(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20241017BHJP
G09B 23/28 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B23/28
(21)【出願番号】P 2020148659
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】592167411
【氏名又は名称】香川県
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】大栗 聖由
(72)【発明者】
【氏名】上原 一剛
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00
G09B 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部模型と、前記頭部模型に設置された感圧センサと、
前記感圧センサと通信可能に接続された情報処理部及び疑似脳波波形を表示する表示部を備えたシステム制御装置からなる脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムであって、
前記情報処理部は、被訓練者が前記感圧センサを脳波電極で押圧することによる抵抗減少値に基づいて脳波電極の配置位置の位置ずれを判定する機能を有する電極配置位置判定部
と、
国際10-20法に定める脳波電極配置位置のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である適切な擬似脳波、前記適切な擬似脳波をフィルタリング処理した脳波であるフィルタリング擬似脳波および国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外の安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である領域外擬似脳波を格納する波形データ記憶部と、
前記電極配置位置判定部の位置ずれ判定に基づき、前記波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかを出力する機能を有する表示波形生成部と、
前記表示波形生成部から出力された疑似脳波を波形画像として生成する機能を有する画像生成部を備える、
ことを特徴とする脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム。
【請求項2】
頭部模型と、前記頭部模型に設置された感圧センサと、
前記感圧センサと通信可能に接続された情報処理部及び疑似脳波波形を表示する表示部を備えたシステム制御装置からなる脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムであって、
前記情報処理部は、被訓練者が前記感圧センサを脳波電極で押圧することによる抵抗減少値に基づいて脳波電極の配置位置の位置ずれを判定する機能を有する電極配置位置判定部と、
国際10-20法に定める脳波電極配置位置のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である適切な擬似脳波、前記適切な擬似脳波をフィルタリング処理した脳波であるフィルタリング擬似脳波および国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外の安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である領域外擬似脳波を格納する波形データ記憶部と、
前記電極配置位置判定部の位置ずれ判定に基づき、前記波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかを出力する機能を有する表示波形生成部と、
前記表示波形生成部から出力された疑似脳波を波形画像として生成する機能を有する画像生成部を備える、
ことを特徴とする脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムを実行するコンピュータに、被訓練者の押圧力に基づく感圧センサの抵抗値を受信してデジタル信号に変換する処理と、デジタル化した抵抗値から抵抗減少値を算出し、設定した抵抗減少値に基づき押圧力に基づく位置ずれを判定する処理と、位置ずれ判定に基づき波形データ記憶部に格納された
適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかの擬似脳波を出力する処理と、出力された疑似脳波を波形画像として表示する処理と、を実行させる脳波電極配置訓練用シミュレーションプログラム。
【請求項3】
頭部模型と、前記頭部模型に設置された感圧センサと、
前記感圧センサと通信可能に接続された情報処理部及び疑似脳波波形を表示する表示部を備えたシステム制御装置からなる脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムであって、
