(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】制御装置、プリンタ、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B41J2/01 201
(21)【出願番号】P 2020197261
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147039(JP,A)
【文献】特開2014-113690(JP,A)
【文献】特開2009-274233(JP,A)
【文献】特開2010-260338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドにインクを吐出させて印刷媒体にドットを形成するヘッド駆動部と、前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を移動方向に相対的に移動させる移動部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、
前記移動部による前記印刷媒体の移動と、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する複数回の部分印刷とを、対象画像データを用いて前記印刷実行部に実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させる印刷制御部、
を備え、
前記印刷制御部は、
第1の部分印刷を前記印刷実行部に実行させ、
第2の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる、ように構成されており、
前記印刷媒体上において、前記第1の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第1対象範囲と、前記第2の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第2対象範囲とは、それぞれの端部が互いに重なる重畳範囲を形成しており、
前記第1対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない非重畳範囲である第1非重畳範囲を含み、
前記第2対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない前記非重畳範囲である第2非重畳範囲を含み、
前記印刷制御部は、
前記対象画像データのうち前記非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して、非重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記非重畳範囲の画像を印刷させ、
前記対象画像データのうち前記重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して、前記非重畳範囲処理とは異なる重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記重畳範囲の画像を印刷させる、ように構成されており、
前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、前記重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理を含
み、
前記非重畳範囲処理は、前記非重畳範囲データを用いて、画素毎に前記ドットのサイズを示すドットデータであって前記非重畳範囲内の画像を示す非重畳範囲ドットデータを生成する非重畳範囲ドットデータ生成処理を含み、
前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データを用いて、前記重畳範囲内の画像を示すドットデータである重畳範囲ドットデータを生成する重畳範囲ドットデータ生成処理を含み、
前記非重畳範囲ドットデータ生成処理は、ゼロのインク量に対応する第ゼロサイズと、ゼロよりも大きなインク量に対応する第1サイズと、を含む複数のサイズで構成される非重畳サイズセットから前記ドットの前記サイズを選択する処理である非重畳選択処理を含み、
前記重畳範囲ドットデータ生成処理は、前記第ゼロサイズと、代替サイズと、を含む複数のサイズで構成される重畳サイズセットから前記ドットの前記サイズを選択する処理である重畳選択処理を、前記濃度制御処理として含み、
前記代替サイズは、前記第1サイズの代わりに前記第1サイズよりも大きなインク量に対応するサイズであり、
前記非重畳サイズセットは、前記第ゼロサイズと、前記第1サイズと、前記第1サイズの次の段階のサイズであって前記第1サイズよりも大きなインク量に対応する第2サイズと、を含み、
前記代替サイズは、前記第1サイズと前記第2サイズとの間のインク量に対応している、
制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の制御装置であって、
前記濃度制御処理は、
前記重畳範囲の画像のうち前記第1の部分印刷によって印刷されるべき第1部分の濃度を、前記第1対象範囲の前記第2対象範囲側の端に近いほど大きくする処理と、
前記重畳範囲の画像のうち前記第2の部分印刷によって印刷されるべき第2部分の濃度を、前記第2対象範囲の前記第1対象範囲側の端に近いほど大きくする処理と、
を含む、制御装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の制御装置であって、
前記複数のノズルは、第1インクを吐出するためのノズルと、第2インクを吐出するためのノズルと、を有し、
前記濃度制御処理は、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、前記重畳範囲に印刷すべき前記画像のうち、前記第1インクのドットによって表される部分画像の濃度を変化させずに、前記第2インクのドットによって表される部分画像の少なくとも一部の濃度を増大させる、
制御装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷ヘッドは、前記ノズルから前記インクを吐出させるための圧力を生成するアクチュエータであって、前記複数のノズルにそれぞれ設けられた複数のアクチュエータを備え、
前記ヘッド駆動部は、前記複数のアクチュエータに電気的に接続され、前記複数のアクチュエータのそれぞれに駆動信号を出力する駆動回路を備え、
前記濃度制御処理は、前記重畳範囲内の複数のドットのうち少なくとも1個のドットを形成するために、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合に出力すべき駆動信号と比べて大きなインク量に対応する駆動信号を、前記ヘッド駆動部に出力させる、
制御装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷制御部は、
前記第1の部分印刷を前記印刷実行部に実行させ、
前記第1の部分印刷の後に、前記印刷実行部に前記印刷媒体を移動させ、
前記印刷媒体の移動の後に、前記第2の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる、ように構成されている、制御装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の制御装置と、印刷実行部と、を備えるプリンタ。
【請求項7】
インクを吐出するための複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドにインクを吐出させて印刷媒体にドットを形成するヘッド駆動部と、前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を移動方向に相対的に移動させる移動部と、を備える印刷実行部を制御するコンピュータのためのコンピュータプログラムであって、
前記移動部による前記印刷媒体の移動と、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する複数回の部分印刷とを、対象画像データを用いて前記印刷実行部に実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させる印刷制御機能、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷制御機能は、
第1の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる機能と、
第2の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる機能と、
を含み、
前記印刷媒体上において、前記第1の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第1対象範囲と、前記第2の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第2対象範囲とは、それぞれの端部が互いに重なる重畳範囲を形成しており、
前記第1対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない非重畳範囲である第1非重畳範囲を含み、
前記第2対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない前記非重畳範囲である第2非重畳範囲を含み、
前記印刷制御機能は、
前記対象画像データのうち前記非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して、非重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記非重畳範囲の画像を印刷させる機能と、
前記対象画像データのうち前記重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して、前記非重畳範囲処理とは異なる重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記重畳範囲の画像を印刷させる機能と、
を含み、
前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、前記重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理を含
み、
前記非重畳範囲処理は、前記非重畳範囲データを用いて、画素毎に前記ドットのサイズを示すドットデータであって前記非重畳範囲内の画像を示す非重畳範囲ドットデータを生成する非重畳範囲ドットデータ生成処理を含み、
前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データを用いて、前記重畳範囲内の画像を示すドットデータである重畳範囲ドットデータを生成する重畳範囲ドットデータ生成処理を含み、
前記非重畳範囲ドットデータ生成処理は、ゼロのインク量に対応する第ゼロサイズと、ゼロよりも大きなインク量に対応する第1サイズと、を含む複数のサイズで構成される非重畳サイズセットから前記ドットの前記サイズを選択する処理である非重畳選択処理を含み、
前記重畳範囲ドットデータ生成処理は、前記第ゼロサイズと、代替サイズと、を含む複数のサイズで構成される重畳サイズセットから前記ドットの前記サイズを選択する処理である重畳選択処理を、前記濃度制御処理として含み、
前記代替サイズは、前記第1サイズの代わりに前記第1サイズよりも大きなインク量に対応するサイズであり、
前記非重畳サイズセットは、前記第ゼロサイズと、前記第1サイズと、前記第1サイズの次の段階のサイズであって前記第1サイズよりも大きなインク量に対応する第2サイズと、を含み、
前記代替サイズは、前記第1サイズと前記第2サイズとの間のインク量に対応している、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷実行部を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ノズルを有するヘッドを搭載するインクジェットプリンタが開示されている。このプリンタは、複数回のパスで印刷を行う際に、バンドの境界付近の一部の領域を2回のパスで印刷し、他の領域を1回のパスで印刷する。印刷のために、RGBデータをCMYK色空間のデータに変換する色変換処理が行われる。2回のパスで印刷されるつなぎ目領域の色変換処理には、1回のパスで印刷される通常領域の色変換処理のためのルックアップテーブルとは異なるテーブルが用いられる。これによって通常領域とつなぎ目領域との間に発生する色ムラを軽減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像は、パスのように画像の一部を印刷する部分印刷を繰り返すことによって、印刷され得る。2回の部分印刷によって印刷される領域では、印刷すべき複数のドットが2回の部分印刷によって分担されるので、1回の部分印刷で形成されるドットの総数が少なくなる。この場合、1回の部分印刷によってノズルから吐出されるインク滴の実際の体積が、変動する場合がある。例えば、インク滴の体積が小さくなり得る。これにより、2回の部分印刷で印刷される画像が、1回の部分印刷で印刷される画像と比べて、薄くなる場合があった。
【0005】
