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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/40 20240101AFI20241017BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241017BHJP
【FI】
A61B6/40 500D
A61B6/42 500X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020071118
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021166633
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 浩二
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214126(JP,A)
【文献】特開2001-278541(JP,A)
【文献】特開2009-056098(JP,A)
【文献】特開2010-180055(JP,A)
【文献】米国特許第06065710(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧形状を有する筐体を有し、端部のそれぞれにX線発生器とX線検出器とを互いに対向するように一体に支持し、前記X線発生器に一端が接続された第1ケーブルと、前記X線検出器に一端が接続された第2ケーブルとを筐体に内包する、第1支持機構と、
前記第1ケーブルが巻かれ、回転に応じて前記第1ケーブルを巻き取りまたは送り出す第1巻胴と、前記第1巻胴と連動して回転し、前記第1ケーブルが巻き取られるときは前記第2ケーブルを送り出し、前記第1ケーブルが送り出されるときは前記第2ケーブルを巻き取るように、前記第2ケーブルが巻かれた第2巻胴と、を有し、前記第1巻胴の回転速度に所定の速比を乗じた回転速度で前記第2巻胴が回転するよう、前記第1巻胴と前記第2巻胴の一方の回転を他方に伝達する減速機構と、
を備え、
前記第1巻胴と前記第2巻胴は、
回転軸が水平であるとともに、互いに同軸となる位置に設けられた、
X線診断装置。
【請求項2】
前記減速機構は、
前記所定の速比に応じたサイズを有する複数のプーリと、前記複数のプーリを連結するベルトまたはチェーンと、を含む、
請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記減速機構は、
前記所定の速比に応じた歯数を有する複数のギアを含む、
請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記第1巻胴と前記第2巻胴は、
回転軸が水平であるとともに、装置平面視で互いに重なる位置に設けられた、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記第1支持機構を前記円弧に沿って摺動自在に支持する第2支持機構と、
前記第2支持機構を床面または天井に支持する第3支持機構と、
をさらに備え、
前記減速機構は、
前記第2支持機構の筐体に内包された、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記第2支持機構の前記筐体は、
前記第1支持機構を前記円弧に沿って摺動させる駆動機構を有し、
前記第1巻胴および前記第2巻胴は、
前記第1支持機構と一体的に前記X線検出器および前記X線検出器が移動すると、当該移動に応じて前記第1ケーブルまたは前記第2ケーブルに作用する張力により一方が回転し、当該回転に応じて前記減速機構により他方が連動して回転する、
請求項記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記所定の速比は、
前記第1巻胴と前記第2巻胴の径の比に応じて定められる、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断は、近年ではカテーテル手技の発展にともない、循環器分野を中心に進歩を遂げている。たとえば、循環器診断用のX線診断装置は一般に、X線発生器、X線検出器、およびこれらを互いに対向するように支持するCアームまたはΩアームを有する。
【0003】
CアームまたはΩアームを被検体の周囲で移動させることで、様々な位置でX線撮影することができる。たとえば、CアームやΩアームは、その円弧に沿って双方向に円弧動できるものもある。しかし、X線発生器とX線検出器は、一般に、それぞれケーブルを介して信号を処理装置に伝達している。このため、円弧動を実現するためには、円弧動の移動量(ストローク)に応じてケーブル長に余裕が必要となる。
【0004】
