(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】静電塗装用スプレーガン
(51)【国際特許分類】
B05B 5/053 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
B05B5/053
(21)【出願番号】P 2021042452
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小田 真也
(72)【発明者】
【氏名】白松 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宣文
(72)【発明者】
【氏名】大野 将宏
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-131151(JP,A)
【文献】特開2020-089840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の先端に設けられ塗料を噴霧するためのノズルと、
前記本体部において前記ノズルとは異なる位置に設けられ、導電性リングと電気絶縁性を有し前記導電性リングの周囲を覆う被覆部とによって構成されている電極部と、
前記ノズルに電圧を供給する第1高電圧発生装置と、
前記第1高電圧発生装置から前記ノズルに供給される電圧とは異なる極性の電圧を前記導電性リングに供給する第2高電圧発生装置と、
を備える静電塗装用スプレーガン。
【請求項2】
前記被覆部は、少なくとも一部がセラミックスで構成されている、
請求項1に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項3】
前記被覆部は、少なくとも一部がジルコニアで構成されている、
請求項2に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項4】
前記電極部は、前記ノズルの先端よりも前記本体部の基端側に設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項5】
前記電極部は、前記ノズルの外周を取り囲むように環状に設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項6】
前記第2高電圧発生装置から前記導電性リングに供給される電圧の絶対値は、前記第1高電圧発生装置から前記ノズルに供給される電圧の絶対値以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の静電塗装用スプレーガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静電塗装用スプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装は、静電塗装用スプレーガンから噴霧した塗料を、静電引力によって例えば自動車の車体等の被塗物に塗着させることで、被塗物を塗装する塗装方法である。通常、静電塗装では、被塗物はアースに接続されて正極に設定され、静電塗装用スプレーガンは負極に設定されるとともに、これら被塗物と静電塗装用スプレーガンとの間に高電圧が印加されて静電界が形成される。塗料つまり塗料粒子は、負に帯電された状態で静電塗装用スプレーガンから噴霧される。そして、負に帯電された塗料粒子は、アースに接続されて正極に設定された被塗物に近づくと静電気力によって引き寄せられて被塗物に付着する。
【0003】
ここで、ノズルから噴霧された塗料のうち、被塗物に付着せずに飛散した塗料は廃棄されることになる。そのため、被塗物に対する塗料の塗着効率を上げることは、塗料の廃棄量を減らすことに寄与するため、コスト低減や環境負荷低減の観点からも重要である。また、発生する静電気力は、塗料粒子の帯電量に比例し、塗料粒子と被塗物との距離の2乗に反比例する。したがって、静電気力を高めて塗着効率を向上させるためには、ノズルに対する印加電圧を上げて帯電量を増やすか、ノズルと被塗物を近づけることが考えられる。
【0004】