本明細書は、印刷される画像が薄くなることを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]インクを吐出するための複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドにインクを吐出させて印刷媒体にドットを形成するヘッド駆動部と、前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を移動方向に相対的に移動させる移動部と、を備える印刷実行部の制御装置であって、前記移動部による前記印刷媒体の移動と、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する複数回の部分印刷とを、対象画像データを用いて前記印刷実行部に実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させる印刷制御部、を備え、前記印刷制御部は、第1の部分印刷を前記印刷実行部に実行させ、第2の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる、ように構成されており、前記印刷媒体上において、前記第1の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第1対象範囲と、前記第2の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第2対象範囲とは、それぞれの端部が互いに重なる重畳範囲を形成しており、前記第1対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない非重畳範囲である第1非重畳範囲を含み、前記第2対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない前記非重畳範囲である第2非重畳範囲を含み、前記印刷制御部は、前記対象画像データのうち前記非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して、非重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記非重畳範囲の画像を印刷させ、前記対象画像データのうち前記重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して、前記非重畳範囲処理とは異なる重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記重畳範囲の画像を印刷させる、ように構成されており、前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、前記重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理を含む、制御装置。
【0008】
この構成によれば、重畳範囲データに対して非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、重畳範囲に印刷される画像の少なくとも一部の濃度が増大するので、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることが抑制される。
[適用例2]
適用例1に記載の制御装置であって、
前記非重畳範囲処理は、前記非重畳範囲データを用いて、画素毎に前記ドットのサイズを示すドットデータであって前記非重畳範囲内の画像を示す非重畳範囲ドットデータを生成する非重畳範囲ドットデータ生成処理を含み、
前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データを用いて、前記重畳範囲内の画像を示すドットデータである重畳範囲ドットデータを生成する重畳範囲ドットデータ生成処理を含み、
前記非重畳範囲ドットデータ生成処理は、ゼロのインク量に対応する第ゼロサイズと、ゼロよりも大きなインク量に対応する第1サイズと、を含む複数のサイズで構成される非重畳サイズセットから前記ドットの前記サイズを選択する処理である非重畳選択処理を含み、
前記重畳範囲ドットデータ生成処理は、前記第ゼロサイズと、代替サイズと、を含む複数のサイズで構成される重畳サイズセットから前記ドットの前記サイズを選択する処理である重畳選択処理を、前記濃度制御処理として含み、
前記代替サイズは、前記第1サイズの代わりに前記第1サイズよりも大きなインク量に対応するサイズである、
制御装置。
[適用例3]
適用例2に記載の制御装置であって、
前記非重畳サイズセットは、前記第ゼロサイズと、前記第1サイズと、前記第1サイズの次の段階のサイズであって前記第1サイズよりも大きなインク量に対応する第2サイズと、を含み、
前記代替サイズは、前記第1サイズと前記第2サイズとの間のインク量に対応している、
制御装置。
[適用例4]
適用例1から3のいずれかに記載の制御装置であって、
前記濃度制御処理は、
前記重畳範囲の画像のうち前記第1の部分印刷によって印刷されるべき第1部分の濃度を、前記第1対象範囲の前記第2対象範囲側の端に近いほど大きくする処理と、
前記重畳範囲の画像のうち前記第2の部分印刷によって印刷されるべき第2部分の濃度を、前記第2対象範囲の前記第1対象範囲側の端に近いほど大きくする処理と、
を含む、制御装置。
[適用例5]
適用例1から4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記複数のノズルは、第1インクを吐出するためのノズルと、第2インクを吐出するためのノズルと、を有し、
前記濃度制御処理は、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、前記重畳範囲に印刷すべき前記画像のうち、前記第1インクのドットによって表される部分画像の濃度を変化させずに、前記第2インクのドットによって表される部分画像の少なくとも一部の濃度を増大させる、
制御装置。
[適用例6]
適用例1から5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷ヘッドは、前記ノズルから前記インクを吐出させるための圧力を生成するアクチュエータであって、前記複数のノズルにそれぞれ設けられた複数のアクチュエータを備え、
前記ヘッド駆動部は、前記複数のアクチュエータに電気的に接続され、前記複数のアクチュエータのそれぞれに駆動信号を出力する駆動回路を備え、
前記濃度制御処理は、前記重畳範囲内の複数のドットのうち少なくとも1個のドットを形成するために、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合に出力すべき駆動信号と比べて大きなインク量に対応する駆動信号を、前記ヘッド駆動部に出力させる、
制御装置。
[適用例7]
適用例1から6のいずれかに記載の制御装置であって、
前記印刷制御部は、
前記第1の部分印刷を前記印刷実行部に実行させ、
前記第1の部分印刷の後に、前記印刷実行部に前記印刷媒体を移動させ、
前記印刷媒体の移動の後に、前記第2の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる、ように構成されている、制御装置。
[適用例8]
適用例1から7のいずれかに記載の制御装置と、印刷実行部と、を備えるプリンタ。
[適用例9]
インクを吐出するための複数のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドにインクを吐出させて印刷媒体にドットを形成するヘッド駆動部と、前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を移動方向に相対的に移動させる移動部と、を備える印刷実行部を制御するコンピュータのためのコンピュータプログラムであって、
前記移動部による前記印刷媒体の移動と、前記印刷ヘッドによって前記ドットを形成する複数回の部分印刷とを、対象画像データを用いて前記印刷実行部に実行させることによって、前記印刷実行部に印刷画像を印刷させる印刷制御機能、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷制御機能は、
第1の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる機能と、
第2の部分印刷を前記印刷実行部に実行させる機能と、
を含み、
前記印刷媒体上において、前記第1の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第1対象範囲と、前記第2の部分印刷の前記移動方向の印刷対象範囲である第2対象範囲とは、それぞれの端部が互いに重なる重畳範囲を形成しており、
前記第1対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない非重畳範囲である第1非重畳範囲を含み、
前記第2対象範囲は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない前記非重畳範囲である第2非重畳範囲を含み、
前記印刷制御機能は、
前記対象画像データのうち前記非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して、非重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記非重畳範囲の画像を印刷させる機能と、
前記対象画像データのうち前記重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して、前記非重畳範囲処理とは異なる重畳範囲処理を実行することによって、前記印刷実行部に前記重畳範囲の画像を印刷させる機能と、
を含み、
前記重畳範囲処理は、前記重畳範囲データに対して前記非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、前記重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理を含む、
コンピュータプログラム。
【0009】
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷実行部の制御方法および制御装置、印刷方法および印刷装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プリンタの実施例である複合機200の説明図である。
【
図3】(A)は、-Dz方向を向いて見たヘッド410の構成を示す透視図である。(B)は、ヘッド410のDz方向に平行な断面図の一部の概略図である。(C)は、第2制御部490とヘッド410とヘッド駆動部414との説明図である。
【
図4】印刷実行部400による印刷の概要の説明図である。
【
図7】濃度調整処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】(A)は、濃度調整処理の第2実施例のフローチャートである。(B)は、ドットサイズのセットの説明図である。
【
図9】(A)は、濃度調整処理の第3実施例のフローチャートである。(B)は、対象画素の割合を示す変更率CRの説明図である。
【
図10】(A)は、濃度調整処理の第4実施例のフローチャートである。(B)-(D)は、用紙PM上に形成されるドットの例を示す概略図である。
【
図11】印刷処理の別の実施例のフローチャートである。
【
図12】濃度調整処理の例を示すフローチャートである。
【
図14】(A)、(B)は、トーンカーブの別の実施例を示す概略図である。
【
図15】トーンカーブの別の実施例を示す概略図である。
【
図16】印刷処理の別の実施例のフローチャートである。
【
図17】印刷データ生成処理の例を示すフローチャートである。
【
図18】(A)は、第1駆動信号群の例を示す説明図である。(B)は、第2駆動信号群の例を示す説明図である。(C)は、ドットデータによって示されるドットサイズと、波形データFIREと、駆動信号群と、選択データSINの階調データと、の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例:
図1は、プリンタの実施例である複合機200の説明図である。複合機200は、第1制御部299と、表示部240と、操作部250と、通信インタフェース270と、スキャナ部280と、印刷実行部400と、を有している。第1制御部299は、プロセッサ210と、記憶装置215と、を有している。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。記憶装置215は、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230と、を含んでいる。
【0012】
プロセッサ210は、データ処理を行うように構成された装置であり、例えば、CPUである。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。
【0013】
不揮発性記憶装置230は、プログラム232を格納している。プロセッサ210は、プログラム232を実行することによって、種々の機能を実現する(詳細は、後述)。プロセッサ210は、プログラム232の実行に利用される種々の中間データを、記憶装置(例えば、揮発性記憶装置220、不揮発性記憶装置230のいずれか)に、一時的に格納する。本実施例では、プログラム232は、複合機200の製造者によって、ファームウェアとして、不揮発性記憶装置230に予め格納されている。