前記情報処理部は、被訓練者が前記感圧センサを脳波電極で押圧することによる抵抗減少値に基づいて脳波電極の配置位置の位置ずれを判定する機能を有する電極配置位置判定部と、
国際10-20法に定める脳波電極配置位置のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である適切な擬似脳波、前記適切な擬似脳波をフィルタリング処理した脳波であるフィルタリング擬似脳波および国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外の安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である領域外擬似脳波を格納する波形データ記憶部と、
前記電極配置位置判定部の位置ずれ判定に基づき、前記波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかを出力する機能を有する表示波形生成部と、
前記表示波形生成部から出力された疑似脳波を波形画像として生成する機能を有する画像生成部を備える、
ことを特徴とする脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムを実行するコンピュータに、被訓練者の押圧力に基づく感圧センサの抵抗値を受信してデジタル信号に変換する処理と、デジタル化した抵抗値から抵抗減少値を算出し、設定した抵抗減少値に基づき押圧力に基づく位置ずれを判定する処理と、位置ずれ判定に基づき波形データ記憶部に格納された
適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかの擬似脳波を出力する処理と、出力された疑似脳波を波形画像として表示する処理と、を実行させる脳波電極配置訓練用シミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、頭部模型を用いて脳波教育を行う脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム、システム制御装置及びプログラムに関する。特に、被訓練者が頭部模型に脳波電極を配置した時に頭部模型に設置された感圧センサに作用する押圧力により電極配置位置を検出して疑似脳波の波形を表示する脳波教育を行う脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム、そのシステム制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療事故の未然防止には、良質な医療者の養成が急務の課題の一つである。採血や救急医療などの特定分野に対して、様々なシミュレーションシステムが開発されている。例えば、特許文献1には、穿刺の成否を直観的に判断できる人工透析の穿刺トレーニングシミュレーションシステムが開示され、特許文献2には、医療処置トレーニングのための医療シミュレーションシステムが開示されている。
【0003】
一方、救急医療の一つである脳波検査は、てんかんや意識障害を起こした患者の検査として必須であり、国内外で臨床応用されているにも関わらず、教育訓練方法の標準化は進んでいない。しかも、脳波検査での電極の配置や脳波の判読には長年の経験が必要である。このため、脳波検査に熟練した医師や技師が減少している。
脳波検査技術を向上するための優れた教育訓練シミュレーションシステムとして、特許文献3には、脳波検査での電極の配置や脳波の判読を教育するため、異常脳波波形と正常脳波波形を読み取り可能なシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-034833号公報
【文献】特開2020-106844号公報
【文献】特開2020-034905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、脳波検査技術を向上するための効率的かつ実践的な脳波教育を実施するため、脳波検査教育において重要な頭部へ脳波電極配置訓練において、脳波電極配置位置によりモニタに表示される脳波波形を実際の脳波波形に即して表示できるシミュレーションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の課題は、以下の(態様1)~(態様3)により解決できる。具体的には、
【0007】