しかしながら、ノズルに対する印加電圧を高くしようとすると、電源装置が大型化になり作業スペース等によっては対応が難しい場合がある。これに対し、ノズルと被塗物を近づける場合、ノズルと被塗物との電位差が大きくかつ近接しているとスパークの危険性があるため、当該電位差に対する安全距離が規定されており、高電圧を維持したままノズルを被塗物に近づけることは静電安全上困難である。そのため、従来構成では、ノズルに対する印加電圧の増大を抑制しつつ塗料の塗着効率を向上させることは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料の塗着効率を向上させることができる静電塗装用スプレーガンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の静電塗装用スプレーガンは、本体部と、前記本体部の先端に設けられ塗料を噴霧するためのノズルと、前記本体部において前記ノズルとは異なる位置に設けられ、導電性リングと電気絶縁性を有し前記導電性リングの周囲を覆う被覆部とによって構成されている電極部と、
前記ノズルに電圧を供給する第1高電圧発生装置と、前記第1高電圧発生装置から前記ノズルに供給される電圧とは異なる極性の電圧を前記導電性リングに供給する第2高電圧発生装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの構成の一例を示す図
【
図2】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、ノズル周辺を拡大して示す図
【
図3】電極部と誘電部材との関係による塗料の帯電量への影響を調べた試験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態に係る静電塗装用スプレーガンについて、図面を参照しながら説明する。なお、一実施形態において、構成要素等に付された「第1」、「第2」との語句は、類似した構成要素を単に区別するためのものであり、構成要素間の優劣や時間的要素を意味するものではない。
【0010】
図1に示す静電塗装用スプレーガン1は、例えば図示しないレシプロケータやロボットアームの先端部に設けられる。なお、本明細書では静電塗装用スプレーガンを単にスプレーガンと称することがある。スプレーガン1は、例えば液体塗料を静電引力によって被塗物に塗着させることで、被塗物に自動で塗料を塗布することができるいわゆる自動ガンである。スプレーガン1は、
図1に示すように、本体部11、本体支持部12、ノズル21、エアキャップ31、第1高電圧発生装置41、第2高電圧発生装置42、及び電極部50を備えている。
【0011】
本体部11は、
図1に示すように、スプレーガン1の外殻を構成している。本体部11は、例えば電気絶縁性を有する合成樹脂によって、円筒形状に構成されている。本体支持部12は、例えば電気絶縁性を有する合成樹脂によって、内部が中空状に構成されている。本体支持部12は、図示しない外部の塗料供給源から塗料経路22に塗料を供給するための塗料ホースや図示しない外部のエア供給源からエア経路24、32に圧縮空気を供給するためのエアホース等を内部に収容可能に構成されている。なお、本実施形態では、
図1における紙面の左側が塗料の噴霧方向側であって本体部11の先端側となり、
図1における紙面の右側が塗料の噴霧方向と反対側であって本体部11の基端側となる。
【0012】
ノズル21は、本体部11の先端に設けられ塗料を噴霧するためのものである。ノズル21は、例えば導電性を有する金属材料で構成されている。ノズル21は、塗料経路22、塗料吐出口23、第1エア経路24、及び第1エア噴出口25を有している。塗料経路22は、
図1に示すように、外部の塗料供給源から供給される液体の塗料を通過可能に構成されている。この場合、塗料経路22は、
図2の黒矢印Aで示す方向に塗料を供給する経路を構成する。
【0013】
塗料吐出口23は、
図2に示すように、ノズル21の先端側に環状に形成されて、塗料経路22の出口を構成する。この場合、塗料吐出口23に隣接するノズル21の外周面は円錐状に形成されており、塗料吐出口23からノズル21の外周面に供給された塗料は、外周面に沿って外周側へ移動する。
【0014】
第1エア経路24は、
図2に示すように、ノズル21をその長手方向に貫いて形成されており、外部のエア供給源から供給されるエアを通過可能に構成されている。本実施形態では、第1エア経路24は、塗料経路22の周囲を取り囲むように環状に配置されている。この場合、第1エア経路24は、
図2の白抜き矢印Bで示す方向に圧縮空気を供給する経路を構成する。
【0015】
第1エア噴出口25は、
図2に示すように、第1エア経路24の出口を構成する。第1エア噴出口25は、塗料吐出口23からノズル21の外周面に供給された塗料例えば液体塗料を微粒化させて、ノズル21の外周面の外周縁から放射状に噴出させるためのものである。
【0016】
エアキャップ31は、
