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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】二次電池用梱包材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/256 20210101AFI20241017BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/231 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/233 20210101ALI20241017BHJP
   A62C 3/06 20060101ALI20241017BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20241017BHJP
   A62D 1/08 20060101ALI20241017BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01M50/256 201
H01M50/202 401F
H01M50/204 401F
H01M50/227
H01M50/231
H01M50/233
A62C3/06 Z
H01M10/42 A
A62D1/08
B65D65/40 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020028086
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132011
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503064969
【氏名又は名称】株式会社ニチボウ
(73)【特許権者】
【識別番号】305062549
【氏名又は名称】ヤマト運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090402
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 法明
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 裕一
(72)【発明者】
【氏名】友部 健
(72)【発明者】
【氏名】土田 邦美
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108609279(CN,A)
【文献】国際公開第2014/069022(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045195(WO,A1)
【文献】特表2014-523622(JP,A)
【文献】特開2018-206656(JP,A)
【文献】特表2017-512359(JP,A)
【文献】中国実用新案第208955136(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
A62C 2/00-99/00
A62D 1/00-9/00
B65D 65/00-65/46
B65D 67/00-79/02;81/18-81/30;81/38;85/88
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を保管したり搬送したりするときに用いる梱包材であり、該二次電池を包む消火被覆材と、該消火被覆材で包まれた該二次電池を格納する格納箱と、該消火被覆材で包まれた該二次電池が格納された該格納箱を入れて保管したり搬送したりする搬送容器とを備え、該消火被覆材は消火剤が充填された1又は2以上の消火袋からなり、該消火袋は該二次電池の出火の熱で破損口が形成される合成樹脂製シートからなり、該消火剤は25℃(常温)で液体、沸点が75℃以下の消火作用を有する化合物からなることを特徴とする二次電池用梱包材。
【請求項2】
前記消火剤がCFCFC(O)CF(CFの化学式で示される物質であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用梱包材。
【請求項3】
前記合成樹脂製シートが熱可塑性樹脂層にガスバリヤー層を積層したものからなることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用梱包材。
【請求項4】
