(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】メンタルヘルスのセルフケアあるいは治療支援用プログラムおよびシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/70 20180101AFI20241017BHJP
【FI】
G16H20/70
(21)【出願番号】P 2024157124
(22)【出願日】2024-09-11
【審査請求日】2024-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2024062786
(32)【優先日】2024-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024139536
(32)【優先日】2024-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724002759
【氏名又は名称】キラル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特許第7344423(JP,B1)
【文献】特開2023-155465(JP,A)
【文献】特開2015-172942(JP,A)
【文献】特開2024-008784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンタルヘルスのセルフケア用のシステムであって、
前記システムに含まれる情報処理端末が、
前記システムに登録されたACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)のコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報
または機能に対応した画像を
、前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間
、ユーザに、前記情報処理端末の画面上で前記ユーザが選択可能に提供し、
さらに、新たに前記システムに登録されたACTのコアプロセスに基づく介入処理の情報
または機能に対応した画像を、前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間、前記ユーザに提供する、ことによってACTを習得させるシステム。
【請求項2】
特定の疾患の症状の改善のための介入処理の情報
または機能に対応した画像をさら
に前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間
、前記ユーザに提供する、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記
画像が前記情報処理端末の画面上に配置されたマトリックス状に
配置されている、請求項1または2のいずれかのシステム。
【請求項4】
前記
画像を
前記ユーザが選択すると、前記
画像に関連する第1の関連情報または機能が前記画面上に表示され、さらに前記第1の関連情報または機能を選択すると、前記第1の関連情報または機能に関連する第2の関連情報または機能が少なくとも前記画面上に表示される請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
メンタルヘルスのセルフケア用のシステム
を用いたACTを習得させるヘルスケア情報の提供方法であって、
前記提供方法が、
前記システムに含まれる情報処理端末
に、前記システムに登録されたACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)のコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報
または機能に対応した画像を
、前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間
、ユーザに、前記情報処理端末の画面上で前記ユーザに選択可能に提供
させる第1の提供工程と、
さらに、
前記システムに含まれる情報処理端末に、新たに前記システムに登録されたACTのコアプロセスに基づく介入処理の情報
または機能に対応した画像を
、前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間
、前記ユーザに提供
させる第2の提供工程と、
からなる、ACT
を習得させるヘルスケア情報の提供方法。
【請求項6】
メンタルヘルスのセルフケア用のソフトウェアプログラムであって、
前記ソフトウェアプログラムが、
メンタルヘルスのセルフケアシステムに
含まれる情報処理端末に、前記システムに登録されたACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)のコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報
または機能に対応した画像を、前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間、ユーザに、情報処理端末の画面上で前記ユーザが選択可能に提供
させる第1の機能と、
前記情報処理端末に、新たに前記システムに登録されたACTのコアプロセスに基づく介入処理の情報
または機能に対応した画像を、前記複数の介入処理の情報または機能のそれぞれにあらかじめ定められた期間、前記ユーザに提供
させる第2の機能と、を前記セルフケアシステム上で実行してACTを習得させるソフトウェアプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアあるいは治療支援用プログラムおよびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
