(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】フラックス及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20241017BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K1/00 330E
(21)【出願番号】P 2024051165
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】楢原 慎二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】梶川 泰弘
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/044801(WO,A1)
【文献】特開2018-161673(JP,A)
【文献】特開2016-043408(JP,A)
【文献】特開2020-025973(JP,A)
【文献】特表2004-530740(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107825001(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/36-35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂
、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤
、及び活性剤を含有し、
前記エポキシ樹脂の含有量と、前記硬化剤の含有量との質量比が、エポキシ樹脂/硬化剤で表される質量比として、5以上であるフラックスであって、
前記フラックスは、さらに、カップリング剤を含有し、
前記カップリング剤は、メトキシ基を有する化合物を含
み、
前記化合物は、下記一般式(C-1)で表される化合物であり、
前記エポキシ樹脂の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、50質量%以上95質量%以下である、フラックス。
【化1】
[式中、R
c1
は、炭素原子数1~6のアルキル基又は水素原子を表す。R
c2
は、炭素原子数1~10のアルキレン基又は単結合を表す。ただし、アルキレン基を構成するメチレン基は酸素原子に置換されていてもよい。R
c3
は、エポキシ基含有基又はチオール基を表す。n
c
は、1~3の整数である。m
c
は、0~2の整数である。n
c
+m
c
=3である。]
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、ナフタレン型エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂を含み、
ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量と、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有量との質量比が、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ナフタレン型エポキシ樹脂で表される質量比として、0.70以上1.5以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項5】
前記硬化剤は、融点が190℃以上であるアミンを含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項6】
前記硬化剤は、グアナミン類を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項7】
さらに、活性剤を含有する、請求項1に記載のフラックス。
【請求項8】
はんだボールを有する部品と、基板とを接合するために用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のフラックス。
【請求項9】
はんだボールを有する部品の前記はんだボールを、請求項1~7のいずれか一項に記載のフラックスで処理する工程と、
前記はんだボールを有する部品と、基板とをはんだ付けして、接合体を得る工程と、を有する、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対する部品の固定、及び、基板に対する部品の電気的な接続は、一般に、はんだ付けにより行われる。はんだ付けにおいては、フラックス、はんだ粉末、並びに、フラックス及びはんだ粉末を混合したソルダペーストが用いられる。
【0003】
フラックスは、はんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面及びはんだに存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、両者の間に金属間化合物が形成されるようになり、強固な接合が得られる。
【0004】
ソルダペーストを使用したはんだ付けでは、まず、基板にソルダペーストが印刷された後、部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で、部品が搭載された基板が加熱される。これにより、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末は溶融し、部品が基板に対してはんだ付けされ、接合体が得られる。
【0005】
ところで、はんだボールが搭載されたボールグリッドアレイを基板に接合する際には、接合強度を高めるために、ボールグリッドアレイと基板とをはんだ付けした後、接合箇所の周囲にアンダーフィルを充填し、次いで、アンダーフィルを硬化させて、基板に対してボールグリッドアレイを固着する場合がある。
例えば、特許文献1には、アンダーフィルと相溶することができ、熱硬化性樹脂を含有するフラックスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の熱硬化性フラックス及びアンダーフィルを用いる場合、アンダーフィルを接合箇所の周囲に充填する工程、アンダーフィルを硬化する工程が必要となり、接合体の製造効率が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、発明者らは、アンダーフィルを用いずに、エポキシ樹脂を含有するフラックスを用いたはんだ付けについて検討した。
発明者らは、エポキシ樹脂を含有する従来のフラックスでは、リフロー後に、接合部におけるはんだとフラックスとの密着性が低いため、接合強度が低下するという問題があることを見出した。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、アンダーフィルを用いなくても、はんだ接合部の接合強度を高められるフラックス、及び、そのフラックスを用いた接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]エポキシ樹脂及び硬化剤を含有し、前記エポキシ樹脂の含有量と、前記硬化剤の含有量との質量比が、エポキシ樹脂/硬化剤で表される質量比として、5以上であるフラックスであって、前記フラックスは、さらに、カップリング剤を含有し、前記カップリング剤は、メトキシ基を有する化合物を含む、フラックス。
