(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】剥離容易性壁紙並びにその剥離方法および貼付方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/07 20060101AFI20241017BHJP
D04H 1/26 20120101ALI20241017BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20241017BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20241017BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20241017BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20241017BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
E04F13/07 B
E04F13/07 E
E04F13/07 F
D04H1/26
D04H1/435
D04H1/4382
B32B7/02
B32B5/02 A
D06N7/00
(21)【出願番号】P 2024514945
(86)(22)【出願日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2023014411
(87)【国際公開番号】W WO2023199867
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2022067101
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500203592
【氏名又は名称】株式会社ナガイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003650
【氏名又は名称】弁理士法人ブランシェ国際知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】松島 慎吾
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-292907(JP,A)
【文献】特開2003-176611(JP,A)
【文献】特開平05-044322(JP,A)
【文献】特開2011-074693(JP,A)
【文献】特開2006-020047(JP,A)
【文献】特開2004-143546(JP,A)
【文献】特開昭52-090127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/07
D06N 7/00
D04H 1/26
D04H 1/435
D04H 1/4382
B32B 7/02
B32B 5/02
D21H 11/00
D21H 13/24
D21H 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他方面側で壁面に貼付された状態で、一方面側の表面から液体を浸透させることによって、前記壁面から容易に剥離させることができる剥離容易性壁紙であって、
前記一方面側の表面から前記他方面側の表面に前記液体を浸透させることができる壁紙本体と、
前記壁紙本体の前記他方面側の表面に、前記液体を吸収することで、前記壁面との接着力が低下する再湿性層が設けられて
おり、
前記壁紙本体は、前記一方面から前記他方面に貫通する孔が複数形成されている、
ことを特徴とする剥離容易性壁紙。
【請求項2】
他方面側で壁面に貼付された状態で、一方面側の表面から液体を浸透させることによって、前記壁面から容易に剥離させることができる剥離容易性壁紙であって、
前記一方面側の表面から前記他方面側の表面に前記液体を浸透させることができる壁紙本体と、
前記壁紙本体の前記他方面側の表面に、前記液体を吸収することで、前記壁面との接着力が低下する再湿性層が設けられており、
前記壁紙本体は、5~40重量%のポリエステル繊維と、60~95重量%のパルプとを含む不織布であり、
前記壁紙本体の前記一方面または前記他方面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、前記壁紙本体の内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低い
、
ことを特徴とする剥離容易性壁紙。
【請求項3】
前記壁紙本体は、前記液体の透湿度が600g/m
2・24h以上であることを特徴とする請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙。
【請求項4】
前記壁紙本体は、珪藻土、漆喰および多孔質材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙。
【請求項5】
前記壁紙本体の水中伸度が、0.5%以下であることを特徴とする請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙。
