(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】鉄道用リレー駆動回路
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20241017BHJP
H01H 47/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B61L23/00 A
H01H47/00 A
(21)【出願番号】P 2021124380
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂部 向志
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-128724(JP,A)
【文献】特開昭63-144704(JP,A)
【文献】実開平05-081929(JP,U)
【文献】実公昭50-021208(JP,Y1)
【文献】米国特許第05787369(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
H01H 47/00-47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、コイル部及び接点部を備えるリレーを駆動するリレー駆動回路であって、
1次側コイル及び2次側コイルを備えるトランスと、
前記鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力する出力回路と、
前記2次側コイルからの交番信号を整流して前記コイル部へ出力する整流回路と、
を備え、
前記1次側コイルと前記2次側コイルとの巻数比は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの動作電圧よりも高く且つ前記コイル部の上限電圧よりも低くなるように設定され、
前記所定電圧は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの復帰電圧よりも低くなるように設定されている、鉄道用リレー駆動回路。
【請求項2】
前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いことを検知する検知部を備え、
前記閾値は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧の最低値よりも低く、且つ前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧よりも高く設定されている、請求項1に記載の鉄道用リレー駆動回路。
【請求項3】
鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、コイル部及び接点部を備えるリレーを駆動するリレー駆動回路であって、
1次側コイル及び2次側コイルを備えるトランスと、
前記鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力する出力回路と、
前記2次側コイルからの交番信号を整流して前記コイル部へ出力する整流回路と、
前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いことを検知する検知部と、
を備え、
前記1次側コイルと前記2次側コイルとの巻数比は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの動作電圧よりも高く且つ前記コイル部の上限電圧よりも低くなるように設定され、
前記閾値は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧の最低値よりも低く、且つ前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧よりも高く設定されている、鉄道用リレー駆動回路。
【請求項4】
前記コイル部の高電位側と低電位側とが、コンデンサを介して接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄道用リレー駆動回路。
【請求項5】
前記鉄道用レーザレーダにより障害物が検知されておらず、且つ故障を検知していない場合に前記出力回路へ交番信号を出力し、前記鉄道用レーザレーダにより障害物が検知された場合及び故障を検知した場合の少なくとも一方の場合に前記出力回路への交番信号の出力を停止する判定部を備え、
前記出力回路は、前記判定部から交番信号が入力された場合に前記所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力し、前記判定部から交番信号が入力されていない場合に前記所定電圧の交番信号の前記1次側コイルへの出力を停止する、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄道用リレー駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レーザレーダの出力に基づいてリレーを駆動する鉄道用リレー駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交番信号出力回路からの交番信号を1次側に入力し2次側から交番信号の交流成分のみを出力するトランスと、トランスからの交番信号を整流する整流回路とを備え、整流回路からの出力によりリレーを駆動するリレー駆動回路がある(特許文献1参照)。