(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】デリネーター
(51)【国際特許分類】
E01F 9/608 20160101AFI20241017BHJP
E01F 9/658 20160101ALI20241017BHJP
【FI】
E01F9/608
E01F9/658
(21)【出願番号】P 2021062309
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500333350
【氏名又は名称】橋爪商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】平 洋規
(72)【発明者】
【氏名】千田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】楠田 純也
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-077411(JP,A)
【文献】特開平11-131429(JP,A)
【文献】特開2014-134089(JP,A)
【文献】特開2002-242130(JP,A)
【文献】特開2006-022495(JP,A)
【文献】特開2014-084571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01F 9/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に埋設された鞘管と、この鞘管に設けられ上方へ延ばされている上部ポールと、この上部ポールに設けられ光を反射する反射体と、を備えているデリネーターであって、
前記鞘管は、円筒状に形成され、前記地面に埋設された埋設部と、この埋設部に連続して前記地面から上方に所定の高さまで露出する露出部と、を備え、
前記上部ポールは、円筒状又は円柱状に形成されるとともに前記鞘管の内径よりも小さい外径に形成され、前記鞘管に差し込まれる差し込み部と、この差し込み部から上方に延びる上方延出部と、前記差し込み部に設けられ拡径方向に付勢し前記埋設部の内周面に当接する弾性部材と、を備え、
前記鞘管と前記上部ポールとの間には、前記露出部に嵌るとともに前記上部ポールを前記鞘管に支持する異径ソケットが設けられ、
前記弾性部材は、ばねであり、
前記ばねは、C字状に形成され、前記差し込み部に回転可能に支持される一対の軸部と、これらの軸部から折れ曲がり前記差し込み部に対して外方に傾いて延びるとともに揺動可能に支持される一対の揺動部と、これらの揺動部の端部に形成され前記内周面に当接する一対の屈曲部と、これらの屈曲部から前記差し込み部側に折れ曲がって延びる一対の折れ曲がり部と、こられの一対の折れ曲がり部を接続するとともに前記差し込み部の外周に当接する折り返し当接部と、を備えていることを特徴とするデリネーター。
【請求項2】
請求項1記載のデリネーターであって、
前記異径ソケットは、前記鞘管の外径よりも大きい内径で前記露出部に嵌められる大径部と、この大径部の上部に設けられ前記大径部の内径よりも小さく且つ前記上部ポールの外径よりも大きい内径に形成されるとともに挿通された前記上部ポールを保持する小径部と、前記大径部の内側上部に形成され前記露出部の上端に当接する肩部と、を備えていることを特徴とするデリネーター。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2記載のデリネーターであって、
前記ばねは、前記差し込み部を挟んで対向して2つ設けられ、
2つの前記ばねの前記軸部は、前記差し込み部の上下方向にずれた位置に形成された上孔と下孔にそれぞれ支持され、前記ばねは上方に向かって延びるように配置されていることを特徴とするデリネーター。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項記載のデリネーターであって、
前記上部ポールは木材で構成されていることを特徴とするデリネーター。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項記載のデリネーターであって、