[2]前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、[1]に記載のフラックス。
[3]前記エポキシ樹脂は、ナフタレン型エポキシ樹脂を含む、[1]又は[2]に記載のフラックス。
[4]前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂を含み、ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量と、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有量との質量比が、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ナフタレン型エポキシ樹脂で表される質量比として、0.70以上1.5以下である、[1]に記載のフラックス。
[5]前記硬化剤は、融点が190℃以上であるアミンを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のフラックス。
[6]前記硬化剤は、グアナミン類を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のフラックス。
[7]さらに、活性剤を含有する、[1]~[6]に記載のフラックス。
[8]はんだボールを有する部品と、基板とを接合するために用いられる、[1]~[7]のいずれかに記載のフラックス。
[9]はんだボールを有する部品の前記はんだボールを、[1]~[7]のいずれかに記載のフラックスで処理する工程と、前記はんだボールを有する部品と、基板とをはんだ付けして、接合体を得る工程と、を有する、接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンダーフィルを用いなくても、はんだ接合部の接合強度を高められるフラックス、及び、そのフラックスを用いた接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】スキージ1を用いて、フラックス膜3を作製する様子を模式的に示した図である。
【
図2】部品6のはんだボール4を、フラックス膜3に接触させる様子を模式的に示した図である。
【
図3】部品6を基板7の上に配置する様子を模式的に示した図である。
【
図4】部品6と基板7とを接合して、接合体10を得る様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(フラックス)
第1の態様にかかるフラックスの一実施形態について説明する。
本実施形態に係るフラックスは、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する。
エポキシ樹脂の含有量と、硬化剤の含有量との質量比は、エポキシ樹脂/硬化剤で表される質量比として、5以上である。
本実施形態に係るフラックスは、さらに、カップリング剤を含有する。
カップリング剤は、メトキシ基を有する化合物を含む。
【0014】
本実施形態に係るフラックスは、エポキシ樹脂、硬化剤、メトキシ基を有する化合物を含むカップリング剤を含有することにより、アンダーフィルを用いなくても、はんだ接合部の接合強度を高めることができる。
【0015】
本実施形態に係るフラックスは、はんだボールを有する部品と、基板とをはんだ付けして、接合体を得る工程に好適に用いられる。
この接合体は、
図1~
図4に例示するような工程により製造される。まず、
図1に例示するように、スキージ1を用いて、テーブル2の上でフラックス3を延展してフラックス膜3を作製する。次いで、
図2に例示するように、チップ5にはんだボール4が接合された部品6を準備し、部品6のはんだボール4をフラックス膜3に接触させる。次いで、
図3に例示するように、フラックス3で処理されたはんだボール4を有する電子部品6を、基板7の上に配置する。次いで、
図4に例示するように、電子部品6が配置された基板7に対してリフローを行い、はんだボール4及びフラックス残渣9により接合された、接合体10を得る。
【0016】
フラックス膜3を作製する工程では、長時間にわたってスキージングをしても、連続してそのフラックスを使用できることが必要とされる。本実施形態に係るフラックスは、長時間のスキージング後でも連続して使用できるものであり、はんだボールをチップに搭載するために好適に用いられる。
【0017】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール骨格を含む構成単位を有するエポキシ樹脂であればよい。
ビスフェノール型としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールAP型、ビスフェノールAF型、ビスフェノールB型、ビスフェノールBP型、ビスフェノールC型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型、ビスフェノールG型、ビスフェノールM型、ビスフェノールS型、ビスフェノールP型、ビスフェノールPH型、ビスフェノールTMC型、ビスフェノールZ型などが挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、ナフタレン骨格を含む構成単位を有するエポキシ樹脂であればよい。
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、1,3-ジグリシジルオキシナフタレン、1,4-ジグリシジルオキシナフタレン、1,5-ジグリシジルオキシナフタレン、2,3-ジグリシジルオキシナフタレン、2,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1-フェニル-メタン、2,2’-グリシジルオキシ-1,1’-ビナフタレン、2,2’,7-トリグリシジルオキシ-1,1’-ビナフタレン、2,2’,7,7’-テトラグリシジルオキシ-1,1’-ビナフタレン等のナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ナフタレン型エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック骨格を含む構成単位を有するエポキシ樹脂であればよく、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂を含有することがより好ましい。