例えば、交番信号出力回路は、鉄道用レーザレーダにより障害物が検知されていない場合に交番信号を出力し、鉄道用レーザレーダにより障害物が検知された場合に交番信号を停止する。こうした構成によれば、障害物検知や故障発生により、交番信号出力回路からの交番信号が停止する、又は交番信号出力回路から「1」及び「0」の一方のみが出力され続ける場合に、リレー駆動回路によるリレーの駆動を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のリレー駆動回路において、トランスの1次側と2次側とが短絡した場合は、トランスの1次側から2次側へ交番信号が直接伝達される。このため、リレー駆動回路により正常時と同様にリレーが駆動され、リレー駆動回路によるリレーの駆動を停止させる、トランスの短絡を検知する等の安全処理を実行することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、リレー駆動回路に含まれるトランスの1次側と2次側とが短絡した場合であっても、安全処理を実行することができる鉄道用リレー駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、コイル部及び接点部を備えるリレーを駆動するリレー駆動回路であって、
1次側コイル及び2次側コイルを備えるトランスと、
前記鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力する出力回路と、
前記2次側コイルからの交番信号を整流して前記コイル部へ出力する整流回路と、
を備え、
前記1次側コイルと前記2次側コイルとの巻数比は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの動作電圧よりも高く且つ前記コイル部の上限電圧よりも低くなるように設定され、
前記所定電圧は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの復帰電圧よりも低くなるように設定されている。
【0007】
上記構成によれば、リレー駆動回路は、鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、コイル部及び接点部を備えるリレーを駆動する。出力回路は、前記鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力する。整流回路は、前記2次側コイルからの交番信号を整流して前記コイル部へ出力する。
【0008】
トランスは、出力回路から1次側コイルへ交番信号が入力されると、2次側コイルから交番信号の交流成分のみを出力する。このため、前記鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、あるいは故障発生時に、出力回路からの交番信号が停止する、又は出力回路から「1」及び「0」の一方のみが出力され続ける場合に、2次側コイルからの出力を停止させることができる。これにより、整流回路からリレーのコイル部への出力が停止され、リレーの接点部を開放させる(リレーを復帰させる)ことができる。
【0009】
前記1次側コイルと前記2次側コイルとの巻数比は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの動作電圧よりも高く且つ前記コイル部の上限電圧よりも低くなるように設定されている。このため、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合は、出力回路から所定電圧の交番信号を1次側コイルへ出力することにより、リレー接点部を閉鎖させる(リレーを動作させる)ことができ、且つコイル部へ入力される電圧を上限電圧よりも低くすることができる。なお、上限電圧としては、コイル部の定格電圧の最大値や、コイル部へ入力する電圧の制御範囲の最高値を採用することきができる。
【0010】
トランスの1次側コイルと2次側コイルとが短絡した場合は、出力回路からの交番信号がトランスの1次側コイルから2次側コイルへ直接伝達される。ここで、前記所定電圧は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの復帰電圧よりも低くなるように設定されている。このため、トランスの1次側コイルと2次側コイルとが短絡した場合は、コイル部へ入力される電圧がリレーの復帰電圧よりも低くなる。したがって、リレーを復帰させる、すなわち安全処理を実行することができる。
【0011】
第2の手段では、前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いことを検知する検知部を備え、前記閾値は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧の最低値よりも低く、且つ前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧よりも高く設定されている。
【0012】
上記構成によれば、検知部は、前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いことを検知する。
【0013】