前記上部ポールの所定の位置にテープが巻かれており、このテープの下端部が前記異径ソケットの上端部に留まっている、又は、前記上部ポールの所定の位置にビス止めによって前記異径ソケットが固定されていることを特徴とするデリネーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や駐車場、あるいは車両が出入りする施設等において、車両の運転者の視線を誘導することにより走行をサポートするデリネーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の側方や中央などに沿って、道端や道路線形などを明示し、昼夜間における車両の運転者の視線を誘導するために、その上部に反射体が設けられたポール状のデリネーターが地面に設置されている。このような、運転者の視線を誘導するデリネーターが知られている。
【0003】
デリネーターは、コンクリートや舗装道路などの硬い路面に対して所定の高さとなるように設置されるものや、土の地面に対して所定の高さとなるように設置するものがある。デリネーターを土の地面に設置する場合、いわゆる標準型(土中埋込、土中式)と呼ばれる一本ものの支柱からなるデリネーターが使用されることがある。
【0004】
一般的に、一本ものの支柱からなるデリネーターは、地上90cmの上部支柱と、根入れ60cmの下部支柱とで構成されている。デリネーターは簡単には抜けないように設置する必要があり、下部支柱には横に延びるピン状の抜け止め部材が設けられるものもある。このため地面に支柱の打ち込みができず、設置には、床掘、建て込み、埋め戻しの一連の作業が伴う。
【0005】
上部支柱が曲がったり壊れたりすると、デリネーターの交換が必要になるが、舗装の撤去、重機の使用、施工時期が冬の場合は土壌が凍ることによる撤去取り付け作業の低下、除雪による作業効率の低下などの要因により、交換作業の労力やコストが大きくなる。このような観点から、設置性が考慮された特許文献1に示すデリネーターが知られている。
【0006】
特許文献1のデリネーターは、底を開放した円筒状の鞘管に係合手段を設けて鞘管を地面に埋設し、この鞘管に支柱を挿し込んで係合手段により支柱を鞘管に係合する。デリネーターの交換は、鞘管から壊れた支柱を撤去し、新しい支柱を鞘管に設置することで完了する。
【0007】
ところで、近年、様々な分野での木材の有効活用が求められており、デリネーターの支柱に木材が使用できれば好ましい。また、木材ではない場合であっても、デリネーターを交換する際、最初に設置した業者と異なる業者でも簡単に交換できることが好ましい。
【0008】
しかし、木材の支柱を使用する場合、地面から近い位置に木材が露出していると、雨水や地面の水分により腐り易くなるため、鞘管を地面から所定の高さまで突き出させて木材を保護する必要があるところ、特許文献1の鞘管では、上端の位置が低く使用できない。また、特許文献1のデリネーターでは、鞘管に支柱を係合するためのボルトが設けられており、このボルトに係合するための専用の溝形状が形成された支柱でなければ、支柱の交換ができない。このため、デリネーターを交換する業者が最初に設置した業者と異なる場合は、特許文献1の鞘管に合う専用の支柱を手配する必要があり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、地面に設置された鞘管を使用し、木材など材質を問わず、且つ専用形状の支柱でなくても交換ができるデリネーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例によれば、地面に埋設された鞘管と、この鞘管に設けられ上方へ延ばされている上部ポールと、この上部ポールに設けられ光を反射する反射体と、を備えているデリネーターであって、
前記鞘管は、円筒状に形成され、前記地面に埋設された埋設部と、この埋設部に連続して前記地面から上方に所定の高さまで露出する露出部と、を備え、
前記上部ポールは、円筒状又は円柱状に形成されるとともに前記鞘管の内径よりも小さい外径に形成され、前記鞘管に差し込まれる差し込み部と、この差し込み部から上方に延びる上方延出部と、前記差し込み部に設けられ拡径方向に付勢し前記埋設部の内周面に当接する弾性部材と、を備え、