エポキシ樹脂がビスフェノール型エポキシ樹脂を含有することにより、フラックスの粘度が高くなり過ぎることを抑制しやすくなり、フラックスの連続使用時間を長くしやすくなる。
エポキシ樹脂がナフタレン型エポキシ樹脂を含有することにより、ガラス転移温度を高めやすくなる。
【0022】
エポキシ樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量としては、200~500が好ましく、300~400がより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、100~250g/eq.が好ましく、150~200g/eq.がより好ましい。
【0023】
本実施形態に係るフラックスにおけるエポキシ樹脂の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、50質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましく、70質量%以上90質量%以下が更に好ましい。
エポキシ樹脂の含有量が前記範囲内の下限値以上であることにより、はんだ接合の強度を高めやすくなる。
【0024】
本実施形態に係るフラックスがビスフェノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂を含む場合、ビスフェノール型エポキシ樹脂の含有量と、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有量との質量比は、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ナフタレン型エポキシ樹脂で表される質量比として、0.01以上100以下であってもよく、0.10以上4以下であることが好ましく、0.70以上1.5以下であることがより好ましく、0.73以上1.29以下であってもよい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂/ナフタレン型エポキシ樹脂の質量比が前記範囲の下限値以上であることにより、フラックスの粘度が高くなり過ぎることを抑制しやすくなり、フラックスの連続使用時間を長くしやすくなる。前記範囲の上限値以下であることにより、ガラス転移温度が高めやすくなる。
【0025】
<硬化剤>
本実施形態に係るフラックスに含まれる硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させる作用を有する化合物である。
硬化剤としては、本発明が効果を奏する限り特に限定されず、例えば、グアナミン類、イミダゾール類、酸無水物、グアニジン類、アミノグアニジン類、ウレア類、変性ポリアミン及びこれらの誘導体、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯体、有機酸ヒドラジド、メラミン、アミンアダクトト系硬化剤、ビニルエーテルブロックカルボン酸、オニウム塩、イソシアネート系硬化剤、フェノール類等が挙げられる。
【0026】
グアナミン類としては、下記一般式(H-1)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化1】
[式中、R
hは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
【0028】
前記一般式(H-1)において、Rhにおけるアルキル基としては、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましい。
前記一般式(H-1)において、Rhにおけるアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0029】
グアナミン類としては、ベンゾグアナミン及びアセトグアナミンからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0030】
イミダゾール類としては、複素五員環の1位及び3位が窒素原子である複素五員環を有する化合物であればよい。
【0031】
イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、エポキシ-イミダゾールアダクト等が挙げられる。
【0032】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、3,3‘,4,4’-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、テトラプロペニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0033】
硬化剤の融点は、例えば、150~400℃であってもよく、190℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることが更に好ましく、220℃以上であることが特に好ましい。
硬化剤の融点が前記下限値以上であることにより、エポキシ樹脂と硬化剤とが過剰に反応することを抑制しやすくなり、連続使用時間を長くしやすくなる。
【0034】
本明細書において、融点とは、固体が融解し液体になる時の温度を意味する。対象の化合物の融点は、例えば、「岩波 理化学辞典第5版」に記載された融点であってもよい。あるいは、対象の化合物の融点は、JIS K 0064:1992に準拠した方法により測定した融点であってもよい。
【0035】
硬化剤としては、グアナミン類、イミダゾール類及び酸無水物からなる群より選択される1種以上が好ましく、グアナミン類及びイミダゾール類からなる群より選択される1種以上がより好ましく、グアナミン類が更に好ましい。
前記フラックスがグアナミン類を含有することにより、エポキシ樹脂と硬化剤とが過剰に反応することを抑制しやすくなり、連続使用時間を長くしやすくなる。
【0036】
本実施形態に係るフラックスにおける硬化剤の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0037】
本実施形態に係るフラックスがグアナミン類を含有する場合、フラックスにおけるグアナミンの含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
本実施形態に係るフラックスがイミダゾール類を含有する場合、フラックスにおけるイミダゾール類の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
本実施形態に係るフラックスが酸無水物を含有する場合、フラックスにおける酸無水物の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0038】
本実施形態に係るフラックスにおいて、エポキシ樹脂の含有量と、前記硬化剤の含有量との質量比は、エポキシ樹脂/硬化剤で表される質量比として、5以上であり、6以上であることが好ましい。
エポキシ樹脂/硬化剤で表される質量比の上限値は特に限定されないが、例えば、50であってもよいし、30であってもよい。
