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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20241017BHJP
   C09J 171/10 20060101ALI20241017BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241017BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241017BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J171/10
C09J7/38
C09J11/06
H01L21/56 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020064847
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161274
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 憲明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信之
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203992(JP,A)
【文献】特開2016-011427(JP,A)
【文献】特開2014-019869(JP,A)
【文献】特開2015-218287(JP,A)
【文献】特開2011-168672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノキシ樹脂と、酸無水物と、エポキシ樹脂と、を含む粘着層を有し、
前記粘着層100質量部に対して、
前記フェノキシ樹脂の含有量が30~80質量部、
前記酸無水物の含有量が10~25質量部、
前記エポキシ樹脂の含有量が10~45質量部である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着層の150以上200℃以下における貯蔵弾性率が50MPa以下であり、200℃超250℃以下における貯蔵弾性率が3MPa以上である、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着層の150℃未満における貯蔵弾性率が3MPa~10000MPaである、請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ピレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、キサンテン骨格を含有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を含有するフェノキシ樹脂及びジシクロペンタジエン骨格を含有するフェノキシ樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着層を構成する樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である、請求項1~4のいずれか1項記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記酸無水物は、単官能酸無水物及び多官能酸無水物からなる群から選択されるいずれか1種以上を含む、請求項1~5のいずれか1項記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上持つエポキシ樹脂である請求項1~6のいずれか1項記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着層が硬化触媒をさらに含有する、請求項1~7のいずれか1項記載の粘着テープ。
【請求項9】
半導体装置の製造に用いられる、請求項1~8いずれか1項記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記半導体装置はQFNパッケージ(Quad Flat Non-leaded Package)である、請求項9記載の粘着テープ。
【請求項11】
ワイヤボンディング工程の前にリードフレームに貼合される先貼り用テープである、請求項9又は10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記リードフレームから剥離可能な、請求項11に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体装置の製造に用いられる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの実装技術において、CSP(Chip Size/Scale Package)技術が注目されており、中でも、QFN(Quad Flat Non-leaded package)に代表されるリード端子がパッケージ内部に取り込まれた形態のパッケージについては、小型化と高集積の面で有利である。そのようなQFNの製造方法としては、複数のQFN用半導体チップをリードフレームのパッケージパターン領域のダイパッド上に配列し、金型のキャビティ内で封止樹脂にて一括封止したのち、個別のQFN構造物に切り分けることにより、リードフレーム面積あたりの生産性を向上させる方法が採用されている。
【0003】
上記のような、複数の半導体チップを一括封止するQFNの製造方法において、樹脂封止時のモールド金型によってクランプされる領域はパッケージパターン領域より外側に広がった樹脂封止領域の更に外側の領域だけである。従って、封止樹脂がリードフレーム裏面に漏れ出し、モールド樹脂によるバリに起因する接続不良や、QFNの端子等が樹脂で被覆されるという問題が生じ易い。このため、QFNの製造方法においては、リードフレームの裏面側に耐熱性の粘着テープを貼り付け、この粘着テープの自着力(マスキング)を利用したシール効果により、樹脂封止時のリードフレーム裏面側への樹脂漏れを防ぐことが効果的と考えられる。
【0004】