図1等に示すように、例えば円筒状に構成されており、ノズル21の外周部に配置されている。この場合、エアキャップ31の前端部は、ノズル21の前端部よりも本体部11の基端側に設けられている。また、エアキャップ31は、
図1及び
図2に示すように、第2エア経路32と、第2エア噴出口33と、を有している。第2エア経路32は、第1エア経路24とは独立して圧縮空気の供給を行うものであり、外部のエア供給源から供給される圧縮空気を通過可能に構成されている。第2エア経路32は、複数設けられており、ノズル21の周囲を取り囲むように環状に配置されている。
【0017】
第2エア噴出口33は、
図2に示すように、第2エア経路32の出口を構成する。この場合、第2エア噴出口33から噴出された圧縮空気は、
図2の白抜き矢印Cで示す方向に噴出される。第2エア噴出口33は、第1エア噴出口25から噴出された圧縮空気によって微粒化した液体塗料を塗装に適した所望のパターン形状に形成させるように圧縮空気を前方つまりスプレーガン1の先端側へ噴出するためのものである。
【0018】
第1高電圧発生装置41は、
図1に示すように、本体部11内に設けられている。第1高電圧発生装置41は、昇圧回路や整流回路を有して構成されており、図示しない外部の電源装置から所定例えば12~20Vの交流電圧が入力される。そして、第1高電圧発生装置41は、その交流電圧に比例した直流の高電圧を出力することができる。本実施形態では、第1高電圧発生装置41は、出力側がノズル21に接続されており、ノズル21に負極の電圧を供給するように構成されている。これにより、ノズル21から噴霧された塗料は負の極性に荷電されて、被塗物に対する静電塗装が行われる。
【0019】
第2高電圧発生装置42は、
図1に示すように、本体部11内に第1高電圧発生装置41とは独立して設けられている。第2高電圧発生装置42は、昇圧回路や整流回路を有して構成されており、外部の電源装置から所定例えば12~20Vの交流電圧が入力される。そして、第2高電圧発生装置42は、その交流電圧に比例した直流の高電圧を出力することができる。本実施形態では、第2高電圧発生装置42は、出力側が導電性リング51に接続されており、導電性リング51に正極の電圧すなわち第1高電圧発生装置41からノズル21に供給される電圧とは異なる極性を供給するように構成されている。
【0020】
電極部50は、
図2に示すように、ノズル21の先端よりも本体部11の基端側すなわちノズル21を基準にして被塗物とは反対側に設けられている。つまり、電極部50は、本体部11においてノズル21とは異なる位置に設けられている。この場合、電極部50は、本体部11内に設けられ、ノズル21の外周を取り囲むようにして、ノズル21を中心とするような環状に設けられている。
【0021】
電極部50は、導電性リング51と被覆部52とを有している。導電性リング51は、例えば金属材料で線状に構成されている。この場合、導電性リング51は、ノズル21の外周を取り囲むようにして、ノズル21を中心とするような環状に設けられている。なお、ノズル21の先端から導電性リング51までの離間距離は、例えば40mm以下で設定されている。また、導電性リング51の直径寸法は、例えば45mmで設定されている。
【0022】
本実施形態では、上述したように、導電性リング51には、第1高電圧発生装置41からノズル21に供給される電圧とは異なる極性つまり逆極性の電圧が第2高電圧発生装置42から供給される。このように、ノズル21に印加される電圧の極性と導電性リング51に印加される電圧の極性とを異極性にすることによって、ノズル21と導電性リング51との間に大きな電位差を発生させることができる。
【0023】
この場合、第2高電圧発生装置42から導電性リング51に供給される電圧の絶対値は、第1高電圧発生装置41からノズル21に供給される電圧の絶対値以下に設定されている。具体的には、第1高電圧発生装置41からノズル21に供給される電圧及び第2高電圧発生装置42から導電性リング51に供給される電圧の絶対値は、例えば30kVに設定されている。つまり、本実施形態では、ノズル21及び導電性リング51に供給される電圧の絶対値は、互いに同電圧で設定されている。
【0024】
ところで、電極部50が放電してプラスイオンが周囲に発生すると、ノズル21から噴霧された負極に帯電した塗料との間で電気的に相殺されてしまい、塗料に対する帯電が阻害されてしまう。そこで、本実施形態では、
図2に示すように、導電性リング51の周囲が被覆部52によって覆われている。被覆部52は、例えば電気絶縁性を有する材料によって構成され、第2高電圧発生装置42から直流電圧が供給された導電性リング51を電気的に絶縁するためのものである。