【0039】
<特定カップリング剤>
本実施形態に係るフラックスはカップリング剤を含有し、カップリング剤は特定カップリング剤を含む。
特定カップリング剤は、メトキシ基を有する化合物である。
特定カップリング剤としては、シラン化合物が好ましい。
特定カップリング剤は、エポキシ基又はチオール基を有することが好ましい。
【0040】
特定カップリング剤としては、下記一般式(C-1)で表される化合物が好ましい。
【0041】
【化2】
[式中、R
c1は、炭素原子数1~6のアルキル基又は水素原子を表す。R
c2は、炭素原子数1~10のアルキレン基又は単結合を表す。ただし、アルキレン基を構成するメチレン基は酸素原子に置換されていてもよい。R
c3は、エポキシ基含有基又はチオール基を表す。n
cは、1~3の整数である。m
cは、0~2の整数である。n
c+m
c=3である。]
【0042】
Rc1におけるアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
Rc1は、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0043】
Rc2におけるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
Rc2は、炭素原子数1~7のアルキレン基であることが好ましい。
【0044】
Rc3におけるエポキシ基含有基としては、例えば、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基とは、三員環エーテルであるオキサシクロプロパン構造を有する脂環式基であって、具体的には、脂環式基とオキサシクロプロパン構造とを有する基である。
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中のRc2に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合することが好ましい。
【0045】
特定カップリング剤は、下記化学式(C-1-1)~(C-1-4)でそれぞれ表される化合物であることが好ましい。
【0046】
【0047】
前記フラックス中、特定カップリング剤の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることが更に好ましい。
【0048】
<その他成分>
本実施形態に係るフラックスは、エポキシ樹脂、硬化剤及びカップリング剤以外に、必要に応じてその他成分を含んでもよい。
その他成分としては、活性剤、チキソ剤、エポキシ樹脂以外の樹脂成分(その他樹脂)、金属不活性化剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤等が挙げられる。
【0049】
≪活性剤≫
活性剤としては、例えば、有機酸、アミン、ハロゲン化合物、有機リン化合物等が挙げられる。
【0050】
・有機酸
有機酸としては、例えば、カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、トリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0051】
脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、イソペラルゴン酸、カプリン酸、カプロレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ウンデカン酸、リンデル酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、ヒドノカーピン酸、マーガリン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、モロクチン酸、エレオステアリン酸、タリリン酸、バクセン酸、リシノレイン酸、ベルノリン酸、ステルクリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、グリコール酸、チオグリコール酸等が挙げられる。
【0052】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、酒石酸、2,4-ジエチルグルタル酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ピコリン酸、p-アニス酸、m-アニス酸、o-アニス酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、2-キノリンカルボン酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フェニルコハク酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸等の芳香族ジカルボン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、3-ヒドロキシピコリン酸等が挙げられる。
【0053】
トリカルボン酸としては、例えば、クエン酸等が挙げられる。
【0054】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。
【0055】
また、カルボン酸としては、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0056】
また、カルボン酸としては、多塩基性カルボン酸が挙げられる。
多塩基性カルボン酸としては、例えば、ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸等が挙げられる。
【0057】
有機スルホン酸としては、例えば、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。脂肪族スルホン酸としては、例えば、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸等が挙げられる。
【0058】
有機酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
有機酸としては、カルボン酸が好ましく、ジカルボン酸がより好ましい。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸及びアゼライン酸からなる群より選択される1種以上が好ましく、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸及びスベリン酸からなる群より選択される1種以上がより好ましく、グルタル酸、アジピン酸及びピメリン酸からなる群より選択される1種以上がさらに好ましい。
【0059】
・アミン
アミンとしては、例えば、アゾール類(ただし、硬化剤として機能し得るイミダゾール類を除く)、グアニジン類、アミノアルコール、アルキルアミン化合物、アミンポリオキシアルキレン付加体等が挙げられる。
