(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】部品実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20241017BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
(21)【出願番号】P 2020027476
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】安藤 周平
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-335893(JP,A)
【文献】特開2007-157817(JP,A)
【文献】特許第5203480(JP,B2)
【文献】特開2012-209300(JP,A)
【文献】特開2017-208367(JP,A)
【文献】特開2004-142299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に付されたIDを撮像する撮像装置を有すると共に前記基板にはんだを印刷する印刷装置と、少なくとも1台の実装機とを含み、前記基板に複数の部品を実装する部品実装システムにおいて、
前記複数の部品の一部を前記基板に実装することができない場合に、前記少なくとも1台の実装機に前記複数の部品の前記一部以外を前記基板に搭載させる制御装置と、
前記複数の部品の前記一部が搭載されず、かつ前記複数の部品の前記一部以外が搭載された前記基板を回収する基板回収装置と、
管理装置とを備え、
前記制御装置は、前記撮像装置により撮像されたIDの基板に対するはんだの印刷の有無を示す印刷実行情報に基づいて、前記印刷装置によって前記はんだが既に印刷され、かつ前記複数の部品の前記一部以外のみが搭載された前記基板に対する前記はんだの印刷をスキップさせると共に、前記複数の部品の前記一部以外のみが前記基板に搭載されている場合に、前記少なくとも1台の実装機に前記複数の部品の前記一部のみを前記基板に搭載させ、
前記管理装置は、前記基板に搭載されなかった前記複数の部品の前記一部が補給されると、前記複数の部品の前記一部が補給された旨を受信
して部品切れ設定を解除し、前記部品切れ設定を解除した後、前記基板回収装置から前記基板を取り出して前記印刷装置に投入するように無線通信を介して無人搬送車を遠隔制御する部品実装システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の部品実装システムにおいて、
前記管理装置は、予定数の前記基板に対する前記部品の実装または搭載が完了した後に、前記複数の部品の前記一部が補給された旨を受信する部品実装システム。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の部品実装システムにおいて、
前記制御装置は、前記印刷装置を制御する印刷制御部および管理装置を含み、
前記印刷制御部は、前記基板の前記IDを前記管理装置に送信し、前記管理装置から前記IDに対応した前記印刷実行情報を取得する部品実装システム。
【請求項4】
請求項
3に記載の部品実装システムにおいて、
前記制御装置は、前記複数の部品の一部を前記基板に搭載することができない場合に、前記複数の部品の前記一部の上に搭載される部品の実装を禁止する部品実装システム。
【請求項5】
請求項
3または4に記載の部品実装システムにおいて、
前記基板回収装置は、前記複数の部品のすべてが前記基板に搭載されている場合に、前記基板を後段側に送り出し、前記複数の部品の前記一部が搭載されず、かつ前記複数の部品の前記一部以外が搭載された前記基板をストッカに格納する部品実装システム。
【請求項6】
請求項
3から
5の何れか一項に記載の部品実装システムにおいて、
前記複数の部品が搭載された前記基板をリフローするリフロー装置を更に備える部品実装システム。
【請求項7】
請求項
3から
6の何れか一項に記載の部品実装システムにおいて、