心理的・社会的ストレスから生じる病気や、ストレスによって経過が悪くなると考えられる病気をストレス関連疾患と呼ぶ。ストレス関連疾患は心身症とも呼ばれ、 ストレス反応が改善されずに慢性化していくと、メンタルヘルス面での疾患だけでなく、身体面での疾患に至ることがある。ストレス関連疾患のメンタルヘルス面での疾患は、自律神経失調症、うつ病、不安障害、パニック障害、適応障害、アルコール依存症、薬物依存症、摂食障害、過敏性腸症候群、突発性難聴、神経症、片頭痛、不眠症、緊張性頭痛、ストレス関連身体疾患(心身症)としては胃・十二指腸潰瘍、本態性高血圧症、心臓神経症、気管支喘息,過喚起症候群、本態性高血圧症,冠動脈疾患(狭心症,心筋梗塞)、胃・十二指腸潰瘍,潰瘍性大腸炎,心因性嘔吐、単純性肥満症,糖尿病、筋収縮性頭痛,痙性斜頚,書痙、慢性蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,円形脱毛症、慢性関節リウマチ,腰痛症、夜尿症,心因性インポテンス、眼精疲労,本態性眼瞼痙攣、メニエール病、顎関節症、PMS/PMDDなどが挙げられる。そして、これらのメンタルヘルス面に起因する疾患については心理療法に基づくカウンセリングが行われている。
【0003】
認知行動療法を用いた診療支援システムとして、次に述べる技術が知られている。特許文献1には、慢性疼痛を治療するための、複数の取り組み内容からなるシナリオが開示されており、この取り組み内容は患者を最終的な改善に導くための段階的な治療を行うもので、前後の段階と深く関連し、順番に実施されることが求められるものである。また、特許文献1ではACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)の利用を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、所定の手続きに従ってシナリオに基づいた取り組み内容の介入処理を順次進めていくもので、患者とシナリオ(取り組み内容に対応した介入処理)の相性が悪い場合は、患者が継続を断念してしまうことがあった。また、患者がシナリオを実行し、シナリオが終了するとその治療効果に関わらず治療が終了されてしまうものであり、また、そのシナリオはACTを用いたものであっても、提供の仕方は治療ガイドラインのような書物と同様なものでACTの特徴を生かしたものではなかった。
【0006】
本発明の一つの課題は、ユーザが興味を持ってシステムから提供される介入処理を継続的に利用し続けるようにすること、本発明の二つ目の課題は、ユーザが継続的にセルフケアを継続できる環境を提供すること、本発明の三つ目の課題は、情報処理端末の特徴を利用して心理療法(特にACT)の特徴を生かしたセルフケアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明0)
メンタルヘルスのセルフケア用のシステムにおいて、
前記システムが、データベースと、
ユーザの情報処理端末を含み、
前記データベースには心理療法に基づく複数の介入処理の情報(前記システムの外部から取得される介入処理の所在のアドレス情報とを含む)が登録されて含まれ、
前記情報処理端末が前記システムに登録された心理療法に基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに、情報処理端末の画面上で選択可能に提供し、
さらに、新たに前記システムに登録された心理療法に基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的に前記ユーザに提供する、ACTを習得させるシステム。
心理療法に基づく介入情報および/または心理療法に基づく介入情報の所在のアドレス情報がシステムに含まれるデータベースに登録されて記憶され(登録や記憶はシステムを統括するサーバの制御部が行う)、その介入処理の情報および/またはそのアドレス情報から引用されて取得される介入処理の情報が、繰り返し、心理療法に基づく介入処理の情報(教育、介入処理、メタファー、エクササイズ、ワークなど)をその心理療法のステップを万遍なく提供して特定の心理療法を習得させることができる。情報の登録はシステムの管理者、情報のコンテンツプロバイダ―などがサーバを介して行うことができるので自由度も高い。
(発明1)
メンタルヘルスのセルフケア用のシステムにおいて、
前記システムが、データベースと、
ユーザの情報処理端末を含み、
前記データベースにはACTに基づく複数の介入処理の情報(前記システムの外部から取得される介入処理の所在のアドレス情報とを含む)が登録されて含まれ、
前記システムに含まれる情報処理端末が前記システムに登録されたACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)のコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに、情報処理端末の画面上で選択可能に提供し、
さらに、新たに前記システムに登録されたACTのコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的に前記ユーザに提供する、システム。
ACTに基づく介入情報および/または心理療法に基づく介入情報の所在のアドレス情報がシステムに含まれるデータベースに登録されて記憶され(登録や記憶はシステムを統括するサーバの制御部が行う)、その介入処理の情報および/またはそのアドレス情報から引用されて取得される介入処理の情報が、繰り返し、複数のACTのコアプロセスに基づく介入処理の情報を万遍なく提供し、ACTを体系的に習得することができる。情報の登録はシステムの管理者、情報のコンテンツプロバイダ―などがサーバを介して行うことができるので自由度も高い。
(発明2)
メンタルヘルスのセルフケア用のシステムにおいて、
前記システムに含まれる情報処理端末が、
前記システムに登録されたACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)のコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに、前記情報処理端末の画面上で選択可能に提供する第1の提供工程と、
さらに、新たに前記システムに登録されたACTのコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的に前記ユーザに提供する第2の提供工程と、
からなるACTを習得させるヘルスケア情報の提供方法。
(発明3)
メンタルヘルスのセルフケア用のソフトウェアプログラムであって、
前記ソフトウェアプログラムが、メンタルヘルスのセルフケアシステムにおいて、
前記システムに登録されたACT(アクセプタンスアンドコミットメントセラピー)のコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに、情報処理端末の画面上で選択可能に提供する第1の機能と、