前記ガスバリヤー層がエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(ethylenevinylalcohol copolymer:EVOH)からなることを特徴とする請求項3に記載の二次電池用梱包材。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂層の厚さが0.03mm~0.15mm、前記ガスバリヤー層の厚さが0.001mm~0.05mmであることを特徴とする請求項3に記載の二次電池用梱包材。
【請求項6】
前記ガスバリヤー層の外側に前記熱可塑性樹脂層が積層されていることを特徴とする請求項3に記載の二次電池用梱包材。
【請求項7】
前記ガスバリヤー層が前記熱可塑性樹脂層に挟まれていることを特徴とする請求項3に記載の二次電池用梱包材。
【請求項8】
前記格納箱を包む防火袋を備えていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用梱包材。
【請求項9】
前記防火袋を包むガス保持袋を備えていることを特徴とする請求項8に記載の二次電池用梱包材。
【請求項10】
前記二次電池を少なくとも前記消火被覆材で包んで形成された梱包物を前記搬送容器に簡易に固定する固定手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用梱包材。
【請求項11】
前記搬送容器が箱又は袋であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用梱包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を包んで用い、該二次電池から出火した場合、該二次電池を速やかに消火する消火被覆材を用いた二次電池用梱包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は製造上、保管上または使用上の問題で不具合が起こる可能性がある。そのようなリチウムイオン電池は製造元の会社に送り返す必要がある。
【0003】
リチウムイオン電池は、大容量の電気エネルギーを蓄えており、しかも燃えやすい有機物を構成材料としているので、不具合のあるリチウムイオン電池は、保管中や輸送中に出火したり、爆発したりする可能性がある。
【0004】
リチウムイオン電池が保管中や輸送中に出火したり、爆発したりすると、その出火や爆発だけでは済まず、出火や爆発により生じた火炎で一緒に運んでいる他の荷物を延焼させ、自動車火災を引き起こすおそれがある。
【0005】
保管したり、輸送するリチウムイオン電池が複数本或いは大量にある場合は、1本のリチウムイオン電池の出火や爆発でも、他のリチウムイオン電池を誘爆させ、リチウムイオン電池の出火や爆発の規模が大きくなり、自動車火災を引き起こすおそれが更に高まる。
【0006】
自動車が走行中に火災を引き起こすと、道路が渋滞するだけでなく、別の大きな事故を誘発するおそれがある。特に、トンネル内を走行中に自動車火災を引き起こした場合は、他の自動車を巻き込んで、大惨事になるかもしれない。
【0007】
そこで、このような問題が起きないように、リチウムイオン電池を保管したり輸送する場合は、頑丈な金属製の専用容器を使用することが提案されている。しかし、頑丈な金属製の専用容器は、かなりの重量があり、この専用容器を取り扱う作業員に過大な負担を与えるという問題がある。
【0008】
しかも、頑丈な金属製の専用容器を多数個、輸送会社がストックしておくためには、かなりのコストがかかるという問題もある。
【0009】
他の荷物を延焼させないように、送り返すリチウムイオン電池だけを単独で保管したり輸送することも考えられるが、そのようにすると保管や輸送のコストが高くなり過ぎる。
【0010】
しかも、現状は、リチウムイオン電池の保管や輸送について法的な規制がないので、出火や爆発に対する防護手段を何ら施すことなく、普通の荷物に混ぜてリチウムイオン電池を保管したり輸送しているのが実情のようであり、リチウムイオン電池の保管や輸送についての安全性が問われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2018/047762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、出火や爆発の可能性がある二次電池を安全かつ安価に保管したり輸送できるようにするための二次電池用梱包材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、消火被覆材と、該二次電池を少なくとも該消火被覆材で包んで形成された梱包物を入れて保管したり搬送したりする搬送容器とを備えてなる二次電池用梱包材である。
【0014】
ここで、前記消火被覆材は、二次電池を包んで用い、該二次電池から出火した場合、該二次電池を消火するものであって、消火剤が充填された消火袋を有しており、該消火袋は該出火の熱で破損口が形成される合成樹脂製シートからなる消火被覆材である。
