(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】メジャーロール装置、及びメジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/09 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B21D43/09 F
(21)【出願番号】P 2020077656
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515161261
【氏名又は名称】株式会社KHエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏章
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-520934(JP,A)
【文献】特開平4-28435(JP,A)
【文献】実開昭62-169730(JP,U)
【文献】特開昭59-223127(JP,A)
【文献】実開昭63-62234(JP,U)
【文献】特開昭54-101576(JP,A)
【文献】特開昭61-82938(JP,A)
【文献】実開平2-48223(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順送プレス機における段取り後の頭出し工程時において、コイル材を正寸送りする際に送り寸法不良を出さないために、正寸送り寸法を制御するメジャーロール装置であって、
正寸送り寸法を設定する寸法設定手段と、
正寸送り寸法を測定する寸法測定手段と、
設定された前記正寸送り寸法に到達した時に正寸送りを停止させる停止手段と、
正寸動後、コイル材を送り過ぎた場合は逆寸動した後、寸動プレスすると前記停止手段が解除される解除手段を備えることを特徴とするメジャーロール装置。
【請求項2】
前記寸法測定手段は、フィーダに内蔵されたサーボモータに設置されたエンコーダであることを特徴とする請求項1に記載のメジャーロール装置。
【請求項3】
順送プレス機における段取り後の頭出し工程時において、コイル材を正寸送りする際に送り寸法不良を出さないために正寸送り寸法を制御する方法であって、
正寸送り寸法を設定する工程と、
フィーダの正寸動、又は逆寸動によりコイル材の先端をスタートラインまで送るとともに目視にて位置合わせをする工程と、
コイル材の先端をスタートラインまで送るとともに目視にて位置合わせをした際、正寸送り寸法をゼロにリセットする工程と、
隣接するパイロットピンまで、フィーダに内蔵されたサーボモータに設置されたエンコーダにてコイル材の送り量を測定しつつ正寸送りする工程と、
前記正寸送り寸法に到達すると前記正寸送りを強制的に止める停止工程を備えており、
さらに、正寸動後、コイル材を送り過ぎた場合は逆寸動した後、寸動プレスすると前記
停止工程が解除される解除工程を備えていることを特徴とするメジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送りプレス加工機における段取り後の頭出し作業において、材料の歩留まり向上に貢献することができるメジャーロール装置(正寸送りに対して送り不良を出さないために2次側で送り寸法を管理する装置)、及びメジャーロール装置によるコイル材(帯状ワーク:以下においてこの記載を省略する)の送り寸法制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工技術は、金属加工には欠かすことができない技術である。プレス加工技術の一つの類型として順送りプレス加工がある。順送りプレス加工とは、簡単に言えば(コイル材を保持する機械である)アンコイラに設置したコイル材を、コイル材の巻き癖を矯正する機械であるレベラを介して、コイル材を金型に所定長さで断続的に供給する機械であるフィーダにて、プレス加工機に供給し続けながら、順送りで(金型に設置したパイロットピンとパイロットピンの距離であって、コイル材の流れ方向と平行な方向の距離毎に断続的に)にコイル材を送りつつ、プレスする態様のプレス加工である。順送りプレス加工に使用する順送り金型は、抜き打ち加工、穴あけ加工、せん断加工、縁取り加工、縁仕上げ加工、曲げ加工、絞り加工等の複数の工程が単一金型内に同じ間隔(あるパイロットピンと隣接するパイロットピンの距離)で順番に配置されているものである。コイル材投入から完成品までの一連の流れを自動で行うことができるため、生産効率の向上に寄与するものである。
【0003】