【請求項6】
前記壁紙本体の一方面側表面に、表面層が設けられていることを特徴とする請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙。
【請求項7】
前記液体が、水であることを特徴とする請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙。
【請求項8】
請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙を前記壁面から剥離する剥離容易性壁紙の剥離方法であって、
前記剥離容易性壁紙に、前記液体を浸透させる浸透工程と、
前記剥離容易性壁紙を、前記壁面から剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の剥離方法。
【請求項9】
前記液体に、界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項
8に記載の剥離容易性壁紙の剥離方法。
【請求項10】
請求項
6に記載の剥離容易性壁紙を前記壁面から剥離する剥離容易性壁紙の剥離方法であって、
前記表面層を、前記壁紙本体から剥離する表面層剥離工程と、
前記剥離容易性壁紙に、前記液体を浸透させる浸透工程と、
前記剥離容易性壁紙を、前記壁面から剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の剥離方法。
【請求項11】
請求項1
または2に記載の剥離容易性壁紙を前記壁面に貼付する剥離容易性壁紙の貼付方法であって、
前記壁面に、前記再湿性層を形成する再湿性層形成工程と、
前記再湿性層に、前記壁紙本体を接着させる接着工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の貼付方法。
【請求項12】
請求項
6に記載の剥離容易性壁紙を前記壁面に貼付する剥離容易性壁紙の貼付方法であって、
前記壁面に、前記再湿性層を形成する再湿性層形成工程と、
前記再湿性層に、前記表面層が設けられた前記壁紙本体を接着させる接着工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に貼付された状態で、表面(一方面)から液体を浸透させることによって、壁面に容易に貼付することができると共に壁面から容易に剥離させることができる剥離容易性壁紙に関し、特に表面に水等の液体を吹き付けることによって、壁面に容易に貼り付けることができると共に壁面から容易に剥離させることができる剥離容易性壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
日本における壁装の仕上げにおいて、塩化ビニルを用いた壁紙(塩化ビニル壁紙)がその80%以上の割合を占めている。塩化ビニル壁紙は、安価で、表面からの耐水性および防汚性を有し、壁装の仕上げの工期も短くなるので、高度経済成長期の住宅需要を満たすためには最適なものであった。しかしながら、日本のように高温多湿の環境下では、塩化ビニル壁紙の裏面にカビが発生し易いという問題点があった。
【0003】
また、塩化ビニル壁紙に用いられる塩化ビニルは、本来固い素材なので、可塑剤などを添加して、柔軟性をもたせて使用されている。しかしながら、5~15年程度、直射日光等が当たると、塩化ビニルが硬化し始める。その結果、壁面との間に空間ができ、壁紙の意匠性が低下するという問題点があった。なお、このような理由から、現在の日本では、一般的に10~15年程度経過すると、塩化ビニル壁紙の張り替えが行われている。
【0004】
そして、張り替えの際に、壁面から塩化ビニル壁紙を剥がすと、裏打ち紙が石膏ボード側(壁面側)に残ることが多いという問題点や、壁面との接触不良の裏打ち紙が多いことから、塩化ビニル壁紙を壁面から綺麗に剥すことができないという問題点があった。その結果、裏打ち紙の残滓等によって壁面の表面に凹凸(下地の悪さ)が生じ、2回目、3回目と、壁紙を張り替える際には、厚手の塩化ビニルを発泡させたリフォーム用の壁紙しか用いることができないという問題点があった。また、裏打ち紙が壁面に残ると燃焼した際の熱量も高くなるので、壁紙の不燃認定の規定から外れてしまう可能性があるという問題点もあった。
【0005】
一方、昨今の環境意識の向上、地球温暖化対策やSDGs等の観点から、長期間使用することができる壁紙や、リフォーム時に躯体を痛めることなく剥離することができる壁紙が求められている。
【0006】