【0015】
また、前記消火剤としては、25℃(常温)で液体、沸点が75℃以下の消火作用を有する化合物が好ましい。25℃(常温)で液体の化合物だと、発熱した二次電池を液体の消火剤に浸けて冷やすことができ、沸点が75℃以下の化合物だと、発熱した二次電池により容易に気化して、二次電池を気化熱で冷却させることができる。そのような化合物としては、例えばCFCFC(O)CF(CFの化学式で示される化合物を挙げることができる。
【0016】
また、前記合成樹脂製シートとしては、単純に熱可塑性樹脂製シートを用いてもよいが、熱可塑性樹脂層にガスバリヤー層を積層した構造のものが好ましい。ガスバリヤー層を積層した構造のものは、気化した消火剤が消火袋を透過して消火袋の外に逃げるのを防止することができるからである。消火袋の内面側になる合成樹脂は消火剤に対して耐久性がある材質の合成樹脂が好ましい。
【0017】
該熱可塑性樹脂層の材料としては、出火の熱で破損口が容易に形成される合成樹脂であれば如何なるものを用いても良い。例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂又はその他のポリオレフィン樹脂やナイロンを使用することができる。該ガスバリヤー層の材料としては、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(ethylenevinylalcohol copolymer:EVOH)を挙げることができるが、消火剤の透過を遮蔽する能力が高い材料であれば、これ以外の合成樹脂を使用しても良い。
【0018】
該熱可塑性樹脂層の厚さは0.03mm~0.15mmが好ましい。該熱可塑性樹脂層の厚さが0.03mm未満では消火剤を充填した該消火袋が物理的に破損し易いという問題がある。該熱可塑性樹脂層の厚さが0.15mmを超えると、出火の熱で該消火袋に破損口が速やかに形成され難くなるという問題がある。熱可塑性樹脂層の厚さが0.03mm~0.15mmの場合、これらの問題が起きないからである。
【0019】
前記ガスバリヤー層の厚さは0.001mm~0.05mmが好ましい。該ガスバリヤー層の厚さが0.001mm未満では消火剤が浸透して消火袋から逃げる量が多くなるという問題がある。該ガスバリヤー層の厚さが0.05mmを超えると、出火の熱で該消火袋に破損口が速やかに形成され難くなるという問題がある。ガスバリヤー層の厚さが0.001mm~0.05mmの場合、これらの問題が起きないからである。
【0020】
積層構造の合成樹脂製シートとしては、該消火袋の内側がガスバリヤー層で、該消火袋の外側が熱可塑性樹脂層となるような構造が好ましい。該消火袋に外部から物理的な接触があった場合、熱可塑性樹脂層がガスバリヤー層を防護するので、該ガスバリヤー層に傷が付き難く、該消火剤が該消火袋を浸透して外部に漏洩し難くなるからである。
【0021】
また、積層構造の合成樹脂製シートとしては、該ガスバリヤー層が前記熱可塑性樹脂層やその他の合成樹脂層に挟まれている構造なら更に好ましい。該熱可塑性樹脂層やその他の合成樹脂層が該ガスバリヤー層を表裏面から防護するので、該ガスバリヤー層が更に傷付き難くなり、該消火剤のガスが該消火袋を透過して外側に更に逃げ難くなるからである。
【0022】
消火被覆材の形状としては略マット状又は略袋状の形状を採用することができる。マット状とは、複数の消火袋を長手方向に連続的に略板状に連結させた形状をいう。消火被覆材の形状を略マット状又は略袋状の形状にすれば、二次電池を収納・包囲し易い。
【0023】
本願発明である二次電池用梱包材は、前記消火被覆材で包んだ二次電池を格納する格納箱を備えていてもよい。格納箱はある程度の強度があって軽い不燃性の材料、例えばアルミニウムにより形成するのが好ましい。格納箱のサイズとしては、例えば190mm×130mm×50mmを例示することができるが、格納箱のサイズは任意であり、このサイズに限定されるものでない。
【0024】
本願発明である二次電池用梱包材は、前記格納箱を包む防火袋を備えていてもよい。防火袋はスパッタフェルトで形成するのが好ましい。スパッタフェルトは耐火性能が高いからである。スパッタフェルトはt=5mm程度の厚さのものが好ましいが、防火袋の厚さは任意であり、この厚さに限定されるものではない。
【0025】
本願発明である二次電池用梱包材は、前記防火袋を包むガス保持袋を備えていてもよい。ガス保持袋としてはポリプロピレン製の袋を使用することができる。ポリプロピレン製の袋は、容量が20リットル~40リットル程度で、シートの厚さが30μm程度のものを使用することができるが、ガス保持袋の大きさは任意であり、このサイズに限定されるものではない。材質もポリプロピレンに限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド又はポリウレタン等でもよい。
