(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/71 20110101AFI20241017BHJP
【FI】
H01R12/71
(21)【出願番号】P 2022545264
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032910
(87)【国際公開番号】W WO2022044333
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高平 浩司
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-032630(JP,A)
【文献】特開平04-368787(JP,A)
【文献】特開2019-160492(JP,A)
【文献】特開2019-175553(JP,A)
【文献】特開平08-236226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、
前記プラグユニットは、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングと
を具備し、
前記コンタクトは、前記貫通孔及び前記スリットに沿って一直線状に延在する直線部を有し、
前記ベース部における貫通孔の上端及び下端には、前記コンタクトの直線部を保持する2つの保持部が設けられており、
前記貫通孔は、左右方向及び前後方向に対向する4つの周壁を有し、前記周壁における前記2つの保持部を除いた部分に溝が設けられており、前記貫通孔の溝により、前記周壁と前記コンタクトの直線部との間に隙間が形成されており、
前記スリットは、開放された側と逆側の周壁とこの周壁を挟んで対向する2つの周壁とからなる3つの周壁を有し、前記3つの周壁は前記貫通孔の周壁と繋がっており、
前記スリットの周壁に、前記貫通孔の周壁の溝と同じ側に凹んだ溝が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、
前記プラグユニットは、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングと
を具備し、
前記コンタクトは、前記貫通孔及び前記スリットに沿って一直線状に延在する直線部を有し、
前記ベース部における貫通孔の上端及び下端には、前記コンタクトの直線部を保持する2つの保持部が設けられており、前記貫通孔における2つの保持部の間の部分の周壁と前記直線部との間に隙間が形成されており、
前記直線部の側面における下端から上側に離れた位置には、外側に突出した爪部があり、前記直線部の爪部がある部分は、前記保持部によって保持されており、
前記スリットは、開放された側と逆側の周壁とこの周壁を挟んで対向する2つの周壁とからなる3つの周壁を有し、
前記スリットの周壁に、溝が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、
前記プラグユニットは、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングと
を具備し、
前記ベース部における貫通孔の上端及び下端には、前記コンタクトを保持する2つの保持部が設けられており、
前記貫通孔は、左右方向及び前後方向に対向する4つの周壁を有し、前記周壁における前記2つの保持部を除いた部分に溝が設けられており、前記貫通孔の溝により、前記周壁と前記コンタクトとの間に隙間が形成されており、
前記スリットは、開放された側と逆側の周壁とこの周壁を挟んで対向する2つの周壁とからなる3つの周壁を有し、前記3つの周壁は前記貫通孔の周壁と繋がっており、
前記スリットの周壁に、前記貫通孔の周壁の溝と同じ側に凹んだ溝が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、
前記プラグユニットは、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングと
を具備し、
前記ベース部における貫通孔の上端及び下端には、前記コンタクトを保持する2つの保持部が設けられており、前記貫通孔における2つの保持部の間の部分の周壁と前記コンタクトとの間に隙間が形成されており、
前記コンタクトの側面における下端から上側に離れた位置には、外側に突出した爪部があり、前記コンタクトの爪部がある部分は、前記保持部によって保持されており、
前記スリットは、開放された側と逆側の周壁とこの周壁を挟んで対向する2つの周壁とからなる3つの周壁を有し、
前記スリットの周壁に、溝が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、