(態様1) 頭部模型と、前記頭部模型に設置された感圧センサと、前記感圧センサと通信可能に接続された情報処理部及び疑似脳波波形を表示する表示部を備えたシステム制御装置からなる脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムであって、前記情報処理部は、被訓練者が前記感圧センサを脳波電極で押圧することによる抵抗減少値に基づいて脳波電極の配置位置の位置ずれを判定する機能を有する電極配置位置判定部と、国際10-20法に定める脳波電極配置位置のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である適切な擬似脳波、前記適切な擬似脳波をフィルタリング処理した脳波であるフィルタリング擬似脳波および国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外の安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である領域外擬似脳波を格納する波形データ記憶部と、前記電極配置位置判定部の位置ずれ判定に基づき、前記波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかを出力する機能を有する表示波形生成部と、前記表示波形生成部から出力された疑似脳波を波形画像として生成する機能を有する画像生成部を備える、ことを特徴とする脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムである。
脳波電極の配置位置の的確性に応じた疑似脳波を表示することで、被訓練者が実際の検査脳波を習得する訓練となるからである。具体的には、脳波電極を浮かせて設置した場合の脳波波形を臨床現場の脳波波形に即して表示できる。また、脳波電極を配置した場所に応じた脳波波形を提供できる。
位置ずれに応じた疑似脳波を波形データ記憶部に格納することで、位置ずれに対応した疑似脳波を作製できるからであり、疑似脳波を実際の検査脳波との整合性を担保することができるからである。
【0011】
(態様2) 頭部模型と、前記頭部模型に設置された感圧センサと、前記感圧センサと通信可能に接続された情報処理部及び疑似脳波波形を表示する表示部を備えたシステム制御装置からなる脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムであって、前記情報処理部は、被訓練者が前記感圧センサを脳波電極で押圧することによる抵抗減少値に基づいて脳波電極の配置位置の位置ずれを判定する機能を有する電極配置位置判定部と、国際10-20法に定める脳波電極配置位置のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である適切な擬似脳波、前記適切な擬似脳波をフィルタリング処理した脳波であるフィルタリング擬似脳波および国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外の安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である領域外擬似脳波を格納する波形データ記憶部と、前記電極配置位置判定部の位置ずれ判定に基づき、前記波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかを出力する機能を有する表示波形生成部と、前記表示波形生成部から出力された疑似脳波を波形画像として生成する機能を有する画像生成部を備える、ことを特徴とする脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムを実行するコンピュータに、被訓練者の押圧力に基づく感圧センサの抵抗値を受信してデジタル信号に変換する処理と、デジタル化した抵抗値から抵抗減少値を算出し、設定した抵抗減少値に基づき押圧力に基づく位置ずれを判定する処理と、位置ずれ判定に基づき波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかの擬似脳波を出力する処理と、出力された疑似脳波を波形画像として表示する処理と、を実行させる脳波電極配置訓練用シミュレーションプログラムである。
【0012】
(態様3) 頭部模型と、前記頭部模型に設置された感圧センサと、前記感圧センサと通信可能に接続された情報処理部及び疑似脳波波形を表示する表示部を備えたシステム制御装置からなる脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムであって、前記情報処理部は、被訓練者が前記感圧センサを脳波電極で押圧することによる抵抗減少値に基づいて脳波電極の配置位置の位置ずれを判定する機能を有する電極配置位置判定部と、国際10-20法に定める脳波電極配置位置のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である適切な擬似脳波、前記適切な擬似脳波をフィルタリング処理した脳波であるフィルタリング擬似脳波および国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外の安静覚醒閉眼時の健常脳波を所定時間記録した覚醒脳波を平均化した脳波である領域外擬似脳波を格納する波形データ記憶部と、前記電極配置位置判定部の位置ずれ判定に基づき、前記波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかを出力する機能を有する表示波形生成部と、前記表示波形生成部から出力された疑似脳波を波形画像として生成する機能を有する画像生成部を備える、ことを特徴とする脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムを実行するコンピュータに、被訓練者の押圧力に基づく感圧センサの抵抗値を受信してデジタル信号に変換する処理と、デジタル化した抵抗値から抵抗減少値を算出し、設定した抵抗減少値に基づき押圧力に基づく位置ずれを判定する処理と、位置ずれ判定に基づき波形データ記憶部に格納された適切な疑似脳波、フィルタリング擬似脳波または領域外擬似脳波のいずれかの擬似脳波を出力する処理と、出力された疑似脳波を波形画像として表示する処理と、を実行させる脳波電極配置訓練用シミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムは、被訓練者が脳波電極を定められた脳波電極配置位置に正確に配置できたか否かを、被訓練者が頭部模型に設置された感圧センサを脳波電極で押付ける押圧力により、定められた脳波電極配置位置と被訓練者の電極配置位置との位置ずれを判断できる。位置ずれに応じて実際の脳波検査で計測される脳波に準じた疑似脳波を表示することができ、実際の脳波波形に即した脳波を表示できるシミュレーションシステムを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムの1態様を示す構成図である。
【
図2】本願発明の頭部模型に設置された感圧センサの1態様を示す写真である。
【
図3】国際10-20法規定する脳波電極配置を示す模式図である。
【
図4】本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムに用いる感圧センサの模式図である。
【
図5】頭部模型上に設置した感圧センサの中央からの距離による抵抗減少値を計測したグラフである。
【
図6】感圧センサと脳波電極の位置ずれの程度を例示した模式図である。
【
図7】本願発明の疑似脳波の作製に供した脳波キャップの写真である。
【
図8】本願発明のフィルタリング疑似脳波の作製の1態様を示す模式図である。
【
図9】本願発明のフィルタリング疑似脳波の作製の他の態様を示す模式図である。
【
図10】本願発明の抵抗減少値に基づきフィルタリング疑似脳波を作製する態様を示す模式図である。
【
図11】法定の電極配置位置以外の領域外疑似脳波を作成する態様を示す模式図である。
【
図12】本願発明のシ脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムのシステム制御装置の構成図である。
【
図13】本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムを用いて行う脳波電極配置訓練の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム100は、頭部模型2と、前記頭部模型に設置された感圧センサ3と、前記感圧センサから信号ケーブル4を介して受信した信号を情報処理して波形データ記憶部12から疑似脳波5を選択して表示部11に表示する制御部15からなるシステム制御装置1で構成されている。
【0016】
(1)頭部模型
本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションツールを構成する頭部模型2は、人間の頭部を模した模型である。
図2に示すように、頭部模型2には、感圧センサ3が脳波検査における電極配置指針を定める国際10-20法従って設置されている(
図3)。被訓練者は、感圧センサ3を押付けることで、国際10-20法に定める電極配置位置を的確に探策できたか否かを判断することができる。
【0017】
(2)感圧センサ
本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションツールを構成する感圧センサ3は、接触圧力(押圧力)によって抵抗値が変わる薄型円形センサである。脳波電極配置訓練において被訓練者が電極を国際10-20法従って設置された感圧センサ3上を的確に探索できたか否かを判断する役割を担う。
感圧センサ3は、円形で感圧エリアの直径が10mm、厚み0.2~0.3mmのものが好適に用いられる(
図4)。国際10-20法に定める電極配置位置に感圧センサ3を頭部模型2上に適切に設置できる大きさと形状であり、被訓練者が国際10-20法に定める電極配置を感圧センサ3の厚みから察知されない厚みであることが必要であるからである。
【0018】
本願発明の感圧センサは、接触または押圧を感知できるものであれば、
図2及び
図4に示す感圧センサの態様に限定されるものではない。例えば、頭部模型2表面を導電膜で構成されるタッチパネル用フィルムで被覆するタッチセンサも含まれる。この場合は、抵抗値の変動だけでなく、静電容量の変動を検出することになる。
【0019】
(3)感知領域設定
本願発明の感知領域設定は、被訓練者が国際10-20法に定める電極配置位置を的確に探索して脳波電極9を感圧センサ3に的確に押付できたか否かの判断、すなわち、被訓練者の脳波電極9の押付位置が感圧センサ3の中心からどの程度ずれたか(以下、「位置ずれ」という。)を判断する役割を担う。この位置ずれの程度は、感圧センサ3の感知領域
