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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】養生蓋及び養生蓋の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20241017BHJP
   E04G 15/06 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
E04G21/32 Z
E04G15/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022092411
(22)【出願日】2022-06-07
(65)【公開番号】P2023179229
(43)【公開日】2023-12-19
【審査請求日】2024-02-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年6月11日に、パンフレットを発行した。 令和3年6月21日に、ウェブサイトに動画を掲載した。 令和3年10月13日に、ウェブサイトにカタログを掲載した。 令和3年11月18日に、ウェブサイトにカタログを掲載した。 令和3年6月15日~令和4年6月7日の間に販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘川 邦彦
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188867(JP,A)
【文献】特開2004-270396(JP,A)
【文献】特開2006-299619(JP,A)
【文献】実開平05-034255(JP,U)
【文献】特開平10-110528(JP,A)
【文献】特開平06-193124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の床スラブに設けられた開口部を閉塞する養生蓋であって、
前記開口部を覆い、該開口部の開口方向に設けられた挿通孔を有する蓋体と、
前記蓋体の下部に連結され、前記挿通孔と連通する排水用配管と、
前記蓋体の外周縁部を露出させて該蓋体の上面を覆う軟質材と、を備えることを特徴とする養生蓋。
【請求項2】
前記挿通孔の周縁部において、前記蓋体の上面を底面とする溝部、及び、該溝部となる隙間を開けて該蓋体の上面から突出する突出部が形成された排水部材を備え、
前記排水用配管は、前記排水部材の下部に連結されることを特徴とする請求項1に記載の養生蓋。
【請求項3】
前記軟質材は、前記排水部材の外周を囲むように複数のスリットが設けられ、該スリットの内側が切り離し可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の養生蓋。
【請求項4】
挿通孔を有する蓋体の下部に該挿通孔と連通する排水用配管を連結して養生蓋を組み立てる工程と、
型枠材にスリーブ管を配置し、該スリーブ管に前記排水用配管を挿通するとともに、該スリーブ管の開口を覆うように前記蓋体を配置して前記養生蓋を取り付ける工程と、
前記蓋体の上面に、該蓋体の外周縁部を露出させて該蓋体の上面を覆う軟質材を配置する工程と、
前記軟質材の上部までコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリートの硬化後に、前記蓋体の外周縁部に形成されたコンクリート縁部を残して前記軟質材を剥がす工程と、を備える養生蓋の設置方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養生蓋及び養生蓋の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の鉄筋コンクリートを使用した建築現場において、床スラブに様々な設備用の配管を通すための開口部が設けられる。従来、上階や屋根が建設されるまでの間、床スラブは雨晒しであるため、床スラブ上に水が溜まり、開口部から下階へ漏水するという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、排水用の配管を床スラブに埋め込むことで下階の排水が行われている。しかしながら、このような方法では、配管が埋め込まれていた箇所に孔が空いてしまうため、最終的にはその孔をモルタルで埋めて後処理しなければならず、手間がかかる。また、設備用配管を通す開口部には、養生のために板材を敷設するが、板材の位置がずれると開口部から落下する危険性がある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されるような養生蓋によって開口部を閉塞することが行われている。