前記プラグユニットは、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングと
を具備し、
前記コンタクトにおける前記貫通孔に挿入される部分と前記スリットに保持される部分が一直線状をなしており、
前記ベース部における貫通孔の上端及び下端には、前記コンタクトの直線部を保持する2つの保持部が設けられており、前記貫通孔における2つの保持部の間の部分の周壁と前記直線部との間に隙間が形成されており、
前記コンタクトは、前記貫通孔及び前記スリットに沿って一直線状に延在する直線部と、前記直線部の一端から外側に向かって屈曲して延在し、基板に接続される端子部と
を有し、
前記複数のコンタクトが、左側及び右側の2つの列をなしており、
前記貫通孔は、
左右方向及び前後方向に対向する4つの周壁を有し、前記周壁における前記2つの保持部を除いた部分に、溝が設けられており、
前記スリットは、開放された側と逆側の周壁とこの周壁を挟んで対向する2つの周壁とからなる3つの周壁を有し、
前記スリットの周壁に、溝が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
前記コンタクトは、前記直線部の一端から外側に向かって屈曲して延在し、基板に接続される端子部と
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記複数のコンタクトが、左側及び右側の2つの列をなしている
ことを特徴とする請求項
6に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティング機構を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板と拡張基板にそれぞれ実装されて基板間の信号伝送を仲介するコネクタの中には、回路基板側のコネクタの取付位置と拡張基板側のコネクタの取付位置の誤差を吸収するフローティング機構を搭載したものがある。この種のコネクタに関わる技術を開示した文献として、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1の基板接続用コネクタは、ソケットタイプの第1コネクタと、第1コネクタ内に嵌め込まれるプラグタイプの第2コネクタとからなる。この文献1の第1コネクタは、固定ハウジングと、浮動ハウジングと、これらのハウジングの間に架設される複数のコンタクトを具備する。第1コネクタのコンタクトは、逆V字状に延在する第1ばね部及び第2ばね部と、それらの上端の間に介在する湾曲反転部とを有し、隣り合うコンタクトの反転湾曲部の間に、電気絶縁性の合成樹脂材料からなる隔壁部材を配置されている。特許文献1の技術によると、反転湾曲部間に配置された隔壁部材の作用により、反転湾曲部とそれ以外の直線状に延伸する部分との間のインピーダンスの差が狭まり、コンタクト全体のインピーダンスが均質化する。よって、特許文献によると、インピーダンス不整合を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、ソケットタイプのコネクタの側には、インピーダンス不整合を抑制する仕組みがあるももの、プラグタイプのコネクタの側には、そのような仕組みが無かった。このため、プラグタイプのコネクタのインピーダンス不整合を抑制できなかった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、コネクタのプラグユニットのインピーダンス不整合を抑制できる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の好適な態様であるコネクタは、第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、前記プラグユニットは、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングとを具備し、前記コンタクトにおける前記貫通孔に挿入される部分と前記スリットに保持される部分が一直線状をなしていることを特徴とする。
【0008】
この態様において、前記ベース部における貫通孔の上端及び下端には、前記コンタクトの直線部を保持する2つの保持部が設けられており、前記貫通孔における2つの保持部の間の部分の周壁と前記直線部との間に隙間が形成されていてもよい。
【0009】
また、前記コンタクトは、前記貫通孔及び前記スリットに沿って一直線状に延在する直線部と、前記直線部の一端から外側に向かって屈曲して延在し、基板に接続される端子部とを有してもよい。
【0010】
また、前記複数のコンタクトが、左側及び右側の2つの列をなしていてもよい。
