(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2024137697
(22)【出願日】2024-08-19
【審査請求日】2024-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515237795
【氏名又は名称】アキュイティー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 悟
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-532999(JP,A)
【文献】特開2000-162089(JP,A)
【文献】特開2013-160530(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090154(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第115096899(CN,A)
【文献】特開2023-037848(JP,A)
【文献】特開平08-323965(JP,A)
【文献】特開2021-128171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G06T 7/00-7/90
JSTPlus(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得する画像データ取得部と、
複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する画像データ生成部と、
学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力する検査部と、
を有
し、
前記画像データ取得部は、それぞれ露光時間が異なる状態で前記検査対象物を撮影することにより生成された第1グレースケール画像データと、第2グレースケール画像データと、第3グレースケール画像データと、を取得し、
前記画像データ生成部は、前記第1グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのRチャネルの複数の画素値に変換し、前記第2グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのGチャネルの複数の画素値に変換し、前記第3グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのBチャネルの複数の画素値に変換することにより、前記検査用カラー画像データを生成する、
検査装置。
【請求項2】
検査対象物を検査するための検査装置であって、
前記検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得する画像データ取得部と、
複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する画像データ生成部と、
学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力する検査部と、
前記変換用データの作成に用いられる複数の画素値データを記憶する記憶部と、
前記複数の画素値データから1つの画素値データを選択する操作を受け付ける受付部と、
前記1つの画素値データに基づいて前記変換用データを作成する変換用データ作成部と、
を有し、
前記画像データ生成部は、前記複数の画素値データのうち1以上の画素値データに基づく前記変換用データを用いて、前記検査対象物を撮像することにより生成された設定用グレー画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより設定用カラー画像データを生成し、
前記検査装置は、前記設定用カラー画像データを表示部に表示させる表示処理部をさらに有し、
前記受付部は、前記表示処理部が前記設定用カラー画像データを前記表示部に表示させた後に、前記複数の画素値データから前記1つの画素値データを選択する操作を受け付ける、
検査装置。
【請求項3】
前記複数のグレースケール画素値に対応する前記複数のカラー画素値の設定操作を受け付ける受付部と、
前記設定操作が示す前記複数のグレースケール画素値と前記複数のカラー画素値との関係に基づいて前記変換用データを作成する変換用データ作成部をさらに有する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
検査対象の種別に関連付けて、前記変換用データの作成に用いられる複数の画素値データを記憶する記憶部と、
検査対象の種別を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記種別に関連付けて前記記憶部に記憶された前記画素値データを選択することにより前記変換用データを作成する変換用データ作成部と、
をさらに有する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
異常領域を有する前記検査対象物を撮影することにより生成された前記グレースケール画像データにおける検査対象領域と、前記検査対象領域に含まれる前記異常領域と、の指定を受け付ける受付部をさらに有し、
前記画像データ生成部は、前記変換用データに基づいて、前記検査対象領域に対応する第1カラースケール画素値と、前記異常領域に対応する第2カラースケール画素値との色差が閾値以上になるように、前記複数のグレースケール画素値を前記複数のカラー画素値に変換することにより、前記検査用カラー画像データを生成する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記学習用カラー画像データは、学習用のグレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を前記変換用データに基づいて複数のカラー画素値に変換することにより作成されたデータである、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
それぞれ露光時間が異なる状態で検査対象物を撮影することにより生成された第1グレースケール画像データと、第2グレースケール画像データと、第3グレースケール画像データと、を取得するステップと、