特許文献1に記載の養生蓋は、上面に集水部が設けられている。コンクリート打設時には集水部を集水部キャップによって閉塞し、集水部内にコンクリートが入り込むことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-188867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の養生蓋は、コンクリートの硬化後、養生蓋の上部のコンクリートを斫って一旦開口部から取り外される。そして、養生蓋は、排水ホースが接続されて再び開口部に取り付けられる。次いで、養生蓋と床スラブとの隙間を防水パテによって塞ぐことにより、集水部から開口部を介して排水可能となる。
【0007】
特許文献1の養生蓋は、打設後にコンクリートを斫って開口部から一旦取り外す作業が、作業者にとって負担になるという問題がある。養生蓋を再び開口部へ取り付けた後は、安全性確保のために固定する作業が必要となる。また、排水機能を十分に発揮させるためにも、床スラブとの隙間を防水パテによって塞ぐ作業を行わなければならず、手間がかかる。このような構成の養生蓋について、集水部キャップ上部のコンクリートを斫って集水部のみを露出させることは可能であるが、斫り作業が必要となることや、コンクリートがうまく斫れなかった場合に亀裂が入る等して、コンクリートと養生蓋との間から漏水してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、排水機能を有し、設置及び撤去の作業性並びに安全性に優れる養生蓋及び養生蓋の設置方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明では、
コンクリート構造物の床スラブに設けられた開口部を閉塞する養生蓋であって、
前記開口部を覆い、該開口部の開口方向に設けられた挿通孔を有する蓋体と、
前記蓋体の下部に連結され、前記挿通孔と連通する排水用配管と、
前記蓋体の外周縁部を露出させて該蓋体の上面を覆う軟質材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、コンクリート打設時に、蓋体の外周縁部を除く部分が軟質材によって保護され直接コンクリートに接しない。コンクリートの打設後には、薄いノロの下に剥がしやすい軟質材が存在する。養生蓋は軟質材を備えることにより、凹凸を緩やかにして上面を略平坦化できるため、コンクリートの打設の際、蓋体の上部を厚いコンクリートで覆うことにより平坦化する必要がなく、このようにノロを薄く広げることが可能となる。砂利や砂などの固形分が多く含まれるコンクリートに対し、ノロは水とセメントが多く含まれる。硬化後のコンクリートは固いため斫り作業が必要であるが、ノロはコンクリート程の強度はないため、斫り作業を必要とせず、簡単に剥がすことが可能である。軟質材とともにノロを剥がせるため、コンクリートを斫る作業よりも容易に、かつ、所定の範囲のノロのみを除去することが可能である。また、軟質材を剥がすと蓋体の外周縁部に硬化したノロからなるコンクリート縁部が残る。所定範囲のノロを除去し、所定範囲外のノロを残存させることができるため、蓋体上の排水経路が塞がれにくい。この外周縁部に残ったコンクリート縁部が養生蓋と床スラブとの間を止水するため、止水処理を施す必要がない。また、蓋体には排水用配管が連結されているため、養生蓋を一旦除去する必要はなく、軟質材を剥がすだけで養生蓋はコンクリート縁部に固定された状態となる。そのため、養生蓋の浮き上がりやずれが防止され、安全性を保ちつつ作業性を高めることができる。養生蓋設置の一連の作業が効率化でき、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
前記挿通孔の周縁部において、前記蓋体の上面を底面とする溝部、及び、該溝部となる隙間を開けて該蓋体の上面から突出する突出部が形成された排水部材を備え、
前記排水用配管は、前記排水部材の下部に連結されることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、溝部から蓋体上面に溜まった水を挿通孔へと円滑に排水できるとともに、蓋体上面から突出する突出部により、軟質材と蓋体上面との間に隙間が生じ、軟質材が蓋体上面に張り付き難くなるため、コンクリート硬化後に軟質材が剥がしやすくなる。また、コンクリート硬化後に、突出部の箇所がやや盛り上がった外観となるため、軟質材の位置を把握し易い。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、
