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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20241017BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20241017BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20241017BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L21/306 Z
H01L29/80 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021112893
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009526
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平松 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】織田 容征
(72)【発明者】
【氏名】川原村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】ダン タイ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】劉 麗
(72)【発明者】
【氏名】安岡 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】田頭 侑貴
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 珠子
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081946(JP,A)
【文献】特開2014-229838(JP,A)
【文献】特開2001-023950(JP,A)
【文献】特開2009-272544(JP,A)
【文献】特開2003-043510(JP,A)
【文献】特開2018-121001(JP,A)
【文献】特開2021-009881(JP,A)
【文献】特開2009-071061(JP,A)
【文献】特開2021-009882(JP,A)
【文献】特開平10-161293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0346525(US,A1)
【文献】国際公開第2009/128424(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112151388(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 第1及び第2の混晶層を含むエッチング対象構造を得るステップと、
(b) 前記エッチング対象構造に対し第1のエッチング剤を用いて第1の混晶層を選択的にエッチングする第1のエッチング処理、及び前記エッチング対象構造に対し第2のエッチング剤を用いて前記第2の混晶層を選択的にエッチングする第2のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を実行するステップとを備え、
前記第1の混晶層は、(M1Ga1-x(0<x≦1)を含み、
前記第2の混晶層は、(M2Ga1-y(0<y≦1)を含み、
M1=Crであり、
M2={Al,In,Fe}のうちの一つであり、
前記第1の混晶層は{x≠1}の場合に結晶性を有し、
前記第2の混晶層は{y≠1}の場合に結晶性を有する、
エッチング方法。
【請求項2】
(a) 第1及び第2の混晶層並びに酸化シリコン層を含むエッチング対象構造を得るステップと、
(b) 前記エッチング対象構造に対し第1のエッチング剤を用いて第1の混晶層を選択的にエッチングする第1のエッチング処理、前記エッチング対象構造に対し第2のエッチング剤を用いて前記第2の混晶層を選択的にエッチングする第2のエッチング処理、前記エッチング対象構造に対し第3のエッチング剤を用いて前記酸化シリコン層を選択的にエッチングする第3のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を実行するステップとを備え、
前記第1の混晶層は、(M1Ga1-x(0<x≦1)を含み、
前記第2の混晶層は、(M2Ga1-y(0<y≦1)を含み、
M1=Crであり、
M2={Al,In,Fe}のうちの一つであり、
前記第1の混晶層は{x≠1}の場合に結晶性を有し、
前記第2の混晶層は{y≠1}の場合に結晶性を有する、
エッチング方法。
【請求項3】
請求項2記載のエッチング方法であって、
前記第3のエッチング剤はバッファードフッ酸溶液を含む、
エッチング方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち、いずれか1項に記載のエッチング方法であって、
前記第2のエッチング剤は、HNO、CHCOOH、及びHPOを含む、
エッチング方法。
【請求項5】
請求項4記載のエッチング方法であって、
前記第2のエッチング剤は、HNO、CHCOOH、HPO、及びHOを含み、
前記第2のエッチング剤は、HNOが5~15重量%、CHCOOHが5~15重量%、HPOが60~80重量%、HOが10~20重量%で混合される、
エッチング方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載のエッチング方法であって、
前記第1のエッチング剤は、(NHCe(NO及びHClOを含む、
エッチング方法。
【請求項7】
請求項6記載のエッチング方法であって、
前記第1のエッチング剤は、(NHCe(NO、HClO及びHOを含み、
前記第1のエッチング剤は、(NHCe(NOが5~15重量%、HClOが60~80重量%、HOが10~20重量%で混合される、
エッチング方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち、いずれか1項に記載のエッチング方法であって、
M2=Feであり、
前記ステップ(a)は、
(a-1) アンモニアミストを供給して前記第2の混晶層を形成するステップを含む、
エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複数の混晶層を有するエッチング対象構造に対するエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電界効果トランジスタの一つとして、例えば、化合物半導体材料を利用した高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)が知られている。HEMTは、ヘテロ接合に起因した高移動度の二次元電子ガス(2DEG)をチャネルとしている。特許文献1にはHEMTの一例が開示されている。特許文献1に開示のHEMTは、電子走行層の上に設けられたAlGaN層(電子供給層)と、AlGaN層の上に設けられたAlN層(絶縁層)と、AlN層の上に窒化物半導体層を介して設けられたゲート電極とを備えている。
【0003】
上述した電子移動度トランジスタ(HEMT)以外でも、CMOSトランジスタ、PNダイオード、JFET(Junction Field Effect Transistor), 及びTFT(Thin Film Transistor )など、あらゆるデバイスで選択的にエッチングを行って回路パターンを形成することは非常に重要である。
【0004】
パワーデバイスとしては,シリコン(Si)では不可能な高耐圧で高効率デバイスを構築できるワイドバンドギャップ半導体材料によるデバイスの開発が盛んに試みられている。そのような材料としては、シリコンカーバイド(SiC)と窒化ガリウム(GaN)によるパワーデバイス研究開発が近年、特に盛んである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-71061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、上記シリコンカーバイド(SiC)と窒化ガリウム(GaN)だけでなく、例えば、スイッチング(電力変換)デバイスでは、SiC、GaNを含む従来材料より更に広い耐圧範囲に対応できるGaの材料を使用した酸化ガリウム系のパワーデバイスが着目されている。酸化ガリウム系のパワーデバイスは高温、高耐圧まで広い温度、電圧範囲に対応し、かつ、低コスト、高効率、高信頼性が期待されている。このため、Ga系パワーデバイスの適用分野として幅広い応用分野が考えられる。
【0007】
しかしながら、酸化ガリウム系のパワーデバイスの構成を考えた場合、実用的な活性層を形成できる混晶型の半導体層(混晶層)の組合せを探求することが必要である。また、パワーデバイスを構成するには、各混晶層において選択的にエッチングを行える技術の開発が必要とされている。
【0008】
一般にデバイスの形成を考えると、活性層の設計は非常に重要である。上述したようなHEMTやCMOSやPNダイオードなどにおいて、高性能なデバイスを達成させるために活性層を積層させたりするものも有り、各層を選択的にエッチングしてパターンを形成する技術はとても重要な役割を果たしている。
【0009】
エッチング技術には、ドライエッチングとウェットエッチングがある。ドライエッチングは、エッチングの指向性が高くエッチングパターンのアスペクト比が高いが、そのメカニズムから薄膜へのダメージが懸念されたり、運転に際し大きなエネルギーを消費したりしてしまう。
【0010】
一方、ウェットエッチングは、エッチングのアスペクト比はドライエッチングに比べ悪いが、非常に単純で運転コストが安価であるだけでなく、ドライエッチングに比べれば、エッチング速度が速くエッチングの選択性に優れている。
【0011】
これらのメリットから、たとえばディスプレイなどを形成する際にはウェットエッチングが重用される。
【0012】