前記制御装置は、部品切れにより前記複数の部品の一部を前記基板に実装することができない場合に、前記少なくとも1台の実装機に前記複数の部品の前記一部以外を前記基板に搭載させる部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品実装システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産プログラムに従って電子部品を基板に搭載して基板を生産する表面実装装置の生産システムとして、電子部品を基板に搭載するごとに搭載情報(搭載位置、搭載結果等)を記録すると共に、異常事態の発生により生産が中断されたときに、搭載情報の記録を継続生産ファイルとして不揮発性の記録媒体に保存するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この生産システムでは、異常事態が解消された後、継続生産ファイルに記録された搭載情報に基づいて生産が再開される。また、従来、実装機が複数段直列に配置された部品実装ラインとして、少なくとも1つの実装機の故障により部品の装着が完了していない装着未完了基板について、当該基板の識別符号と装着未完了状態とを対応付けて記憶するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この部品実装ラインでは、識別符号および装着未完了状態に基づいて、故障した実装機以外の正常な実装機から選択された実装機に、故障した実装機の分担部品を割り振って装着させるための割振り部品装着プログラムが作成される。そして、選択された実装機で割振り部品装着プログラムを実行することにより装着未完了基板に割振り部品が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-031998号公報
【文献】特開2013-143470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板に複数の部品を実装する部品実装システムでは、基板の生産中に何らかの要因により複数の部品の一部を基板に実装し得なくなることがある。この場合、実装することができなかった部品を後から手作業により基板に実装することも考えられるが、実装漏れや実装ミス等により基板の品質が低下してしまうおそれがある。また、実装することができなかった部品を後から実装機を用いて基板に実装する場合には、作業員により実装済み部品の実装をスキップさせることが必要となり、生産効率の悪化や実装済み部品の誤実装等による品質低下を招くおそれがある。更に、基板の生産(実装)開始時点で複数の部品の一部を基板に実装し得なくなっていることもある。この場合、基板の生産を中止して当該複数の部品の一部を基板に実装可能になるまで待つことになるが、待ち時間によっては、生産効率が却って悪化するおそれもある。
【0005】
そこで、本開示は、複数の部品の一部を基板に実装することができなくなった場合に、基板の品質低下や生産効率の悪化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の部品実装システムは、少なくとも1台の実装機を含み、基板に複数の部品を実装する部品実装システムにおいて、前記複数の部品の一部を前記基板に実装することができない場合に、前記少なくとも1台の実装機に前記複数の部品の前記一部以外を前記基板に搭載させる制御装置と、前記複数の部品の前記一部が搭載されず、かつ前記複数の部品の前記一部以外が搭載された前記基板を回収する基板回収装置とを含み、前記制御装置が、前記複数の部品の前記一部以外のみが前記基板に搭載されている場合に、前記少なくとも1台の実装機に前記複数の部品の前記一部のみを前記基板に搭載させるものである。
【0007】
本開示の部品実装システムにおいて、制御装置は、複数の部品の一部を基板に搭載することができない場合、少なくとも1台の実装機に複数の部品の一部以外を基板に搭載させる。また、このように複数の部品の一部が基板に搭載されなかった場合、基板回収装置は、複数の部品の一部が搭載されず、かつ当該複数の部品の一部以外が搭載された基板を回収する。更に、制御装置は、複数の部品の一部以外のみが基板に搭載されている場合、少なくとも1台の実装機に複数の部品の一部のみを当該基板に搭載させる。これにより、複数の部品の一部を基板に搭載することができない場合に、当該複数の部品の一部以外のみを基板に搭載させた後、基板回収装置により回収された基板に対して、実装することができなかった部品を少なくとも1台の実装機によって後から搭載することが可能となる。この結果、本開示の部品実装システムによれば、複数の部品の一部を基板に実装することができなくなった場合に、作業員に要求される処理を減らして、基板の品質低下や生産効率の悪化を良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の部品実装システムを示す概略構成図である。
【
図2】本開示の部品実装システムに含まれる実装機を示す斜視図である。