【0011】
また、前記貫通孔は、左右方向及び前後方向に対向する4つの周壁を有し、前記周壁における前記2つの保持部を除いた部分に、溝が設けられていてもよい。
【0012】
また、前記スリットは、前記貫通孔の周壁と繋がった周壁を有し、当該スリットの周壁に、溝が設けられていてもよい。
【0013】
また、前記貫通孔の溝と前記スリットの溝が同じ側に凹んでいてもよい。
【0014】
また、前記貫通孔の溝と前記スリットの溝の深さは同じであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、第1の基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の基板に実装され、前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットとを備え、前記レセプタクルユニットと前記プラグユニットとを接続することにより、前記第1の基板と、前記第2の基板とを電気的に接続するコネクタにおいて、前記プラグユニットは、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトが挿入される複数の貫通孔が設けられたベース部と、前記ベース部から突出するヘッダであって、前記複数のコンタクトにおける前記貫通孔から当該ヘッダの側に露出した部分を保持する複数のスリットが設けられたヘッダとを有するハウジングとを具備し、前記コンタクトにおける前記貫通孔に挿入される部分と前記スリットに保持される部分が一直線状をなしている。よって、コンタクトの直線部とそれ以外の折り曲げ部分との間のインピーダンスのばらつきがより小さくなる。従って、コネクタのインピーダンス不整合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は、本発明の一実施形態であるコネクタ100のレセプタクルユニット93の斜視図であり、(B)は、コネクタ100のプラグユニット97の斜視図である。
【
図2】
図1(A)のレセプタクルユニット93を逆側から見た斜視図である。
【
図3】レセプタクルユニット93とプラグユニット97を嵌合させたものの断面図である。
【
図4】(A)及び(B)は、レセプタクルユニット93のX方向のフローティングの様子を示す図であり、(C)は、レセプタクルユニット93のY方向のフローティングの様子を示す図である。
【
図5】(A)は、レセプタクルユニット93を+Z側から見た図であり、(B)は、レセプタクルユニット93を+Y側から見た図であり、(C)は、レセプタクルユニット93を-Z側から見た図であり、(D)は、レセプタクルユニット93を-X側から見た図である。
【
図7】(A)は、レセプタクルユニット93の固定ハウジング1の斜視図であり、(B)は、(A)のA-A線断面図である。
【
図8】(B)は、レセプタクルユニット93の浮動ハウジング2の斜視図であり、(B)は、(A)のA-A線断面図である。
【
図9】レセプタクルユニット93のコンタクト3-jの斜視図である。
【
図10】レセプタクルユニット93のアンカープレート4の斜視図である。
【
図11】レセプタクルユニット93の導電樹脂部材5の斜視図である。
【
図12】(A)は、プラグユニット97を+Z側から見た図であり、(B)は、プラグユニット97を+Y側から見た図であり、(C)は、プラグユニット97を-Z側から見た図であり、(D)は、プラグユニット97を-X側から見た図である。
【
図13】(A)は、
図12(B)のD-D線断面図であり、(B)は、(A)のG枠内の拡大図である。
【
図15】(A)は、
図12(A)のH-H線断面の断面図であり、(B)は、(A)のJ枠内の拡大図である。
【
図17】(A)は、プラグユニット97のハウジング6の斜視図であり、(B)は、(A)のA-A線断面図である。
【
図18】プラグユニット97のコンタクト7-jの斜視図である。
【
図19】プラグユニット97のアンカープレート8の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態であるコネクタ100を説明する。コネクタ100は、レセプタクルユニット93とプラグユニット97とを備える。レセプタクルユニット93は、第1の基板である電子基板に実装される。プラグユニット97は、第2の基板である拡張基板に実装される。レセプタクルユニット93のスロット20にプラグユニット97のヘッダ62を嵌合し、レセプタクルユニット93とプラグユニット97を接続することにより、プラグユニット97のK個(Kは、例えば、144とする)のコンタクト7-j(j=1~K)とレセプタクルユニット93のK個のコンタクト3-j(j=1~K)がそれぞれ電気的に接続され、PAM(Pulse Amplitude Modulation)による、最高数Gbpsの高速差動伝送が可能となる。
