(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】電子源及びその製造方法、並びに電子源を備える装置
(51)【国際特許分類】
H01J 9/02 20060101AFI20241017BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20241017BHJP
H01J 9/04 20060101ALI20241017BHJP
H01J 1/148 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
H01J9/02 B
H01J37/06
H01J9/02 A
H01J9/04 A
H01J1/148
(21)【出願番号】P 2023539695
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025183
(87)【国際公開番号】W WO2023013282
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021129281
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和3年6月28日 ウェブサイト 34th International Vacuum Nanoelectronics Conferenceのウェブサイト(添付資料1-1) ウェブサイトの掲載日 令和3年7月7日 ウェブサイト 34th International Vacuum Nanoelectronics Conferenceのオンライン会議システム(添付資料2-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 洋光
(72)【発明者】
【氏名】石川 大介
(72)【発明者】
【氏名】唐 捷
(72)【発明者】
【氏名】大久保 忠勝
(72)【発明者】
【氏名】唐 帥
(72)【発明者】
【氏名】埋橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】宝野 和博
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-146705(JP,A)
【文献】特開2016-207319(JP,A)
【文献】国際公開第2021/079855(WO,A1)
【文献】Kleshch V.I. et al.,Field Emission from Diamond Needles Produced by CVD Growth,Technical Digest, 2015 28th International Vacuum Nanoelectronics Conference,米国,IEEE,2015年08月27日,pp. 172-173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/02
H01J 37/06
H01J 9/04
H01J 1/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)電子放出材料のブロックから前記電子放出材料のチップを切り出す工程と、
(B)支持ニードルの先端に対して前記チップの第一の端部を固定する工程と、
(C)前記先端に固定された前記チップの第二の端部を尖らせる工程と、
を含み、
(A)工程は、
(a1)前記ブロックの表面に対するイオンビームの照射によって前記チップの第一の面を構成する第一の溝を前記ブロックに形成すること、
(a2)前記ブロックの表面に対するイオンビームの照射によって前記チップの第二の面を構成する第二の溝を前記ブロックに形成すること、
を含み、前記チップの前記第一の端部は、なす角度が10~90°の前記第一の面と前記第二の面とを含み、
(B)工程は、前記支持ニードルの前記先端と前記チップの前記第一の端部の間に接合部を形成すること、
を含
み、
前記チップの前記第二の端部側から前記第一の端部の方向に向かうにしたがって前記第一の面と前記第二の面の間の距離が互いに近づくように前記第一の面及び前記第二の面が形成されている、電子源の製造方法。
【請求項2】
前記第一の面と前記第二の面のなす角度が45~85°である、請求項1に記載の電子源の製造方法。
【請求項3】
前記チップの前記第一の端部の形状が前記第一の面と前記第二の面によって構成されるくさび状である、請求項1又は2に記載の電子源の製造方法。
【請求項4】
前記チップの前記第一の端部が前記第一の面と、前記第二の面と、前記第一の面と前記第二の面とをつなぐ先端面とによって構成されている、請求項1又は2に記載の電子源の製造方法。
【請求項5】
先端を有する支持ニードルと、
第一及び第二の端部を有する電子放出材料のチップと、