【0060】
アゾール類としては、例えば、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン、1,2,4-トリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1-(1’,2’-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0061】
グアニジン類としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0062】
アミノアルコールとしては、例えば、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、ビス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2-ヒドロキシプロピル)アミン等が挙げられる。
【0063】
アルキルアミン化合物としては、例えば、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0064】
アミンポリオキシアルキレン付加体としては、例えば、末端ジアミンポリアルキレングリコール、脂肪族アミンポリオキシアルキレン付加体、芳香族アミンポリオキシアルキレン付加体、多価アミンポリオキシアルキレン付加体等が挙げられる。
アミンポリオキシアルキレン付加体に付加されているアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0065】
末端ジアミンポリアルキレングリコールは、ポリアルキレングリコールの両末端がアミノ化された化合物である。
末端ジアミンポリアルキレングリコールとしては、例えば、末端ジアミンポリエチレングリコール、末端ジアミンポリプロピレングリコール、末端ジアミンポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体等が挙げられる。
末端ジアミンポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体としては、例えば、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合物ビス(2-アミノプロピル)エーテル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合物ビス(2-アミノエチル)エーテルが挙げられる。
【0066】
脂肪族アミンポリオキシアルキレン付加体、芳香族アミンポリオキシアルキレン付加体、及び多価アミンポリオキシアルキレン付加体は、アミンの窒素原子にポリオキシアルキレン基が結合したものである。前記アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、硬化牛脂アミン、牛脂プロピルジアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、ピリミジン-2,4,5,6-テトラアミン等が挙げられる。
【0067】
ハロゲン化合物としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0068】
活性剤としては、有機酸が好ましい。
活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
フラックス中の、活性剤の含有量としては、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0069】
≪チキソ剤≫
チキソ剤としては、例えば、エステル系チキソ剤、アミド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。
【0070】
エステル系チキソ剤としては、例えばエステル化合物が挙げられ、具体的には硬化ひまし油、ミリスチン酸エチル等が挙げられる。
【0071】
アミド系チキソ剤としては、例えば、モノアミド、ビスアミド、ポリアミドが挙げられる。
モノアミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、4-メチルベンズアミド(p-トルアミド)、p-トルエンメタンアミド、芳香族アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、置換アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールアミド、脂肪酸エステルアミド等が挙げられる。
ビスアミドとしては、例えば、エチレンビス脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6~24)アミド、エチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6~24)アミド、ヘキサメチレンビス脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6~24)アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素数C6~24)アミド、芳香族ビスアミド等が挙げられる。前記ビスアミドの原料である脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸(炭素数C18)、オレイン酸(炭素数C18)、ラウリン酸(炭素数C12)等が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、飽和脂肪酸ポリアミド、不飽和脂肪酸ポリアミド、芳香族ポリアミド、1,2,3-プロパントリカルボン酸トリス(2-メチルシクロヘキシルアミド)、環状アミドオリゴマー、非環状アミドオリゴマー等のポリアミドが挙げられる。
【0072】
前記環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー等が挙げられる。
【0073】
また、前記非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸とモノアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合等が挙げられる。モノカルボン酸又はモノアミンを含むアミドオリゴマーであると、モノカルボン酸、モノアミンがターミナル分子(terminal molecules)として機能し、分子量を小さくした非環状アミドオリゴマーとなる。また、非環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸と、ジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミド化合物である場合、非環状高分子系アミドポリマーとなる。更に、非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とモノアミンとが非環状に縮合したアミドオリゴマーも含まれる。
