(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】可溶性および免疫反応性のフラビウイルスNS1ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/18 20060101AFI20241017BHJP
C07K 14/245 20060101ALI20241017BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241017BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241017BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241017BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241017BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20241017BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20241017BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241017BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
C07K14/18 ZNA
C07K14/245
C07K19/00
C12P21/02 C
G01N33/53 N
G01N33/569 L
C12N15/31
C12N15/40
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2019556820
(86)(22)【出願日】2018-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018060330
(87)【国際公開番号】W WO2018197406
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ファーツ,エルケ
(72)【発明者】
【氏名】リーデル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュンヒ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】タバレス,グロリア
(72)【発明者】
【氏名】グレック,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】リュブケ,ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】ベンツ,ユリアーネ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】小金井 悟
【審判官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】Euro Surveill.,2016年,Vol.21,No.16,pp.9-12
【文献】Euro Surveill.,2016年,Vol.21,No.50,pp.13-28
【文献】EBioMedicine,2017年,Vol.16,pp.136-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離された生体試料中のフラビウイルス種に対する抗体を検出するのに適したポリペプチドであって、配列番号5、7、9、11、13、15、17および19からなる群から選択されるポリペプチドから本質的になるフラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列を含み、前記フラビウイルスのNS1βラダードメイン由来のアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在せず、
前記フラビウイルス種が、西ナイルウイルス(WNV)、デングウイルス1~4型(DENV1~4)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、黄熱病ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)からなる群から選択される、
ポリペプチド。
【請求項2】
前記フラビウイルスのさらなるアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在しない、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドがシャペロンに融合している、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記シャペロンが、SlyD、SlpA、FkpAおよびSkpからなる群から選択される、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号28(DENV1)、29(DENV2)、30(DENV3)および31(DENV4)からなる群から選択される、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
可溶性および免疫反応性のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを産生する方法であって、
a)請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップと、
b)前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを発現させるステップと、
c)前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを精製するステップと
を含む、方法。
【請求項7】
分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法であって、前記第1のフラビウイルス種の請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドが前記抗フラビウイルス抗体の捕捉試薬および/または結合パートナーとして使用される、方法。
【請求項8】
分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法であって、
a)前記第1のフラビウイルス種の請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドと体液試料を混合することにより免疫反応混合物を形成するステップと、
b)前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドに対する体液試料中に存在する抗体を、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと免疫反応させて免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持するステップと、
c)前記免疫反応生成物のいずれかの存在および/または濃度を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
検出された抗体がIgGまたはIgM抗体である、請求項7または8に記載の分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【請求項10】
前記第1のフラビウイルス種がデングウイルス1~4型である、請求項7から9のいずれかに記載の分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【請求項11】
抗フラビウイルス抗体を検出するためのインビト
ロ試験における、請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドの使用。
【請求項12】
請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドを含む、抗フラビウイルス抗体を検出するための試薬キット。
【請求項13】
個別の容器にまたは単一の容器ユニットの個別の区画に、少なくともアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された微粒子、およびビオチンに共有結合された請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドを含む、請求項12に記載の試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
世界保健機構によれば、フラビウイルス、例えばジカウイルス、デングウイルスなどによって伝播される熱帯病は、世界で蔓延し続けている(Olliaroら、PLOS Neglected Tropical Diseases Feb 1、2018、1~13)。フラビウイルスは、例えば、ジカウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、黄熱病ウイルスおよび日本脳炎ウイルスを含む、フラビウイルスファミリーの属である。フラビウイルスは、昆虫、蚊またはマダニなどの媒介節足動物、例えばエジプトおよびアジアの蚊の系統であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)およびヒトスジシマカ(Aedes albopictus)によって感染され、したがって、アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)として分類される。
【0002】
他の点で健康な人へのフラビウイルスによる感染は、発熱、疲労、発疹、体の痛みなどの軽度の症状をもたらし得る。しかし、その人の一般的な健康状態および免疫状態によって、感染はまた、より重篤な、時には致死的な後遺症に至る場合がある。軽度の症状はある程度の類似性を共有するが、重篤な合併症は、それぞれのフラビウイルスに応じて極めて異なる。
【0003】
ジカウイルスは、妊婦から子宮内の胎児へと感染する可能性があり、胎児における重篤な脳形成異常および小頭症などの欠陥を引き起こすことが疑われている。小頭症(「小さな頭」のギリシャ語に由来する)は、新生児の脳が適切に発達しない症状であり、したがって、その頭部は通常よりもサイズが小さい。成人における感染は、いわゆるギランバレー症候群(末梢神経系を攻撃する免疫系により引き起こされる筋力低下)につながり得る。
【0004】
デングウイルスによる感染は、特に感染が適時に認識されず早急な支持療法が受けられない場合、出血熱などの医学的合併症および死亡を引き起こす可能性がある。現在までに、4つの型のデングウイルス(デングウイルス1~4)が知られており、1つの型のデング熱に感染しても、残りの型への免疫は得られない。通常、デング熱による二次感染は一次感染よりも重篤になり、ワクチン接種を受けた人、特に子供は、デング熱感染時に深刻な医学的合併症に直面することが多い。
【0005】
西ナイルウイルスによる感染は、脳炎(脳の炎症)または髄膜炎(脳および脊髄を囲む膜の炎症)に至る中枢神経系に影響し、ポリオに似た長期に及ぶ麻痺を引き起こし得る。
いくつかのフラビウイルス感染に対するワクチンは、ジカウイルスに対してだけでなく、デング熱、西ナイルウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱ウイルスおよび日本脳炎ウイルスに利用可能である。しかし、ワクチン接種は必ずしも有効であるとは限らず、例えば、二次的なデング熱感染のような場合、重篤な合併症を招き得る(概説については、CollinsおよびMetz、Clin Therap、2017 Vol. 39、8p. 1519~1536を参照)。感染後の効果的な医学的処置は不十分である。適時に支持療法を受けるためには、患者がフラビウイルスに感染したかどうか、特にどのような種類のフラビウイルスに感染したかを知ることが大事である。したがって、フラビウイルスによる、特にジカ、デング熱、西ナイルウイルスのいずれかによる患者の感染を確実に確認する、または除外するために、高感度で特異的な血清学的診断法を開発することが求められている。特に、高度に特異的なイムノアッセイが、複数のフラビウイルス感染の罹患率が高い地域において非常に必要とされている。もちろん、例えば、過去に他のフラビウイルス感染、例えばデング熱または黄熱病などに罹患し、その血清がデング熱および黄熱病ウイルスの主要免疫原に対するポリクローナル抗体によって特徴付けられる個体では最近のジカ感染を確実に診断することは非常に難しい仕事である。
【0006】
2016年以来、ジカウイルスNS1抗原に対する抗体を検出するいくつかのELISA系イムノアッセイが市販されている(例えば、Huzlyら、Euro Surveill. 2016; 21 (16) pii=30203、1~4)。しかし、これらのアッセイは、関連するウイルス、例えばデングウイルス、および西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス(FSME)または日本脳炎ウイルスのようなフラビウイルス科に属する他のアルボウイルスに対してもともと生成された抗体と交差反応することが疑われている。この交差反応性は、偽陽性結果および患者の免疫状態の誤った解釈をもたらす可能性があり、ジカNS1(非構造抗原1)と他のフラビウイルス、例えば西ナイルウイルスおよびデングウイルスの相当物との構造相同性および配列相同性によるものと思われる(Hilgenfeld 27 Oct 2016、Embo J. 1~3)。2015/2016年のブラジルでのジカ流行について報告された発生率および罹患率のデータは、その時に使用されたイムノアッセイの限定された特異性のため過大視バイアスの欠点を有していたと考えられる。罹患率および発生率のデータを評価し流行発生の客観的リスクを評価するためには、明確な診断が必要条件として不可欠である。特異性の不十分な血清学的アッセイは流行の程度を過度に強調するため、当局だけでなく、動揺し不安のある個人によってもパニックに駆られた決断を招く。例えば、ブラジルにおける中絶の数は、真のまたは表向きのジカ流行に対する中間報告後に著しく増加したことが報告されている。
【0007】
ELISA原理に基づくデングウイルスおよび西ナイルウイルスのIgGおよびIgMイムノアッセイは市販されている。しかし、既知のイムノアッセイは、明らかに、一方では免疫反応性が高い(すなわち、フラビウイルス感染の免疫原として反応性が高く、免疫応答の過程で産生された免疫グロブリンの検出用の抗原として非常に適する)が、他方では、他のフラビウイルスに対してもともと生成された抗体と交差反応する傾向がある完全長NS1抗原を使用している。
【0008】
西ナイルウイルスおよびデングウイルス由来の完全長グリコシル化NS1の結晶構造は高解像度で解明されており、異なるドメインとかなり複雑なタンパク質トポロジーが判明している(Akeyら、Science (2014; 343 (6173): 881~885)。最近、ジカウイルス非構造タンパク質1(NS1)のC末端断片(アミノ酸残基172-352)の結晶構造が公開され、head-to-head型のダイマーが明らかになり、NS1のオリゴマーの特徴が確認された(Songら、Nature Struct. Mol. Biol. 2016 (23) 5、 456~459)。さらに、完全長ジカウイルスNS1の完全三次元構造がBrownら、Nature Struct. Mol. Biol. 2016 (23) 9、 865~868により公開され、NS1構造がさらに詳細に説明されている。したがって、NS1は、そのオリゴマーの状態、そのグリコシル化パターンおよびシステイン残基のその豊富な量により、非常に複雑な複合タンパク質であることがわかる。さらに、特にジカウイルス、デングウイルスおよび西ナイルウイルスを診断するための専用のフラビウイルス抗原に関する刊行物は少なく、個々のフラビウイルス抗原に特有であり、意図したウイルスと関連するフラビウイルスとを明快に識別することができる線状または立体構造のB細胞エピトープに関する信頼性のある情報はこれまで利用することができなかった。