前記支持ニードルの前記先端に対して前記チップの前記第一の端部を固定している接合部と、
を備え、
前記チップの前記第一の端部は、なす角度が10~90°の第一の面と第二の面とを含
み、
前記チップの前記第二の端部側から前記第一の端部の方向に向かうにしたがって前記第一の面と前記第二の面の間の距離が互いに近づくように前記第一の面及び前記第二の面が形成されている、電子源。
【請求項6】
前記第一の面と前記第二の面のなす角度が45~85°である、請求項5に記載の電子源。
【請求項7】
前記チップの前記第一の端部の形状が前記第一の面と前記第二の面によって構成されるくさび状である、請求項5に記載の電子源。
【請求項8】
前記チップの前記第一の端部が前記第一の面と、前記第二の面と、前記第一の面と前記第二の面とをつなぐ先端面とによって構成されている、請求項5に記載の電子源。
【請求項9】
前記支持ニードルの前記先端に前記チップの前記第一の端部が当接している、請求項
5に記載の電子源。
【請求項10】
前記支持ニードルの前記先端の幅Waと前記チップの前記第一の端部の幅Wbが以下の不等式で表される条件1及び条件2の一方を満たす、請求項
5に記載の電子源。
(条件1)1≦Wa/Wb≦10000
(条件2)1≦Wb/Wa≦10000
【請求項11】
前記支持ニードルの前記先端の幅が0.5~10μmであり、
前記チップの前記
先端面の幅が0.5μm以下である、請求項
8に記載の電子源。
【請求項12】
縦断面において、前記チップの第二の端部の角度が5~90°である、請求項
5に記載の電子源。
【請求項13】
請求項
5~
12のいずれか一項に記載の電子源を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子源及びその製造方法、並びに電子源を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子源は、例えば、電子顕微鏡及び半導体検査装置に使用されている。電子源は電子放出材料で構成されるチップを備える。例えば、熱電界放出型電子源のチップは、その先端を尖らせることで、電界集中効果によって、より多くの電子を放出することができる。特許文献1は、チップの先端を尖らせるためにイオンビームを使用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子源が備えるチップの更なる微細化が求められている。本開示は、微細な電子源を効率的に製造できる方法を提供する。また、本開示は、微細化の要求に対応し得る電子源及びこれを備える装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電子源の製造方法は以下の工程を含む。
(A)電子放出材料のブロックから電子放出材料のチップを切り出す工程。
(B)支持ニードルの先端に対してチップの第一の端部を固定する工程。
(C)支持ニードルの先端に固定されたチップの第二の端部を尖らせる工程。
上記(A)工程は以下のステップを含む。
(a1)ブロックの表面に対するイオンビームの照射によってチップの第一の面を構成する第一の溝をブロックに形成すること。
(a2)ブロックの表面に対するイオンビームの照射によってチップの第二の面を構成する第二の溝をブロックに形成すること。
チップの第一の端部は、なす角度が10~90°の第一の面と第二の面とを含む。
上記(B)工程は、支持ニードルの先端とチップの第一の端部の間に接合部を形成することを含む。
【0006】
上記製造方法によれば、(A)工程において、イオンビームを使用することで、ブロックから、所定の形状を有し且つ極めて微細なチップを効率的に切り出すことができる。また、(B)工程において、支持ニードルの先端に対してチップの第一の端部が接合され、この第一の端部が第一の面と第二の面とを含むため、接合部の面積を十分に確保することができる。これにより、支持ニードルからチップが離脱することを十分に抑制できる。
【0007】
本開示の一側面に係る電子源は、先端を有する支持ニードルと、第一及び第二の端部を有する電子放出材料のチップと、支持ニードルの先端に対してチップの第一の端部を固定している接合部とを備え、チップの第一の端部は、なす角度が10~90°の第一の面と第二の面とを含む。
【0008】
上記電子源によれば、支持ニードルの先端とチップの第一の端部が接合され、この第一の端部が第一の面と第二の面とを含む。このため、接合部の面積を十分に確保することができる。これにより、支持ニードルからのチップの離脱を十分に抑制できる。
【0009】
上記電子源において、支持ニードルの先端にチップの第一の端部が当接していてもよいし、支持ニードルの先端とチップの第一の端部が離間しており両者の間に接合部を構成する材料が介在していてもよい。支持ニードルの先端の幅Waとチップの第一の端部の幅Wbが以下の不等式で表される条件1及び条件2の一方を満たすことが好ましい。