【
図3】本開示の部品実装システムにおける基板に対する部品の実装手順を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本開示の部品実装システムの印刷装置の制御部により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。
【
図5】本開示の部品実装システムの実装機の制御部により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。
【
図6】本開示の部品実装システムの管理装置により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。
【
図7】本開示の部品実装システムの基板回収装置の制御部により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の部品実装システム1を示す概略構成図である。同図に示す部品実装システム1は、印刷装置2、複数台(本実施形態では、例えば4台)の実装機3、基板回収装置4、リフロー装置5、およびシステム全体を管理・制御する管理装置(制御装置)10等を含む。
【0011】
印刷装置2は、基板Sの配線パターン上に、はんだを印刷するものであり、基板Sを搬送する基板搬送装置や、印刷ヘッド、印刷ヘッドを移動させるヘッド移動装置、スクリーンマスクが固定された固定枠等(何れも図示省略)を含む。更に、印刷装置2は、マークカメラ21と、印刷制御部25とを含む。マークカメラ21は、基板Sに付されたIDや位置決め基準マーク等を撮像し、撮像データを印刷制御部25に送信する。
【0012】
印刷制御部25は、CPU,ROM,RAM、記憶装置等を含むコンピュータであり、無線または有線通信を介して管理装置10と情報をやり取りすると共に、マークカメラ21の撮像データ、基板搬送装置や印刷ヘッド、ヘッド移動装置等に設置された図示しない各種センサの検出値等を取得する。印刷制御部25は、管理装置10からの情報や各種センサの検出値等に基づいて基板搬送装置、印刷ヘッド、ヘッド移動装置等を制御する。また、印刷制御部25は、1枚の基板Sに対するはんだの印刷が完了すると、マークカメラ21を介して取得した基板SのIDと共にはんだの印刷の形成が完了した旨を示す情報を管理装置10に送信する。
【0013】
複数の実装機3は、それぞれ複数の部品を基板S上に搭載可能な表面実装機であり、
図1に示すように、印刷装置2の後段側に基板Sの搬送方向に沿って配列される。各実装機3は、
図2に示すように、筐体30、部品供給部31、基板搬送装置32、XY移動装置33、実装ヘッド34および実装制御部35を含む。更に、各実装機3は、パーツカメラ36やマークカメラ37、ノズルステーション38等を含む。
【0014】
部品供給部31は、各実装機3の前部に設けられ、複数の部品を収容するテープが巻回された複数のリール310からテープを引き出すと共に部品を部品供給位置まで
図2におけるy軸方向に送り出す。各リール310において、複数の部品は、テープの表面を覆うフィルムによってそれぞれ保護されており、当該フィルムは、部品が部品供給位置に達する前に剥がされる。複数のリール310は、互いに異なる部品を収容するものであってもよく、互いに同一の部品を収容するものであってもよい。また、基板搬送装置32は、基板Sを
図2におけるx軸方向に沿って図中左側から右側に搬送する。
【0015】
XY移動装置33は、実装ヘッド34が着脱(交換)自在に取り付けられるX軸スライダ33xと、Y軸スライダ33yとを含む。X軸スライダ33xは、図示しないモータによって
図2中x軸方向に延在するようにY軸スライダ33yに固定されたX軸ガイドレールRxに沿って移動させられる。また、Y軸スライダ33yは、図示しないモータによって基板搬送装置32の上方に
図2中y軸方向に延在するように配置されたY軸ガイドレールRyに沿って移動させられる。これにより、実装ヘッド34をXY移動装置33によって基板Sの上方の任意の位置まで移動させることが可能となる。
【0016】
実装ヘッド34は、