における抵抗値の減少程度(以下、「抵抗減少値」という。)に閾値を設定することで任意に定めることができる。
図5は、頭部模型2上に設置した感圧センサ3を厚さ6mmの人工皮膚素材、人工皮膚素材+かつらで覆い、押付位置の感圧センサ3の中央からの距離による抵抗減少値を計測したグラフである。
図5に示すグラフから感圧センサ3の感知領域は、実際に行われる脳波電極配置訓練用の場合、例えば、頭部模型を人工皮膚とかつらで覆った場合等に応じて任意に設定できる。
【0020】
図6は、感圧センサと電極の位置ずれの程度を例示した模式図である。(a)は感圧センサ3上の適切な位置に脳波電極9が的確に配置されているため位置ずれが無く、押圧力が強く感圧センサ3の抵抗減少値は高い。(b)感圧センサ3上の適切な位置に脳波電極9が配置されていないため位置ずれが有り、押圧力が弱く感圧センサ3の抵抗減少値は低い。(c)感圧センサ3と脳波電極9は離れており(センサ感応領域外)、押圧力は無く感圧センサ3の抵抗減少値も無い。
本願発明では、感圧センサ3の抵抗減少値に閾値を設定することにより感圧センサ3の感知領域を設定して位置ずれ判定を行う。感圧センサ3の感知領域は直径19~21mmが好ましい。本願発明では、感知領域設定機能を設けたことにより、被訓練者が脳波電極9電極を感圧センサ3上に的確に押付けることができない場合、例えば、電極が浮いている場合、電極の押付位置が適切な位置からずれている場合を判断できる。
【0021】
(4)疑似脳波
本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム100で表示される脳波(以下、「疑似脳波」5という。)は、以下の(a)~(e)の手順により作製した脳波である。
(a)複数の被験者人(本願発明では、15人)に脳波キャップ(
図7)を装着し、国際10-20法に定める脳波電極配置位置10のそれぞれについて安静覚醒閉眼時の健常脳波を1時間記録して覚醒脳波を記録し、平均化する。
(b)脳波電極配置位置毎の平均化した覚醒脳波について周波数解析を行い、各脳波電極配置位置における周波数δ(0.5~3.9Hz)、Θ(4.0~7.9Hz)、α(8.0~12.9Hz)、β(13.0~29.9Hz)、γ(30.0~39.9Hz)の周波数成分について、各周波数帯域におけるパワーを求める。なお、周波数解析とは、所定時間における脳波(時間信号)の強度を高速フーリエ変換(FFT)分析することにより特定の周波数バンド幅(周波数分解能)毎の強度を求め、横軸を周波数としてグラフ化したものである。
(c)脳波電極配置位置毎についての周波数解析に基づき、国際10-20法に定める電極配置毎の疑似脳波(以下、「適切な疑似脳波」6という。)を求める。
【0022】
(d)適切な疑似脳波6をフィルタリング処理し、国際10-20法に定める脳波電極配置位置の近傍の疑似脳波(以下、「フィルタリング疑似脳波」7という。)を求める。
図8は、電極配置位置(F3)の適切な疑似脳波6(原波形)の周波数δ(0.5~2.9Hz)成分を減らすフィルタリング処理(High-pass filter と Low-pass filterを組み合わせたデジタルフィルタ処理)して、脳波電極9が感圧センサ3から右に位置ずれした場合のフィルタリング疑似脳波7を作製する方法を示したものである。
図9は、国際10-20法に定める電極配置(側頭部及び中心部:T3,C3,Cz,C4,T4)の上下方法へ位置ずれした場合の疑似脳波を、電極配置(頭長部:T3,C3,Cz,C4,T4)の適切な疑似脳波6をフィルタリング処理してフィルタリング疑似脳波7を作製する方法を示したものである。
図10は、頭部模型2を人工皮膚+かつらで覆い、押圧力による抵抗減少値1200の場合に適切な疑似脳波6を表示し、押圧力による抵抗減少値500の場合にフィルタリング疑似脳波7を表示するように、感圧センサ3の抵抗減少値に閾値を設定した例を示すものである。
【0023】
(e)センサ感応領域外についても疑似脳波(以下、「領域外疑似脳波」8という。)を求める。
図11は、国際10-20法に定める脳波電極配置位置以外(通常臨床では記録しない部位)について、(a)の手順に従って領域外疑似脳波8を求めたものである。
本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム100は、被訓練者が国際10-20法に定める電極配置を適切に押圧した場合、一部ずれて押圧した場合、完全に外れて押圧した場合をそれぞれについて対応する疑似脳波を表示できることに特徴がある。
【0024】
(5)システム制御装置
図12に示すように、本願発明のシステム制御装置1は、変換部16、電極配置位置判定部17、表示波形生成部18、画像生成部19を内蔵する制御部15と、該制御部15に接続された表示部11、波形データ記憶部12、プログラム記憶部13、操作部14で構成される。
【0025】