ここで、前記閾値は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧の最低値よりも低く設定されている。このため、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合は、前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも高くなり、前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いと検知されることはない。
【0014】
また、前記閾値は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧よりも高く設定されている。このため、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合は、前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いことを検知する、すなわち安全処理を実行することができる。
【0015】
上記課題を解決するための第3の手段は、
鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、コイル部及び接点部を備えるリレーを駆動するリレー駆動回路であって、
1次側コイル及び2次側コイルを備えるトランスと、
前記鉄道用レーザレーダの出力に基づいて、所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力する出力回路と、
前記2次側コイルからの交番信号を整流して前記コイル部へ出力する整流回路と、
前記コイル部へ入力される電圧が閾値よりも低いことを検知する検知部と、
を備え、
前記1次側コイルと前記2次側コイルとの巻数比は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧が、前記リレーの動作電圧よりも高く且つ前記コイル部の上限電圧よりも低くなるように設定され、
前記閾値は、前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡していない場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧の最低値よりも低く、且つ前記1次側コイルと前記2次側コイルとが短絡した場合に、前記交番信号の前記1次側コイルへの入力時に前記コイル部へ入力される電圧よりも高く設定されている。
【0016】
上記構成によれば、第2の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【0017】
第4の手段では、前記コイル部の高電位側と低電位側とが、コンデンサを介して接続されている。こうした構成によれば、整流回路からコイル部への出力を平滑化することができ、コイル部による接点部の駆動を安定させることができる。
【0018】
第5の手段では、前記鉄道用レーザレーダにより障害物が検知されておらず、且つ故障を検知していない場合に前記出力回路へ交番信号を出力し、前記鉄道用レーザレーダにより障害物が検知された場合及び故障を検知した場合の少なくとも一方の場合に前記出力回路への交番信号の出力を停止する判定部を備え、前記出力回路は、前記判定部から交番信号が入力された場合に前記所定電圧の交番信号を前記1次側コイルへ出力し、前記判定部から交番信号が入力されていない場合に前記所定電圧の交番信号の前記1次側コイルへの出力を停止する。こうした構成によれば、前記鉄道用レーザレーダにより障害物が検知された場合及び故障を検知した場合の少なくとも一方の場合に、前記所定電圧の交番信号の前記1次側コイルへの出力を停止させることができ、ひいてはリレーの接点部を開放させる(リレーを復帰させる)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】リレー駆動回路及びその周辺構成を示す回路図。
【
図2】コイル部の定格電圧の最低値VLL及び最高値VLH、閾値VTL,VTH、制御電圧の最低値VCL及び最高値VCH、復帰電圧VI、及び短絡時入力電圧VSの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、鉄道用レーザレーダの出力に基づいて信号制御装置を制御するシステムに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、このシステムは、レーザレーダ80、判定部82、リレー駆動回路10、リレー90、信号制御装置84、低電圧監視回路61、高電圧監視回路62等を備えている。
【0022】
レーザレーダ80(鉄道用レーザレーダ)は、鉄道の踏切(監視エリア)内にレーザ光を照射してその反射光に基づいて、踏切内に侵入した対象物体(障害物)を検知する。レーザレーダ80は、例えば対象物体を検知した場合に「0」(Lレベル)の信号を判定部82へ出力し、対象物体を検知していない場合に「1」(Hレベル)の信号を判定部82へ出力する。
【0023】
判定部82は、レーザレーダ80から「1」の信号が入力され、且つシステムのいずれの部分の故障も検知していない場合に、出力端子からリレー駆動回路10へ交番信号を出力する。一方、判定部82は、レーザレーダ80から「0」の信号が入力された場合、又はシステムのいずれかの部分の故障を検知した場合に、出力端子からリレー駆動回路10への交番信号の出力を停止する。すなわち、判定部82は、レーザレーダ80により対象物体が検知されておらず、且つ故障を検知していない場合に出力回路30へ交番信号を出力し、レーザレーダ80により対象物体が検知された場合及び故障を検知した場合の少なくとも一方の場合に出力回路30への交番信号の出力を停止する。