この種のケーブルの余長は、ダクトホースなどで束ねられて、CアームやΩアームの筐体の外部に垂れ下がっていることがある。この場合、Cアームは移動可能であるため、Cアームの近傍に位置する部材や被検体を含む人物(以下、障害物という)とケーブルの余長とが干渉してしまう場合がある。このため、装置の可動範囲に制限が生じるとともに、ユーザは干渉を避けるように注意を払わねばならないため、操作性が悪化し作業効率が大幅に低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-278541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、X線発生器のケーブルとX線検出器のケーブルとを互いに異なる巻胴に異なる回転速度で巻き取ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るX線診断装置は、第1支持機構と、減速機構とを備える。第1支持機構は、円弧形状を有する筐体を有し、端部のそれぞれにX線発生器とX線検出器とを互いに対向するように一体に支持し、X線発生器に一端が接続された第1ケーブルと、X線検出器に一端が接続された第2ケーブルとを筐体に内包する。減速機構は、第1巻胴と、第2巻胴を有する。第1巻胴は、第1ケーブルが巻かれ、回転に応じて第1ケーブルを巻き取りまたは送り出す。第2巻胴は、第1巻胴と連動して回転し、第1ケーブルが巻き取られるときは第2ケーブルを送り出し、第1ケーブルが送り出されるときは第2ケーブルを巻き取るように、第2ケーブルが巻かれる。減速機構は、第1巻胴の回転速度に所定の速比を乗じた回転速度で第2巻胴が回転するよう、第1巻胴と第2巻胴の一方の回転を他方に伝達する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るX線診断装置の一例を示す概念的な構成図。
図2】保持装置の一例を示す概略的な構成図。
図3】従来のケーブルの余長の捌き方の一例を示す説明図。
図4】従来のケーブルの余長の捌き方の他の例を示す説明図。
図5】本実施形態に係る減速機構の一例を示す説明図。
図6図5に示す減速機構の構成を説明するための図。
図7】(a)は検出器用ドラムと発生器用ドラムが同方向に回転する場合における検出器用ケーブルと発生器用ケーブルの巻き方向の一例を説明するための図、(b)は検出器用ドラムと発生器用ドラムが逆方向に回転する場合における検出器用ケーブルと発生器用ケーブルの巻き方向の一例を説明するための図。
図8】標準位置における取り出し位置からX線検出器までの角度、および取り出し位置からX線発生器までの角度の一例を示す説明図。
図9】(a)はX線検出器が標準位置よりもスタンドから最も遠ざかった位置におけるX線検出器のストロークの一例を示す説明図、(b)はX線発生器が標準位置よりもスタンドから最も遠ざかった位置におけるX線発生器のストロークの一例を示す説明図。
図10】(a)は異径の検出器用ドラムと発生器用ドラムが同軸に設けられた場合における検出器用ドラムと発生器用ドラムが同方向に回転する場合の検出器用ケーブルと発生器用ケーブルの巻き方向の一例を説明するための図、(b)は検出器用ドラムと発生器用ドラムが逆方向に回転する場合における検出器用ケーブルと発生器用ケーブルの巻き方向の一例を説明するための図、(c)は検出器用ドラムと発生器用ドラムが同軸である場合の減速機構の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るX線診断装置10の一例を示す概念的な構成図である。また、図2は、保持装置15の一例を示す概略的な構成図である。
【0011】
なお、本実施形態では、X線診断装置10としてCアームを有するX線アンギオ装置を用いる場合の一例を示した。しかしながら、X線診断装置10は、Cアームを有するシングルプレーンのX線アンギオ装置には限定されない。X線診断装置10は、たとえば、CアームとΩアームとを備えるバイプレーンタイプであってもよい。
【0012】
ここでは一例として、X線診断装置10の装置座標系を図2に示すように定義する。すなわち、鉛直方向をy軸方向、スタンド17から水平にCアーム14を望む方向をz軸方向、y軸方向とz軸方向にともに垂直な方向をx軸方向とする。
【0013】
図1に示すように、X線診断装置10は、X線撮像系11、寝台装置20、ディスプレイ31、コンソール32、および画像処理装置33を有する。
【0014】
X線撮像系11は、X線検出器12、X線発生器13、Cアーム14、および保持装置15を有する。寝台装置20は、寝台21および天板22を有する。
【0015】
X線検出器12は、天板(たとえばカテーテルテーブルなど)22に支持された被検体を挟んでX線発生器13と対向配置されるようCアーム14の一端に設けられる。X線検出器12は、2次元に配列された複数のX線検出素子を有する平面検出器(FPD:flat panel detector)により構成され、被検体を透過してX線検出器12に照射されたX線を検出し、この検出したX線にもとづいてX線撮影により生成した透視データや単純撮影データなどの画像データをコンソール32に与える。なお、X線検出器12は、イメージインテンシファイア、TVカメラなどを含むものであってもよいし、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する半導体素子により構成されたX線検出素子を複数有するCMOS-FPDであってもよい。
【0016】