【0074】
ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、(D-)ソルビトール、モノベンジリデン(-D-)ソルビトール、モノ(4-メチルベンジリデン)-(D-)ソルビトール等が挙げられる。
【0075】
チキソ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
チキソ剤としては、エステル系チキソ剤及びアミド系チキソ剤からなる群より選択される1種以上が好ましい。
フラックス中の、チキソ剤の含有量としては、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
【0076】
≪エポキシ樹脂以外の樹脂成分(その他樹脂)≫
本実施形態に係るフラックスは、本発明の効果が奏される限り、エポキシ樹脂以外の樹脂成分(その他樹脂)を含んでもよいし、その他樹脂を含まなくてもよい。
その他樹脂としては、例えば、ロジン、ロジン以外の樹脂等が挙げられる。
【0077】
本明細書において、「ロジン」とは、アビエチン酸を主成分とする、アビエチン酸とこの異性体との混合物を含む天然樹脂、及び天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体と呼ぶ場合がある)を包含する。
ロジン誘導体としては、例えば、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。
変性ロジンとしては、水添ロジン、重合ロジン、重合水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、酸変性水添ロジン、無水酸変性水添ロジン、酸変性不均化ロジン、無水酸変性不均化ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物、ロジンアルコール、ロジンアミン、水添ロジンアルコール、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジン石鹸、水添ロジン石鹸、酸変性ロジン石鹸等が挙げられる。
【0078】
ロジン以外の樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル-ポリエチレン共重合樹脂等が挙げられる。
変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等が挙げられる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
その他樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
≪金属不活性化剤≫
金属不活性化剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、窒素化合物等が挙げられる。
ここでいう「金属不活性化剤」とは、ある種の化合物との接触により金属が劣化することを防止する性能を有する化合物をいう。
【0080】
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノールのオルト位の少なくとも一方に嵩高い置換基(例えばt-ブチル基等の分岐状又は環状アルキル基)を有するフェノール系化合物をいう。
ヒンダードフェノール系化合物としては、特に限定されず、例えば、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ビス(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’-ビス[2-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル]オキサミド、下記化学式で表される化合物等が挙げられる。
【0081】
【化4】
(式中、Zは、置換されてもよいアルキレン基である。R
81及びR
82は、それぞれ独立して、置換されてもよい、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基又はヘテロシクロアルキル基である。R
83及びR
84は、それぞれ独立して、置換されてもよいアルキル基である。)
【0082】
金属不活性化剤における窒素化合物としては、例えば、ヒドラジド系窒素化合物、アミド系窒素化合物、トリアゾール系窒素化合物、メラミン系窒素化合物等が挙げられる。
【0083】
ヒドラジド系窒素化合物としては、ヒドラジド骨格を有する窒素化合物であればよく、ドデカン二酸ビス[N2-(2ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、デカンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N-サリチリデン-N’-サリチルヒドラジド、m-ニトロベンズヒドラジド、3-アミノフタルヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、オキザロビス(2-ヒドロキシ-5-オクチルベンジリデンヒドラジド)、N’-ベンゾイルピロリドンカルボン酸ヒドラジド、N,N’-ビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン等が挙げられる。
【0084】
アミド系窒素化合物としては、アミド骨格を有する窒素化合物であればよく、N,N’-ビス{2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシル]エチル}オキサミド等が挙げられる。
【0085】
トリアゾール系窒素化合物としては、トリアゾール骨格を有する窒素化合物であればよく、N-(2H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)サリチルアミド、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
【0086】
メラミン系窒素化合物としては、メラミン骨格を有する窒素化合物であればよく、メラミン、メラミン誘導体等が挙げられる。より具体的には、例えば、トリスアミノトリアジン、アルキル化トリスアミノトリアジン、アルコキシアルキル化トリスアミノトリアジン、メラミン、アルキル化メラミン、アルコキシアルキル化メラミン、N2-ブチルメラミン、N2,N2-ジエチルメラミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン等が挙げられる。
金属不活性化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
≪酸化防止剤≫