本開示では、上記のような問題点を解決し、複数の混晶層を含むエッチング対象構造に対し、比較的簡単に所望の構造を得ることができるエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示のエッチング方法における第1の態様は、(a) 第1及び第2の混晶層を含むエッチング対象構造を得るステップと、(b) 前記エッチング対象構造に対し第1のエッチング剤を用いて第1の混晶層を選択的にエッチングする第1のエッチング処理、及び前記エッチング対象構造に対し第2のエッチング剤を用いて前記第2の混晶層を選択的にエッチングする第2のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を実行するステップとを備え、前記第1の混晶層は、(M1Ga1-x(0<x≦1)を含み、前記第2の混晶層は、(M2Ga1-y(0<y≦1)を含み、M1=Crであり、M2={Al,In,Fe}のうちの一つであり、前記第1の混晶層は{x≠1}の場合に結晶性を有し、前記第2の混晶層は{y≠1}の場合に結晶性を有する。
【0014】
本開示のエッチング方法における第2の態様は、(a) 第1及び第2の混晶層並びに酸化シリコン層を含むエッチング対象構造を得るステップと、(b) 前記エッチング対象構造に対し第1のエッチング剤を用いて第1の混晶層を選択的にエッチングする第1のエッチング処理、前記エッチング対象構造に対し第2のエッチング剤を用いて前記第2の混晶層を選択的にエッチングする第2のエッチング処理、前記エッチング対象構造に対し第3のエッチング剤を用いて前記酸化シリコン層を選択的にエッチングする第3のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を実行するステップとを備え、前記第1の混晶層は、(M1Ga1-x (0<x≦1)を含み、前記第2の混晶層は、(M2Ga1-y(0<y≦1)を含み、M1=Crであり、M2={Al,In,Fe}のうちの一つであり、前記第1の混晶層は{x≠1}の場合に結晶性を有し、前記第2の混晶層は{y≠1}の場合に結晶性を有する。
【発明の効果】
【0015】
本開示のエッチング方法の第1の態様は、ステップ(b)を実行することにより、エッチング対象構造から第1の混晶層あるいは第2の混晶層を選択的にエッチングすることができるため、比較的簡単な工程によってエッチング対象構造から所望の構造を精度良く得ることができる。
【0016】
本開示のエッチング方法の第2の態様は、ステップ(b)を実行することにより、エッチング対象構造から第1の混晶層、第2の混晶層あるいはシリコン酸化膜を選択的にエッチングすることができるため、比較的簡単な工程によってエッチング対象構造から所望の構造を精度良く得ることができる。
【0017】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1における第1の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図2】第1の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図3】実施の形態1における第2の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図4】第2の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図5】実施の形態2における第3の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図6】第3の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図7】第3の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図8】実施の形態2における第4の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図9】第4の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図10】第4の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
図11】エッチング剤の特性を表形式で示す説明図である。
図12】Al用エッチング剤及びCr用エッチング剤の成分構成を表形式で示す説明図である。
図13】酸化シリコン用エッチング剤による第3のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
図14】酸化シリコン用エッチング剤による第3のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
図15】Al用エッチング剤による第2のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
図16】Cr用エッチング剤による第1のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
図17】実施の形態3のエッチング方法におけるパターニング構造を得るための基本処理工程を示す断面図である。
図18】基本処理工程を示す断面図である。
図19】基本処理工程を示す断面図である。
図20】クロム混晶層を得るための第1の薄膜製造技術の概略を示す説明図である。
図21】アルミニウム混晶層を得るための第2の薄膜製造技術の概略を示す説明図である。
図22】実施の形態3におけるメサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図23】メサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図24】メサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図25】メサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図26】メサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図27】メサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図28】メサ-エッチング処理工程を示す断面図である。
図29】実施の形態3における第2のマスク処理工程を示す断面図である。
図30】第2のマスク処理工程を示す断面図である。
図31】第2のマスク処理工程を示す断面図である。
図32】第2のマスク処理工程を示す断面図である。
図33】第2のマスク処理工程を示す断面図である。
図34】第2のマスク処理工程を示す断面図である。
図35】実施の形態3における第3のマスク処理工程を示す断面図である。
図36】第3のマスク処理工程を示す断面図である。
図37】第3のマスク処理工程を示す断面図である。
図38】第3のマスク処理工程を示す断面図である。
図39】第3のマスク処理工程を示す断面図である。
図40】中間パターニング構造の平面構造の一例を示す平面図である。
図41】実施の形態3におけるゲート形成工程を示す断面図である。
図42】ゲート形成工程を示す断面図である。
図43】ゲート形成工程を示す断面図である。
図44】ゲート形成工程を示す断面図である。
図45】ゲート形成工程を示す断面図である。
図46】ゲート形成工程を示す断面図である。
図47】バッファ層を採用したインジウム混晶層の形成方法を示す断面図である。
図48】バッファ層を採用したインジウム混晶層の形成方法を示す断面図である。
図49】鉄混晶層の製造工程の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態1>
本開示の基本的な構成と方法について説明する。
【0020】
まず、酸化ガリウムの結晶は多形で、α,β,γ,δ,εの5つがあるが、材料的に最も安定なのは単斜晶系のβ相であるが、本実施の形態では、α相を代表して使用する。その理由は以下の通りである。
【0021】
(1)α-Gaは汎用基板(石英、Si, サファイア)の一つであるAlと同じ結晶構造をもつため、高品質な結晶成長を促進させるエピタキシャル成長が可能である。
(2) 多くのコランダム構造の結晶との混晶膜の作製に成功しているか実績がある。
(3) コランダム構造の薄膜は、V(バナジウム)やIn(インジウム)などにおいては導電性を有する膜を形成可能であり、一方でGa(ガリウム)やAl(アルミニウム)などに見られるように絶縁体や半導体としても利用することが可能であり、非常に選択幅が大きい。
(4) P型などもできる可能性が示唆されている。
上記理由でα相を代表して説明するが、他の相でも適用可能である。
【0022】
図1及び図2は本開示の実施の形態1における第1の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、クロム混晶層1とクロム混晶層1上に設けられたアルミニウム混晶層2からなる積層構造3がエッチング対象構造となる。なお、クロム混晶層1が「第1の混晶層」に対応し、アルミニウム混晶層2が「第2の混晶層」に対応する。
【0024】
クロム混晶層1は、以下の化学式(1)を満足する構成成分を含み、アルミニウム混晶層2は以下の化学式(2)を満足する構成成分を含んでいる。さらに、クロム混晶層1は化学式(1)で{x≠1}の場合は結晶性を有し、アルミニウム混晶層2は化学式(2)で{y≠1}の場合に結晶性を有する。
【0025】
クロム混晶層1…α-(CrGa1-x(但し、0<x≦1)…(1)
アルミニウム混晶層2…α-(AlGa1-y(但し、0<y≦1)…(2)
【0026】
図1に示すように、下方側からクロム混晶層1→アルミニウム混晶層2に示す順に積層して積層構造3を製造している。すなわち、図示しない所定基板上にクロム混晶層1を形成し、その後、クロム混晶層1上にアルミニウム混晶層2を形成することにより、積層構造3を得ている。この積層構造3がエッチング対象構造となる。
【0027】
次に、図1に示す積層構造3のアルミニウム混晶層2上に、図示しないフォトレジストを形成した後、露光処理によりパターニングされたレジスト(図示せず)を得る。
【0028】
そして、パターニングされたレジストをマスクとして、後に詳述するAl用エッチング剤F2を用いてアルミニウム混晶層2のみを選択的にエッチングする第2のエッチング処理を実行する。Al用エッチング剤F2が「第2のエッチング剤」に対応し、Al用エッチング剤F2を用いたエッチング処理が「第2のエッチング処理」となる。
【0029】
その結果、図2に示すように、アルミニウム混晶層2の一部を貫通しクロム混晶層1の表面が露出したエッチング領域R2を有するパターニング構造13を得ることができる。パターニング構造13は、エッチング領域R2以外の残存した積層構造3と、エッチング領域R2におけるクロム混晶層1のみからなる単層構造との組合せを含んでいる。