このような状況において、適用可能な壁紙が提案されている。例えば、特許文献1には、化粧層及びその裏面側に設けられた裏打ち紙層からなる壁紙本体と、前記壁紙本体の裏面側に設けられた粘着層(再湿糊)とを備えてなる粘着壁紙であって、絶対湿度が1.9g/m3~27.3g/m3のとき前記裏打ち紙層の含水率が、0.1重量%~2.5重量%で、前記裏打ち紙層を構成する裏打ち紙の密度が0.1g/cm3~0.8g/cm3であって、既に貼られている壁紙の上に重ねて貼着しても環境変化の影響を受けず美しい状態を保つことができ、さらに貼着位置の微調整が可能で、突きつけ貼りによる継ぎ目を美しい状態で保つことができ、天井面への貼着作業も楽に行える粘着壁紙が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された粘着性壁紙は、そもそも既に貼られている壁紙の上に重ねて貼着することを目的とする壁紙であり、剥離性を向上させるという壁紙ではない。また、裏打ち紙層の含水率が、0.1重量%~2.5重量%と記載されているように、特許文献1に記載された粘着性壁紙には、積極的に水分を与えて、壁面等から剥離させようとする発想もない。さらには、化粧層の表面に表面フィルムを積層しても良いと記載されていることから明らかなように、特許文献1には、壁面に貼付された状態で、表面から水分を与えて、裏面の再湿糊に積極的に水分を供給するという発想もない。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み、壁面に貼付された状態で、表面から液体を浸透させることによって、壁面に容易に貼付することができると共に壁面から容易に剥離させることができる剥離容易性壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究・開発を続けた結果、以下のような画期的な剥離容易性壁紙を見出した。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、他方面側で壁面に貼付された状態で、一方面側から液体を浸透させることによって、壁面から容易に剥離させることができる剥離容易性壁紙であって、一方面から他方面に液体を浸透させることができる壁紙本体と、壁紙本体の他方面に、液体を吸収することで、壁面との接着力が低下する再湿性層が設けられていることを特徴とする剥離容易性壁紙にある。
【0012】
かかる第1の態様によれば、壁面に貼付された状態で、一方面側の表面から液体を浸透させることができるので、剥離容易性壁紙を壁面から容易に剥離させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、壁紙本体は、液体の透湿度が600g/m2・24h以上であることを特徴とする第1の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0014】
ここで、「液体の透湿度」とは、生地1m2あたり、24時間で何gの液体が透過したかを示す数値をいう。なお、透湿度は、例えばJIS L 1099:2012(塩化カルシウム法)等によって測定することができる。
【0015】
かかる第2の態様によれば、壁面に貼付された状態で、表面から液体をより浸透させることができるので、剥離容易性壁紙を壁面から容易に剥離させることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、壁紙本体は、一方面から他方面に貫通する孔が複数形成されていることを特徴とする第1または第2の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0017】
かかる第3の態様によれば、壁面に貼付された状態で、表面から液体を、より浸透させることができるので、剥離容易性壁紙を壁面から、より容易に剥離させることができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、壁紙本体は、5~40重量%のポリエステル繊維と、60~95重量%のパルプとを含む不織布であることを特徴とする第1または第2の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0019】
かかる第4の態様によれば、このような構成の不織布は水中伸度(浸水伸度)が低いので、水分(湿気)を吸収しても膨張し難い。その結果、剥離容易性壁紙を壁面から、より容易に剥離させることができる。また、かかる第4の態様によれば、剥離容易性壁紙の強度が高まるので、壁紙が劣化し難く、剥離容易性壁紙の美観をより長く保つことができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、壁紙本体の一方面または他方面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、壁紙本体の内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低いことを特徴とする第4の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0021】
かかる第5の態様によれば、このような構成の不織布は、引張強度や水中伸度を変えることなく、壁紙本体の柔軟性を向上させることができる。その結果、後述するエンボスを容易に形成することができる。また、ポリエステル繊維の製造に純度の高い(結晶化度の低い)材料を用いる必要がなく、例えばリサイクル樹脂を用いたポリエステル繊維を利用することができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、壁紙本体は、珪藻土、漆喰および多孔質材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする第1の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0023】