【0009】
国際特許出願WO2017/144173およびWO2017/144173は、352アミノ酸の完全長ジカNS1抗原の変異体を開示し、いくつかの必須エピトープを列挙しており、NS1抗原のC末端部分のβラダードメインエピトープ(322位から326位)が反応性にとって不可欠であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の根底にある問題は、特定のフラビウイルス、特にジカウイルス、デングウイルスおよび西ナイルウイルスに対する抗体を検出する従来の利用可能なイムノアッセイでの限定された特異性である。この問題は、特許請求の範囲に明示した本発明によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、分離された生体試料中のフラビウイルスに対する抗体を検出するのに適したポリペプチドであって、フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列を含み、前記フラビウイルスのNS1βラダードメイン由来のアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在しない、ポリペプチドに関する。一実施形態において、前記フラビウイルスのさらなるアミノ酸配列は、前記ポリペプチド中に存在しない。一実施形態において、前記フラビウイルスは、ジカウイルス(ZIKV)、西ナイルウイルス(WNV)、デングウイルス1~4型(DENV1~4)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、黄熱病ウイルス(YFV)および日本脳炎ウイルス(JEV)からなる群から選択される。本発明はまた、前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的ポリペプチドを産生する方法、フラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法、特に少なくとも第2または複数のフラビウイルスに対する抗体の存在下で第1のフラビウイルス種を検出する方法、抗体を検出するための前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的ポリペプチドの使用、並びに、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む前記フラビウイルス抗体を検出するための試薬キットに関する。
【0012】
開示したアミノ酸配列の説明:
成熟NS1タンパク質は、352個のアミノ酸残基(NS1、1-352)を含む。NS1タンパク質内で、ウイングドメインは151個のアミノ酸残基を含み、NS1アミノ酸領域30-180にわたる。したがって、ウイングドメイン位置(1-151)は、29アミノ酸位置を加えることによりNS1ナンバリングへと簡単に変わる。逆に、NS1アミノ酸位置は、29アミノ酸位置を差し引くことによりウイングドメインナンバリングへと簡単に変わる;aa1(ウイング)=aa30(NS1)、aa2(ウイング)=aa31(NS1)、aa3(ウイング)=aa32(NS1)など。同様に、βラダードメイン位置(1-162)は、NS1位置191-352がβラダードメインに相当するので、190アミノ酸位置を加えることによりNS1ナンバリングへと簡単に変わる。
【0013】
配列番号1、179位のX=AまたはSまたはCを有するジカウイルスNS1ウイングドメインaa30-180
DRYKYHPDSP RRLAAAVKQA WEEGICGISS VSRMENIMWK SVEGELNAIL EENGVQLTVV VGSVKNPMWR GPQRLPVPVN ELPHGWKAWG KSYFVRAAKT NNSFVVDGDT LKECPLKHRA WNSFLVEDHG FGVFHTSVWL KVREDYSLEX D
配列番号2、C55、C143、C179Aを有するジカウイルスNS1ウイングドメインaa30-180
DRYKYHPDSP RRLAAAVKQA WEEGICGISS VSRMENIMWK SVEGELNAIL EENGVQLTVV VGSVKNPMWR GPQRLPVPVN ELPHGWKAWG KSYFVRAAKT NNSFVVDGDT LKECPLKHRA WNSFLVEDHG FGVFHTSVWL KVREDYSLEA D
配列番号3、ジカウイルスNS1の完全長aa1-352;またこの配列は、MR 766株、UniProt ID W8Q7Q3としても公開されている;完全長ジカ前駆体ポリタンパク質内の対応するナンバリングはaa795-1146である
DVGCSVDFSK RETRCGTGVF IYNDVEAWRD RYKYHPDSPR RLAAAVKQAW EEGICGISSV
SRMENIMWKS VEGELNAILE ENGVQLTVVV GSVKNPMWRG PQRLPVPVNG LPHGWKAWGK
SYFVRAAKTN NSFVVDGDTL KECPLKHRAW NSFLVEDHGF GVFHTSVWLK VREDYSLECD
PAVIGTAVKG REAAHSDLGY WIESEKNDTW RLKRAHLIEM KTCEWPKSHT LWTDGVEESD
LIIPKSLAGP LSHHNTREGY RTQVKGPWHS EELEIRFEEC PGTKVHVEET CGTRGPSLRS
TTASGRVIEE WCCRECTMPP LSFRAKDGCW YGMEIRPRKE PESNLVRSMV TA
配列番号4、ジカウイルスNS1 βラダードメインaa191-352
REAAHSDLGY WIESEKNDTW RLKRAHLIEM KTCEWPKSHT LWTDGVEESD LIIPKSLAGP
LSHHNTREGY RTQVKGPWHS EELEIRFEEC PGTKVHVEET CGTRGPSLRS TTASGRVIEE
WCCRECTMPP LSFRAKDGCW YGMEIRPRKE PESNLVRSMV TA
配列番号5、UniProt ID P14336;ヨーロッパ亜型Neudoerfl株によるダニ媒介脳炎(FSME)ウイルスNS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
DNYAYYPETP GALASAIKET FEEGSCGVVP QNRLEMAMWR SSVTELNLAL AEGEANLTVV
VDKFDPTDYR GGVPGLLKKG KDIKVSWKSW GHSMIWSIPE APRRFMVGTE GQSECPLERR
KTGVFTVAEF GVGLRTKVFL DFRQEPTHEX D
配列番号6:ダニ媒介脳炎(FSME)ウイルスNS1完全長aa1-352;またこの配列はヨーロッパ亜型Neudoerfl株、UniProt ID P14336として公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングはaa777-1128である。
DVGCAVDTER MELRCGEGLV VWREVSEWYD NYAYYPETPG ALASAIKETF EEGSCGVVPQ
NRLEMAMWRS SVTELNLALA EGEANLTVVV DKFDPTDYRG GVPGLLKKGK DIKVSWKSWG
HSMIWSIPEA PRRFMVGTEG QSECPLERRK TGVFTVAEFG VGLRTKVFLD FRQEPTHECD
TGVMGAAVKN GMAIHTDQSL WMRSMKNDTG TYIVELLVTD LRNCSWPASH TIDNADVVDS
ELFLPASLAG PRSWYNRIPG YSEQVKGPWK YTPIRVIREE CPGTTVTINA KCDKRGASVR
STTESGKVIP EWCCRACTMP PVTFRTGTDC WYAMEIRPVH DQGGLVRSMV VA
配列番号7、デングウイルス1型NS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
EQYKFQADSP KRLSAAIGKA WEEGVCGIRS ATRLENIMWK QISNELNHIL LENDMKFTVV VGDVAGILAQ GKKMIRPQPM EHKYSWKSWG KAKIIGADVQ NTTFIIDGPN TPECPDDQRA WNIWEVEDYG FGIFTTNIWL KLRDSYTQVXD
配列番号8、デングウイルス1型NS1完全長aa1-352;またこの配列はUniProt ID W8FUV0の下で公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングはaa776-1127である。
DSGCVINWKG RELKCGSGIF VTNEVHTWTE QYKFQADSPK RLSAAIGKAW EEGVCGIRSA
TRLENIMWKQ ISNELNHILL ENGMKFTVVV GEVNGILAQG KKMIRPQPME HKYSWKSWGK
AKVIGADVQN TTFIIDGPNT PECPDDQRAW NIWEVEDYGF GIFTTNIWLK LRDSYTQVCD
HRLMSAAIKD SKAVHADMGY WIESEKNETW KLARASFIEV KTCIWPKSHT LWSNGVLESE
MIIPKIYGGP ISQHNYRPGY FTQTAGPWHL GKLELDFELC EGTTVVVDEH CGNRGPSLRT
TTVTGKIIHE WCCRSCTLPP LRFKGEDGCW YGMEIRPVKE KEENLVKSMV SA
配列番号9、デングウイルス2型NS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
EQYKFQPESP SKLASAIQKA HEEGICGIRS VTRLENLMWK QITPELNHIL SENEVKLTIM TGDIKGIMQA GKRSLRPQPT ELKYSWKTWG KAKMLSTESH NQTFLIDGPE TAECPNTNRA WNSLEVEDYG FGVFTTNIWL KLKEKQDVFX D
配列番号10、デングウイルス2型NS1完全長aa1-352;またこの配列はUniProt ID P29990によるタイ/16881/1984株として公開されており、完全長前駆体内の対応するナンバリングはaa776-1127である。
DSGCVVSWKN KELKCGSGIF ITDNVHTWTE QYKFQPESPS KLASAIQKAH EEGICGIRSV
TRLENLMWKQ ITPELNHILS ENEVKLTIMT GDIKGIMQAG KRSLRPQPTE LKYSWKTWGK
AKMLSTESHN QTFLIDGPET AECPNTNRAW NSLEVEDYGF GVFTTNIWLK LKEKQDVFCD
SKLMSAAIKD NRAVHADMGY WIESALNDTW KIEKASFIEV KNCHWPKSHT LWSNGVLESE
MIIPKNLAGP VSQHNYRPGY HTQITGPWHL GKLEMDFDFC DGTTVVVTED CGNRGPSLRT
TTASGKLITE WCCRSCTLPP LRYRGEDGCW YGMEIRPLKE KEENLVNSLV TA
配列番号11、デングウイルス3型NS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
EQYKFQADSP KRLATAIAGA WENGVCGIRS TTRMENLLWK QIANELNYIL WENNIKLTVV VGDIIGILEQ GKRTLTPQPM ELKYSWKTWG KAKIVTAETQ NSSFIIDGPN TPECPNASRA WNVWEVEDYG FGVFTTNIWL KLREMYSQLXD
配列番号12、デングウイルス3型NS1完全長aa1-352;またこの配列はUniProt ID W8FRG8の下で公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングは、aa774-1125である。
DMGCVINWKG KELKCGSGIF VTNEVHTWTE QYKFQADSPK RLATAIAGAW ENGVCGIRST
TRMENLLWRQ IANELNYILW ENNIKLTVVV GDIIGILEQG KRTLTPQPME LKYSWKTWGK
AKIVTAETQN SSFIIDGPNT PECPNASRAW NVWEVEDYGF GVFTTNIWLK LREMYSQLCD
HRLMSAAVKD ERAVHADMGY WIESQKNGSW KLEKASLIEV KTCTWPKSHT LWSNGVLESD
MIIPKSLAGP ISQHNYRPGY HTQTAGPWHL GKLELDFNYC EGTTVVITEN CGTRGPSLRT
TTVSGKLIHE WCCRSCTLPP LRYMGEDGCW YGMEIRPINE KEENMVKSLV SA
配列番号13、デングウイルス4型NS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
EQYKFQPESP ARLASAILNA HKDGVCGIRS TTRLENIMWK QITNELNYVL WEGGHDLTVV AGDVKGVLTK GKRALTPPVN DLKYSWKTWG KAKIFTPEAR NSTFLIDGPD TSECPNERRA WNFFEVEDYG FGMFTTNIWM KFREGSSEVXD
配列番号14、デングウイルス4型NS1完全長aa1-352;またこの配列は、フィリピン/H241/1956株、UniProt ID Q58HT7としても公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングは、aa775-1126である。
DTGCAVSWSG KELKCGSGIF VIDNVHTWTE QYKFQPESPA RLASAILNAH EDGVCGIRST
TRLENIMWKQ ITNELNYVLW EGGHDLTVVA GDVKGVLSKG KRALAPPVND LKYSWKTWGK
AKIFTPEAKN STFLIDGPDT SECPNERRAW NFLEVEDYGF GMFTTNIWMK FREGSSEVCD
HRLMSAAIKD QKAVHADMGY WIESSKNQTW QIEKASLIEV KTCLWPKTHT LWSNGVLESQ
MLIPKAYAGP FSQHNYRQGY ATQTVGPWHL GKLEIDFGEC PGTTVTIQED CDHRGPSLRT
TTASGKLVTQ WCCRSCTMPP LRFLGEDGCW YGMEIRPLSE KEENMVKSQV SA
配列番号15、西ナイルウイルスNS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
DRYKFYPETP QGLAKIIQKA HAEGVCGLRS VSRLEHQMWE AIKDELNTLL KENGVDLSVV VEKQNGMYKA APKRLAATTE KLEMGWKAWG KSIIFAPELA NNTFVIDGPE TEECPTANRA WNSMEVEDFG FGLTSTRMFL RIRETNTTEXD
配列番号16、西ナイルウイルスNS1完全長aa1-352;またこの配列はUniProt ID P06935の下で公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングは、aa788-1139である。
DTGCAIDIGR QELRCGSGVF IHNDVEAWMD RYKFYPETPQ GLAKIIQKAH AEGVCGLRSV