【0014】
表示部240は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示するように構成された装置である。操作部250は、表示部240上に重ねて配置されたタッチパネル、ボタン、レバーなどの、ユーザによる操作を受け取るように構成された装置である。ユーザは、操作部250を操作することによって、種々の指示を複合機200に入力可能である。通信インタフェース270は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、USBインタフェース、有線LANインタフェース、IEEE802.11の無線インタフェース)。
【0015】
スキャナ部280は、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて光学的に原稿等の対象物を読み取るように構成された読取装置である。スキャナ部280は、読み取った画像(「読取画像」と呼ぶ)を表す読取データを生成する(例えば、RGBのビットマップデータ)。
【0016】
印刷実行部400は、用紙(印刷媒体の一例)上に画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷実行部400は、印刷ヘッド410(単にヘッド410とも呼ぶ)と、ヘッド駆動部414と、第1移動装置440と、第2移動装置430と、インク供給部450と、これらの要素410、414、430、440、450を制御する第2制御部490と、を有している。本実施例では、印刷実行部400は、シアンCとマゼンタMとイエロYとブラックKとのそれぞれのインクを用いるインクジェット式の印刷装置である。第2制御部490は、例えば、モータとヘッド駆動部414などの印刷実行部400の要素を駆動する電気回路と、コンピュータと、を含んでいる。
【0017】
第1制御部299は、画像データを用いて印刷データを生成し、生成した印刷データを用いて印刷実行部400に画像を印刷させるように構成されている。第1制御部299は、印刷データを生成するために、読取データや、外部記憶装置(例えば、通信インタフェース270に接続されたメモリーカード)に格納された画像データを、利用できる。また、第1制御部299は、複合機200に接続された他の外部装置によって供給された印刷データを用いて、印刷実行部400に画像を印刷させることができる。
【0018】
図2は、印刷実行部400の概略図である。第2移動装置430は、キャリッジ433と、摺動軸434と、ベルト435と、複数個のプーリ436、437と、を備えている。キャリッジ433は、ヘッド410を搭載する。摺動軸434は、キャリッジ433を主走査方向(Dx方向に平行な方向)に沿って往復動可能に保持する。ベルト435は、プーリ436、437に巻き掛けられ、一部がキャリッジ433に固定されている。プーリ436は、図示しない主走査モータの動力によって回転する。主走査モータがプーリ436を回転させると、キャリッジ433が摺動軸434に沿って移動する。これによって、用紙PMに対して主走査方向に沿ってヘッド410を移動させる主走査が実現される。
【0019】
第1移動装置440は、用紙PMを保持しつつ、ヘッド410に対して主走査方向に垂直なDy方向に用紙PMを搬送する(すなわち、用紙PMは、Dy方向に移動する)。以下、Dy方向を、搬送方向Dy、または、移動方向Dyとも呼ぶ。また、Dy方向を、+Dy方向とも呼び、+Dy方向の反対方向を、-Dy方向とも呼ぶ。+Dx方向と-Dx方向とについても、同様である。用紙PM上の画像の印刷は、用紙PM上の+Dy方向側から-Dy方向側に向かって進行する。
【0020】
第1移動装置440は、ヘッド410のインクを吐出する面に対向する位置に配置されるとともに、用紙PMを支持するように構成されたプラテンPTと、プラテンPT上に配置された用紙PMを保持するように構成された第1ローラ441と第2ローラ442と、ローラ441、442を駆動する図示しない搬送モータと、を備えている。第1ローラ441は、ヘッド410よりも-Dy方向側に配置され、第2ローラ442は、ヘッド410よりも+Dy方向側に配置されている。用紙PMは、図示しない用紙トレイから、図示しない給紙ローラによって、第1移動装置440に供給される。第1移動装置440に供給された用紙PMは、第1ローラ441と、第1ローラ441に対となる図示しない従動ローラの間に挟まれ、これらローラによって副走査方向Dy側に搬送される。搬送された用紙PMは、第2ローラ442と、第2ローラ442に対となる図示しない従動ローラの間に挟まれ、これらローラによって副走査方向Dy側に搬送される。第1移動装置440は、搬送モータの動力でこれらのローラ441、442を駆動することによって、用紙PMを搬送方向Dyに搬送する。以下、用紙PMを搬送方向Dyに移動させる処理を、副走査、または、搬送処理とも呼ぶ。搬送方向Dyを、副走査方向Dyとも呼ぶ。図中のDz方向は、2つの方向Dx、Dyに垂直に、プラテンPTからヘッド410へ向かう方向である。
【0021】
インク供給部450は、ヘッド410にインクを供給する。インク供給部450は、カートリッジ装着部451と、チューブ452と、バッファタンク453と、を備えている。カートリッジ装着部451には、複数個のインクカートリッジKC、YC、CC、MCが着脱可能に装着される。バッファタンク453は、キャリッジ433において、ヘッド410の上方に配置され、ヘッド410に供給すべきインクをCMYKのインクごとに一時的に収容する。チューブ452は、カートリッジ装着部451とバッファタンク453との間を接続するインクの流路となる可撓性の管である。各インクカートリッジ内のインクは、カートリッジ装着部451、チューブ452、バッファタンク453を介して、ヘッド410に供給される。
【0022】
図3(A)は、-Dz方向を向いて見たヘッド410の構成を示す透視図である。図中では、
図2とは異なり、副走査方向Dyは、上を向いている。ヘッド410の-Dz方向側の面であるノズル形成面411には、上述したK、Y、C、Mの各インクを吐出するノズル群NK、NY、NC、NMが形成されている。各ノズル群は、複数個のノズルNZを含んでいる。1つのノズル群の複数個のノズルNZの間では、副走査方向Dyの位置が互いに異なっている。ノズル群NK、NY、NC、NMの主走査方向の位置は、互いに異なっている。
図3の例では、ノズル群NK、NY、NC、NMは、+Dx方向に向かって、この順番に並んでいる。
【0023】
本実施例では、1個のノズル群の複数のノズルNZの副走査方向Dyの位置は、等間隔にノズルピッチNPで配置されている。ノズルピッチNPは、副走査方向Dyに隣り合う2個のノズルNZの間の副走査方向Dyの位置の差である。また、本実施例では、4個のノズル群NK、NY、NC、NMの間で、ノズルNZの副走査方向Dyの位置は、同じである。
【0024】
図3(B)は、ヘッド410のDz方向に平行な断面図の一部の概略図である。図中には、1個のノズルNZのための流路を含む部分断面が示されている。ヘッド410は、流路ユニット412と、アクチュエータユニット413と、を含んでいる。
【0025】
流路ユニット412の下面は、ノズル形成面411を形成している。流路ユニット412の内部には、共通流路412aと個別流路412bとが形成されている。共通流路412aは、バッファタンク453(
図2)に連通する流路であり、同じインクのための複数のノズルNZに共通な流路である。個別流路412bは、共通流路412aの出口から圧力室412pを経てノズルNZへ至る流路であり、ノズルNZ毎に設けられる。
【0026】
アクチュエータユニット413は、複数の圧力室412pを覆う金属製の振動板413aと、振動板413aの上面に配置された圧電層413bと、圧電層413bの上面に配置された複数の個別電極413cと、を含んでいる。複数の個別電極413cは、複数の圧力室412pにそれぞれ対向するように、配置されている。
【0027】
振動板413aと複数の個別電極413cとは、ヘッド駆動部414に電気的に接続されている。ヘッド駆動部414は、振動板413aの電位をグランド電位に維持し、個別電極413cの電位を変化させる。
【0028】
図3(C)は、印刷実行部400(
図1)の第2制御部490とヘッド410とヘッド駆動部414との説明図である。ヘッド駆動部414は、ヘッド410に搭載されている。ヘッド駆動部414は、複数の個別電極413cに対応する複数の駆動回路414dを備えている。1個の駆動回路414dは、信号線414sを介して、1個の個別電極413cに電気的に接続されている。各駆動回路414dは、第2制御部490からの制御データ(具体的には、波形データFIREと選択データSIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線414sを介して駆動信号を個別電極413cに供給する。これにより、電極413cの電位が、グランド電位(ゼロV)と、所定の駆動電位(VDD)と、の間で変化する。駆動回路414dは、電位を変化させる電気回路(例えば、スイッチング回路)を含んでいる。
【0029】
振動板413aと圧電層413bとのうち、電極413cと圧力室412pとに挟まれた部分であるアクチュエータ413xは、個別電極413cの電位の変化に応じて変形する。アクチュエータ413xの変形により、圧力室412pの容積が変化し、圧力室412p内のインクに圧力が付与され、ノズルNZからインク滴が吐出される。アクチュエータ413xは、個別電極413c毎(すなわち、ノズルNZ毎)に設けられている。複数のアクチュエータ413xは、個別電極413cに供給される電位に応じて独立して変形できる。
【0030】
第2制御部490は、プロセッサ491と、揮発性記憶装置492と、不揮発性記憶装置493と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)494と、を備えている。不揮発性記憶装置493は、図示しないプログラムを格納している。プロセッサ491は、このプログラムを実行することによって、第1制御部299から受信したデータに基づいて、印刷のための指示をASIC494に供給する。ASIC494は、プロセッサ491からの指示に従って、ヘッド駆動部414と、主走査モータ(図示せず)と、搬送モータ(図示せず)と、を駆動する。これにより、後述する搬送処理と部分印刷とが交互に行われ、用紙PM上に画像が印刷される。搬送処理は、第1移動装置440によって用紙PMを搬送する処理である。部分印刷は、第2移動装置430によってヘッド410を移動させながらノズルNZからインク滴を吐出して用紙PM上にドットを形成する処理である。
【0031】
ASIC494は、出力回路494aと、転送回路494bと、を備えている。出力回路494aは、後述する波形データFIREと選択データSINを生成する。出力回路494aは、これらのデータFIRE、SINを、記録周期T毎に、転送回路494bに出力する。記録周期Tは、用紙PM上で1画素に相当する距離を用紙PMに対してヘッド410が移動するのに要する時間である。この画素は、印刷用の解像度で表される画素である(印刷画素とも呼ぶ)。ドットは、印刷画素毎に形成される。
【0032】
波形データFIREは、4個のドットサイズ「ゼロdN(吐出無し)」「小dS」「中dM」「大dL」にそれぞれ対応する4個の駆動波形データを直列化したシリアルデータである。ドットのサイズは、インク滴の体積と相関を有している。例えば、「ゼロ」はゼロpl(ピコリットル)を示し、「小」は5plを、「中」は10plを、「大」は30plを、それぞれ示している。
【0033】
選択データSINは、4個の駆動波形データの中から1個を選択する階調データを含むシリアルデータである。出力回路494aは、複数のアクチュエータ413xのそれぞれの階調データを含む選択データSINを、記録周期T毎に、転送回路494bに出力する。
【0034】
転送回路494bは、出力回路494aから受信したデータFIRE、SINを、ヘッド駆動部414に転送する。ヘッド駆動部414は、転送回路494bからのデータFIRE、SINに従って、記録周期T毎に、ノズルNZ毎に、信号線414sを介して駆動信号を個別電極413cに供給する。複数のノズルNZのそれぞれは、対応する駆動信号に応じて、インク滴を吐出する。
【0035】
A2.印刷の概要:
図4は、印刷実行部400による印刷の概要の説明図である。図中には、用紙PMと、用紙PM上に印刷される画像である対象画像OIが示されている。対象画像OIは、対象画像OIの+Dy方向側の端から-Dy方向(より一般的には、副走査方向Dy)に並ぶ複数個のバンド画像BI1-BInを含んでいる。各バンド画像BI1-BInは、それぞれ、1回の部分印刷で印刷される。各バンド画像BI1-BInの形状は、主走査方向(ここでは、方向Dxに平行な方向)に延びる矩形状である。
【0036】
複数のバンド画像は、対象画像OIの+Dy方向側の端のバンド画像から、-Dy方向に向かって1つずつ順番に、印刷される。部分印刷と、部分印刷の後の搬送処理とは、それぞれ複数回実行される。各部分印刷において、ヘッド410は、双方向の主走査方向(+Dx方向と、-Dx方向)のいずれかの方向に移動する。ここで、+Dx方向の部分印刷と-Dx方向の部分印刷とが、交互に行われてよい(双方向印刷とも呼ばれる)。これに代えて、部分印刷でのヘッド410の移動方向は、予め決められた1つの方向であってもよい。
【0037】