ここで、「漆喰」とは、水酸化カルシウムを主原料とした建築材料をいう。
【0024】
かかる第6の態様によれば、壁面に貼付された状態で、表面から液体を、より浸透させることができるので、剥離容易性壁紙を壁面から、より容易に剥離させることができる。
【0025】
本発明の第7の態様は、壁紙本体の水中伸度が0.5%以下であることを特徴とする第1の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0026】
かかる第7の態様によれば、表面に液体を供給しても、壁紙本体が破れる可能性が低く、剥離容易性壁紙を壁面から容易に剥離させることができる。また、かかる第7の態様によれば、剥離容易性壁紙の寸法安定性が高くなるので、壁紙としての耐久性が向上する。
【0027】
本発明の第8の態様は、壁紙本体の一方面側表面に、表面層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0028】
かかる第8の態様によれば、剥離容易性壁紙の装飾性を向上させることができる。
【0029】
本発明の第9の態様は、液体が、水であることを特徴とする第1の態様に記載の剥離容易性壁紙にある。
【0030】
かかる第9の態様によれば、環境に負荷を与えることなく、剥離容易性壁紙を壁面から容易に剥離させることができる。また、壁面に貼付する際に、糊等を使用する必要がなく、壁紙の貼付にかかる施工時間を短縮させたり、その施工費用を削減させることができると共に、壁面からの剥離の際にも壁紙の剥離にかかる施工時間を短縮させたり、その施工費用を削減させることができる。
【0031】
本発明の第10の態様は、第1の態様に記載の剥離容易性壁紙を壁面から剥離する剥離容易性壁紙の剥離方法であって、剥離容易性壁紙に、液体を浸透させる浸透工程と、剥離容易性壁紙を、壁面から剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の剥離方法にある。
【0032】
かかる第10の態様によれば、剥離容易性壁紙を壁面から容易に剥離させることができる。
【0033】
本発明の第11の態様は、液体に、界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項9に記載の剥離容易性壁紙の剥離方法にある。
【0034】
かかる第11の態様によれば、所定の液体を壁紙本体に容易に浸透させることができる。
【0035】
本発明の第12の態様は、第8の態様に記載の剥離容易性壁紙を壁面から剥離する剥離容易性壁紙の剥離方法であって、表面層を、壁紙本体から剥離する表面層剥離工程と、剥離容易性壁紙に、液体を浸透させる浸透工程と、剥離容易性壁紙を、壁面から剥離する剥離工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の剥離方法にある。
【0036】
かかる第12の態様によれば、表面層を有する剥離容易性壁紙を壁面から容易に剥離することができる。
【0037】
本発明の第13の態様は、第1の態様に記載の剥離容易性壁紙を壁面に貼付する剥離容易性壁紙の貼付方法であって、壁面に、再湿性層を形成する再湿性層形成工程と、再湿性層に、壁紙本体を接着させる接着工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の貼付方法にある。
【0038】
かかる第13の態様によれば、剥離容易性壁紙を壁面に、容易に貼付することができる。
【0039】
本発明の第14の態様は、第8の態様に記載の剥離容易性壁紙を壁面に貼付する剥離容易性壁紙の貼付方法であって、壁面に、再湿性層を形成する再湿性層形成工程と、再湿性層に、表面層が設けられた壁紙本体を接着させる接着工程と、を有することを特徴とする剥離容易性壁紙の貼付方法にある。
【0040】
かかる第14の態様によれば、表面層が設けられた剥離容易性壁紙を壁面に、容易に貼付することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は壁面に貼付された状態の実施形態1に係る剥離容易性壁紙の概略断面図である。
【
図2】
図2は実施形態1に係る剥離容易性壁紙の剥離方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図1は壁面に貼付された状態の実施形態2に係る剥離容易性壁紙の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る剥離容易性壁紙の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0043】
(実施形態1)
図1は、壁面に貼付された状態の実施形態1に係る剥離容易性壁紙の概略断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る剥離容易性壁紙1は、壁面100に貼付される壁紙であり、壁紙本体10と、壁紙本体10の壁面側の裏面(他方面)に設けられ、壁面100と接着した再湿性層20とで構成されている。ここで、壁面100は、建物の内部の壁面であれば、材質、形状等は特に限定されない。以下、壁紙本体10の壁面側表面を裏面(他方面)10b、その反対側表面を表面(一方面)10aと定義する。