検査用カラー画像データを生成するステップであって、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、
前記第1グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのRチャネルの複数の画素値に変換し、前記第2グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのGチャネルの複数の画素値に変換し、前記第3グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのBチャネルの複数の画素値に変換することにより、前記検査用カラー画像データを生成するステップと、
学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力するステップと、
を有する検査方法。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得するステップと、
記憶部に記憶された複数の画素値データから1つの画素値データを選択する第1操作を受け付けるステップと、
前記第1操作により選択された前記1つの画素値データに基づいて、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す第1変換用データを作成するステップと、
前記第1変換用データを用いて、前記検査対象物を撮像することにより生成された設定用グレー画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより設定用カラー画像データを生成するステップと、
前記設定用カラー画像データを表示部に表示させるステップと、
前記設定用カラー画像データを前記表示部に表示させた後に、前記複数の画素値データから前記1つの画素値データを選択する第2操作を受け付けるステップと、
前記第2操作により選択された前記1つの画素値データに基づいて、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す第2変換用データを作成するステップと、
前記第2変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成するステップと、
学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力するステップと、
を有する検査方法。
【請求項9】
コンピュータに、
それぞれ露光時間が異なる状態で検査対象物を撮影することにより生成された第1グレースケール画像データと、第2グレースケール画像データと、第3グレースケール画像データと、を取得するステップと、
検査用カラー画像データを生成するステップであって、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、
前記第1グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのRチャネルの複数の画素値に変換し、前記第2グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのGチャネルの複数の画素値に変換し、前記第3グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのBチャネルの複数の画素値に変換することにより、前記検査用カラー画像データを生成するステップと、
学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得するステップと、
記憶部に記憶された複数の画素値データから1つの画素値データを選択する第1操作を受け付けるステップと、
前記第1操作により選択された前記1つの画素値データに基づいて、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す第1変換用データを作成するステップと、
前記第1変換用データを用いて、前記検査対象物を撮像することにより生成された設定用グレー画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより設定用カラー画像データを生成するステップと、
前記設定用カラー画像データを表示部に表示させるステップと、
前記設定用カラー画像データを前記表示部に表示させた後に、前記複数の画素値データから前記1つの画素値データを選択する第2操作を受け付けるステップと、
前記第2操作により選択された前記1つの画素値データに基づいて、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す第2変換用データを作成するステップと、
前記第2変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成するステップと、
学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮像装置によって生成されたグレースケール画像を用いて検査対象物を検査する検査装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、検査対象物の画像を機械学習モデルに入力することにより検査対象物を検査するシステムも知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-103351号公報
【文献】特開2024-67360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査対象の種別によっては、モノクロセンサにより生成されたグレースケール画像のコントラストの方がカラー画像のコントラストよりも大きく、検査に適しているという場合がある。しかしながら、モノクロセンサにより生成されたグレースケール画像は、同等の解像度のカラー画像よりもデータ量が少ないため、カラー画像に基づく検査ができる機械学習モデルにモノクロセンサにより生成されたグレースケール画像を入力した場合、カラー画像を入力する場合よりも検査の精度が低下する場合があるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、グレースケール画像を用いた検査の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の検査装置は、検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得する画像データ取得部と、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する画像データ生成部と、学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力する検査部と、を有する。