図中の範囲R1-R4は、それぞれ、バンド画像BI1-BI4の副走査方向Dyの範囲である。バンド画像の副走査方向Dyの範囲は、バンド画像に対応付けられた部分印刷の印刷対象範囲である。以下、1回の部分印刷を、「パス処理」または、単に「パス」とも呼ぶ。また、印刷対象範囲を、単に、対象範囲とも呼ぶ。本実施例では、各印刷対象範囲の副走査方向Dyの幅は、予め決められている。1個の印刷対象範囲の幅は、例えば、1回の部分印刷によってドットを形成可能な範囲の幅(印刷可能幅とも呼ぶ)に設定される。これに代えて、1個の印刷対象範囲の幅は、印刷可能幅よりも小さくてもよい。
【0038】
図4の例では、隣り合う2個の印刷対象範囲の端部は、互いに重なっている。例えば、第1印刷対象範囲R1の-Dy方向側の端部と、第2印刷対象範囲R2の+Dy方向側の端部とは、互いに重なっている。隣り合う2個の印刷対象範囲の他の組み合わせについても、同様である。
【0039】
図4中には、重畳範囲Rb12、Rb23、Rb34が示されている。重畳範囲Rb12、Rb23、Rb34は、2個の印刷対象範囲が互いに重なっている範囲である。重畳範囲の符号のうち、文字「Rb」に続く2個の数字は、重畳範囲を形成する2個の印刷対象範囲の番号を示している。例えば、重畳範囲Rb23は、第2印刷対象範囲R2と第3印刷対象範囲R3とによって形成されている。
【0040】
図4中には、非重畳範囲Ra1、Ra2、Ra3が示されている。非重畳範囲Ra1、Ra2、Ra3は、1個の印刷対象範囲のみに含まれる範囲である。非重畳範囲の符号のうち、文字「Ra」に続く1個の数字は、非重畳範囲を形成する1個の印刷対象範囲の番号を示している。例えば、非重畳範囲Ra2は、第2印刷対象範囲R2によって形成されている。
【0041】
1個の印刷対象範囲は、他の印刷対象範囲と重なる範囲である重畳範囲と、他の印刷対象範囲とは重ならない範囲である非重畳範囲と、を含み得る。図中の領域Aa1、Aa2、Aa3は、対象画像OIの領域のうち、非重畳範囲Ra1、Ra2、Ra3に含まれる領域である。以下、対象画像OIの領域のうち、非重畳範囲に含まれる領域を、非重畳領域とも呼ぶ。非重畳領域の形状は、主走査方向(Dx方向に平行な方向)に延びる矩形状である。図中の領域Ab12、Ab23、Ab34は、対象画像OIの領域のうち、重畳範囲Rb12、Rb23、Rb34に含まれる領域である。以下、対象画像OIの領域のうち、重畳範囲に含まれる領域を、重畳領域とも呼ぶ。重畳領域の形状は、主走査方向に延びる矩形状である。本実施例では、重畳範囲の副走査方向Dyの幅は、予め決められている(幅は、例えば、1画素以上、20画素以下であってよい)。
【0042】
重畳範囲(例えば、重畳範囲Rb12、Rb23、Rb34)に含まれる複数の画素(ひいては、複数のドット)は、2個のバンド画像に分配される。すなわち、+Dy方向側のバンド画像の印刷時に、重畳範囲内の複数の画素のうちの一部の複数の画素に、ドットが印刷され得る。そして、-Dy方向側のバンド画像の印刷時に、重畳範囲内の複数の画素のうちの残りの複数の画素に、ドットが印刷され得る。これにより、+Dy方向側のバンド画像と-Dy方向側のバンド画像との境界(すなわち、重畳範囲)において、印刷される色の不具合(例えば、濃度のむら)を抑制できる。
【0043】
図5は、重畳範囲のドット形成の説明図である。図中の中央部には、第1印刷対象範囲R1の-Dy方向側の端部と、第2印刷対象範囲R2の+Dy方向側の端部と、の複数の印刷画素PXが示されている(印刷画素PXを、単に画素PXとも呼ぶ)。第1印刷対象範囲R1の端の範囲Rb12Dと、第2印刷対象範囲R2の端の範囲Rb12Uとは、同じ重畳範囲Rb12に含まれる範囲である。図中では、これらの範囲Rb12D、Rb12Uは、互いに離れて示されている。以下、第1印刷対象範囲R1の範囲Rb12Dを、下流重畳範囲Rb12Dとも呼び、第2印刷対象範囲R2の範囲Rb12Uを、上流重畳範囲Rb12Uとも呼ぶ。
【0044】
図5中のハッチングが付された画素PX1は、ドットの形成が許容された画素を示している(許容画素PX1と呼ぶ)。空白の画素PX2は、ドット形成の候補から除外された画素を示している(除外画素PX2と呼ぶ)。下流重畳範囲Rb12Dの複数の画素PXは、許容画素PX1と除外画素PX2とのいずれかに分類される。画素PX1、PX2の配置パターンは、予め決められている。上流重畳範囲Rb12Uにおける画素PX1、PX2の配置パターンは、下流重畳範囲Rb12Dにおける許容画素PX1と除外画素PX2とを入れ替えて得られるパターンと同じである。このように、重畳範囲Rb12の複数の画素PXのドット形成は、第1バンド画像BI1の印刷時と、第2バンド画像BI2の印刷時とに、分けられる。
【0045】
図5中の左部には、主走査方向(Dx方向に平行な方向)に延びる画素ライン毎の記録率Rrが示されている(画素ラインは、ラスタラインとも呼ばれる)。記録率Rrは、画素ライン上の複数の画素PXの総数に対する許容画素PX1の総数の割合である。図示するように、各印刷対象範囲R1、R2の重畳範囲Rb12D、Rb12Uにおいて、印刷対象範囲R1、R2の端R1e、R2eに近いほど、記録率Rrは低い。具体的には、第1印刷対象範囲R1の非重畳範囲Ra1では、記録率Rrは、100%である。そして、下流重畳範囲Rb12Dでは、記録率Rrは、上流側(-Dy)に向かって、100%からゼロ%に向かって徐々に小さくなる。また、第2印刷対象範囲R2の上流重畳範囲Rb12Uでは、記録率Rrは、上流側(-Dy)に向かって、ゼロ%から100%に向かって徐々に大きくなる。そして、非重畳範囲Ra2では、記録率Rrは、100%である。このように、下流側(+Dy)の非重畳範囲Ra1から重畳範囲Rb12を経て上流側(-Dy)の非重畳範囲Ra2へ至る範囲において、2回の部分印刷のそれぞれの記録率Rrが、-Dy方向に向かって徐々に変化する。従って、重畳範囲Rb12において、白スジなどの不具合は、抑制される。
【0046】
なお、本実施例では、ノズルピッチNP(
図3(A))は、印刷画素の搬送方向Dyのピッチと同じである。1回の部分印刷は、1本の画素ライン上の複数の画素のそれぞれのドットを、その画素ラインに対向する同じノズルNZを用いて形成する。
【0047】
以上、重畳範囲Rb12における複数の画素PXのドット形成について説明した。この説明は、他の重畳範囲についても、同じである。
【0048】
図中の右部には、2本の画素ラインLa、Lbのドット形成の例が示されている。第1画素ラインLaは、非重畳範囲Ra1内の画素ラインであり、第2画素ラインLbは、重畳範囲Rb12内の画素ラインである。ここで、各画素ラインLa、Lbの複数の画素PXのドットサイズが、同じ「中dM」であることとする。
【0049】
第1画素ラインLaは、非重畳範囲Ra1に含まれる。従って、第1画素ラインLaの複数の画素PXのそれぞれのドットは、1回の部分印刷によって印刷される。図中の第1画素ラインLaの下には、第1画素ラインLaに対応する用紙PM上の第1ラインDLaが示されている。第1ラインDLa上には、第1印刷対象範囲R1のための部分印刷によって形成される複数のドットdtMが示されている。これらのドットdtMの実際のサイズは、「中dM」に適切なサイズである。また、図中には、第1間隔時間T1が示されている。間隔時間は、1個のドットの形成から、次のドットの形成までの時間である。間隔時間は、ヘッド410(
図3(A))の移動にかかる時間であり、用紙PM上の2個のドットの間の距離が大きいほど長い。
【0050】
第2画素ラインLbは、重畳範囲Rb12に含まれる。従って、第2画素ラインLbの複数の画素のそれぞれのドットは、2回の部分印刷によって分担される。図中の第2画素ラインLbの下には、第2画素ラインLbに対応する用紙PM上の第2ラインDLbが示されている。第2ラインDLbには、先行する1回の部分印刷(すなわち、第1印刷対象範囲R1のための部分印刷)によって形成されるドットdtMxが示されている。先行する1回の部分印刷は、第2ラインDLb上の複数の画素のうちの一部の複数の画素のみにドットdtMxを形成する。従って、第2ラインDLbにおける間隔時間T2は、第1ラインDLaにおける間隔時間T1よりも、長くなる。
【0051】
間隔時間が変化する場合、個別電極413c(
図3(B)、
図3(C))に供給される駆動信号が同じ場合であっても、ノズルNZから吐出されるインク滴の実際の体積が変化し得る。第1画素ラインLaのように、間隔時間(例えば、第1間隔時間T1)が短い場合には、前回のインク滴の吐出によるアクチュエータ413xの振動が残留している状態で、今回のインク滴が吐出される。残留振動と、今回の駆動信号による振動と、の合成された振動(すなわち、残留振動による圧力波と、今回の駆動信号による振動による圧力波と、の合成波)は、残留振動が無い場合と比べて、吐出されるインク滴の体積を増大させ得る。本実施例では、残留振動と今回の駆動信号による振動の合成された振動(すなわち、合成波)によって吐出されるインク滴の体積が、中dMなどのドットサイズに適した体積であると想定して、印刷処理が構成されている。間隔時間が長い場合、前回のインク滴の吐出からの長時間の経過によって、アクチュエータ413xに残っている振動のエネルギーが減衰する。この結果、次に吐出されるインク滴の実際の体積が、小さくなり得る。図中の第2ラインDLbのドットdtMxの実際のサイズは、第1ラインDLaのドットdtMの実際のサイズと比べて、小さい。続く2回目の部分印刷(すなわち、第2印刷対象範囲R2のための部分印刷)においても、重畳範囲Rb12の画素ラインに形成されるドットの実際のサイズが小さくなり得る。
【0052】
このように、重畳範囲の画像の濃度は、非重畳範囲の画像の濃度と比べて、低くなり得る。ここで、重畳範囲の画像の濃度を高める処理を行うことによって、重畳範囲の画像の濃度の低下を抑制できる。例えば、
図5の枠SA内には、第2画素ラインLbが示されている。上述した第2画素ラインLbとは異なり、複数の画素PXのドットサイズが、中dM」から「大dL」に変更されている。この場合、用紙PM上の第2ラインDLbには、上記の第2ラインDLb上のドットdtMxよりも大きいドットdtLxが形成される。これにより、重畳範囲の画像の濃度の低下を抑制できる。また、このドットdtLxの実際のサイズは、非重畳範囲の「大dL」に対応するドットの実際のサイズよりも、小さい。従って、重畳範囲の画像の濃度の過度の増大は、抑制される。以下、印刷処理の詳細について、説明する。
【0053】
A3.印刷処理:
図6は、印刷処理の例を示すフローチャートである。第1制御部299(
図1)のプロセッサ210は、印刷指示に応じて、プログラム232に従って、
図6の処理を実行する。S105では、プロセッサ210は、印刷指示を取得する。印刷指示の取得方法は、任意の方法であってよい。本実施例では、ユーザは、操作部250を操作することによって、印刷指示を入力する。印刷指示は、印刷処理に用いるべき入力画像データを指定する情報を含んでいる。入力画像データは、種々のデータであってよく、例えば、記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)に格納済みの画像データであってよい。なお、プロセッサ210は、複合機200に接続された他の装置(例えば、コンピュータ)から、印刷指示を取得してもよい。
【0054】
S110では、プロセッサ210は、印刷指示で指定された入力画像データを取得する。本実施例では、入力画像データとして、ビットマップデータが用いられる。また、入力画像データの各画素の画素値は、0から255までの256階調のR(赤)G(緑)B(青)の色値で表されていることとする。印刷指示によって指定された画像データがJPEGデータである場合、プロセッサ210は、JPEGデータを展開することによって、入力画像データを取得する。印刷指示によって指定された画像データの形式がビットマップ形式とは異なる形式である場合(例えば、EMF(Enhanced Meta File)形式)、プロセッサ210は、データ形式を変換(例えば、ラスタライズ)することによって生成されるビットマップデータを、入力画像データとして用いる。
【0055】
S150では、プロセッサ210は、入力画像データの解像度(すなわち、画素密度)を変換する処理を実行して、印刷用の予め決められた解像度の入力画像データを生成する。印刷用の解像度の画素は、
図5で説明した印刷画素PXである。入力画像データの解像度が印刷解像度と同じである場合、S150は、省略される。
【0056】
S163では、プロセッサ210は、入力画像データの色変換処理を実行する。色変換処理は、入力画像データの色値(本実施例では、RGB値)を、インク色空間の色値に変換する処理である。インク色空間は、印刷に利用可能な複数種類のインクの色に対応する色空間である。本実施例では、インク色空間は、CMYK色空間である。また、色変換済の画像データの各画素の画素値は、0から255までの256階調のC、M、Y、Kの色値で表されていることとする。プロセッサ210は、入力画像データの色空間の色値とインク色空間の色値との対応関係を示す色変換プロファイル(図示せず)を参照して、色変換処理を実行する。本実施例では、色変換プロファイルは、ルックアップテーブルである。ただし、色変換プロファイルは、他の形式のデータによって示されてよい。以下、インク色空間の画像データ(すなわち、色変換済の画像データ)を、インク色画像データとも呼ぶ。
【0057】
S170では、プロセッサ210は、インク色画像データを用いて、ドットデータを生成する。本実施例では、ドットデータは、色成分ごと、かつ、印刷画素ごとに、ドットのサイズを示している。上述したように、本実施例では、ドットのサイズは、「ゼロdN」、「小dS」、「中dM」、「大dL」から選択される。