前記軟質材は、前記排水部材の外周を囲むように複数のスリットが設けられ、該スリットの内側が切り離し可能に構成されることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、コンクリートの打設後に軟質材を剥がす際、スリットの内側部分のみを切り離して剥がすことが可能となる。スリットの内側部分は、面積も小さく、蓋体上面から突出する排水部材の上部に位置するため、軟質材全体よりも容易に剥がすことが可能である。また、例えば、開口部が水の溜まりやすい段差スラブの底部に設けられ、早急に排水しなければならない場合等に、取り急ぎスリットの内側部分のみを剥がすことが可能である。その時々の状況を鑑みて剥がし方を選択できるため、より作業性を高めることができる。
【0015】
第4の発明は、養生蓋の設置方法であり、
挿通孔を有する蓋体の下部に該挿通孔と連通する排水用配管を連結して養生蓋を組み立てる工程と、
型枠材にスリーブ管を配置し、該スリーブ管に前記排水用配管を挿通するとともに、該スリーブ管の開口を覆うように前記蓋体を配置して前記養生蓋を取り付ける工程と、
前記蓋体の上面に、該蓋体の外周縁部を露出させて該蓋体の上面を覆う軟質材を配置する工程と、
前記軟質材の上部までコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリートの硬化後に、前記蓋体の外周縁部に形成されたコンクリート縁部を残して前記軟質材を剥がす工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によると、コンクリートの打設後には、薄いノロの下に剥がしやすい軟質材が存在する。養生蓋は軟質材を備えることにより、凹凸を緩やかにして上面を略平坦化できるため、コンクリートの打設の際、蓋体の上部を厚いコンクリートで覆うことにより平坦化する必要がなく、このようにノロを薄く広げることが可能となる。砂利や砂などの固形分が多く含まれるコンクリートに対し、ノロは水とセメントが多く含まれる。硬化後のコンクリートは固いため斫り作業が必要であるが、ノロはコンクリート程の強度はないため、斫り作業を必要とせず、簡単に剥がすことが可能である。軟質材とともにノロを剥がせるため、コンクリートを斫る作業よりも容易に、かつ、所定の範囲のノロのみを除去することが可能である。また、軟質材を剥がすと蓋体の外周縁部に硬化したノロからなるコンクリート縁部が残る。所定範囲のノロを除去し、所定範囲外のノロを残存させることができるので、蓋体上の排水経路が塞がれにくい。この外周縁部に残ったコンクリート縁部が養生蓋と床スラブとの間を止水するため、止水処理を施す必要がない。また、蓋体には排水用配管が連結されているため、養生蓋を一旦除去する必要はなく、軟質材を剥がすだけで養生蓋はコンクリート縁部に固定された状態となるため、作業性が格段に上がる。養生蓋設置の一連の作業が効率化でき、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によると、排水機能を有し、設置及び撤去の作業性並びに安全性に優れる養生蓋及び養生蓋の設置方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る養生蓋の設置後の斜視図である。
図2】養生蓋の斜視図である。
図3】蓋体の断面図である。
図4】養生蓋の斜視図である。
図5】養生蓋の斜視図である。
図6】養生蓋の設置方法を示す斜視図である。
図7】養生蓋の設置方法を示す断面図である。
図8】養生蓋の設置方法を示す斜視図である。
図9】養生蓋の設置方法を示す斜視図である。
図10】養生蓋の設置方法を示す断面図である。
図11】養生蓋の設置方法を示す斜視図である。
図12】養生蓋の撤去方法を示す斜視図である。
図13】養生蓋の撤去方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、実施形態に係る養生蓋について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係る養生蓋の設置後の斜視図であり、説明の便宜のため、一部を断面視して示したものである。図1に示すように、本発明の実施形態に養生蓋1は、コンクリート構造物に用いられるものであり、型枠材2の上面に配置されたスリーブ管3の開口部3aを閉塞するように設置される。養生蓋1は、コンクリートを打設して形成された床スラブ4上の雨水等を挿通孔11から排水することができる。
【0021】
図2は、下方から見た養生蓋の斜視図である。図3は、蓋体の断面図である。図2及び図3に示すように、養生蓋1は、円筒状のスリーブ管3の開口部3a、つまり、コンクリート打設後に床スラブ4に設けられる開口部3aを覆う蓋体10を備える。
【0022】