酸化防止剤としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ビス(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン付加体が挙げられる。
ポリオキシアルキレン付加体が由来するアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン付加体としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、エチレンオキサイド-レゾルシン共重合物、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール類、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミド等が挙げられる。
あるいは、ノニオン界面活性剤としては、アルコールのポリオキシアルキレン付加体が挙げられる。前記アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、多価アルコールが挙げられる。
【0089】
以上説明した本実施形態に係るフラックスは、メトキシ基を有する特定カップリング剤を含有することにより、アンダーフィルを用いなくても、はんだ接合部の接合強度を高められる。また、低温のリフロー(例えば、180℃)であっても、接合強度が高められる。
かかる効果が得られる理由は定かではないが、特定カップリング剤のメトキシ基がはんだに対して接着することにより、はんだとフラックスとの間の密着性が高められ、その結果、接合強度が高められると推測される。
実施形態に係るフラックスによれば、アンダーフィルを充填、硬化する工程を経ずにはんだ付けすることができ、カーボンニュートラルへの貢献が可能となる。
【0090】
第1の態様に係るフラックスは、はんだボールを有する部品と、基板とを接合するために好適に用いられる。
【0091】
(接合体の製造方法)
第2の態様に係る接合体の製造方法は、以下の工程(a)及び工程(b)を有する。
工程(a):
はんだボールを有する部品のはんだボールを、第1の態様に係るフラックスで処理する工程
工程(b):
前記はんだボールを有する部品と、基板とをはんだ付けして、接合体を得る工程
以下、第2の態様にかかる接合体の製造方法の一実施形態について説明する。
【0092】
<工程(a)>
工程(a)では、はんだボールを有する部品のはんだボールを、第1の態様に係るフラックスで処理する。はんだボールを有する部品としては、例えば、ボールグリッドアレイが挙げられる。
図1を例示して上記で説明したように、以下のような手順で、フラックスではんだボールを処理してもよい。
【0093】
図1に例示されるように、まず、スキージ1を用いて、テーブル2の上でフラックス3を延展してフラックス膜3を作製する。次いで、
図2に提示するように、部品6のはんだボール4にフラックス膜3を接触させる。
【0094】
はんだボールの原料であるはんだ合金としては、公知の組成のはんだ合金を使用することができる。
はんだ合金としては、例えば、Sn単体のはんだ合金、Sn系はんだ合金、Sn-Bi系はんだ合金等が挙げられる。
Sn系はんだ合金は、Snに、Sb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、Pb及びPからなる群より選択される一種以上を添加して製造されるはんだ合金である。Sn系はんだ合金に含まれるSn以外の元素は、任意に選択できる。
【0095】
例えば、はんだ合金は、Sn単体のはんだ、又は、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
あるいは、はんだ合金は、Sn-Pb系、あるいは、Sn-Pb系にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Pbを含まないはんだ合金が好ましい。
【0096】
<工程(b)>
工程(b)では、工程(a)で得られた、フラックスで処理されたはんだボールを有する部品と、基板とをはんだ付けして、接合体を得る。
【0097】
工程(b)では、チップ5にはんだボール4が接合された部品6を準備し、
図3に例示するように、フラックス3で処理されたはんだボール4を有する部品6を、基板7の上に配置する。次いで、部品6が配置された基板7を加熱することにより、部品6のはんだボール4と、基板7の電極8とが接合される。その結果、はんだボール4及びフラックス残渣9を介して部品6と基板7とが接合された、接合体10が得られる。
部品及び基板の加熱温度としては、235~270℃が好ましく、240~260℃がより好ましい。
【0098】
以上説明した本実施形態に係る接合体の製造方法によれば、第1の態様に係るフラックスを用いるため、接合強度が高められた、接合体を得ることができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
<フラックスの調製>
(実施例1~20、比較例1~3)
表1~4に示す組成で実施例及び比較例の各フラックスを調合した。使用した原料の成分を以下に示した。表1~4における含有量は、フラックスの全質量を100質量%とした場合の質量%であり、空欄は0質量%を意味する。
【0101】
エポキシ樹脂:
ビスフェノール型エポキシ樹脂混合物として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂との混合物を用いた。
ナフタレン型エポキシ樹脂として、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンを用いた。
【0102】
硬化剤:
ベンゾグアナミン(228℃)、アセトグアナミン(275℃)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(193℃)、メチル-テトラヒドロ無水フタル酸。かっこ内は、融点を表す。
【0103】
カップリング剤:
特定カップリング剤(1)~(4)として、それぞれ、下記化学式(C-1-1)~(C1-4)で表される化合物を用いた。
その他カップリング剤(1)~(2)として、それぞれ、下記化学式(C-2-1)~(C-2-2)で表される化合物を用いた。
【0104】
【0105】
【0106】
・チキソ剤
ポリアミドは、次の方法により得られたものを用いた。
12-ヒドロキシステアリン酸とドデカン二酸を加えて約100℃まで加熱し、その後ヘキサメチレンジアミンを加えて約220℃まで加熱して3時間保持し、調製例1のポリアミドを得た。 原料として用いた、ドデカン二酸をXモル、12-ヒドロキシステアリン酸をYモル、ヘキサメチレンジアミンをZモルとする。原料のモル数は、2Z=2X+Yの関係を満たすものであった。
硬化ひまし油
【0107】
・活性剤
グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、3級アミン
【0108】