図2に示すように、ヘッド本体34aや、図示しないノズルホルダを介してヘッド本体34aにより着脱自在に支持される複数(本実施形態では、例えば8個)の吸着ノズル39、何れも図示しないR軸駆動装置、Q軸駆動装置、第1Z軸駆動装置および第2Z軸駆動装置を含む。各吸着ノズル39は、図示しない空気圧供給装置から供給される空気圧に応じて部品を吸着すると共に吸着した部品を解放する。また、ヘッド本体34aには、吸着対象となる部品に対応した吸着ノズル39が装着される。R軸駆動装置は、複数の吸着ノズル39をヘッド本体34aの中心軸の周りに一体に回転(公転)させるものである。Q軸駆動装置は、各吸着ノズル39を中心軸の周りに回転(自転)させるものである。第1および第2Z軸駆動装置は、吸着ノズル39の公転軌道上の2か所で対応する吸着ノズル39をZ軸に沿って個別に昇降させるものである。これにより、部品供給部31により供給された部品を2つの吸着ノズル39により同時に吸着し、基板搬送装置32により搬送された基板S上に搭載することが可能となる。
【0017】
パーツカメラ36は、部品供給部31と基板搬送装置32との間に設置される。パーツカメラ36は、実装ヘッド34の吸着ノズル39に吸着された部品を下方から撮像し、撮像データを実装制御部35に送信する。また、マークカメラ37は、XY移動装置33のX軸スライダ33xに取り付けられている。マークカメラ37は、基板Sに付されたIDや位置決め基準マーク等を撮像し、撮像データを実装制御部35に送信する。ノズルステーション38は、部品供給部31と基板搬送装置32との間に配置される。当該ノズルステーション38には、実装ヘッド34に装着される吸着ノズル39がストックされる。
【0018】
各実装機3の実装制御部35は、CPU,ROM,RAM、記憶装置等を含むコンピュータであり、無線または有線通信を介して管理装置10と情報をやり取りすると共に、パーツカメラ36およびマークカメラ37の撮像データ、部品供給部31や基板搬送装置32、XY移動装置33、実装ヘッド34等に設置された図示しない各種センサの検出値等を取得する。実装制御部35は、管理装置10からの情報や、パーツカメラ36およびマークカメラ37の撮像データ、各種センサの検出値等に基づいて部品供給部31、基板搬送装置32、XY移動装置33、実装ヘッド34等を制御する。また、実装制御部35は、1枚の基板Sに対する部品の実装処理が完了すると、マークカメラ37を介して取得した基板SのIDと共に当該基板Sに実際に搭載された部品の情報(以下、「搭載部品情報」という)を管理装置10に送信する。
【0019】
基板回収装置4は、複数の基板Sを収容可能なストッカ40、基板搬送装置41、振り分け機構42、格納機構43、マークカメラ44および制御部45を含む。基板搬送装置41は、最下流側の実装機3からの基板Sを搬送するコンベヤである。振り分け機構42は、基板搬送装置41による基板Sの搬送先をリフロー装置5とストッカ40とで選択的に切り替えるものである。格納機構43は、振り分け機構42によりストッカ40側に振り分けられた基板Sをストッカ40に格納可能なものである。マークカメラ44は、実装機3からの基板Sに付されたIDや位置決め基準マーク等を撮像し、撮像データを制御部45に送信する。
【0020】
基板回収装置4の制御部45は、CPU,ROM,RAM、記憶装置等を含むコンピュータであり、無線または有線通信を介して管理装置10と情報をやり取りすると共に、マークカメラ44の撮像データ、基板搬送装置41や振り分け機構42、格納機構43等に設置された図示しない各種センサの検出値等を取得する。制御部45は、管理装置10からの情報や、マークカメラ44の撮像データ、各種センサの検出値等に基づいて基板搬送装置41、振り分け機構42、格納機構43等を制御する。また、制御部45は、1枚の基板Sをリフロー装置5またはストッカ40側に振り分けた後、マークカメラ44介して取得した基板SのIDと共に当該基板Sの搬送先(リフロー装置5またはストッカ40)を示す情報を管理装置10に送信する。
【0021】
リフロー装置5は、基板回収装置4の後段側に配置され、当該基板回収装置4からの基板Sを搬送する基板搬送装置と、当該基板搬送装置により搬送される基板Sを加熱する図示しない加熱部と、管理装置10と情報をやり取りして基板搬送装置や加熱部等を制御するリフロー制御部55とを含む。リフロー制御部55は、CPU,ROM,RAM、記憶装置等を含むコンピュータである。リフロー装置5は、加熱部で基板Sを予め定められたリフロー温度(例えば220℃-260℃)に加熱することにより基板S上のはんだを溶融させる。これにより、溶融したはんだが冷却されて固化することで各部品が基板Sの配線パターンに電気的に接続、固定されることになる。
【0022】
