(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】特異材料検出装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20241017BHJP
G16C 60/00 20190101ALI20241017BHJP
G16C 20/70 20190101ALI20241017BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20241017BHJP
【FI】
G06F30/27
G16C60/00
G16C20/70
G06F30/12
(21)【出願番号】P 2023506875
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005625
(87)【国際公開番号】W WO2022196208
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021044487
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「CFRP向けマテリアルインテグレーション(MI)システムの高速実装と評価」委託研究及び「CFRP向けマテリアルインテグレーション(MI)システムの研究開発」委託研究(研究推進法人:JST)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鍬守 直樹
(72)【発明者】
【氏名】撫佐 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】風間 悠加
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 広明
(72)【発明者】
【氏名】菊川 豪太
(72)【発明者】
【氏名】岡部 朋永
(72)【発明者】
【氏名】小松 一彦
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-293315(JP,A)
【文献】特開2016-099737(JP,A)
【文献】特開2007-087098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G16C 10/00 -99/00
G06Q 10/04
G16B 5/00 -99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出手段と、を有する特異材料検出装置。
【請求項2】
前記特異ノード検出手段は、複数の前記材料諸元情報それぞれを、その材料諸元情報に対応する前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードに割り当てる、請求項1に記載の特異材料検出装置。
【請求項3】
前記特異ノード検出手段は、前記材料諸元情報が割り当てられている各前記ノードのうち、前記マップ空間上の基準位置からの距離が閾値より大きい前記ノードを、前記特異ノードとして検出する、請求項1又は2に記載の特異材料検出装置。
【請求項4】
前記特異ノード検出手段は、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの重心位置又は幾何中心を前記基準位置として利用し、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの位置の分布の大きさを表す統計値、又はその統計値に所定の正の実数を掛けた値を、前記閾値として利用する、請求項3に記載の特異材料検出装置。
【請求項5】
前記特異ノード検出手段は、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードを、前記材料諸元情報に基づいて複数のクラスタに分割し、
複数の前記クラスタそれぞれについて、そのクラスタに含まれる各前記ノードの前記マップ空間上の位置の分布に基づいて、そのクラスタに属する前記ノードの中から前記特異ノードを検出する、請求項1から4いずれか一項に記載の特異材料検出装置。
【請求項6】
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードを表すマップ画像を生成するマップ画像生成手段を有し、
前記マップ画像は、前記特異ノードを示す表示を含む、請求項1から5いずれか一項に記載の特異材料検出装置。
【請求項7】
前記特異ノードを示す表示は、その特異ノードに割り当てられている前記材料諸元情報によって表される材料諸元、及びその特異ノードに割り当てられている前記物性ベクトルによって表される物性のいずれか一方又は双方を示す、請求項6に記載の特異材料検出装置。
【請求項8】
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出ステップと、を有する制御方法。
【請求項9】
前記特異ノード検出ステップにおいて、複数の前記材料諸元情報それぞれを、その材料諸元情報に対応する前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードに割り当てる、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出ステップと、を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品開発に関連する情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品開発では、材料と成果物の関係を把握することが有用である。そこで、材料と成果物の関係の把握を支援するシステムが開発されている。例えば特許文献1は、自己組織化マップを利用して、タイヤの設計値と物性値との因果関係の把握を支援するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、タイヤの複数の設計変数のうち、どの変数が重要な因子であるのかを特定するために、自己組織化マップが利用されている。そのため、それ以外の目的で自己組織化マップを利用することは想定されていない。本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、製品開発に有用な情報を提供する新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の特異材料検出装置は、対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得部と、前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成部と、各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出部と、を有する。