【0044】
まず、壁紙本体10について説明する。壁紙本体10は、表面10aに供給された液体を、表面10aから裏面10bに浸透させることができるものや、液体が染み込む孔を有するものであれば特に限定されない。壁紙本体10を構成する材料としては、例えば、液体に対する透湿度が600g/m2・24h以上であるもの(紙(多孔質紙を含む)、珪藻土やガラス繊維等の無機物質を主成分としてシート状に固めた無機質紙、レーヨン・アクリル・ポリエステル等の繊維で織った布状物、デニム生地等の織物、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)を含む多孔質シート、表面10aから裏面10bに貫通する孔が複数形成されているもの、または珪藻土、漆喰および多孔質材料の少なくとも1つを含むもの)が挙げられ、透湿度が700g/m2・24h以上のものが、より好ましい。壁紙本体10の透湿度の上限は特に限定されないが、透湿度の上限としては、例えば1000g/m2・24hや1400g/m2・24h等が挙げられる。なお、孔は、表面10aから裏面10bに最終的に貫通しているものであれば特に限定されず、屈曲していたり、捩じれていてもよい。また、孔の径や形状は特に限定されない。
【0045】
また、壁紙本体10は、縦方向(壁紙のロールの進行方向)の湿潤時の引張強度が、1.5~3kN/mの範囲にあることが望ましく、1.9~2.5kN/mの範囲にあることがより望ましい。なお、湿潤時の引張強度は、JIS P8135:1998等により測定することができる。
【0046】
表面10aから裏面10bに貫通する孔が複数形成されている壁紙本体10としては、例えば、紙(普通紙、難燃紙、紙布等)を主素材とする紙系壁紙、天然素材(綿・麻)や木から生まれたレーヨン素材を主素材とする織物壁紙、複数の孔が設けられた塩化ビニル等の合成樹脂で構成された壁紙、ポリエチレンやポリプロピレンを主成分とした壁紙(オレフィン壁紙)、絹等の繊維が含まれている襖紙、卵の殻を吹き付けた壁紙(エッグウォール(登録商標))、不織布、デニム生地や多孔質シート等が挙げられる。
【0047】
なお、本実施形態では、壁紙本体10は単層の材料で構成されているが、表面10aに供給された液体を、表面10aから裏面10bに浸透させることができるものや、液体が染み込む孔を有するものであれば2層以上の多層構造のものであってもよい。
【0048】
ここで、壁紙本体10としては、不織布が好適である。不織布は特に限定されないが、5~40重量%のポリエステル繊維と、60~95重量%のパルプを含むものが好ましい。パルプとしては、針葉樹さらし化学パルプ(NBCP)、広葉樹さらし化学パルプ(LBCP)やこれらの混合物を用いることができる。そして、パルプの断面形状は、特に限定されないが、円形状や楕円形状のもの(異形断面のものを含まない)が、パルプ同士が適度に絡み合うことで引張強度が向上するので好ましい。また、パルプおよびポリエステル繊維の径としては、5μm~20μmのものが好ましく、10μm~15μmのものがより好ましい。
【0049】
ポリエステル繊維としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の繊維が好ましい。
【0050】
このような構成の不織布は、引張強度が高い(例えば100N/15mm以上)ので、構造物の乾燥や地殻の揺れ等による躯体の移動に伴う剥離容易性壁紙1の割れや破れを防ぐことができる。引張強度が100N/15mmより小さいと、躯体の移動に伴って剥離容易性壁紙の割れや破れが発生する可能性がある。
【0051】
また、このような構成の不織布は水中伸度(浸水伸度)が低い(例えば0.5%以下、好ましくは0.3%以下)ので、水分(湿気)を吸収しても膨張し難い。その結果、水分の吸収による剥離容易性壁紙1の破れを防ぐことができる。水中伸度が1%より大きいと、水分の吸収による剥離容易性壁紙の破れが発生する可能性がある。
【0052】
なお、ポリエステル繊維およびパルプの重量比率は、20~35重量%および65~80重量%が好ましい。このような構成の不織布は、高い引張強度と低い水中伸度とを兼ね備えており、躯体の移動や水分の吸収による剥離容易性壁紙1の割れや破れの発生をより防ぐことができる。なお、不織布には、ポリエステル繊維およびパルプ以外に、ガラス繊維を含むように不織布を構成してもよい。ガラス繊維を含めることにより、不織布の強度や耐久性を向上させることができる。
【0053】
また、不織布には、これらの繊維以外に、安定剤として酸化チタン等が含まれていてもよいし、合成ゴム系・アクリル系・酢酸ビニル系・塩化ビニル系・ウレタン系のバインダー等が含まれていてもよい。なお、不織布には、ポリエステル繊維およびパルプ以外のものが含まれていなくてもよいのは言うまでもない。
【0054】