蓋体10は、スリーブ管3の直径よりもひと回り大きい直径を有する円形板状の鉄製部材である。蓋体10には、中央部に円形の挿通孔11が形成されている。挿通孔11は、蓋体10の表裏を貫通し、開口部3aの開口方向に設けられている。蓋体10の下面には、周方向に間隔を開けて複数の脚部12を備える。脚部12は、蓋体10に対して角度可変であり、スリーブ管3の内壁面に当接可能に構成されている。蓋体10は、挿通孔11に排水部材20を備える。
【0023】
排水部材20は、略円筒状のプラスチック製部材であり、略円筒状の内筒部21と外筒部22とから構成されている。内筒部21が蓋体10の上方から挿通孔11に挿通され、外筒部22が蓋体10の下方において、内筒部21の外周に螺合されることにより、排水部材20が蓋体10の挿通孔11に取り付けられている。
【0024】
内筒部21は、挿通孔11よりも上方に露出する上端部に、挿通孔11の周縁部において、蓋体の上面を底面とする溝部21a、及び、溝部21aとなる隙間を開けて蓋体10の上面から突出する突出部21bが形成されている。突出部21bは、挿通孔11の径方向外側に延びて、フランジ状に形成されており、突出部21bの径方向外側端部の下面は蓋体10の上面に当接する。
【0025】
挿通孔11の内側には、環状のシール材23が配置されている。シール材23は、内筒部21、外筒部22及び蓋体10の間に位置し、蓋体10と排水部材20との隙間を止水する。シール材23の上部は、突出部21bに覆われ、溝部21aにおいて露出する。
【0026】
内筒部21は、蓋体10よりも下方において内周及び外周にねじ溝が形成されている。内筒部21の内周に設けられたねじ溝に排水用配管30の端部に接続された連結材31が螺合される。内筒部21の外周に設けられたねじ溝において外筒部22が螺合される。外筒部22の上端部は蓋体10の下面に当接する。
【0027】
溝部21a及び突出部21bの数や形状は限定されないが、本実施形態においては、平面視円弧状の突出部21bが挿通孔11の周方向に間隔を開けて2つ形成され、その2つの突出部21bの間が溝部21aとなっている。2つの突出部21bと2つの溝部21aは交互に形成されて環状となっており、挿通孔11の周縁部を囲む。2つの溝部21aは180°の間隔を開けて互いに対向するように設けられている。
【0028】
排水用配管30は、蓋体10の下部に連結され、挿通孔11と連通する。具体的には、排水用配管30の端部に連結材31が接続され、その連結材31が排水部材20の下部に連結されている。排水用配管30の材質は限定されないが、例えば、CD管やPF管と呼ばれる電線管や、一般的なホースを用いることができる。
【0029】
蓋体10の上面に溜まった雨水等は、溝部21aを通って挿通孔11から排水用配管30へ排水される。
【0030】
図4及び図5は、上方から見た養生蓋の斜視図である。本実施形態の養生蓋1は、スリーブ管3を塞ぐように設置した後、コンクリート打設後に、挿通孔11を容易に露出するための軟質材40を備える。
【0031】
軟質材40は、蓋体10の直径よりもひと回り小さい直径を有する円形平板状の部材である。軟質材40の形状は円形に限らず、他の形状であってもよい。例えば、多角形や、周縁部が波形の円であってもよい。軟質材40は、手で容易に変形可能なほどに柔らかい材質であれば特に限定されないが、例えば、本実施形態では、厚さ約5mmのシート状のスポンジ材を用いている。軟質材40は、蓋体10の外周縁部10aを露出させて蓋体10の上面を覆う。蓋体10の外周縁部10aとは、蓋体10の外周端部から内側に例えば10mm程度の幅を持つ環状の領域であり、軟質材40の中心が蓋体の中心とほぼ重なるように合わせた際に、蓋体10の外周端部の軟質材40からはみ出す領域である。
【0032】
軟質材40には、複数のスリット41が設けられている。スリット41は、軟質材40の中心が蓋体の中心とほぼ重なるように蓋体10の上面に配置された際、排水部材20の外周を囲むように設けられている。スリット41は、軟質材40の表裏に貫通して設けられ、軟質材40は、スリット41の内側の内周部40aがスリット41の外側の外周部40bから切り離し可能に構成されている。
【0033】
スリット41の数や形状は限定されないが、本実施形態では、直線状のスリット41が計6本、互いに間隔をあけて略六角形に配置されている。軟質材40は、蓋体10の上面に対向する面に粘着部42が形成され、蓋体10に軟質材40を仮止めできる。粘着部42は例えば両面テープである。
【0034】
次に、図6から図10に基づいて本実施形態の養生蓋の設置方法について説明する。
【0035】
まず、挿通孔11を有する蓋体10の下部に挿通孔11と連通する排水用配管30を連結して養生蓋1を組み立てる。
【0036】
図6は、コンクリート打設前の状態を示す斜視図である。図6に示すように、構造物の基礎部分に鉄筋5を配置するとともに開口部を形成する位置に型枠材2上にスリーブ管3が配置された状態である。このように配置されたスリーブ管3に排水用配管30を挿通するとともに、スリーブ管3の開口部3aを覆うように蓋体10を配置して養生蓋1を取り付ける。