【0026】
本願発明である二次電池用梱包材は、前記ガス保持袋を搬送容器に簡易に固定する固定手段を備えていてもよい。固定手段としては、例えば透明な合成樹脂フィルムと粘着剤とからなる簡易な固定手段を使用することができるが、固定手段は任意であり、他の固定手段を採用してもよい。
【0027】
本願発明である二次電池用梱包材は、前記搬送容器として箱又は袋を使用することができる。箱は、段ボール製の箱又は強化プラスチック製の箱を採用することができる。箱のサイズとしては、例えば350mm×250mm×150mmを採用することができるが、箱のサイズは任意であり、このサイズに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0028】
該二次電池が発熱したり、該二次電池から出火した場合、該二次電池の発熱や該出火の熱で該消火袋に破損口が形成され、該破損口から消火剤が漏出し、漏出した該消火剤により該二次電池が冷却される。
【0029】
二次電池を冷却している消火剤は該二次電池の熱や出火の熱で気化して消火剤のガスになり、二次電池の周囲の空間が消火剤のガスで満たされ、該二次電池への酸素の供給が絶たれる。該二次電池が冷却され、また該二次電池への酸素の供給が絶たれるので、該二次電池内の可燃物の燃焼が抑制又は停止され、該二次電池の爆発が阻止されたり、該二次電池が消火される。
【0030】
二次電池が爆発したり、二次電池から出火したりすると、この爆発や出火で一緒に運んでいる周囲の荷物が延焼して自動車火災になるおそれがあるが、該二次電池の爆発が阻止されたり、該二次電池が消火されるので、本発明により、周囲の荷物への延焼が防止され、自動車火災が防止され、自動車火災に起因する大事故が防止される。
【0031】
以上の通りであるから、本発明によれば、二次電池を安全かつ安価に保管したり輸送することができる。
【0032】
荷物の中に複数本の二次電池が入っていて、1本の二次電池が発熱又は出火した場合、発熱している、又は出火している二次電池が速やかに冷却・消火されるので、発熱している、又は出火している二次電池が他の二次電池を加熱することによって生じる連鎖的な爆発が防止され、多数本の二次電池が連鎖的に爆発することによって生じる自動車火災が防止され、自動車火災による大事故が防止される。
【0033】
前記消火剤がCFCFC(O)CF(CFの化学式で示される物質からなる場合は、本物質が高性能な消火剤なので、出火している二次電池の燃焼が速やかに抑制又は停止される。
【0034】
前記合成樹脂製シートがガスバリヤー層を積層したものからなる場合は、消火剤が合成樹脂製シートを透過して外部に漏洩し難いので、長期に亘って消火剤が減り難く、二次電池からの出火がない限り、消火被覆材を長期間に亘って使用することができる。
【0035】
前記ガスバリヤー層がエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(ethylenevinylalcohol copolymer:EVOH)からなる場合は、合成樹脂シートの消火剤に対する遮蔽能が高まるので、消火剤が合成樹脂製シートから透過し難く、消火剤が長期間に亘って減り難く、二次電池からの出火がない限り、消火被覆材を長期間に亘って使用することができる。
【0036】
前記熱可塑性樹脂層の厚さが0.03mm~0.15mm、前記ガスバリヤー層の厚さが0.001mm~0.05mmの場合は、二次電池の発熱や出火の熱で消火袋に破損口が速やかに形成され、且つ消火袋内に消火剤を長期間に亘って保持させることができる。
【0037】
消火袋の内側がガスバリヤー層で、消火袋の外側が熱可塑性樹脂層となるような構造にした場合は、消火袋に外部から物理的な接触があってもガスバリヤー層が破損し難いので、消火剤が消火袋を浸透して外部に漏洩し難く、長期間に亘って消火剤が減り難く、二次電池からの出火がない限り、消火被覆材を長期間に亘って使用することができる。
【0038】
前記ガスバリヤー層が前記熱可塑性樹脂層に挟まれている場合は、ガスバリヤー層が破損し難いので、消火剤が合成樹脂製シートから透過し難く、長期間に亘って消火剤が減り難く、二次電池からの出火がない限り、消火被覆材を長期間に亘って使用することができる。
【0039】
本発明が消火被覆材で包まれた二次電池を格納する格納箱を備えている場合は、二次電池の発熱又は出火により該消火被覆材から漏出した消火剤が該格納箱の底部に消火剤の溜まりを形成する。
【0040】