【0006】
本開示の制御方法は、コンピュータによって実行される。当該制御方法は、対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出ステップと、を有する。
【0007】
本開示の非一時的なコンピュータ可読媒体は、本開示の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、製品開発に有用な情報を提供する新たな技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の特異材料検出装置の動作の概要を例示する図である。
【
図2】実施形態1の特異材料検出装置の機能構成を例示するブロック図である。
【
図3】特異材料検出装置を実現するコンピュータのハードウエア構成を例示するブロック図である。
【
図4】実施形態1の特異材料検出装置によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図5】材料諸元情報をテーブル形式で例示する図である。
【
図6】物性情報をテーブル形式で例示する図である。
【
図7】材料諸元情報の割り当てが行われた後の自己組織化マップの構成をテーブル形式で例示する図である。
【
図8】可視化されたマップ空間を例示する図である。
【
図9】複数のクラスタそれぞれから特異ノードを検出するケースを例示する図である。
【
図10】特異ノードが強調表示されているマップ画像を例示する図である。
【
図11】特異ノードに対応する材料諸元と物性に関する情報が含まれるマップ画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。また、特に説明しない限り、所定値や閾値などといった予め定められている情報は、その情報を利用する装置からアクセス可能な記憶装置などに予め格納されている。
【0011】
[実施形態1]
<概要>
図1は、実施形態1の特異材料検出装置2000の動作の概要を例示する図である。ここで、
図1は、特異材料検出装置2000の概要の理解を容易にするための図であり、特異材料検出装置2000の動作は、
図1に示したものに限定されない。
【0012】
特異材料検出装置2000は、製品開発の特定の工程(以下、対象工程)で利用されうる様々な種類の材料60の中から、特異な物性を持つ成果物70を生成しうる材料60を検出するために利用される。成果物70は、対象工程の生成プロセスで材料60を処理することによって生成されると予測されるもの、又は、実際に生成されたものである。材料60は、成果物70の生成に利用される材料である。対象工程では、様々なパターンの材料60を利用できる。成果物70の物性は、利用する材料60によって異なりうる。
【0013】
材料60の1つのパターンは、材料諸元によって特定される。言い換えれば、材料諸元が互いに異なる材料60は、互いに異なるパターンの材料60として扱われる。一方、材料諸元が互いに同じである材料60は、互いに同じパターンの材料60として扱われる。
【0014】
材料諸元は、例えば、材料の種類、材料を構成する物質の種類、各物質の配合比率、及び材料を作成するために行われる加工の種類などで表される。材料の種類としては、例えば、炭素繊維強化プラスチックやステンレス鋼などがある。例えば、材料60が炭素繊維強化プラスチックであるとする。この場合、材料60の材料諸元は、材料60を構成する1つ又は複数の炭素繊維それぞれの種類(ポリアクリルニトリル繊維やセルロース炭化繊維など)、材料60を構成する1つ又は複数の樹脂それぞれの種類(エポキシやポリエーテルテフタレートなど)、及びそれらの物質の配合比率を含む。また、材料諸元には、繊維方向性重合方式の種類、圧着方式の種類、及び樹脂組成などがさらに含まれてもよい。
【0015】
特異材料検出装置2000は、以下のように動作する。すなわち、特異材料検出装置2000は、複数パターンの材料60それぞれについて(言い換えれば、複数パターンの材料諸元それぞれで特定される材料60について)、その材料60の材料諸元を表す材料諸元情報10と、その材料60を利用して対象工程で生成されうる成果物70の物性を示す物性情報20を取得する。物性情報20は、成果物70について、複数種類の物性それぞれの物性量を示す。物性の種類は、例えば、難燃性、耐熱性、弾性率、又は靱性などである。
【0016】
特異材料検出装置2000は、物性情報20を用いて、成果物70の物性の分布を表す自己組織化マップ30を生成する。自己組織化マップ30は、m次元の空間上に配置された複数のノードを有する。以下、このm次元空間をマップ空間と表記する。ここで後述するように、特異材料検出装置2000が、マップ空間におけるノードの配置が可視化された画像を生成する場合には、mは2又は3とする。例えばこの場合、ノードは、マス目のマスや格子上の格子などとして表現することができる。
【0017】
自己組織化マップ30の各ノードには、複数種類の物性それぞれの物性量の大きさを表す多次元データ(以下、物性ベクトル)が割り当てられる。例えば、難燃性、耐熱性、弾性率、及び靱性という4種類の物性を利用するとする。この場合、物性ベクトルは、これら4種類の物性それぞれの物性量の大きさを表す4次元データである。以下、物性ベクトルの次元数をnとおく。なお、n>mである。すなわち、自己組織化マップ30において、物性ベクトルの空間が高次元空間であり、マップ空間が低次元空間である。
【0018】
物性情報20は、n種類以上の種類の物性についての物性量を示す。特異材料検出装置2000は、物性情報20によって示されているn種類の物性についての物性量を利用して自己組織化マップ30の学習を行うことにより、各ノードに割り当てる物性ベクトルを決定することで、自己組織化マップ30を生成する。
【0019】
さらに、特異材料検出装置2000は、各材料諸元情報10を、自己組織化マップ30のいずれかのノードへ割り当てる。具体的には、特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10に対応する物性情報20から得られる物性ベクトルについて、その物性ベクトルと最も類似する物性ベクトルを持つノードを特定する。そして、特異ノード検出部2060は、その材料諸元情報10を、特定したノードに割り当てる。
【0020】
特異材料検出装置2000は、材料諸元情報10が対応づけられたノードのうち、マップ空間におけるそれらのノードの分布において特異な位置にあるノードを、特異ノードとして検出する。これは、材料諸元情報10が対応づけられたノードのマップ空間における分布において、特異ノードの位置が、統計的に特異な位置(外れ値)であることを意味する。