【0058】
S170は、S173とS176とを含んでいる。S173では、プロセッサ210は、インク色画像データのハーフトーン処理を実行することによって、候補ドットデータを生成し、生成した候補ドットデータを記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)に格納する。ハーフトーン処理は、例えば、誤差拡散法や、ディザマトリクスを用いる方法など、種々の方法の処理であってよい。
【0059】
S176では、プロセッサ210は、濃度調整処理を実行することによって、最終的なドットデータを生成する。
図7は、濃度調整処理の例を示すフローチャートである。本実施例では、プロセッサ210は、シアンCとマゼンタMの濃度を調整する。イエロYとブラックKの濃度は、調整されない。
【0060】
S210では、プロセッサ210は、未処理の画素ラインから処理対象の画素ラインである対象画素ラインを選択する。そして、プロセッサ210は、対象画素ラインの候補ドットデータである対象ラインドットデータを取得する。
【0061】
S220では、プロセッサ210は、対象画素ラインが重畳範囲内であるか否かを判断する。対象画素ラインが重畳範囲内である場合(S220:Yes)、S230で、プロセッサ210は、対象ラインドットデータのドットサイズを以下のように変更する。すなわち、「小dS」は「中dM」に変更され、「中dM」は「大dL」に変更される。「ゼロdN」と「大dL」とは、維持される。そして、プロセッサ210は、S240へ移行する。対象画素ラインが非重畳範囲内である場合(S220:No)、プロセッサ210は、S230をスキップして、S240へ移行する。
【0062】
S240では、プロセッサ210は、対象ラインドットデータを記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)へ格納する。S230が実行された場合、変更済の対象ラインドットデータが記憶装置215に格納される。S230がスキップされた場合、元の対象ラインドットデータと同じデータが記憶装置215に格納される。
【0063】
S250では、プロセッサ210は、全ての画素ラインが処理されたか否かを判断する。未処理の画素ラインが残っている場合(S250:No)、プロセッサ210は、S210へ移行し、新たな対象画素ラインを処理する。全ての画素ラインの処理が終了した場合(S250:Yes)、プロセッサ210は、
図7の処理、すなわち、
図6のS176の処理を終了する。以上により、プロセッサ210は、最終的なドットデータを生成する。
【0064】
S180では、プロセッサ210は、ドットデータを用いて、印刷データを生成する。印刷データのデータ形式と生成方法とは、印刷実行部400に適する任意のデータ形式と生成方法とであってよい。例えば、プロセッサ210は、各画素のドットサイズを示すデータ(ここでは、選択データSINの階調データ)の並び順を、印刷実行部400に出力される順番に変換し、そして、プリンタ制御コードを付加することによって、印刷実行部400によって解釈可能な印刷データを生成する。
【0065】
S190では、プロセッサ210は、印刷データを印刷実行部400に出力する。S195では、印刷実行部400は、印刷データに従って、画像を印刷する。そして、
図5の処理が終了する。
【0066】
なお、S163で生成されるインク色画像データは、濃度調整処理(S176)を含むデータ処理(S170-S190)の対象の画像データである対象画像データの例である。
【0067】
以上のように、本実施例では、印刷実行部400(
図1)は、ヘッド410と、ヘッド駆動部414と、第1移動装置440と、を備えている。ヘッド410(
図3(A))は、インクを吐出するための複数のノズルNZを有している。ヘッド駆動部414(
図3(B)、
図3(C))は、印刷ヘッド410にインクを吐出させて用紙PMにドットを形成する。第1移動装置440(
図2))は、印刷ヘッド410に対して用紙PMを移動方向Dyに相対的に移動させる。また、プロセッサ210は、対象画像データを用いて印刷実行部400に画像(印刷画像とも呼ぶ)を印刷させる印刷制御処理を実行する。印刷制御処理は、
図6のS170-S190を含んでいる。印刷画像は、対象画像データによって示される画像に対応している。
【0068】
図4で説明したように、印刷制御処理は、印刷ヘッド410によってドットを形成する部分印刷と、第1移動装置440による用紙PMの移動とを、それぞれ複数回、対象画像データを用いて印刷実行部400に実行させる。具体的には、プロセッサ210は、1つのバンド画像(例えば、第1バンド画像BI1(
図4))を印刷するための第1の部分印刷を、印刷実行部400に実行させる。プロセッサ210は、第1の部分印刷の後に、印刷実行部400に用紙PMを移動させる。プロセッサ210は、用紙PMの移動の後に、次のバンド画像(例えば、第2バンド画像BI2)を印刷するための第2の部分印刷を印刷実行部400に実行させる。
【0069】
図4に示すように、第1対象範囲(例えば、第1印刷対象範囲R1)は、用紙PM上において、第1の部分印刷の移動方向Dyの印刷対象範囲であり、第2対象範囲(例えば、第2印刷対象範囲R2)は、用紙PM上において、第2の部分印刷の移動方向Dyの印刷対象範囲である。第1対象範囲(例えば、第1印刷対象範囲R1)と第2対象範囲(例えば、第2印刷対象範囲R2)とは、それぞれの端部が互いに重なる重畳範囲(例えば、重畳範囲Rb12)を形成している。第1対象範囲(例えば、第1印刷対象範囲R1)は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない非重畳範囲である第1非重畳範囲(例えば、非重畳範囲Ra1)を含んでいる。第2対象範囲(例えば、第2印刷対象範囲R2)は、他の部分印刷の印刷対象範囲とは重ならない非重畳範囲である第2非重畳範囲(例えば、非重畳範囲Ra2)を含んでいる。
【0070】
S176(
図6)では、
図7に示すように、プロセッサ210は、重畳範囲と非重畳範囲との間で異なる処理を実行する。ここで、対象画像データのうち非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して行われるS170-S190の印刷制御処理を、非重畳範囲処理と呼ぶ。非重畳範囲処理は、S230(
図7)を含まない。また、対象画像データのうち重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して行われるS170-S190の印刷制御処理を、重畳範囲処理と呼ぶ。重畳範囲処理は、S230を含んでいる。このように、重畳範囲処理は、非重畳範囲処理とは異なる処理である。そして、プロセッサ210は、非重畳範囲データに対して非重畳範囲処理を実行することによって、印刷実行部400に非重畳範囲の画像を印刷させる。また、プロセッサ210は、重畳範囲データに対して、重畳範囲処理を実行することによって、印刷実行部400に重畳範囲の画像を印刷させる。
【0071】
図7で説明したように、S230の処理は、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部(具体的には、シアンCまたはマゼンタMの小dSのドットまたは中dMのドットを用いて表現される部分)の濃度を増大させる。すなわち、重畳範囲処理(S230を含むS170-S190の処理)は、重畳範囲データに対して非重畳範囲処理(S230を含まないS170-S190の処理)が実行される場合と比べて、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理(S230を含むS170)を含んでいる。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることを抑制できる。
【0072】
また、
図6のS170(すなわち、S173、S176)では、プロセッサ210は、対象画像データ(ここでは、インク色画像データ)を用いて、画素毎にドットのサイズを示すドットデータを生成する。すなわち、非重畳範囲処理は、非重畳範囲データを用いて、非重畳範囲内の画像を示す非重畳範囲ドットデータを生成する非重畳範囲ドットデータ生成処理を含んでいる(
図7のS230を除くS170(
図6)の処理)。また、重畳範囲処理は、重畳範囲データを用いて、重畳範囲内の画像を示す重畳範囲ドットデータを生成する重畳範囲ドットデータ生成処理を含んでいる(
図7のS230を含むS170(
図6)の処理)。
【0073】
非重畳範囲に関しては、
図7のS230が省略される。従って、非重畳範囲ドットデータによって示されるドットサイズは、S173(
図6)で選択されたドットサイズである。すなわち、非重畳範囲ドットデータ生成処理は、S173を含んでいる。そして、S173は、ゼロのインク量に対応する第ゼロサイズ(dN)と、ゼロよりも大きなインク量に対応する第1サイズ(dS)と、を含む複数のサイズ(dN、dS、dM、dL)で構成される非重畳サイズセットからドットのサイズを選択する処理である非重畳選択処理に対応している。
【0074】
重畳範囲(特に、シアンCとマゼンタM)に関しては、
図7のS230が実行される。S230では、小dSは、中dMに置換される。すなわち、中dMは、小dSを代替するドットサイズである。このように、重畳範囲ドットデータ生成処理は、第ゼロサイズ(dN)と、代替サイズ(dM)と、を含む複数のサイズ(dN、dM、dL)で構成される重畳サイズセットからドットのサイズを選択する処理である重畳選択処理(すなわち、S230を含むS170)を、濃度制御処理として含んでいる。そして、代替サイズ(dM)は、第1サイズ(dS)の代わりに第1サイズ(dS)よりも大きなインク量に対応するサイズである。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることが抑制される。
【0075】
また、印刷ヘッド410(
図3(A))の複数のノズルNZは、第1インクの例であるイエロYのインクを吐出するためのノズルNZ(ここでは、ノズル群NYのノズルNZ)と、第2インクの例であるシアンCのインクを吐出するためのノズルNZ(ここでは、ノズル群NCのノズルNZ)と、を有している。本実施例では、
図7のS230は、シアンCとマゼンタMに対して実行され得る。イエロYとブラックKと対しては、S230は実行されない。このように、濃度制御処理(S230を含むS170)は、重畳範囲データに対して非重畳範囲処理が実行される場合と比べて、重畳範囲に印刷すべき画像のうち、第1インク(例えば、イエロY)のドットによって表される部分画像の濃度を変化させずに、第2インク(例えば、シアンC)のドットによって表される部分画像の少なくとも一部の濃度を増大させる。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像のうち、第2インク(例えば、シアンC)のドットによって表される部分画像が薄くなることを抑制できる。また、プロセッサ210は、イエロYの濃度を増大させないので、イエロYの濃度を増大させる場合と比べて、イエロYのインクを節約できる。ここで、イエロYのドットの視認性は、シアンCのドットの視認性と比べて、低い。従って、イエロYの濃度を増大させない場合であっても、イエロYの濃度の低下は、目立ちにくい。
【0076】
なお、プロセッサ210を備える第1制御部299は、印刷実行部400を制御する制御装置の例である。また、第1制御部299と印刷実行部400とを備える複合機200は、プリンタの例である。
【0077】
B.第2実施例:
図8(A)は、濃度調整処理の第2実施例のフローチャートである。
図7の実施例との差異は、S230がS230aに置換されている点だけである。図示を省略するが、濃度調整処理の他の部分は、
図7の対応する部分と同じである(
図7のステップと同じステップには、同じ符号を付して、説明を省略する)。
【0078】
S230aでは、プロセッサ210は、対象ラインドットデータの「中dM」を「中大dML」に変更する。他のドットサイズdN、dS、dLは、維持される。
図8(B)は、ドットサイズのセットの説明図である。図中には、非重畳サイズセットRaと、重畳サイズセットRbと、が示されている。横軸は、ドットサイズをしている。非重畳サイズセットRaは、第1実施例のセットと同じであり、dN、dS、dM、dLの4個のドットサイズで構成されている。重畳サイズセットRbは、非重畳サイズセットRaのdMをdMLに置換して得られるセットであり、dN、dS、dML、dLの4個のドットサイズで構成されている。図示するように、中大dMLのドットサイズは、中dMと大dLとの間のサイズである。
【0079】
このように、非重畳サイズセットRaは、第ゼロサイズ(dN)と、第1サイズの例である中dMと、第1サイズの次の段階のサイズであって第1サイズよりも大きなインク量に対応する第2サイズの例であるdLと、を含んでいる。そして、第1サイズ(dM)の代わりに用いられる代替サイズ(ここでは、dML)は、第1サイズ(dM)よりも大きいインク量に対応している。従って、本実施例においても、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることを抑制できる。また、代替サイズ(ここでは、dML)は、第1サイズ(dM)と第2サイズ(dL)との間のインク量に対応している。従って、本実施例では、中dMが大dLに置換される場合と比べて、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像が過度に濃くなることを抑制できる。