【0007】
前記画像データ取得部は、それぞれ露光時間が異なる状態で前記検査対象物を撮影することにより生成された複数の暫定グレースケール画像データが統合された前記グレースケール画像データを取得してもよい。
【0008】
前記画像データ取得部は、それぞれ露光時間が異なる状態で前記検査対象物を撮影することにより生成された第1グレースケール画像データと、第2グレースケール画像データと、第3グレースケール画像データと、を取得し、前記画像データ生成部は、前記第1グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのRチャネルの複数の画素値に変換し、前記第2グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのGチャネルの複数の画素値に変換し、前記第3グレースケール画像データに含まれる前記複数のグレースケール画素値を前記検査用カラー画像データのBチャネルの複数の画素値に変換することにより、前記検査用カラー画像データを生成してもよい。
【0009】
前記検査装置は、前記複数のグレースケール画素値に対応する前記複数のカラー画素値の設定操作を受け付ける受付部と、前記設定操作が示す前記複数のグレースケール画素値と前記複数のカラー画素値との関係に基づいて前記変換用データを作成する変換用データ作成部をさらに有してもよい。
【0010】
前記変換用データの作成に用いられる複数の画素値データを記憶する記憶部と、前記複数の画素値データから1つの画素値データを選択する操作を受け付ける受付部と、前記1つの画素値データに基づいて前記変換用データを作成する変換用データ作成部と、をさらに有してもよい。
【0011】
前記画像データ生成部は、前記複数の画素値データのうち1以上の画素値データに基づく前記変換用データを用いて、前記検査対象物を撮像することにより生成された設定用グレー画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより設定用カラー画像データを生成し、前記検査装置は、前記設定用カラー画像データを表示部に表示させる表示処理部をさらに有し、前記受付部は、前記表示処理部が前記設定用カラー画像データを前記表示部に表示させた後に、前記複数の画素値データから前記1つの画素値データを選択する操作を受け付けてもよい。
【0012】
前記検査装置は、検査対象の種別に関連付けて、前記変換用データの作成に用いられる複数の画素値データを記憶する記憶部と、検査対象の種別を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記種別に関連付けて前記記憶部に記憶された前記画素値データを選択することにより前記変換用データを作成する変換用データ作成部と、をさらに有してもよい。
【0013】
前記検査装置は、異常領域を有する前記検査対象物を撮影することにより生成された前記グレースケール画像データにおける検査対象領域と、前記検査対象領域に含まれる前記異常領域と、の指定を受け付ける受付部をさらに有し、前記画像データ生成部は、前記変換用データに基づいて、前記検査対象領域に対応する第1カラースケール画素値と、前記異常領域に対応する第2カラースケール画素値との色差が閾値以上になるように、前記複数のグレースケール画素値を前記複数のカラー画素値に変換することにより、前記検査用カラー画像データを生成してもよい。
【0014】
前記学習用カラー画像データは、例えば、学習用のグレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を前記変換用データに基づいて複数のカラー画素値に変換することにより作成されたデータである。
【0015】
本発明の第2の態様の検査方法は、コンピュータが実行する、検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得するステップと、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成するステップと、学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力するステップと、を有する。
【0016】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、検査対象物を撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得するステップと、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、前記グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成するステップと、学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに前記検査用カラー画像データを入力することにより前記機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、前記検査用カラー画像データに含まれる前記検査対象物の検査結果を出力するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グレースケール画像を用いた検査の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】検査システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】検査装置1の処理の概要を説明するための図である。
【
図4】グレースケール画素値とカラー画素値との関係の概要を示す図である。
【
図5】グレースケール画像データとグレースケール画素値との関係を示す図である。
【
図6】グレースケール画素値が変換されたカラー画素値の例を示す図である。
【
図7】カラー画素値を設定するための操作画面の一例を示す図である。
【