【0021】
<作用効果の一例>
試行錯誤しながら製品開発を行う中で、まれに、特異な物性を持つ成果物が得られることがある。このような特異な成果物は、その研究などを通じて新たな原理、添加、又は性質などの発見につながる可能性があることから、重要なものであるといえる。
【0022】
特異材料検出装置2000によれば、特異な成果物を生成しうる材料60を検出することができる。具体的には、特異材料検出装置2000は、物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する。これにより、マップ空間におけるノードの配置によって物性の分布を表す自己組織化マップ30が得られる。さらに特異材料検出装置2000は、各材料諸元情報10を自己組織化マップ30のノードに割り当て、材料諸元情報10が割り当てられているノードの中から特異ノードを検出する。特異ノードは、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、他のノードから大きく離れた位置にあるノードである。
【0023】
ここで、マップ空間において2つのノードの間の距離が大きいことは、それらのノードに対応する物性の類似度合いが低いことを表す。このことから、特異ノードに割り当てられている材料諸元情報10で表される材料60は、特異な物性を持つ成果物70を生成しうる材料60であると言える。よって、特異材料検出装置2000を利用することにより、特異材料検出装置2000のユーザは、特異な成果物を生成しうる材料60を把握することができる。
【0024】
以下、本実施形態の特異材料検出装置2000について、より詳細に説明する。
【0025】
<機能構成の例>
図2は、実施形態1の特異材料検出装置2000の機能構成を例示するブロック図である。特異材料検出装置2000は、取得部2020、自己組織化マップ生成部2040、及び特異ノード検出部2060を有する。取得部2020は、複数パターンの材料60それぞれについて、材料諸元情報10及び物性情報20を取得する。自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する。特異ノード検出部は、各材料諸元情報10を自己組織化マップ30の各ノードに対して割り当てる。さらに、特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、マップ空間におけるそれらの分布において特異な位置にあるノードを、特異ノードとして検出する。
【0026】
<ハードウエア構成の例>
特異材料検出装置2000の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、特異材料検出装置2000の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0027】
図3は、特異材料検出装置2000を実現するコンピュータ500のハードウエア構成を例示するブロック図である。コンピュータ500は、任意のコンピュータである。例えばコンピュータ500は、サーバマシンや PC(Personal Computer)などといった、据え置き型のコンピュータである。その他にも例えば、コンピュータ500は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型のコンピュータである。コンピュータ500は、特異材料検出装置2000を実現するために設計された専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。
【0028】
例えば、コンピュータ500に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、コンピュータ500で、特異材料検出装置2000の各機能が実現される。上記アプリケーションは、特異材料検出装置2000の各機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。なお、上記プログラムの取得方法は任意である。例えば、当該プログラムが格納されている記憶媒体(DVD ディスクや USB メモリなど)から、当該プログラムを取得することができる。その他にも例えば、当該プログラムが格納されている記憶装置を管理しているサーバ装置から、当該プログラムをダウンロードすることにより、当該プログラムを取得することができる。
【0029】
コンピュータ500は、バス502、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512を有する。バス502は、プロセッサ504、メモリ506、ストレージデバイス508、入出力インタフェース510、及びネットワークインタフェース512が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ504などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0030】
プロセッサ504は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ506は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス508は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0031】
入出力インタフェース510は、コンピュータ500と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース510には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0032】
ネットワークインタフェース512は、コンピュータ500をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、WAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0033】
ストレージデバイス508は、特異材料検出装置2000の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ504は、このプログラムをメモリ506に読み出して実行することで、特異材料検出装置2000の各機能構成部を実現する。
【0034】
特異材料検出装置2000は、1つのコンピュータ500で実現されてもよいし、複数のコンピュータ500で実現されてもよい。後者の場合において、各コンピュータ500の構成は同一である必要はなく、それぞれ異なるものとすることができる。
【0035】