このような製造方法においては、リードフレーム上に半導体チップを搭載した後、あるいはワイヤボンディングを実施した後から粘着テープの貼り合せを行う方法や、粘着テープを最初の段階でリードフレームの裏面(アウターパット面)に貼り合わせ、その後、半導体チップの搭載工程やワイヤボンディング工程を経て、封止樹脂による封止工程を行う方法が採用されている。例えば、特許文献1には、粘着剤層を有する耐熱性粘着テープを用いて、樹脂漏れを防止しつつワイヤボンディングなどの一連の工程を実施できる製造方法が提案されている。また、特許文献2には、基材と、フェノキシ樹脂を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層と、を含む電子部品製造用粘着テープが開示されており、これにより粘着テープの粘着剤残渣や、樹脂封止工程における密封樹脂漏れが改善できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-184801号公報
【文献】特表2012-504698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
QFNの製造においては、リードフレーム上に半導体チップを搭載した後、リードフレームの端子部先端と半導体チップ上の電極パッドとをボンディングワイヤで電気的に接続するワイヤボンディング工程が行なわれる。この際、リードフレームの裏面に貼合された粘着テープが高弾性でないと、ボンディングワイヤとリードフレームとの間の接続不良が発生し、ワイヤ接続信頼性が低下するという問題がある。従来の粘着テープは、この点で十分なワイヤ接続信頼性を有するとはいえず、特に、リードフレームとしてPPF(Pre-Plated Lead-Frame)を用い、ワイヤとして銅を用いる場合に、ワイヤ接続信頼性の低下が顕著となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ワイヤボンディング工程後のワイヤ接続信頼性に優れた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フェノキシ樹脂と、酸無水物と、エポキシ樹脂を含む粘着層を有する粘着テープが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
フェノキシ樹脂と、酸無水物と、エポキシ樹脂と、を含む粘着層を有する粘着テープ。
[2]
前記粘着層の150以上200℃以下における貯蔵弾性率が50MPa以下であり、200℃超250℃以下における貯蔵弾性率が3MPa以上である、上記[1]記載の粘着テープ。
[3]
前記粘着層の150℃未満における貯蔵弾性率が3MPa~10000MPaである、上記[1]又は[2]記載の粘着テープ。
[4]
前記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ピレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、キサンテン骨格を含有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を含有するフェノキシ樹脂及びジシクロペンタジエン骨格を含有するフェノキシ樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、上記[1]~[3]のいずれか記載の粘着テープ。
[5]
前記粘着層を構成する樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である、上記[1]~[4]のいずれか記載の粘着テープ。
[6]
前記酸無水物は、単官能酸無水物及び多官能酸無水物からなる群から選択されるいずれか1種以上を含む、上記[1]~[5]のいずれか記載の粘着テープ。
[7]
前記エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上持つエポキシ樹脂である、上記[1]~[6]のいずれか記載の粘着テープ。
[8]
前記粘着層が硬化触媒をさらに含有する、上記[1]~[7]のいずれか記載の粘着テープ。
[9]
半導体装置の製造に用いられる、上記[1]~[8]いずれか記載の粘着テープ。
[10]
前記半導体装置はQFNパッケージ(Quad Flat Non-leaded Package)である、上記[9]記載の粘着テープ。
[11]
ワイヤボンディング工程の前にリードフレームに貼合される先貼り用テープである、上記[9]又は[10]に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワイヤボンディング工程後のワイヤ接続信頼性に優れた粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】本発明の粘着テープを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【0012】
図1-2】本発明の粘着テープを用いた半導体装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、本明細書において、特に断りがない限り、「硬化」とは、全硬化だけでなく、半硬化も包含するものとする。また、本明細書において「粘着テープ」とは、常温(20~30℃)では被着体と接着せず、高温域(100℃以上)で被着体と良好に接着し得るテープをいう。
【0014】
本実施形態の粘着テープは、フェノキシ樹脂と、酸無水物と、エポキシ樹脂と、を含む粘着層を有する粘着テープである。
【0015】
[フェノキシ樹脂]