前記鞘管と前記上部ポールとの間には、前記露出部に嵌るとともに前記上部ポールを前記鞘管に支持する異径ソケットが設けられていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、鞘管は、円筒状に形成され、埋設部に連続して地面から上方に所定の高さまで露出する露出部を備えているので、鞘管に差し込む上部ポールを地面の雨水など水分から保護することができる。上部ポールは、鞘管に差し込まれる差し込み部と、差し込み部に設けられ拡径方向に付勢し埋設部の内周面に当接する弾性部材と、を備え、鞘管と上部ポールとの間には、露出部に嵌るとともに上部ポールを鞘管に支持する異径ソケットが設けられているので、鞘管のサイズや形状によらず、差し込み部の上部を異径ソケットで鞘管に支持し、差し込み部の下部を弾性部材で鞘管に支持し、上下2か所で鞘管に支持できる。上部ポールは、鞘管の内径よりも小さい外径に形成されるので、鞘管のサイズによらず上部ポールを差し込める。このため、地面に設置された鞘管を使用し、木材など材質を問わず、且つ専用形状の支柱でなくても交換ができる。
【0013】
好ましくは、前記異径ソケットは、前記鞘管の外径よりも大きい内径で前記露出部に嵌められる大径部と、この大径部の上部に設けられ前記大径部の内径よりも小さく且つ前記上部ポールの外径よりも大きい内径に形成されるとともに挿通された前記上部ポールを保持する小径部と、前記大径部の内側上部に形成され前記露出部の上端に当接する肩部と、を備えている。
【0014】
かかる構成によれば、異径ソケットの大径部は、鞘管の外径よりも大きい内径であるので、露出部に嵌めることができる。異径ソケットの小径部は、大径部の内径よりも小さく且つ上部ポールの外径よりも大きい内径であるので、上部ポールを保持することができる。大径部の内側上部に露出部の上端に当接する肩部が形成されているので、大径部を露出部に嵌めるだけで、小径部に保持された上部ポールの高さ方向の位置決めができる。このため、どのような形状の鞘管であっても簡単に上部ポールを設置することができる。
【0015】
好ましくは、前記弾性部材は、ばねである。
【0016】
かかる構成によれば、弾性部材は、ばねであるので、汎用性が高く、どのような形状の鞘管であってもばねの弾性力で鞘管の内周面を付勢して上部ポールを容易に設置することができる。
【0017】
好ましくは、前記ばねは、C字状に形成され、前記差し込み部に回転可能に支持される一対の軸部と、これらの軸部から折れ曲がり前記差し込み部に対して外方に傾いて延びるとともに揺動可能に支持される一対の揺動部と、これらの揺動部の端部に形成され前記内周面に当接する一対の屈曲部と、これらの屈曲部から前記差し込み部側に折れ曲がって延びる一対の折れ曲がり部と、こられの一対の折れ曲がり部を接続するとともに前記差し込み部の外周に当接する折り返し当接部と、を備えている。
【0018】
かかる構成によれば、一対の軸部が上部ポールの差し込み部に回転可能に支持され、外方に傾いて延びる一対の揺動部に屈曲部を介して折れ曲がり部が延びて折り返し当接部で繋がる、簡単な形状のばねであるので、部品コストを安価にしつつ、拡径方向に屈曲部で付勢することができ、どのような鞘管であっても上部ポールを設置することができる。
【0019】
好ましくは、前記ばねは、前記差し込み部を挟んで対向して2つ設けられ、
2つの前記ばねの前記軸部は、前記差し込み部の上下方向にずれた位置に形成された上孔と下孔にそれぞれ支持され、前記ばねは上方に向かって延びるように配置されている。
【0020】
かかる構成によれば、2つばねが上下方向にずれて配置されているので、上部ポールの差し込み部を鞘管に差し込む際、鞘管と差し込み部との隙間はそれほど大きくないところ、一方のばねだけが先に鞘管に入るので、差し込み部を容易に鞘管に差し込むことができる。さらに、2つのばねは差し込み部を挟んで対向して設けられているので、差し込まれた状態で、2つのばねでバランスよく拡径方向に付勢して、上部ポールを鞘管に正確に設置することができる。さらに、ばねは上方に向かって延びているので、鞘管に差し込まれた状態の上部ポールを抜こうとした際、鞘管の内周面との摩擦力によりばねが下方に力を受けるところ、下端に上下に移動しない軸部があることでばねが下方に移動せず引っ掛かり、上部ポールを容易に抜け難くすることができる。