【0024】
リレー駆動回路10(鉄道用リレー駆動回路)は、トランス20、出力回路30、整流回路40、コンデンサ50、低電圧監視回路61、高電圧監視回路62等を備えている。
【0025】
トランス20は、1次側コイル21及び2次側コイル22を備えている。1次側コイル21には、出力回路30が接続されている。2次側コイル22には、整流回路40が接続されている。トランス20は、出力回路30から交番信号を1次側コイル21へ入力し、2次側コイル22から交番信号の交流成分のみを出力する。
【0026】
出力回路30は、電圧供給部31、コンデンサ32,37、抵抗33,34,36、トランジスタ35等を備えている。電圧供給部31は、トランス20の1次側コイル21の一端に接続されており、正の所定電圧V1を供給する。1次側コイル21の他端は、トランジスタ35のコレクタに接続されている。トランジスタ35のエミッタには、抵抗36及びコンデンサ37が直列に接続されている。コンデンサ37の抵抗36と反対側の端子は、電圧供給部31に接続されている。トランジスタ35のベースには、コンデンサ32を介して判定部82の出力端子が接続されている。また、トランジスタ35のベースには、抵抗34を介して電圧供給部31が接続されている。トランジスタ35のベースと判定部82のグランド端子とが、抵抗33を介して接続されている。判定部82のグランド端子は、抵抗36とコンデンサ37との接続点に接続されている。こうした構成により、出力回路30は、判定部82の出力端子から交番信号が入力されている場合にトランス20の1次側コイル21へ所定電圧V1の交番信号を出力し、判定部82の出力端子から交番信号が入力されていない場合にトランス20の1次側コイル21への所定電圧V1の交番信号の出力を停止する。すなわち、出力回路30は、レーザレーダ80の出力に基づいて、所定電圧V1の交番信号を1次側コイル21へ出力する。
【0027】
整流回路40は、4つのダイオードを備える周知の全波整流回路である。整流回路40の出力端子には、リレー90のコイル部91が接続されている。整流回路40は、トランス20の2次側コイル22から入力した交番信号を整流してコイル部91へ出力する。
【0028】
リレー90は、コイル部91及び接点部92を備えている。コイル部91へ入力される入力電圧V2が定格電圧の最低値VLL(動作電圧)を超えると接点部92が閉鎖(ON)され、接点部92が閉鎖した状態で入力電圧V2が復帰電圧VIを下回ると接点部92が開放(OFF)される。
【0029】
コイル部91の高電位側の端子と低電位側の端子とが、コンデンサ50を介して接続されている。コンデンサ50(平滑コンデンサ、バイパスコンデンサ)は、整流回路40からコイル部91へ入力される電圧を平滑化する。以上の構成により、リレー駆動回路10は、レーザレーダ80の出力に基づいてリレー90を駆動する。
【0030】
接点部92には、信号制御装置84が接続されている。信号制御装置84は、接点部92が閉鎖されている場合に列車の進行を許可する信号(青信号)を出力し、接点部92が開放されている場合に列車の進行を禁止する信号(赤信号)を出力する。
【0031】
図2は、コイル部91の定格電圧の最低値VLL及び最高値VLH、閾値VTL,VTH、制御電圧の最低値VCL及び最高値VCH、復帰電圧VI、及び短絡時入力電圧VSの関係を示す図である。
【0032】
コイル部91の定格電圧の最低値VLL及び最高値VLHは、コイル部91の仕様により決まっている。最低値VLLは、リレー90の動作電圧に相当する。入力電圧V2が最高値VLHを超えると、コイル部91が損傷するおそれがある。
【0033】
リレー90の復帰電圧VIは、リレー90の仕様により決まっているが、一般的に定格電圧の10~30[%]である。
【0034】
正常時にコイル部91へ入力される入力電圧V2が、制御電圧の最低値VCLから最高値VCHまでの範囲(制御範囲)になるように、リレー駆動回路10(詳しくは所定電圧V1、1次側コイル21と2次側コイル22との巻数比)は設計されている。制御電圧の最低値VCLは、定格電圧の最低値VLLよりも高く、且つ制御電圧の最高値VCHよりも低く設定されている。制御電圧の最高値VCHは、定格電圧の最高値VLHよりも低く、且つ制御電圧の最低値VCLよりも高く設定されている。閾値VTLは、定格電圧の最低値VLLよりも高く、且つ制御電圧の最低値VCLよりも低く設定されている。閾値VTHは、定格電圧の最高値VLHよりも低く、且つ制御電圧の最高値VCHよりも高く設定されている。
【0035】
短絡時入力電圧VSは、トランス20の1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合に、出力回路30からの交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される電圧である。短絡時入力電圧VSは、復帰電圧VIよりも低く設定されている。
【0036】
上記のように各電圧を設定するために、例えば、所定電圧V1は7~10[V]に設定されており、1次側コイル21と2次側コイル22との巻数比は1:nに設定されている。例えば、nは2.0~3.5である。望ましくは、所定電圧V1は8~9[V]に設定されており、nは2.5~3.0である。