本実施形態の粘着テープの粘着層に含まれる樹脂としては、硬化物の耐熱性を高め、高温域におけるワイヤ接続信頼性を高める観点から、フェノキシ樹脂が用いられる。フェノキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、エピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ピレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、キサンテン骨格を含有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を含有するフェノキシ樹脂及びジシクロペンタジエン骨格を含有するフェノキシ樹脂からなる群から選択される1種以上が挙げられる。中でも、糊残りの観点から、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールA/F混合型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、ナフタレン型フェノキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型、ビスフェノールA/F混合型、ビスフェノールS型、ビフェニル型フェノキシ樹脂がより好ましい。
【0016】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、1000~200000であることが好ましく、5000~100000であることがより好ましく、10000~50000であることがさらに好ましい。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が1000~200000であると、粘着層を安定的に形成できる傾向にある。
【0017】
フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。フェノキシ樹脂のTgが80℃以上である場合、ワイヤ接続信頼性が向上する傾向にある。
【0018】
粘着層に含まれるフェノキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、粘着層100質量部に対して、好ましくは30~80質量部であり、より好ましくは40~70質量部であり、更に好ましくは50~60質量部である。フェノキシ樹脂の含有量が30質量部以上であると、糊残りが良好となる傾向にあり、80質量部以下であると、ワイヤ接続信頼性が良好となる傾向にある。
【0019】
[酸無水物]
本実施形態の粘着テープの粘着層に含まれる酸無水物としては、特に限定されず、例えば、単官能酸無水物及び多官能酸無水物からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0020】
単官能酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸からなる群から選択されるいずれか1種以上を用いることができる。
【0021】
多官能酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン―1,2,3,4―テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン―2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン―1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン―1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン―1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン―1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル―1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン―1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル―1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン―2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3メチル-3-シクロヘキセン-1,2-カルボン酸二無水物からなる群から選択されるいずれか1種以上を用いることができる。中でも、粘着層を安定的に形成できる観点から、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水マレイン酸が好ましく、無水トリメリット酸がより好ましい。
【0022】
粘着層に含まれる酸無水物の含有量は特に限定されないが、粘着層100質量部に対して、好ましくは10~25質量部であり、より好ましくは15~20質量部である。酸無水物の含有量が10質量部以上であると、主剤であるフェノキシ樹脂の硬化が十分となる傾向にあり、25質量部以下であると、糊残りが良好となる傾向にある。
【0023】
[エポキシ樹脂]
本実施形態の粘着テープの粘着層に含まれるエポキシ樹脂としては、エポキシ基を1分子中に2つ以上持つものであれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択されるいずれか1種以上を用いることができる。中でも、糊残りの観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂が好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
粘着層に含まれるエポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、粘着層100質量部に対して、好ましくは10~45質量部であり、より好ましくは15~40質量部である。エポキシ樹脂の含有量が10質量部以上であると、主剤であるフェノキシ樹脂の硬化が十分となる傾向にあり、45質量部以下であると、糊残りが良好となる傾向にある。
【0025】
エポキシ樹脂としては、反応性の観点から、エポキシ当量が90~300g/eqであることが好ましく、90~200g/eqであることがより好ましい。
【0026】
[硬化触媒]