【0021】
好ましくは、前記上部ポールは木材で構成されている。
【0022】
かかる構成によれば、上部ポールを木材にすることで、社会ニーズに適用しつつ、所定の高さの鞘管に差し込むことで、木材を腐り難くすることもできる。このため、地面に設置された鞘管を使用し、木材であっても容易に交換可能なデリネーターを提供することができる。
【0023】
好ましくは、前記上部ポールの所定の位置にテープが巻かれており、このテープの下端部が前記異径ソケットの上端部に留まっている、又は、前記上部ポールの所定の位置にビス止めによって前記異径ソケットが固定されている。
【0024】
かかる構成によれば、テープによって、上部ポールが異径ソケットの小径部の上端に掛かり、異径ソケットに対して上部ポールの位置決めを正確に行うことができる。上部ポールの所定の位置にビス止めによって異径ソケットを固定することで、上部ポールに対する異径ソケットの位置決めを正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
地面に設置された鞘管を使用し、木材など材質を問わず、且つ専用形状の支柱でなくても交換ができるデリネーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、作用図は、デリネーターを概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例】
【0028】
図1及び
図2に示されるように、デリネーター10は、地面70に埋設された鞘管20と、この鞘管20に設けられ上方へ延ばされている上部ポール30と、この上部ポール30の上部に設けられ光を反射する反射体40と、を備えている。
【0029】
鞘管20は、円筒状に形成され、地面70に埋設された埋設部21と、この埋設部21に連続して地面70から上方に所定の高さHまで露出する露出部22と、を備えている。なお、実施例では鞘管20は新規の1つの円筒状の管としたが、これに限定されず、設置済みのデリネーター10を所定の高さで切断したものでもよい。すなわち、鞘管20にこの鞘管20の内径よりも小さい外径のポールが差し込まれた2重の管であって、ポール(鞘管20も含む)が所定の高さHで切断されたものとしてよい。さらには、鞘管20にポールが差し込まれた設置済みのデリネーター10から、ポールのみを取り外して鞘管20を所定の高さHとしたものであってもよい。
【0030】
鞘管20の外径はD1であり、内径はd3である。上部ポール30は、円筒状又は円柱状に形成されるとともに鞘管20の内径d3よりも小さい外径D2に形成され、鞘管20に差し込まれる差し込み部31と、この差し込み部31から上方に延びる上方延出部32と、差し込み部31に設けられ拡径方向に付勢し埋設部21の内周面23に当接する弾性部材50、50a、50bと、を備えている。
【0031】
上部ポール30は木材で構成されている。例えば、木材として杉の間伐材も丸太を使用することで、災害対策への貢献など社会ニーズに適用しつつ、所定の高さHの鞘管20に差し込むことで、地面70からの水分を防ぎ、木材を腐り難くすることもできる。なお、実施例では、上部ポール30を木材としたが、これに限定されず、上部ポール30を合成樹脂製としてもよい。これにより材料を問わず、設置済みの鞘管20を利用することができる。
【0032】
また、上部ポール30の所定の位置にテープ36が巻かれており、このテープ36の下端部が異径ソケット60の上端部に留まっている。テープ36は、反射テープであることが好ましい。上部ポール30の上方延出部32には、塗装が施されており、例えば、着色の場合は、下地処理に中粘度エポキシ塗料、上塗りにセラミック変性シリコン樹脂塗料が塗装されている。また、クリア色の場合は、下塗りにポリカーボネート系ウレタン樹脂塗料、上塗りにウレタン樹脂塗料が塗装されている。差し込み部31には、腐食防止剤として、例えば、キシラデコール(登録商標)を塗装してもよい。なお、テープ36は、反射テープではなく、位置決め用の目印テープであってもよい。さらには、テープ36は無くてもよく、代わりに、その上方から予定の位置まで腐食防止用の塗装で施す形でもよい。塗装の厚みにより、上部ポール30が異径ソケット60の上端部に留まれば差し支えない。
