが、第一変形例ではさらに、Y方向に延びる複数本のクランプ58(ここでは、二本)が、X方向に沿って並んで配置される。各々のクランプ18,58は、図示しない変更手段により本数又は位置を変更可能に設けられる。
【0053】
このように、複数本のクランプ18,58は、複数の配列方向に沿って配列され、必要に応じて選択的に用いられてもよい。この構成によりワークWの搬送方向を変更することができる。例えば、ワークWをY方向に搬送させる場合には複数本のクランプ18を用いて、ワークWをX方向に搬送させる場合には複数本のクランプ58を用いてワークWをそれぞれ固定すればよい。
【0054】
図8は、第二変形例における変更手段の構成を示す図である。塗布装置10は、
図1に示す構成の他に、クランプ移動機構60(変更手段)及び制御装置62をさらに備える。クランプ移動機構60は、各々のクランプ18をY方向に移動可能に構成される。制御装置62は、[1]加熱テーブル14に対する加熱制御、[2]噴霧ノズル16に対する吹付制御、[3]移動機構20に対する駆動制御に加えて、[4]クランプ移動機構60に対する駆動制御を行う。
【0055】
上記のように構成することで、
図2のステップSP14(変更工程)を自動化することができる。例えば、クランプ移動機構60は、制御装置62からの制御信号に応じて、使用しない一本以上のクランプ18を全体領域50の外側に移動させればよい。これにより、クランプ18を取り外す場合と同様の効果が得られる。
【0056】
このように、クランプ18の本数又は位置を変更する変更手段は、Y方向(ワークWに対する塗布方向)の上流側又は下流側に向かって、複数本のクランプ18を独立して移動可能なクランプ移動機構60であってもよい。これにより、クランプ18の本数又は位置を自動的に変更することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…塗布装置、14…加熱テーブル、16…噴霧ノズル、18,18a~18e,58…クランプ、20…移動機構、26…載置面、36…クランプ着脱機構(変更手段)、60…クランプ移動機構(変更手段)、L…塗布液、W…ワーク