表示部11は、制御部15により波形データ記憶部12から選択された疑似脳波5の波形を画像として表示する役割を担う。液晶モニタ等の表示装置で構成される。
波形データ記憶部12は、疑似脳波5波形データ、すなわち、適切な疑似脳波、フィルタリング疑似脳波、領域外疑似脳波の波形を記憶する役割を担う。メモリ、HDD、SSD等の記録媒体で構成される。
プログラム記憶部13は、本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムを起動するプログラムを記憶する役割を担う。メモリ、HDD、SSD等の記録媒体で構成される。
操作部14は、システム制御装置1を操作する役割を担う。キーボード、タッチパネル、音声入力装置等の入力装置で構成される。
【0026】
制御部15は、プログラム記憶部13に記憶されたプログラムに従い、波形データ記憶部12に記憶された疑似脳波波形を選択して表示部11に表示するため、変換部16、位置判定部17、表示波形生成部18、画像生成部19の各要素を制御する役割を担う。
変換部16は、感圧センサ3により検出された抵抗値をデジタル信号に変換する役割を担う。
電極配置位置判定部17は、感圧センサ3により検出された抵抗値から算出した抵抗減少値及び抵抗減少値の閾値から感圧センサ3と脳波電極9との位置ずれを判定する役割を担う。
表示波形生成部18は、電極配置位置判定部17による位置ずれ判定結果に基づき、位置ずれに対応する疑似脳波(適切な疑似脳波、フィルタリング疑似脳波、領域外疑似脳波)の波形データを波形データ記憶部12から選択する役割を担う。
画像生成部19は、表示波形生成部18により選択された波形データを波形画像として生成し、表示部11で表示する役割を担う。
【0027】
(6)脳波電極配置訓練
被訓練者が本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム100を用いて行う脳波電極配置訓練について説明する。脳波電極配置訓練は、被訓練者が頭部模型2に設置された感圧センサ3上の適切な位置(国際10-20法に定める電極配置)に脳波電極9を的確に配置できるようにするための訓練である。
【0028】
(6-1)事前準備
感圧センサ3を設置した頭部模型2をかつら等で覆い、被訓練者が感圧センサ3位置(国際10-20法に定める電極配置に相当)を見えないようにする。被訓練者は、脳波電極9にペーストを塗布する。
【0029】
(6-2)脳波電極配置訓練用シミュレーションシステムの手順
本願発明の脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム100を用いて行う脳波電極配置訓練の手順を、
図13に示すフロー図(S1~S8)に従って説明する。
【0030】
被訓練者は、脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム100の操作部14にある電源(図示せず)を入れる(S1)。
被訓練者は、脳波電極9を頭部模型2上に押付けて配置する(S2)。
感圧センサ3は、脳波電極の押付圧力を抵抗値に変換し、通信ケーブル4を介して情報処理部15に送信する。変換部16は、感圧センサ3により検出された抵抗値をデジタル信号に変換する(S3)。
電極配置位置判定部17は、感圧センサ3が脳波電極9による押圧力を検出し、抵抗値に変化が生じた場合(センサー感応領域内)には、抵抗減少値を算出し、抵抗減少値の閾値から感圧センサ3と脳波電極9との位置ずれを判定する(S4)。
電極配置位置判定部17は、抵抗減少値が閾値を上回る場合は、位置ずれ「無」と判定し、表示波形生成部18は、波形データ記憶部12から「適切な疑似脳波」データを出力する(S5)。
画像生成部19は、表示部11に「適切な疑似脳波」を表示する(S6)。
電極配置位置判定部17は、抵抗減少値が閾値を下回る場合は、位置ずれ「有」と判定し、表示波形生成部18は、波形データ記憶部12から「フィルタリング疑似脳波」データを出力する(S7)。
画像生成部19は、表示部11に「フィルタリング疑似脳波」を表示する(S6)。
電極配置位置判定部17は、感圧センサ3が脳波電極9による押圧力を検出せず、抵抗値に変化が生じない場合(センサー感応領域外)には、位置ずれを判定しない。表示波形生成部18は、波形データ記憶部12から「領域外疑似脳波」データを出力する(S8)。
画像生成部19は、表示部11に「領域外疑似脳波」を表示する(S6)。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明により、実践的な脳波電極配置訓練を簡易に提供できる。
【符号の説明】
【0032】
1 システム制御装置
2 頭部模型
3 感圧センサ
4 信号ケーブル
5 疑似脳波
6 適切な疑似脳波
7 フィルタリング疑似脳波
8 領域外疑似脳波
9 脳波電極
10 脳波電極配置位置
11 表示部
12 波形データ記憶部
13 プログラム記憶部
14 操作部
15 情報処理部
16 変換部
17 電極位置判定部
18 表示波形生成部
19 画像生成部
100 脳波電極配置訓練用シミュレーションシステム