【0033】
鞘管20と上部ポール30との間には、露出部22に嵌るとともに上部ポール30を鞘管20に支持する異径ソケット60が設けられている。
【0034】
図1~
図3に示されるように、異径ソケット60は、薄肉に形成されている。異径ソケット60は、鞘管20の外径D1よりも大きい内径d1で露出部22に嵌められる大径部61と、この大径部61の上部に設けられ大径部61の内径d1よりも小さく且つ上部ポール30の外径D2よりも大きい内径d2に形成されているとともに挿通された上部ポール30を保持する小径部62と、大径部61の内側上部に形成され露出部22の上端24に当接する肩部63と、を備えている。
【0035】
例えば、上部ポール30の外径D2を59mmとし、異径ソケット60の小径部62の内径d2を60mm、大径部61の内径d1を75mmとしてもよい。なお、これらの内径、外径の大きさは実施例の値以外であってもよい。また、異径ソケット60は、外周側に小径部62から大径部61につながる傾斜部64と、大径部61の内周面65と、小径部62の内周面66と、を備えている。小径部62には、内周面66まで貫通する孔67が形成されている。なお、実施例では、上部ポール30の異径ソケット60に差し込んだ際の位置決めは、テープ36や塗装の厚みとしたがこれに限定されず、小径部62に形成された孔67にビスを挿通して上部ポール30に締結するように、ビス止めによって所定の位置に固定してもよい。
【0036】
また、鞘管20、上部ポール30、異径ソケット60の材質を、ポリエチレン樹脂としてもよい。なお、鞘管20、上部ポール30及び鍔異径ソケット60の材質は、ポリエチレン樹脂に限定されず、ポリウレタン、ABS、ガラス繊維を含んだ強化プラスチックなどの合成樹脂であってもよく、さらには金属製であってもよい。
【0037】
図1、
図2及び
図4に示されるように、弾性部材50、50a、50bは、ばねである。弾性部材50、50a、50b(以下、ばねという)は、針金状のものを曲げて、C字状に形成されている。
【0038】
ばね50、50a、50bは、差し込み部31の孔33、34に回転可能に支持される一対の軸部51と、これらの軸部51から折れ曲がり差し込み部31に対して外方に傾いて延びるとともに揺動可能に支持される一対の揺動部52と、これらの揺動部52の端部に形成され内周面23に当接する一対の屈曲部53と、これらの屈曲部53から差し込み部31側に折れ曲がって延びる一対の折れ曲がり部54と、こられの一対の折れ曲がり部54を接続するとともに差し込み部31の外周に当接する折り返し当接部55と、を備えている。
【0039】
ばね50a、50bは、差し込み部31を挟んで対向して2つ設けられ、2つのばね50a、50bの軸部51は、差し込み部31の上下方向にずれた位置に形成された上孔33と下孔34にそれぞれ支持され、ばね50a、50bは上方に向かって延びるように配置されている。
【0040】
2つのばね50a、50bは、差し込み部31を挟んで対向して設けられているので、差し込まれた状態で、2つのばね50a、50bでバランスよく拡径方向に付勢して、上部ポール30を鞘管20に正確に設置することができる。さらに、ばね50a、50bは上方に向かって延びているので、鞘管20に差し込まれた状態の上部ポール30を抜こうとした際、鞘管20の内周面23との摩擦力によりばね50a、50bが下方に力を受けるところ、下端に上下に移動しない軸部51があることでばね50a、50bが下方に移動せず引っ掛かり、上部ポール30を容易に抜け難くすることができる。
【0041】
なお、実施例では、弾性部材50を、針金状のものを曲げてC字状に形成したばねとしたが、これに限定されず、弾性部材50は、拡径方向に付勢力を有するものであれば、板ばね、圧縮ばね、ゴムなどでもよい。
【0042】
図1、
図2及び