さらに、不織布の表面および裏面におけるポリエステル繊維の結晶化度が、不織布の内部におけるポリエステル繊維の結晶化度よりも低いことが好ましい。このような構造の不織布は、引張強度や水中伸度を変えることなく、壁紙本体の柔軟性を向上させることができる。ポリエステル繊維の結晶化度については、例えば、ポリエステル繊維の融点を比較すること等によって把握することができる(融点の低いポリエステル繊維の方が、融点の高いポリエステル繊維よりも結晶化度が低いと判断できる)。なお、このような不織布は、加熱した後に、急速に冷却すること等によって製造することができる。
【0055】
壁紙本体10の厚みは特に限定されないが、0.15mm~3.5mmが好ましく、0.3mm~1.2mmが特に好ましい。壁紙本体10の厚みが0.15mmより薄いと、強度が低下し、壁面100への貼付の際に、壁紙本体10が破けてしまう可能性や、壁面100へ貼付した際に、壁面表面に形成された凹凸が壁紙表面にも現れてしまう可能性がある。一方、壁紙本体10の厚みが3.5mmより厚いと、壁面100に貼付し難くなると共に、液体が浸透し難くなり、結果的に壁面100から壁紙本体1が剥離し難くなる。
【0056】
次に、再湿性層20について説明する。再湿性層20は、液体を吸収することで、壁面100との接着力が低下するものであれば特に限定されない。再湿性層20としては、例えば、壁紙本体10の裏面10bに、再湿性(液体を吸収することで、壁面100との接着力が低下するという性質)を有する接着剤が含侵して形成されていてもよいし、壁紙本体10の裏面10bの表面に再湿性を有する接着剤が塗布されていてもよいし、壁紙本体10の裏面10bに再湿性を有する接着剤の一部が含侵し、その他の接着剤が壁紙本体10の裏面10bの表面に塗布された状態で形成されていてもよい。
【0057】
ここで、再湿性を有する接着剤とは、所定の液体を吸収することで、壁面100との接着力が低下する性質を有する接着剤であれば特に限定されない。所定の液体は、接着剤に吸収されることで、その接着剤の接着力が低下するものであれば特に限定されない。所定の液体としては、例えば、水(60℃~90℃の温水を含む)、アセトン、ジメチルホルムアミド、ホウ酸、アルコール、トルエン等が挙げられる。
【0058】
なお、所定の液体に、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、所定の液体の界面張力(表面張力)を低下させるものであれば特に限定されない。界面活性剤としては、所定の液体が水の場合には、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。界面活性剤を所定の液体に添加することにより、所定の液体を壁紙本体10に容易に浸透させることができる。その結果、剥離容易性壁紙を壁面から、より容易に剥離させることができる。なお、界面活性剤の添加量は特に限定されないが、所定の液体の重量に対して3~15%が望ましい。
【0059】
接着剤は、再湿性を有する水溶性高分子等を含むものであれば特に限定されない。接着剤としては、具体的には、でんぷん、にかわ、デキストソン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ケイ酸、ポリアクリル酸等を含む接着剤が挙げられる。
【0060】
また、接着剤に、粘度を向上させる増粘剤を添加してもよい。増粘剤を添加することにより、接着剤の粘性および保水性を向上させることができる。その結果、接着剤の接着力および乾燥時間の調整を行うことができるので、壁面に容易に貼付することができる。増粘剤としては、例えば、精製グリセリン(阪本薬品工業株式会社)等のグリセリン、アクアリック(登録商標)L、H等のアクリル酸系の水溶性ポリマー、グァーガム、キサンタンガム等が挙げられる。なお、増粘剤の添加量は特に限定されないが、接着剤の重量に対して5~35%が望ましく、15~30%がより望ましい。添加剤の添加量が接着剤の重量に対して5%より少ないと保水性・粘性の向上が不十分であり、35%より多いと接着力の低下や硬化時間の遅れが発生する。
【0061】
なお、再湿性層20の厚みは特に限定されないが、0.01mm~1mmが好ましい。再湿性層20の厚みが0.01mmより小さいと、接着力が不十分となり、水等の液体を供給しなくても剥離容易性壁紙が剥がれ易くなってしまう。一方、再湿性層20の厚みが1mmより大きいと、剥離容易性壁紙1が目的の場所からズレて貼付されてしまう可能性がある。
【0062】
<壁面への剥離容易性壁紙の貼付方法>
次に、壁面100への剥離容易性壁紙1の貼付方法について説明する。剥離容易性壁紙1の壁面100への貼付方法は、まず壁紙本体10の裏面10bに、再湿性を有する接着剤を塗布して再湿性層20を設ける。その後、再湿性層20が乾燥する前に、剥離容易性壁紙1を壁面100に貼り付け、乾燥させることで、壁面100に剥離容易性壁紙1を容易に貼り付けることができる。
【0063】
この方法以外にも、例えば、まず壁面100に、再湿性を有する接着剤を塗布して再湿性層20を設ける(再湿性層形成工程)。その後、再湿性層20上に、壁紙本体10を接着させること(接着工程)によっても、壁面100に剥離容易性壁紙1を容易に貼り付けることができる。なお、再湿性層20に、水等の液体を供給した後に、壁紙本体10を接着させてもよい。
【0064】
<壁面からの剥離容易性壁紙の剥離方法>
さらに、