<処理の流れ>
図4は、実施形態1の特異材料検出装置2000によって実行される処理の流れを例示するフローチャートである。取得部2020は、対象工程で利用されうる複数の材料60それぞれについて、材料諸元情報10及び物性情報20を取得する(S102)。自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して、自己組織化マップ30を生成する(S104)。特異ノード検出部2060は、各材料諸元情報10を、自己組織化マップ30のいずれかのノードに対して割り当てる(S106)。特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、マップ空間におけるそれらの分布において特異な位置にあるノードを、特異ノードとして検出する(S108)。
【0036】
<材料諸元情報10及び物性情報20の取得:S102>
取得部2020は、対象工程において利用されうる複数パターンの材料60それぞれについて、その材料60の材料諸元を表す材料諸元情報10と、その材料60を用いて生成されうる成果物70についての物性情報20を取得する(S102)。
図5は、材料諸元情報10をテーブル形式で例示する図である。
図5のテーブル100は、材料識別情報102及び材料諸元104という列を有する。材料識別情報102は、材料60に割り当てられた識別情報を示す。材料諸元104は、材料60の諸元を示す。
【0037】
図5において、材料諸元情報10は、テーブル100の1つのレコードで表されている。すなわち、材料諸元情報10は、材料60の識別情報と、その識別情報を持つ材料60の材料諸元とを対応づけている。
【0038】
図6は、物性情報20をテーブル形式で例示する図である。
図6のテーブル200は、成果物識別情報202及び物性204という列を有する。成果物識別情報202は、成果物70の識別情報を示す。物性204は、成果物70の物性を示す。テーブル200において、成果物70の物性は、「物性の種類を表すラベル:その物性の物性量」という対応付けを物性ごとに示すことによって表されている。
【0039】
図6において、物性情報20は、テーブル200の1つのレコードで表されている。すなわち、物性情報20は、成果物70の識別情報と、その識別情報を持つ成果物70の物性とを対応づけている。
【0040】
取得部2020は、材料諸元情報10と物性情報20のペアを複数取得する。取得部2020が材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得する方法は様々である。例えば材料諸元情報10と物性情報20のペアは予め、特異材料検出装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に格納されている。取得部2020は、この記憶装置にアクセスすることにより、材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得する。その他にも例えば、取得部2020は、材料諸元情報10と物性情報20のペアを入力するユーザ入力を受け付けることにより、材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得してもよい。その他にも例えば、取得部2020は、他の装置から送信される材料諸元情報10と物性情報20のペアを受信することにより、材料諸元情報10と物性情報20のペアを取得してもよい。
【0041】
ここで、材料諸元情報10と物性情報20のペアを生成する方法は様々である。例えば、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、成果物70の生成のシミュレーションを行うことで生成される。具体的には、特定の材料諸元を入力として与えてシミュレーションを実行することにより、成果物70について各物性の物性量の予測値を示す物性情報20が生成される。そして、生成された物性情報20と、入力として与えた材料諸元を示す材料諸元情報10とのペアが得られる。ここで、材料諸元を入力として取得し、その材料諸元で特定される材料について、その材料を用いて特定の工程で生成される成果物の物性の予測データを出力するシミュレーションを実現する技術には、既存の技術を利用することができる。
【0042】
その他にも例えば、材料諸元情報10と物性情報20のペアは、成果物70の生成を実際に行うことで生成されてもよい。具体的には、特定の材料諸元で表される材料60を対象工程で利用することで、成果物70が実験的に生成される。さらに、生成された成果物70について、各物性の物性量の測定を行うことにより、物性情報20が生成される。その結果、生成された物性情報20と、利用した材料60を表す材料諸元情報10のペアが得られる。
【0043】
なお、取得部2020によって取得される物性情報20の中には、データの表現方法が互いに異なるものが含まれうる。例えば、本質的に等しい物性に対し、互いに異なるラベルが利用されていることが考えられる。また、同一の物性の物性量が、互いに異なる単位で表されていることが考えられる。このような場合、取得部2020は、ラベルの統一や単位換算などを行うことで、データの表現方法を統一することが好適である。このように物性情報20同士でデータの表現方法が互いに異なる状況は、例えば、シミュレーションを利用して生成された物性情報20と、実験的に成果物70を生成することで生成された物性情報20の双方を取得する場合に起こりうると考えられる。なお、このようなデータの表現方法の統一は、材料諸元情報10についても同様に行われることが好ましい。
【0044】
<自己組織化マップ30の生成:S104>
自己組織化マップ生成部2040は、物性情報20を利用して自己組織化マップ30を生成する(S104)。自己組織化マップ30は、m次元のマップ空間上に配置された複数のノードを有する。マップ空間の次元数は、予め定められていてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
【0045】
自己組織化マップ30の各ノードには、n次元の物性ベクトルが割り当てられる。各ノードに対する物性ベクトルの割り当ては、自己組織化マップ30の学習によって行われる。自己組織化マップ30の学習は、学習に利用するn次元の訓練データを自己組織化マップ30に入力することで行うことができる。ここで、訓練データを用いて自己組織化マップの学習を行う具体的な方法には、既存の方法を利用することができる。
【0046】