【0018】
以降の説明では、レセプタクルユニット93に対するプラグユニット97の嵌合の方向を適宜Z方向といい、Z方向と直交する一方向を適宜X方向といい、Z方向及びY方向の両方と直交する方向を適宜Y方向という。また、+Z側を上側と称し、-Z側を下側と称し、+X側を前側と称し、-X側を後側と称し、+Y側を左側と称し、-Y側を右側と称することがある。また、レセプタクルユニット93のコンタクト3-j(j=1~K)及びプラグユニット97のコンタクト7-j(j=1~K)のうち、差動伝送のグランド用のコンタクト3-j及びコンタクト7-jに(G)の文字を付すと共に、シグナル用のコンタクト3-j及びコンタクト7-jに(S)の文字を付し、両者を区別する。
【0019】
図1(A)、
図2、
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、及び
図5(D)に示すように、レセプタクルユニット93は、固定ハウジング1、浮動ハウジング2、コンタクト3-j(j=1~K)、アンカープレート4、及び導電樹脂部材5を有する。
【0020】
図7に示すように、固定ハウジング1は、当該固定ハウジング1を上下に貫通する開口部10と、開口部10を囲む第1壁部である壁部11及び12とを有する。壁部11は、開口部10を挟んでX方向に対向しており、壁部12は、開口部10を挟んでY方向に対向している。
【0021】
固定ハウジング1の前後の壁部11の外側面の上と左右の縁は凸部111として外側に突出している。壁部11の外側面の真中には、上下に延在する中板112がある。壁部11の下面の中央には、位置決めボス113が設けられている。この位置決めボス113は、レセプタクルユニット93を電子基板に固定するときに電子基板の位置決め孔に嵌め込まれるものである。
【0022】
固定ハウジング1の左右の壁部12の外側面における前側と後側の端部には、アンカープレート4を装着するためのホルダ121が設けられている。壁部12の外側面における2つのホルダ121の間の下端側は、凸部122として外側に突出している。
【0023】
固定ハウジング1の左右の壁部12の内側面の下側には、それぞれ、前後に並ぶK/2個のスリット17-jの列が設けられている。左右の壁部12の内側面の上側には、四半円弧状に内側に湾曲した湾曲部14があり、その上には、内側面と平行な内縁部15がある。
【0024】
図8(A)及び
図8(B)に示すように、浮動ハウジング2は、浮動ハウジング2のヘッダ62が挿入されるスロット20と、スロット20の内周面を構成する第2壁部である壁部21及び22とを有する。壁部21は、スロット20を挟んでX方向に対向しており、壁部22は、スロット20を挟んでY方向に対向している。浮動ハウジング2は、固定ハウジング1の開口部10に収まる寸法を有している。
【0025】
浮動ハウジング2の前後の壁部21の外側面の上と左右の縁は、凸部211として外側に突出している。凸部211の左右の下端は、外側に突出している。
【0026】
浮動ハウジング2の左右の壁部22の内側面は、上側の面に対して下側の面が突出した段差面になっている。浮動ハウジング2の左右の壁部22の内側面の下側には、それぞれ、前後に並ぶK/2個のスリット26-jの列が設けられている。左右の壁部22の外側面の上側には、四半円弧状に外側に湾曲した湾曲部24があり、その上には、外側面と平行な外縁部25がある。
【0027】
図5(A)、
図5(C)、及び
図8(B)に示すように、浮動ハウジング2における前後の壁部21の下端部の間には、スロット20の底をなす底部23が架設されている。底部23は、前後に一直線状に延伸している。
図8(B)に示すように、底部23とその左右両側の壁部22の内側面との間には、貫通孔220がある。貫通孔220は、底面からスロット20内に向けて貫通している。浮動ハウジング2の底面には、導電樹脂部材5が設けられている。浮動ハウジング2の底部23の底面には、導電樹脂部材5を固定するための溝230が設けられている。
【0028】
コンタクト3-j(j=1~K)は、左右K/2個ずつのコンタクト3-jの列をなしている。
図9に示すように、コンタクト3-jは、一端側において左右方向に延在する端子部31と、他端側において上下方向に延在する接点部32と、端子部31と繋がった支持片部36と、接点部32と繋がった支持片部37と、これら2つの支持片部36及び37の間に介在する弾性変形部38とを有する。
【0029】
接点部32の先端は、くの字に折れ曲がっている。支持片部36及び支持片部37の側面には、外側に突出した爪部361及び371がある。