本実施形態の粘着テープの粘着層は、硬化触媒をさらに含有していてもよい。硬化触媒としては、活性温度が120℃以下のものを用いることが好ましい。硬化触媒としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;2-メチルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール等のイミダゾール系開始剤;2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のルイス酸錯体、ポリアミン、メラミン樹脂等が挙げられる。上記の中でも、触媒残渣による汚染の観点から、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール等のイミダゾール系開始剤が好ましい。
【0027】
粘着層に含まれる硬化触媒の含有量は特に限定されないが、フェノキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~3質量部であり、より好ましくは0.05~2質量部であり、更に好ましくは0.05~1質量部である。硬化触媒の含有量が0.01質量部以上であると、十分に反応開始させることが可能となる傾向にあり、3質量部以下であると、被着体汚染(糊残り)のリスクが低くなる傾向にある。
【0028】
[その他成分]
本実施形態の粘着テープに含まれる粘着層は、上記以外にも他の添加剤等を更に含有してもよい。このような他の添加剤としては、離型剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、老化防止剤、顔料、染料、シランカップリング剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0029】
[粘着層]
本実施形態の粘着層の貯蔵弾性率は特に限定されないが、150以上200℃以下における貯蔵弾性率が50MPa以下であることが好ましく、30MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることがさらに好ましい。150以上200℃以下における貯蔵弾性率が50MPa以下である場合、被着体であるリードフレームとの接着性が向上する傾向にある。また、200℃超250℃以下における貯蔵弾性率が3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがさらに好ましい。200℃超250℃以下における貯蔵弾性率が3MPa以上である場合、前記温度領域においても粘着テープの変形が抑えられ、ワイヤ接続信頼性が向上する傾向にある。
さらに、粘着層の貯蔵弾性率は、ハンドリング性の観点から、150℃未満における貯蔵弾性率が3~10000MPaであることが好ましく、5~10000MPaであることがより好ましく、10~10000MPaであることがさらに好ましい。
【0030】
粘着層の貯蔵弾性率を調整する方法としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、及び酸無水物の添加割合を調整すること等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の粘着層を構成する樹脂組成物のTgは特に限定されないが、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。樹脂層を構成する樹脂組成物のTgが80℃以上である場合、ワイヤ接続信頼性が向上する傾向にある。
【0032】
[粘着テープ]
本実施形態の粘着テープは、上述した特定の成分を含む粘着層を有する粘着テープである。ここで、粘着テープは、粘着層と、基材層とから構成されていてもよい。
例えば、本実施形態の粘着層を構成する樹脂組成物を、基材(ベースフィルム等と呼ばれる場合もある。)等上に塗布して、粘着層を形成させること等によって、粘着テープとすることができる。
【0033】
本実施形態の粘着テープの粘着層の厚みは、好ましくは3~40μmであり、より好ましくは3~20μmである。粘着層の厚みが3μm以上であると、封止工程において十分なシール性が得られる傾向にある。一方、厚みが40μm以下であると、金型の締め付け圧力によっても粘着層が破壊されず、粘着テープを安定的に製造することができる傾向にある。
一方、基材層の厚みは、特に限定されないが、折れや裂けを防止する観点から、5μm以上であることが好ましく、ハンドリング性の観点から、10~100μmであることがより好ましい。
【0034】
基材層を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)系基材、ポリイミド(PI)系基材、ポリアミド(PA)系基材、ポリエチレンナフタレート(PEN)系基材、ポリフェニレンエーテルサルファイド(PPS)系基材等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性等の観点から、ポリイミド系基材が好ましい。また、基材には、コロナ処理やプラズマ処理等といった表面改質処理を施すこともできる。これにより、基材の経時的な物性変化の防止や各種表面改質等が可能となる。
【0035】
本実施形態の粘着テープは、使用前には離型フィルム(セパレートフィルム)等によって粘着層を保護していてもよい。このような離型フィルムを貼り合わせておくことで、粘着層の粘着力等を維持できる。離型フィルムとしては、特に限定されず、公知のものを適宜に使用することもできる。離型フィルムとしては、例えば、シリコーン系離型処理やフッ素系離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、離型紙等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の粘着テープの製造方法としては、例えば、粘着層を構成する樹脂組成物を有機溶媒に溶解させた溶液を用意し、当該溶液を基材の上に塗布し、乾燥させること等によって粘着層を基材上に形成させる方法等が挙げられる。
【0037】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホフルアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0038】
塗布方法については、特に限定されず、公知の手法を採用することもできる。例えば、ダイコーダ、コンマコータ、グラビアコータ等を用いることができる。