一方で、順送りプレス加工における現状においては、フィーダからプレス機に供給されるコイル材において、コイル材の送り寸法を正確に測定(制御も含む)ができていないことが多く、例えば、頭出し作業の時にコイル材を送り過ぎていた場合には、その分、コイル材の無駄を生じているのであるが、どれだけ無駄が発生しているのかも解らない状況で放置されていた。即ち、材料の歩留まりという点において大いに問題があった。このような現状を踏まえて、頭出し作業の時における正寸送りに対して、送り寸法不良を出さないような制御ができる装置、即ち、コイル材の歩留まり向上を図ることができる制御装置が希求されていた。
【0004】
特許文献1には、プレス機の運転停止時にクランク軸が慣性力等により余分に回転して移送開始信号が誤生成されて帯状ワーク(本発明のコイル材に該当する)が誤移送(余分にコイル材が送られてしまった状態)された場合であっても、プレス機の運転再開時に帯状ワークが(そのままの状態で)再度移送されることによる材料歩留まりが悪くなるのを防止する帯状ワーク送り方法が記載されている。即ち、電動モータを駆動制御してワーク移送部材により帯状ワークを移送する際に、記憶部に帯状ワークの移送履歴が記憶されている場合には、電動モータの駆動を禁止して帯状ワークの移送を規制する一方、記憶部に帯状ワークの移送履歴が記憶されていない場合には、電動モータを駆動制御してワーク移送部材による帯状ワークの移送を可能にする(特許文献1:解決手段より抜粋)プレス機の帯状ワークの送り方法(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係るプレス機の帯状ワークの送り方法(特許文献1:発明の名称)は、電動モータを駆動制御する技術である。記憶部に帯状ワークの移送履歴が記憶されている場合には、電動モータの駆動を禁止して帯状ワークの移送ができないようにし、記憶部に帯状ワークの移送履歴が記憶されていない場合には、帯状ワークの移送ができるようにする技術である。特許文献1に係るプレス機の帯状ワークの送り方法(特許文献1:発明の名称)は、移送開始信号が誤生成されて帯状ワークが誤移送される状態になることが好ましくない旨記載されているが、そもそも、順送りプレス機における段取り後の頭出し作業をしていないことが問題なのである。さらに、電動モータを駆動制御するのは、駆動制御のための部品点数が増えることになるので、そのためのコストが掛かり、しかも精密部品であるのでメンテナンスにもコストが掛かり好ましく無い。
【0007】
本発明の目的は、コイル材の送り寸法を正確に測定し、精度の高い送り寸法制御によるコイル材の無駄を削減することで、頭出し作業の時における正寸送りの際、設定された送り寸法分しかコイル材を金型に供給できない仕組みにして歩留まり向上を図り、さらに、コイル材の送り寸法過多(又は、送り寸法不足)に起因するセットズレによる金型破損を防止することができると共に、作業者(オペレータ)の安全対策にも効果のあるメジャーロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、順送プレス機における段取り後の頭出し工程時において、コイル材を正寸送りする際に送り寸法不良を出さないために、正寸送り寸法を制御するメジャーロール装置であって、正寸送り寸法を設定する寸法設定手段と、正寸送り寸法を測定する寸法測定手段と、設定された前記正寸送り寸法に到達した時に正寸送りを停止させる停止手段と、正寸動後、コイル材を送り過ぎた場合は逆寸動した後、寸動プレスすると前記停止手段が解除される解除手段を備えることを特徴とするメジャーロール装置であることを特徴とするものである。尚、本明細書において「寸動プレス」とは、頭出し工程時において、コイル材が正しい位置にあることを確認するための上下動(プレス時と同じ動き)であり、「正寸動」とは、コイル材の送り方向に送る作業であり、「逆寸動」とは、コイル材の送り方向とは逆の方向に戻す作業である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記寸法測定手段は、フィーダに内蔵されたサーボモータに設置されたエンコーダであるメジャーロール装置であることを特徴とするものである。尚、エンコーダとは、回転センサのことであり、機械的な位置の変化を、位置値としては回転位置(本発明に係るメジャーロール装置においては、サーボモータに内蔵されたエンコーダであるので、サーボモータの回転位置を検出することで、コイル材の変位を測定することになる)、または直線位置をセンサで測定して、電気信号として位置情報を出力する装置のことである。サーボモータに設置されたロータと、エンコーダの主要部品の一つであるスリットが刻まれた円盤は連結されているため、サーボモータ回転時における動いたスリットの数を光センサでカウントし、電気信号に変換することで、回転時の位置(=コイル材の正寸送り寸法)を検出する仕組みになっている。