【0080】
C.第3実施例:
図9(A)は、濃度調整処理の第3実施例のフローチャートである。
図7の実施例との差異は、S230が、S225b、S230bに置換されている点だけである。図示を省略するが、濃度調整処理の他の部分は、
図7の対応する部分と同じである(
図7のステップと同じステップには、同じ符号を付して、説明を省略する)。
【0081】
S225bでは、プロセッサ210は、対象画素ラインの複数の画素から、濃度変更の対象の画素である対象画素を選択する。
図9(B)は、対象画素の割合を示す変更率CRの説明図である。図中には、
図5と同様に、第1印刷対象範囲R1の-Dy方向側の端部と、第2印刷対象範囲R2の+Dy方向側の端部と、の複数の印刷画素PXが示されている。図中の左部には、画素ライン毎の変更率CRが示されている。変更率CRは、画素ラインの複数の許容画素PX1の総数に対する対象画素の総数の割合である。
【0082】
図示するように、下流重畳範囲Rb12Dでは、変更率CRは、-Dy方向に向かって徐々に大きくなる。本実施例では、-Dy方向側の端の画素ラインの変更率CRは、100%である。上流重畳範囲Rb12Uでは、変更率CRは、+Dy方向に向かって徐々に大きくなる。本実施例では、+Dy方向側の端の画素ラインの変更率CRは、100%である。なお、非重畳範囲Ra1、Ra2では、変更率CRは、ゼロ%である。このように、各印刷対象範囲R1、R2において、印刷対象範囲R1、R2の端R1e、R2eに近いほど、変更率CRは高い。なお、各画素ラインにおいて、対象画素の配置は、予め決められている。
【0083】
S230b(
図9(A))では、プロセッサ210は、対象ラインドットデータの対象画素の「中dM」を「中大dML」に変更する。対象画素ではない画素の「中dM」は、維持される。また、他のドットサイズdN、dS、dLは、維持される。
【0084】
図9(B)の下流重畳範囲Rb12D内の複数の許容画素PX1は、重畳範囲Rb12の画像のうち第1印刷対象範囲R1のための部分印刷によって印刷されるべき部分である第1部分IP1を示している。下流重畳範囲Rb12D内では、変更率CRは、第1印刷対象範囲R1の第2印刷対象範囲R2側の端R1eに近いほど、大きい。このように、プロセッサ210は、第1部分IP1の濃度を、第1印刷対象範囲R1の第2印刷対象範囲R2側の端R1eに近いほど、大きくする。また、上流重畳範囲Rb12U内の複数の許容画素PX1は、重畳範囲Rb12の画像のうち第2印刷対象範囲R2のための部分印刷によって印刷されるべき部分である第2部分IP2を示している。上流重畳範囲Rb12U内では、変更率CRは、第2印刷対象範囲R2の第1印刷対象範囲R1側の端R2eに近いほど、大きい。このように、プロセッサ210は、第2部分IP2の濃度を、第2印刷対象範囲R2の第1印刷対象範囲R1側の端R2eに近いほど、大きくする。
【0085】
以上により、プロセッサ210は、第1印刷対象範囲R1の第2印刷対象範囲R2側の端R1eの近傍と、第2印刷対象範囲R2の第1印刷対象範囲R1側の端R2eの近傍と、において、画像が薄くなることを抑制できる。
【0086】
また、本実施例では、
図5で説明したように、下流重畳範囲Rb12D内では、記録率Rrは、端R1eに近いほど、小さい。従って、端R1eに近いほど、間隔時間(例えば、
図5の間隔時間T2)が長くなるので、
図5で説明したように、インク滴の吐出時には、残留振動が減衰している(すなわち、残留振動が十分ではない、または、振動が残留していない)。従って、用紙PM上のドットの実際のサイズが小さくなり易い。本実施例では、下流重畳範囲Rb12D内の各画素ラインに関して、記録率Rrが小さいほど、変更率CRが大きい。上流重畳範囲Rb12Uに関しても、同様に、記録率Rrが小さいほど、変更率CRが大きい。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像の濃度の低下を、適切に抑制できる。
【0087】
D.第4実施例:
図10(A)は、濃度調整処理の第4実施例のフローチャートである。
図7の実施例との差異は、S230がS230cに置換されている点だけである。図示を省略するが、濃度調整処理の他の部分は、
図7の対応する部分と同じである(
図7のステップと同じステップには、同じ符号を付して、説明を省略する)。
【0088】
S230cでは、プロセッサ210は、対象ラインドットデータの「中dM」を「中大dML」に変更し、さらに、「大dL」を「中大dML」に変更する。他のドットサイズdN、dSは、維持される。S230cの処理は、
図8(A)のS230aに、「大dL」を「中大dML」に変更する処理を追加したものと同じである。このように、「大dL」を、より小さいインク量に対応する「中大dML」に変更する理由は、以下の通りである。
【0089】
図10(B)-
図10(D)は、用紙PM上に形成されるドットの例を示す概略図である。
図10(B)は、非重畳領域内で隣り合う2個の画素PXを示している。各画素PXのドットサイズは、大dLである。図中の第1状態Sb1は、用紙PM上のこれらの画素PXの位置にインク滴が吐出された状態を示している。2個のドットdtLが形成されている。また、2個のドットdtLは、互いに接触している。第2状態Sb2は、第1状態Sb1から時間が経過した状態を示している。時間の経過とともにインクが用紙PMに浸透するので、各ドットdtLのサイズが大きくなっている。
【0090】
図10(C)は、重畳領域内で隣り合う2個の画素PXを示している。各画素PXのドットサイズは、大dLである。図中の第1状態Sc1は、1回の部分印刷によってインク滴が吐出された状態を示している。ここで、左側の画素PXの位置に1個のドットdtLが形成されている。第2状態Sc2は、第1状態Sc1から時間が経過した状態を示している。時間の経過とともにインクが用紙PMに浸透するので、ドットdtLのサイズが大きくなっている。第3状態Sc3は、第2状態Sc2の後、2回目の部分印刷によってインク滴が吐出された状態を示している。右側の画素PXの位置にドットdtLが形成されている。第4状態Sc4は、第3状態Sc3から時間が経過した状態を示している。
【0091】
第4状態Sc4では、右側のドットdtLの用紙上でのサイズが、大幅に増大している。この理由は、以下の通りである。一般的に、インクは、用紙上に吐出された後、用紙に吸収されるまでは、用紙上で容易に移動できる。また、用紙上で2個のドットが接触する場合、インクの表面張力などの影響により、2個のドットのそれぞれのインクは、互いに引っ張り合う。上述したように、右側のドットdtLが形成される第3状態Sc3では、左側のドットdtLのインクは、既に、用紙に吸収されている。従って、左側のドットdtLのインクは、用紙上で移動し難い。この状態で右側の画素位置にインク滴が吐出される。右側のドットdtLのインクは、用紙に吸収される前に、左側のドットdtLのインクに引かれて、広い範囲に流れ得る。また、第3状態Sc3における2個のドットの接触部分Pc3は、
図10(B)の第1状態Sb1における2個のドットの接触部分Pb1よりも、大きい。従って、重畳領域では、非重畳領域と比べて、大dLのドットの用紙上での実際のサイズが、大きくなりやすい。
【0092】
そこで、本実施例では、S230c(
図10(A))では、プロセッサ210は、大dLを中大dMLに変更する。
図10(D)は、重畳領域内で隣り合う2個の画素PXを示している。各画素PXのドットサイズは、中大dMLである。図中の第1状態Sd1は、1回の部分印刷によってインク滴が吐出された状態を示している。左側の画素PXの位置に1個のドットdtMLが形成されている。第2状態Sd2は、第1状態Sd1から時間が経過した状態を示している。ドットdtMLのサイズが大きくなっている。第3状態Sd3は、第2状態Sd2の後、2回目の部分印刷によってインク滴が吐出された状態を示している。右側の画素PXの位置にドットdtMLが形成されている。第4状態Sd4は、第3状態Sd3から時間が経過した状態を示している。右側のドットdtMLのサイズが大きくなっている。ただし、2個のドットdtMLが占める面積は、
図10(C)の第4状態Sc4の面積と比べて、小さい。例えば、2個のドットdtMLが占める面積は、
図10(B)の第2状態Sb2の面積と同程度である。
【0093】
以上のように、重畳領域では、大きいサイズ(例えば、代替サイズ(ここでは、中大dML)よりも大きいサイズ)のドットが形成される場合、画像の濃度が濃くなり得る。本実施例では、プロセッサ210は、S230c(
図10(A))で、大dLを、より小さいサイズ(ここでは、中大dML)に変更する。従って、プロセッサ210は、重畳領域の濃度の意図しない増大を抑制できる。
【0094】
E.第5実施例:
図11は、印刷処理の別の実施例のフローチャートである。
図6の印刷処理との差異は、色変換処理において重畳範囲の濃度が調整される点である。
図11のステップのうち、
図6のステップと同じステップには、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0095】
S105-S150は、
図6のS105-S150と、それぞれ同じである。続くS160dでは、プロセッサ210は、入力画像データの色変換処理を実行する。S160dは、S163dとS166dとを含んでいる。S163dは、
図6のS163と同じである。S163dでは、プロセッサ210は、入力画像データの色変換処理を実行することによって、候補インク色画像データを生成する。S166dでは、プロセッサ210は、濃度調整処理を実行することによって、最終的なインク色画像データを生成する。このように、S163dの色変換処理の結果は、S166dで調整される。S163dの色変換処理は、基準の色変換処理である。
【0096】
図12は、濃度調整処理の例を示すフローチャートである。
図7の濃度調整処理との差異は、ドットデータに代えて、インク色画像データの色値データが調整される点である。本実施例では、プロセッサ210は、シアンCとマゼンタMの濃度を調整する。イエロYとブラックKの濃度は、調整されない。
【0097】
S310では、プロセッサ210は、未処理の画素ラインから処理対象の画素ラインである対象画素ラインを選択する。そして、プロセッサ210は、候補インク色画像データのうちの対象画素ラインの色値データである対象ライン色値データを取得する。
【0098】
S320では、プロセッサ210は、対象画素ラインが重畳範囲内であるか否かを判断する。対象画素ラインが重畳範囲内である場合(S320:Yes)、S330で、プロセッサ210は、対象ライン色値データの複数の画素のそれぞれのシアンCの色値とマゼンタMの色値とを、トーンカーブを用いて調整する。
【0099】
図13は、トーンカーブの例を示すグラフである。横軸は、調整前の色値である入力色値Vinを示し、縦軸は、調整後の色値である出力色値Voutを示している。値Vmaxは、色値の最大値である(ここでは、255)。入力色値Vinが大きいほど、濃度が高い。トーンカーブTLは、入力色値Vinと出力色値Voutとの間の対応関係を示している。図示するように、入力色値Vinが第1閾値V1未満下である場合に、出力色値Voutは入力色値Vinよりも大きくなる(ただし、Vin=ゼロの場合、Vout=ゼロ)。なお、トーンカーブTLは、入力色値Vinの全範囲に亘って、入力色値Vinの変化に対して出力色値Voutが滑らかに変化するように、構成されている。本実施例では、トーンカーブTLは、予め決められている。プロセッサ210は、トーンカーブTLを示すトーンプロファイル(図示せず)を参照して、色値を調整する。本実施例では、トーンプロファイルは、ルックアップテーブルである。ただし、トーンプロファイルは、他の形式のデータによって示されてよい。
【0100】
S330の後、プロセッサ210は、S340へ移行する。対象画素ラインが非重畳範囲内である場合(S320:No)、プロセッサ210は、S330をスキップして、S340へ移行する。
【0101】
S340では、プロセッサ210は、対象ライン色値データを記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)へ格納する。S330が実行された場合、調整済の対象ライン色値データが記憶装置215に格納される。S330がスキップされた場合、元の対象ライン色値データと同じデータが記憶装置215に格納される。
【0102】
S350では、プロセッサ210は、全ての画素ラインが処理されたか否かを判断する。未処理の画素ラインが残っている場合(S350:No)、プロセッサ210は、S310へ移行し、新たな対象画素ラインを処理する。全ての画素ラインの処理が終了した場合(S350:Yes)、プロセッサ210は、
図12の処理、すなわち、
図11のS166dの処理を終了する。以上により、プロセッサ210は、最終的なインク色画像データを生成する。そして、S160dが終了する。
【0103】
S173dは、
図6のS173と同じである。プロセッサ210は、インク色画像データのハーフトーン処理を実行することによって、ドットデータを生成する。続くS180-S195は、
図6のS180-S195と、それぞれ同じである。
【0104】
なお、S150で生成される印刷解像度の入力画像データは、濃度調整処理(S166d)を含むデータ処理(S160d-S190)の対象の画像データである対象画像データの例である。