【0039】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の粘着テープは、電子部品又は半導体部品を樹脂封止する際に端子部をマスキングするために貼着して使用されるものである。
図1は、本実施形態の粘着テープを用いた半導体装置の製造方法の一例の工程図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、図1に示すように、半導体チップ3の搭載工程と、封止樹脂5による封止工程とを少なくとも含む。本実施形態の半導体装置の製造方法は、封止された構造物を切断するダイシング工程をさらに含んでいてもよい。
【0040】
搭載工程は、図1(a)~(d)に示すように、リードフレーム裏面側(図の下側)に粘着テープ1を貼り合わせた金属製のリードフレーム2のダイパッド上に半導体チップ3をボンディングする工程である。
【0041】
リードフレーム2とは、例えば銅などの金属を素材としてQFNの端子パターンが刻まれたものであり、その電気接点部分には、銀、ニッケル、パラジウム、金などのなどの素材で被覆(めっき)されている場合もある。リードフレームとしてPPF(Pre-Plated Lead-Frame)を用いた場合は、本発明の効果がより顕著となる傾向にある。リードフレーム2の厚みは、100~300μmが一般的である。なお、部分的にエッチングなどで薄く加工されている部分は、この限りではない。リードフレーム2は、後の切断工程にて切り分けやすいよう、個々のQFNの配置パターンが整然と並べられているものが好ましい。
【0042】
粘着テープ1は、少なくともパッケージパターン領域より外側に貼着され、樹脂封止される樹脂封止領域の外側の全周を含む領域に貼着するのが好ましい。リードフレーム2は、通常、樹脂封止時の位置決めを行うための、ガイドピン用孔を端辺近傍に有しており、それを塞がない領域に貼着するのが好ましい。また、樹脂封止領域はリードフレーム2の長手方向に複数配置されるため、それらの複数領域を渡るように連続して粘着テープ1を貼着するのが好ましい。
【0043】
上記のようなリードフレーム2上に、半導体チップ3、すなわち半導体集積回路部分であるシリコンウエハ・チップが搭載される。リードフレーム2上にはこの半導体チップ3を固定するためダイパッドと呼ばれる固定エリアが設けられており、このダイパッドヘのボンディング(固定)の方法は導電性ペーストを使用したり、接着テープ、接着剤など各種の方法が用いられる。導電性ペーストや熱硬化性の接着剤等を用いてダイボンドする場合、一般的に150~200℃程度の温度で30分~90分程度加熱キュアする。半導体チップが搭載されたリードフレームには、ダイアタッチ材等の汚れを取り除き、ワイヤ接続性やモールド/フレーム間の接着性を向上させるために、図1(c)に示すようなプラズマ処理を施してもよい。
【0044】
一般的には、これに続いて、前記リードフレームの端子部先端と前記半導体チップ上の電極パッドとをボンディングワイヤで電気的に接続するワイヤボンディング工程が行なわれる。ワイヤボンディング工程は、図1(d)に示すように、リードフレーム2の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ3上の電極パッドとをボンディングワイヤ4で電気的に接続する工程である。ボンディングワイヤ4としては、例えば金線あるいはアルミ線などが用いられるが、中でも銅線を用いた場合は、本発明の効果がより顕著となる傾向にある。一般的には150~250℃に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により結線される。その際、リードフレーム2に貼着した粘着テープ1面を真空吸引することで、ヒートブロックに確実に固定することができる。なお、上記では半導体チップをフェイスアップ実装して結線工程を行なう場合を示したが、半導体チップをフェイスダウン実装した場合には、リフロー工程が適宜に施される。
【0045】
封止工程は、図1(e)に示すように、封止樹脂5により半導体チップ側を片面封止する工程である。封止工程は、リードフレーム2に搭載された半導体チップ3やボンディングワイヤ4を保護するために行われ、とくにエポキシ系の樹脂をはじめとした封止樹脂を用いて金型中で成型されるのが代表的である。その際、複数のキャビティを有する上金型と下金型からなる金型を用いて、複数の封止樹脂5にて同時に封止工程が行われるのが一般的である。具体的には、例えば樹脂封止時の加熱温度は170~180℃であり、この温度で数分間キュアされた後、更に、ポストモールドキュアが数時間行われる。封止工程に次いで、図1(f)に示すように、リードフレーム2に貼り合わされた粘着テープを剥離する。なお、粘着テープ1はポストモールドキュアの前に剥離するのが好ましい。
【0046】
ダイシング工程は、図1(g)に示すように、封止された構造物を個別の半導体装置10に切断する工程である。一般的にはダイサーなどの回転切断刃を用いて封止樹脂5の切断部をカットするダイシング工程が挙げられる。
【0047】
なお、本実施形態の粘着テープは、上記のとおり、半導体チップの搭載工程の前にリードフレームと貼合されてもよいし、半導体チップの搭載工程後(ワイヤボンディング後)、封止工程前にリードフレームと貼合されてもよいが、本発明の効果がより顕著となる観点から、半導体チップの搭載工程の前、特にワイヤボンディング工程の前にリードフレームと貼合される先貼り用テープであることが好ましい。
【実施例
【0048】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
各評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0049】
<重量平均分子量>
平均分子量が約500~約100万の標準ポリスチレンを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromoatography:GPC)により測定した。
【0050】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(DSC)により測定した。
【0051】
<貯蔵弾性率>