例えば自己組織化マップ生成部2040は、自己組織化マップ30を任意の方法で初期化する。初期化の方法としては、例えば、各ノードの物性ベクトルをランダムな値に初期化するといった方法を採用できる。自己組織化マップ生成部2040は、取得した複数の各物性情報20それぞれから、n種類の物性それぞれの物性量を抽出することにより、複数のn次元の物性ベクトルを生成する。自己組織化マップ生成部2040は、これら複数の物性ベクトルそれぞれを訓練データとして扱って自己組織化マップ30の学習を行うことで、自己組織化マップ30を生成する。その結果、自己組織化マップ30の各ノードの物性ベクトルは、n種類の物性の物性量それぞれに関する値を示すn次元データとなる。
【0047】
物性情報20から得られる物性ベクトルは、物性情報20によって示されるn種類の物性それぞれの物性量をそのまま示してもよいし、各物性量を所定の方法(例えば、正規化や標準化など)で変換することで得られる値を示してもよい。
【0048】
ここで、物性情報20によって示される物性の数は、nより多くてもよい。この場合、物性情報20によって示されるデータの一部が、自己組織化マップ30の生成に利用される。ここで、物性情報20が示す物性のうち、どの種類の物性を利用して自己組織化マップ30を生成するのかについては、予め定められてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
【0049】
<材料諸元情報10の割り当て:S106>
特異ノード検出部2060は、取得部2020によって取得された各材料諸元情報10を、自己組織化マップ30のいずれかのノードに割り当てる(S106)。具体的には、特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10に対応する物性情報20から得られる物性ベクトルについて、その物性ベクトルと最も類似する物性ベクトルを持つノードを特定する。そして、特異ノード検出部2060は、その材料諸元情報10を、特定したノードに割り当てる。
【0050】
図7は、材料諸元情報10の割り当てが行われた後の自己組織化マップ30の構成をテーブル形式で例示する図である。
図7のテーブル300は、位置302、物性ベクトル304、及び材料識別情報306という3つの列を有する。テーブル300は、1つのノードにつき1つのレコードを有する。
【0051】
位置302は、m次元空間上におけるノードの座標を示す。
図7の例ではm=2であり、ノードに対してx座標とy座標が割り当てられている。物性ベクトル304は、ノードに対して割り当てられているn次元の物性ベクトルを表す。
図7の例ではn=4である。材料識別情報306は、材料諸元情報10が割り当てられているノードについて、そのノードに割り当てられている材料諸元情報10が示す材料60の識別情報を示す。材料諸元情報10が割り当てられていないノードのレコードでは、材料識別情報306は「-」を示している。
【0052】
<特異ノードの検出:S108>
特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードの中から、特異ノードを検出する(S108)。特異ノードは、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、マップ空間におけるそれらのノードの分布において特異な位置にあるノードである。
【0053】
例えば特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのマップ空間上の位置の分布に基づいて、基準位置と特異閾値を決定し、これらを用いて特異ノードを検出する。基準位置と特異閾値は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、基準位置からの距離が特異閾値より大きいノードの位置が、上記分布において統計的に特異な位置となるように決定される。そして、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、基準位置からの距離が特異閾値より大きいノードが、特異ノードとして検出される。
【0054】
例えば特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられている各ノードのマップ空間上の位置に基づいて、それらの位置の重心位置又は幾何中心を算出し、算出した位置を基準位置として利用する。また、特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられている各ノードのマップ空間上の位置に基づいて、それらの位置の分布の大きさを表す統計値(標準偏差など)を算出し、その統計値やその統計値に所定の正の実数を掛けた値を、特異閾値として算出する。ここで、多次元空間上の複数の位置に基づいて、それらの重心位置や幾何中心を算出する手法や、それらの分布の大きさを表す統計値を算出する手法には、既存の手法を利用できる。
【0055】
特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられている各ノードについて、そのノードと基準位置との距離を算出し、算出した距離が特異閾値より大きいか否かを判定する。そして、特異ノード検出部2060は、基準位置との間の距離が特異閾値より大きいと判定されたノードを、特異ノードとして検出する。
【0056】
図8は、可視化されたマップ空間を例示する図である。
図8の例において、マップ空間の次元数は2である。各ノードは、マス目のマスとして表されている。表示42は、ノードに対応づけられている材料諸元情報10を特定可能な情報を示す。具体的には、
図8の例において、表示42は材料識別情報を示している。基準位置44は、基準位置を表している。領域46は、基準位置44からの距離が特異閾値以下である範囲を表している。
【0057】
図8において、P109 を示す表示42に対応するノードは、領域46の外に位置している。すなわち、このノードの位置は、基準位置44からの距離が特異閾値より大きい位置である。そこで、このノードが特異ノードとして検出される。
【0058】
<ノードのクラスタリング>
図8の例では、材料諸元情報10が割り当てられている全てのノードの分布に着目して、特異ノードが検出されている。この点、特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードを複数のクラスタに分割し、クラスタごとに特異ノードを検出してもよい。例えば特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられている各ノードに対し、その材料諸元情報10によって示される複数種類のパラメータそれぞれの値を表す多次元データ(以下、諸元ベクトル)を割り当てる。そして、特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられている複数のノードを、対応する諸元ベクトルに基づいてクラスタリングすることによって、複数のクラスタに分割する。なお、クラスタリングの具体的な手法には、k-means 法などといった任意のクラスタリングアルゴリズムを利用できる。