管理装置10は、本実施形態において、CPU,ROM,RAM、記憶装置等を含む汎用のコンピュータであり、当該管理装置10には、ディスプレイやキーボード、マウスといった入力デバイスが接続される。また、管理装置10の記憶装置には、基板Sの生産プログラムや、基板Sの生産に関連した生産情報が記憶される。生産プログラムは、部品実装システム1の複数の実装機3における基板Sに対する部品の搭載順序や、基板Sの生産数等を規定するものある。また、生産情報には、基板Sにおけるはんだの印刷位置を示す印刷情報、基板Sに実装される部品に関する部品情報、各部品の基板Sにおける目標実装位置(XY座標)、実装ヘッド34に装着される吸着ノズル39に関するノズル情報等が含まれる。部品情報は、各実装機3により基板Sに搭載される部品の種類や、部品の在庫状況(実装機3へのリール310のセット状態)や実装機3により部品の搭載状況に応じて定まる各実装機3により基板Sに搭載されるべき部品等を示すものである。管理装置10は、基板Sの生産に際し、生産情報等を用いて生産プログラムを実行し、印刷装置2の印刷制御部25,各実装機3の実装制御部35、基板回収装置4の制御部45およびリフロー装置5のリフロー制御部55に各種指令信号等を与える。
【0023】
続いて、
図3から
図7を参照しながら、本開示の部品実装システム1の動作について説明する。
【0024】
図3は、部品実装システム1における基板Sに対する部品の実装手順を説明するためのフローチャートである。同図に示すように、複数の部品が実装された基板Sを生産するに際し、管理装置10は、まず、入力デバイスを介して作業員により入力された部品の在庫状況および補給状況を示す情報や、各実装制御部35からの各実装機3における部品(リール310)のセット状況を示す情報を取得する(ステップS10)。次いで、管理装置10は、実装機3にセット(補給)されたリール310に収容された部品の基板Sに対する搭載が許容されると共に、部品切れ(在庫切れ)の部品および既に基板Sに搭載されている部品の当該基板Sに対する搭載が禁止されるように、基板SのIDごとに部品情報(各実装機3により基板Sに搭載されるべき部品)を設定する。また、ステップS20において、管理装置10は、基板Sへの搭載が禁止された部品(
図1における部品P1参照)の上に実装される、いわゆるPOP部品やシールド部品(
図1における部品P2参照)の搭載が禁止(中止)されるように部品情報を設定する。更に、管理装置10は、作業員による基板Sの生産すなわち部品実装システム1の稼働の指示に応じて、生産プログラムに従って印刷装置2に基板Sに対するはんだの印刷(ステップS30)を開始させる。
【0025】
ステップS30において印刷装置2により1枚の基板S上にはんだが印刷されると、基板Sが印刷装置2から最上流側の実装機3に送り出され、当該基板Sに対して複数の実装機3によって複数の部品が搭載されていく(ステップS40)。1枚の基板Sに対して全実装機3によって予定されているすべての部品が搭載された場合には(ステップS50:YES)、基板回収装置4により最下流側の実装機3からの基板Sがリフロー装置5に送り出される。リフロー装置5は、基板Sをリフローし(ステップS60)、それにより1枚の基板Sに対する部品の実装が完了する。
【0026】
一方、部品切れにより基板Sに本来実装されるべき複数の部品の一部(少なくとも1つ)が複数の実装機3の少なくとも何れか1つによって当該基板Sに搭載されていない場合には(ステップS50:NO)、最下流側の実装機3からの基板Sが基板回収装置4により回収されてストッカ40に格納される(ステップS65)。そして、予定数の基板Sに対する部品の実装または搭載が完了するまで(ステップS70:NO)、ステップS30~S60またはS65の処理が繰り返し実行される。また、予定数の基板Sに対する部品の実装または搭載が完了すると(ステップS70:YES)、管理装置10は、印刷装置2、各実装機3、基板回収装置4およびリフロー装置5の作動を停止させ、基板Sの生産を停止させる。
【0027】
図4は、1枚の基板S上にはんだを印刷するために印刷装置2の印刷制御部25により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。同図に示すように、基板Sに対するはんだの印刷に際し、印刷制御部25は、まず、マークカメラ21からの撮像データに基づいて対象となる基板SのIDを取得する(ステップS300)。更に、印刷制御部25は、取得したIDの基板Sに対するはんだの印刷の有無を示す印刷実行情報を管理装置10から取得するために、当該IDを管理装置10に送信する。管理装置10は、印刷制御部25から受信したIDに対応した印刷実行情報を印刷制御部25に送信する(ステップS310)。印刷実行情報は、はんだが印刷される前の基板S(ID)について未印刷であることを示し、はんだが印刷された後の基板S(ID)について印刷済みであることを示すように設定されるものである。ステップS310にて管理装置10から基板Sの印刷実行情報を取得すると、印刷制御部25は、当該印刷実行情報に基づいて、当該基板Sに既にはんだが印刷されているか否かを判定する(ステップS320)。