SRLEHQMWEA IKDELNTLLK ENGVDLSVVV EKQNGMYKAA PKRLAATTEK LEMGWKAWGK
SIIFAPELAN NTFVIDGPET EECPTANRAW NSMEVEDFGF GLTSTRMFLR IRETNTTECD
SKIIGTAVKN NMAVHSDLSY WIESGLNDTW KLERAVLGEV KSCTWPETHT LWGDGVLESD
LIIPITLAGP RSNHNRRPGY KTQNQGPWDE GRVEIDFDYC PGTTVTISDS CEHRGPAART
TTESGKLITD WCCRSCTLPP LRFQTENGCW YGMEIRPTRH DEKTLVQSRV NA
配列番号17、黄熱ウイルスNS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
NKYSYYPEDP VKLASIVKAS FEEGKCGLNS VDSLEHEMWR SRADEINAIF EENEVDISVV
VQDPKNVYQR GTHPFSRIRD GLQYGWKTWG KNLVFSPGRK NGSFIIDGKS RKECPFSNRV
WNSFQIEEFG TGVFTTRVYM DAVFEYTIDX D
配列番号18、黄熱ウイルスNS1完全長aa1-352;またこの配列は、17Dワクチン株、UniProt ID P03314として公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングは、aa779-1130である。
DQGCAINFGK RELKCGDGIF IFRDSDDWLN KYSYYPEDPV KLASIVKASF EEGKCGLNSV
DSLEHEMWRS RADEINAIFE ENEVDISVVV QDPKNVYQRG THPFSRIRDG LQYGWKTWGK
NLVFSPGRKN GSFIIDGKSR KECPFSNRVW NSFQIEEFGT GVFTTRVYMD AVFEYTIDCD
GSILGAAVNG KKSAHGSPTF WMGSHEVNGT WMIHTLEALD YKECEWPLTH TIGTSVEESE
MFMPRSIGGP VSSHNHIPGY KVQTNGPWMQ VPLEVKREAC PGTSVIIDGN CDGRGKSTRS
TTDSGKVIPE WCCRSCTMPP VSFHGSDGCW YPMEIRPRKT HESHLVRSWV TA
配列番号19、日本脳炎ウイルスNS1ウイングドメインaa30-180;X=AまたはCまたはS
DRYKYLPETP RSLAKIVHKA HKEGVCGVRS VTRLEHQMWE AVRDELNVLL KENAVDLSVV
VNKPVGRYRS APKRLSMTQE KFEMGWKAWG KSILFAPELA NSTFVVDGPE TKECPDEHRA
WNSMQIEDFG FGITSTRVWL KIREESTDEX D
配列番号20、日本脳炎ウイルスNS1完全長aa1-352;またこの配列はUniProt ID Q9YJ16で公開されている;完全長前駆体内の対応するナンバリングは、aa795-1146である。
DTGCAIDITR KEMRCGSGIF VHNDVEAWVD RYKYLPETPR SLAKIVHKAH KEGVCGVRSV
TRLEHQMWEA VRDELNVLLK ENAVDLSVVV NKPVGRYRSA PKRLSMTQEK FEMGWKAWGK
SILFAPELAN STFVVDGPET KECPDEHRAW NSMQIEDFGF GITSTRVWLK IREESTDECD
GAIIGTAVKG HVAVHSDLSY WIESRYNDTW KLERAVFGEV KSCTWPETHT LWGDGVEESE
LIIPHTIAGP KSKHNRREGY KTQNQGPWDE NGIVLDFDYC PGTKVTITED CGKRGPSVRT
TTDSGKLITD WCCRSCSLPP LRFRTENGCW YGMEIRPVRH DEATLVRSQV DA
配列番号21、タンデムの大腸菌SlyDとジカウイルスNS1ウイングドメインaa30-180の融合タンパク質
MKVAKDLVVS LAYQVRTEDG VLVDESPVSA PLDYLHGHGS LISGLETALE GHEVGDKFDV
AVGANDAYGQ YDENLVQRVP KDVFMGVDEL QVGMRFLAET DQGPVPVEIT AVEDDHVVVD
GNHMLAGQNL KFNVEVVAIR EATEEELAHG HVHGAHDHHH DHDHDGGGSG GGSGGGSGGG
SGGGSGGGKV AKDLVVSLAY QVRTEDGVLV DESPVSAPLD YLHGHGSLIS GLETALEGHE
VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE NLVQRVPKDV FMGVDELQVG MRFLAETDQG PVPVEITAVE
DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN VEVVAIREAT EEELAHGHVH GAHDHHHDHD HDGGGSGGGS
GGGSGGGSGG GSGGGDRYKY HPDSPRRLAA AVKQAWEEGI CGISSVSRME NIMWKSVEGE
LNAILEENGV QLTVVVGSVK NPMWRGPQRL PVPVNELPHG WKAWGKSYFV RAAKTNNSFV
VDGDTLKECP LKHRAWNSFL VEDHGFGVFH TSVWLKVRED YSLEADLEHH HHHH
配列番号22、タンデムの大腸菌SlyDとジカウイルスNS1βラダードメイン(aa191-352、Mr766株)の融合タンパク質
MKVAKDLVVS LAYQVRTEDG VLVDESPVSA PLDYLHGHGS LISGLETALE GHEVGDKFDV
AVGANDAYGQ YDENLVQRVP KDVFMGVDEL QVGMRFLAET DQGPVPVEIT AVEDDHVVVD
GNHMLAGQNL KFNVEVVAIR EATEEELAHG HVHGAHDHHH DHDHDGGGSG GGSGGGSGGG
SGGGSGGGKV AKDLVVSLAY QVRTEDGVLV DESPVSAPLD YLHGHGSLIS GLETALEGHE
VGDKFDVAVG ANDAYGQYDE NLVQRVPKDV FMGVDELQVG MRFLAETDQG PVPVEITAVE
DDHVVVDGNH MLAGQNLKFN VEVVAIREAT EEELAHGHVH GAHDHHHDHD HDGGGSGGGS
GGGSGGGSGG GSGGGREAAH SDLGYWIESE KNDTWRLKRA HLIEMKTAEW PKSHTLWTDG
VEESDLIIPK SLAGPLSHHN TREGYRTQVK GPWHSEELEI RFEECPGTKV YVEETCGTRG
PSLRSTTASG RVIEEWCCRE CTMPPLSFRA KDGCWYGMEI RPRKEPESNL VRSMVTALEH
HHHHH
配列番号23、大腸菌SlyDとジカウイルスNS1βラダードメイン(aa191-352、Mr766株)の融合タンパク質
MKVAKDLVVS LAYQVRTEDG VLVDESPVSA PLDYLHGHGS LISGLETALE GHEVGDKFDV
AVGANDAYGQ YDENLVQRVP KDVFMGVDEL QVGMRFLAET DQGPVPVEIT AVEDDHVVVD
GNHMLAGQNL KFNVEVVAIR EATEEELAHG HVHGAHDHHH DHDHDGGGSG GGSGGGSGGG
SGGGSGGGRE AAHSDLGYWI ESEKNDTWRL KRAHLIEMKT AEWPKSHTLW TDGVEESDLI
IPKSLAGPLS HHNTREGYRT QVKGPWHSEE LEIRFEECPG TKVYVEETCG TRGPSLRSTT
ASGRVIEEWC CRECTMPPLS FRAKDGCWYG MEIRPRKEPE SNLVRSMVTA LEHHHHHH
配列番号24、デングウイルス1型NS1βラダードメインaa191-352
SKAVHADMGY WIESEKNETW KLARASFIEV KTAIWPKSHT LWSNGVLESE MIIPKIYGGP ISQHNYRPGY FTQTAGPWHL GKLELDFDLC EGTTVVVDEH CGNRGPSLRT TSVTGKIIHE WCCRSCTLPP LRFRGEDGCW YGMEIRPVKE KEENLVKSMV SA
配列番号25、デングウイルス2型NS1βラダードメインaa191-352
NRAVHADMGY WIESALNDTW KIEKASFIEV KNAHWPKSHT LWSNGVLESE MIIPKNLAGP VSQHNYRPGY HTQIAGPWHL GKLEMDFDFC DGTTVVVTED CGNRGPSLRT TTASGKLITE WCCRSCTLPP LRYRGEDGCW YGMEIRPLKE KEENLVNSLV TA
配列番号26、デングウイルス3型NS1βラダードメインaa191-352
ERAVHADMGY WIESQKNGSW KLEKASLIEV KTATWPKSHT LWSNGVLESD MIIPKSLAGP ISQHNYRPGY HTQTAGPWHL GKLELDFNYC EGTTVVITEN CGTRGPSLRT TTVSGKLIHE WCCRSCTLPP LRYMGEDGCW YGMEIRPINE KEENMVKSLV SA
配列番号27、デングウイルス4型NS1βラダードメインaa191-352
QKAVHADMGY WIESSKNQTW QIEKASLIEV KTALWPKTHT LWSNGVLESQ MLIPRSYAGP FSQHNYRQGY ATQTAGPWHL GKLEIDFGEC PGTTVTIQED CDHRGPSLRT TTASGKLVTQ WCCRSCTMPP LRFLGEDGCW YGMEIRPLSE KEENMVKSQV TA
配列番号28~35の配列は電子配列表に示す。アミノ酸Xは、この位置にアラニン、システインまたはセリンを入れることができることを示す(X=AまたはCまたはS)。
【0014】
配列番号28、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス1型NS1ウイングドメインaa30-180の融合タンパク質
配列番号29、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス2型NS1ウイングドメインaa30-180の融合タンパク質
配列番号30、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス3型NS1ウイングドメインaa30-180の融合タンパク質
配列番号31、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス4型NS1ウイングドメインaa30-180の融合タンパク質
配列番号32、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス1型NS1βラダードメインaa191-352の融合タンパク質
配列番号33、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス2型NS1βラダードメインaa191-352の融合タンパク質
配列番号34、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス3型NS1βラダードメインaa191-352の融合タンパク質
配列番号35、タンデムの大腸菌SlyDとデングウイルス4型NS1βラダードメインaa191-352の融合タンパク質
【発明を実施するための形態】
【0015】
フラビウイルス抗体、例えば、ジカウイルス、デングウイルスおよび西ナイルウイルスに対する抗体を検出するための市販のイムノアッセイ(IgGおよびIgMの両イムノアッセイ)は、ELISA原理に基づいている。しかし、既知のイムノアッセイは、明らかに、一方では免疫反応性が高く、他方では、ジカ、デングおよび他のフラビウイルス、例えば西ナイルウイルス、黄熱ウイルスまたは他のフラビウイルスのNS1相同体に対して生成される抗体と高い免疫学的交差反応性を示す完全長NS1抗原を使用する。さらに、その複雑な四次構造のため、二重抗原サンドイッチフォーマットで特異的IgGを検出するイムノアッセイを設計する際に必要条件となる可溶性で安定なモノマー形態のNS1を提供することができない。これらの必要条件を満たし、自動化に適した高度に特異的なイムノアッセイを可能にする専用フラビウイルスNS1抗原は、先行技術では開示されていない。驚いたことに、フラビウイルスNS1抗原をそのウイングドメインに限定し、NS1抗原のいわゆるβラダードメイン配列を除去することにより、特定種のフラビウイルスに対する抗体を特異的に検出することができる可溶性で安定なNS1抗原変異体が得られる。
【0016】
抗ジカウイルス抗体に陽性である試料を、ジカのNS1抗原の2つの異なる断片を用いて試験した場合、すなわち、いわゆる「ウイング」ドメイン抗原と、いわゆる「βラダー」ドメイン抗原を用いて試験した場合、両抗原が抗ジカ抗体を検出し得ることが明らかとなった。しかし、本発明者らは、ウイングドメイン抗原はデング熱抗体陽性試料と交差反応しないが、ジカNS1βラダードメイン抗原はデング熱抗体陽性試料と交差反応し、偽陽性結果と誤った結論をもたらすことを見出した。抗ジカ陽性血清と関連アルボウイルスのNS1抗原を用いたさらなるブロッキング実験によって、ジカNS1ウイングドメイン抗原シグナルはこれらの関連アルボウイルスNS1抗原によってほとんど消光されないが、ジカNS1βラダードメインシグナルは有意に消光されることが決定的に示された。本発明者らは、βラダー抗原は、競合する関連アルボウイルスNS1抗原によって免疫グロブリンへの結合を顕著にブロックされると推論する。したがって、本発明者らは、ジカNS1ウイングドメイン抗原が他のアルボウイルスNS1相同体との免疫学的交差反応性に影響を受けにくいことを明白にすることができた。結果として、ジカウイルス感染をデングウイルス感染と識別する実施形態において、ジカNS1ウイングドメインは、他の(最近または過去の)アルボウイルス感染の存在下で、ジカウイルス感染を診断することができる優れた特異性を有する抗ジカ抗体のイムノアッセイを可能にする。
【0017】
同様に、デングウイルス抗体検出について、本発明者らは、高収率で大腸菌において過剰発現され、精製および機能的可溶化後に免疫反応型にリフォールディングする、4つのデングウイルス血清型のすべてからNS1ウイングドメイン抗原を同定することができた。本発明者らは、DENV1~4の個々のデング熱ウイングドメインが、事前に特徴付けられたDENV陽性血清の市販のセットと非常に異なって反応するという証拠を見出した。結果から、4つの個別のデングウイルス血清型の免疫学的識別が、イムノアッセイにおいて抗原としてデング熱NS1ウイングドメインを使用することで実現することができることが示唆される。総括すると、NS1のβラダードメインを欠損するデング熱NS1ウイングドメインは、特異的デング熱抗体検出に適した抗原である。
【0018】
西ナイルウイルスについての並行するアプローチにおいても、本発明者らは、西ナイルウイルスに対する抗体の特異的検出を可能にするNS1ウイングドメイン抗原を(大腸菌において)過剰産生し、精製し機能的にリフォールディングすることができた。
【0019】
本発明者らの実験結果に基づいて、NS1βラダードメインのアミノ酸配列を含有しないフラビウイルスNS1ウイングドメインは、使用されるNS1ウイングドメインアミノ酸配列に対応するフラビウイルスに対する抗体を特異的に検出するための優れた抗原として機能し、それにより他のフラビウイルスとを識別すると本発明者らは結論付けた。特に、この結論は、ジカ、デング熱および西ナイルウイルス抗体の特異的検出に適用可能である。