(条件1)1≦Wa/Wb≦10000
(条件2)1≦Wb/Wa≦10000
【0010】
上記電子源は、極めて微細なものであってもよい。上記支持ニードルの先端の幅は、例えば、0.5~10μmである。チップの第一の端部の幅は、例えば、0.5μm以下である。長期にわたる安定的な電子の放出の観点から、縦断面において、電子放出材料のチップの第二の端部の角度は、例えば、5~90°である。
【0011】
本開示の一側面に係る装置は上記電子源を備える。電子源を備える装置として、例えば、電子顕微鏡及び半導体製造装置及び検査装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、微細な電子源を効率的に製造できる方法が提供される。また、本開示によれば、微細化の要求に対応し得る電子源及びこれを備える装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、本開示に係る電子源を備える電子銃の構成の一部を模式的に示す正面図であり、
図1(b)は電子源の先端部の拡大図である。
【
図2】
図2は
図1(b)に示す電子源の先端部の断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、電子放出材料のブロックにイオンビームによって溝を形成する様子を模式的に示す断面図であり、
図3(c)は四つの溝の形成によってブロックからチップが切り出された状態を模式的に示す上面図である。
【
図4】
図4(a)は切り出されたチップをプローブでピックアップした状態を模式的に示す斜視図であり、
図4(b)はチップの一部を支持ニードルの先端面に仮固定した後、チップを切断した状態を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、支持ニードルの先端面にチップの基端部を金属材料によって接合した状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、横断面の形状がドーナツ状のイオンビームによってチップの先端部を尖らせる加工を実施している様子を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(a)はチップ(加工後)の他の態様を模式的に示す側面図であり、
図7(b)は支持ニードルの先端を模式的に示す側面である。
【
図8】
図8は支持ニードルの先端とチップ(加工後)の基端部の間に、接合部を構成する材料が介在している態様を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、実施例に係る電子源を作製する過程を示すSEM写真である。
【
図10】は、
図9(b)における矢印の方向からチップを撮影したSEM写真である。
【
図11】
図11は、実施例に係る電子源の先端部を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<電子源>
図1(a)は本実施形態に係る電子源を備える電子銃の構成の一部を模式的に示す正面図であり、
図1(b)は電子源の先端部の拡大図である。
図1(a)に示す電子銃50は、熱電界放出型と称される。電子銃50は、電子源10と、フィラメント12a,12bと、電極15a,15bと、碍子18とを備える。フィラメント12a,12bへの通電によって電子源10が加熱されて電子源10の先端部から電子が放出される。電子源10を備える装置として、電子顕微鏡、半導体製造装置、検査装置及び加工装置が挙げられる。
【0016】
図1(b)に示されたように、電子源10は、電子放出材料のチップ1と、これを支持する支持ニードル3と、支持ニードル3の先端面3aにチップ1を固定している接合部5とによって構成されている。電子源10の先端部はチップ1の先端部1a(第二の端部)で構成されている。
【0017】
図2は電子源10の先端部を拡大して示す端面図である。チップ1は微細であり、長さ(
図2における長さL)は、例えば、2~3μmである。チップ1は電子放出材料からなる。電子放出材料は、加熱によって電子を放出する材料である。電子放出材料の例として、ホウ化ランタン(LaB
6)、ホウ化セリウム(CeB
6)などの希土類ホウ化物;タングステン、タンタル、ハフニウムなどの高融点金属ならびにその酸化物、炭化物及び窒化物が挙げられる。
【0018】
図2に示されたように、チップ1の基端部1b(第一の端部)は、第一の面F1と第二の面F2によって構成されている。基端部1bが先端面3aに対面している。本実施形態においては、基端部1bは先端面3aに当接している。第一の面F1と第二の面F2のなす角度(
図2における角度α)は、例えば、10~90°であり、先端面3aに対する基端部1bの強固な接合の観点から、45~85°であることが好ましい。長期にわたる安定的な電子の放出の観点から、縦断面において、チップ1の先端部の角度(