【0028】
ステップS320にて管理装置10からの印刷実行情報に基づいて、基板Sにはんだが印刷されていないと判定した場合(ステップS320:YES)、印刷制御部25は、管理装置10からの指令信号や印刷情報等に従って当該基板Sに半田を印刷するように印刷装置2の基板搬送装置や印刷ヘッド、ヘッド移動装置等を制御する(ステップS330)。基板Sへのはんだの印刷が完了した後、印刷制御部25は、当該基板SのIDとはんだの印刷が完了した旨を示す情報を管理装置10に送信し(ステップS340)、基板Sを実装機3へと送り出す(ステップS350)。管理装置10は、印刷制御部25から受信したIDについて、印刷実行情報を印刷済みであることを示すように設定(更新)する。これに対して、管理装置10からの印刷実行情報に基づいて基板Sに既にはんだが印刷されていると判定した場合(ステップS320:NO)、印刷制御部25は、ステップS330およびS340の処理をスキップし、はんだを印刷することなく基板Sを実装機3へと送り出すように基板搬送装置、印刷ヘッド、ヘッド移動装置等を制御する(ステップS350)。ステップS350の処理の後、印刷制御部25は、次の基板Sに対するはんだの印刷処理を開始させる。
【0029】
図5は、1枚の基板S上に部品を搭載するために各実装機3の実装制御部35により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。同図に示すように、基板Sへの部品の搭載に際し、各実装機3の実装制御部35は、まず、マークカメラ37からの撮像データに基づいて対象となる基板SのIDを取得する(ステップS400)。更に、実装制御部35は、取得したIDの基板Sに対して搭載することができる部品を把握するために、当該IDを管理装置10に送信する。管理装置10は、実装制御部35から受信したIDに対応した部品情報(実装機3により基板Sに搭載されるべき部品)を実装制御部35に送信する(ステップS410)。
【0030】
ステップS410にて管理装置10から部品情報を取得すると、実装制御部35は、当該部品情報に含まれている部品、すなわち管理装置10により指定された部品のみを基板Sに搭載するように該当する実装機3を制御する(ステップS420)。更に、実装制御部35は、基板SのIDと当該基板Sに実際に搭載された部品(以下、適宜「搭載済部品」という。)を示す上記搭載部品情報を管理装置10に送信し(ステップS430)、基板Sを後段側(実装機3または基板回収装置4)に送り出すように実装機3を制御する(ステップS440)。ステップS430の処理の後、実装制御部35は、次の基板Sに対する部品の搭載を開始させる。
【0031】
図6は、
図5のステップS430にて実装制御部35から基板SのIDおよび搭載部品情報を受信した管理装置10により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。同図に示すように、管理装置10は、実装制御部35から基板SのIDおよび搭載部品情報を受信すると、当該IDおよび搭載部品情報を相互に関連付けして記憶装置に格納する(ステップS80)。更に、管理装置10は、当該搭載部品情報(搭載済部品)等に基づいて、ID等を送信した実装制御部35に対応する実装機3によって当該IDの基板Sに本来搭載されるべきにも拘わらず搭載されていない部品が存在するか否かを判定する(ステップS81)。
【0032】
ステップS81にて、実装制御部35からのIDの基板Sに本来搭載されるべき部品の一部(少なくとも1つ)が搭載されていないと判定した場合(ステップS81:YES)、管理装置10は、当該実装制御部35に対応する実装機3によって当該一部の部品(以下、適宜「未搭載部品」という。)が当該IDの基板Sに搭載されるべき部品であることを示すように部品情報を更新する(ステップS83)。これに対して、ステップS81にて、当該IDの基板Sに本来搭載されるべきすべての部品が搭載されていると判定した場合(ステップS81:NO)、管理装置10は、ID等を送信した実装制御部35に対応する実装機3によって当該IDの基板Sに搭載されるべき部品が存在しないことを示すように部品情報を更新する(ステップS85)。また、ID等を送信した実装制御部35に対応する実装機3によって当該IDの基板Sに上記未搭載部品が搭載された場合、管理装置10は、ステップS81に否定判定を行い、当該実装機3によって当該IDの基板Sに搭載されるべき部品が存在しないことを示すように部品情報を更新する(ステップS85)。ステップS83またはS85の処理を実行すると、管理装置10は、