【0020】
したがって、本発明は、分離された生体試料中のフラビウイルスに対する抗体を検出するのに適したポリペプチドであって、フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列を含み、前記フラビウイルスのNS1βラダードメイン由来のアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在しない、ポリペプチドに関する。一実施形態において、前記フラビウイルスのさらなるアミノ酸配列は、前記ポリペプチド中に存在しない。別の実施形態において、フラビウイルスは、ジカウイルス(ZIKV)、西ナイルウイルス(WNV)、デングウイルス1~4型(DENV1~4)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、黄熱病ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)からなる群から選択され、一実施形態において、フラビウイルスはデングウイルス1~4型である。
【0021】
一実施形態において、NS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列は、配列番号1、2、5、7、9、11、13、15、17および19からなる群から選択され、一実施形態においては、配列番号7、9、11、13および15からなる群から選択され、一実施形態においては、配列番号7、9、11、および13(デングウイルス1~4型のNS1ドメイン)からなる群から選択されるポリペプチドから本質的になる。
【0022】
用語「NS1」、「NS1抗原」、「NS1ポリペプチド」は同義的に使用され、ウイルス前駆体ポリタンパク質内の非構造的抗原no.1(NS1)を意味し、(別に明示されない限り)完全長抗原NS1に関する。このタンパク質の構造は、西ナイルウイルスおよびデングウイルス2について、Akeyら、前掲で開示されている。ジカNS1については、C末端ドメイン(アミノ酸残基172-352)の構造がSongら(前掲)によって開示されており、完全なNS1の三次元構造は、Brownら(前掲)によってさらに詳細に開示されている。ジカNS1配列は、352個のアミノ酸を含み、配列番号3に示されており、ダニ媒介性脳炎ウイルスNS1は配列番号5に示され、デングウイルス1型NS1は配列番号8に示され、デングウイルス2型NS1は配列番号10に示され、デングウイルス3型NS1は配列番号12に示され、デングウイルス4型NS1は配列番号14に示され、西ナイルウイルスNS1は配列番号16に示され、黄熱ウイルスNS1は配列番号18に示され、日本熱ウイルスNS1は配列番号20に示されている。用語「NS1ウイング」または「NS1ウイングドメイン」、「NS1ウイングの変異体」または「NS1ウイング領域」とはNS1ポリペプチド内のドメインを意味し、したがって、NS1の部分配列である。ジカNS1ウイングドメインについては、これは配列番号1および2に例示され、さらなるフラビウイルスのNS1ウイングドメインについては、配列番号5(TBEV)、配列番号7(DENV1)、配列番号9(DENV2)、配列番号11(DENV3)、配列番号13(DENV4)、配列番号15(WNV)、配列番号17(YEV)および配列番号19(JEV)に例示されている。また、用語「ポリペプチド(単数)」、「ポリペプチド(複数)」、「抗原(単数)」および「抗原(複数)」は、さらに明示のない限り、同義語として理解される。
【0023】
同義語「βラダー」「βラダードメイン」または「ラダーチップ抗原」または「ラダーチップ」、「ラダーチップドメイン」、「ラダーチップポリペプチド」、「ラダーチップ抗原」は、ウイングドメインに隣接するC末端に配置されているNS1ドメインを意味する。このドメインは、西ナイルウイルスおよびデングウイルス2について、Akeyら、前掲で開示されている。ジカウイルスについては、このNS1ドメインは、Songら、前掲、およびBrownら、前掲によって開示されている。ジカNS1βラダードメインについては、アミノ酸配列が配列番号4に例示されており、デングウイルス1~4型については、配列番号24~27に例示されている。他のフラビウイルスのβラダードメインは、各ウイルスに対応する完全長NS1配列のC末端部分(aa191-352)で確認することができる。
【0024】
これらの定義は、本明細書内のすべてのアルボウイルスに適用することができる。フラビウイルスファミリーに属する以下のアルボウイルスは、以下のように短縮され得る:西ナイルウイルス(西ナイル、WNV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEVまたはFSME)、デングウイルス1~4(デング熱、デング熱の4つのウイルス株:DENV1~4)、黄熱ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)。
【0025】
本発明によれば、フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列は、前記フラビウイルスのNS1βラダードメイン由来のアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在しないアミノ酸配列である。一実施形態において、前記フラビウイルスのさらなるアミノ酸配列は、前記ポリペプチド中に存在しない。例えば、ジカNS1ウイングドメインポリペプチドはウイングドメイン配列のみを含み、一実施形態は配列番号1または2を含む。一実施形態においてはさらなるジカウイルスは存在せず、ジカウイルスNS1特異的アミノ酸配列はこの配列中には存在せず、一実施形態において、配列番号4は前記ポリペプチド配列中に存在しない。さらなる例において、DENV1 NS1ウイングドメインは配列番号7を含むが、配列番号24(βラダー)は含まない。他の例は、配列番号25が存在しないDENV2 NS1ウイング(配列番号9)であり;配列番号26が存在しないDENV3 NS1ウイング(配列番号11)であり;配列番号27が存在しないDENV4 NS1ウイング(配列番号13)であり;WNV βラダードメインが存在しないWNV NS1ウイング(配列番号15)である。NS1βラダードメイン特異的配列の非存在、および一実施形態におけるさらなるフラビウイルスNS1特異的配列またはさらなるフラビウイルス特異的配列の非存在は、他のアルボウイルスに対して生成される抗体との交差反応性を低減または完全に回避する目的をサポートする。
【0026】
しかし、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの変異体も同様に包含される。これらの変異体は、開示されたアミノ酸配列の保存的置換または相同的置換(例えば、アラニンもしくはセリンによるシステインの置換、またはバリンによるイソロイシンの置換、またはその逆など)によって、当業者により容易に作製され得る。またこの文脈における用語「変異体」とは、前記タンパク質に実質的に同等のタンパク質またはタンパク質断片(すなわち、ポリペプチドまたはペプチド)に関する。例えば、1~10個のアミノ酸、一実施形態においては1~5個のアミノ酸による、一末端または両末端でのC末端またはN末端トランケーションなどの修飾は、特許請求の範囲のフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原の範囲内である。特に、変異体は、最も一般的なタンパク質アイソフォームのアミノ酸配列と比較してアミノ酸の交換、欠失、または挿入を示すアイソフォームであってもよい。一実施形態において、そのような実質的に同等のタンパク質は、タンパク質の最も一般的なアイソフォームに対して少なくとも80%、別の実施形態においては少なくとも85%または少なくとも90%、さらに別の実施形態においては少なくとも95%の配列相同性を有する。また用語「変異体」は、翻訳後修飾タンパク質、例えばグリコシル化タンパク質またはリン酸化タンパク質に関する。本発明によれば、変異体は、インビトロ診断イムノアッセイにおいて免疫反応性が変化しないか、または大部分が維持される限り、フラビウイルスNS1ウイングドメイン変異体として分類され、すなわち、変異体は、分離された試料中に存在する抗フラビウイルス抗体を依然として結合し検出することができるが、他のアルボウイルスに対して生成される抗体は検出されないか、検出の程度ははるかに低い。さらに、前記フラビウイルスポリペプチドの全体的三次元構造は不変のままであり、その結果、以前に(すなわち野生型で)存在し、抗体への結合にアクセス可能であったエピトープは依然として存在し、変異体にアクセス可能である。
【0027】
また「変異体」は、例えば、タンパク質または抗原への標識または担体部分の共有結合または非共有結合によって修飾されたタンパク質または抗原でもある。可能な標識は、放射性、蛍光性、化学発光性、電気化学発光性、酵素など、例えば、ジゴキシン、ジゴキシゲニンまたはビオチンなどである。これらの標識は、当業者には公知である。
【0028】
配列番号の形態で明示された、提供したポリペプチド配列情報が「(すなわち、前記配列)から本質的になる」という用語で記載されている場合、これは、配列が文字通り列挙されているように存在するが、抗体への免疫学的結合に関してこのポリペプチドの基本的特性に実質的に影響を及ぼさない変異体として存在することができることを意味する。この一例は、このペプチドのN末端および/またはC末端のごくわずかなアミノ酸の欠失または付加、ならびに同等のアミノ酸の交換、例えば、セリンに対するアラニン、バリンに対するイソロイシン、およびその逆であり得る。
【0029】
本発明のフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は、可溶性、安定性、および免疫反応性であり、すなわち、それらは免疫学的アッセイで使用するための抗原として好適である。これは、本発明による抗原が、生理的緩衝液条件下で、例えば、界面活性剤を添加しない周囲温度のリン酸緩衝液系で可溶性であることを意味する。また抗原は、フラビウイルスNS1ウイングドメインに特異的な抗体、例えば、分離された試料、例えばヒト血清中に存在する抗ジカ抗体または抗デング熱抗体に結合または認識され、結合され得る。
【0030】
一実施形態において、非フラビウイルス特異的リンカーまたはペプチド融合アミノ酸配列のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドへの付加は、これらの配列が抗フラビウイルス抗体に特異的ではなく、インビトロ診断イムノアッセイを妨げないので可能である。
【0031】
一実施形態において、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は、シャペロンに融合していてもよい。用語「融合タンパク質」、「融合ポリペプチド」または「融合抗原」とは、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと、融合パートナーの役割を果たすシャペロン由来の少なくとも1つのタンパク質部分を含むタンパク質を意味する。
【0032】
シャペロンは、他のタンパク質のフォールディングおよび構造的完全性の維持をアシストする周知のフォールディングヘルパータンパク質である。フォールディングヘルパーの例は、WO03/000877に詳細に開示されている。本発明によれば、ペプチジルプロリルイソメラーゼクラスのシャペロン、例えばFKBPファミリーのシャペロンは、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原変異体への融合に使用することができる。融合パートナーとして適切なFKBPシャペロンの例は、FkpA、SlyDおよびSlpAである。フラビウイルスNS1ウイング抗原の融合パートナーとして適切なさらなるシャペロンはSkpであって、FKBPファミリーに属さない、大腸菌(E.coli)のペリプラズム由来の三量体シャペロンである。シャペロンの完全配列を使用することは必ずしも必要ではない。必要とされる能力および機能を依然として保持するシャペロンの機能的断片(いわゆる結合能力のあるモジュールまたはポリペプチド結合モチーフ)も使用することができる(WO98/13496を参照)。
【0033】
本発明のさらなる実施形態において、FKBPシャペロンの少なくとも1つまたは少なくとも2つのモジュール、例えば、大腸菌SlyD、SlpAまたはFkpAは、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を発現するための融合部分として使用される。シャペロンSkpは、同様に融合体パートナーとして使用され得る。2つのFKBP-シャペロンドメインの融合は、得られる融合ポリペプチドの溶解性に改善をもたらす。融合部分は、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原のN末端もしくはC末端、または両末端(サンドイッチ様)に位置していてもよい。
【0034】
一実施形態において、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は、オリゴマーシャペロンに融合している。オリゴマーシャペロンは、二量体、三量体、さらにはそれ以上の多量体を自然に形成するシャペロンであり、その結果、複数の単量体サブユニットが特定の非共有相互作用により十分に定義された機能的四次構造に構築される。それによって、共有結合で融合した抗原が同様に高エピトープ密度にされる。好ましいオリゴマーシャペロンは、FkpAおよびSkpである。多量体化抗原は、特にIgM抗体の検出において有用であり、したがって感染直後の初期免疫応答の検出に有用である。
【0035】
一実施形態において、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、細菌SlyD、SlpA、FkpAまたはSkpの、一実施形態においては、大腸菌SlyD、SipA、FkpAまたはSkpの1つ、2つまたはそれ以上のシャペロン分子に融合している。さらなる実施形態において、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、配列番号21(ジカ)、28(DENV1)、29(DENV2)、30(DENV3)または31(DENV4)からなる。
【0036】
本発明の別の実施形態は、別のフラビウイルス由来の構造的に関連する抗原に対して生成される抗体と免疫学的に交差反応しないフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原である。一例において、ジカNS1ウイングドメイン抗原は、配列番号5もしくは6のいずれかを含むダニ媒介脳炎ウイルス、および/または配列番号7~14のいずれかを含むデングウイルス1~4、および/または配列番号15もしくは16のいずれかを含む西ナイルウイルス、および/または配列番号17もしくは18のいずれかを含む黄熱ウイルス、および/または配列番号19~20のいずれかを含む日本脳炎ウイルス由来の構造的に関連する抗原に対して生成される抗体と免疫学的に交差反応しないが、配列番号3に記載の完全長ジカウイルスNS1抗原に対して生成される抗体と免疫学的に反応する。さらなる実施形態において、前記ジカNS1抗原は、ジカ特異的配列が配列番号1または2から本質的になるジカNS1ウイングドメイン抗原であり、一実施形態において、配列番号1または2からなる。ジカNS1によれば、別のフラビウイルスNS1抗原、例えば、デング熱1~4型のNS1は、別のフラビウイルスの構造的に関連する抗原に対して生成される抗体と免疫学的に交差反応せず、すなわち、デング熱の例においては、Zika、TBEV、WNV、YEVおよびJEVのNS1ウイングドメインと免疫学的に交差反応しない。
【0037】