【0010】
請求項3に記載された発明は、順送プレス機における段取り後の頭出し工程時において、コイル材を正寸送りする際に送り寸法不良を出さないために正寸送り寸法を制御する方法であって、正寸送り寸法を設定する工程と、フィーダの正寸動、又は逆寸動によりコイル材の先端をスタートラインまで送るとともに目視にて位置合わせをする工程と、コイル材の先端をスタートラインまで送るとともに目視にて位置合わせをした際、正寸送り寸法をゼロにリセットする工程と、隣接するパイロットピンまで、フィーダに内蔵されたサーボモータに設置されたエンコーダにてコイル材の送り量を測定しつつ正寸送りする工程と、前記正寸送り寸法に到達すると前記正寸送りを強制的に止める停止工程を備えており、さらに、正寸動後、コイル材を送り過ぎた場合は逆寸動した後、寸動プレスすると前記停止工程が解除される解除工程を備えていることを特徴とするメジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法であることを特徴とするものである。尚、本明細書において「スタートライン」とは、コイル材に1番目のパイロットピンが挿入される位置のことであり、「隣接するパイロットピンまで・・・正寸送りする」とは、コイル材に2番目のパイロットピンが挿入される位置までコイル材を送るということである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るメジャーロール装置は、正寸送り寸法を設定する寸法設定手段と、正寸送り寸法を測定する寸法測定手段(フィーダに内蔵されたサーボモータのエンコーダを採用しても良い)と、設定された正寸送り寸法に到達した時に正寸送りを停止させる停止手段と、寸動プレス、正寸動、逆寸動すると停止手段が解除される解除手段を備えている。
【0012】
そして、メジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法は、正寸送り寸法を設定する工程と、フィーダの正寸動、又は逆寸動によりコイル材の先端をスタートライン(コイル材に1番目のパイロットピンが挿入される位置)まで供給するとともに目視にて位置合わせをする工程と、かかる際に、正寸送り寸法をゼロにリセットする工程と、隣接するパイロットピンまで正寸送りする工程と、(設定した)正寸送り寸法に到達すると正寸送りを強制的に止める停止工程を備えており、さらに、寸動プレス、正寸動、逆寸動すると停止工程が解除される解除工程を備えている。
【0013】
メジャーロール装置は、順送プレス加工機における段取り後の頭出し工程時において、予め、コイル材の正寸送り寸法を設定し、かつ、コイル材の正寸送り寸法を正確に測定し、コイル材を設定した寸法分しか供給できないようにして、精度の高い正寸送り寸法を実現することができるようになった。従って、頭出し工程時におけるコイル材の送り過ぎによる無駄を削減し、コイル材の歩留まり向上、さらに、コイル材の送り寸法過多(又は、送り寸法不足)に起因するセットズレによる金型破損を防止することができると共に、作業者(オペレータ)の安全対策にも効果のあるメジャーロール装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るメジャーロール装置の順送りプレス加工機と周辺装置等における配置位置、及び構成を模式的に示した図である。
【
図2】メジャーロール装置の主な制御装置等を示すブロック図である。
【
図3】従来のコイル材の頭出し時のセット方法を説明するための図である。
【
図4】メジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<メジャーロール装置の配置位置、及び構成>
以下、本発明に係るメジャーロール装置1の一実施形態について、
図1~
図4に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るメジャーロール装置1の配置位置、及び構成を模式的に示した図である。
図2は、メジャーロール装置の主な制御装置等を示すブロック図である。
【0016】
メジャーロール装置1について説明する前に、順送りプレス加工機10による順送りプレス加工について概略を説明する。