図8】検査装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変換用データを作成する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】複数のグレースケール画像データに基づいて1つの検査用カラー画像データを生成する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[検査システムSの概要]
図1は、検査システムSの概要を説明するための図である。検査システムSは、検査対象物Wを検査するためのシステムであり、検査装置1と撮像装置2とを有する。
図1においては、ベルトコンベアーCに載置された状態で移動する複数の検査対象物Wが示されているが、人が検査対象物Wを検査位置に設置してもよい。
【0020】
撮像装置2は、検査対象物Wを撮影することによりグレースケール画像データを生成するモノクロセンサを有するカメラ、ラインスキャナ、ラインセンサー又はエリアセンサーである。撮像装置2は、検査対象物Wの外観を示すグレースケール画像データを生成するカメラであってもよく、検査対象物Wの内部の状態を示すグレースケール画像データを生成するカメラ(例えばX線カメラ、可視光カメラ又は赤外線カメラ)であってもよい。撮像装置2は、生成したグレースケール画像データを検査装置1に送信する。
【0021】
検査装置1は、撮像装置2から受信したグレースケール画像データを解析することにより検査対象物Wに異常があるか否かを検査する装置であり、例えばコンピュータを含む。グレースケール画像データは、カラー画像データに比べてコントラスト又はエッジが強く表されることが多いので、検査対象物Wが有する汚れ、傷又は凹み等の異常箇所の検知において有利だとされている。しかしながら、画像データを解析するために用いられる機械学習モデルはカラー画像データを解析できるように構成されているにもかかわらず、グレースケール画像データのデータ量はカラー画像データのデータ量よりも少ないため、グレースケール画像データを機械学習モデルに入力する場合、機械学習モデルの性能を十分に活用できない。
【0022】
具体的には、グレースケール画像データの画素値(すなわち輝度値)は一般的に8ビットで表されるところ、カラー画像データの画素値は一般的にR(赤色)8ビット、G(緑色)8ビット、B(青色)8ビットの合計24ビットで表される。したがって、グレースケール画像データを機械学習モデルに入力する場合は、24ビットのうち16ビット分のデータが活用されないと考えられる。
【0023】
そこで、検査装置1は、所定のルールに基づいて、グレースケール画像データを検査用カラー画像データに変換し、検査用カラー画像データを機械学習モデルに入力することにより検査対象物Wを検査する。これにより、コントラスト又はエッジが強く表されるというグレースケール画像データの利点を生かしつつ、機械学習モデルの性能を最大限に活用することができるので、検査の精度を向上させることができる。
【0024】
図2は、検査装置1の処理の概要を説明するための図である。
図2(a)は、グレースケール画像データの一例の模式図である。
図2(a)における網点の領域は検査対象物Wの表面が正常な領域を示しており、斜線部分は検査対象物Wの表面に汚れが付着した領域を示している。検査対象物Wにおける正常な領域の色と汚れの色との色差が小さい場合、グレースケール画像データに基づいて汚れの検出をできないということが想定される。そこで、検査装置1は、正常な領域の色と異常な領域の色との色差ができるだけ大きくなるように、グレースケール画像データを検査用カラー画像データに変換する。
【0025】
図2(b)は、
図2(a)に示すグレースケール画像データが変換されることにより生成された検査用カラー画像データの模式図である。
図2(b)における白色の領域は例えば黄色であり、
図2(b)における黒色の領域は、黄色との色差が比較的大きい青色である。すなわち、
図2(a)における網点の領域は黄色に変換され、斜線の領域は青色に変換されている。このようなカラー画像データが機械学習モデルに入力されることで、検査の精度が向上する。
【0026】
なお、色差は、例えばLab色空間の色差図における距離により表される。複数の色の明度差が大きいほど色差が大きくなり、彩度差が大きいほど色差が大きくなる。
以下、検査装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0027】
[検査装置1の構成]
図3は、検査装置1の構成を示す図である。検査装置1は、第1通信部10と、第2通信部11と、操作部12と、表示部13と、記憶部14と、制御部15と、を有する。制御部15は、画像データ取得部151と、画像データ生成部152と、検査部153と、受付部154と、表示処理部155と、変換用データ作成部156と、を有する。
【0028】
第1通信部10は、撮像装置2からグレースケール画像データを受信するための通信インターフェースを有する。第1通信部10は、例えばUSB(Universal Serial Bus)であるが、他の通信インターフェースを有してもよい。第2通信部11は、検査対象物Wに異常があるか否かが検査された結果を外部の装置に送信するための通信インターフェースを有する。第2通信部11は、例えばLANコントローラであるが、他の通信インターフェースを有してもよい。
【0029】
操作部12は、ユーザの操作を受け付けるためのデバイスであり、例えばキーボード、マウス、又はタッチパネルである。
表示部13は、情報を表示するためのデバイスであり、例えばディスプレイである。
【0030】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを記憶する。記憶部14は、撮像装置2が生成したグレースケール画像データを一時的に記憶する。また、記憶部14は、グレースケール画像データをカラー画像データに変換するために使用される変換用データを記憶する。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムとして、検査用カラー画像データに基づいて検査対象物Wを検査するための機械学習モデルのプログラムを記憶してもよい。
【0031】
図4から
図6は、変換用データについて説明するための図である。
図4は、グレースケール画像データの画素値(以下、「グレースケール画素値」という場合がある)とカラー画像データの画素値(以下、「カラー画素値」という場合がある)との関係の概要を示す図である。変換用データは、グレースケール画素値の8ビットの値のそれぞれを、カラー画素値の24ビットの値のどの値に変換するかを規定するデータである。