新たに前記システムに登録されたACTのコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに提供する第2の機能と、を
前記セルフケアシステム上で実行するACTを習得させるソフトウェアプログラム。
発明0-3によれば、複数の心理療法に基づく期間限定の情報が提供され、ユーザが自分の好みに合わせて情報を取得することができる。これによってユーザは自分の押し付けられた間隔を味わうことなく、自分が選択したものとして取り組むので参加意欲が向上され、継続率が向上する。特に、発明1-3によれば、ACTのコアプロセスが互いに比較的独立しており、順番に関係なく提供することができるので、ユーザの興味を持つ情報を情報端末から引き出して始めることができ効率がよい。
(発明4)
前記情報をユーザが選択すると、前記情報に関連する第1の関連情報が前記画面上に表示され、さらに前記第1の関連情報を選択すると、前記第1の関連情報に関連する第2の関連情報が少なくとも前記画面上に表示される発明1ないし発明3のいずれかに記載のシステム。
(発明5)
特定の疾患の症状の改善のための介入処理の情報をさらに次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに提供する、発明0―3のいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
ACTにしたがう心理的柔軟性を向上させることを目的とした情報ではなく、ACTのコアプロセスを用いた疾患の症状を改善させる介入処理、あるいはその他の心理療法に基づく疾患の症状を改善させる介入処理を提供することで、たとえば、本システムを実施するユーザ層に典型的なストレス関連疾患などの予防、改善を図ることができる。
(発明6)
前記介入処理が情報処理端末の画面上に配置されたマトリックス状のボタンに関連付けられている、発明0―4のいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
ユーザによってよく知られたSNS等でよく用いられるUIを用いることでユーザの操作における障害を低減して継続率を向上することができる。
(発明7)
前記システムに登録された情報が個人または特定のグループによって共有される、発明0―4のいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
グループごとに共通で提供すべき情報が提供されるので心理療法以外の情報媒体としての効果が得られる。また、グループ内ではやっている感染症などの情報の展開や、グループ内でのメンタルのセルフケアの習熟度を向上させ、グループの目的を向上することができる。
(発明8)
前記システムに登録された情報の前記ユーザへの提供の可否が、前記ユーザのレベルによって決定される、発明0―4のいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
グループ内での識別、ユーザの課金レベルや心理療法の習熟度のレベルによって提供される情報を制限することによって、グループ内での効率的な個人管理、運営者の収益の改善、ユーザの体系的な心理療法の習得などの効果が得られる。
(発明8)
一般的な心理療法(スキーマ療法、認知行動療法、マインドフルネスなど)において、発明0-7の(ただし、ACTに限られず、一般的な心理療法)において、ACTのコアプロセスに基づく複数の介入処理の情報に代えて、一般的な心理療法の体系的な流れのステップごとに分かれたもの(たとえば、特定の治療用シナリオ(文献1)の取り組み内容、心理療法の章立ての一つのもの)を所定の順序で提供するいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
(発明9)
発明0-8において、前記情報が、ノベルゲームなどのゲーミフィケーションを用いたものであるいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
ノベルゲームは、ユーザのペースででき、ユーザの選択があるので没入感がある(動画などは単に流れているだけでユーザの参加がない)。
(発明10)
発明0-8において、前記情報が、事前に作成したシナリオに沿ってツリー構造に質問を絞っていく方法(=シナリオ型)、ユーザーから送信された文章に反応して回答を出す方法(=AI搭載型)
を用いたものであるいずれかのシステム、方法、ソフトウェアプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザは自分の興味を持った介入処理に接することでその介入処理から興味を持ち、継続的にシステムを利用する動機づけとすることができる。また、継続的に利用することでメンタルヘルスのセルフケアを継続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明のシステムの(a)制御プログラムの機能ブロック、(b)制御のフローを示す図である。
【
図3】本発明の実施例のシステムのユーザ画面の一例を示す図である。
【
図4】本発明のユーザ画面に表示されるタイルに関連付けられるデータ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来の心理療法に基づくカウンセリングで一般的であった、順序に従ってステップバイステップにカウンセリングを進める治療方法ではなく、ACTの特徴である、6つのコアプロセスが比較的独立性があり、それぞれのコアプロセスを個別に習得することによって心理的柔軟性が改善され、ストレス対処能力が身につき、ストレス関連疾患の症状やストレスに基づくメンタル不調が改善されるという知見に基づく。
(セルフケアアプリを含むシステムの構成)
本発明の一実施形態として、インターネット上に設置されたネットワークシステムにインストールされたプログラムを挙げる。ネットワークシステムは、サーバやクラウド上の大容量の記憶装置を備え、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどのユーザ端末がインターネットを介して接続されたサーバであり、このサーバ装置は、本実施形態に係るプログラムを実行することで、ユーザ端末とのデータ通信を通じて、ユーザ端末から入力された情報や、サーバの記憶装置に格納されている情報を用いてユーザ端末を介してユーザにストレス関連疾患の治療や緩和、セルフケアを可能とする治療用アプリ、セルフメンタルヘルスケアアプリやストレス関連疾患に関わる疾患教育等の各種情報を提供するものである。また、本システムはサーバとユーザ端末が協同して利用者、患者の症状を改善する例として示したが、すべての要素をサーバ側だけに保持し、ユーザ端末は情報入出力と情報表示のためだけに用いるシステム、あるいは、必要なデータやプログラムをユーザ端末にダウンロードして、すべての処理をユーザ端末で実行できるシステムや、ユーザがアクセスできるウェブページでの提供も本発明の範囲に含まれる。
図1にユーザ端末110とサーバ106を含むネットワークシステム100の構成の概略を示した。ユーザ端末110は、インターネット120を介してサーバ130と通信するための通信装置105、個人情報や、データ、プログラムを記録するための記憶装置102、表示装置103、ユーザからの入力を受け付ける入力装置104、これらの制御を行う制御装置101などを含む。サーバ130には、インターネット120を介してユーザ端末110と通信するための通信装置131、大容量の記憶装置133、および制御装置132などが含まれる。制御装置132には、通信装置131を介してユーザ端末110と通信するための通信制御プログラムが実装されているとともに、記憶装置133に構築されたデータベースを管理するプログラムと、ユーザの現在または過去の症状・状態を記録した症状の記録(日誌)を管理する専用のプログラム(以下、症状日誌プログラムとも言う)や、セルフケアアプリや治療用アプリのサーバ側プログラム、セルフケアアプリや治療用アプリの治療用のモジュールであるワークや疾患教育の動画などのデータが格納されている。そして、サーバ側の制御プログラムは、ユーザ側のセルフケアアプリ・治療用アプリと連携して診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアを実行し、制御装置132がセルフケア、治療に必要な情報を通信制御プログラムやデータベース管理プログラムと連携させながらユーザ端末に提供する。それによってサーバ130による診断・治療・緩和・改善・維持あるいはセルフケアがユーザに提供される。この例ではセルフケア・治療用アプリはサーバ側部分とユーザ端末側部分に分けられ、診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアが実行される例を示すが、必要なプログラム・データ等をすべてユーザ端末110にダウンロードし、ユーザ端末110で独立して実行できる構成としてもよい(この場合、ユーザの情報処理端末110の制御部がプログラムの各機能ブロックの機能を制御し、実行し、情報処理端末110の記憶装置に複数のワークセット、テーマ評価尺度や疾患評価尺度が記憶される)。または、ユーザ端末110は入力手段および表示手段としてのみ機能し、サーバ130はユーザ端末110からの入力、例えば専用のウェブページを介した、に基づいてプログラムを実行するように構成してもよい。
【0011】
(アクセプタンスアンドコミットメントセラピーの技法)
近年、第3世代の認知行動療法として、アクセプタンスアンドコミットメントセラピー(ACT)が開発されてきた。ACTでは、(1)アクセプタンス(Acceptance),(2)脱フュージョン(Defusion),(3)今この瞬間への気づき(Present Moment Awareness),(4)文脈としての自己(Self as Context),(5)価値Contact with Values,(6)コミットされた行為(Committed Action),の六つのコアプロセスがあり、アクセプタンスまたはマインドフルネス過程と同時にコミットメントと行動変容過程を適用した、関係フレーム理論を含む現代の行動心理学を基礎とする心理療法である((1)-(4)がマインドフルネスと関連する。そこで、本明細書ではマインドフルネスの要素もACTの4つのコアプロセスに相当するものなのでその一つとする)。そして、そのそれぞれに対応したスキルを身につけることで、心理的柔軟性を養い、ストレスへの対処能力を身につけるものである。本願発明者らはACTのこういったプロセスが分離され、それぞれのプロセスの訓練方法が確立しているために、情報処理端末での利用に適していると考え、ACTでの手法を提案する。なお、厳密に上記の分類をする必要もなく、それぞれの目的を達成できるのであれば異なる分類でもよく、また、すべてを実行する必要がないこともいうまでもない。
【0012】
(実施例)
本実施例ではストレス対処の基本となる心理的柔軟性を改善するACTを用いたメンタルヘルスケアのセルフケアアプリ(ソフトウェアプログラムによるシステム)を例示する。本アプリの制御はサーバ130またはユーザの情報処理端末110のいずれか、あるいは両者に記憶されたソフトウェアプログラムで実現される。本プログラムは
図2(a)の機能ブロックからなり、
図1の各機能を有する装置を制御してソフトウェアプログラムの機能をユーザに提供する。また、ソフトウェアプログラムは典型的には、
図2(b)のフローで動作する。入出力ブロック201は表示装置103および入力装置104を制御し、ユーザへの情報(ワーク等も含む)を提示したり、ユーザ入力を受け付けるブロックである。評価ブロック202は各ブロックから入力された情報から所定の評価を行うブロックである。スケジュール管理ブロック203はカレンダー機能を有し、日付情報と各種情報を関連付けて、記憶管理ブロック605と連携しながら処理を行うブロックである。ワーク提供ブロック204はプログラムの流れに沿って、制御ブロック206からワークの提供のリクエストを受けると、記憶管理ブロック205と連携しながらワークを入出力ブロック201に送信するブロックである。記憶管理ブロック205はシステムの記憶装置102,133を制御するブロックで、制御ブロック206やその他ブロックからのリクエストに応じて、リクエストされたワークやデータなどの情報を返すブロックである。制御ブロック206は本プログラムの実行を制御するブロックである。
図3に本プログラムに従う画面の例を示した。