【0059】
ここで、諸元ベクトルは、材料諸元情報10によって示される全てのパラメータについての値を示してもよいし、その中の一部のパラメータについての値を示してもよい。すなわち、諸元ベクトルの次元数をkとおくと、kの値は、材料諸元情報10が示すパラメータの数と同じであってもよいし、材料諸元情報10が示すパラメータの数より小さくてもよい。
【0060】
例えば材料諸元情報10が、連続値をとるパラメータ(例えば、物質の配合比率)と、連続値をとらないパラメータ(例えば、加工の種類など)の双方を示すとする。この場合、例えば諸元ベクトルは、連続値をとるパラメータのみを用いて生成される。
【0061】
なお、材料諸元情報10が示すパラメータのうち、どのパラメータを利用して諸元ベクトルを生成するのかについては、予め定められてもよいし、ユーザによって指定されてもよい。また、諸元ベクトルは、材料諸元情報10によって示されているパラメータの値をそのまま示してもよいし、各パラメータの値を所定の方法で変換する(例えば、正規化や標準化を行う)ことで得られる値を示してもよい。
【0062】
クラスタリングの方法は、諸元ベクトルを利用する方法に限定されない。例えば特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が示す材料の種類に基づいてノードをクラスタリングしてもよい。例えば特異材料検出装置2000が取得した材料諸元情報10の中に、炭素繊維強化プラスチックに分類される材料60と、ステンレス鋼に分類される材料60などのように、互いに異なる種類の材料60を示すものが含まれうる。そこで特異ノード検出部2060は、割り当てられている材料諸元情報10が示す材料60の種類ごとに、ノードをクラスタに分類する。これにより、材料60の種類ごとに特異ノードを検出することができる。
【0063】
また、特異ノード検出部2060は、材料60の種類ごとにクラスタを生成した後、各クラスタに対し、諸元ベクトルに基づくクラスタリングをさらに適用してもよい。
【0064】
特異ノード検出部2060は、クラスタごとに基準位置と特異閾値を算出する。ここで、クラスタの総数が Nc であるとする。また、i番目のクラスタをクラスタiと表記する。さらに、クラスタiについて算出される基準位置及び特異閾値をそれぞれ、基準位置i及び特異閾値iと表記する。例えば特異ノード検出部2060は、i=1,2,...,Nc のそれぞれについて以下に示す処理を行うことで、各クラスタについて特異ノードの検出を行う。
【0065】
まず特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、クラスタiに含まれる複数のノードそれぞれの位置に基づいて、基準位置iと特異閾値iを算出する。その算出方法には、クラスタリングを行わないケースと同様の方法を採用できる。すなわち、例えば特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、クラスタiに含まれる複数のノードについて、それらのノードの位置の重心位置や幾何中心を算出し、算出された位置を基準位置iとして扱う。また、例えば特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、クラスタiに含まれる複数のノードについて、それらの位置の分布の大きさを表す統計値を算出し、その統計値やその統計値に所定の正の実数を掛けた値を、特異閾値iとして扱う。
【0066】
さらに特異ノード検出部2060は、材料諸元情報10が割り当てられているノードのうち、クラスタiに含まれる各ノードについて、その位置と基準位置iとの間の距離が特異閾値iより大きいか否かを判定する。そして、特異ノード検出部2060は、基準位置iとの間の距離が特異閾値iより大きいと判定されたノードを、クラスタiにおける特異ノードとして検出する。
【0067】
図9は、複数のクラスタそれぞれから特異ノードを検出するケースを例示する図である。
図9の例では、材料諸元情報10が割り当てられているノードが、2つのクラスタに分割されている。クラスタ1に分類されたノードは、表示42の枠が実線で表されている。一方、クラスタ2に分類されたノードは、表示42の枠が点線で表されている。
【0068】
基準位置44-1は、クラスタ1について算出された基準位置を表している。また、領域46-1は、基準位置44-1からの距離が、クラスタ1について算出された特異閾値以下となる範囲を表している。クラスタ1に分類されたノードのうち、材料識別情報が P102 であるノードは、領域46-1の外に位置している。よって、このノードが、クラスタ1についての特異ノードとして検出される。
【0069】
一方、基準位置44-2は、クラスタ2について算出された基準位置を表している。また、領域46-2は、基準位置44-2からの距離が、クラスタ2について算出された特異閾値以下となる範囲を表している。ここで、クラスタ2に分類されたノードはいずれも、領域46-2の中に位置している。よって、クラスタ2からは、特異ノードが検出されない。
【0070】
ここで、上述したクラスタリングを行うことにより効果について説明する。互いに類似する材料諸元の材料60それぞれを利用して成果物70を生成する場合、互いに類似する成果物70が生成される蓋然性が高い。よって、互いに類似する材料諸元情報10が対応づけられているノードは、マップ空間において互いに近い場所に位置する蓋然性が高い。そのため、互いに類似する材料諸元情報10が対応づけられているノードの中に、マップ空間における位置が特異なものがあれば、そのノードに割り当てられている材料諸元情報10は、特異な材料60を表していると言える。
【0071】
そこで特異材料検出装置2000は、材料諸元に基づくクラスタリングを行い、クラスタごとに特異ノードの検出を行う。こうすることで、互いに類似する材料60の中から、特異な成果物70を生成しうる材料60を検出することができる。
【0072】
<処理結果の出力>
特異材料検出装置2000は、処理結果を表す出力情報を出力する。出力情報は、検出された特異ノードを把握可能な情報を含む。検出された特異ノードを把握可能な情報は、例えば、可視化されたマップ空間を表す画像(以下、マップ画像)や、その画像を含む画面のデータを含む。以下、マップ画像の生成を行う機能構成部を、マップ画像生成部と呼ぶ(図示せず)。
【0073】
ここで、マップ画像では、特異ノードを他のノードと容易に区別できるように、特異ノードが強調表示されていることが好適である。
図10は、特異ノードが強調表示されているマップ画像を例示する図である。なお、