図4に示されるように、グレースケール画像画素値の0から255(2
8)までの値のそれぞれは、カラー画素値の0から2
24までの値のいずれかに変換される。
【0032】
図5は、グレースケール画像データとグレースケール画素値との関係を示す図である。
図5(a)は、
図2(a)に示した検査対象物Wのグレースケール画像データであり、検査対象物Wの正常な領域Aと、汚れが付着した領域Bとが示されている。
図5(b)は、領域Aの画素値が60であり、領域Bの画素値が50であることを示している。
【0033】
図6は、
図5(b)に示したグレースケール画素値が変換されたカラー画素値の例を示す図である。
図6(a)は、
図5(b)におけるグレースケール画素値60が変換されたカラー画素値であり、R255:G255:B0の黄色に対応する。
図6(b)は、
図5(b)におけるグレースケール画素値50が変換されたカラー画素値であり、R0:G0:B255の青色に対応する。
【0034】
この場合、変換用データにおいては、グレースケール画素値60と、カラー画素値R255:G255:B0とが関連付けられている。また、グレースケール画素値50と、カラー画素値R0:G0:B255とが関連付けられている。このように変換用データが構成されていることにより、検査装置1は、機械学習モデルを用いて検査対象物Wにおける異常を検出しやすい検査用カラー画像データを生成することができる。
【0035】
図3に戻って、制御部15の構成を説明する。制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphic Processing Unit)を有する。制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、画像データ取得部151、画像データ生成部152、検査部153、受付部154、表示処理部155及び変換用データ作成部156として機能する。
【0036】
画像データ取得部151は、検査対象物Wを撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得する。画像データ取得部151は、例えば撮像装置2からグレースケール画像データを取得するが、他の装置を介してグレースケール画像データを取得してもよい。画像データ取得部151は、取得したグレースケール画像データを画像データ生成部152に入力する。
【0037】
画像データ生成部152は、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する。画像データ生成部152は、記憶部14に記憶された変換用データを読み出して、変換用データにおいて、グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値それぞれに対応するカラー画素値を特定する。画像データ生成部152は、グレースケール画像データにおける複数の画素それぞれのグレースケール画素値を、特定したカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する。
【0038】
検査部153は、画像データ生成部152が生成した検査用カラー画像データを解析することにより、検査対象物Wに異常があるか否かを検査する。具体的には、検査部153は、学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに検査用カラー画像データを入力することにより機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、検査用カラー画像データに含まれる検査対象物の検査結果を出力する。
【0039】
機械学習モデルが出力する判定結果は、例えば、検査用カラー画像データに含まれる複数の画素それぞれに関連付けて、異常がある確率を示す数値マップである。検査部153は、例えば、機械学習モデルが出力する数値マップを出力する。検査部153は、数値マップにおける数値(すなわち異常確率)が閾値以上である画素の位置を示す検査結果を出力してもよい。検査部153は、判定結果が示す確率が閾値以上である画素が所定数以上連続している領域を示す検査結果を出力してもよい。検査部153は、数値マップにおける数値が閾値以上である画素が所定数以上あることを条件として、検査対象物Wに異常があるという検査結果を出力してもよい。
【0040】
検査部153は、例えば第2通信部11を介して、検査対象物Wが正常であるか異常であるかを示す検査結果を外部の装置に出力する。検査部153は、表示処理部155を介して、検査結果を表示部13に表示させてもよい。
【0041】
機械学習モデルは、例えば記憶部14に記憶されているが、検査装置1と異なる装置に記憶されていてもよい。機械学習モデルの学習に用いられる学習用カラー画像データは、学習用のグレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を変換用データに基づいて複数のカラー画素値に変換することにより作成されたデータである。学習用のグレースケール画像データは、検査対象の異常が生じている検査対象物Wを撮影することにより生成されたグレースケール画像データである。学習用のグレースケール画像データは、正常な検査対象物Wを撮影することにより生成されたグレースケール画像データであってもよい。
【0042】
学習用グレースケール画像データは、検査対象の種別(例えば、物体検知(Object Detection)、画像全体からの分類(Classification)、ピクセル単位の領域検出(Segmentation))に関連付けられていてもよい。この場合、検査対象の種別ごとに異なる機械学習モデルが作成され、検査部153は、検査対象の種別に対応する機械学習モデルに検査用カラー画像データを入力することにより検査対象物Wを検査する。
【0043】
受付部154は、操作部12を介して、検査装置1を使用するユーザによる各種の操作を受け付ける。受付部154は、例えば、変換用データを作成するための操作、又は検査対象の種別を指定するための操作を受け付ける。
【0044】
表示処理部155は、各種の情報を表示部13に表示させる。表示処理部155は、例えば、変換用データを設定するための画面を表示部13に表示させる。
【0045】