【0105】
以上のように、本実施例では、プロセッサ210は、対象画像データを用いて印刷実行部400に印刷画像を印刷させる印刷制御処理を実行する。印刷制御処理は、
図11のS160d-S190を含んでいる。
【0106】
S166dでは、
図12に示すように、プロセッサ210は、重畳範囲と非重畳範囲との間で異なる処理を実行する。ここで、対象画像データのうち非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して行われるS160d-S190の印刷制御処理を、非重畳範囲処理と呼ぶ。非重畳範囲処理は、S330(
図12)を含まない。また、対象画像データのうち重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して行われるS160d-S190の印刷制御処理を、重畳範囲処理と呼ぶ。重畳範囲処理は、S330を含んでいる。このように、重畳範囲処理は、非重畳範囲処理とは異なる処理である。そして、プロセッサ210は、非重畳範囲データに対して非重畳範囲処理を実行することによって、印刷実行部400に非重畳範囲の画像を印刷させる。また、プロセッサ210は、重畳範囲データに対して、非重畳範囲処理とは異なる重畳範囲処理を実行することによって、印刷実行部400に重畳範囲の画像を印刷させる。
【0107】
図13で説明したように、S330(
図12)の処理は、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部(具体的には、シアンCまたはマゼンタMの第1閾値V1未満の色値を有する部分)の濃度を増大させる。例えば、シアンCの色値が第1閾値V1未満である場合に、シアンCの色値が大きくなる。この結果、S173d(
図11)で決定されるドットサイズは、S330(
図12)が実行されない場合と比べて、大きくなり得る。このように、重畳範囲処理(S330を含むS160d-S190の処理)は、重畳範囲データに対して非重畳範囲処理(S330を含まないS160d-S190の処理)が実行される場合と比べて、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理(S330を含むS160d)を含んでいる。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることを抑制できる。
【0108】
また、本実施例では、
図12のS330は、シアンCとマゼンタMに対して実行され得る。イエロYとブラックKと対しては、S330は実行されない。従って、上記の第1実施例-第4実施例と同様に、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像のうち、シアンCの部分画像が薄くなることと、マゼンタMの部分画像とが薄くなることとを、抑制できる。また、プロセッサ210は、イエロYの濃度を増大させないので、イエロYの濃度を増大させる場合と比べて、イエロYのインクを節約できる。
【0109】
F.第6実施例:
図14(A)、
図14(B)は、トーンカーブの別の実施例を示す概略図である。
図14(A)は、トーンカーブを示すグラフである。横軸は、入力色値Vinを示し、縦軸は、出力色値Voutを示している。図示された6個のトーンカーブTLa-TLfは、
図12のS330で、トーンカーブTL(
図13)の代わりに利用される。トーンカーブTLa-TLfには、閾値V1a-V1fが、それぞれ対応付けられている。図示するように、閾値V1a-V1fの大きい順番は、V1a-V1fの順である。トーンカーブTLa-TLfは、入力色値Vinが閾値V1a-V1f未満である場合に、出力色値Voutを入力色値Vinよりも大きな値に変更する。また、入力色値Vinが同じである場合、変更された出力色値Voutの大きい順番は、TLa-TLfの順である。このように、濃度の増大量の大きい順番は、TLa-TLfの順である。また、濃度が増大する入力色値Vinの範囲が広い順番は、TLa-TLfの順である。例えば、重畳範囲内の画像のうち、第1トーンカーブTLaによって濃度が増大する部分は、第6トーンカーブTLfによって濃度が増大する部分よりも、大きくなり得る。なお、6個のトーンカーブTLa-TLfは、予め決められている。
【0110】
図14(B)は、トーンカーブTLa-TLfと画素ラインとの対応関係を示す概略図である。図中には、
図5と同様に、第1印刷対象範囲R1の-Dy方向側の端部と、第2印刷対象範囲R2の+Dy方向側の端部と、の複数の印刷画素PXが示されている。図中の右部には、画素ラインとトーンカーブとの対応関係が示されている。図示するように、下流重畳範囲Rb12Dでは、濃度の増大量は、-Dy方向に向かって徐々に大きくなる。上流重畳範囲Rb12Uでは、濃度の増大量は、+Dy方向に向かって徐々に大きくなる。このように、各印刷対象範囲R1、R2において、印刷対象範囲R1、R2の端R1e、R2eに近いほど、濃度の増大量が大きい。
【0111】
S330(
図12)では、プロセッサ210は、対象画素ラインに対応付けられたトーンカーブを特定する。そして、プロセッサ210は、特定されたトーンカーブを用いて、対象ライン色値データの複数の画素のそれぞれのシアンCの色値とマゼンタMの色値とを調整する。
【0112】
以上により、プロセッサ210は、第1印刷対象範囲R1の第2印刷対象範囲R2側の端R1eの近傍と、第2印刷対象範囲R2の第1印刷対象範囲R1側の端R2eの近傍と、において、画像が薄くなることを抑制できる。
【0113】
また、本実施例では、
図5で説明したように、下流重畳範囲Rb12D内では、記録率Rrは、端R1eに近いほど、小さい。従って、端R1eに近いほど、間隔時間(例えば、
図5の間隔時間T2)が長くなるので、用紙PM上のドットの実際のサイズが小さくなり易い。本実施例では、下流重畳範囲Rb12D内の各画素ラインに関して、記録率Rrが小さいほど、濃度の増大量が大きい。上流重畳範囲Rb12Uに関しても、同様に、記録率Rrが小さいほど、濃度の増大量が大きい。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像の濃度の低下を、適切に抑制できる。
【0114】
G.第7実施例:
図15は、トーンカーブの別の実施例を示す概略図である。横軸は、入力色値Vinを示し、縦軸は、出力色値Voutを示している。このトーンカーブTLxは、
図12のS330で、トーンカーブTL(
図13)の代わりに利用される。
図13のトーンカーブTLとの差異は、入力色値Vinが第2閾値V2よりも大きい場合に、出力色値Voutが入力色値Vinよりも小さい点である(なお、V1<V2)。トーンカーブTLxは、入力色値Vinの全範囲に亘って、入力色値Vinの変化に対して出力色値Voutが滑らかに変化するように、構成されている。本実施例では、トーンカーブTLxは、予め決められている。
【0115】
トーンカーブTLxを用いるS330(
図12)の処理は、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部(具体的には、シアンCまたはマゼンタMの第2閾値V2よりも大きい色値を有する部分)の濃度を低下させる。例えば、シアンCの色値が第2閾値V2よりも大きい場合に、シアンCの色値が小さくなる。この結果、S173d(
図11)で決定されるドットサイズは、S330(
図12)が実行されない場合と比べて、小さくなり得る。従って、
図10(A)の実施例と同様に、プロセッサ210は、重畳領域の濃度の意図しない増大を抑制できる。
【0116】
H.第8実施例:
図16は、印刷処理の別の実施例のフローチャートである。
図6の印刷処理との差異は、濃度の調整が、印刷データの生成処理において行われる点である。
図16のステップのうち、
図6のステップと同じステップには、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0117】
S105-S163は、
図6のS105-S163と、それぞれ同じである。続くS173eは、
図6のS173と同じである。本実施例では、プロセッサ210は、S173と同じハーフトーン処理によって、ドットデータを生成する。
【0118】
S180eでは、プロセッサ210は、印刷データを生成する。
図17は、印刷データ生成処理の例を示すフローチャートである。S410では、プロセッサ210は、未処理の画素ラインから処理対象の画素ラインである対象画素ラインを選択する。そして、プロセッサ210は、対象画素ラインのドットデータである対象ラインドットデータを取得する。ドットデータは、各画素のドットサイズを示している。各画素のドットサイズは、「ゼロ」「小」「中」「大」の4個のサイズから選択される。ヘッド駆動部414(
図3(C))は、個別電極413cに、ドットサイズに対応付けられた駆動信号を供給する。本実施例では、4個のドットサイズに対応付けられた4個の駆動信号で構成される駆動信号群として、重畳範囲用の第1駆動信号群と、非重畳範囲用の第2駆動信号群と、が利用される。
【0119】
図18(A)は、第1駆動信号群の例を示す説明図である。図中には、「ゼロ」、「小」、「中」、「大」にそれぞれ対応する4個の駆動信号WN、WS、WML、WLのグラフが示されている(単に信号WN-WLとも呼ぶ)。横軸は、時間Tmを示し、縦軸は、個別電極413cに供給される電位VDを示している。各信号WN-WLのグラフは、記録周期T(時点Tm0から時点Tm1までの時間)内における電位VDの波形を示している。
【0120】
「ゼロ」に対応するゼロ信号WNは、電位VDがゼロに維持されることを示している。「小」に対応する小信号WSは、電位VDがゼロと駆動電位VDDとの間で変化する1個のパルスを示している。「中」に対応する中大信号WMLは、2個のパルスを示している。第1時間幅W1は、2個目のパルスの時間幅を示している。「大」に対応する大信号WLは、4個のパルスを示している。これらの信号WN、WS、WML、WLは、ドットサイズdN、dS、dML、dLに、それぞれ対応している。このように、パルスの数が多いほど、ノズルNZから吐出されるインク滴の体積が大きくなる。
【0121】
図18(B)は、第2駆動信号群の例を示す説明図である。第1駆動信号群との差異は、「中」に対応する中信号WMの2個目のパルスの第2時間幅W2が、中大信号WML(
図18(A))の第1時間幅W1よりも小さい点だけである。本実施例では、パルスの時間幅が小さい場合、吐出されるインク滴の体積が小さくなる。また、本実施例では、中信号WMは、中dMのドットサイズに対応している。このように、中信号WMに対応するドットサイズは、
図18(A)の中大信号WMLに対応する「中大dML」よりも小さい。「ゼロ」「小」「大」に対応する信号WN、WS、WLは、
図18(A)の信号WN、WS、WLとそれぞれ同じである。
【0122】
図18(C)は、ドットデータによって示されるドットサイズと、波形データFIREと、駆動信号群と、選択データSINの階調データと、の関係を示す表である。上述したように、波形データFIREは、4個のドットサイズに対応する4個の駆動波形データを示している。本実施例では、波形データFIREは、第1駆動信号群の4個の駆動波形データと、第2駆動信号群の4個の駆動波形データと、を示し得る。第1駆動信号群は、dN、dS、dML、dLに対応する4個の駆動波形データを含んでいる。第2駆動信号群は、dN、dS、dM、dLに対応する4個の駆動波形データを含んでいる。本実施例では、各駆動波形データは、3ビットで表現される。
【0123】
選択データSINの階調データは、4個の駆動波形データの中から1個を選択するデータである。選択データSINの階調データは、4個のドットサイズ(「ゼロ」「小」「中」「大」)のいずれか1つを示している。本実施例では、選択データSINの階調データは、2ビットで表現される。
【0124】
図17のS420では、プロセッサ210は、対象画素ラインが重畳範囲内であるか否かを判断する。対象画素ラインが重畳範囲内である場合(S420:Yes)、S430で、プロセッサ210は、対象ラインドットデータを参照して、選択データSIN用の各画素の階調データを生成する。S433では、プロセッサ210は、第1駆動信号群を示す群選択データを生成する。S440では、プロセッサ210は、S430、S433で生成したデータを含むライン印刷データを、記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)に格納する。ライン印刷データは、対象画素ラインの印刷データである。
【0125】
対象画素ラインが非重畳範囲内である場合(S420:No)、S435で、プロセッサ210は、対象ラインドットデータを参照して、選択データSIN用の各画素の階調データを生成する。S435の処理は、S430の処理と同じである。S438では、プロセッサ210は、第2駆動信号群を示す群選択データを生成する。S440では、プロセッサ210は、S435、S438で生成したデータを含むライン印刷データを、記憶装置215(例えば、不揮発性記憶装置230)に格納する。
【0126】