【0037】
すなわち、所定電圧V1は、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される短絡時入力電圧VSが、リレー90の復帰電圧VIよりも低くなるように設定されている。さらに、1次側コイル21と2次側コイル22との巻数比は、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡していない場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される入力電圧V2が、制御範囲の最低値VCL及び定格電圧の最低値VLLよりも高く、且つ制御範囲の最高値VCH(コイル部91の上限電圧)よりも低くなるように設定されている。
【0038】
また、閾値VTLは、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡していない場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される入力電圧V2の最低値(制御電圧の最低値VCL)よりも低く、且つ1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される短絡時入力電圧VS及び復帰電圧VIよりも高く設定されている。
【0039】
低電圧監視回路61(検知部)は、コイル部91へ入力される電圧が閾値VTLよりも低いことを検知する。高電圧監視回路62は、コイル部91へ入力される電圧が閾値VTHよりも高いことを検知する。
【0040】
次に、上記システムの動作態様を説明する。
【0041】
レーザレーダ80は、踏切内に侵入した対象物体を検知していない場合に「1」(Hレベル)の信号を判定部82へ出力する。判定部82は、レーザレーダ80から「1」の信号が入力され、且つシステムのいずれの部分の故障も検知していない場合に、出力端子からリレー駆動回路10の出力回路30へ交番信号を出力する。これにより、出力回路30は、トランス20の1次側コイル21へ所定電圧V1の交番信号を出力する。1次側コイル21へ入力された所定電圧V1の交番信号はトランス20により昇圧され、昇圧された交番信号が2次側コイル22から整流回路40へ出力される。整流回路40は、2次側コイル22から入力された昇圧された交番信号を整流してコイル部91へ出力する。この際に、整流回路40からコイル部91へ入力される入力電圧V2は、コンデンサ50により平滑化される。入力電圧V2は、制御電圧の最低値VCLよりも高い、すなわち定格電圧の最低値VLL(リレー90の動作電圧)よりも高いため、接点部92が閉鎖される。その結果、信号制御装置84は、列車の進行を許可する信号(青信号)を出力する。
【0042】
一方、レーザレーダ80は、踏切内に侵入した対象物体を検知した場合に「0」(Lレベル)の信号を判定部82へ出力する。判定部82は、レーザレーダ80から「0」の信号が入力された場合、又はシステムのいずれかの部分の故障も検知した場合に、出力端子からリレー駆動回路10の出力回路30への交番信号の出力を停止する。なお、判定部82自身が故障した場合等は、判定部82の出力端子からリレー駆動回路10の出力回路30への交番信号の出力が停止する、あるいは判定部82の出力端子から「1」及び「0」の一方のみが出力され続ける。これにより、出力回路30は、トランス20の1次側コイル21への所定電圧V1の交番信号の出力を停止する。なお、出力回路30自身が故障した場合等は、トランス20の1次側コイル21への所定電圧V1の交番信号の出力が停止する、あるいは出力回路30から「1」及び「0」の一方のみが出力され続ける。この場合、トランス20は、1次側コイル21へ入力された交番信号の交流成分のみを出力するため、2次側コイル22から整流回路40へ電圧が出力されない。これにより、入力電圧V2は復帰電圧VIよりも低くなり、接点部92が開放される。その結果、信号制御装置84は、列車の進行を禁止する信号(赤信号)を出力する。また、低電圧監視回路61は、コイル部91へ入力される入力電圧V2が閾値VTLよりも低いことを検知する。
【0043】
また、レーザレーダ80から判定部82へ「1」の信号が入力され、且つレーザレーダ80によりシステムのいずれの部分の故障も検知されていない場合は、リレー駆動回路10の出力回路30は、トランス20の1次側コイル21へ所定電圧V1の交番信号を出力する。この状態において、トランス20の1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡すると、1次側コイル21から2次側コイル22へ交番信号が直接伝達される。このとき、コイル部91へ入力される短絡時入力電圧VSは、リレー90の復帰電圧VIよりも低くなる。その結果、接点部92が開放され、信号制御装置84は、列車の進行を禁止する信号(赤信号)を出力する。また、低電圧監視回路61は、コイル部91へ入力される入力電圧V2が閾値VTLよりも低いことを検知する。
【0044】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0045】