変換用データ作成部156は、変換用データを作成する。変換用データ作成部156は、例えば、検査装置1のユーザにより行われた設定操作が示す内容に基づいて変換用データを作成する。以下、変換用データを作成する方法の複数の例を説明する。
【0046】
[変換用データの作成方法1]
受付部154は、変換用データ作成部156が変換用データを作成できるようにするために、例えば複数のグレースケール画素値に対応する複数のカラー画素値を設定するための操作を受け付ける。複数のグレースケール画素値に対応する複数のカラー画素値を設定するための操作の具体的な方法は任意である。一例として、受付部154は、表示処理部155を介して、複数のグレースケール画素値0~255に対応するカラー画素値を入力するための画面を表示部13に表示させ、複数のカラー画素値の入力をユーザから受け付ける。
【0047】
変換用データ作成部156は、受付部154が受け付けた設定操作が示す複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との関係に基づいて変換用データを作成する。変換用データ作成部156は、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との関係を示す変換用データを作成し、作成した変換用データを記憶部14に記憶させる。
【0048】
[変換用データの作成方法2]
多数のカラー画素値をユーザが入力するには長時間を要する。そこで、変換用データの作成に用いられる複数の画素値データが記憶部14に記憶されており、変換用データ作成部156は、ユーザにより複数の画素値データから選択された1つの画素値データに基づいて変換用データを作成してもよい。この場合、受付部154は、例えば複数のグレースケール画素値0~255に対応するカラー画素値を示す複数の画素値データを表示部13に表示させ、複数の画素値データから1つの画素値データを選択する操作を受け付ける。変換用データ作成部156は、選択された1つの画素値データに基づいて変換用データを作成する。
【0049】
ユーザが1つの画素値データを選択しやすくするために、表示処理部155は、複数の画素値データのうち、ユーザにより選択された画素値データに基づく変換用データを用いて画像データ生成部152が作成した設定用カラー画像データを表示部13に表示させてもよい。画像データ生成部152は、例えば、検査対象物を撮像することにより生成された設定用グレー画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより設定用カラー画像データを作成する。表示処理部155は、複数の設定用カラー画像データを同時に表示部13に表示させてもよく、ユーザの操作に応じて表示させる設定用カラー画像データを切り替えてもよい。
【0050】
受付部154は、表示処理部155が設定用カラー画像データを表示部13に表示させた後に、複数の画素値データから1つの画素値データを選択する操作を受け付ける。受付部154は、複数の設定用カラー画像データから1つの設定用カラー画像データを選択する操作を、選択された設定用カラー画像データに対応する1つの画素値データを選択する操作として受け付けてもよい。
【0051】
図7は、カラー画素値を設定するための操作画面の一例を示す図である。
図7に示す操作画面には、領域R1、領域R2及び領域R3が含まれている。
【0052】
領域R1は、検査対象物Wが写ったグレースケール画像が表示される領域である。領域R1には、例えば変換用データを作成するための操作を行ったユーザにより指定された、異常箇所が含まれるグレースケール画像が表示される。
図7の領域R1には1つのグレースケール画像が表示されているが、領域R1には複数のグレースケール画像が表示されてもよい。
【0053】
領域R2は、画素値データを選択するための領域である。領域R2には、グレースケール画素値を示すグレースケールマップGSと、複数の画素値データであるカラーマップCM(CM1、CM2、CM3、・・・)とが表示されている。グレースケールマップGSには、領域R1に表示されているグレースケール画像に含まれているグレースケール画素値が示されている。
【0054】
複数のカラーマップCMは、グレースケール画素値に対応するカラー画素値がそれぞれ異なっている。複数のカラーマップCMの右側には、いずれかのカラーマップCMを選択するためのボックスが表示されている。カラーマップCMにおけるカラー画素値は、グレースケールマップGSにおける水平方向の位置が同じ位置のグレースケール画素値に対応している。変換用データ作成部156は、ユーザにより選択されたカラーマップCMにおけるカラー画素値と、水平方向の位置が同じ位置のグレースケール画素値と、が関連付けられた変換用データを作成する。
【0055】
領域R3は、ユーザが選択したカラーマップCMに基づく変換用データを用いて、領域R1に表示されたグレースケール画像データが変換されることにより生成されたカラー画像データに基づくカラー画像が表示される領域である。ユーザは、領域R3に表示されるカラー画像を確認することにより、選択したカラーマップCMが適切であるか否かを判断することができる。選択したカラーマップCMが適切であるとユーザが判断した場合には、ユーザが「決定」を押すことにより、変換用データ作成部156が、選択されたカラーマップCMに基づく変換用データを作成する。選択したカラーマップCMが適切でないとユーザが判断した場合、ユーザは、他のカラーマップCMを選択して、選択されたカラーマップCMに基づくカラー画像を確認することができる。
【0056】
[変換用データの作成方法3]
検査対象物Wの種別又は検査の内容の種別等の検査対象の種別によって、機械学習モデルが異常を検出しやすい色が異なることが想定される。そこで、記憶部14は、検査対象の種別に関連付けて、変換用データの作成に用いられる複数の画素値データを記憶し、受付部154は、検査対象の種別を受け付けてもよい。この場合、変換用データ作成部156は、受付部154が受け付けた種別に関連付けて記憶部14に記憶された画素値データを選択することにより変換用データを作成する。
【0057】
検査対象の種別は、検査対象物Wの名称若しくは型名、検査対象物Wの形状、検査の内容、又はこれらの組み合わせにより特定される。検査の内容は、例えば表面の傷の検査、外形の検査、又は色の検査である。
【0058】
表示処理部155は、受付部154が検査対象の種別を受け付けたことに応じて、