用語「免疫学的に交差反応しない」とは、望ましくない免疫学的反応性が大幅に低減されたか、または完全に消失したことを意味する。用語「免疫学的な交差反応性」とは、抗原の配列または構造の類似性に起因する免疫グロブリンと免疫原との望ましくない結合を説明するために造語され、免疫原に対して抗体が元来マウントされた。一実施形態において、ジカウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、完全長のジカウイルスNS1ポリペプチドと比較して、上記の相同のまたは関連のアルボウイルスNS1抗原に対して生成される抗体に対する、または抗体のサブセットに対する免疫学的な反応性が完全に消失または著しく低減されたことを示す。さらに別の実施形態において、ジカウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、デングウイルスに対して生成される抗体に対して、または抗体のサブセットに対して、一実施形態においてはデングウイルス1、2、3、4型に対して生成される抗体に対して大幅に低減された免疫学的交差反応性を示す。さらなる実施形態において、ジカウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの免疫学的な交差反応性の大幅な低減はまた、黄熱ウイルスに対して生成される抗体または抗体のサブセットにも適用される。さらに別の実施形態において、デングウイルス1~4型ウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、ジカウイルスに対して生成される抗体に対して、または抗体のサブセットに対して大幅に低減された免疫学的な交差反応性を示す。
【0038】
また表現「免疫学的に交差反応しない」とは、抗体を検出するための二重抗原サンドイッチフォーマットでのイムノアッセイにおいて、試料抗体(すなわち、分析物抗体)が2つの特異的抗原によって結合されている状況を意味し、1つは固相に結合され、他方は標識を保持しており、試料抗体は両抗原の間に挟まれる。分析物抗体の存在下において、標識した抗原は、-生じる三成分免疫複合体内で-固相に加えられ、シグナルを生成する。この場合、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチド、例えばジカNS1ウイングは標識されており、測定したシグナルは100%に設定される。並行実験または後続の実験において、同じアッセイは同じ(陽性)試料の別のアリコートで実施され、さらに、標識抗原と競合することが疑われるアミノ酸配列を有する非標識抗原が混合物に添加される。この場合、TBEV、DENV1-4、WNV、YFVまたはJEVのいずれかの完全長NS1ポリペプチドが加えられる。別の実施形態において、TBEV、DENV1-4、WNV、YFVまたはJEVのいずれかのNS1ウイングドメインのみからなる、またはそれのみを含むNS1ポリペプチドが加えられる。測定後に得られたシグナルが少なくとも約70%のシグナル回復で、一実施形態においては少なくとも80%のシグナル回復で、一実施形態においては少なくとも85%のシグナル回復で、一実施形態においては少なくとも90%のシグナル回復で維持される場合、フラビウイルス(この例においてはジカ)NS1ポリペプチドは、シグナルの消光を起こしにくい。それは加えた抗原に負かされないので、交差反応性物質に潜在的に抵抗する。例として、そのようなブロッキング実験は、実施例2(表2)で説明されている。
【0039】
一実施形態において、配列番号5もしくは6のいずれかを含むダニ媒介脳炎ウイルス、および/または配列番号7~14のいずれかを含むデングウイルス1~4、および/または配列番号15もしくは16のいずれかを含む西ナイルウイルス、および/または配列番号17もしくは18のいずれかを含む黄熱ウイルス、および/または配列番号19~20のいずれかを含む日本脳炎ウイルス由来のNS1完全長またはNS1ウイングドメインペプチドが上記のブロッキング実験で加えられる。
【0040】
別の実施形態において、ジカNS1ウイングドメインポリペプチドは、配列番号3に示した完全長NS1抗原に対して生成される抗体または抗体のサブセットと免疫学的に反応する。これは、上記アッセイのセットアップにおいて、ジカNS1ウイングドメインポリペプチドのシグナルが完全長ジカNS1ポリペプチドの添加時に完全に消光されるはずであることを意味する(100%)。
【0041】
ジカ関連ウイルスに対する免疫学的な交差反応性を決定する方法は実施例2にさらに記載されており、他のフラビウイルスとのブロッキング実験と同様の方法で導入することができる。
【0042】
フラビウイルスNS1ポリペプチド(ウイングドメインおよびβラダードメインの両方)ならびに実施例2のブロッキング実験で適用されるポリペプチドは、当分野で既知の組換えDNA技術およびタンパク質精製技術によって作製および調製することができる。したがって、本発明の別の態様は、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原、一実施形態においては配列番号1、2、21、5、7、9、11、13、15、17、19、28、29、30および31に記載の抗原、ならびにさらに上記で定義したその変異体をコードする組換えDNA分子である。
【0043】
用語「組換えDNA分子」とは、遺伝子工学技術または化学合成によるポリヌクレオチドの単離された断片の人為的操作によって達成されるDNA配列の2つの別の断片の組合せによって作製される分子を意味する。そのような際に、所望する機能のポリヌクレオチド断片を相互に連結して、所望する機能の組合せを生成することができる。原核生物または下等もしくは高等真核生物の宿主細胞におけるタンパク質発現に関する組換えDNA技術は、当技術分野では周知である。それらは、例えば、Sambrookら(1989、Molecular Cloning: A Laboratory Manual)によって開示されている。
【0044】
また本発明による組換えDNA分子は、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原と融合部分との間、およびいくつかの融合部分の間に5~100個のアミノ酸残基のリンカーペプチドをコードする配列を含むこともできる。そのようなリンカー配列は、例えば、タンパク質分解切断部位を有し得る。
【0045】
本発明のさらなる態様は、本発明による作動可能に連結された組換えDNA分子、すなわちフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原、および任意選択でペプチジルプロリルイソメラーゼシャペロン、例えばFKBPシャペロンをコードする組換えDNA分子を含む発現ベクターであり、ここで、FKBPシャペロンはFkpA、SlyDおよびSlpAから選択される。代替の実施形態において、組換えDNA分子は、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原およびSkpを含む融合タンパク質をコードする。本発明による組換えDNAを含む発現ベクターは、無細胞翻訳系においてフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を発現させるために使用することができ、または当技術分野において周知の方法に従ってフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を発現するための宿主細胞の形質転換に使用することができる。したがって、本発明の別の態様は、本発明による発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。本発明の一実施形態において、組換えフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は、大腸菌細胞において産生される。
【0046】
さらなる態様は、可溶性、安定性および免疫反応性のフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を産生する方法である。前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原およびシャペロンを含む融合タンパク質として産生することができる。好ましくは、SkpなどのシャペロンまたはFKBPシャペロンなどのペプチジルプロリルイソメラーゼクラスのシャペロンが使用される。本発明のさらなる実施形態において、前記FKBPシャペロンは、SlyD、FkpAおよびSlpAからなる群から選択される。
【0047】
この方法は、
a)フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原をコードする遺伝子を含む上記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップと、
b)前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原をコードする遺伝子を発現させるステップと、
c)前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を精製するステップ
とを含む。
【0048】
任意選択で、追加のステップd)として、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原が当技術分野で周知のリフォールディング技術によって可溶性および免疫反応性の構造になるように機能的可溶化を実施する必要がある。
【0049】
さらに別の実施形態は、無細胞インビトロ翻訳系において可溶性、安定性および免疫反応性のフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を産生する方法である。
本発明のさらなる態様は、分離されたヒト試料中の抗フラビウイルス抗体を検出する方法であって、本発明によるフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原が抗体の結合パートナーとして使用される、方法に関する。したがって、本発明は、分離された試料中のフラビウイルス、特に第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法であって、a)本発明によるフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原と体液試料を混合することにより免疫反応混合物を形成するステップと、b)前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原に対する体液試料中に存在する抗体を、前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原と免疫反応させて免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持するステップと、c)前記免疫反応生成物のいずれかの存在および/または濃度を検出するステップとを含む、方法を包含する。
【0050】
本明細書全体にわたる用語「第1のフラビウイルス」または「第1のフラビウイルス種」とは、ある種のフラビウイルスに特異的な抗体が少なくとも第2のまたは複数のフラビウイルス種に対する抗体の存在下で検出されることを意味する。多くの場合、患者試料には1種類のフラビウイルス抗体が含まれているだけでなく、過去に生成された可能性のある感染症由来の抗体も含まれている。例として、第1のフラビウイルス種がデングウイルスである場合、第2の種、例えばジカウイルスもしくは西ナイルウイルス、または両方(複数)のウイルスはイムノアッセイによって検出されない。
【0051】
一実施形態において、前記方法は、デングウイルス1~4型NS1ウイングドメイン抗原を、個々にまたは4つの全抗原型を試料抗体の結合パートナーとして適用する、抗デング熱抗体の検出に関する。一実施形態において、デング熱NS1ウイングドメイン抗原は、配列番号7、9、11、13、28、29、30および31からなる群から選択されるポリペプチドである。
【0052】
さらなる態様において、前記方法は、同じイムノアッセイでIgGおよびIgMサブクラスの、または両方のクラスのフラビウイルス抗体を検出するのに適している。一実施形態において、前記フラビウイルス抗体は、抗デングウイルス1~4型抗体である。
【0053】
抗体を検出するためのイムノアッセイは当技術分野において周知であり、そのようなアッセイを実施する方法および実際の適用および手順も同様である。本発明によるフラビウイルスNS1抗原は、使用される標識とは無関係に、また検出の様式とは無関係に、抗フラビウイルス抗体を検出するためのアッセイ(例えば、放射性同位体アッセイ、酵素免疫アッセイ、電気化学発光アッセイなど)、またはアッセイ原理(例えば、テストストリップアッセイ、サンドイッチアッセイ、間接試験コンセプトもしくは均質アッセイなど)を改善するために使用することができる。
【0054】
本発明の一実施形態において、イムノアッセイは、固相として微粒子を適用する粒子系イムノアッセイである。本明細書で使用される場合の「粒子」とは、物理的特性、例えば体積、質量、または平均サイズなどを有し得る、小さく局在性の物体を意味する。したがって、微粒子は、対称性、球状、本質的に球状もしくは球形の形状、または不規則な非対称の形状もしくは形態であり得る。本発明により想定される粒子のサイズは変動する可能性がある。一実施形態において、使用される微粒子は球状のものであり、例えば、ナノメートルおよびマイクロメートルの範囲の直径を有する微粒子である。一実施形態において、本開示による方法で使用される微粒子は、50ナノメートル~20マイクロメートルの直径を有する。さらなる実施形態において、微粒子は100nm~10μmの間の直径を有する。一実施形態において、本開示による方法で使用される微粒子は、200nm~5μmまたは750nm~5μmの直径を有する。
【0055】
上記の本明細書で定義した微粒子は、当業者に既知の任意の適切な材料を含むか、またはそれからなっていてもよく、例えば、無機材料または有機材料を含むか、またはそれからなるか、または本質的にそれからなっていてもよい。典型的には、それらは、金属もしくは金属の合金、または有機材料を含むか、またはそれらからなるか、または本質的にそれらからなり、あるいは、含水炭素成分を含むか、またはそれらからなるか、または本質的になっていてもよい。微粒子に想定される材料の例としては、アガロース、ポリスチレン、ラテックス、ポリビニルアルコール、シリカおよび強磁性金属、合金または組成物材料が挙げられる。一実施形態において、微粒子は、磁性または強磁性の金属、合金または組成物である。さらなる実施形態において、材料は特定の特性を有していてもよく、例えば、疎水性または親水性であってもよい。そのような微粒子は、典型的には、水溶液に分散され、単離された微粒子を保ち非特異的クラスター化を回避する小さな負の表面電荷を保持する。
【0056】
本発明の一実施形態において、微粒子は常磁性の微粒子であり、本開示による測定方法におけるそのような粒子の単離は、磁力によって促進される。磁力は、溶液/懸濁液から常磁性粒子または磁性粒子を引き出し、所望によりそれらを保持するように適用され、一方、溶液/懸濁液の液体は除去することができ、粒子は例えば洗浄することができる。
【0057】
専門家には既知のすべての生物学的液体は、抗フラビウイルス抗体、一実施形態においては抗デング熱抗体の検出のための分離された試料として使用することができる。通常使用される試料は、全血、血清、血漿、尿または唾液のような体液であり、一実施形態においては血清または血漿である。
【0058】
本発明のさらなる実施形態は、いわゆる二重抗原サンドイッチコンセプト(DAGS)に従って実施される、分離された試料中の抗ジカ抗体を検出するためのイムノアッセイである。時には、このアッセイコンセプトは二重抗原架橋コンセプトとも呼ばれるが、その理由は、2つの抗原が抗体分析物によって架橋されるからである。そのようなアッセイにおいては、所定の抗原の少なくとも2つの異なる分子をその2(IgG、IgE)、4(IgA)、または10(IgM)パラトープと結合する抗体の能力が必要とされ、利用される。