【0037】
蓋体10の上面には、蓋体10の外周縁部10aを露出させて蓋体10の上面を覆う軟質材40を配置する。なお、軟質材40を蓋体の上面に配置する工程は、コンクリートを打設する前であればいつでも良い。
【0038】
図7は、コンクリート打設後の状態を示す断面図である。図7に示すように、型枠材2にスリーブ管3を設置し、養生蓋1を取り付けた後、軟質材40の上部までコンクリートを打設する。養生蓋1の上部は、剥がしやすい軟質材40を挟んで数mmの厚さのノロが存在する。上記のように構成した養生蓋1は、軟質材40によって蓋体10の外周縁部10aを除く部分が保護され直接ノロに接しない。
【0039】
図8は、型枠材2を下方から見た斜視図である。図8に示すように、排水用配管30は、型枠材2を挿通させ、排水用ホース等を接続して排水場所まで延長させる。
【0040】
図9は、コンクリートの硬化後の状態を示す斜視図であり、図10は、コンクリートの硬化後の状態を示す断面図である。コンクリートの硬化後に、養生蓋1上部にはノロが薄く広がっている。養生蓋1は軟質材40を備えることにより、上面が略平坦となるため、コンクリートの打設の際、蓋体10の上部を厚いコンクリートで覆って平坦化する必要がなく、このようにノロを薄く広げることが可能となる。図9に示すように、蓋体10の外周縁部10aに形成されたノロからなるコンクリート縁部4aを残してノロとともに軟質材40を剥がすと、図10に示すように、軟質材40上部のノロのみを綺麗に取り除き、排水部材20及び挿通孔11を露出させることができる。砂利や砂などの固形分が多く含まれるコンクリートに対し、ノロは水とセメントが多く含まれる。硬化後のコンクリートは固いため斫り作業が必要であるが、ノロはコンクリート程の強度はないため、斫り作業を必要とせず、簡単に剥がすことが可能である。また、ノロだけでなく軟質材40自体も剥がしやすいため、挿通孔11を露出させる作業は容易である。
【0041】
また、蓋体10に突出部21bが形成されることで、突出部21bの周辺において、コンクリート打設時に蓋体10の上面に配置される軟質材40と蓋体10との間に隙間が生じる。これにより、軟質材40が蓋体10の上面に張り付き難くなり、コンクリート硬化後に軟質材40が更に剥がしやすくなる。また、コンクリート硬化後に突出部21bの箇所がやや盛り上がった外観となるため、軟質材40の位置、特に、スリット41の内側の内周部40aの位置を把握し易い。
【0042】
軟質材40を剥がすと、蓋体10の外周縁部10aの上面には硬化したノロが残る。所定の範囲のノロを除去及び残存させることができるので、蓋体10上の排水経路が塞がれにくい。また、外周縁部10aに残ったノロからなるコンクリート縁部4aが養生蓋1と床スラブ4との間を止水するため、コーキング剤を塗布する等して止水処理を行う必要がない。養生蓋1は床スラブ4のコンクリート縁部4aに固定された状態となり、安全性も確保できている。養生蓋1の取り外しや固定の作業をする必要もないため、作業効率も良い。
【0043】
なお、現場の状況に応じて、図11に示すように、軟質材40のスリット41内側の内周部40aのみを剥がして挿通孔11を露出させることも可能である。突出部21bの上部に位置する内周部40aは、軟質材40全体よりも剥がしやすいため、ノロの除去がより容易となる。例えば、開口部3aが水の溜まりやすい段差スラブの底部に設けられ、早急に排水しなければならない場合等に、取り急ぎスリット41の内周部40aのみを剥がすことも可能であり、その時々の状況に応じて剥がし方を選択できるため、より作業性を高めることができる。
【0044】
養生蓋1を撤去する際は、図12に示すように、蓋体10の外周縁部10aの上面に残ったコンクリート縁部4aをハンマーXで除去し、図13に示すように、タガネやマイナスドライバー等の工具Yを、蓋体10と床スラブ4との隙間に挿入して養生蓋1を容易に取り除くことが可能である。
【0045】
以上のように、本実施形態の養生蓋1は、安全性を確保しつつも設置及び撤去の一連の作業を効率化でき、作業者の負担を軽減することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 養生蓋
2 型枠材
3 スリーブ管
3a 開口部
4 床スラブ
10 蓋体
10a 外周縁部
11 挿通孔
12 脚部
20 排水部材
21 内筒部
21a 溝部
21b 突出部
22 外筒部
30 排水用配管
31 連結材
40 軟質材
41 スリット
42 粘着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13