図2における角度β)は、例えば、好ましくは5~90°であり、より好ましくは10~30°である。
【0019】
支持ニードル3も微細であり、その先端面3aは、例えば、直径0.5~10μmの円形状である。なお、この直径は0.5~8μm又は0.6~2μmであってもよい。支持ニードル3は電導性を有するとともに、優れた耐熱性を有する材料からなる。支持ニードル3を構成する材料として、タングステン、タンタル、プラチナ、レニウム及びカーボンが挙げられる。なお、支持ニードル3の先端面3aは必ずしも円形状でなくてもよく、例えば、楕円形や四隅が丸みを帯びた四角形であってもよい。これらの形状の場合、先端面は、例えば、0.5~10μmの幅を有する。
【0020】
接合部5は、接合材料5a,5bで構成されており、支持ニードル3の先端面3aとチップ1の基端部1b側との間に形成されている。すなわち、第一の面F1と先端面3aとによって画成される領域に接合材料5aが充填され、第二の面F2と先端面3aとによって画成される領域に接合材料5bが充填されている。接合材料5a,5bは、例えば、蒸着又はスパッタリングによって上記領域にそれぞれ充填される。接合材料5a,5bの具体例として、白金、タングステン、カーボン及び金が挙げられる。
【0021】
<電子源の製造方法>
次に、電子源10の製造方法について説明する。電子源10の製造方法は以下の工程を含む。
(A)電子放出材料のブロックBから電子放出材料のチップCを切り出す工程(
図3(a)~
図3(c)参照)。
(B)支持ニードル3の先端面3aにチップCを固定する工程(
図4(a)、
図4(b)及び
図5参照)。
(C)支持ニードル3の先端面3a上において、チップCの先端部を尖らせる工程(
図6参照)。
【0022】
[(A)工程]
(A)工程は、以下のステップを含む。
(a1)ブロックBの表面Fbに対するイオンビームIBの照射によってチップCの第一の面F1を構成する第一の溝G1をブロックBに形成すること(
図3(a)参照)。
(a2)ブロックBの表面Fbに対するイオンビームIBの照射によってチップCの第二の面F2を構成する第二の溝G2をブロックBに形成すること(
図3(b)参照)。
第一の溝G1及び第二の溝G2は、例えば、FIB(focused ion beam)の照射によって形成することができる。第一の溝G1を形成した後、ブロックBの角度を変え、第二の溝G2を形成すればよい。チップCの側面を構成する溝G3及び溝G4をFIBの照射によって形成するステップを経てチップCがブロックBから切り出される。その後、チップCの一方の端部近傍にプローブPを接合する。この接合は、例えば、白金などの金属の蒸着によって実施できる。これにより、プローブPでチップCをピックアップすることが可能となる(
図3(c)及び
図4(a)参照)。
【0023】
[(B)工程]
図4(a)に示されるように、別途準備した支持ニードル3の先端面3aの上方にチップCを搬送する。先端面3aに対してチップCの第一の端部C1を仮固定する。本実施形態において第一の端部C1は、第一の面F1と第二の面F2とによって構成されている。チップCの仮固定は、例えば、白金などの金属の蒸着によって実施できる。その後、先端面3aのサイズに合わせてチップCを切断する(
図4(b)参照)。チップCの切断はFIBによって実施できる。その後、
図5に示されるように、先端面3aとチップCの第一の端部C1の界面を含む領域に接合部5を形成する。接合部5は、蒸着又はスパッタリングによって形成することができる。
【0024】
[(C)工程]
図6は、先端面3a上のチップCの第二の端部C2側を尖らせる加工を実施している様子を模式的に示す断面図である。この加工は、横断面の形状がドーナツ状のイオンビームIBによって実施することができる。イオンビームIBによる加工を経て、
図5に示されるチップCから、
図2に示されるチップ1が得られる。なお、接合部5の外面がチップ1の外面及び支持ニードル3の外面と連続的になるように、イオンビームIBによって接合部5を加工してもよい。
【0025】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、熱電界放出型の電子銃に適用される電子源について説明したが、電界放出型の電子銃に適用される電子源を上記実施形態の方法で製造してもよい。
【0026】
上記実施形態においては、チップ1の基端部1bが第一の面F1と第二の面F2とによって構成された形状(くさび状)である場合を例示したが、
図7(a)に示すように、チップ1の基端部1bは、先端面F3を更に備えたものであってもよい。この場合、チップの基端部の幅(