図10のマップ画像40は、特異ノードに対応する表示42が強調表示されている点を除き、
図8と同様である。
【0074】
図10において、特異ノードは、P109 という材料識別情報を持つノードである。そこで、このノードに付されている表示42は、他の表示42よりもサイズが大きく、かつ、枠線が太くなっている。
【0075】
ここで、特異材料検出装置2000のユーザは、特異ノードに対応する材料諸元や物性に興味があると考えられる。そこで例えば、マップ画像40には、特異ノードに対応づけられている材料諸元や物性に関する情報が含まれてもよい。
【0076】
図11は、特異ノードに対応する材料諸元と物性に関する情報が含まれるマップ画像40を例示する図である。
図11の内容は、表示42の内容が
図10に示されているものと異なるという点を除き、
図10の内容と同じである。
図11において、特異ノードの表示42は、特異ノードに対応する材料諸元情報10の内容として、「P109」という材料識別情報と、物質Aから物質Cの配合比率という材料諸元を示している。さらに、特異ノードの表示42は、特異ノードに対応する物性の内容として、物性U、V、及びWそれぞれの物性量を示している。
【0077】
ここで、マップ画像40を含む画面データを出力情報に含める場合、当該画面データによって表される画面でユーザからの入力を受け付け、その入力に応じて、ノードに関する情報が出力するようにしてもよい。例えば、ユーザが利用する端末のディスプレイ装置に対して最初に出力される画面には、
図10に例示されているマップ画像40を示しておく。すなわち、各ノードの表示42の内容を、材料識別情報にしておく。その後、ユーザによって特定のノードを指定する入力操作(例えば、ノードの表示42に対するタップ、クリック、又はマウスオーバーなど)が行われたら、そのノードについての表示42を、
図11に例示されている表示42のように、材料諸元や物性の内容を示す表示42に変更する。
【0078】
なお、ノードに対して割り当てられている物性ベクトルの各要素の値は、物性量をそのまま表すものではなく、正規化等によって変換されたものである場合もある。このような場合、特異材料検出装置2000は、ユーザによって指定されたノードについて、物性ベクトルの要素の値を物性量に変換し、当該変換によって得られた物性量を表示42に含めるようにする。
【0079】
出力情報はマップ画像40やマップ画像を含む画面に限定されない。例えば出力情報は、特異ノードについて、マップ空間上の位置、割り当てられている材料諸元情報10の内容、及び割り当てられている物性ベクトルによって表される成果物70の物性などの情報を示すテキスト情報であってもよい。また、出力情報は、特異ノードについて、マップ空間上の位置に基づく特異度合いをさらに示してもよい。例えば特異度合いは、特異ノードと基準位置との間の距離を特異閾値で割った値などで表すことができる。この特異度合いは、マップ画像40に示されていてもよい。
【0080】
ここで、出力情報の出力態様は任意である。例えば特異材料検出装置2000は、特異材料検出装置2000からアクセス可能な任意の記憶装置に出力情報を格納する。その他にも例えば、特異材料検出装置2000は、特異材料検出装置2000から制御可能な任意のディスプレイ装置に出力情報を表示させる。その他にも例えば、特異材料検出装置2000は、特異材料検出装置2000と通信可能に接続されている任意の装置に対して、出力情報を送信する。
【0081】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0082】
なお、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに提供することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスク ROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに提供されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0083】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得手段と、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成手段と、
各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出手段と、を有する特異材料検出装置。
(付記2)
前記特異ノード検出手段は、複数の前記材料諸元情報それぞれを、その材料諸元情報に対応する前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードに割り当てる、付記1に記載の特異材料検出装置。
(付記3)
前記特異ノード検出手段は、前記材料諸元情報が割り当てられている各前記ノードのうち、前記マップ空間上の基準位置からの距離が閾値より大きい前記ノードを、前記特異ノードとして検出する、付記1又は2に記載の特異材料検出装置。
(付記4)
前記特異ノード検出手段は、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの重心位置又は幾何中心を前記基準位置として利用し、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの位置の分布の大きさを表す統計値、又はその統計値に所定の正の実数を掛けた値を、前記閾値として利用する、付記3に記載の特異材料検出装置。
(付記5)
前記特異ノード検出手段は、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードを、前記材料諸元情報に基づいて複数のクラスタに分割し、
複数の前記クラスタそれぞれについて、そのクラスタに含まれる各前記ノードの前記マップ空間上の位置の分布に基づいて、そのクラスタに属する前記ノードの中から前記特異ノードを検出する、付記1から4いずれか一項に記載の特異材料検出装置。
(付記6)
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードを表すマップ画像を生成するマップ画像生成手段を有し、
前記マップ画像は、前記特異ノードを示す表示を含む、付記1から5いずれか一項に記載の特異材料検出装置。
(付記7)
前記特異ノードを示す表示は、その特異ノードに割り当てられている前記材料諸元情報によって表される材料諸元、及びその特異ノードに割り当てられている前記物性ベクトルによって表される物性のいずれか一方又は双方を示す、付記6に記載の特異材料検出装置。
(付記8)