下記の<評価>に記載した評価方法にしたがって、≪シェア強度の評価≫、≪粘度の評価≫、≪濡れ性の評価≫、≪連続使用時間の評価≫、≪ガラス転移温度の評価≫を行った。これらの評価結果を表1~4に示した。
【0109】
<評価>
≪シェア強度の評価≫
(1)評価方法
メタルマスク(開口部:サイズφ0.6mm、厚さ0.02mm)を用いて、各例のフラックスをセラミックプレートの上に印刷した。次いで、印刷されたフラックスの上に、はんだボール(96.5Sn-3.0Ag-0.5Cu(数字は質量%を意味する)、直径0.3mm;M705、千住金属工業株式会社製)を載置した。次いで、はんだボールが搭載されたセラミックプレートを、ホットプレートを用いて、180℃で30分間、加熱した。
次いで、高速シェア試験装置(DAGE-Series 4000HS)を用いて、シェア速度1000μm/s、シェア高さ30μmに設定し、シェア強度を測定した。シェア強度測定値に基づき、以下の判定基準により、はんだボールとセラミックプレートとの間におけるシェア強度を評価した。
【0110】
(2)判定基準
A シェア強度が5.88N以上であった。
B シェア強度が2.94N以上5.88未満であった。
C シェア強度が2.94N未満であった
評価Aを合格とし、評価B~Cを不合格とした。
【0111】
≪粘度の評価≫
(1)評価方法
粘度は粘度計(株式会社マルコム製、PCU-205)を用いて測定した。まず、各例のフラックス100~150gをサンプルポットに入れた。フラックスの温度を25℃に設定し、10rpmで3分間、3rpmで6分間、4rpmで3分間、5rpmで3分間、10rpmで3分間の順に攪拌し、攪拌した直後の粘度を測定した。
【0112】
(2)判定基準
A 粘度が20Pa・s以下であった。
B 粘度が20Pa・s超40Pa・s以下であった。
C 粘度が40Pa・s超であった。
【0113】
≪濡れ性の評価≫
(1)評価方法
メニスコグラフ試験は、JIS Z 3197(2021) 8.3.1.2「ウエッティングバランス試験」に準拠して行った。
ベア銅板(幅5mm×長さ25mm×厚さ0.5mm)に対して、各例のフラックスを塗布した。フラックスを塗布した銅板を、120℃で15分間、大気雰囲気で加熱処理して、試験板を得た。このような試験板を、各実施例及び各比較例のそれぞれについて、5枚ずつ用意した。
得られた試験板を、それぞれ、はんだ槽に浸漬させ、ゼロクロスタイム(sec)を得た。ここで、試験装置としてSolder Checker SAT-5200(RHESCA社製)を用い、はんだとして96.5Sn-3.0Ag-0.5Cu(数値は質量%、M705、千住金属工業株式会社製)を用いて、次のように評価した。各実施例及び各比較例の5枚の試験板のゼロクロスタイム(sec)の平均値により、はんだ濡れ性を評価した。試験条件は、以下のように設定した。
はんだ槽への浸漬速度:10mm/sec
はんだ槽への浸漬深さ:3mm
はんだ槽への浸漬時間:10sec
はんだ槽温度:250℃
ゼロクロスタイム(sec)の平均値が短いほど、濡れ速度は速くなり、はんだ濡れ性が良いことを意味する。ゼロクロスタイムに基づき、以下の判定基準により、濡れ性を評価した。
【0114】
(2)判定基準
A 2.0sec以下
B 2.0sec超4.0sec未満
C 4.0sec以上
【0115】
≪連続使用時間の評価≫
(1)評価方法
試験装置(澁谷工業株式会社製、ハンダボールマウンタSBM370)を用いて、フラックスを連続してスキージングした。スキージング速度を0.15~0.16m/秒、スキージング回数を6回/分、テスト時の温度を23~26℃、テスト時間を24時間に設定し、1時間毎にスキージングした各例のフラックスの粘度を測定した。次いで、各例のフラックスの粘度について、スキージング開始直後の粘度と比べて5Pa・s上昇するまでの時間を、連続使用時間とした。
【0116】
(2)判定基準
A 連続使用時間が10時間以上であった。
B 連続使用時間が5時間以上10時間未満であった。
C 連続使用時間が5時間未満であった。
【0117】
≪ガラス転移温度の評価≫
(1)評価方法
各例のフラックスを、170℃で2時間、静置することにより硬化させて、各例の試験片(18mm×5mm×5mm)を作製した。熱機械分析装置(TMA、HITACHI社製、SAT-5200)を用いて、各例の試験片について、線膨張係数の測定値に基づき、ガラス転移温度を算出した。
ガラス転移温度は、線膨張係数の測定値が急激に変化したときの温度とした。線膨張係数の測定では、開始温度を0℃に、測定温度範囲を0~200℃に、昇温速度を5℃/minに設定した。
【0118】
(2)判定基準
A ガラス転移温度が110℃以上であった。
B ガラス転移温度が90℃以上110℃未満であった。
C ガラス転移温度が90℃未満であった。
【0119】
【0120】
表1に示すように、特定カップリング剤を含有する実施例1~4のフラックスは、特定カップリング剤を含有しない比較例1~3のフラックスに比べて、シェア強度が高められていた。
【0121】
【0122】
表2に示すように、活性剤を含有する実施例7~10のフラックスは、濡れ性が十分であった。
【0123】
【0124】
表3に示すように、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ナフタレン型エポキシ樹脂で表される質量比が0.70以上1.5以下である実施例13、14のフラックスは、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ナフタレン型エポキシ樹脂で表される質量比が0.70未満又は1.5超である実施例11、12、15、16と比べて、粘度の評価、連続使用時間の評価、ガラス転移温度の評価が優れていた。
【0125】
【0126】
表4に示すように、グアナミン類を含有する実施例17、20は、グアナミン類以外の硬化剤を含有する実施例18、19と比べて、連続使用時間の評価、ガラス転移温度の評価が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、アンダーフィルを用いなくても、はんだ接合部の接合強度を高められるフラックス、及び、そのフラックスを用いた接合体の製造方法を提供することができる。このフラックスは、はんだボールをチップに搭載するために好適に用いられる。
【符号の説明】
【0128】
1 スキージ
2 テーブル
3 フラックス(フラックス膜)
4 はんだボール
5 チップ
6 部品
7 基板
8 電極
9 フラックス残渣
10 接合体
【要約】
【課題】アンダーフィルを用いなくても、はんだ接合部の接合強度を高められるフラックス、及び、そのフラックスを用いた接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有するフラックスを採用する。エポキシ樹脂の含有量と、硬化剤の含有量との質量比は、エポキシ樹脂/硬化剤で表される質量比として、5以上である。フラックスは、さらに、カップリング剤を含有する。カップリング剤は、メトキシ基を有する化合物を含む。
【選択図】なし