【0059】
さらなる詳細において、二重抗原架橋フォーマットによる抗フラビウイルス抗体を測定するためのイムノアッセイは、抗フラビウイルス抗体を含む試料を同じフラビウイルスの2つの異なるフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原、すなわち第1の(「固相」または「捕獲」)フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原および第2のフラビウイルスNS1ウイングドメイン(「検出」または「レポーター」)抗原と共にインキュベートすることによって実施され、ここで、前記のそれぞれの抗原は前記抗フラビウイルス抗体に特異的に結合する。第1の抗原は、固相に直接または間接的に結合することができ、通常、生体親和性結合対の一部であるエフェクター基を有する。一実施形態において、抗フラビウイルス抗体は抗デング熱抗体であり、2つの異なるフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は同じデングウイルス型由来である。
【0060】
本発明による方法に適した生体親和性結合対の1つのタイプは、ハプテンおよび抗ハプテン抗体結合対である。ハプテンは、100~2000ダルトン、好ましくは150~1000ダルトンの分子量を有する有機分子である。そのような小分子は、それを担体分子に結合することにより免疫原性にすることが可能であり、抗ハプテン抗体は標準的な手順に従って生成することができる。ハプテンは、ステロール、胆汁酸、性ホルモン、コルチコイド、カルデノリド、カルデノリド-グリコシド、ブファジエノリド、ステロイドサポゲニンおよびステロイドアルカロイド、カルデノリドおよびカルデノリド-グリコシドを含む群から選択され得る。これらの物質クラスの代表的なものは、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、ジトキシゲニン、ストロファンチジン、ジゴキシン、ジギトキシン、ジトキシン、およびストロファンチンである。別の適切なハプテンは、例えばフルオレセインである。一実施形態において、生体親和性結合対は、ビオチンおよびアビジン/ストレプトアビジンまたはジゴキシンおよび抗ジゴキシンを含む。
【0061】
さらに別の実施形態において、第1の抗原はビオチンに結合され、相補的固相はアビジンまたはストレプトアビジンのいずれかで被覆される。第2の抗原には、この抗原分子に、単独でまたは他の分子との複合体で、特異的な検出能を付与する標識を有する。したがって、免疫反応混合物は、第1の抗原、試料抗体、および第2の抗原を含んで形成される。2つの抗原分子の間に挟まれた分析物抗体からなるこの三元複合体は、免疫複合体または免疫反応生成物と称する。第1の抗原が結合され得る固相は、前記抗原に試料を添加する前、または免疫反応混合物が形成された後のいずれかで添加される。この免疫反応混合物は、体液試料中の前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原に対する抗フラビウイルス抗体が前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原と免疫反応し、免疫反応生成物を形成するのに十分な期間維持される。次のステップは、液相が固相から単離される単離ステップである。最後に、前記免疫反応生成物のいずれかの存在は、固相もしくは液相またはその両方で検出される。
【0062】
前記DAGSイムノアッセイにおいて、「固相抗原」および「検出抗原」の基本構造は本質的に同じである。また、二重抗原架橋アッセイにおいて、免疫学的に交差反応する、同じフラビウイルスに由来する類似しているが異なるフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原を使用することも可能である。そのようなアッセイを実施するための必須要件は、関連するエピトープが両方の抗原上に存在することである。本発明によれば、各フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原に同一のまたは異なる融合体を使用することができ(例えば、固相側でデングウイルス1型NS1ウイングドメイン抗原に融合したSlyD、および例えば検出側でデングウイルス1型NS1ウイングドメイン抗原に融合したFkpA)、そのような変異体は非特異的結合の問題を顕著に軽減し、したがって偽陽性の結果のリスクを緩和する。
【0063】
さらなる実施形態は、Mクラスの抗フラビウイルスウイルス抗体(すなわち、イムノグロブリン)を検出する方法である(IgM検出)。この方法の実施形態において、試料中に存在する多価IgM抗体がフラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原に特異的に結合するように、さらに上記で開示したフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが適用される。一実施形態において、フラビウイルスNS1ウイングドメイン抗原は、抗原を化学的に架橋することにより、またはオリゴマー化分子、例えばオリゴマーシャペロンに、一実施形態においては、FkpAまたはSkpに抗原を融合することにより、多量体形態で提供される。別の実施形態において、フラビウイルスウイングドメイン抗原は、個々の抗原を相互に隣接して直列に接続することにより、複合形態で存在する。またこれらの個々の抗原部分は、フラビウイルス特異的ではないリンカー分子によって単離され得る。さらなる実施形態において、直列に連結された複数のフラビウイルス抗原は、例えば、オリゴマーシャペロンなどのオリゴマー化分子、例えばFkpAまたはSkpによってさらに多量体化することができる。さらに別の実施形態において、フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、各ポリペプチドが少なくとも二重の形態で存在する多量体形態で使用され、一実施形態において、それは3~10重で存在する。
【0064】
フラビウイルス抗体のIgM検出方法のさらなる別の実施形態において、試料中に存在するIgMクラス抗体は、通常、IgM分子の特異性とは無関係にヒトIgM分子のFc部分に特異的に結合する結合パートナーまたは抗体もしくは抗体断片である、いわゆるμ捕獲成分によって固相に結合される。前記μ捕獲成分は、アビジンまたはストレプトアビジンとの生体親和性対の一部であるエフェクター群(例えばビオチン)を保有する。一実施形態において、他の生体親和性対、例えば、上記のジゴキシンおよび抗ジゴキシンまたはハプテンおよび抗ハプテンも使用することができる。一実施形態において、アビジンまたはストレプトアビジンで被覆された固相は、次いでμ捕獲成分を引き付けて結合する。フラビウイルス特異的抗体を特異的に検出するために、記載したようなフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを標識した形態で使用し、IgMクラスの抗フラビウイルス抗体を検出する。
【0065】
別の実施形態は、抗フラビウイルスウイルス抗体を検出するための、インビトロ診断試験における、一実施形態においては上記で定義したイムノアッセイ法における、上記で詳述したフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの使用である。
【0066】
さらなる実施形態として、フラビウイルス抗体を検出するためのイムノアッセイ法の最大の合計時間は、1時間未満、すなわち60分未満であり、一実施形態においては30分未満、さらなる実施形態においては20分未満、一実施形態においては15~30分の間、一実施形態においては15~20分の間である。その時間には、アッセイの実施に必要な試料および試薬のピペッティング、ならびにインキュベーション時間、任意選択の洗浄ステップ、検出ステップ、および結果の最終出力が含まれる。
【0067】
本発明のさらなる主題は、上記で開示したフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含むフラビウイルスに対する抗体を検出するための試薬キットである。一実施形態において、試薬キットは、個別の容器または単一容器ユニットの個別の区画に、少なくともアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された微粒子、および上記で詳述したフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む。別の実施形態において、前記微粒子は、上記でさらに記載したような他の生体親和性対、例えば、ジゴキシンと抗ジゴキシン、ハプテンと抗ハプテンの1つのパートナーで被覆される。一実施形態において、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、ビオチンに共有結合される。一実施形態において、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインは、他の生体親和性対、例えば、ジゴキシンと抗ジゴキシン、ハプテンと抗ハプテンの第2のパートナーに共有結合される。別の実施形態において、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドは、検出可能な標識に、一実施形態においては電気化学発光複合体に共有結合される。さらなる実施形態において、化学発光標識、例えばアクリジニウムエステルまたは放射性化合物もしくは蛍光化合物または酵素を標識として適用することができる。さらに別の実施形態において、前記試薬キットは、個別の容器または単一容器ユニットの個別の区画に、少なくともアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された微粒子、ビオチンに共有結合した第1のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチド、および検出可能な標識に、例えば電気化学発光ルテニウム錯体または電気化学発光イリジウム錯体に共有結合されている第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む。一実施形態において、第1のおよび第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドのペプチド配列は同一である。
【0068】
さらなる実施形態は、個別の容器または単一容器ユニットの個別の区画に、少なくともアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された微粒子、およびビオチンに共有結合されたμ捕捉結合パートナーを含む、IgMクラスの抗フラビウイルス抗体を検出するための試薬キットである。さらなる実施形態において、前記IgM検出試薬キットは、検出可能な標識に、一実施形態においては電気化学発光複合体に共有結合されたフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む。
【0069】
用語の単一容器ユニットとは、Roche diagnosticsのElecsys(登録商標)分析器シリーズのような多くの自動分析器で、特定の分析物の測定に必要とされる試薬が「試薬パック」の形態で提供され、すなわち、分析装置に取り付けられ、目的の分析物の測定に必要とされるすべての主要試薬を異なる区画に含む1つの容器ユニットとして提供される。
【0070】
さらに、上記で定義した試薬キットは、使用説明書とともに、対照および標準溶液、ならびに、当業者によって使用される一般的な添加物、緩衝液、塩、界面活性剤などを含む1つまたは複数の溶液の試薬を含む。
【0071】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1つの他の、すなわち抗体検出の範囲のウイルスと同一でない少なくとも1つの第2のフラビウイルス(または第2のフラビウイルス種)に対する抗体を含有することが推定される、分離された生体試料中の第1のフラビウイルス(または第1のフラビウイルス種)に対する抗体を検出する方法に関する。例えば、分析物は、デングウイルス(「第1のフラビウイルス種」)に対する抗体である。この方法において、βラダードメインの完全配列または部分配列を含むデングウイルスNS1ポリペプチドが特異的結合パートナーとして、すなわちNS1ウイングドメインだけでなく完全NS1抗原として適用される。この実験のセットアップにおいて、特異的結合パートナーに高度に保存されたβラダードメインペプチド配列が存在することから他の非デング熱フラビウイルスに対する交差反応性が予想される。この干渉を除くために、非デング熱起源の交差反応性抗体(少なくとも1つの第2のフラビウイルス種)が結合され消光されるように、(この例のデング熱の)前記第1のフラビウイルスのNS1βラダードメインからのみなるポリペプチドが非標識形態で加えられる。一実施形態において、βラダードメインはクエンチャーとして添加され、さらなる実施形態においては、前記βラダードメインポリペプチドは、配列番号24、25、26および17のうちの少なくとも1つから本質的になり、一実施形態においては配列番号24、25、26、および17の少なくとも1つからなる。
【0072】
通常、デングウイルス1~4型は、血清学によっては互いに区別されない。結果として、デング熱1~4は、1つの「フラビウイルス種」、すなわちデング熱と見なされる。
以下の実施形態もまた本発明の一部である。
【0073】
実施形態
1.分離された生体試料中のフラビウイルスに対する抗体を検出するのに適したポリペプチドであって、フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列を含み、前記フラビウイルスのNS1βラダードメイン由来のアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在しない、ポリペプチド。
【0074】
2.前記フラビウイルスのさらなるアミノ酸配列が前記ポリペプチド中に存在しない、実施形態1に記載のポリペプチド。
3.前記フラビウイルスが、ジカウイルス(ZIKV)、西ナイルウイルス(WNV)、デングウイルス1~4型(DENV1~4)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、黄熱病ウイルス(YFV)および日本脳炎ウイルス(JEV)からなる群から選択される、実施形態1または2のいずれかに記載のポリペプチド。
【0075】
4.前記フラビウイルスNS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列が、配列番号1、2、5、7、9、11、13、15、17および19からなる群から選択され、一実施形態において7、9、11、13および15からなる群から選択され、一実施形態において7、9、11および13(デングウイルス1~4型のNS1ドメイン)からなる群から選択されるポリペプチドから本質的になる、実施形態1から3のいずれかに記載のポリペプチド。
【0076】
5.前記ポリペプチドがシャペロンに融合している、実施形態1から4のいずれかに記載のポリペプチド。
6.前記シャペロンが、SlyD、SlpA、FkpAおよびSkpからなる群から選択される、実施形態1から5のいずれかに記載のポリペプチド。
【0077】
7.配列番号21(ジカ)、28(DENV1)、29(DENV2)、30(DENV3)および31(DENV4)からなる群から選択される、実施形態6に記載のポリペプチド。
【0078】
8.可溶性および免疫反応性のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを産生する方法であって、