図5に示されるように、反射体40は、上部ポール30の上方延出部32の上端部に嵌められる円筒状の筒部41と、この筒部41の上部を絞るように形成された首部42と、この首部42の上部に形成された本体部43と、この本体部43の横方向略対向する位置に設けられ光を反射する反射板44とを備えている。本体部43は、正面視で略六角形に形成されている。なお、首部42を形成せずに、筒部41の上部に本体部43を直接設けてもよく、さらには、筒部41と本体部43を外径が小さくならないように円滑に繋ぐ形状としてもよい。
【0043】
筒部41には、孔45が形成されており、この孔45にビス46を通して、反射体40が上部ポール30に締結されている。なお、実施例では、2つの反射板44を若干傾斜するように設けたが、平行になるように設けてもよい。また、本体部43は正面視で略六角形に形成したが、円形や八角形に形成してもよい。
【0044】
なお、実施例では、上部ポール30の上方延出部32の表面に腐食防止の塗装のみ施したが、これに限定されず、塗装の上に文字を書いたり、文字が書かれたシールを貼ったりしてもよい。例えば、「山火事注意」、「熊出没注意」、「携帯電話通話できます」、「ポイ捨て禁止」、「スピード落とせ」、「注意、津波の浸水区間」などの注意喚起を目的とした」文字が書かれたシールを貼るなどしてもよい。
【0045】
次に実施例のデリネーター10の作用について説明する。
図6(A)に示されるように、既存のデリネーター10を地面70から所定の高さHで電動のこぎりなどのカッター71で切り、切り離し部20aを取り除く。一方、新規の上部ポール30に下方から異径ソケット60を嵌める。
【0046】
図6(B)に示されるように、異径ソケット60をテープ36の下端の位置に移動させる。上部ポール30の差し込み部31に形成された上孔33にばね50aをセットし、下孔34にばね50bをセットする。ばね50a、50bをセットする際、ばね50a、50bを開いて、上孔33、下孔34に軸部51を差し込む。なお、テープ36を設けていない場合は、代わりのマークや、長さ計測、治具などを用いて、上方延出部32が異径ソケット60に対して所定の長さだけ延出するようにして、ビスにより上部ポール30を異径ソケット60に固定してもよい。
【0047】
図6(C)に示されるように、上部ポール30の差し込み部31を鞘管20に差し込む。すると、下側のばね50bが鞘管20内に入る。ばね50a、50bは鞘管20の内径よりも拡径方向に広がっているため、上側のばね50aが鞘管20の上端24に引っ掛かるが、さらに上部ポール30を鞘管20内に差し込む。
【0048】
図6(D)に示されるように、異径ソケット60の肩部63が鞘管20の上端24に当接し位置決めされる。ばね50a、50bは鞘管20の内周面23を拡径方向に付勢している。2つのばね50a、50bで反対方向に付勢するため、バランスがよく、上部ポール30はぐらつかず、簡単に抜けないようになる。このように、上部ポール30の取り換え施工作業が容易で、差し込むだけの短時間で取り換えが可能となる。
【0049】
次に以上に述べたデリネーター10の作用、効果を説明する。
本発明の実施例は、鞘管20は、円筒状に形成され、埋設部21に連続して地面70から上方に所定の高さHまで露出する露出部22を備えているので、鞘管20に差し込む上部ポール30を地面70の雨水など水分から保護することができる。上部ポール30は、鞘管20に差し込まれる差し込み部31と、差し込み部31に設けられ拡径方向に付勢し埋設部21の内周面23に当接する弾性部材50と、を備え、鞘管20と上部ポール30との間には、露出部22に嵌るとともに上部ポール30を鞘管20に支持する異径ソケット60が設けられているので、鞘管20のサイズや形状によらず、差し込み部31の上部を異径ソケット60で鞘管20に支持し、差し込み部31の下部を弾性部材50で鞘管20に支持し、上下2か所で鞘管20に支持できる。上部ポール30は、鞘管20の内径d3よりも小さい外径D2に形成されるので、鞘管20のサイズによらず上部ポール30を差し込める。このため、地面70に設置された鞘管20を使用し、木材など材質を問わず、且つ専用形状の支柱でなくても交換ができる。
【0050】