図3には、ユーザのスマートフォンである情報処理端末110、アプリの機能に関する情報、ユーザのパーソナルデータ、ユーザのバイタルデータ、天気や気圧およびそれらの予報などの各種情報が表示されるメインウインドウ301、タッチパネル上のタイル(アイコン、ボタン)306をタッチすることで所定の機能を起動するための機能ウィンドウ302(横スクロールで隠れたタイルを閲覧でき、これらの機能ボタンは機能の登録、削除、入れ替えがない限り、スクロールによって推移する位置が固定されたものである)、検索窓303、タッチパネル上のタイル(アイコン、ボタン)305をタッチすることで所定の情報の閲覧や機能の起動するための情報ウィンドウ304(縦スクロールで隠れたタイルを閲覧でき、新しい情報や機能に対応したアイコンが画面上の情報ウィンドウの情報のタイルに追加され、古い情報は情報ウィンドウの下方に遷移し、所定量のタイルが閲覧可能である(本実施例では表示設定されたタイルが閲覧可能で、設定された表示期間が終了したら情報ウィンドウのタイルから削除されるように制御される。なお、本実施例では古くなった情報は機能ウィンドウのアーカイブ機能を起動すると開かれるアーカイブフォルダでカテゴリごと、日付順に整理されて閲覧可能に設定されている)。本実施例では表示される情報は記憶装置133に記憶されたデータベース(情報DB)で管理されており(
図4参照)、データベースには情報の新しい物から1-の順番がつけられ(図では9までが図示されている)、それぞれの情報がタイルに対応付けられ、それぞれの情報ウィンドウのタイルの最上部の左から1-3が、2段目に4-6が表示されるというように制御され(
図5(a)に情報ウィンドウ304を示した)、新しい情報が登録されると、1に新しい情報が記憶され、元の1番の情報は2番のメモリに、元の2番の情報は3番のメモリに、というようにセットで書き換えられる。また、一例として、
図4では、メモリの番号、表示されている場合は、タイル番号、表示される情報の内容、表示の開始日時、表示の終了日時、情報に関連付けられるタグ、表示される情報または起動される機能の情報の収容場所(情報が収容される場所はシステムに含まれる記憶装置102,記憶装置133に記憶されるだけでなく、システムのデータベース用のサーバ(図示しない)や、本システムの外部のサーバや情報処理端末などでもよく、その記憶場所、読み出し手段が記憶される)がセットとして記録される。また、図示されない情報、例えば、閲覧レベル(ユーザのレベル:無料ユーザ、有料ユーザ、プレミアムユーザ、コンテンツ購入者)、情報の登録日など追加しても良い。情報ウィンドウ304のタイルはUIの使いやすさ、慣れ(SNSで一般に使われる操作性)を考慮してマトリックス状、格子状に配置されている。
【0013】
図4において、たとえば、本日が5月20日の場合、番号3の情報は、タイル2に、情報3を表示しており、表示期間は7月2日までで、タグ情報としては、アクセプタンス(#ACC)のエクササイズ(#EX)を示している。また、番号8の情報は、7のタイルがスワイプされた際に表示される2番目の情報(I_7_2)で、価値(#CON)、エクササイズ(#EX)を示している。(#ACCはアクセプタンス(ACCEPTANCE)、#DEFは脱フュージョン(DEFUSION)など各コアプロセスの頭文字3文字で示してあり、2番目のタグは#MEはメタファー、#EXはエクササイズ、#WOはワーク、#EDは教育のコンテンツを示している。また、(I_7_2)は最初の記号のIは情報にリンクされたものであることを示しており、2番目の数字の7は7番の情報にリンクされたものであることを示し、最後の数字の2は7番目の情報をスワイプした際に2番目に出てくる情報、さらにスワイプした際には3番目に出てくる情報として例えば(I_7_3)で指定される。2番目以降の情報については画面上でトップ画面に遷移するボタンを設けておくと操作性が向上して都合がよい。また、ユーザの課金状態については例示として、無料ユーザ、有料ユーザ、プレミアムユーザが設定されている場合、有料ユーザがアクセスすると、無料ユーザ及び有料ユーザ向けコンテンツ、情報のみが表示される、プレミアムユーザの場合はすべての情報が表示されるように制御ブロックによって制御される。
例示した本情報データベースではすべての情報を同一のレベルで管理する例を示したが(情報ウィンドウに表示する情報も、タッチした後の情報も、同じレベルで管理している)、情報ウィンドウの情報と、その情報に紐づけられる情報というまとめた情報として管理するデータベースとしても良い。
【0014】
次に、ソフトウェアプログラムは制御ブロック206が制御装置101または制御装置132を介して各ブロックとそのブロックによって制御される各装置を制御して実行される。このフローを
図2(b)を用いて説明する。
(250)ユーザが入出力制御ブロック201によって制御される情報処理端末110の表示装置103のタッチパネル上の本プログラムを示すアイコンをタッチすることによってソフトウェアプログラムを起動し、所定のログイン画面(図示しない)からログイン動作を行う。ログインはログイン画面からユーザがIDやパスワードを入力し、制御ブロック206が記憶管理ブロック205を介して、記憶装置に記憶されたユーザ情報データベースを読み出し、このユーザ情報データベースのID、パスワードと照合することにより、ユーザであることが確認された場合にログインできる。このユーザ情報データベースにはユーザが初回の登録時に設定するもので、そのほかにユーザ情報と紐づけて課金状態やユーザのレベル、アクセス履歴、ユーザの行った本プログラムのコンテンツや介入処理などの実施状況、ユーザのパーソナルデータなどを同時にユーザに紐づけて記憶している。これによって
図3のホーム画面が表示される。(251)制御ブロック206は、記憶管理ブロック205から前述のデータベースを読み出すとともに、そこに記憶された情報の表示期間の開始日と終了日を読み出すとともに、スケジュール管理機能ブロック603が当日の情報ウィンドウに表示すべき情報を判断し、
図4の情報データベースを更新する。また、別途、機能のタイル306と関連付けられた起動される機能の関連を示した機能データベースを読み出し、機能ウィンドウ302のタイル(ボタン)の表示を行う。ここで、機能ボタン306がタッチされると関連付けられた機能が起動される。
【0015】
(252)次に、制御ブロック206は制御を遷移し、フロー251での情報データベース(情報DB)の情報を記憶管理ブロック205を介して記憶装置102または記憶装置133から読み出す。つぎに、読み出した情報DBのデータから画面に表示する情報をタイル情報から判断し、情報ウィンドウ304のタイル305に情報内容を表示する。まず、タイル1に表示する情報としてタイル欄の1を抽出し、対応する情報内容として「情報2」または情報アドレスに収容された情報を表示、あるいは、リンクされた情報やコンテンツを表示、あるいは、機能を起動する。この手続きを表示するタイルが存在する数だけ繰り返す。この処理によって、情報ウィンドウ304のタイルへの情報の表示を実行する。この情報ウィンドウ304で表示された情報のタイルは所定位の数がウィンドウ内で認識可能に表示され(