粘着テープの粘着層部分と同じ組成の厚さ100μmのシート状サンプルを作製し、動的粘弾性測定装置(TA Instruments製 RSA-G2)を用いて貯蔵弾性率E'を測定した。測定条件は、昇温速度10.0℃/minにて温度範囲-50~300℃で実施し、周波数1Hzとした。25℃、100℃、140℃、175℃、及び225℃における貯蔵弾性率E'を表1及び表2に示す。なお、表中「測定不可」とあるのは、粘着層部分が伸びきってしまい測定できなかったことを意味する。
【0052】
<ワイヤ接続信頼性>
リードフレームに粘着テープを240℃×10sec×10MPaの条件で貼合した後、半導体チップを、ダイアタッチ材を用いてリードフレームのダイパッド部に実装し、160℃で30min加熱してダイアタッチ材を硬化させた。その後、実装した半導体チップの電極部とリードフレームの電極部にφ25μmの銅線(田中貴金属工業社製)を用いてワイヤボンディングを行った。この時、ワイヤボンダ(K&S社製)を使用し、ステージ温度200℃、電流値200mA、時間30ms、荷重100gの条件にて、ワイヤボンディングを行った。
ワイヤボンディング後、ワイヤが正確に打ち込まれているかどうかを目視で確認した。また、ワイヤプルテストにてワイヤ接続強度を測定した。ワイヤが正確に打ち込まれており、且つワイヤプル強度が5gf以上の場合は「○」と評価した。一方、ワイヤが正確に打ち込まれているが、ワイヤプル強度が5gf未満の場合、又は、ワイヤが正確に打ち込まれていない場合は、「×」と評価した。
【0053】
<糊残り>
上述のワイヤボンディング工程を経た後、封止を実施した。封止材は日立化成工業製CEL-9200HF9を使用し、トランスファーモールド装置で温度175℃、圧力3MPa、時間90secの条件で封止した。その後、温度175℃、時間6hにて封止材を硬化させた。その後、テープを剥離し、モールド面及びリードフレーム面に糊残りが無いかを顕微鏡を用いて観察した。糊残りがなかった場合は「○」、糊残りがあった場合を「×」と評価した。
【0054】
実施例及び比較例における樹脂組成物に含まれる各成分としては、具体的には以下のものを用いた。
[フェノキシ樹脂]
フェノキシ樹脂A:ビスフェノールA/F混合型フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、1256B40)
フェノキシ樹脂B:ビスフェノールS型フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、YX8100BH30)
[酸無水物]
無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製)
無水フタル酸(JFEケミカル社製)
多官能酸無水物:5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3メチル-3-シクロヘキセン-1,2-カルボン酸二無水物(DIC社製、B-4400)
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂C:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:210g/eq)
エポキシ樹脂D:グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量:100g/eq)
[イミダゾール]
2-ウンデシルイミダゾール(四国化成工業社製、キュアゾールC11Z)
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂E:アクリル酸ブチル-アクリル酸ランダム共重合体(大成ファインケミカル社製、1HY-3006Y、Tg:-53℃)
[イソシアネート]
イソシアネートF:ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成社製、デュラネートD201)
【0055】
[実施例1]
フェノキシ樹脂A100質量部に対し、無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製)75質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、jER152、エポキシ当量210g/eq)60質量部、2-ウンデシルイミダゾール(四国化成工業社製、キュアゾールC11Z)0.2質量部を加え、室温で撹拌することで、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、厚さ25μmのポリイミドフィルムフィルムに乾燥後の厚さが6μmになるようにダイコーダーを用いて塗布した後、150℃で5分乾燥することで粘着テープを得た。
次に、粘着テープの粘着層に、離型処理を施したセパレートフィルムの離型面をラミネートにより貼り合わせ、100℃で100時間加熱することで、離型フィルム付き粘着テープを得た。
得られた粘着テープを用いて各物性の評価を行った。評価結果を表1に示す(表中の含有量の単位は特に明記がない限りは「質量部」を示す。)。
【0056】
[実施例2]~[実施例8]
粘着層を形成する組成物中に含まれる各成分の種類及び含有量を表1に示された種類及び含有量に代えたこと以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを製造し、各物性の評価を行った。
【0057】
[比較例1]~[比較例6]
粘着層を形成する組成物中に含まれる各成分の種類及び含有量を表2に示された種類及び含有量に代えたこと以外は実施例1と同様の方法により粘着テープを製造し、各物性の評価を行った。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1及び2に示されているように、実施例1~8の粘着テープは、ワイヤボンディング工程後のワイヤ接続信頼性に優れていた。また、テープ剥離工程における糊残りの抑制を同時に達成できるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の粘着テープは、半導体装置の製造において用いられる粘着テープとしての産業上利用可能性を有する。
図1-1】
図1-2】