【0030】
すなわち、図2に示すパターニング構造13は、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2による積層構造3と、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2のうち下方のクロム混晶層1のみが設けされた単層構造を含んでいる。パターニング構造13において、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2は互いに異なる形成高さで設けられている。
【0031】
その結果、パターニング構造13に残存した積層構造3が半導体装置の基本となる活性層(チャネル層)となる。例えば、積層構造3におけるクロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2は、HEMTの電子発生層と電子通過層の基礎となる可能性がある。
【0032】
図3及び図4は本開示の実施の形態1における第2の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように、アルミニウム混晶層2とアルミニウム混晶層2上に設けられたクロム混晶層1からなる積層構造3Bがエッチング対象構造となる。以下、図1及び図2で示した第1の基本エッチング方法と同内容の説明を適宜省略し、第2の基本エッチング方法の特徴を中心に説明する。
【0034】
図3に示すように、下方側からアルミニウム混晶層2→クロム混晶層1に示す順に積層して積層構造3Bを製造している。すなわち、図示しない所定基板上にアルミニウム混晶層2を形成し、その後、アルミニウム混晶層2上にクロム混晶層1を形成することにより、積層構造3Bを得ている。
【0035】
次に、図3に示す積層構造3Bのクロム混晶層1上に、図示しないフォトレジストを形成した後、露光処理によりパターニングされたレジスト(図示せず)を設ける。
【0036】
そして、図4に示すように、パターニングされたレジストをマスクとして、後に詳述するCr用エッチング剤F1を用いてクロム混晶層1のみを選択的にエッチングする第1のエッチング処理を実行する。Cr用エッチング剤F1が「第1のエッチング剤」に対応し、Cr用エッチング剤F1を用いたエッチング処理が「第1のエッチング処理」となる。
【0037】
その結果、図4に示すように、クロム混晶層1の一部を貫通しアルミニウム混晶層2の表面が露出したエッチング領域R1を有するパターニング構造13Bを得ることができる。パターニング構造13Bは、エッチング領域R1以外の残存した積層構造3Bと、エッチング領域R1におけるアルミニウム混晶層2のみからなる単層構造との組合せを含んでいる。
【0038】
すなわち、図4に示すパターニング構造13Bは、アルミニウム混晶層2及びクロム混晶層1による積層構造3Bと、アルミニウム混晶層2及びクロム混晶層1のうち下方のアルミニウム混晶層2のみが設けされた単層構造を含んでいる。パターニング構造13Bにおいて、アルミニウム混晶層2及びクロム混晶層1は互いに異なる形成高さで設けられている。
【0039】
その結果、パターニング構造13Bに残存した積層構造3Bが半導体装置の基本となる活性層(チャネル層)となる。
【0040】
なお、上述した第1及び第2の基本エッチング方法それぞれにおいて、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2をそれぞれ形成する薄膜製造装置は、図示はしないが、ミストCVD装置を使用することが好ましい。
【0041】
ミストCVD装置は、内部に収容される複数の原料溶液を霧化(ミスト化)して複数の原料ミストを生成するミスト生成部と、それらの原料ミストを搬送するための搬送ガスが導入される搬送ガス導入部と、原料ミストを搬送ガスに含ませたミスト流が送出されるミスト送出部とを備えた構成が一般的である。なお、CVD法以外にHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法で積層構造3を得ることもできる。
【0042】
上述した第1(第2)の基本エッチング方法によって得られたパターニング構造13(13B)は以下の特徴を有している。
【0043】
(1) クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2による積層構造3(3B)を含み、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2は互いに異なる形成高さで儲けられる。
【0044】
(2) 最終的に得られるパターニング構造13(13B)として、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2による積層構造3(3B)が残存している。
【0045】
(3) クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2のうち、下方の混晶層のみが形成された単層構造が存在している。
【0046】
実施の形態1の第1及び第2の基本エッチング方法によって得られたパターニング構造13及び13Bは、必要により、基板から離れた、半導体装置の中間層として形成することも可能である。
【0047】
なお、図2で示したエッチング領域R2、及び図4で示したエッチング領域R1には、所定の薄膜が成膜されたり、金属層などが接続されたりすることになる。
【0048】
本開示の実施の形態1の第1の基本エッチング方法は、Al用エッチング剤F2を用いた第2のエッチング処理を実行することにより、エッチング対象構造となる積層構造3から、クロム混晶層1をエッチングストッパーとしてアルミニウム混晶層2を選択的にエッチングすることができる。
【0049】
このため、比較的簡単な第1の基本エッチング方法により、積層構造3から所望のパターニング構造13を精度良く得ることができる。
【0050】
同様に、本開示の実施の形態1の第2の基本エッチング方法は、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理を実行することにより、エッチング対象構造となる積層構造3Bから、アルミニウム混晶層2をエッチングストッパーとしてクロム混晶層1を選択的にエッチングすることができる。
【0051】
このため、比較的簡単な第2の基本エッチング方法により、積層構造3Bから所望のパターニング構造13Bを精度良く得ることができる。
【0052】
また、図2で示すパターニング構造13を有する半導体装置は、以下のように製造することができる。
【0053】
積層構造3をエッチング対象構造としてAl用エッチング剤F2を用いた第1の基本エッチング方法を実行することにより、積層構造3における下方の混晶層となるクロム混晶層1をエッチングストッパーとして上方の混晶層となるアルミニウム混晶層2を選択的に除去することができる。
【0054】
したがって、比較的簡単な第1の基本エッチング方法を行うことにより、パターニング構造13を精度良く得ることができる。
【0055】
同様に、図4で示すパターニング構造13Bを有する半導体装置は、Cr用エッチング剤F1を用いた第2の基本エッチング方法を実行することにより、比較的簡単なプロセスでパターニング構造13Bを精度良く得ることができる。
【0056】
このように、酸化ガリウムと混晶する物質として、Al、Crの組み合わせを発見し、半導体装置の基本となる活性層が構成することができる。
【0057】
<実施の形態2>
図5図7は、本開示の実施の形態2における第3の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
【0058】
図5に示すように、クロム混晶層1とクロム混晶層1上に設けられたアルミニウム混晶層2とアルミニウム混晶層2上に設けられた酸化シリコン層6とからなる積層構造4がエッチング対象構造となる。なお、クロム混晶層1が「第1の混晶層」に対応し、アルミニウム混晶層2が「第2の混晶層」に対応する。
【0059】
以下、図1図4で示した実施の形態1と同内容の説明を適宜省略し、図5図7を参照して実施の形態2の特徴を中心に説明する。
【0060】
図5に示すように、下方側からクロム混晶層1→アルミニウム混晶層2→酸化シリコン層6に示す順に積層して積層構造4を製造している。すなわち、図示しない所定基板上にクロム混晶層1を形成し、その後、クロム混晶層1上にアルミニウム混晶層2を形成し、その後、アルミニウム混晶層2上に酸化シリコン層6を形成することにより、積層構造4を得ている。
【0061】
次に、図5に示す積層構造4の酸化シリコン層6上に、図示しないフォトレジスト(第1のレジスト)を形成した後、露光処理によりパターニングされた第1のレジスト(図示せず)を得る。
【0062】
そして、パターニングされた第1のレジストをマスクとして、後に詳述する酸化シリコン用エッチング剤F3を用いて酸化シリコン層6のみを選択的にエッチングする第3のエッチング処理を実行する。酸化シリコン用エッチング剤F3が「第3のエッチング剤」に対応し、酸化シリコン用エッチング剤F3を用いたエッチング処理が「第3のエッチング処理」となる。
【0063】
その結果、図6に示すように、酸化シリコン層6を貫通しアルミニウム混晶層2の表面が露出したエッチング領域R6を得ることができる。
【0064】
次に、図6に示すエッチング領域R6内のアルミニウム混晶層2上に、図示しないフォトレジスト(第2のレジスト)を形成した後、露光処理によりパターニングされた第2のレジスト(図示せず)を得る。
【0065】
そして、パターニングされた第2のレジストをマスクとして、Al用エッチング剤F2を用いてアルミニウム混晶層2のみを選択的にエッチングするエッチング処理を実行する。Al用エッチング剤F2が「第2のエッチング剤」に対応し、Al用エッチング剤F2を用いたエッチング処理が「第2のエッチング処理」となる。
【0066】
その結果、図7に示すように、エッチング領域R6内において、アルミニウム混晶層2の一部を貫通しクロム混晶層1の表面が露出したエッチング領域R2を有するパターニング構造14を得ることができる。
【0067】