図6のルーチンを終了させる。
【0033】
図7は、最下流側の実装機3からの基板Sをリフロー装置5またはストッカ40に振り分けるために基板回収装置4の制御部45により実行されるルーチンを例示するフローチャートである。同図に示すように、基板Sの振り分けに際し、基板回収装置4の制御部45は、まず、マークカメラ44からの撮像データに基づいて対象となる基板SのIDを取得する(ステップS500)。更に、制御部45は、取得したIDの基板Sに対して搭載された部品を示す上記搭載部品情報を管理装置10から取得するために、当該IDを管理装置10に送信する。管理装置10は、制御部45から受信したIDに対応した搭載部品情報を制御部45に送信する(ステップS510)。ステップS510にて管理装置10から搭載部品情報を取得すると、制御部45は、当該搭載部品情報に基づいて、各実装機3が全部品を基板Sに搭載しているか否かを判定する(ステップS520)。
【0034】
ステップS520にて各実装機3が全部品を基板Sに搭載していると判定した場合(ステップS520:YES)、制御部45は、実装機3側からの基板Sをリフロー装置5へと送り出すように基板搬送装置41および振り分け機構42を制御する(ステップS530)。更に、制御部45は、基板SのIDと当該基板Sの送出先(この場合、リフロー装置5)を示す情報とを管理装置10に送信し(ステップS540)、再度ステップS500以降の処理を実行する。管理装置10は、制御部45から受信したIDおよび送出先を相互に関連付けして記憶装置に格納する。
【0035】
これに対して、ステップS520にて、管理装置10からの搭載部品情報に基づいて、少なくとも何れか1台の実装機3が少なくとも1種類の部品を基板Sに搭載していないと判定した場合(ステップS520:NO)、制御部45は、実装機3側からの基板Sをストッカ40側へと送り出して当該ストッカ40に格納するように基板搬送装置41、振り分け機構42および格納機構43を制御する(ステップS535)。更に、制御部45は、基板SのIDと当該基板Sの送出先(この場合、ストッカ40)を示す情報とを管理装置10に送信し(ステップS540)、再度ステップS500以降の処理を実行する。管理装置10は、制御部45から受信したIDおよび送出先を相互に関連付けして記憶装置に格納する。
【0036】
上述のような処理が実行される部品実装システム1では、部品切れにより複数の部品の一部を基板Sに搭載することができない場合、制御装置としての管理装置10および各実装制御部35が、複数の実装機3に当該複数の部品の一部以外のみを基板Sに搭載させる(
図3のステップS10,S20、
図5のS420)。また、部品切れにより複数の部品の一部が基板Sに搭載されなかった場合、管理装置10は、実装制御部35からの搭載部品情報に基づいて、未搭載部品が基板Sに搭載されるべき部品であることを示すように部品情報を更新する(
図6のステップS83)。更に、部品実装システム1において、基板回収装置4は、複数の部品の一部(未搭載部品)が搭載されず、かつ複数の部品の一部以外(搭載済部品)が搭載された基板Sをリフロー装置5に送り出すことなくストッカ40に格納する(
図7のステップS500-S520,ステップS535)。
【0037】
そして、部品実装システム1では、予定数の基板Sに対する部品の実装または搭載が完了した後、不足部品が到着して該当する実装機3にリール310が補給されると、部品が補給された旨が実装制御部35から管理装置10に送信される。これに応じて、管理装置10は、部品切れ設定を解除すると共に、ストッカ40から基板Sを取り出して印刷装置2に投入するように無線通信を介して無人搬送車(AGV)7を遠隔制御する。これにより、部品実装システム1では、不足部品の到着に応じて自動的に基板Sの生産を再開させると共に、複数の実装機3の少なくとも何れか1台に上記複数の部品の一部すなわち未搭載部品のみを基板Sに搭載させることが可能となる(
図5のステップS420)。
【0038】