a)実施形態1から7のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドをコードする、作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養するステップと、
b)前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを発現させるステップと、
c)前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを精製するステップと
を含む、方法。
【0079】
9.分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法であって、実施形態1から7のいずれかに記載の前記第1のフラビウイルス種のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが前記抗フラビウイルス抗体の捕捉試薬および/または結合パートナーとして使用される、方法。
【0080】
10.分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法であって、
a)実施形態1から7のいずれかに記載の前記第1のフラビウイルス種のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと体液試料を混合することにより免疫反応混合物を形成するステップと、
b)前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドに対する体液試料中に存在する抗体を、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと免疫反応させて免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持するステップと、
c)前記免疫反応生成物のいずれかの存在および/または濃度を検出するステップと
を含む、方法。
【0081】
11.検出された抗体がIgG抗体である、実施形態9または10のいずれかに記載の分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
12.実施形態9から11に記載の分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法であって、前記免疫反応が、
a)固相に直接または間接的に結合することができる実施形態1から7のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種の第1のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドであって、生体親和性結合対の一部であるエフェクター基を有する第1のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと、実施形態1から7のいずれかに記載の前記第1のフラビウイルス種の第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドであって、検出可能な標識を有する第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドとを、前記試料に添加するステップであって、ここで、前記第1および第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが、前記抗フラビウイルス抗体に特異的に結合する、ステップと、
b)前記第1のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチド、前記試料抗体、および前記第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む免疫反応混合物を形成するステップであって、ここで、前記生体親和性結合対の対応するエフェクター基を有する固相が、免疫反応混合物を形成する前、間または後で添加される、ステップと、
c)体液試料中の前記第1および第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドに対するフラビウイルス抗体を、前記第1および第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと免疫反応させて免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持するステップと、
d)液相を固相から単離するステップと、
e)固相もしくは液相またはその両方における前記免疫反応生成物のいずれかの存在を検出するステップと
を含む二重抗原サンドイッチフォーマットで実施される、方法。
【0082】
13.前記第1のフラビウイルス種とは異なるフラビウイルス種に対する抗体が検出されない、実施形態9から12のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【0083】
14.第1のフラビウイルス種がデングウイルスであり、一実施形態においてはそれぞれの個々のデングウイルス1~4型であり、一実施形態においてはデングウイルス型1~4型のすべてである、実施形態9から13のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【0084】
15.前記第1のフラビウイルス種が西ナイルウイルス(WNV)である、実施形態9から13のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
16.前記第1のフラビウイルス種がダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)である、実施形態9から13のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【0085】
17.前記第1のフラビウイルス種が黄熱ウイルス(YFV)である、実施形態9から13のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
18.前記第1フラビウイルス種が日本脳炎ウイルス(JEV)である、実施形態9から13のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【0086】
19.前記第1のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドがビオチン部分を有し、前記第2のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが電気化学発光部分で標識され、一実施形態においてはルテニウムまたはイリジウム錯体で標識されている、実施形態12から18のいずれかに記載の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【0087】
20.検出された抗体がIgM抗体である、実施形態9から10のいずれかに記載の分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
21.前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが多量体形態で使用され、一実施形態において前記ポリペプチドが少なくとも二重の形態で、一実施形態においては3~10重で存在する、実施形態20に記載のIgMクラスの第1フラビウイルス種に特異的な抗体を検出する方法。
【0088】
22.前記の検出された抗体がIgM抗体であり、前記IgM抗体がμ捕捉結合パートナーによって固相上で捕捉される、実施形態9から10のいずれかに記載の方法。
23.実施形態20から22のいずれかに記載の分離された試料中の第1のフラビウイルス種に特異的なIgM抗体を検出する方法であって、前記免疫反応が、
a)固相に直接または間接的に結合することができるμ捕獲結合パートナーであって、生体親和性結合対の一部であるエフェクター基を有するμ捕獲結合パートナーと、実施形態1から6のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドであって、検出可能な標識を有するフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドとを、前記試料に添加するステップであって、
ここで、前記μ捕捉結合パートナーがヒトIgM抗体のFc部分に特異的に結合し、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが前記抗フラビウイルス抗体に特異的に結合する、ステップと、
b)前記μ捕獲結合パートナー、前記試料抗体、および前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む免疫反応混合物を形成するステップであって、ここで、前記生体親和性結合対の対応するエフェクター基を有する固相が、免疫反応混合物を形成する前、間または後で添加される、ステップと、
c)体液試料中の前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドに対するIgM抗体を、前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドと免疫反応させて免疫反応生成物を形成するのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持するステップと、
d)液相を固相から単離するステップと、
e)固相もしくは液相またはその両方における前記免疫反応生成物のいずれかの存在を検出するステップと
を含む、μ捕獲フォーマットで実施される、方法。
【0089】
24.βラダードメイン由来のフラビウイルスNS1ポリペプチドを使用しない、一実施形態においては配列番号4、24、25、26、27のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを使用しない、実施形態9から23のいずれかに記載の方法。
【0090】
25.抗フラビウイルス抗体を検出するためのインビトロ診断試験における、実施形態1から7のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの使用。
【0091】
26.実施形態8から23のいずれかによる抗フラビウイルス抗体を検出するためのインビトロ診断試験における、実施形態1から7のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの使用。
【0092】
27.前記フラビウイルスが、ジカウイルス(ZIKV)、西ナイルウイルス(WNV)、デングウイルス1~4型(DENV1~4)、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBEV)、黄熱ウイルス(YFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)からなる群から選択され、一実施形態においてデングウイルス1~4型(DENV1~4)および西ナイルウイルス(WNV)からなる群から選択され、一実施形態において前記フラビウイルスがデングウイルス1~4型(DENV1~4)である、実施形態25から26のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの使用。
【0093】
28.前記NS1ウイングドメイン特異的アミノ酸配列が、配列番号1、2、5、7、9、11、13、15、17および19からなる群から選択され、一実施形態において配列番号7、9、11、13および15からなる群から選択され、一実施形態において配列番号7、9、11、および13(デング熱ウイル1~4型のNS1ドメイン)からなる群から選択されるポリペプチドからなる、実施形態27に記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドの使用。
【0094】
29.実施形態1から7のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含み、一実施形態において試薬キットの使用説明書を含む、抗フラビウイルス抗体を検出するための試薬キット。
【0095】
30.個別の容器にまたは単一の容器ユニットの個別の区画に、少なくともアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された微粒子、およびビオチンに共有結合された実施形態1から7のいずれかに記載のフラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドを含む、実施形態29に記載の試薬キット。
【0096】
31.個別の容器にまたは単一の容器ユニットの個別の区画に、少なくともハプテン/抗ハプテンなどの生体親和性対の一つのパートナーで被覆された微粒子、および実施形態1から7のいずれかに記載のポリペプチドを含み、ここで前記生体親和性対がハプテン/抗ハプテンであり、一実施形態においてジゴキシン/抗ジゴキシンである、実施形態30による試薬キット。
【0097】
32.検出可能な標識を有する実施形態1から7のいずれかに記載の第2のポリペプチドをさらに含む、実施形態29に記載の試薬キット。
33.個別の容器にまたは単一の容器ユニットの個別の区画に、少なくともアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された微粒子、およびビオチンに共有結合されたμ捕捉結合パートナーを含む、実施形態29に記載の試薬キット。
【0098】
34.前記フラビウイルスNS1ウイングドメインポリペプチドが検出可能な標識を有する、実施形態29に記載の試薬キット。
35.特異的結合パートナーとしてβラダードメインの完全配列または部分配列を含むフラビウイルスNS1ポリペプチドを使用することによって、第1のフラビウイルスとは異なる少なくとも1つの第2のフラビウイルスに対する抗体を含有することが推定される分離された生体試料中の第1のフラビウイルスに対する抗体を検出する方法であって、非標識形態の前記フラビウイルスのNS1βラダードメインを含むポリペプチドを添加することによって、一実施形態においては、クエンチャーとしてβラダードメインを含む前記ポリペプチドを添加することによって、前記第1のフラビウイルスとは異なる少なくとも1つの第2のフラビウイルスに対する交差反応性が除去される、方法。
【0099】
36.抗フラビウイルス抗体を検出するためのイムノアッセイにおける干渉を低減する試薬としての、フラビウイルスNS1βラダードメインポリペプチドの使用。
37.前記βラダードメインポリペプチドが配列番号4、24、25、26および27からなる群から選択される、実施形態36に記載の使用。
【0100】
本発明を実施例によりさらに説明する。
実施例1:ジカIgGイムノアッセイにおける異なるジカNS1抗原変異体の免疫学的反応性(すなわち抗原性)
NS1抗原および変異体は、WO2014054990A1に、またはScholzら、J. Mol. Biol. (2005) 345、1229~1241により開示されているように、本質的にクローン化、発現、精製および標識された。精製および可溶化された遺伝子産物は、続いてビオチンまたは電気化学発光ルテニウム標識に結合させた。
【0101】
ジカNS1抗原のポリペプチド融合変異体の免疫学的反応性(すなわち抗原性)は、自動化Elecsys(登録商標)2010およびcobas e 411分析器(Roche Diagnostics GmbH)で評価した。Elecsys(登録商標)は、Rocheグループの登録商標である。測定は、二重抗原サンドイッチフォーマットで行った。
【0102】