パターニング構造14は、エッチング領域R6以外の残存したクロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6による3重積層構造と、エッチング領域R6以内でエッチング領域R2以外の残存したクロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2の2重積層構造と、エッチング領域R2におけるクロム混晶層1のみからなる単層構造との組合せを含んでいる。
【0068】
すなわち、図7に示すパターニング構造14は、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6による積層構造4(3重積層構造)と、積層構造4のうち最上の層である酸化シリコン層6を除く2層による2重積層構造と、積層構造4のうち最下の層であるクロム混晶層1のみが設けられた単層構造とを含んでいる。
【0069】
そして、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6は互いに異なる形成高さに設けられている。
【0070】
その結果、パターニング構造14内の残存したクロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2の2重積層構造が半導体装置の基本となる活性層(チャネル層)となる。
【0071】
図8図10は、本開示の実施の形態2における第4の基本エッチング方法の処理手順を示す断面図である。
【0072】
図8に示すように、アルミニウム混晶層2とアルミニウム混晶層2上に設けられたクロム混晶層1とクロム混晶層1上に設けられた酸化シリコン層6とからなる積層構造4Bがエッチング対象構造となる。以下、図5図7で示した第3の基本エッチング方法と同内容の説明を適宜省略し、図8図10を参照して第4の基本エッチング方法の特徴を中心に説明する。
【0073】
図8に示すように、下方側からアルミニウム混晶層2→クロム混晶層1→酸化シリコン層6に示す順に積層して積層構造4Bを製造している。すなわち、図示しない所定基板上にアルミニウム混晶層2を形成し、その後、アルミニウム混晶層2上にクロム混晶層1を形成し、その後、クロム混晶層1上に酸化シリコン層6を形成することにより、積層構造4Bを得ている。
【0074】
次に、図8に示す積層構造4Bの酸化シリコン層6上に、図示しないフォトレジスト(第1のレジスト)を形成した後、露光処理によりパターニングされた第1のレジスト(図示せず)を得る。
【0075】
そして、パターニングされた第1のレジストをマスクとして、後に詳述する酸化シリコン用エッチング剤F3を用いて酸化シリコン層6のみを選択的にエッチングする第3のエッチング処理を実行する。
【0076】
その結果、図9に示すように、酸化シリコン層6を貫通しクロム混晶層1の表面が露出したエッチング領域R6を得ることができる。
【0077】
次に、図9に示すエッチング領域R6内のクロム混晶層1上に、図示しないフォトレジスト(第2のレジスト)を形成した後、露光処理によりパターニングされた第2のレジスト(図示せず)を得る。
【0078】
そして、パターニングされた第2のレジストをマスクとして、Cr用エッチング剤F1を用いてクロム混晶層1のみを選択的にエッチングする第1のエッチング処理を実行する。
【0079】
その結果、図10に示すように、エッチング領域R6内において、クロム混晶層1の一部を貫通しアルミニウム混晶層2の表面が露出したエッチング領域R1を有するパターニング構造14Bを得ることができる。
【0080】
パターニング構造14Bは、エッチング領域R6以外の残存したアルミニウム混晶層2、クロム混晶層1及び酸化シリコン層6による3重積層構造と、エッチング領域R6内においてエッチング領域R1以外のアルミニウム混晶層2及びクロム混晶層1の2重積層構造と、エッチング領域R1におけるアルミニウム混晶層2のみからなる単層構造との組合せを含んでいる。
【0081】
すなわち、図10に示すパターニング構造14Bは、アルミニウム混晶層2、クロム混晶層1及び酸化シリコン層6による積層構造4B(3重積層構造)と、積層構造4Bのうち最上の層である酸化シリコン層6を除く2層による2重積層構造と、積層構造4Bのうち最下の層であるアルミニウム混晶層2のみが設けられた単層構造とを含んでいる。
【0082】
そして、アルミニウム混晶層2、クロム混晶層1及び酸化シリコン層6は互いに異なる形成高さに設けられている。
【0083】
本開示の実施の形態2の第3の基本エッチング方法は、酸化シリコン用エッチング剤F3を用いた第3のエッチング処理を実行することにより、エッチング対象構造となる積層構造4から、アルミニウム混晶層2をエッチングストッパーとして酸化シリコン層6を選択的にエッチングすることができる。
【0084】
本開示の実施の形態1の第3の基本エッチング方法において、第3のエッチング処理の実行後、Al用エッチング剤F2を用いた第2のエッチング処理を実行することにより、図6で示す構造から、クロム混晶層1をエッチングストッパーとしてアルミニウム混晶層2を選択的にエッチングすることができる。
【0085】
このため、図5図7で示す比較的簡単な処理工程からなる第3の基本エッチング方法により、積層構造4から所望のパターニング構造14を精度良く得ることができる。
【0086】
同様に、本開示の実施の形態2の第4の基本エッチング方法は、酸化シリコン用エッチング剤F3を用いた第3のエッチング処理を実行することにより、エッチング対象構造となる積層構造4Bから、クロム混晶層1をエッチングストッパーとして酸化シリコン層6を選択的にエッチングすることができる。
【0087】
本開示の第4の基本エッチング方法において、第3のエッチング処理の実行後、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理を実行することにより、図9で示す構造から、アルミニウム混晶層2をエッチングストッパーとしてクロム混晶層1を選択的にエッチングすることができる。
【0088】
このため、図8図10で示す比較的簡単な処理工程からなる第4の基本エッチング方法により、積層構造4Bから所望のパターニング構造14Bを精度良く得ることができる。
【0089】
また、図7で示すパターニング構造14を有する半導体装置は、図5図7で示す比較的簡単な処理工程からなる第3の基本エッチング方法によって製造することができる。
【0090】
したがって、図7で示すパターニング構造14を有する半導体装置は、比較的簡単に精度良く得ることができる。
【0091】
同様に、図10で示すパターニング構造14Bを有する半導体装置は、図8図10で示す比較的簡単な処理工程からなる第3の基本エッチング方法によって製造することができる。
【0092】
したがって、図10で示すパターニング構造14Bを有する半導体装置は、比較的簡単に精度良く得ることができる。
【0093】
このように、酸化ガリウムと混晶する物質として、Al、Crの組み合わせを発見し、半導体装置の基本となる活性層が構成することができる。
【0094】
<エッチング剤の詳細>
図11はエッチング剤の特性を表形式で示す説明図である。同図において、実用的にエッチングできる場合を「○」で示し、エッチング不能な場合を「×」で示している。
【0095】
図11では、酸化シリコン用エッチング剤F3としてバッファードフッ酸(BHF;Buffer HF)溶液を示している。BHF溶液として、超高純度フッ化水素酸(HF)とフッ化アンモニウム溶液(NHF)の混合水溶液を用いるのが一般的である。勿論、BHF溶液として、希釈して調合したHF等を利用しても良い。
【0096】
また、Al用エッチング剤F2としてAlエッチング液を示し、Cr用エッチング剤F1としてCrエッチング液を示している。また、Cr用エッチング剤F1及びAl用エッチング剤F2は共に135℃の温度環境化で用いられた場合を示している。
【0097】
また、酸化シリコン層6の構成材料としてSiOが示されており、アルミニウム混晶層2の構成材料として上述した化学式(2)が示されており、クロム混晶層1として化学式(1)が示されている。
【0098】
図12はAl用エッチング剤F2及びCr用エッチング剤F1の成分構成を表形式で示す説明図である。
【0099】
図12に示すように、Al用エッチング剤F2はAlエッチング液として、HNO、CHCOOH、HPO及びHOを構成成分として含んでいる。
【0100】
具体的には、Al用エッチング剤F2は、HNOが5~15重量%、CHCOOHが5~15重量%、HPOが60~80重量%、HOが10~20重量%で混合される。この際、上述した4つの重量%の合計が100%となるように調整される。
【0101】
なお、Al用エッチング剤F2を用いた第2のエッチング処理は、例えば、135℃程度の温度環境下で実行される。
【0102】
図12に示すように、Cr用エッチング剤F1はCrエッチング液として、(NHCe(NO、HClO及びHOを構成成分として含んでいる。
【0103】
具体的には、(NHCe(NOが5~15重量%、HClOが60~80重量%、HOが10~20重量%で混合される。この際、上述した3つの重量%の合計が100%となるように調整される。
【0104】
なお、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理は、例えば、135℃程度の温度環境下で実行される。
【0105】
図11に示すように、化学式(1)を満足して構成されるクロム混晶層1は、エッチング剤F1~F3のうち、Cr用エッチング剤F1によってのみエッチングされ、Al用エッチング剤F2及び酸化シリコン用エッチング剤F3によってエッチングされないという第1のエッチング特性を有している。なお、クロム混晶層1に対しては勿論、Cr酸化物に対しても、上述した第1のエッチング特性が適用できる。
【0106】
さらに、化学式(2)を満足して構成されるアルミニウム混晶層2は、エッチング剤F1~F3のうち、Al用エッチング剤F2によってのみエッチングされ、Cr用エッチング剤F1及び酸化シリコン用エッチング剤F3によってエッチングされないという第2のエッチング特性を有している。なお、アルミニウム混晶層2に対しては勿論、Al酸化物に対しても、上述した第2のエッチング特性が適用できる。
【0107】
加えて、SiOを構成材料とする酸化シリコン層6は、エッチング剤F1~F3のうち、酸化シリコン用エッチング剤F3によってのみエッチングされ、Al用エッチング剤F2及びCr用エッチング剤F1によってエッチングされないという第3のエッチング特性を有している。なお、一般的にSiOの具体的な組成はSiOとなる。
【0108】