【0025】
また、被覆部52は、誘電部材521と絶縁部材522とを有している。誘電部材521は、例えばセラミックス等の誘電体によって構成されている。本実施形態では、誘電部材521は、ジルコニアで構成されている。誘電部材521は、本体部11の延在方向に直交する方向の断面が例えば矩形状で、環状に構成されている。誘電部材521は、
図2に示すように、導電性リング51の前方つまり本体部11の先端側に配置されている。この場合、誘電部材521の外径は、導電性リング51の外径よりも大きい寸法で構成されている。
【0026】
絶縁部材522は、
図1に示すように、導電性リング51と第2高電圧発生装置42との間に設けられている。絶縁部材522は、例えば電気的絶縁性を有するエポキシ樹脂やポリアセタール樹脂等の合成樹脂等で構成されている。絶縁部材522は、導電性リング51と外部とを電気的に絶縁する機能を有する。
【0027】
ここで、塗料には揮発性の有機溶剤を含有しているものがあり、この有機溶剤は塗装作業中にも揮発が進行する。一般的に、塗装距離が近接例えば50~100mmを対象とした静電塗装を行う場合、揮発した有機溶剤の蒸気に静電気によって発生した火花が引火する可能性があるため、静電安全性を確保するためにノズルと被塗物との電位差を例えば30kV程度まで低く抑える必要がある。ここで、塗装距離とは、ノズルの先端部から被塗物までの距離を意味する。そして、従来構成において、ノズルと被塗物との電位差を低くすると、塗料粒子に対する帯電量を十分に得難くなり、塗着効率を向上させることが難しくなる場合がある。
【0028】
そこで、本実施形態のスプレーガン1では、上述したようにノズル21とは逆極性の電圧が印加された導電性リング51が設けられている。更に、導電性リング51は被覆部52によって周囲が覆われている。これにより、被覆部52によって導電性リング51の放電を抑制しつつ、ノズル21と電極部50との間の電位差によってノズル21の電界強度が高められることで、ノズル21から噴霧される塗料に対する帯電量を増加させることができる。その結果、近接距離での塗装における被塗物への塗着効率を向上させることができる。更に、放電しているノズル21の電圧は抑えることができるため、被塗物に対する静電安全性を確保することができる。
【0029】
さて、本願発明者は、本実施形態のスプレーガン1における塗料の帯電量に関する検証試験を行った。この試験では、基準となる従来のスプレーガンすなわち電極部50を有しない構成、導電性リング51に加えて誘電部材521にエポキシ樹脂(EP)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフッ化ビリニデン樹脂(PVDF)、及びジルコニア(ZrO2)を用いた構成すなわち本実施形態のスプレーガン1の5種類の仕様について比較した。
【0030】
検証試験は、例えばノズル21に対する印加電圧が-30kV、導電性リング51に対する印加電圧が+30kV、及びノズル21の先端部から被塗物までの塗装距離が50mmの条件で実施した。なお、上記した実施条件において、印加電圧とは、各高電圧発生装置41、42の出力電圧を意味する。
【0031】
図3は、各仕様における塗料に対する帯電量の関係を示したものであり、縦軸に帯電量を示す。
図3に示すように、電極部50を設けることで塗料に対する帯電量が向上することがわかる。これは、ノズル21と電極部50との間に電位差を発生させることでノズル21の電界強度が向上されたことを示す。より具体的には、電極部50を設けた仕様のうち、誘電部材521にエポキシ樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリフッ化ビリニデン樹脂の合成樹脂を用いた場合に比べてセラミックスこの場合ジルコニアを用いた場合、塗料に対する帯電量が1.2倍程度増加することを確認した。
【0032】
そして、
図3に示すように、誘電部材521にジルコニアを用いると、従来構成よりも塗料に対する帯電量を1.4倍程度増加できることが確認できた。これは、本実施形態のスプレーガン1において、高い誘電率を有するジルコニアを誘電部材521に用いることによって誘電部材521表面の電位が効果的に高まり、連鎖的にノズル21の電界強度が顕著に向上して、塗料に対する帯電量の増加を得ることができたものと推察する。
【0033】