【0030】
弾性変形部38は、半円状に丸まった可撓部380と、可撓部380の両端から下側に延伸する2つの直線部381及び直線部382と、直線部381の下端において支持片部36の側に折れ曲がり、支持片部36の上端と繋がる連結部386と、直線部382の下端において支持片部37の側に折れ曲がり、支持片部37の下縁と繋がる連結部387とを有する。弾性変形部38は、前後左右への弾性変形が可能である。
【0031】
図10に示すように、アンカープレート4は、本体部41と、本体部41の下縁から下側に突出する突出部42とを有する。本体部41の側面に上縁には、側方に広がる凸部411がある。本体部41の側面における凸部411の下には、外側に突出した爪部412がある。突出部42には長孔421が設けられている。
【0032】
図11に示すように、導電樹脂部材5は、直方体の四隅を左右方向の外側に突出させた下板部51と、下板部51の上面の中央から上側に突出した凸部53と、下板部51の外側に突出させた先端から上側に起立した柱部59とを有する。凸部53の左右の幅は、浮動ハウジング2の底部23の溝230の左右の幅と略同じになっている。
【0033】
固定ハウジング1、浮動ハウジング2、コンタクト3-j(j=1~K)、アンカープレート4、及び導電樹脂部材5は、次のようにして組み合わされている。
【0034】
図5(A)、
図5(C)、及び
図6に示すように、浮動ハウジング2は、固定ハウジング1の開口部10に収められ、浮動ハウジング2と固定ハウジング1の間に、左右2列のコンタクト3-jが架設され、浮動ハウジング2の底部23の溝230に、導電樹脂部材5が装着され、固定ハウジング1のホルダ121に、アンカープレート4が装着されている。
【0035】
ここで、
図5(C)では、溝230を示すために、導電樹脂部材5の個数が6つとなっているが、実際には、底部23の下面の全面に導電樹脂部材5が装着されている。
【0036】
図5(A)に示すように、開口部10における固定ハウジング1の壁部11と浮動ハウジング2の壁部21との間には、浮動ハウジング2を前後にフローティングさせるための可動空間101があけられており、固定ハウジング1の壁部12と浮動ハウジング2の壁部22との間には、浮動ハウジング2を左右にフローティングさせるための可動空間102があけられている。コンタクト3-j(j=1~K)は、2本のコンタクト3-j(G)と2本のコンタクト3-j(S)を1つの組とし、グランド用2本の間に信号用2本が収まるような配列順で配列されている。
【0037】
図6に示すように、コンタクト3-jは、貫通孔220を介して接点部32をスロット20内に突出させ、弾性変形部38を可動空間102に収めるようにして、固定ハウジング1及び浮動ハウジング2に下側から圧入されている。コンタクト3-jの支持片部36は、スリット17-jに収められて支持されている。コンタクト3-jの支持片部37は、スリット26-jに収められて支持されている。
【0038】
コンタクト3-jの連結部387は、浮動ハウジング2の下面に接している。コンタクト3-jの端子部31は、固定ハウジング1の下面の下側に露出している。コンタクト3-jの端子部31は、電子基板のパッドにはんだ付けして固定される。隣り合うコンタクト3-jの間には、電気絶縁性部材の仕切りは無く、空気層が存在するだけである。
【0039】
図6に示すように、固定ハウジング1の内縁部15と浮動ハウジング2の外縁部25との間には、隙間120があいている。可動空間102における隙間120の下側において、壁部12の湾曲部14、及び壁部22の湾曲部24は、弾性変形部38の可撓部380の形状に倣って湾曲している。
【0040】
導電樹脂部材5の凸部53は、浮動ハウジング2の底部23の溝230に嵌っている。導電樹脂部材5の左側の2つの柱部59は、左側の2つのコンタクト3-j(G)に接触している。導電樹脂部材5の右側の2つの柱部59は、右側の2つのコンタクト3-j(G)に接触している。導電樹脂部材5を介して、4つのコンタクト3-j(G)が電気的に接続される。ホルダ121に装着されているアンカープレート4の突出部42は、固定ハウジング1の下面の下側まで延伸している。
【0041】
図1(B)、
図12(A)、
図12(B)、
図12(C)、及び
図12(D)に示すように、プラグユニット97は、ハウジング6、コンタクト7-j(j=1~K)、及びアンカープレート8を有する。
【0042】
図17(A)及び
図17(B)に示すように、ハウジング6は、ヘッダ62と、ベース部63とを有する。
【0043】
ヘッダ62は、ベース部63の下面から下側に突出している。ヘッダ62の左右の外側面には、それぞれ、K/2個のスリット66-jの列が設けられている。