図1に記載したように、順送りプレス加工に必要な機械は順送りプレス加工機10以外にも、アンコイラ6(コイル材9を保持する機械)、レベラ7(コイル材の巻き癖を矯正する機械)、フィーダ8(コイル材9をプレス加工機の金型内に所定長さを断続的に供給する機械)が挙げられる。尚、レベラ7とフィーダ8を一体化した態様であることも多い。即ち、順送りプレス加工とは、アンコイラ6にセットしたコイル材9を、レベラ7を介して(レベラ7とフィーダ8を一体化した態様もある)フィーダ8により順送りプレス加工機10に供給し続けながら、順送りでプレスする態様のプレス加工である。
【0017】
メジャーロール装置1は、順送りプレス加工機10における段取り後の頭出し工程時(生産ラインを稼働させて金型に断続的にコイル材9を供給する前の工程)において、コイル材9を正寸送り(パイロットピンと隣接するパイロットピンとの距離分コイル材9を順送りプレス加工機10(の金型)に送る作業)する際に、コイル材の「正寸送り寸法」を設定し、かつ、コイル材の「正寸送り寸法」を正確に測定し、コイル材を予め設定した「正寸送り寸法」分しか送ることができないように制御する装置である。
【0018】
メジャーロール装置1は、順送りプレス加工機10(の金型)に供給されるコイル材9の「正寸送り寸法」を測定する必要があるため、フィーダ8と順送りプレス加工機10本体の間に設置すれば良いのであるが、通常は、主要部品である変位センサ(光センサ)等が内蔵されるフィーダ8に設置される(
図1参照)。
【0019】
そして、メジャーロール装置1は、正寸送り寸法を設定する寸法設定手段2と、コイル材の「正寸送り寸法」を測定する寸法測定手段3と、設定された正寸送り寸法に到達した時にコイル送りを停止させる停止手段4と、寸動プレス、正寸動、逆寸動した際、停止手段4が解除される解除手段5を備えている。さらに、メジャーロール装置1は、寸法設定手段2と、寸法測定手段3と、停止手段4と、解除手段5を制御するための制御装置を備えている。尚、制御装置は、メジャーロール装置1本体に内蔵されて居なくとも良く、メジャーロール装置1と電気的に接続されていれば良い。
【0020】
制御装置は、メインCPUや、ROMやRAM等の記憶手段、インターフェース等が搭載されており、寸法測定手段2として変位センサが設置されている。変位センサはインターフェースを介してメインCPUに繋がっている(
図2参照)。尚、変位センサとは、物体がある位置から他の位置へ移動したとき、その移動量を測定するものである。メジャーロール装置1においては、フィーダ8によるコイル材9の送り量を移動量として測定することになるが、フィーダ8に内蔵されたサーボモータに設置されたエンコーダに設置された光センサであっても良い。寸法設定手段3は、パソコンのキーボード等の入力手段になる。パソコンのキーボードはインターフェースを介してメインCPU(を介して記憶手段)に繋がっている(
図2参照)。寸法設定手段3により、設定量(定寸送り寸法)をパソコン等のキーボードに打ち込み、インターフェースを介して記憶手段(RAM)に記憶されることになる。
【0021】
停止手段4は、変位センサ(フィーダ8に内蔵されたサーボモータに設置されたエンコーダ)から送られた信号を受け取ったメインCPUが、コイル材9の移動量が、記憶手段(RAM)に記憶されている設定量に達したと判定した際、即ち、コイル材9の送り寸法が設定量(正寸送り寸法)に達した際、CPUから信号を送り停止回路を作動させることによりフィーダ8の作動を停止させる。解除手段5は、順送り加工プレス機、及びフィーダ8が、インターフェースを介してメインCPUに繋がっており(
図2参照)、停止回路が作動することによるフィーダ8の停止時において、寸動プレス、正寸動、逆寸動した際、順送り加工プレス機、及びフィーダ8からの信号をCPUが受け取り、解除回路を作動することにより(解除手段5が)機能するようになっている。
【0022】
尚、メジャーロール装置1の設置場所については種々の態様が考えられるが、寸法測定手段2が、フィーダ8に内蔵されたサーボモータのエンコーダである場合は、フィーダ8に内蔵されることになる。レベラ7とフィーダ8を一体化した態様(レベラフィーダ7,8であれば、レベラフィーダ7,8に内蔵されるような態様が考えられる。
【0023】