(酸化シリコン用エッチング剤F3)
図13及び図14は酸化シリコン用エッチング剤F3による第3のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
【0109】
図13及び図14において、横軸はエッチング時間(Etching time;単位秒(s))を示し、縦軸はエッチング深さ(Etching depth;単位nm)を示している。また、エッチング速度(nm/s)を適宜示している。
【0110】
図13の最左のAl系のグラフを参照する。エッチング特性L31に示すように、Alを構成材料とするサファイア基板は酸化シリコン用エッチング剤F3によってエッチングされない。
【0111】
Alは、化学式(2)を満足する構成のAlGaO系のアルミニウム混晶層2におけるAlとGaとの混合比が(Al=100%,Ga=0%)の層に相当する。
【0112】
次に、図13の左から2番目のCrGaO系のグラフを参照する。CrGaO系の混晶層におけるCrとGaとの混合比に関し、○印が(Cr=42%,Ga=58%)の混合比を示し、×印が(Cr=100%,Ga=0%)の混合比を示している。
【0113】
エッチング特性L32に示すように、化学式(1)を満足するCrGaO系のクロム混晶層1は、酸化シリコン用エッチング剤F3に対しエッチングされることはない。
【0114】
次に、図13の左から3番目のAlGaO系のグラフを参照する。化学式(2)を満足するAlGaO系の第2の混晶層におけるAlとGaとの混合比に関し、▽印が(Al=0%,Ga=100%)の混合比を示し、○印が(Al=18%,Ga=82%)の混合比(Si添加)を示している。
【0115】
Al系のグラフ及びAlGaO系のグラフのエッチング特性L31及びL33に示すように、上述した化学式(2)を満足するアルミニウム混晶層2は酸化シリコン用エッチング剤F3に対しエッチングされることはない。
【0116】
次に、図13の左から4番目のInGaO系のグラフを参照する。InGaO系の混晶層におけるInとGaとの混合比に関し、○印が(In=80%,Ga=20%)の混合比を示し、×印が(In=100%,Ga=0%)の混合比を示している。
【0117】
InGaO系のエッチング特性L34及びL35に示すように、以下の化学式(3)を満足する構成成分を含むインジウム混晶層2Xは酸化シリコン用エッチング剤F3に対しエッチングされることはない。
【0118】
インジウム混晶層2X…α-(InGa1-y(但し、0<y≦1)…(3)
【0119】
次に、図13の左から5番目のFeGaO系のグラフを参照する。FeGaO系の混晶層におけるFeとGaとの混合比に関し、◇印が(Fe=70%,Ga=30%;(成膜温度335℃))の混合比を示し、□印が(Fe=70%,Ga=30%;(成膜温度350℃))の混合比を示し、△印が(Fe=100%,Ga=0%(成膜温度350℃))の混合比を示している。
【0120】
FeGaO系のエッチング特性L36に示すように、以下の化学式(4)を満足する構成成分を含む鉄混晶層2Yは酸化シリコン用エッチング剤F3に対しエッチングされることはない。
【0121】
鉄混晶層2Y…α-(FeGa1-y(但し、0<y≦1)…(4)
【0122】
次に、図13の最右及び図14のSiO系のグラフを参照する。図13の最右のグラフの詳細を図14が示している。なお、△印は1回目の測定値、○印は2回目の測定値を示している。第1の膜厚の酸化シリコン層6に対する1回目のエッチングが10s以下で終了したため、第1の膜厚より厚い第2の膜厚の酸化シリコン層6に対する2回目のエッチングを確認的に行い、エッチング速度を測定した。
【0123】
SiO系のエッチング特性L37に示すように、SiOに代表されるSiOを構成材料とする酸化シリコン層6は、酸化シリコン用エッチング剤F3に対しエッチングされる。
【0124】
このように、図13及び図14から、図11で示した酸化シリコン用エッチング剤F3に関し、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6に対する第3のエッチング特性が正しいことが認識される。
【0125】
さらに、酸化シリコン用エッチング剤F3に対しインジウム混晶層2X及び鉄混晶層2Yもアルミニウム混晶層2と同様、エッチングされないことが認識された。
【0126】
(Al用エッチング剤F2)
図15はAl用エッチング剤F2による第2のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
【0127】
図15において、横軸はエッチング時間(Etching time;単位秒(s))を示し、縦軸はエッチング深さ(Etching depth;単位nm)を示している。また、エッチング速度(nm/s)を適宜示している。
【0128】
図15の最左のAl系のグラフを参照する。Al系のグラフのうち、×印がサファイア基板の場合、○印がAlO薄膜の場合を示している。このAlO薄膜はミストCVD法により形成された薄膜である。
【0129】
Al系のグラフにおけるエッチング特性L11に示すように、サファイア基板はAl用エッチング剤F2によってエッチングされない。
【0130】
一方、Al系のグラフにおけるエッチング特性L12に示すように、AlO薄膜はAl用エッチング剤F2によってエッチングされる。
【0131】
AlO薄膜は、AlGaO系のアルミニウム混晶層2におけるAlとGaとの混合比が(Al=100%,Ga=0%)の層に相当する。
【0132】
次に、図15の左から2番目のCrGaO系のグラフを参照する。CrGaO系のクロム混晶層1におけるCrとGaとの混合比に関し、○印が(Cr=32%,Ga=68%)の混合比を示し、×印が(Cr=100%,Ga=0%)の混合比を示している。
【0133】
エッチング特性L13に示すように、化学式(1)を満足するクロム混晶層1はAl用エッチング剤F2に対しエッチングされることはない。
【0134】
次に、図15の左から3番目のAlGaO系のグラフを参照する。AlGaO系の混晶層におけるAlとGaとの混合比に関し、▽印が(Al=0%,Ga=100%)の混合比を示し、△印が(Al=11%,Ga=89%)の混合比(Si添加)を示し、◇印が(Al=12%,Ga=88%)の混合比(Si添加)を示し、□印が(Al=25%,Ga=75%)の混合比(Si添加)を示している。
【0135】
Al系のグラフ及びAlGaO系のグラフのエッチング特性L12、L14及びL15に示すように、上述した化学式(2)を満足するアルミニウム混晶層2はAl用エッチング剤F2に対しエッチングされる。
【0136】
次に、図15の左から4番目のInGaO系のグラフを参照する。InGaO系のインジウム混晶層2XにおけるInとGaとの混合比に関し、○印,△印が(In=80%,Ga=20%)の混合比を示し、×印が(In=100%,Ga=0%)の混合比を示している。
【0137】
InGaO系のエッチング特性L16及びL17に示すように、化学式(3)を満足するインジウム混晶層2XはAl用エッチング剤F2に対しエッチングされる。
【0138】
次に、図15の左から5番目のFeGaO系のグラフを参照する。FeGaO系の混晶層におけるFeとGaとの混合比に関し、◇印が(Fe=70%,Ga=30%;(成膜温度335℃))の混合比を示し、□印が(Fe=70%,Ga=30%;(成膜温度350℃))の混合比を示し、▽印が(Fe=100%,Ga=0%(成膜温度400℃))の混合比を示している。
【0139】
FeGaO系のエッチング特性L18及びL19に示すように、化学式(4)を満足する鉄混晶層2YはAl用エッチング剤F2に対しエッチングされる。
【0140】
次に、図15の最右のSiO系のグラフを参照する。
【0141】
SiO系のエッチング特性L20に示すように、SiOに代表されるSiOを構成材料とする酸化シリコン層6は、Al用エッチング剤F2に対しエッチングされない。
【0142】
このように、図15から、図11で示したAl用エッチング剤F2に関し、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6それぞれに対する第2のエッチング特性が正しいことが認識される。
【0143】
但し、化学式(2)で{y=1}の場合のアルミニウム混晶層2に相当するAlO薄膜が、Al用エッチング剤F2にエッチングされるようにするには、ミスト法によってAlO薄膜を形成することが望ましい。なお、ミスト法はミストCVD法に限定されない。
【0144】
加えて、Al用エッチング剤F2に対し、インジウム混晶層2X及び鉄混晶層2Yもアルミニウム混晶層2と同様にエッチングされることが認識された。
【0145】
(Cr用エッチング剤F1)
図16はCr用エッチング剤F1による第1のエッチング特性の詳細をグラフ形式で示す説明図である。
【0146】
図16において、横軸はエッチング時間(Etching time;単位秒(s))を示し、縦軸はエッチング深さ(Etching depth;単位nm)を示している。また、エッチング速度(nm/s)を適宜示している。
【0147】
図16の最左のAl系のグラフを参照する。エッチング特性L21に示すように、Alを構成材料とするサファイア基板はCr用エッチング剤F1によってエッチングされない。
【0148】
次に、図16の左から2番目のCrGaO系のグラフを参照する。CrGaO系の混晶層におけるCrとGaとの混合比に関し、△印が(Cr=20%,Ga=80%)の混合比を示し、□印が(Cr=32%,Ga=68%)の混合比を示し、×印が(Cr=100%,Ga=0%)の混合比を示している。
【0149】
エッチング特性L22及びL23に示すように、化学式(1)を満足するクロム混晶層1はCr用エッチング剤F1に対しエッチングされる。
【0150】
次に、図16の左から3番目のAlGaO系のグラフを参照する。AlGaO系の混晶層におけるAlとGaとの混合比に関し、▽印が(Al=0%,Ga=100%)の混合比を示し、◇印が(Al=12%,Ga=88%)の混合比(Si添加)を示している。
【0151】
Al系のグラフ及びAlGaO系のグラフのエッチング特性L21及びL24に示すように、上述した化学式(2)を満足するアルミニウム混晶層2はCr用エッチング剤F1に対しエッチングされない。
【0152】
次に、図16の左から4番目のInGaO系のグラフを参照する。InGaO系の混晶層におけるInとGaとの混合比に関し、○印が(In=80%,Ga=20%)の混合比を示し、×印が(In=100%,Ga=0%)の混合比を示している。