・トランス20は、出力回路30から1次側コイル21へ交番信号が入力されると、2次側コイル22から交番信号の交流成分のみを出力する。このため、レーザレーダ80の出力に基づいて、あるいは故障発生時に、出力回路30からの交番信号が停止する、又は出力回路30から「1」及び「0」の一方のみが出力され続ける場合に、2次側コイル22からの出力を停止させることができる。これにより、整流回路40からリレー90のコイル部91への出力が停止され、リレー90の接点部92を開放させる(リレー90を復帰させる)ことができる。
【0046】
・1次側コイル21と2次側コイル22との巻数比は、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡していない場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される入力電圧V2が、リレー90の定格電圧の最低値VLLよりも高く且つコイル部91の制御電圧の最高値VCHよりも低くなるように設定されている。このため、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡していない場合は、出力回路30から所定電圧V1の交番信号を1次側コイル21へ出力することにより、接点部92を閉鎖させる(リレー90を動作させる)ことができ、且つコイル部91へ入力される電圧を制御電圧の最高値VCHよりも低くすることができる。
【0047】
・トランス20の1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合は、出力回路30からの交番信号がトランス20の1次側コイル21から2次側コイル22へ直接伝達される。ここで、所定電圧V1は、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される短絡時入力電圧VSが、リレー90の復帰電圧VIよりも低くなるように設定されている。詳しくは、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合は、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される短絡時入力電圧VSが所定電圧V1に近い電圧になる。このため、トランス20の1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合は、コイル部91へ入力される入力電圧V2がリレー90の復帰電圧VIよりも低くなる。したがって、リレー90を復帰させる、すなわち安全処理を実行することができる。
【0048】
・閾値VTLは、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡していない場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される定格電圧の最低値VCLよりも低く設定されている。このため、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡していない場合は、コイル部91へ入力される入力電圧V2が閾値VTLよりも高くなり、コイル部91へ入力される入力電圧V2が閾値VTLよりも低いと検知されることはない。
【0049】
・閾値VTLは、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合に、交番信号の1次側コイル21への入力時にコイル部91へ入力される短絡時入力電圧VSよりも高く設定されている。このため、1次側コイル21と2次側コイル22とが短絡した場合は、コイル部91へ入力される入力電圧V2が閾値VTLよりも低いことを検知する、すなわち安全処理を実行することができる。
【0050】
・コイル部91の高電位側と低電位側とが、コンデンサ50を介して接続されている。こうした構成によれば、整流回路40からコイル部91への出力を平滑化することができ、コイル部91による接点部92の駆動を安定させることができる。
【0051】
・判定部82は、レーザレーダ80により踏切内の対象物体が検知されておらず、且つ故障を検知していない場合に出力回路30へ交番信号を出力し、レーザレーダ80により対象物体が検知された場合及び故障を検知した場合の少なくとも一方の場合に出力回路30への交番信号の出力を停止する。出力回路30は、判定部82から交番信号が入力された場合に所定電圧V1の交番信号を1次側コイル21へ出力し、判定部82から交番信号が入力されていない場合に所定電圧V1の交番信号の1次側コイル21への出力を停止する。こうした構成によれば、レーザレーダ80により対象物体が検知された場合及び故障を検知した場合の少なくとも一方の場合に、所定電圧V1の交番信号の1次側コイル21への出力を停止させることができ、ひいてはリレー90の接点部92を開放させる(リレー90を復帰させる)ことができる。
【0052】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0053】
・判定部82を、レーザレーダ80に内蔵することもできる。
【0054】
・高電圧監視回路62を省略することもできる。低電圧監視回路61を省略することもできる。
【0055】
なお、上記の各変更例を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10…リレー駆動回路、20…トランス、21…1次側コイル、22…2次側コイル、30…出力回路、40…整流回路、80…レーザレーダ、90…リレー、91…コイル部、92…接点部。