発熱又は出火している二次電池は該消火剤の溜まりに浸かり、該二次電池は溜まりになった該消火剤によって冷却され、また溜まりになった消火剤は該二次電池の熱や該出火の熱によって気化し、この気化した消火剤ガスによって二次電池への酸素の供給が絶たれ、二次電池の内部で起きている燃焼が抑制又は停止される。
【0041】
また、本発明が消火被覆材で包まれた二次電池を格納する格納箱を備えている場合は、二次電池が爆発した際に、爆発により飛び散った二次電池の破片の殆どが格納箱の中に留まり、格納箱を外側から梱包している梱包材を破損させない。
【0042】
出火した二次電池から排出された高熱の煙やガス、二次電池の爆発により生じた高熱の煙やガスは格納箱の隙間を通って格納箱の外に排出される。
【0043】
本発明が格納箱を外側から包む防火袋を備えている場合は、格納箱の隙間を通って格納箱の外に排出された高熱の煙やガスは該防火袋で熱を吸収され、プラスチック製の袋(後述するガス保持袋)で保持できる温度まで低下させられ、防火袋の外側に排出される。
【0044】
本発明が防火袋を外側から包むガス保持袋を備えている場合は、防火袋の外側に排出された煙やガスはガス保持袋内に保持され、荷物の周囲に放出されない。このため、一緒に運んでいる周囲の荷物が、出火した又は爆発した二次電池から排出された煙やガスによって汚損されない。
【0045】
本発明が二次電池を梱包した梱包物を梱包容器の中に簡易に固定する粘着シート製の簡易固定シートを備えている場合は、該梱包物を該梱包容器内に容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は本発明に係る二次電池用梱包材で二次電池を梱包して形成された梱包物の断面構造を示す説明図である。
図2図2は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態1)を示す説明図である。
図3図3は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態2)を示す説明図である。
図4図4は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態3)を示す説明図である。
図5図5は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態4)を示す説明図である。
図6図6は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態5)を示す説明図である。
図7図7は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態6)を示す説明図である。
図8図8は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態7)を示す説明図である。
図9図9は本発明に係る二次電池用梱包材で梱包された二次電池が発熱・出火した場合の状況を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
出火や爆発の危険性がある二次電池を安全且つ安価に保管したり輸送するという目的を、安価な材料により、安全性を犠牲にすることなく実現した。
【実施例1】
【0048】
図1は本発明に係る二次電池用梱包材で二次電池を梱包して形成された梱包物の断面構造を示す説明図である。同図において、10は二次電池であり、二次電池10は消火被覆材12に包まれている。消火被覆材12は格納箱14の中に格納されている。格納箱14は防火袋16の中に入れられている。防火袋16はガス保持袋18の中に入れられている。ガス保持袋18はクリップ28によって閉じられている。ガス保持袋18は搬送容器20の中に入れられている。ガス保持袋18は搬送容器20に固定手段22によって固定されている。
【0049】
ここで、二次電池10としては、例えばリチウムイオン電池を挙げることができるが、二次電池10はリチウムイオン電池に限定されるものではなく、出火したり爆発したりする危険性がある全ての二次電池を対象とする。
【0050】
消火被覆材12は、消火剤24が充填された1又は2以上の消火袋26を有しており、消火袋26は、リチウムイオン電池の出火の熱で破損口が容易に形成されるような、熱に弱い合成樹脂製シートからなる。
【0051】
消火剤24としては25℃(常温)で液体、沸点が75℃以下の消火作用を有する化合物が好ましい。25℃(常温)で液体の化合物だと、発熱した二次電池10を液体の消火剤24に浸けて冷やすことができ、沸点が75℃以下の化合物だと、発熱した二次電池10から気化熱を奪いながら気化して、二次電池10を冷却させることができる。そのような化合物としては、例えばCFCFC(O)CF(CFの化学式で示される化合物を挙げることができる。
【0052】