【0153】
InGaO系のエッチング特性L25に示すように、化学式(3)を満足するインジウム混晶層2XはCr用エッチング剤F1に対しエッチングされない。
【0154】
次に、図16の左から5番目のFeGaO系のグラフを参照する。FeGaO系の混晶層におけるFeとGaとの混合比に関し、◇印が(Fe=70%,Ga=30%;(成膜温度335℃))の混合比を示し、□印が(Fe=70%,Ga=30%;(成膜温度350℃))の混合比を示し、▽印が(Fe=100%,Ga=0%(成膜温度400℃))の混合比を示している。
【0155】
FeGaO系のエッチング特性L26に示すように、化学式(4)を満足する鉄混晶層2YはCr用エッチング剤F1に対しエッチングされない。
【0156】
次に、図16の最右のSiO系のグラフを参照する。SiO系のエッチング特性L27に示すように、SiOに代表されるSiOを構成材料とする酸化シリコン層6は、Cr用エッチング剤F1に対しエッチングされない。
【0157】
このように、図16から、図11で示したCr用エッチング剤F1に関し、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6に対する第1のエッチング特性が正しいことが認識される。
【0158】
さらに、Cr用エッチング剤F1に対し、インジウム混晶層2X及び鉄混晶層2Yもアルミニウム混晶層2と同様にエッチングされないことが認識された。
【0159】
<実施の形態1及び実施の形態2の総括と効果>
図11図16で示した事実から、実施の形態1の第1及び第2のエッチング方法は以下のようにまとめることができる。
【0160】
実施の形態1のエッチング方法は以下のステップ(a),(b)を実行する。
【0161】
ステップ(a)は、第1及び第2の混晶層を含むエッチング対象構造を得るステップである。
【0162】
ステップ(b)は、上記エッチング対象構造に対しCr用エッチング剤F1を用いて第1の混晶層を選択的にエッチングする第1のエッチング処理、及び上記エッチング対象構造に対しAl用エッチング剤F2を用いて上記第2の混晶層を選択的にエッチングする第2のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を実行するステップである。
【0163】
上記第1の混晶層は、以下の化学式(5)を満足する構成成分を含み、上記第2の混晶層は以下の化学式(6)を満足する構成成分を含んでいる。
【0164】
(M1Ga1-x(0<x≦1)…(5)
(M2Ga1-y(0<y≦1)…(6)
化学式(5)において、M1=Crであり、化学式(6)において、M2={Al,In,Fe}のうちの一つである。
【0165】
さらに、化学式(5)を満足する第1の混晶層は{x≠1}の場合に結晶性を有し、化学式(6)を満足する前記第2の混晶層は{y≠1}の場合に結晶性を有する。
【0166】
実施の形態1のエッチング方法は、上記ステップ(b)を実行することにより、エッチング対象構造から第1の混晶層あるいは第2の混晶層を選択的にエッチングすることができるため、比較的簡単にエッチング対象構造から所望の構造を得ることができる。
【0167】
加えて、図2図4)で示すパターニング構造13(13B)を有する半導体装置は、上記ステップ(b)を実行することにより、第1及び第2の混晶層のうち下方の混晶層をエッチングストッパーとして上方の混晶層を選択的に除去することができる。
【0168】
したがって、実施の形態1で製造された半導体装置のパターニング構造13(13B)は、比較的簡単な実施の形態1のエッチング方法を実行することにより、精度良く得ることができる。
【0169】
また、図11図16で示した事実から、実施の形態2の第3及び第4のエッチング方法は以下のようにまとめることができる。
【0170】
実施の形態2のエッチング方法は以下のステップ(a),(b)を実行する。
【0171】
ステップ(a)は、第1及び第2の混晶層並びに酸化シリコン層を含むエッチング対象構造を得るステップである。
【0172】
ステップ(b)は、上記エッチング対象構造に対し第1のエッチング剤を用いて第1の混晶層を選択的にエッチングする第1のエッチング処理、上記エッチング対象構造に対し第2のエッチング剤を用いて第2の混晶層を選択的にエッチングする第2のエッチング処理、上記エッチング対象構造に対し第3のエッチング剤を用いて酸化シリコン層を選択的にエッチングする第3のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を実行するステップである。
【0173】
なお、上記第1及び第2の混晶層の構成成分については実施の形態1と同様である。酸化シリコン層はSiOを構成材料としている。
【0174】
実施の形態2のエッチング方法は、上記ステップ(b)を実行することにより、エッチング対象構造から第1の混晶層、第2の混晶層あるいはシリコン酸化膜を選択的にエッチングすることができるため、比較的簡単にエッチング対象構造から所望の構造を得ることができる。
【0175】
加えて、図7図10)で示すパターニング構造14(14B)を有する半導体装置は、上記ステップ(b)に含まれる第3のエッチング処理を実行することにより、第1及び第2の混晶層並びに酸化シリコン層のうち中間層をエッチングストッパーとして最上の層を選択的に除去することができる。
【0176】
さらに、実施の形態2のように、第3のエッチング処理に続けて、第1のエッチング処理または第2のエッチング処理を実行することにより、第1及び第2の混晶層並びに酸化シリコン層のうち最下の層をエッチングストッパーとして中間層を選択的に除去することができる。
【0177】
したがって、実施の形態2で製造された半導体装置のパターニング構造14(14B)は、比較的簡単な実施の形態2のエッチング方法を実行することにより、精度良く得ることができる。
【0178】
また、実施の形態2では、酸化シリコン用エッチング剤F3としてバッファードフッ酸溶液(BHF溶液)を用いることにより、実施の形態2の積層構造4であるエッチング対象構造からシリコン酸化膜を選択的に除去することができる。
【0179】
さらに、実施の形態1及び実施の形態2のAl用エッチング剤F2として、HNOが5~15重量%、CHCOOHが5~15重量%、HPOが60~80重量%、HOが10~20重量%で混合されたエッチング液を用いている。
【0180】
このように、Al用エッチング剤F2として、上述した混合比で混合されたエッチング液を用いることにより、実施の形態1の積層構造3あるいは実施の形態2の積層構造4であるエッチング対象構造からアルミニウム混晶層2を選択的に除去することができる。
【0181】
加えて、実施の形態1及び実施の形態2のCr用エッチング剤F1として、(NHCe(NOが5~15重量%、HClOが60~80重量%、HOが10~20重量%で混合されたエッチング液を用いている。
【0182】
このように、Cr用エッチング剤F1として、上述した混合比で混合されたエッチング液を用いることにより、実施の形態1の積層構造3(3B)あるいは実施の形態2の積層構造4(4B)であるエッチング対象構造からクロム混晶層1を選択的に除去することができる。
【0183】
なお、上述したエッチング剤F1~F3に関する効果に関し、アルミニウム混晶層2をインジウム混晶層2Xあるいは鉄混晶層2Yに置き換えても同様な効果を得ることができる。
【0184】
なお、クロム混晶層1は化学式(5)で{x≠1}の場合、結晶性を有すれば、Gaとの比率に関係なく、図13図15及び図16で示したエッチング特性を示すことが推測される。
【0185】
同様に、アルミニウム混晶層2、インジウム混晶層2X及び鉄混晶層2Yはそれぞれ、化学式(6)で{y≠1}の場合、結晶性を有すれば、Gaとの比率に関係なく、図13図15及び図16で示したエッチング特性を示すことが推測される。
【0186】
なぜなら、所定の混合比で元素E1と元素E2で混合された混晶層が、エッチング剤Wに対して所定のエッチング特性を有することが確認されれば、元素E1と元素E2で混合された混晶層が所定の混合比以外の場合でも、エッチング剤Wに対し上述した所定のエッチング特性は同じであると推測できるからである。ただし、混晶層は結晶性を有する、すなわち、単結晶か多結晶である必要がある。
【0187】
なお、AlO等、Gaを含まない場合、すなわち、化学式(1),(5)でx=1の場合の層、化学式(2)~(4),(6)で「y=1」の場合の層は、結晶性を有する必要はなく、非晶質でも良い。
【0188】
逆に言えば、化学式(5)を満足するクロム混晶層1を含む第1の混晶層は、{x≠1}の場合に結晶性を有する必要がある。同様に、各々が化学式(6)を満足する、アルミニウム混晶層2、インジウム混晶層2X及び鉄混晶層2Yを含む第2の混晶層は{y≠1}の場合に結晶性を有する必要がある。
【0189】
なお、実施の形態1及び実施の形態2において、Cr用エッチング剤F1による第1のエッチング処理、Al用エッチング剤F2による第2のエッチング処理、酸化シリコン用エッチング剤F3による第3のエッチング処理は全てウェットエッチングとなる。
【0190】
<実施の形態3>
実施の形態3では、実施の形態2で開示したエッチング方法を発展させて第1及び第2の混晶層の組み合わせと選択性エッチングの技術を用いてHEMT(高電子移動度トランジスタ)を製造する場合を示している。
【0191】
図17図19は、実施の形態3における積層構造4を得るための基本処理工程を示す断面図である。図20はクロム混晶層1を得るための第1の薄膜製造技術の概略を示す説明図であり、図21はアルミニウム混晶層2を得るための第2の薄膜製造技術の概略を示す説明図である。以下、図17図21それぞれを参照して基本処理工程を説明する。
【0192】
まず、図17に示すように、サファイア基板8上にCrGaO系のクロム混晶層1をミストCVD法によって成膜する。なお、サファイア基板8はC面サファイア基板である。
【0193】
図20に示すように、Cr用チャンバーC1にCr溶液を収容し、Cr用チャンバーC1に超音波振動を付与することによりCrミストを得ることができる。Ga用チャンバーC2にGa溶液を収容し、Ga用チャンバーC2に超音波振動を付与することによりGaミストを得ることができる。そして、Cr用チャンバーC1より得たCrミストと、Ga用チャンバーC2より得たGaミストとをサファイア基板8の表面上で混合することにより、サファイア基板8上にクロム混晶層1を成膜することができる。