すなわち、部品実装システム1では、部品切れにより基板Sに複数の部品の一部を搭載することができない場合、複数の部品の一部以外のみが基板Sに搭載されると共に、当該基板Sが基板回収装置4により回収される。その後、部品切れが解消されて該当する実装機3に部品が補給されると、ストッカ40に格納された基板Sが印刷装置2に投入され、基板Sに既に搭載されている部品(搭載済部品)上に同じ部品が搭載されることなく、部品が補給された実装機3によって不足していた未搭載部品が基板S上に搭載される。
【0039】
この結果、部品実装システム1によれば、部品切れにより基板Sに搭載することができなかった部品(未搭載部品)を後から手作業により当該基板Sに実装する必要がなくなり、部品切れが生じた際の作業員に要求される処理(例えば、搭載済部品の搭載をスキップさせる処理)を減らして、部品切れに伴う基板Sの品質低下や生産効率の悪化を良好に抑制することが可能となる。また、基板Sの生産(実装)開始時点で複数の部品の一部が在庫切れになっている場合、部品実装システム1では、部品切れになっている部品以外のみを基板Sに対して搭載しておき、部品到着後に未搭載部品のみを基板S上に搭載するもできる。これにより、部品の到着待ち時間によっては、基板Sの生産を中止して不足部品の到着を待つ場合よりも、複数の基板Sの生産に要する時間を短縮化して生産効率をより向上させることができる。
【0040】
更に、部品切れの解消後に未搭載部品を基板S上に搭載する際には、印刷装置2により当該基板Sにはんだが既に印刷されていることになるが、上述のように、印刷制御部25は、基板Sへのはんだの印刷が完了した後、基板SのIDとはんだの印刷が完了した旨を示す印刷実行情報を管理装置10に送信する(
図4のステップS340)。また、管理装置10は、印刷制御部25から受信したIDについて、印刷実行情報を印刷済みであることを示すように設定(更新)する。これにより、部品実装システム1では、既にはんだが印刷されて複数の部品の一部(未搭載部品)以外が搭載された基板Sに対するはんだの印刷を自動的にスキップさせることが可能となるので、不良基板の発生を良好に抑制することができる。
【0041】
加えて、制御装置としての管理装置10は、部品切れにより基板Sへの搭載が禁止された部品(P1)の上に実装される、いわゆるPOP部品やシールド部品(P2)の搭載が禁止(中止)されるように部品情報を設定する(
図3のステップS20)。これにより、部品切れに伴う不良基板の発生を良好に抑制することが可能となる。
【0042】
なお、部品実装システム1において、基板Sの生産中に部品切れが生じた場合、その時点から、部品切れとなった部品(およびそれに対応したPOP部品等)の搭載を禁止しつつ、基板Sに対する部品切れとなっていない部品の搭載を継続させてもよい。また、部品実装システム1によれば、例えば何れかの吸着ノズル39により対応する部品を吸着することができなくなった場合のように、部品切れ以外の要因により複数の部品の一部を基板Sに実装することができなくなった場合においても、実装することができない部品以外を基板Sに対して搭載しておき、基板Sの品質低下や生産効率の悪化を抑制することが可能となる。更に、部品実装システム1は、複数の部品を基板Sに搭載可能な単一の実装機3を含むものであってもよく、単一の部品を基板Sに搭載可能な複数の実装機3を含むものであってもよい。また、部品実装システム1は、リフロー装置5を含まず、すべての部品が搭載された基板Sと、一部の部品が搭載されていない基板Sとを別々のストッカに格納するように構成されてもよい。
【0043】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発明は、部品実装システムの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 部品実装システム、2 印刷装置、21 マークカメラ、25 印刷制御部、3 実装機、30 筐体、31 部品供給部、32 基板搬送装置、33 XY移動装置、33x X軸スライダ、33y Y軸スライダ、34 実装ヘッド、34a ヘッド本体、35 実装制御部、36 パーツカメラ、37 マークカメラ、38 ノズルステーション、39 吸着ノズル、310 リール、4 基板回収装置、40 ストッカ、41 基板搬送装置、42 振り分け機構、43 格納機構、44 マークカメラ、45 制御部、5 リフロー装置、55 リフロー制御部、10 管理装置、P1,P2 部品、Rx X軸ガイドレール、Ry Y軸ガイドレール、S 基板。