合成樹脂製シートとしては、単純に熱可塑性樹脂製シートを用いてもよいが、該熱可塑性樹脂層に該ガスバリヤー層を積層した構造のものが好ましい。該ガスバリヤー層を積層した構造のものの場合は、消火袋26から消火剤24が浸透・漏洩するのを防止して、消火被覆材12を長期間に亘って繰り返し使用することができるからである。
【0053】
該熱可塑性樹脂層の材料としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はその他のポリオレフィン樹脂を使用することができる。該ガスバリヤー層の材料としては、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(ethylenevinylalcohol copolymer:EVOH)を挙げることができる。
【0054】
該熱可塑性樹脂層の厚さは0.03mm~0.15mmが好ましい。該熱可塑性樹脂層の厚さが0.03mm未満では消火剤24を充填した消火袋26が物理的に破損し易いという問題がある。該熱可塑性樹脂層の厚さが0.15mmを超えると、二次電池10の出火の熱で消火袋26に速やかに破損口が形成されなくなるという問題がある。該熱可塑性樹脂層の厚さが0.03mm~0.15mmの場合、これらの問題が起きないからである。
【0055】
該ガスバリヤー層の厚さは0.001mm~0.05mmが好ましい。該ガスバリヤー層の厚さが0.001mm未満では消火剤24が消火袋26から浸透・漏洩するという問題がある。該ガスバリヤー層の厚さが0.05mmを超えると、二次電池10の出火の熱で消火袋26に速やかに破損口が形成されなくなるという問題がある。該ガスバリヤー層の厚さが0.001mm~0.05mmの場合、これらの問題が起きないからである。
【0056】
積層構造の合成樹脂製シートを使用する場合、消火袋26の内側がガスバリヤー層で、消火袋26の外側が熱可塑性樹脂層になるようにするのが好ましい。消火袋26に外部から物理的な接触があった場合、該熱可塑性樹脂層が該ガスバリヤー層を防護するので、該ガスバリヤー層に傷が付き難く、消火剤24が消火袋26から浸透・漏洩し難くなるからである。
【0057】
また、積層構造の合成樹脂製シートとしては、該ガスバリヤー層が該熱可塑性樹脂層(例:ナイロン層)に挟まれている構造も好ましい。該熱可塑性樹脂層が該ガスバリヤー層を表裏面から防護するので、該ガスバリヤー層に更に傷が付き難く、消火剤24が消火袋26から更に浸透・漏洩し難くなるからである。
【0058】
消火被覆材12の形状としては略マット状又は略袋状の形状を採用することができる。略マット状とは、複数の消火袋を長手方向に略板状になるように連結させた形状をいう。消火被覆材12の形状を略マット状又は略袋状の形状にすれば、二次電池を収納・包囲し易いからである。
【0059】
格納箱14は、あまり重くなくて、ある程度の強度のある不燃性の材料、例えばアルミニウムで作られたものが好ましい。格納箱のサイズとしては、例えば190mm×130mm×50mmを例示することができるが、格納箱のサイズは任意であり、このサイズに限定されるものでない。
【0060】
防火袋16は、スパッタフェルトで形成したものがよい。スパッタフェルトは耐炎性能が高いからである。スパッタフェルトはt=5mm程度の厚さのものが好ましいが、スパッタフェルトの厚さは任意であり、この厚さに限定されるものではない。
【0061】
ガス保持袋18は、ポリプロピレン製の袋を使用することができる。ポリプロピレン製の袋は、容量が20リットル~40リットル程度で、シートの厚さが30μm程度のものを使用することができるが、サイズは任意であり、このサイズに限定されるものではない。
【0062】
固定手段22としては、例えば透明な合成樹脂製フィルムと粘着剤とからなる簡易な固定手段を使用することができるが、固定手段は任意であり、他の固定手段を採用してもよい。
【0063】
搬送容器20としては、箱又は袋を使用することができる。箱としては段ボール製の箱又は強化プラスチック製の箱を採用することができる。箱のサイズとしては、例えば350mm×250mm×150mmを採用することができるが、箱のサイズは任意であり、このサイズに限定されるものではない。
【0064】
次に、本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する方法について図2図8を参照しながら説明する。
【0065】
梱包ステップ1:図2は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態1)を示す説明図である。同図に示すように、消火被覆材12の上に二次電池10を置き、消火被覆材12を折り畳み、二次電池10を消火被覆材12で包む。
【0066】