【0194】
次に、図18に示すように、クロム混晶層1上に、AlGaO系のアルミニウム混晶層2をミストCVD法によって成膜する。
【0195】
図21に示すように、Al用チャンバーC3にAl溶液を収容し、Ga用チャンバーC2に超音波振動を付与することによりAlミストを得ることができる。Ga用チャンバーC4にGa溶液を収容し、Ga用チャンバーC4に超音波振動を付与することによりGaミストを得ることができる。そして、Al用チャンバーC3より得たAlミストと、Ga用チャンバーC4より得たGaミストとをクロム混晶層1の表面上で混合することにより、クロム混晶層1上にアルミニウム混晶層2を成膜することができる。
【0196】
図18に示すように、アルミニウム混晶層2を成膜した状態では、クロム混晶層1とアルミニウム混晶層2の界面近傍に、ヘテロ接合に起因した高移動度の二次元電子ガス(2DEG)を生成できる。したがって、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2の積層構造により2DEGを生成する活性層を実現する可能性がある。
【0197】
そして、図19に示すように、アルミニウム混晶層2上に酸化シリコン層6をプラズマCVD法を用いて成膜する。プラズマCVD(plasma CVD)法として、原料にTEOSを用いたPECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)法を採用した。
【0198】
その結果、サファイア基板8上にクロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6の順で積層された積層構造4を得ることができる。
【0199】
図22図28は実施の形態3におけるメサ-エッチング処理工程(第1のマスク処理工程)を示す断面図である。以下、図22図28を参照してメサ-エッチング処理工程を説明する。
【0200】
図19で示す積層構造4を得た後、図22に示すように、スピンコート法を用いて酸化シリコン層6上にフォトレジスト9を塗布する。
【0201】
その後、図23に示すように、フォトレジスト9の上方から紫外線10を選択的に照射する。フォトレジスト9のうち紫外線10を受けた領域が紫外線照射領域となる。
【0202】
次に、図24に示すように、フォトレジスト9の上記紫外線照射領域を除去して、フォトレジスト9をパターニングする。
【0203】
その後、図25に示すように、パターニングされたフォトレジスト9をマスク(第1のマスク)として、酸化シリコン用エッチング剤F3を用いて、酸化シリコン層6をエッチングする第3のエッチング処理を実行する。
【0204】
この際、酸化シリコン層6の直下のアルミニウム混晶層2は酸化シリコン用エッチング剤F3に対するエッチングストッパーとして機能するため、第3のエッチング処理によって、酸化シリコン層6のみを選択的に除去することができる。その結果、パターニングされた酸化シリコン層6を得ることができる。
【0205】
その後、フォトレジスト9の全面にアセトン12を照射した後、図26に示すように、アセトン12が照射されたフォトレジスト9を全て除去する。
【0206】
次に、図27に示すように、パターニングされた酸化シリコン層6をマスクとして、Al用エッチング剤F2を用いて、アルミニウム混晶層2をエッチングする第2のエッチング処理を実行する。なお、第2のエッチング処理は135℃の温度環境下で実行される。
【0207】
この際、アルミニウム混晶層2の直下のクロム混晶層1はAl用エッチング剤F2に対するエッチングストッパーとして機能するため、第2のエッチング処理によって、アルミニウム混晶層2のみを選択的に除去することができる。
【0208】
その結果、第2のエッチング処理の実行後、パターニングされたアルミニウム混晶層2を得ることができる。第2のエッチング処理は、フォトレジストを形成することなく、簡素化して行うことができる。加えて、第2のエッチング処理によって、アルミニウム混晶層2上の酸化シリコン層6がエッチング除去されることもない。
【0209】
最後に、図28に示すように、パターニングされた酸化シリコン層6をマスクとして、Cr用エッチング剤F1を用いて、クロム混晶層1をエッチングする第1のエッチング処理を実行する。なお、第1のエッチング処理は135℃の温度環境下で実行される。また、第1のエッチング処理を65℃程度の温度環境下で実行しても良い。
【0210】
この際、クロム混晶層1の直下のサファイア基板8がCr用エッチング剤F1に対するエッチングストッパーとして機能するため、第1のエッチング処理によって、クロム混晶層1のみを選択的に除去することができる。また、クロム混晶層1上のアルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6もCr用エッチング剤F1によってエッチング除去されることもない。
【0211】
その結果、第1のエッチング処理の実行後、パターニングされたクロム混晶層1を得ることができる。第1のエッチング処理は、フォトレジストを形成することなく、簡素化して行うことができる。加えて、第1のエッチング処理によって、クロム混晶層1上のアルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6がエッチング除去されることもない。
【0212】
また、第1のエッチング処理の温度域は、65℃~135℃で実行できることが確認されており、50℃以上の温度域となるめ、エッチングの選択性を高めた状態で製造できる。
【0213】
このように、メサ-エッチング処理工程によって、積層構造4から精度良く中間パターニング構造34Aを得ることができる。中間パターニング構造34Aは、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6の積層構造を呈している。
【0214】
(第2のマスク工程)
図29図34は実施の形態3における第2のマスク処理工程を示す断面図である。以下、図29図34を参照して第2のマスク処理工程を説明する。
【0215】
まず、図29に示すように、図28で示す中間パターニング構造34Aを含むサファイア基板8上の全面にスピンコート法によってフォトレジスト15を覆うように塗布する。
【0216】
その後、図30に示すように、フォトレジスト15の上方から紫外線16を選択的に照射する。フォトレジスト15のうち紫外線16を受けた領域が紫外線照射領域となる。
【0217】
次に、図31に示すように、フォトレジスト15の上記紫外線照射領域を除去して、フォトレジスト15をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト15が第2のマスクとなる。
【0218】
その後、図31及び図32に示すように、パターニングされたフォトレジスト15をマスクとして、酸化シリコン用エッチング剤F3を用いて、酸化シリコン層6をエッチングする第3のエッチング処理を実行する。
【0219】
この際、酸化シリコン層6の直下のアルミニウム混晶層2は酸化シリコン用エッチング剤F3に対するエッチングストッパーとして機能するため、第3のエッチング処理によって、酸化シリコン層6のみを選択的に除去することができる。その結果、パターニングされた酸化シリコン層6を得ることができる。
【0220】
その後、フォトレジスト15の全面にアセトン12を照射した後、図33に示すように、アセトン12が照射されたフォトレジスト9を全て除去する。
【0221】
次に、図34に示すように、パターニングされた酸化シリコン層6をマスクとして、Al用エッチング剤F2を用いて、アルミニウム混晶層2をエッチングする第2のエッチング処理を実行する。
【0222】
この際、アルミニウム混晶層2の直下のクロム混晶層1はAl用エッチング剤F2に対するエッチングストッパーとして機能するため、第2のエッチング処理によって、アルミニウム混晶層2のみを選択的に除去することができる。その結果、パターニングされたアルミニウム混晶層2を得ることができる。
【0223】
このように、第2のマスク処理工程によって、中間パターニング構造34Aから精度良く中間パターニング構造34Bを得ることができる。中間パターニング構造34Bは、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6の積層構造を呈している。
【0224】
図35図39は実施の形態3における第3のマスク処理工程を示す断面図である。以下、図35図39を参照して第3のマスク処理工程を説明する。
【0225】
まず、図35に示すように、図34で示す中間パターニング構造34Bを含むサファイア基板8上の全面にスピンコート法によってフォトレジスト17を覆うように塗布する。
【0226】
その後、図36に示すように、フォトレジスト17の上方から紫外線18を選択的に照射する。フォトレジスト17のうち紫外線18を受けた領域が紫外線照射領域となる。
【0227】
次に、図37に示すように、フォトレジスト17の上記紫外線照射領域を除去して、フォトレジスト17をパターニングする。その結果、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6の側面に貫通孔57が形成される。パターニングされたフォトレジスト17が第3のマスクとなる。
【0228】
その後、図38に示すように、スパッター法を用いてTi金属層22を形成した後、Ti金属層22上にAu金属層23を熱蒸着で形成する。その結果、Ti金属層22及びAu金属層23の順で積層した金属積層構造31を得ることができる。金属積層構造31は貫通孔57内にも形成される。
【0229】
最後に、図39に示すように、リフト-オフ処理を行い、クロム混晶層1上においてアルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6に隣接した一対の金属積層構造31を残存させる。一対の金属積層構造31のうち一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0230】
このように、第3のマスク処理工程によって、中間パターニング構造34Bから精度良く中間パターニング構造34Cを得ることができる。中間パターニング構造34Bは、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6の積層構造と一対の金属積層構造31とを含んでいる。