フィーダには、一般的にロールフィーダ、グリップフィーダ、マグネットフィーダの3種類が知られている。ロールフィーダは、プレス加工においてコイル材を上下のロールで挟んでプレス機械へ送り出すための「送り装置」である。軟鋼材を通す場合は傷がつきやすいため、ウレタン製のロールに変更することも可能である。グリップフィーダは、下グリッパが上昇することで、上グリッパと下グリッパとでコイル材を狭持し、プレス機械へ送り出すための「送り装置」である。下クランパが上昇し材料を保持し、送り出した後、下グリッパが下降しコイル材を開放し、上下グリッパはスタート地点へ戻る。コイル材を上下のロールで挟んでから転がして送るロールフィード方式とは異なり、静摩擦状態、即ち、最大の摩擦力を利用することにより確実に材料を掴んで送ることができる。マグネットフィーダは、マグネットの磁力によりコイル材を吸着させてから、プレス機械へ送り出すための「送り装置」である。本発明に係るメジャーロール装置1は、特に、ロールフィーダに対して最適なように技術設計が為されており、採用されることが望まれている。
【0024】
<メジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法>
メジャーロール装置1によるコイル材9の送り寸法制御方法を説明する前に、従来の頭出し方法について説明する。
図3は、従来のコイル材9の頭出し時のセット方法を説明するための図である。
図3(a)に記載したように、正寸動(作業者がスイッチボタンを押し続けている間はコイル材が金型に向かって送られる)、または、逆寸動(作業者がスイッチボタンを押し続けている間はコイル材が金型から遠ざかる方向に戻される)にて調整しつつ、コイル材9をスタートライン(コイル材9に1番目のパイロットピン11が挿入される位置(
図3において点線で記載された一番右の直線)まで送り、その位置が正しいかどうかを目視で確認する。(尚、パイロットピンとは金型に設置されるピンであって、製品の穴やコイル材9の捨て穴等にピッチズレ防止などの目的で挿入することで正確な位置決めを行うための先端が案内しやすいテーパー形状になっているピンのことである。)
【0025】
その位置で寸動プレスを行い、
図3(b)に記載したように、引き続きコイル材9を2番目のパイロットピン11’(コイル材9に2番目のパイロットピン11’が挿入される位置)まで緩衝物を避けながら送り、その位置が正しいかどうかを目視で確認する。このとき、作業者が確実に目視確認をしないとコイル材9を送り過ぎた状態、或いは、送り量が足りない状態でその後の工程が進んでしまうことになる。メジャーロール装置1は、この工程におけるコイル材9の送り寸法過多(又は、送り寸法不足)に起因するセットズレによる金型破損を防止することができるものである。
【0026】
再び、その位置で寸動プレスを行い、
図3(c)に記載したように、今度は正寸送り(コイル材が1回の動作で供給される寸法分のコイル材が送られる:プレス加工機の稼働時に断続的に供給される寸法と同じ)で、3番目のパイロットピン11’’(コイル材9に3番目のパイロットピンが挿入される位置)までコイル材9を送り、その位置が正しいかどうかを目視で確認する。
図3(b)の説明をした際と同様に、作業者が確実に目視確認をしないとコイル材9を送り過ぎた状態、或いは、送り量が足りない状態でその後の工程が進んでしまうことになる。これらの一連の作業を行い、正寸送りが確実になされていることを確認した後、最終的に連動運転に切り替えて稼働スタートとなる。
【0027】
従来の方法では、正寸動、及び逆寸動はボタン操作をすることになるが、作業者がボタンを押した時間分だけコイル材を前方に送ることになる。従って、ボタン操作時に、コイル材9を送り過ぎてしまうような(または送り量が足りないというような)作業ミスがあったとしても、目視確認を確実に行わずスルーしてしまうと、かかる作業ミスが放置されてしまうこともある。頭出し作業の時にコイル材9を送り過ぎていた場合には、その分、コイル材9の無駄が発生しているのであるが、現状において、どれだけ無駄が発生しているのかも分からない状況が放置されていた。即ち、材料の歩留まりという点において大いに問題点があった。
【0028】
図4は、メジャーロール装置1によるコイル材9の送り寸法制御方法を説明するための図である。
図4(a)に記載したように、コイル材9を正寸動(コイル材を送り過ぎた場合は逆寸動で戻す)でスタートライン(コイル材に1番目のパイロットピン11が挿入される位置)まで送る(その位置が正しいかどうかを目視で確認する)。この時、正寸送り寸法を設定する。
図4では設定値を200mmとしている。尚、正寸動(逆寸動)における実測送り寸法はカウントされないので実測値0mmである。その位置で寸動プレスを行い、引き続き、2番目のパイロットピン11’(コイル材に2番目のパイロットピンが挿入される位置)まで緩衝物を避けつつ(隣り合うパイロットピン11’までの寸法分だけ送ること)正寸送りでコイル材9を送る。