図7に示す画面を表示部13に表示させてもよい。この場合、表示処理部155は、画素値データ選択画面(領域R2)に、検査対象の種別に関連付けられた1以上の画素値データである1以上のカラーマップCMを表示する。このように、検査対象の種別によって異なる画素値データを選択できるようにすることで、画像データ生成部152が検査対象の種別に適した検査用カラー画像データを生成できるので、検査の精度が向上する。
【0059】
[変換用データの作成方法4]
ユーザによる設定操作をできるだけ少なくするために、画像データ生成部152は、ユーザによる画素値の入力操作又は画素値データ(カラーマップ)の選択操作によることなく、変換用データを作成してもよい。画像データ生成部152は、例えば、グレースケール画像に含まれる正常な領域と異常な領域との色差ができるだけ大きくなるようにするための変換用データを作成する。
【0060】
このようにするために、受付部154は、異常領域を有する検査対象物Wを撮影することにより生成されたグレースケール画像データにおける検査対象領域と、当該検査対象領域に含まれる異常領域と、の指定を受け付ける。受付部154は、例えば、
図7の領域R1に示したような設定用グレースケール画像を表示部13に表示するよう表示処理部155に指示し、表示された設定用グレースケール画像において検査対象領域Aと異常領域Bとを指定するための操作を受け付ける。
【0061】
変換用データ作成部156は、検査対象領域のグレースケール画素値に対応する第1カラースケール画素値と、異常領域のグレースケール画素値に対応する第2カラースケール画素値との色差が閾値以上になるような変換用データを作成する。一例として、
図7に示した設定用グレースケール画像における検査対象領域Aのカラー画素値が黄色になり、異常領域Bのカラー画素値が青色になるような変換用データを作成する。
【0062】
画像データ生成部152は、作成された変換用データに基づいて、検査対象領域に対応する第1カラースケール画素値と、異常領域に対応する第2カラースケール画素値との色差が閾値以上になるように、複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する。画像データ生成部152がこのような検査用カラー画像データを生成することにより、グレースケール画像データに含まれる正常な領域と異常な領域とに対応する検査用カラー画像データの色差が閾値よりも大きくなるので、検査の精度が向上する。
【0063】
[検査装置1における処理の流れ]
図8は、検査装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、検査対象物Wの検査をする指示を検査装置1が受けた時点から開始している。
【0064】
まず、画像データ取得部151は撮像装置2からグレースケール画像データを取得する(S1)。画像データ生成部152は、変換用データに基づいてグレースケール画像データを検査用カラー画像データに変換する(S2)。検査部153は、検査用カラー画像データを機械学習モデルに入力し(S3)、機械学習モデルから判定結果を取得する。検査部153は、取得した判定結果を出力する(S4)。
【0065】
図9は、変換用データを作成する処理の流れを示すフローチャートである。まず、画像データ取得部151は、設定用グレースケール画像データを取得する(S21)。設定用グレースケール画像データは、例えば異常箇所がある検査対象物Wを撮影することにより生成されたグレースケール画像データである。
【0066】
表示処理部155は、例えば
図7に示したような態様で設定用グレースケール画像を表示させる(S22)。この状態で、受付部154はグレースケール画像データにおける異常領域(例えば
図7における領域B)の設定を受け付ける(S23)。
【0067】
続いて、変換用データ作成部156は、設定された異常領域のカラー画素値と、他の領域のカラー画素値との色差ができるだけ大きくなるような暫定変換用データを作成する(S24)。画像データ生成部152は、暫定変換用データを用いて設定用グレースケール画像データをカラー画像データに変換し(S25)、表示処理部155はカラー画像データを表示部13に表示させる(S26)。
【0068】
表示されたカラー画像データに対応する暫定変換用データを使用することを示す操作を受付部154が受け付けた場合(S27においてYES)、変換用データ作成部156は、暫定変換用データを変換用データに決定し(S28)、決定した変換用データを記憶部14に記憶させる。表示されたカラー画像データに対応する暫定変換用データを使用しないことを示す操作を受付部154が受け付けた場合(S27においてNO)、S24に戻って変換用データ作成部156は他の暫定変換用データを作成し、検査装置1はS24からS27までの処理を繰り返す。
【0069】
[複数のグレースケール画像を利用する例]
以上の説明においては、検査装置1が1つのグレースケール画像データを用いて検査対象物Wを検査する例を説明したが、検査装置1は、複数のグレースケール画像データを用いて検査対象物Wを検査してもよい。複数のグレースケール画像データは、1つの検査対象物Wが複数回にわたって撮影されることにより生成されたグレースケール画像データ、又は複数の撮像装置2によって検査対象物Wが撮影されることにより生成されたグレースケール画像データである。
【0070】
この場合、画像データ生成部152は、例えば、複数のグレースケール画像データに基づいて複数の検査用カラー画像データを生成し、検査部153は、複数の検査用カラー画像データを順次機械学習モデルに入力することにより検査対象物Wを検査する。検査部153は、複数の検査用カラー画像データのうち1以上のカラー画像データに異常がある場合に、検査対象物Wに異常があると判定する。このように複数のグレースケール画像データを用いて検査装置1が検査対象物Wを検査することで、検査の精度が向上する。
【0071】
検査対象物Wに凹凸がある場合、特定の露光時間で撮影するだけでは明瞭に写らない領域が生じ得る。そこで、撮像装置2は、それぞれ異なる露光時間で検査対象物Wを撮影することにより複数のグレースケール画像データを生成し、検査装置1は、このようにして生成された複数のグレースケール画像データを用いて検査対象物Wを検査してもよい。
【0072】
ところで、画像データ生成部152が複数のグレースケール画像データに基づいて複数の検査用カラー画像データを生成し、検査部153が複数の検査用カラー画像データのそれぞれを機械学習モデルに入力すると、検査の時間が長くなってしまう。そこで、画像データ生成部152は、複数のグレースケール画像データに基づいて1つの検査用カラー画像データを生成してもよい。