図3では9個)、タイルを上下方向にスクロールすることによって、隠れたタイルも表示することができる。
【0016】
図5(a)に情報ウィンドウ304の表示例と、一つのタイルをタッチして、情報の選択を行って現れる最初の情報画面(
図5(b))と、2番目以降の情報画面(
図5(c))の例を示した。情報の例としては、たとえば、情報ウィンドウのタイルに表示された、イラストやキーワードだけの情報、それらをタッチすることによって現れる
図5(b)、
図5(c)のような情報画面となる。また、
図5(b)の情報画面には情報1が表示されるとともに、右上には次の情報の有無を示す情報(NEXTの周りが実践の場合は「有」、破線の場合は「無」)、下部には情報やコンテンツのカテゴリ(分類)分けするためのタグ情報が関連付けられている。また、
図5(c)には、情報2とともに、左上には前の情報の有無を示す情報(Beforeの周りが実践の場合は「有」、破線の場合は「無」などで見分けられる)、右下には、情報ウィンドウ304に直接遷移させるための「戻る」ボタン、右情報には情報として何ページ目かを示すページ番号が表示されている。これらのページは
図5(a)のタイルのタッチで、
図5(b)に遷移、右にスワイプで
図5(c)に遷移(左にスワイプした場合は情報ウィンドウに戻る)、
図5(c)でさらに次のページがあれば右にスワイプで次のページ、左にスワイプしたら
図5(b)に遷移、「戻る」ボタンのタッチで情報ウィンドウ304に遷移という動作がなされる。このように現在よく知られたSNSで用いられるUIに近い操作方法を採用することによってユーザの利用の障害を少なくすることができる。情報ウィンドウの表示と1番目の表示は同じもの(拡大したもの)でも、異なるものでもよく、また、順次表示される情報画面は
図5(b)、
図5(c)の2枚に限られず、さらにユーザが順次閲覧できるように複数の情報画面を含んでもよいことはいうまでもない。
【0017】
システムに登録される情報について次に述べる。登録する情報は、主に、心理療法に基づく情報である。特に、心理療法に基づく情報として、ACTのコアプロセスに対応した介入の効果を少なくとももたらすものである、キーメッセージ(イラスト、フレーズやイラストとフレーズの組み合わせなどが可能で、フレーズとしては絵として認識可能な短いものが好ましい)、心理教育、コアプロセスの習熟度の指標による評価手段、メタファー、関連した事例を用いたケーススタディー、エクササイズ、ワーク、それぞれと心理作用等の解説の少なくともいずれかを含む情報(機能や処理も含む)であると好ましい(本発明ではすべてを含めてエクササイズと呼ぶ)。また、これらの情報は体系的にACTのコアプロセスを習得できるように、万遍なくコアプロセスに基づく情報を情報画面で提供する、複数の種類のコアプロセスの情報を情報画面(典型的にはマトリックス状の)上で提供する、情報間に関連した情報でリンクボタンなどで関連付ける、などにより構成すると都合がよい。情報の形式としては、テキスト、音声、動画、チャットボットなどが可能である。さらに、ノベルゲームなどのゲーミフィケーションを用いた表示方式を用いるとユーザの参加意識が高まり好ましい。また、チャットボットについてはシナリオ型、機械学習型(AI型)のいずれでもよいが、機械学習型のほうが自然でユーザの没入感を高めることができる。それらの登録される情報については、
図4に記載されているように、それぞれの情報がACTのどのコアプロセスに対応しているのか(単純に一対一対応させても、複数のコアプロセスを対応付けて複数のコアプロセスのタグをつけても良い)、どの種類の情報であるのかがタグで分類されている(他のタグに入れ替えたり追加したりすることもできる)。ACTは比較的独立して習得することができる6つのコアプロセスからなり、そのほかの心理療法に基づくカウンセリングのように複数の取り組み内容からなり、それぞれの取り組み内容のテーマが順に習得するように構成され、最終的に目的を達成するように構成されたものと異なる。その結果として、ACTによって心理的柔軟性を向上させるためには、コアプロセスを習得する順序が限られないため、提供しているコアプロセスのいずれからユーザが初めても効果が得られるので本実施例のシステムに特に最適である(ただし、それらを本発明から排除するものではなく、従来の心理療法の段階的な学習方法、あるいは治療用アプリの特定の疾患等の複数の取り組み内容からなるシナリオのようなものをその段階、あるいは、取り組み内容ごとといった単位で提供することにも適している)。また、ユーザとしては6つのコアプロセスのいずれかで興味を引く情報があればそこから興味を持ってアプリに取り組むことになるので、従来のアプリのように最初のステップで興味が持てずに脱落してしまうというリスクを低減することができる。情報として提供される情報や機能はキーメッセージを除き、文章による読み物形式、チャットボット形式、音声形式、動画形式、ゲーム形式だけでなく、そのほか周知の形式を用いてもよい。
【0018】
(253)制御ブロック206は入出力ブロック201を介して入力装置104としてのタッチパネルへのユーザのボタンタッチを監視する。つまり、所定期間内にユーザが機能ウィンドウ302または情報ウィンドウ304のタイルへのタッチを監視する。そして、機能ウィンドウ302へのタッチがあったことを入出力ブロック201が検出し、タッチされたタイルに関する情報を受信した場合はタッチされたタイル306に関連付けられた機能を起動し、その機能が終了またはウィンドウを切り替えた場合、
図3に図示されたトップ画面に画面遷移する。つぎに、情報ウィンドウ304のタイルがタッチされ、そのタイルに関する情報を受診した場合は、タッチされたタイルに関連付けられた情報を、記憶管理ブロック205に記憶装置から情報DBをリクエストし、読み出された情報DBのタッチされたタイル番号と対比し、そのタイルとセットになった関連データを読み出す。そして、前述の手順で、ACTのコアプロセスに関連する情報をユーザに提供する。そして、情報の提供が終了した場合、ウィンドウが切り替えられた場合、次のフローに遷移する。
【0019】