梱包ステップ2:図3は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態2)を示す説明図である。同図に示すように、梱包ステップ1で形成した梱包物、すなわち二次電池10を消火被覆材12で包んだものを格納箱14の中に格納する。
【0067】
梱包ステップ3:図4は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態3)を示す説明図、図5は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態4)を示す説明図である。図4に示すように、防火袋16を準備し、図5に示すように、防火袋16の中に格納箱14を挿入・収納する。
【0068】
梱包ステップ4:図6は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態5)を示す説明図である。同図に示すように、ガス保持袋18を準備し、ステップ3で形成した梱包物、すなわち防火袋16に挿入・収納した格納箱14をガス保持袋18の中に入れる。
【0069】
梱包ステップ5:図7は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態6)を示す説明図、図8は本発明に係る二次電池用梱包材を用いて二次電池を梱包する際の状態(状態7)を示す説明図である。図7に示すように、搬送容器20を準備し、図8に示すように、ガス保持袋で包んだ梱包物を搬送容器20に収納し、梱包物を搬送容器20に固定手段22で簡易に固定する。
【0070】
次に、二次電池10が発熱したり、二次電池10から出火した場合の二次電池用梱包材の作用について図9を参照しながら説明する。
【0071】
図9は本発明に係る二次電池用梱包材で梱包された二次電池が発熱・出火した場合の状況を説明する説明図である。同図に示すように、二次電池10が発熱したり、二次電池10から出火した場合、二次電池10の発熱や該出火の熱で消火袋26に破損口が形成され、該破損口から消火剤24が漏出し、漏出した消火剤24は格納箱14の底部に消火剤24の溜まりを形成する。
【0072】
二次電池10は消火剤24の溜まりに浸かり、消火剤24によって冷却される。また、溜まりになっている消火剤24は二次電池10の熱や出火の熱で温められて気化し、二次電池10の周囲に消火剤ガスの雰囲気が形成され、該消火剤ガスの雰囲気により二次電池10の周囲に酸素が無くなり、二次電池10への酸素の供給が絶たれる。
【0073】
消火剤24により、二次電池10が冷却され、また二次電池10への酸素の供給が絶たれるので、二次電池10の内部の可燃物の燃焼が停止され、二次電池10が消火される。
【0074】
二次電池10が爆発した場合は、爆発により飛び散った二次電池10の破片の殆どは格納箱14の中に留まり、格納箱14を外側から包んでいる防火袋16を損傷させない。
【0075】
出火した二次電池10から排出された高熱の煙やガス、二次電池10の爆発により生じた高熱の煙やガスは格納箱14の隙間を通って格納箱14の外に排出される。
【0076】
格納箱14の隙間を通って格納箱14の外に排出された高熱の煙やガスは防火袋16で熱をある程度吸収され、温度を低下させられ、防火袋16の外側に排出される。
【0077】
防火袋16の外側に排出された煙やガスはガス保持袋18の内部に保持され、荷物の周囲に放出されない。このため、一緒に運んでいる周囲の荷物は、出火した又は爆発した二次電池から排出された煙やガスによって汚損されない。
【0078】
なお、上記実施例では、消火剤が入った消火袋で二次電池を包むことができるように消火被覆材の形状を略マット状又は略袋状の形状にしているが、二次電池を包むことを考慮しないで、消火剤が入った消火袋だけの単純な形状のものを形成し、これを二次電池と一緒にし、上記実施例と同様に梱包し、この状態で二次電池を保管したり輸送しても、二次電池に対する消火ないし防火の効果は同様に得られる。この場合、消火剤、消火袋、格納箱、防火袋、ガス保持袋、搬送容器、固定手段は上記実施例と同じとする。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、出火や爆発の危険性がある二次電池を保管したり輸送する際の簡易な梱包材として使用するだけでなく、花火、ライター、シンナー等の可燃物を保管したり輸送する際の簡易な梱包材としても使用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 二次電池
12 消火被覆材
14 格納箱
16 防火袋
18 ガス保持袋
20 搬送容器
22 固定手段
24 消火剤
26 消火袋
28 クリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9