さらに、本発明の実施例では、異径ソケット60の大径部61は、鞘管20の外径D1よりも大きい内径d1であるので、露出部22に嵌めることができる。異径ソケット60の小径部62は、大径部61の内径d1よりも小さく且つ上部ポール30の外径D2よりも大きい内径d2であるので、上部ポール30を保持することができる。大径部61の内側上部に露出部22の上端24に当接する肩部63が形成されているので、大径部61を露出部22に嵌めるだけで、小径部62に保持された上部ポール30の高さ方向の位置決めができる。このため、どのような形状の鞘管20であっても簡単に上部ポール30を設置することができる。
【0051】
さらに、本発明の実施例では、弾性部材50は、ばねであるので、汎用性が高く、どのような形状の鞘管20であってもばねの弾性力で鞘管20の内周面23を付勢して上部ポール30を容易に設置することができる。
【0052】
さらに、本発明の実施例では、一対の軸部51が上部ポール30の差し込み部31に回転可能に支持され、外方に傾いて延びる一対の揺動部52に屈曲部53を介して折れ曲がり部54が延びて折り返し当接部55で繋がる、簡単な形状のばねであるので、部品コストを安価にしつつ、拡径方向に屈曲部53で付勢することができ、どのような鞘管20であっても上部ポール30を設置することができる。
【0053】
さらに、本発明の実施例では、2つばね50a、50bが上下方向にずれて配置されているので、上部ポール30の差し込み部31を鞘管20に差し込む際、鞘管20と差し込み部31との隙間がそれほど大きくないところでも、一方のばね50bだけが先に鞘管20に入るので、差し込み部31を容易に鞘管20に差し込むことができる。さらに、2つのばね50a、50bは差し込み部を挟んで対向して設けられているので、差し込まれた状態で、2つのばね50a、50bでバランスよく拡径方向に付勢して、上部ポール30を鞘管20に正確に設置することができる。さらに、ばね50a、50bは上方に向かって延びているので、鞘管20に差し込まれた状態の上部ポール30を抜こうとした際、鞘管20の内周面23との摩擦力によりばね50a、50bが下方に力を受けるところ、下端に上下に移動しない軸部51があることでばね50a、50bが下方に移動せず引っ掛かり、上部ポール30を容易に抜け難くすることができる。
【0054】
さらに、本発明の実施例では、上部ポール30を木材にすることで、社会ニーズに適用しつつ、所定の高さHの鞘管20に差し込むことで、木材を腐り難くすることもできる。このため、地面70に設置された鞘管20を使用し、木材であっても容易に交換可能なデリネーターを提供することできる。
【0055】
さらに、本発明の実施例では、テープ36によって、上部ポール30が異径ソケット60の小径部62の上端に掛かり、異径ソケット60に対して上部ポール30の位置決めを正確に行うことができる。また、上部ポール30の所定の位置にビス止めによって異径ソケット30を固定することで、上部ポール30に対する異径ソケット60の位置決めを正確に行うことができる。
【0056】
尚、実施例では、上部ポール30の所定の位置にテープ36が巻かれており、このテープ36の下端部が異径ソケット60の上端部に留まっているものとしたが、これに限定されず、上部ポール30の所定の位置から上方には塗料が塗布されており、この塗料の厚みの下端部が異径ソケット60の上端部に留まっているものとしてもよい。また、実施例では、C字状の2つのばね50a、50bを上下方向にずらして配置したが、上下方向の同じ位置に配置してもよい。また、C字状のばね50a、50bを2つ設けたが、これに限定されず、1つ、3つ等でもよく、さらには、下方に向かって延びるように配置してもよい。
【0057】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の技術は、道端や道路線形などを明示するために車両の運転者の視線誘導を行うデリネーターに好適である。
【符号の説明】
【0059】
10…デリネーター、20…鞘管、21…埋設部、22…露出部、23…内周面、30…上部ポール、31…差し込み部、32…上方延出部、36…テープ、40…反射体、50、50a、50b…弾性部材、ばね、51…軸部、52…揺動部、53…屈曲部、54…折れ曲がり部、55…折り返し当接部、60…異径ソケット、61…大径部、62…小径部、63…肩部、67…孔、70…地面、H…所定の高さ。