(254)本システムの管理者または管理者に準ずるものは図示しない管理画面を用いて情報DBに新たな情報を登録することができる。本フローでは所定の期間内、管理者からのリクエストを監視し、リクエストがあった場合は以下の処理に移行し、リクエストがなかった場合は、(251)のフローへ移行する。管理者は本システムに接続された情報処理端末から、管理者用のセキュリティレベルの高いログイン手続きを経てシステムにログインし、情報入力用の管理画面から、情報DBに入力するために必要な情報、情報の内容、表示の開始日時、終了日時、タグ情報、情報の記憶領域、閲覧レベルなどシステムで必要とされる情報を入力する。
【0020】
本発明にACTを適用した例と従来のカウンセリングを比較すると、従来のカウンセリングは映画のようなもので最初から最後まで通して鑑賞することで最終的に全容を把握するものであるのに対して、本願の場合は、同時に複数のショート動画を自分のペースで鑑賞して、最終的な効果を得るようなものである。また、従来のカウンセリングは一本見終わったらそこで終了となるが、本願の場合は、継続的にコンテンツを提供し続けることができるので、サブスクリプションのような課金にも適しており、商業的にも好ましい。
【0021】
(変形例1)
ACTのコアプロセスは比較的独立して習得できるので、特定のコアプロセスのエクササイズの実施(タイルのタッチから起動される情報提供からエクササイズの提供まで本発明で意図される一連の処理)の前後でそのコアプロセスに対応した評価尺度(例えば、MPFI、CompACT、FFMQなどACTの評価尺度として周知のものが用いることができる)で評価し、エクササイズの実施後に、所定の基準点を満たしていなかった場合は再度情報として同じコアプロセスの別の情報を提供するようにしても良い。この場合、同じ情報を再度提供すると、エクササイズの適性が問題で習熟できなかった場合があるので少なくとも一部が異なるエクササイズを提供するのが都合がよい。
【0022】
(変形例2)
上記実施例では一つの情報DBを用いてアクセスするユーザに対して同一の情報を提供することにしていたが、情報DBをユーザ毎に設定し、提供する情報をユーザ毎にカスタマイズすることもできる。たとえば、上記実施例では心理的柔軟性を向上させるための情報を提供することを説明してきたが、たとえば、ユーザに対する評価尺度の評価を登録時に行い、ユーザデータとして、(登録時にPMS/PMDDの尺度や痛み尺度による評価を行って問題があると評価されていた場合、)PMSや生理時に腰痛が強いユーザに対しては、ユーザの予測生理開始日の10日前(個人に合わせてPMS症状が出ることが想定される日時でもよい)からイライラを解消するための心理的介入の情報を提供する、あるいは、生理日から腰痛体操の行い方の動画コンテンツを提供する、(登録時に疼痛生活障害評価尺度の評価尺度による評価を行って問題があると評価されていた場合、)スケジュール機能で外出の予定が入っている日の事前に脱フュージョンのエクササイズの情報を提供して、外出を楽しめるようにする、など、疾患に特異的な介入を行う情報を提供するようにしても良い(疾患に特異的な情報だけでなく、予めユーザの嗜好の情報を取得し、ユーザの趣味などの嗜好に合わせた情報など他の情報を提供することも可能である)。さらに、情報DBをグループ単位でアクセスできるようにしてもよい。グループとしては企業単位、部署単位、サークル、家族・親戚、チーム、組合、なんらかの集団などが設定できる。グループとして、アクセスできるようにすることでグループとして共有すべき情報、会社の場合は、企業活動の情報や福利厚生の情報などが設定でき好ましい。これらの方法は一つのDBの情報のセットごとに閲覧できるユーザの識別情報を付加し、ユーザがアクセスした際にその情報によってそのセットの情報の提供の可否をシステムが判断する、DBをアクセス可能なユーザが限定された記憶領域に保存して特定の個人だけ、許可されたグループのメンバーだけがアクセスできるようにするなど、周知の方法が利用可能である。介入処理の情報はACTによるもの、一般的な心理療法によるもの、その他の物理的な療法によるものなど疾患の症状を改善させる周知の介入処理が適用可能である。
【0023】
ユーザが検索でハッシュタグで検索し、たとえば、アクセプタンスに興味を持ったユーザはフロー253のタイミングで検索ウィンドウ303にタッチパネル(入力装置104)を介して、#ACCと入力することによって検索を行うことができる。このタグの入力を検出する入出力ブロック201は入力された情報を制御ブロック206に送信し、制御ブロック206は記憶管理ブロック205を介して記憶装置133の情報DBに登録された情報を読み出し、タグ情報が一致する情報を読み出し、入出力ブロック201を介して、出力装置103の液晶表示部に表示を行う。また、ユーザの閲覧レベルに応じてではあるが、ユーザが見たい情報が検索して呼び出せるので、ユーザの興味に応じた情報のコンテンツを取得でき学習効率が向上する。また、メインのマトリックス状の画面から選択されたタイルをタッチし、表示される画面に追加の説明、典型的には表示させる状況とリンク付けて表示されるテキスト(システムの記憶装置にリンク付けされた情報とともに保存されると好ましい)、を同時に表示し、また、これらのテキストの情報のワードを検索して、元のタイルを抽出されるように構成しても良い。
【0024】
上述の実施例では、ACTのコアプロセスに基づく介入処理の情報を提供する例を示したが、他の心理療法(スキーマ療法、認知行動療法、マインドフルネスなど周知の心理療法)に基づくカウンセリングを利用することもできる。その場合、カウンセリングのシナリオを構成する複数の取り組み内容を情報ウィンドウに表示されるタイルの一つ一つに対応付けることで実現できる。この場合、それぞれの取り組み内容を他の取り組み内容と内容的に関連性が低いものとなるように設計すると順番に関する依存性が低下し好ましい。
【0025】
提供する情報としては、上記実施例のように心理療法に基づく介入処理の情報に加えて、美容やダイエットなどユーザが興味を持つ情報を追加して提供しても良い。この場合、ユーザがその情報を目当てに継続的に本システムを利用することが想定でき好ましい。
【0026】
上述の実施例では情報の関連付け(たとえば、一つの情報からスワイプして呼び出される情報など)についての例を示したが、情報と情報に他の関連付けを行ってもよい。たとえば、情報間に優先順位があることを示す識別子を設け、優先順位が高い情報については番号の小さいタイルに表示する(つまり、情報ウィンドウの上方に表示されることになる)、情報にユーザの閲覧の有無を示す識別子をつけて、閲覧されていない情報を番号の小さいタイルに表示したり、閲覧したものの表示を行わないようにする、あるいは、特定の情報を閲覧した場合のみに表示されるようにする、表示順を決定するような識別子を追加するなどである。