Elecsys(登録商標)2010およびcobas e 411のシグナル検出は、電気化学発光に基づく。ビオチンコンジュゲート(すなわち捕獲抗原)はストレプトアビジン被覆磁気ビーズ表面に固定化されるが、検出抗原はシグナル部分として複合体化ルテニウムカチオン(酸化還元状態2+および3+のスイッチング)を担持する。特異的免疫グロブリン分析物の存在下において、発色性ルテニウム錯体は固相に架橋され、白金電極での励起の後に620nmの光を発する。シグナル出力は相対的な光単位である。典型的には、アッセイの合計時間は18分である。
【0103】
組換えジカNS1抗原融合ポリペプチドは、二重抗原サンドイッチ(DAGS)イムノアッセイフォーマットで評価した。この目的のため、組換えジカNS1抗原をそれぞれビオチンおよびルテニウムコンジュゲート対として使用し、ヒト血清中の抗ジカNS1抗体を検出した。
【0104】
NS1は、ジカウイルスの免疫優性抗原の1つであり、NS1抗原の可溶性変異体は、本特許出願で開示されているように、ジカウイルス感染を検出するための非常に貴重なツールである。すべての測定において、化学重合した非標識のSlyD-SlyDを抗干渉物質として反応バッファー中に大過剰量(約8μg/ml)で補充して、シャペロン融合およびリンカーユニットを介した免疫交差反応を回避した。
【0105】
特に、この研究では、2つのジカNS1変異体、すなわちジカNS1「ウイング」ドメイン(配列番号1および2を参照)、ならびにジカNS1「βラダー」ドメイン(配列番号4を参照)を詳細に調べた。抗ジカNS1 IgG分子を検出するため、SlyD-SlyD-ジカNS1-ビオチンおよびSlyD-SlyD-ジカNS1-ルテニウムをR1(試薬バッファー1)およびR2(試薬バッファー2)でそれぞれ使用した。R1およびR2中の抗原コンジュゲートの濃度は、それぞれ500ng/mlであった。
【0106】
ジカおよびデング熱のIgG抗体の両方に陰性であるヒト血清試料、ジカIgG抗体に陽性であるヒト血清試料、およびデング熱IgG抗体に陽性であるヒト血清試料を、Huzlyら、前掲に開示されたようにして市販の最先端免疫測定法(マイクロタイタープレートにコーティングされた組換えNS1抗原を適用する間接ELISA、酵素標識抗ヒトIgGコンジュゲートを添加することによるジカウイルスに対する試料抗体の検出)と比較し、ジカNS1組換え抗原(「ウイング」および「βラダー」)の両方で試験した。
【0107】
この実験において、上記のヒト試料を、前述のDAGSイムノアッセイのセットアップを使用して評価した。
回避不可能な系固有のシグナルは約500カウントである。ジカIgG抗体およびデング熱IgG抗体が陰性であるヒト血清試料の低いバックグラウンドシグナルは、それぞれの抗原ルテニウムコンジュゲートの高い溶解性および一般に良性の物理化学特性を示している。疎水性、または一般に言われている「粘着性」の抗原-ルテニウムコンジュゲートは、ビーズ表面と相互に作用し、それによりバックグラウンドシグナルが増加する傾向にある。表1から、本発明者らは、ジカNS1「ウイング」の物理化学的特性が優れていると推論することができる(第1列)。これは、同様にジカNS1「βラダー」にも該当する(データ第2列)。ジカNS1「ウイング」(配列番号21)がDAGSフォーマットでビオチン化形態およびルテニル化形態で抗原対として使用される場合、またはジカNS1「βラダー」(配列番号22)がDAGSフォーマットのビオチン化形態およびルテニル化形態の抗原対として使用される場合、両抗原対は、陰性ヒト血清で約600~900カウントのシグナルバックグラウンドを生じ、抗原コンジュゲートの良好な溶解特性を明白に示す。しかし、一見したところ、ジカNS1「ウイング」およびジカNS1「βラダー」は抗ジカ抗体を検出するそれらの能力は等しいが、表1に示したように、抗デング熱抗体との交差反応性では著しく異なることが明らかになった。ジカIgG陽性試料で詳しく見てみた場合、本発明者らは、ジカNS1「ウイング」およびジカNS1「βラダー」の両方が、すべてのジカIgG試料を陽性として(>2000カウント)検出することを見出した。重要なことには、ジカNS1「ウイング」はデング熱IgG陽性試料と交差反応しないが、それはすべてのデング熱IgG試料がジカNS1ウイング抗原で陰性であると確認される(≪2000カウント)からである。好対照において、ジカNS1「βラダー」は、20のデング熱IgG試料のうち9つの試料を反応性として検出し(>2000カウント)検出し、これは程度の顕著な交差反応性を示す。ジカIgGおよびデング熱IgGの陽性試料と非常に類似した反応性パターンが、Huzlyら(Euro Surveill. 2016; 21(16)、pii=30203、1~4)によって開示された市販のジカIgGアッセイで観察されるが、市販のジカIgGアッセイは、デング熱IgG陽性試料と顕著な免疫学的交差反応性を有する(すなわち、市販のジカIgGアッセイはかなり多数の偽陽性ジカ結果をもたらす)という難点を有する。結論として、ジカNS1抗原(ジカNS1「ウイング」およびジカNS1「βラダー」)の操作された両変異体は、顕著な物理化学的特性と抗原特性を有する。しかし、ジカNS1「ウイング」抗原は、ジカIgG抗体に対する優れた特異性を示すとともに、デング熱陽性血清との免疫学的交差反応性を著しく低下させるという点で、βラダードメインより優れている。
【0108】
したがって、操作された組換えジカNS1「ウイング」ドメインは、Huzlyら、前掲によって開示されているような市販の最新のジカIgGイムノアッセイ(これは完全長NS1に基づくと推測される)と比較して、ジカ抗体の特異的定量のための優れたNS1変異体を構成する。
【0109】
表1は、ジカNS1「βラダー」および市販の最新のジカIgGアッセイと比較した場合のジカNS1「ウイング」の優れた特異性(すなわち、抗デング熱抗体との交差反応性の顕著な低下)を示す。
【0110】
【0111】
【0112】
実施例2:ジカNS1「βラダー」抗原と比較したジカNS1「ウイング」抗原の超特異性を確証するためのブロッキング実験
ジカNS1抗原のポリペプチド融合変異体の免疫学的反応性(すなわち抗原性)を、実施例1に記載したように自動化Elecsys(登録商標)2010およびcobas e 411アナライザー(Roche Diagnostics GmbH)で評価した。
【0113】
ジカIgG抗体に陽性の3つのヒト血清試料を、操作したジカNS1組換え抗原(「ウイング」および「βラダー」)の両方で試験した。並行して、ジカIgG抗体に陽性のこれらのヒト血清試料は、個々に、TBEV(ダニ媒介脳炎ウイルス、FSME、配列番号6)、またはDENV1~4の1つの抗原(デングウイルス1~4、配列番号8、10、12、14)、またはWNV(西ナイルウイルス、配列番号16)、またはYFV(黄熱ウイルス、配列番号18)、またはJEV(日本脳炎ウイルス、配列番号20)、またはZIKV(ジカウイルス、配列番号3)のいずれかの完全長フラビウイルスNS1抗原調製物でスパイクされた(表2aおよび表2b)。
【0114】
この実験において、上記のヒト試料(スパイクおよび非スパイク)を前述のDAGSイムノアッセイのセットアップで評価した。
試料は、ブロッキング実験に必要とされる反応性レベル(力価)に予備希釈した。ブロッキング実験用に調製したフラビウイルスNS-1調製物の濃度および試料中の抗体の量が明確なブロッキング結果を得るために合理的な濃度比内であることが必要とされるので、このステップが必要であった。次いで、予備希釈したヒト抗ジカIgG陽性試料反応性を、TBEV、またはDENV1-4、またはWNV、またはYFV、またはJEVまたはZIKVのいずれかの完全長フラビウイルスNS-1でスパイクした場合の同じ試料で得られたシグナルと比較した。TBEV、DENV1~4、WNV、YFV、JEVおよびZIKVの異なる完全長フラビウイルスNS-1調製物による競合によってシグナル減少の程度を計算した。ブロッキングのシグナル減少の程度は、完全長ジカNS1で達成される最大ブロッキングに標準化されたが、これは予想通り、両アッセイで(ジカNS1「ウイング」またはジカNS1「βラダー」のいずれを使用することに関係なく)シグナルの最も強い消光を示す。競合する能力の程度は、すべての他の完全長フラビウイルスNS1調製物(TBEV、DENV1~4、WNV、YFV、JEV)について計算した。ジカNS1「ウイング」抗原に基づくアッセイのシグナルは、非ジカNS1抗原によって消光が弱くなるだけであるが、ジカNS1「βラダー」抗原に基づくアッセイのシグナルは、TBEV、DENV1~4、およびJEVによって顕著に低減されることは一目したところ明白である。この発見は、NS1ウイングドメインとNS1βラダードメインがアルボウイルスNS1相同体の中でそれらの構造の独自性が大きく異なることを強く力説するように示している。明らかに、非ジカNS1抗原のウイング部分は、抗ジカ分析物抗体への結合について、操作されたジカウイング抗原と効率的に競合され得ない。反対に、非ジカNS1抗原のβラダー部分は、抗ジカ分析物抗体への結合について、操作されたジカβラダー抗原と完全に効率的に競合され得る。
【0115】
結論として、これは、ジカNS1「ウイング」抗原に基づくアッセイが、他のアルボウイルス(TBEV、DENV1~4、WNV、YFV、JEV)のフラビウイルスNS-1調製物と交差反応し得ない(または交差反応性の傾向がない)抗ジカIgG抗体をほぼ検出することも証明しているので、この実験は実施例1と完全に一致している。反対に、ジカNS1「βラダー」抗原に基づくアッセイは、TBEV、DENV1~4およびJEVと一部で交差反応し得る(あるいは交差反応性の傾向がある)抗ジカ抗体に結合する(すなわち、それらはTBEV、DENV1~4およびJEV NS-1調製物によってブロックされ得る)。言いかえれば、ジカNS1抗原のβラダードメインは、関連アルボウイルスのβラダードメインと有意な構造とおよび配列相同を共有することにより、抗原として使用した場合に、イムノアッセイで偽陽性の結果がもたらされると思われる。反対に、ジカNS1抗原のウイングドメインはかなり特有であると考えられ、また他のアルボウイルス由来のそのNS相当物と構造的な相同性をほとんど共有しないようである。
【0116】
本発明者らのデータは、この原理がジカウイルス感染と他のフラビウイルス感染を区別するだけでなく、他のフラビウイルス感染を相互に区別することにも当てはまることを示す。本発明者らは、NS1抗原のウイングドメインに対する抗体の特異的な検出が、複数のフラビウイルス感染のバックグラウンドであってもフラビウイルス感染を明確に区別するための優れた手段であると結論づける。本発明者らは、我々の所見が現在の血清学を大幅に改善し、フラビウイルス分野での罹患率および発生率データに関するより適切な見解を得る可能性を有するものと推論する。
【0117】
要約すると、ジカNS1「ウイング」抗原は、ジカIgGに対する優れた超性能の特異性を示し、他のアルボウイルス(ここではフラビウイルスのファミリー)由来のNS1相同体に対して生成される抗体との免疫学的交差反応性を受けにくく、したがって、抗ジカIgG抗体の特異的試験により一層好適である。
【0118】
【0119】
【0120】
頭文字の説明:
ZIKV=ジカウイルス
DENV1=デングウイルス1型
DENV2=デングウイルス2型
DENV3=デングウイルス3型
DENV4=デングウイルス4型
WNV=西ナイルウイルス
JEV=日本脳炎ウイルス
YFV=黄熱ウイルス
TBEV=ダニ媒介脳炎ウイルス(=FSMEウイルス)
実施例3:デング熱IgGイムノアッセイにおけるデング熱NS1抗原変異体の免疫反応性
デング熱NS1抗原および変異体のクローニング、発現、精製および標識は、本質的には実施例1のように実施した。デング熱NS1抗原のポリペプチド融合変異体の免疫学的反応性(すなわち抗原性)は、自動化cobas e 601分析器(Roche Diagnostics GmbH)で評価した。Elecsys(登録商標)は、Rochグループの登録商標である。測定は、実施例1でも記載した二重抗原サンドイッチフォーマットで実施した。
【0121】
組換えデング熱NS1抗原融合ポリペプチドは、二重抗原サンドイッチ(DAGS)イムノアッセイフォーマットで評価した。この目的のため、組換えデングNS1抗原は、それぞれビオチンおよびルテニウムコンジュゲートとして使用し、ヒト血清中の抗デングNS1抗体を検出した。
【0122】
すべての測定において、化学重合した非標識SlyD-SlyDを抗干渉物質として反応バッファー中に大過剰量(約8μg/ml)で補充して、シャペロン融合ユニットを介した免疫学的交差反応を回避した。
【0123】
特に、2つのデング熱NS1変異体、すなわちデング熱NS1「ウイング」ドメイン(DENV1~4に対応する配列番号7、9、11および13を参照)、およびデング熱NS1「βラダー」ドメイン(DENV1~4に対応する配列番号24~27を参照)をこの研究で試験した。抗デング熱NS1 IgG分子を検出するために、SlyD-SlyD-デング熱NS1-ビオチンとSlyD-SlyD-デング熱NS1-ルテニウムを、それぞれR1(試薬バッファー1)およびR2(試薬バッファー2)で使用した。R1およびR2中の抗原コンジュゲートの濃度は、それぞれ、各々500ng/mlであった。4つのすべてのデング熱血清型の抗原を含む調製物では、R1およびR2中の抗原コンジュゲートの濃度もまたそれぞれ500ng/mlであった(合計で2μg/ml)。対照および参照として、ジカNS1ウイングドメインを抗原として含む実施例1のジカIgGアッセイを使用した。
【0124】
ジカIgG抗体およびデング熱IgG抗体の両方に陰性のヒト血清試料、デング熱IgG抗体に陽性のヒト血清試料、ならびにジカIgG抗体に陽性のヒト血清試料を、「ウイング」については4つのすべてのデング熱血清型に由来し、「βラダー」についてはDENV2に由来するデング熱NS1組換え抗原で試験した。
【0125】
この実験において、上記のヒト試料を、上述のDAGSイムノアッセイのセットアップを使用して評価した。表3に結果を示す。
4つのすべてのデングウイルス血清型のNS1ウイングドメインが大腸菌で過剰発現され得ること、またこれらの組換え抗原が高収率で得られ得ることを明らかにすることができた。抗原は、精製後にリフォールディングさせ、可溶性の天然様で免疫反応性の立体構造にすることができる。免疫蛍光アッセイによりデング熱陽性と予備試験された血清が、本発明者らのアッセイのセットアップで陽性と正確に同定されたことを示すことができた。DENV1~4ウイングドメインおよびDENV2βラダードメインは、実際、推測上デング熱陽性の血清と反応する。しかし、DENV1~4の個々のデング熱ウイングドメインが事前に特徴付けられた市販のデング熱陽性血清とは異なる反応を示すという証拠を本発明者らは発見した。その結果は、デングウイルス血清型の免疫学的識別が、イムノアッセイにおける抗原としてのデング熱NS1ウイングドメインに基づいて可能であり得ることを示唆しているようである。
【0126】
さらに、特異的抗原としてジカNS1ウイングドメインを使用する実施例1のジカIgGアッセイは、事前に特徴付けられたデング熱抗体陽性血清の市販のセットといかなる交差反応も示さず、ジカNS1ウイングドメインの優れた特異性を今一度強調している。最も興味深いことには、ジカ陽性血清は、ジカNS1ウイングドメインと排他的に反応するが、デング熱ウイングドメイン抗原とはいずれとも交差反応しない。言いかえると、デング熱ウイングドメインは、複数のフラビウイルス感染の高罹患率を示す集団における高度に特異的な抗原としても見込みがある。これは、ブラジルまたはタイなどでの休暇から戻った疑わしい中央ヨーロッパ人のデング熱感染を確実に検出することの1つである。高罹患率地域での以前の黄熱病感染および/またはジカ感染などの医学的バックグラウンドを有する患者のデング熱感染を確実に検出することとは完全に異なるものである。したがって、フラビウイルスイムノアッセイの特異性が最も重要であるのは、特に複数のフラビウイルス感染の罹患率が高い新興国である。本発明者らの結果は、フラビウイルスNS1ウイングドメインが、イムノアッセイにおける結合パートナーとして適用されるフルラビウイルスウイングドメインに対する抗体を特異的検出するための優れたツールであることを示している。
【0127】
【配列表】