【0231】
一対の金属積層構造31はクロム混晶層1の表面上に直接形成されている。この構造が実現できたのは、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2を含む積層構造のうち、アルミニウム混晶層2のみを選択的にエッチングできるAl用エッチング剤F2を見出したことに起因する。
【0232】
図40は中間パターニング構造34Bの平面構造の一例を示す平面図である。同図では、金属積層構造31の図示を省略している。同図に示すように、サファイア基板8の円状領域に選択的に分離形成される2つのクロム混晶層1上に図示しない一対の金属積層構造31が形成されることになる。なお、図39中の酸化シリコン層6の直下にアルミニウム混晶層2が形成されている。
【0233】
図41図46は実施の形態3におけるゲート形成工程を示す断面図である。以下、図41図46を参照してゲート形成工程を説明する。
【0234】
まず、図41に示すように、図39で示す中間パターニング構造34Cを含むサファイア基板8上の全面にスピンコート法によってフォトレジスト19を覆うように塗布する。
【0235】
その後、図42に示すように、フォトレジスト19の上方から紫外線20を選択的に照射する。フォトレジスト19のうち紫外線20を受けた領域が紫外線照射領域となる。
【0236】
次に、図43に示すように、フォトレジスト19の上記紫外線照射領域を除去して、フォトレジスト19をパターニングする。その結果、酸化シリコン層6の表面の一部が露出し、酸化シリコン層6上に貫通孔59が形成される。
【0237】
その後、図44に示すように、パターニングされたフォトレジスト19をマスクとして、酸化シリコン用エッチング剤F3を用いて、酸化シリコン層6をエッチングする第3のエッチング処理を実行する。
【0238】
この際、酸化シリコン層6の直下のアルミニウム混晶層2は酸化シリコン用エッチング剤F3に対するエッチングストッパーとして機能するため、第3のエッチング処理によって、酸化シリコン層6のみを選択的に除去することができる。その結果、貫通孔59から発展した貫通孔60を有するパターニングされた酸化シリコン層6を得ることができる。
【0239】
その後、図45に示すように、スパッター法を用いてTi電極層25を形成した後、Ti電極層25上にAu電極層26を熱蒸着で形成する。その結果、Ti電極層25及びAu電極層26の順で積層した金属積層構造32を得ることができる。金属積層構造32は貫通孔60内にも形成される。
【0240】
最後に、図46に示すように、リフト-オフ処理を行い、酸化シリコン層6上の金属積層構造32のみを残存させる。残存した金属積層構造32がゲート電極として機能する。
【0241】
このように、ゲート形成工程によって、中間パターニング構造34CからHEMT最終構造35を得ることができる。HEMT最終構造35は、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6の積層構造と一対の金属積層構造32と一つの金属積層構造32とを含んでいる。
【0242】
<具体的製造内容>
以下、実施の形態1~実施の形態3で示したクロム混晶層1、アルミニウム混晶層2、インジウム混晶層2X、鉄混晶層2Y及び酸化シリコン層6の製造方法の詳細を説明する。なお、以下の内容は一例にすぎず、この製法に限定されないことは勿論である。
【0243】
(クロム混晶層1)…膜厚500nm程度
「クロム系成膜材料」
原料溶液…アンモニウムジクロナイト((NH)Cr)溶液
溶媒…純水:塩酸(99.5:0.5)の混合溶媒
溶質濃度…0.040mol/L
【0244】
「ガリウム系成膜材料」
原料溶液…ガリウムアセチルアセトナート溶液
溶媒…純水:塩酸(99.5:0.5)の混合溶媒
溶質濃度…0.020mol/L
【0245】
(アルミニウム混晶層2)…膜厚300nm程度
「アルミニウム系成膜材料」
原料溶液:アルミニウムアセチルアセトナート溶液
溶媒…純水:塩酸(99.5:0.5)の混合溶媒
溶質濃度:0.040mol/L
【0246】
「ガリウム系成膜材料」
クロム混晶層と同じ
【0247】
(インジウム混晶層2X)
「インジウム系成膜材料」
原料溶液:In溶液
溶媒…純水
溶質濃度:0.050mol/L
【0248】
「ガリウム系成膜材料」
クロム混晶層と同じ
【0249】
(鉄混晶層2Y)
「鉄系成膜材料」
原料溶液:Fecl・6HO溶液
溶媒…純水
溶質濃度:0.1mol/L
【0250】
「ガリウム系成膜材料」
原料溶液…Gacl水溶液
溶媒…純水
溶質濃度…0.1mol/L
【0251】
「補助材料」
原料溶液:アンモニア水(NHaq)
溶媒…純水
【0252】
(共通項目)
「ガス種類」
搬送ガス…窒素ガス
希釈ガス…窒素ガス
【0253】
「サファイア基板8」
材質…C面サファイア基材
加熱温度:400℃
【0254】
「ミスト生成手段」
超音波振動子:2.4MHz、24V、0.625A、3個使用
【0255】
(酸化シリコン層6)
膜厚…300nm程度
【0256】
<その他>
実施の形態1~実施の形態3において、アルミニウム混晶層2に代えてインジウム混晶層2Xあるいは鉄混晶層2Yを用いても同様な効果を奏する。なぜなら、化学式(6)を満足する第2の混晶層として、アルミニウム混晶層2、インジウム混晶層2X及び鉄混晶層2Yは共通の第2のエッチング特性を有するからである。
【0257】
なお、インジウム混晶層2Xを形成する場合はバッファ層を形成した方が望ましい。図47及び図48はバッファ層を採用したインジウム混晶層2Xの形成方法を示す断面図である。
【0258】
図47に示すように、サファイア基板8等の基板40上にバッファ層41を形成する。その後、図48に示すように、バッファ層41上にインジウム混晶層2Xを形成する。
【0259】
また、鉄混晶層2Yを形成する場合は、上述したように、ガリウム系成膜材料及び鉄系成膜材料に加えて、補助材料としてアンモニア溶液をミスト化したNHミスト(アンモニアミスト)を用いることが望ましい。
【0260】
図49は鉄混晶層2Yの製造工程の概略を模式的に示す説明図である。図49では、サファイア基板8等の基板40上に鉄混晶層2Yの製造工程を示している。鉄混晶層2Yは以下のステップ(1)~(4)により製造される。
【0261】
(1) FeミストM1を得るステップ、
(2) GaミストM2を得るステップ、
(3) NHミストM3を得るステップ、
(4) ステップ(1)~(3)で得たFeミストM1、GaミストM2及びNHミストM3を基板40上に供給して、基板40上に鉄混晶層2Yを形成するステップ
【0262】
なお、ステップ(3)のNHミストM3は、上述した「補助材料」のアンモニア溶液をミスト化して得ることができる。
【0263】
このように、アンモニアミストを補助材料として用いて鉄混晶層2Yを形成することにより、所望の膜厚で精度良く鉄混晶層2Yを得ることができる。
【0264】
実施の形態1のエッチング方法は、クロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2の積層構造3(3B)をエッチング対象構造としていた。しかし、エッチング対象構造は積層構造3に限定されない。
【0265】
例えば、サファイア基板8上に互いに接触することなく独立して形成されたクロム混晶層1及びアルミニウム混晶層2を含む2層独立構造をエッチング対象構造することができる。すなわち、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理及びAl用エッチング剤F2を用いた第2のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を2層独立構造に対して行ってもよい。
【0266】
例えば、クロム混晶層1上にパターニングされたレジストをマスクとして、2層独立構造に対し、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理を行って、クロム混晶層1のみをパターニングすることができる。この際、アルミニウム混晶層2はCr用エッチング剤F1によってエッチングされないため、アルミニウム混晶層2上にレジストを形成する必要はない。
【0267】
また。実施の形態2及び実施の形態3で示したエッチング方法は、クロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6を含む積層構造4(4B)をエッチング対象構造としていた。しかし、エッチング対象構造は積層構造4に限定されない。
【0268】
例えば、サファイア基板8上に互いに接触することなく独立して形成されたクロム混晶層1、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6を含む3層独立構造をエッチング対象構造としても良い。すなわち、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理、Al用エッチング剤F2を用いた第2のエッチング処理、及び酸化シリコン用エッチング剤F3を用いた第3のエッチング処理のうち、少なくとも一つのエッチング処理を上記3層独立構造行ってもよい。
【0269】
例えば、クロム混晶層1上にパターニングされたレジストをマスクとして、3層独立構造に対し、Cr用エッチング剤F1を用いた第1のエッチング処理を行って、クロム混晶層1をパターニングすることができる。この際、アルミニウム混晶層2及び酸化シリコン層6はCr用エッチング剤F1によってエッチングされないため、アルミニウム混晶層2上及び酸化シリコン層6上にレジストを形成する必要はない。
【0270】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0271】
本開示に係るエッチング方法及び半導体装置であれば、酸化ガリウムを用いた半導体装置のエッチング技術と半導体装置の活性層を形成することができ、酸化ガリウム系半導体装置の基本的な技術を提供することができ、産業上、非常に有益である。
【符号の説明】
【0272】
1 クロム混晶層
2 アルミニウム混晶層
2X インジウム混晶層
2Y 鉄混晶層
3,3B,4,4B 積層構造
6 酸化シリコン層
13,13B,14,14B パターニング構造
31,32 金属積層構造
34A~34C 中間パターニング構造
35 HEMT最終構造
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