【0029】
図4(b)に記載したように、正寸送りでコイル材9を送ると、予め設定した正寸送り寸法の設定値に達した時点で、停止手段4の作用によりコイル送りが停止することになる(
図4(b)において、送り寸法設定値(200mm)と送り寸法実測値(200mm)とが同じになっている)。従って、ボタン操作時に、コイル材9を送り過ぎてしまうような(または送り量が足りないというような)作業ミスは発生しない。
【0030】
尚、送り寸法設定値(200mm)での正寸送り(工程)の途中で、コイル材9を逆方向へ戻す作業(例えば、150mm送った地点で100mmに戻す作業)を行った場合であっても、その寸法実測値(150mm→100mm)を記憶することができるようになっている。従って、その後再び、正寸送りをしても、150mm→100mmに逆送りしたことを記憶しているので(実測値としては、100mmから再スタートするので)、最終的に、コイル材9を送り過ぎてしまうような作業ミスは発生しない。
【0031】
その後、停止手段4を解除するために、即ち、解除手段5を作動させるために(停止回路が作動することによるフィーダ8の停止時において)寸動プレスを行い、
図4(c)に記載したように、正寸送りで3番目のパイロットピン11’’(コイル材9に3番目のパイロットピン11’’が挿入される位置)までコイル材9を送り、その位置が正しいかどうかを目視で確認する。寸動プレスを行うと実測値がリセットされ0mmになる(
図4(c)参照)。その後、さらに(位置確認のため)寸動プレスを行っても良い。これらの一連の作業の後、最終的に連動運転に切り替える。
【0032】
<メジャーロール装置の効果>
本発明に係るメジャーロール装置1、及びメジャーボール装置1によるコイル材9の送り寸法制御方法は、順送りプレス機10における段取り後の頭出し作業において、アンコイラ6にセットしたコイル材9を順送りプレス加工機10に供給する際、工程のばらつきを生じ得るような(金型のパイロットピン11に)目視で合わせる作業をしなくても良くなるため(目視確認をすれば、さらに確実性は向上する)材料の歩留まり向上に貢献することができるメジャーボール装置1(定寸送りに対して送り不良を出さないために2次側で送り装置を管理する装置)、及びメジャーボール装置1によるコイル材9の送り寸法制御方法である。
【0033】
メジャーロール装置1、及びメジャーボール装置1によるコイル材9の送り寸法制御方法は、「正寸送り」にて設定量までコイル材9を送ったら、コイル材9の供給する動作を停止させ、再度ボタンを押しても供給しないようにすることができる。一方において、寸動でプレス、正寸動、逆寸動、をすることで停止状態が解除され再度コイル材9を供給することができる。
【0034】
即ち、順送プレス加工機10における段取り後の頭出し工程時において、予め、コイル材9の正寸送り寸法を設定し、かつ、コイル材9の正寸送り寸法を正確に測定し、コイル材9を設定量しか供給できないようにして、精度の高い正寸送り寸法を実現することができるため、コイル材9の無駄を削減し、コイル材9の歩留まり向上、さらに、コイル材9の送り寸法過多(又は、送り寸法不足)に起因するセットズレによる金型破損を防止することができるようになった。尚、作業状況によっては、従来の動作(
図3参照)をした方が良い場合もあり、かかる場合には従来の動作への切り換えをすることもできる。
【0035】
<メジャーロール装置の変更例>
本発明に係るメジャーロール装置は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、寸法測定手段、寸法設定手段、停止手段、解除手段等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るメジャーロール装置、及びメジャーロール装置によるコイル材の送り寸法制御方法は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、順送りプレス機における段取り後の頭出し作業において、材料の歩留まり向上に貢献することができるメジャーロール装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・メジャーロール装置
2・・寸法設定手段(エンコーダ)
3・・寸法測定手段
4・・停止手段
5・・解除手段
6・・アンコイラ
7・・レベラ
8・・フィーダ
9・・コイル材
10・・順送りプレス加工機
11・・パイロットピン