コンピュータによって実行される制御方法であって、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出ステップと、を有する制御方法。
(付記9)
前記特異ノード検出ステップにおいて、複数の前記材料諸元情報それぞれを、その材料諸元情報に対応する前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードに割り当てる、付記8に記載の制御方法。
(付記10)
前記特異ノード検出ステップにおいて、前記材料諸元情報が割り当てられている各前記ノードのうち、前記マップ空間上の基準位置からの距離が閾値より大きい前記ノードを、前記特異ノードとして検出する、付記8又は9に記載の制御方法。
(付記11)
前記特異ノード検出ステップにおいて、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの重心位置又は幾何中心を前記基準位置として利用し、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの位置の分布の大きさを表す統計値、又はその統計値に所定の正の実数を掛けた値を、前記閾値として利用する、付記10に記載の制御方法。
(付記12)
前記特異ノード検出ステップにおいて、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードを、前記材料諸元情報に基づいて複数のクラスタに分割し、
複数の前記クラスタそれぞれについて、そのクラスタに含まれる各前記ノードの前記マップ空間上の位置の分布に基づいて、そのクラスタに属する前記ノードの中から前記特異ノードを検出する、付記8から11いずれか一項に記載の制御方法。
(付記13)
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードを表すマップ画像を生成するマップ画像生成ステップを有し、
前記マップ画像は、前記特異ノードを示す表示を含む、付記8から12いずれか一項に記載の制御方法。
(付記14)
前記特異ノードを示す表示は、その特異ノードに割り当てられている前記材料諸元情報によって表される材料諸元、及びその特異ノードに割り当てられている前記物性ベクトルによって表される物性のいずれか一方又は双方を示す、付記13に記載の制御方法。
(付記15)
コンピュータに、
対象の工程で利用されうる複数パターンの材料それぞれについて、その材料の材料諸元を表す材料諸元情報と、その材料を用いて前記工程で生成されうる成果物の複数の物性それぞれについての物性量を示す物性情報とを取得する取得ステップと、
前記物性情報を用いて、マップ空間上の位置と、前記成果物の複数種類の物性それぞれの物性量に関する値を示す物性ベクトルとが各ノードに割り当てられている自己組織化マップを生成する自己組織化マップ生成ステップと、
各前記材料諸元情報を、その材料諸元情報に対応する前記物性情報に基づいていずれかの前記ノードに割り当て、前記材料諸元情報が割り当てられている前記ノードの中から、前記マップ空間において特異な位置にある特異ノードを検出する特異ノード検出ステップと、を実行させる非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記16)
前記特異ノード検出ステップにおいて、複数の前記材料諸元情報それぞれを、その材料諸元情報に対応する前記物性情報から得られる前記物性ベクトルと最も類似する前記物性ベクトルが割り当てられている前記ノードに割り当てる、付記15に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記17)
前記特異ノード検出ステップにおいて、前記材料諸元情報が割り当てられている各前記ノードのうち、前記マップ空間上の基準位置からの距離が閾値より大きい前記ノードを、前記特異ノードとして検出する、付記15又は16に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記18)
前記特異ノード検出ステップにおいて、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの重心位置又は幾何中心を前記基準位置として利用し、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードの位置の分布の大きさを表す統計値、又はその統計値に所定の正の実数を掛けた値を、前記閾値として利用する、付記17に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記19)
前記特異ノード検出ステップにおいて、
前記材料諸元情報が割り当てられている複数の前記ノードを、前記材料諸元情報に基づいて複数のクラスタに分割し、
複数の前記クラスタそれぞれについて、そのクラスタに含まれる各前記ノードの前記マップ空間上の位置の分布に基づいて、そのクラスタに属する前記ノードの中から前記特異ノードを検出する、付記15から18いずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記20)
前記マップ空間上に配置されている各前記ノードを表すマップ画像を生成するマップ画像生成ステップを有し、
前記マップ画像は、前記特異ノードを示す表示を含む、付記15から19いずれか一項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記21)
前記特異ノードを示す表示は、その特異ノードに割り当てられている前記材料諸元情報によって表される材料諸元、及びその特異ノードに割り当てられている前記物性ベクトルによって表される物性のいずれか一方又は双方を示す、付記20に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0084】
この出願は、2021年3月18日に出願された日本出願特願2021-044487を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0085】
10 材料諸元情報
20 物性情報
30 自己組織化マップ
40 マップ画像
42 表示
44 基準位置
46 領域
60 材料
70 成果物
100 テーブル
102 材料識別情報
104 材料諸元
200 テーブル
202 成果物識別情報
204 物性
300 テーブル
302 位置
304 物性ベクトル
306 材料識別情報
500 コンピュータ
502 バス
504 プロセッサ
506 メモリ
508 ストレージデバイス
510 入出力インタフェース
512 ネットワークインタフェース
2000 特異材料検出装置
2020 取得部
2040 自己組織化マップ生成部
2060 特異ノード検出部