【0073】
一例として、画像データ取得部151は、それぞれ露光時間が異なる状態で検査対象物Wを撮影することにより生成された複数の暫定グレースケール画像データが統合されたグレースケール画像データを取得する。画像データ取得部151は、取得した複数の暫定グレースケール画像データを統合して、1つのグレースケール画像データを生成してもよい。このグレースケール画像データは、検査対象物Wにおける複数の領域のそれぞれに対して、グレースケール画素値が黒色と白色との間の所定の範囲内になっている暫定グレースケール画像データを選択し、選択した暫定グレースケール画像データのグレースケール画素値を各画素に割り当てることにより構成されている。所定の領域内でグレースケール画素値が黒色と白色との間の所定の範囲内になっている暫定グレースケール画像データは、当該領域内で黒飛び又は白飛びしていない画像データである。
【0074】
画像データ生成部152が、このようなグレースケール画像データに基づいて検査用カラー画像データを生成し、検査部153が当該検査用カラー画像データを用いて検査対象物Wを検査することで、検査対象物Wに凹凸がある場合の検査の精度が向上する。
【0075】
複数の暫定グレースケール画像データを統合して1つのグレースケール画像データを生成する場合、選択されなかった暫定グレースケール画像データに含まれる情報が検査に使用されない。そこで、画像データ生成部152は、複数の暫定グレースケール画像データのグレースケール画素値を用いて検査用カラー画像データを生成してもよい。
【0076】
図10は、複数のグレースケール画像データに基づいて1つの検査用カラー画像データを生成する方法を説明するための図である。画像データ取得部151は、それぞれ露光時間が異なる状態で検査対象物Wを撮影することにより生成された第1グレースケール画像データと、第2グレースケール画像データと、第3グレースケール画像データと、を取得する。
【0077】
画像データ生成部152は、第1グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を検査用カラー画像データのRチャネルの複数の画素値に変換する。同様に、画像データ生成部152は、第2グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を検査用カラー画像データのGチャネルの複数の画素値に変換し、第3グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を検査用カラー画像データのBチャネルの複数の画素値に変換する。画像データ生成部152は、このように複数のグレースケール画像データのグレースケール画素値を、RGBそれぞれのチャネルの画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する。
【0078】
すなわち、画像データ生成部152は、3つの8ビットグレースケール画像データのそれぞれを、検査用カラー画像データにおける赤色(R)に対応する8ビットデータ、緑色(G)に対応する8ビットデータ、青色(B)に対応する8ビットデータに割り当てることを示す変換用データに基づいて、3つのグレースケール画像データを統合する。
【0079】
このようにして生成された検査用カラー画像データは、それぞれ露光時間が異なる状態で撮影された3つのグレースケール画像データに含まれている特徴が表れたカラー画像データになっている。したがって、検査部153が、この検査用カラー画像データに基づいて検査対象物Wを検査することで、1枚のグレースケール画像データに基づく検査を行う場合に比べて検査の精度が向上する。
【0080】
[検査装置1による効果]
以上説明したように、画像データ生成部152は、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する。そして、検査部153は、生成された検査用カラー画像データを、カラー画像データの解析が可能な機械学習モデルに入力することにより検査対象物Wの異常の有無を検査する。検査装置1がこのように構成されていることで、コントラスト又はエッジが強く表されるというモノクロセンサで取得されたグレースケール画像データの利点を生かしつつ、機械学習モデルの性能を最大限に活用することができるので、検査の精度を向上させることができる。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【0082】
例えば、以上の説明においては、機械学習モデルが検査対象物Wの異常を検知する場合を例示したが、機械学習モデルが物体を検知する機能(Object Detection)を有していてもよく、画像全体を分類する機能(Classification)や、ピクセル単位の領域を検出する機能(Segmentation)を有する場合にも本発明を適用することができる。また、グレースケール画像データは、撮像装置2により生成されたデータに限らず、生成AIにより生成された画像データであってもよく、正常品を撮影して生成された画像データに画像編集ソフトで異常箇所が付加された画像データであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 検査装置
2 撮像装置
10 第1通信部
11 第2通信部
12 操作部
13 表示部
14 記憶部
15 制御部
151 画像データ取得部
152 画像データ生成部
153 検査部
154 受付部
155 表示処理部
156 変換用データ作成部
【要約】
【課題】グレースケール画像を用いた検査の精度を向上させる。
【解決手段】検査装置1は、検査対象物Wを撮影することにより生成されたグレースケール画像データを取得する画像データ取得部151と、複数のグレースケール画素値と複数のカラー画素値との対応関係を示す変換用データに基づいて、グレースケール画像データに含まれる複数のグレースケール画素値を複数のカラー画素値に変換することにより、検査用カラー画像データを生成する画像データ生成部152と、学習用カラー画像データを用いて学習した機械学習モデルに検査用カラー画像データを入力することにより機械学習モデルが出力した判定結果に基づいて、検査用カラー画像データに含まれる検査対象物の検査結果を出力する検査部153と、を有する。
【選択図】
図3