S440に続くS450では、プロセッサ210は、全ての画素ラインが処理されたか否かを判断する。未処理の画素ラインが残っている場合(S450:No)、プロセッサ210は、S410へ移行し、新たな対象画素ラインを処理する。全ての画素ラインの処理が終了した場合(S450:Yes)、S460で、プロセッサ210は、印刷データを生成する。本実施例では、プロセッサ210は、複数のライン印刷データによって示される群選択データと選択データSIN用の階調データとの並び順を、印刷実行部400に出力される順番に変換し、そして、プリンタ制御コードを付加することによって、印刷データを生成する。そして、プロセッサ210は、
図17の処理、すなわち、
図16のS180eの処理を終了する。
【0127】
続く190eでは、プロセッサ210は、印刷データを印刷実行部400(
図3(C))に出力する。S195eでは、印刷実行部400の第2制御部490は、印刷データを用いて印刷実行部400を制御することによって、画像を印刷する。
【0128】
ここで、出力回路494aは、印刷データに含まれる群選択データを参照して、各画素ラインのための波形データFIREを生成する。本実施例では、波形データFIREは、第1駆動信号群の4個の駆動波形データと、第1駆動信号群に対応付けられるノズルNZの識別情報(すなわち、重畳範囲にドットを記録するノズルNZの識別情報)と、第2駆動信号群の4個の駆動波形データと、第2駆動信号群に対応付けられるノズルNZの識別情報(すなわち、非重畳範囲にドットを記録するノズルNZの識別情報)と、を含んでいる。また、出力回路494aは、印刷データに含まれる選択データSIN用の階調データを参照して、選択データSINを生成する。そして、出力回路494aは、これらのデータFIRE、SINを、記録周期T毎に、転送回路494bに出力する。転送回路494bは、出力回路494aから受信したデータFIRE、SINを、ヘッド駆動部414に転送する。ヘッド駆動部414は、転送回路494bからのデータFIRE、SINに従って、第1駆動信号群、または、第2駆動信号群の駆動信号を、個別電極413cに供給する。重畳範囲の印刷には、第1駆動信号群(
図18(C))の駆動信号が用いられ、非重畳範囲の印刷には、第2駆動信号群の駆動信号が用いられる。これらの結果、本実施例では、プロセッサ210は、
図8(A)の実施例の印刷結果と同じ印刷結果を生成できる。
【0129】
本実施例では、印刷される画像の濃度は、
図16のS180e(具体的には、
図17のS433、または、S438で生成される群選択データ)によって、制御される。例えば、S433が実行される場合、S433の代わりにS438が実行される場合と比べて、「中」に対応する実際のドットのサイズが大きくなる。S173eで生成されるドットデータは、濃度を制御する処理(S433)を含むデータ処理(S180e-190e)の対象の画像データである対象画像データの例である。
【0130】
以上のように、本実施例では、プロセッサ210は、対象画像データを用いて印刷実行部400に印刷画像を印刷させる印刷制御処理を実行する。印刷制御処理は、
図16のS180e-S190eを含んでいる。
【0131】
S180eでは、
図17に示すように、プロセッサ210は、重畳範囲と非重畳範囲との間で異なる処理を実行する。ここで、対象画像データのうち非重畳範囲に対応する非重畳範囲データに対して行われるS180e-S190eの印刷制御処理を、非重畳範囲処理と呼ぶ。非重畳範囲処理は、S433(
図17)を含まない。また、対象画像データのうち重畳範囲に対応する重畳範囲データに対して行われるS180e-S190eの印刷制御処理を、重畳範囲処理と呼ぶ。重畳範囲処理は、S433を含んでいる。このように、重畳範囲処理は、非重畳範囲処理とは異なる処理である。そして、プロセッサ210は、非重畳範囲データに対して非重畳範囲処理を実行することによって、印刷実行部400に非重畳範囲の画像を印刷させる。また、プロセッサ210は、重畳範囲データに対して、非重畳範囲処理とは異なる重畳範囲処理を実行することによって、印刷実行部400に重畳範囲の画像を印刷させる。
【0132】
図17で説明したように、S433の処理は、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部(具体的には、「中」に対応するドットで表現される部分)の濃度を増大させる。この結果、S433が実行される場合の実際のドットサイズは、S433が実行されない場合の実際のドットサイズと比べて、大きくなり得る。このように、重畳範囲処理(S433を含むS180e-S190eの処理)は、重畳範囲データに対して非重畳範囲処理(S433を含まないS180e-S190eの処理)が実行される場合と比べて、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる濃度制御処理(S433を含むS180e)を含んでいる。従って、プロセッサ210は、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることを抑制できる。
【0133】
また、本実施例では、印刷ヘッド410(
図3(A)-
図3(C))は、ノズルNZからインクを吐出させるための圧力を生成するアクチュエータ413xを備えている。アクチュエータ413xは、複数のノズルNZ毎に設けられている。ヘッド駆動部414は、複数のアクチュエータ413xに電気的に接続されている複数の駆動回路414dを備えている。具体的には、駆動回路414dは、信号線414sと個別電極413cとを介して、アクチュエータ413xに接続されている。そして、複数の駆動回路414dは、複数のアクチュエータ413xのそれぞれに駆動信号を出力する。
【0134】
濃度制御処理(S433を含むS180e)は、重畳範囲内の複数のドットのうち少なくとも1個のドット(具体的には「中」に対応するドット)を形成するために、重畳範囲データに対して非重畳範囲処理(S433を含まないS180e-S190e)が実行される場合に出力すべき駆動信号(具体的には中信号WM)と比べて大きなインク量に対応する駆動信号(具体的には中大信号WML)を、ヘッド駆動部414に出力させる。従って、重畳範囲に印刷される画像が薄くなることが抑制される。
【0135】
なお、本実施例では、プロセッサ210は、CMYKの全てのインクの群選択データを、
図18の処理によって決定する。これに代えて、プロセッサ210は、一部のインク(例えば、C、M)の群選択データを、
図18の処理によって決定し、残りのインク(例えば、Y、K)の群選択データを、画素ラインの位置に拘らずに、第2駆動信号群を示すデータに決定してよい。
【0136】
I.変形例:
(1)印刷処理は、上記の各実施例の処理に限らず、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させる種々の処理であってよい。例えば、
図9(B)の変更率CRは、
図7、または、
図10(A)の実施例に適用されてよい。重畳範囲に含まれる複数の画素ラインのうち、高い変更率CR(例えば、90%以上)を有する画素ラインに関しては、濃度の増大が省略されてよい。
図14(A)のトーンカーブTLa-TLfは、
図15のトーンカーブTLxと同様に、入力色値Vinが第2閾値V2よりも大きい場合に、出力色値Voutを入力色値Vinよりも小さい値に変換してよい。また、上記のトーンカーブTL、TLa-TLf、TLx(
図13、
図14(A)、
図15)は、いずれも、入力色値Vinが増大する場合に、出力色値Voutが増大するように、構成されている。ただし、入力色値Vinの一部の範囲で、出力色値Voutは一定でもよい。一般的には、入力色値Vinが増大する場合に、出力色値Voutは、減少せずに、一定値を維持、または、増大することが好ましい。また、対象画像データは、第1制御部299に接続された外部装置(例えば、パーソナルコンピュータ)によって生成されてよい。この場合、第1制御部299は、外部装置から対象画像データを取得してよい。
【0137】
(2)印刷実行部の構成は、
図1、
図2、
図3(A)-
図3(C)の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、利用可能なインクの種類数は、1以上の任意の数であってよい(例えば、CMYの3種類、ブラックKのみ、など)。また、利用可能なドットサイズの総数は、ゼロ(ドット無)のドットサイズとゼロより大きい1以上のドットサイズとを含む2以上の任意の数であってよい(例えば、ドット無(ゼロ)とドット有の2個、ゼロと中と大の3個、など)。
図7の実施例のように、重畳範囲のドットサイズを直接的に変更する場合には、利用可能なドットサイズの総数は、3以上であることが好ましい。
【0138】
印刷実行部は、いわゆるラインプリンタであってよい。ラインプリンタの印刷ヘッドは、1回の部分印刷の印刷対象範囲(例えば、
図4の第1印刷対象範囲R1)の複数の画素に対応する複数のノズルを備えている。印刷ヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインク滴を吐出することによって、1個のバンド画像の全てのドットを形成する(この処理は、部分印刷に対応する)。ヘッドを移動させるための移動装置(例えば、第2移動装置430(
図2))は、省略される。このようなラインプリンタは、移動装置(例えば、第1移動装置440)によって用紙PMが搬送されている状態で、ヘッドによってドットを形成する部分印刷を複数回実行することで、画像を印刷する。ここで、重畳範囲のドットは、ヘッドの搬送方向の端に近いノズルによって、形成される。このようなノズルによって形成されるドットの実際のサイズが非重畳範囲のドットの実際のサイズと比べて小さくなる場合、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させることが好ましい。
【0139】
また、印刷媒体は、紙に限らず、布、フィルムなど、種々の媒体であってよい。インクは顔料インクでも染料インクでもよく、UVインクなどの紫外線硬化性インク、ソルベントインクなどの有機溶剤を含有したインク、又は金属を含有したインクなどでもよい。
【0140】
いずれの場合も、印刷処理は、1以上のインクに関し、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させることが好ましい。また、重畳範囲の濃度を増大させる処理の対象のインクは、利用可能な1以上のインクから任意に選択されてよい。例えば、印刷処理は、利用可能な全てにインクに関して、重畳範囲に印刷すべき画像の少なくとも一部の濃度を増大させてよい。
【0141】
(3)プリンタの構成は、
図1の複合機200の構成に代えて、印刷実行部と、印刷実行部の制御装置と、を含む任意の構成であってよい。例えば、プリンタは、スキャナ部280を備えない単機能のプリンタであってよい。
【0142】
また、上記各実施例では、第1制御部299は、印刷実行部400を制御する制御装置の例である。第1制御部299は、印刷実行部400と同じ筐体(図示せず)に収容されている。これに代えて、印刷実行部に接続された外部の端末装置(例えば、パーソナルコンピュータ)が、印刷実行部を制御してよい。例えば、コンピュータを含む端末装置にインストールされたプリンタドライバが、印刷処理を実行してよい。端末装置は、印刷処理を実行することによって印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷実行部(例えば、印刷実行部400)に出力する。印刷実行部は、印刷データに従って画像を印刷する。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、印刷のための制御処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、制御処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが制御装置に対応する)。
【0143】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図6のS173のハーフトーンを実行する機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
【0144】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0145】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0146】
200…複合機、210…プロセッサ、215…記憶装置、220…揮発性記憶装置、230…不揮発性記憶装置、232…プログラム、240…表示部、250…操作部、270…通信インタフェース、280…スキャナ部、299…第1制御部、400…印刷実行部、410…印刷ヘッド、411…ノズル形成面、412…流路ユニット、412a…共通流路、412b…個別流路、412p…圧力室、413…アクチュエータユニット、413a…振動板、413b…圧電層、413c…個別電極、413x…アクチュエータ、414…ヘッド駆動部、414d…駆動回路、414s…信号線、430…第2移動装置、433…キャリッジ、434…摺動軸、435…ベルト、436…プーリ、440…第1移動装置、441…第1ローラ、442…第2ローラ、450…インク供給部、451…カートリッジ装着部、452…チューブ、453…バッファタンク、490…第2制御部、491…プロセッサ、492…揮発性記憶装置、493…不揮発性記憶装置、494a…出力回路、494b…転送回路、KC、YC、CC、MC…インクカートリッジ、NK、NY、NC、NM…ノズル群、NZ…ノズル、PM…用紙、PT…プラテン、Dy…搬送方向(移動方向、副走査方向)、Dx…主走査方向