図1に示すように、剥離容易性壁紙1が壁面100に貼付された状態から、剥離容易性壁紙1を剥離する方法について説明する。
【0065】
まず、
図2に示すように、壁紙本体10の表面10aに、水等の液体を供給する(S1)。液体の供給方法としては、壁紙本体10の表面10aに液体を吹きかけたり、液体を塗布する方法(浸透工程)が挙げられる。
【0066】
壁紙本体10の表面10aに供給された水は、壁紙本体10の表面10aから裏面10bに浸透し(S2)、再湿性層20に到達する。すると、再湿性層20は液体を吸収して(S3)、接着力が低下し始める(S4)。その後、しばらく放置し、再湿性層20の壁面100との接着力が十分に低下した段階で、剥離容易性壁紙1の端部を壁面100から引き剥がす(S5)。それを、剥離容易性壁紙1が壁面100から完全に剥離するまで続ける(剥離工程)ことで(S6)、壁面100から剥離容易性壁紙1を容易に剥離させることができる。
【0067】
ここで、壁面100に、再湿性層20の一部(例えば再湿性層20に含まれていた接着剤)が壁面100に残っている(付着している)可能性があるが、それに同じ液体を吹きかけたり、塗布し、しばらく放置することによって、再湿性層20の一部と壁面100との接着力を低下させることができるので、それを容易に取り除くことができる。
【0068】
以上説明したように剥離容易性壁紙1を構成することによって、剥離容易性壁紙1を壁面100に容易に貼付することができると共に、剥離容易性壁紙1の表面に水等の液体を供給することによって、壁面100から剥離容易性壁紙1を容易に剥離することができる。
【0069】
(実施形態2)
実施形態1では、壁紙本体の一方面側表面には何もなかったが、表面層が設けられていてもよい。
図3は、壁面に貼付された状態の本実施形態に係る剥離容易性壁紙の概略断面図である。
【0070】
この図に示すように、本実施形態に係る剥離容易性壁紙1Aは、壁紙本体10の一方面側表面に、表面層50が設けられている。具体的には、壁紙本体10の一方面側表面に接着剤等(図示しない)を介して表面層50が設けられている。なお、他の構成は、実施形態1の剥離容易性壁紙と同様である。
【0071】
ここで、表面層50は特に限定されず、色彩が施されているもの、液体を透過できないものや、多層構造のものであってもよい。表面層50としては、例えば、塗装や印刷が施された塩化ビニル、プラスチック(オレフィン等)、木スライス、コルク等が挙げられる。表面層50を設けることにより、剥離容易性壁紙1Aの装飾性を向上させることができる。
【0072】
また、塩化ビニルやオレフィンは液体を透過させないので、これらを表面層50として用いると、剥離容易性壁紙1Aの耐水性を向上させることができる。したがって、常に水がかかるような壁面であっても、このような剥離容易性壁紙1Aを貼付することができる。
【0073】
<壁面への剥離容易性壁紙の貼付方法>
剥離容易性壁紙1Aが壁面100に貼付された状態から、剥離容易性壁紙1Aを剥離する方法としては、次のような方法が挙げられる。まず、実施形態1と同様に、表面層50が設けられた壁紙本体10の裏面10bに、再湿性を有する接着剤を塗布して再湿性層20を設ける。その後、再湿性層20が乾燥する前に、剥離容易性壁紙1Aを壁面100に貼り付け、乾燥させることで、壁面100に剥離容易性壁紙1Aを容易に貼り付けることができる。
【0074】
この方法以外にも、例えば、まず壁面100に、再湿性を有する接着剤を塗布して再湿性層20を設ける(再湿性層形成工程)。その後、再湿性層20上に、表面層50が設けられた壁紙本体10を接着させること(接着工程)によっても、壁面100に剥離容易性壁紙1Aを容易に貼り付けることができる。なお、再湿性層20に、水等の液体を供給した後に、壁紙本体10を接着させてもよい。
【0075】
<壁面からの剥離容易性壁紙の剥離方法>
剥離容易性壁紙1Aを壁面100から剥がす方法としては、次のような方法が挙げられる。まず、表面層50を壁紙本体10から剥離する表面層剥離工程を行った後、実施形態1と同様の浸透工程および剥離工程を行うことで、壁紙本体10を壁面100から剥がすことができる。このようにして、壁面100から剥離容易性壁紙1Aを容易に剥離することができる。
【0076】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、剥離容易性壁紙の表面を着色しなかったが、例えばインクジェット式印刷機を用いて、剥離容易性壁紙の表面を着色してもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、剥離容易性壁紙の表面にエンボス加工を施していないが、エンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、従来の壁紙にエンボス加工を施す方法と同様の方法を用いることができる。剥離容易性壁紙の表面にエンボス加工を施すことによって、建物の壁等の下地の凹凸が剥離容易性壁紙の表面に現れにくくなるので、剥離容易性壁紙の美観を向上させることができる。
【符号の説明】
【0078】
1、1A 剥離容易性壁紙
10 壁紙本体
10a 壁紙本体の表面(一方面)
10b 壁紙本体の裏面(他方面)
20 再湿性層
50 表面層
100 壁面