以上説明した実施形態によれば、静電塗装用スプレーガン1は、本体部11と、ノズル21と、電極部50と、第1高電圧発生装置41と、第2高電圧発生装置42と、を備えている。ノズル21は、本体部11の先端に設けられ塗料を噴霧するためのものである。電極部50は、本体部11においてノズル21とは異なる位置に設けられ、導電性リング51と被覆部52とによって構成されている。被覆部52は、電気絶縁性を有し導電性リング51の周囲を覆っている。第1高電圧発生装置41は、ノズル21に電圧を供給するためのものである。第2高電圧発生装置42は、第1高電圧発生装置41からノズル21に供給される電圧とは異なる極性の電圧を導電性リング51に供給するためのものである。
【0034】
ここで、一般的に、塗装距離が近接例えば50~100mmを対象とした静電塗装を行う場合、塗料に含まれる有機溶剤が揮発して発生した蒸気に静電気によって発生した火花が引火する可能性があるため、静電安全性を確保するためにノズルと被塗物との電位差を小さくすることが行われている。そして、従来構成において、ノズルと被塗物との電位差を低くすると、塗料粒子に対する帯電量を十分に得難くなり、塗着効率を向上させることが難しくなる場合がある。
【0035】
そこで、実施形態によれば、電極部50にノズル21とは逆電圧を印加して両者間に電位差を生じさせることによって、ノズル21の電界強度を増加させながらも、ノズル21と被塗物との間の電位差は小さい状態とすることができる。更に、電極部50は、被覆部52を有して構成されているため、塗料の帯電を阻害する放電が抑制されている。これにより、効率的に塗料に対する帯電量を向上させることができる。その結果、塗料の塗着効率の向上を図ることができる。
【0036】
また、被覆部52は、少なくとも一部がセラミックスで構成されている。これによれば、被覆部52に誘電率の高いセラミックスを用いることで、導電性リング51に印加された電圧によって被覆部52表面の電位を効果的に高めることができる。よって、ノズル21の電界強度をより増加させることができる。これにより、塗料の帯電量を向上することができ、結果として、塗料の塗着効率の向上を図ることができる。
【0037】
更に、被覆部52は、少なくとも一部がジルコニアで構成されている。これによれば、絶縁破壊電圧と誘電率との関係が好ましいジルコニアを被覆部52に使用することで、被覆部52表面の電位を顕著に高めることができる。その結果、ノズル21の電界強度の増加を図ることができる。これにより、塗料の帯電量を効率良く向上させることができる。
【0038】
また、電極部50は、ノズル21の先端よりも本体部11の基端側に設けられている。これによれば、ノズル21の電極部50に対する塗料の吹き付けを抑制することができる。これにより、作業者の清掃の手間を低減できるため、塗装作業性の向上を図ることができる。
【0039】
更に、電極部50は、ノズル21の外周を取り囲むように環状に設けられている。これによれば、ノズル21の全周に対して電極部50との間の電位差を生じさせることができるため、塗料に対する帯電効率をより向上させることができる。これにより、塗料飛散の削減を図るとともに、塗装作業性の向上を図ることができる。
【0040】
また、第2高電圧発生装置42から導電性リング51に供給される電圧の絶対値は、第1高電圧発生装置41からノズル21に供給される電圧の絶対値以下である。これによれば、導電性リング51の絶縁性を保持つまり放電の抑制を効果的に図りつつ、効率良く塗料の帯電量を向上させることができる。よって、被塗物に対する塗着効率の向上及び塗料の飛散の抑制を図ることができる
【0041】
なお、上記した実施形態では、電極部50をノズル21よりも本体部11の基端側に設ける構成としたが、ノズル21に対し電極部50を本体部11の先端側に設ける構成としても良い。また、上記した実施形態では、電極部50をノズル21の外周を取り囲む環状とする構成としたが、電極部50の形状は例えば矩形状や球状など様々な変更が可能である。更に、スプレーガン1としては、自動ガンに限られず、作業者自身が手に持って作業するいわゆるハンドガンであっても良い。また、上記した実施形態のスプレーガン1は、液体塗料の噴霧を対象としたが、ノズル21等を粉体塗料用のものとすることで粉体塗料に適用しても良い。更に、上記実施形態で挙げたノズル21や電極部50の電圧等の具体的な数字についても、一例を挙げたものに過ぎず、種々の変更が可能である。
【0042】
以上説明した、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…静電塗装用スプレーガン、11…本体部、21…ノズル、41…第1高電圧発生装置、42…第2高電圧発生装置、50…電極部、51…導電性リング、52…被覆部