【0027】
さらに、システムに登録された情報のユーザへの提供の可否を、ユーザのレベルによって決定することができる。ユーザのレベルとは、ユーザの課金状態(例えば、無料で利用しているユーザには無料のタグのついている情報だけが提供される)、ユーザのグループ内での地位(例えば、管理職以上に提供される情報)、ユーザの利用状況や習熟度(ユーザが一度閲覧した情報を記憶しておき、その情報は再度提供しない、情報に難易度のレベルをつけておき、ユーザの習熟度(尺度で評価など)に応じて、自分のレベル以下の情報、またはレベル以上の情報しか表示しないなど)、グループ内での識別、ユーザの課金レベルや心理療法の習熟度のレベルによって提供される情報を制限することによって、グループ内での効率的な個人管理、運営者の収益の改善、ユーザの体系的な心理療法の習得などの効果が得られる。また、一度タッチされて表示した情報はマトリックス状のメイン画面には再度表示しない、あるいは、情報について特定のユーザによって一度タッチされたか、タッチされたことがないかの情報を表示DBまたはユーザのパーソナルデータに保持し、メイン画面にはタッチされたことがない情報が上方に、一度タッチされたことがある情報はその下方に表示される、あるいは、情報をランダムに表示するといった修正も可能である。
【0028】
上述の実施例では表示される情報は新たに登録されるにつれて増えていく例として示したが、表示する情報量が増えるとシステムの動作が遅延する恐れがある。そこで、表示される情報の数に上限を設定する、特定の期間より古い情報は表示しないなどの設定も可能である。また、表示されなくなった情報については情報やリンクアドレスを保存したままにしておき、タグのタッチ、ハッシュタグの検索によって、あるいはアーカイブファイルとしておき内容を読み出せるようにするなどの付加機能を付け加えることもできる。表示も情報DBに表示するタイル情報を加えるだけでなく、制御ブロックがシステムの例えば情報処理端末のVRAMを制御装置を介して制御し、適宜VRAM上のタイルと情報の対応関係を書き換えながらその情報によって表示するなど周知の他の方法が利用できる。
【0029】
(変形例3)
図6に本発明をコミュニティ向けにカスタマイズした例を示した。
図6ではコミュニティの例として家庭用消費財のメーカーの顧客向けにカスタマイズした例を示した。本例ではコミュニティーの情報を管理するデータベースが別途用意されると都合がよい(情報DBにこの情報を記録させてもよい)。データベースには、消費財メーカーが登録する商品の広告情報や、ユーザが購入した商品の購入日や典型的に利用期間やユーザの消費予定などで消費財が欠乏する日時の予想日(ユーザが入力するものでも良い)が記憶される。また商品情報にはメーカーが提供する関連商品の情報などがリンクされてもよい。本例では情報として、ボタン305には消費財メーカの商品の広告などの情報を提供することができる(
図6(a))。また、機能ボタン306(たとえば、破線で示したボタン)をタッチすると、
図6(b)で示した前記データベースとリンクした機能としての購買管理画面が表示される。ここでは、ユーザによって登録された商品と購入日、ユーザの消費行動から推定された、商品を使い切る予想日が表示されている。また、アラート設定を設定できる。ここでは14日前に設定されているので、予想日の14日前に情報処理端末110の出力装置を介してユーザが認識可能に、制御ブロック206、入出力ブロック201、およびスケジュール管理ブロック203が連携して、ユーザの購入を促すアラートを発する。本変形例では消費財メーカーとその顧客を例に出したが、例えば、企業と従業員として、情報としては、企業の諸情報を提供する、機能としては従業員の勤怠管理、学習状況の管理、その他の機能を持たせる、クラブ活動としては、情報としては、試合の情報、合宿などの情報、機能としてはユーザのトレーニング記録、監督との1:1でのチャットボットのやり取り、その他の機能などが想定可能である。さらに特定のトピックについて共通点を持つユーザ同志を匿名性を持たせてマッチングし接続する機能を追加しても良い。ここでトピックがメンタル関連のものであると、匿名性を持たせたことで心を開いてコミュニケーションできるので好ましい。
【0030】
本明細書ではシステムとしては情報処理端末とサーバからなるシステムを例として説明したがこれに限られず、情報処理端末にすべての情報を記憶させて実施することもできる。また、情報処理端末の、または情報処理端末とサーバを含むシステムの各装置はそれぞれが連携するようにソフトウェアプログラムの各機能ブロックによって制御されて各機能が実現される。いくつかの実施例に基づいて本発明を説明してきたがそれぞれの実施例に用いられた要素を他の実施例の構成に追加して用いることが可能なことは言うまでもない。また本発明では尺度として、エビデンスのある尺度の量論的な評価によって評価を進める例を示したが、これに限られず、提供方法を、音声、動画、ゲーム形式に替える、または、テキストとその読み上げ音声などの組み合わせなど、いくつかの提供方法の組み合わせ、あるいは質問項目の質問を短縮、あるいは独自の質問項目を使うなどの変更が可能なことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
100 本発明のシステム
101 制御装置
102 記憶装置
103 表示装置
104 入力装置
105 通信装置
106 監視装置
110 ユーザの情報処理端末
120 インターネット
130 サーバ
131 通信装置
132 制御装置
133 記憶装置
【要約】
【課題】ストレス関連疾患またはストレスに起因するメンタル不調のセルフケアシステムを提供する。
【解決手段】
メンタルヘルスのセルフケア用のシステムにおいて、前記システムに含まれる情報処理端末が前記システムに登録された心理療法に基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的にユーザに、情報処理端末の画面上で選択可能に提供し、
さらに、新たに前記システムに登録された心理療法に基づく複数の介入処理の情報を、順次または随時 、一定の期間、継続的に前記ユーザに提供する、システム。
【選択図】
図1