図7(a)における幅Wb)は、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.1~0.2μmである。また、上記実施形態においては、支持ニードル3が先端面3aを有する場合を例示したが、支持ニードル3の先端が尖っていてもよい。支持ニードル3の先端が尖っていても、例えば、蒸着によってチップCを固定することができる。支持ニードル3の先端の幅Wa(
図7(b)における幅Wa)とチップ1の基端部1bの幅Wbが以下の不等式で表される条件1及び条件2の一方を満たすことが好ましい。
(条件1)1≦Wa/Wb≦10000
(条件2)1≦Wb/Wa≦10000
なお、条件1に関し、Wa/Wbの値はより好ましくは1000~10000である。条件2に関し、Wb/Waの値はより好ましくは1000~10000である。
【0027】
上記実施形態においては、支持ニードル3の先端面3aに対してチップ1の基端部1bが当接している場合を例示したが、支持ニードル3の先端とチップ1の基端部1bが離間しており両者の間に接合部5を構成する材料が介在していてもよい(
図8参照)。
【0028】
本開示は以下の事項に関する。
[1](A)電子放出材料のブロックから前記電子放出材料のチップを切り出す工程と、
(B)支持ニードルの先端に対して前記チップの第一の端部を固定する工程と、
(C)前記先端に固定された前記チップの第二の端部を尖らせる工程と、
を含み、
(A)工程は、
(a1)前記ブロックの表面に対するイオンビームの照射によって前記チップの第一の面を構成する第一の溝を前記ブロックに形成すること、
(a2)前記ブロックの表面に対するイオンビームの照射によって前記チップの第二の面を構成する第二の溝を前記ブロックに形成すること、
を含み、前記チップの前記第一の端部は、なす角度が10~90°の前記第一の面と前記第二の面とを含み、
(B)工程は、前記支持ニードルの前記先端と前記チップの前記第一の端部の間に接合部を形成すること、
を含む、電子源の製造方法。
[2]先端を有する支持ニードルと、
第一及び第二の端部を有する電子放出材料のチップと、
前記支持ニードルの前記先端に対して前記チップの前記第一の端部を固定している接合部と、
を備え、
前記チップの前記第一の端部は、なす角度が10~90°の第一の面と第二の面とを含む、電子源。
[3]前記支持ニードルの前記先端に前記チップの前記第一の端部が当接している、[2]に記載の電子源。
[4]前記支持ニードルの前記先端の幅Waと前記チップの前記第一の端部の幅Wbが以下の不等式で表される条件1及び条件2の一方を満たす、[2]又は[3]に記載の電子源。
(条件1)1≦Wa/Wb≦10000
(条件2)1≦Wb/Wa≦10000
[5]前記支持ニードルの前記先端の幅が0.5~10μmであり、
前記チップの前記第一の端部の幅が0.5μm以下である、[2]~[4]のいずれか一つに記載の電子源。
[6]縦断面において、前記チップの第二の端部の角度が5~90°である、「2」~[5]のいずれか一つに記載の電子源。
[7][2]~[6]のいずれか一つに記載の電子源を備える装置。
【実施例】
【0029】
以下、本開示について実施例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例)
以下のサイズのLaB6(電子放出材料)のブロック及びタングステン製の支持ニードルを準備した。
<LaB6のブロック>
・直径:約6mm
・厚さ:約1mm
<支持ニードル>
・先端面の直径:約1μm
【0031】
FIB加工機を使用し、LaB
6のブロックからチップを切り出した(
図9(a)参照)。
・チップの幅:約15μm
・チップの高さ:約5μm
・第一の面と第二の面のなす角度:約60°
【0032】
タングステン製のプローブでチップを保持した状態で、支持ニードルの先端面に白金を介してチップを仮固定した。その後、FIBによってチップを支持ニードルの先端面のサイズに合わせて切断した(
図9(b)参照)。
図10は
図9(b)における矢印Aの方向からチップを撮影したSEM写真である。
【0033】
チップの基端部と、支持ニードルの先端面との界面を含む領域に白金を蒸着させることによって接合部を形成した。白金の蒸着はFIBを使用して実施した。その後、FIB加工機を使用し、チップの上方から横断面がドーナツ状のイオンビームを照射することによってチップの先端を尖らせた(
図6参照)。これらの工程を経て、
図11に示される先端部を有する電子源を作製した。この先端部の角度βは14.9°であった。
【符号の説明】
【0034】
1…チップ、1a…先端部(第二の端部)、1b…基端部(第一の端部)、3…支持ニードル、3a…先端面、5…接合部、5a,5b…接合材料、10…電子源、12a,12b…フィラメント、15a,15b…電極、18…碍子、50…電子銃、B…ブロック、C…チップ、C1…第一の端部、C2…第二の端部、F1…第一の面、F2…第二の面、F3…先端面、Fb…ブロックの表面、G1…第一の溝、G2…第二の溝、G3,G4…溝、IB…イオンビーム、P…プローブ。