【0044】
左側のスリット66-jは、右周壁、前周壁、及び後周壁に囲まれた断面コの字状をなしている。左側のスリット66-jの右側は開放されており、前周壁と後周壁は対向している。右側のスリット66-jは、左周壁、前周壁、及び後周壁に囲まれた断面コの字状をなしている。右側のスリット66-jの左側は開放されており、前周壁と後周壁は対向している。
【0045】
図17(B)に示すように、左側及び右側のスリット66-jの3つの周壁には、溝661が設けられている。前周壁の溝661は前側に、後周壁の溝661は後側に、左周壁の溝661は左側に、右周壁の溝661は右側に、それぞれ凹んでいる。
【0046】
ベース部63の上面における前後の端部の中央には、位置決めボス613が設けられている。位置決めボス613は、プラグユニット97を拡張基板に固定するときに拡張基板の位置決め孔に嵌め込まれるものである。ベース部63の前後の側面の上縁は、外縁部631として外側に拡がっている。外縁部631には、アンカープレート8を装着するためのホルダ632が設けられている。
【0047】
ベース部63におけるY方向の中心の左側と右側には、それぞれ、前後に並ぶK/2個の貫通孔67-jの列が設けられている。貫通孔67-jは、当該ベース部63を上下に貫通している。左側の貫通孔67-jは、左側のスリット66-jと連通しており、右側の貫通孔67-jは、右側のスリット66-jと連通している。
【0048】
左側及び右側の貫通孔67-jは、左周壁、右周壁、前周壁、及び後周壁に囲まれた断面矩形状をなしている。左側及び右側の貫通孔67-jにおける、左周壁と右周壁、及び前周壁と後周壁は、それぞれ対向している。貫通孔67-jの周壁は、スリット66-jの周壁と繋がっている。
【0049】
図15(A)に示すように、左側及び右側の貫通孔67-jの上端及び下端には、内側に括れた2つの保持部679及び678が設けられている。
【0050】
図17(B)に示すように、左右の貫通孔67-jの4つの周壁における2つの保持部679及び678を除いた部分には、溝672が設けられている。前周壁の溝672は前側に、後周壁の溝672は後側に、左周壁の溝672は左側に、右周壁の溝672は右側に、それぞれ凹んでいる。貫通孔67-jの溝672の向き及び深さは、スリット66-jの溝661の向き及び深さと同じである。
【0051】
コンタクト7-j(j=1~K)は、左右K/2個ずつのコンタクト7-jの列をなしている。
図18に示すように、コンタクト7-jは、一端側において上下方向に延在する直線部72と、他端側において左右方向に延在する端子部79と、これらの間に介在する連結部80とを有する。
【0052】
直線部72の側面における下端から上側に離れた位置には、外側に突出した爪部720がある。直線部72の上端は、その下の部分よりも僅かに幅厚になっている。また、この幅厚の部分には、長孔721が設けられている。
【0053】
図19に示すように、アンカープレート8は、2つの矩形片部81と、2つの矩形片部81の下端間に架け渡された架設部40と、2つの矩形片部81の上縁から上側に突出する突出部83とを有する。2つの矩形片部81の側面には、外側に突出した爪部812がある。
【0054】
ハウジング6、コンタクト7-j(j=1~K)、及びアンカープレート8は、次のようにして組み合わされている。コンタクト7-j(j=1~K)は、上側から、ハウジング6に圧入されている。コンタクト7-jの直線部72は、貫通孔67-jに挿入され、その先端側は貫通孔67-jを突き抜けてスリット66-jに保持されている。コンタクト7-jの端子部79は、ハウジング6の上面の上側に露出している。コンタクト7-jの端子部79は、拡張基板のパッドにはんだ付けして固定される。
【0055】
ハウジング6のホルダ632には、アンカープレート8が装着されている。アンカープレート8の突出部83は、ハウジング6の上端の上側まで延在している。コンタクト7-jの直線部72は、貫通孔67-j及びスリット66-jに沿って一直線状に延伸している。直線部72の爪部720のある部分は、下側の保持部678によって支持され、直線部72の幅厚の上端部は、上側の保持部679によって支持される。
【0056】
図3に示すように、プラグユニット97のヘッダ62とレセプタクルユニット93のスロット20が嵌合すると、プラグユニット97のコンタクト7-jの直線部72とレセプタクルユニット93のコンタクト3-jの接点部32が接触する。
【0057】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の前後方向の相対位置がずれている場合、コンタクト3-jが、直線部381と直線部382を逆側に傾けるようにして捻じれ、レセプタクルユニット93が開口部10内において前側又は後側に動く。これにより、前後方向の位置ずれが解消する。
【0058】
また、
図4(C)に示すように、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の左右方向の相対位置がずれている場合、左右のコンタクト3-jが、左右のうち一方の直線部381及び直線部382を広げ、もう一方の直線部381及び直線部382を狭めるようにして捻じれ、レセプタクルユニット93が開口部10内において左側又は右側に動く。
【0059】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態であるコネクタ100のプラグユニット97は、複数のコンタクト7-j(j=1~K)と、複数のコンタクト7-j(j=1~K)が挿入される複数の貫通孔67-j(j=1~K)が設けられたベース部63と、ベース部63から突出するヘッダ62であって、複数のコンタクト7-j(j=1~K)における貫通孔67-j(j=1~K)から当該ヘッダ62の側に露出した部分を保持する複数のスリット66-j(j=1~K)が設けられたヘッダ62とを有するハウジング6とを具備する。そして、コンタクト7-jにおける貫通孔67-jに挿入される部分とスリット66-jに保持される部分が一直線状をなしており、ベース部63における貫通孔67-jの上端及び下端には、コンタクト7-jの直線部72を保持する2つの保持部679及び678が設けられており、貫通孔67-jにおける2つの保持部679及び678の間の部分の周壁と直線部72との間の溝672により、両者間に隙間が形成されている。よって、コンタクト7-jの直線部72とそれ以外の折り曲げ部分との間のインピーダンスのばらつきがより小さくなる。従って、プラグユニット97のインピーダンス不整合を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に以下の変形を加えてもよい。
(1)上記実施形態において、プラグユニット97のコンタクト7-j(j=1~K)の列を1列にしてもよいし、3列以上にしてもよい。
【0061】
(2)上記実施形態において、アンカープレート8の個数は、2個である必要はなく、1個にしてもよいし、3個以上にしてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、左右の貫通孔67-jの4つの周壁における2つの保持部679及び678を除いた部分に、溝672が設けられていた。しかし、左右の貫通孔67-jの4つの周壁の全てに溝672を設ける必要はない。例えば、左右の貫通孔67-jの左右の2つの周壁にのみ溝672を設けてもよいし、前後の2つの周壁にのみ溝672を設けてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、左右のスリット66-jの3つの周壁に溝661が設けられていた。しかし、左右のスリット66-jの3つの周壁の全てに溝661を設ける必要はない。例えば、左右のスリット66-jにおける開放されている側と反対側の周壁にのみ溝661を設けてもよい。
【0064】
(5)上記実施形態において、コンタクト7-jの個数Kは、145個以上であってもよいし、143個以下であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 固定ハウジング
2 浮動ハウジング
3 コンタクト
4 アンカープレート
5 導電樹脂部材
6 ハウジング
7 コンタクト
8 アンカープレート
10 開口部
11 壁部
12 壁部
14 湾曲部
15 内縁部
17 スリット
20 スロット
21 壁部
22 壁部
23 底部
24 湾曲部
25 外縁部
26 スリット
31 端子部
32 接点部
36 支持片部
37 支持片部
38 弾性変形部
40 架設部
41 本体部
42 突出部
43 突出部
51 下板部
53 凸部
59 柱部
62 ヘッダ
63 ベース部
66 スリット
67 貫通孔
72 直線部
79 端子部
80 連結部
81 矩形片部
93 レセプタクルユニット
97 プラグユニット
100 コネクタ
101 可動空間
102 可動空間
111 凸部
112 中板
113 ボス
120 隙間
121 ホルダ
122 凸部
220 貫通孔
230 溝
361 爪部
380 可撓部
381 直線部
386 連結部
387 連結部
411 凸部
412 爪部
421 長孔
613 ボス
631 外縁部
632 ホルダ
661 溝
672 溝
720 爪部
721 長孔
812 爪部