X線発生器13は、Cアーム14の他端に設けられ、X線管球やX線絞りを有する。X線絞りは、たとえば複数枚の鉛羽で構成されるX線可動絞りである。X線可動絞りは、コンソール32により制御されて、X線管球から照射されるX線の照射範囲を調整する。
【0017】
Cアーム14は、X線検出器12とX線発生器13とを一体として保持する。このCアーム14は、保持装置15により保持される。Cアーム14は、第1支持機構の一例である。
【0018】
保持装置15は、図2に示すように、Cアーム支持機構16およびスタンド17を有する。
【0019】
Cアーム支持機構16は、Cアーム14をその円弧方向CFに沿って摺動自在に支持する。また、Cアーム支持機構16は、スタンド17に対してCアーム14をz軸中心に回転可能に支持する。
【0020】
具体的には、Cアーム支持機構16は、円弧動機構16aと減速機構16bとを有する。Cアーム支持機構16は、第2支持機構の一例である。
【0021】
また、Cアーム14の背面または側面には、図示しないレールが設けられる。Cアーム14は、Cアーム支持機構16とCアーム14によって挟み込まれる当該レールを介してCアーム14の円弧方向CFに沿って円弧動する。
【0022】
円弧動機構16aは、コンソール32に制御されて、Cアーム14を円弧方向CFに沿って摺動させることにより円弧動させるモータを有する。すなわち、円弧動機構16aは、円弧方向CFにCアーム14は電動スライドさせる機構である。円弧動機構16aは、駆動機構の一例である。
【0023】
減速機構16bの構成および作用については図5-10を用いて後述する。なお、減速機構16bは、Cアーム支持機構16の筐体に内包されてもよい。減速機構16bをCアーム支持機構16の筐体内に収容することで、装置の外観のケーブルレスを実現することができる。
【0024】
保持装置15がコンソール32に制御されて駆動されることにより、X線検出器12およびX線発生器13は、一体として被検体の周りを移動する。
【0025】
スタンド17は、床面に設置されて、Cアーム支持機構16を床面に対して支持する。また、スタンド17は、設置面においてy軸回転可能に床面に設置される。
【0026】
X線診断装置10がX線アンギオ装置として用いられる場合、X線診断装置10は、X線撮像系11を2系統有するバイプレーン式であってもよい。バイプレーン式の場合、X線診断装置10は、床置き式Cアームを有するF(Frontal)側と、天井走行式Ωアームを有するL(Lateral)側の2方向からX線ビームを個別に照射させて、バイプレーン画像(F側画像およびL側画像)を取得することができる。
【0027】
なお、天井走行型のΩアームを用いる場合は、保持装置15は、スタンド17にかえてCアーム支持機構16を天井に対して支持する懸垂アームを有する。この場合、懸垂アームは、天井レールを走行する台車への設置面においてy軸回転可能に当該台車に設置される。スタンド17および懸垂アームは第3支持機構の一例である。
【0028】
寝台装置20の寝台21は、床面に設置され、天板22を有する。寝台21は、コンソール32により制御されて、天板22を水平方向、上下方向に移動させたり回転(ローリング)させたりする。
【0029】
ディスプレイ31は、1または複数の表示領域により構成され、コンソール32に制御されて、X線画像などを表示する。ディスプレイ31は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ31は、たとえば天井レールに沿って移動可能なように、天井レールに台車を介して懸垂される。ディスプレイ31は、Cアーム14の移動の障害物となりうる。
【0030】
コンソール32は、入力インターフェースと、ディスプレイと、記憶回路と、プロセッサとを有する。入力インターフェースは、たとえばジョイスティックやトラックボール、トラックボールマウス、キーボード、タッチパネル、テンキー、などの一般的なポインティングデバイスや、X線ばく射タイミングを指示するためのハンドスイッチなどにより構成され、ユーザの操作に対応した操作信号をプロセッサに与える。ディスプレイは、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、プロセッサの制御に従って各種情報を表示する。
【0031】
記憶回路は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。プロセッサは、記憶回路23に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、円弧動機構16aを含むX線撮像系11および寝台装置20を統括制御する。
【0032】
なお、コンソール32は、たとえば検査室の床面上を移動自在なサテライトコンソールであってもよい。コンソール32は、Cアーム14の移動の障害物となりうる。
【0033】
画像処理装置33は、入力インターフェースと、ディスプレイと、記憶回路と、プロセッサとを有する。これらの構成はコンソール32の構成と同様であるため説明を省略する。画像処理装置33は、たとえば検査室に隣接する操作室に設置され、投影データにもとづいて再構成画像の生成や表示が可能である。
【0034】
ここで、従来のCアーム14のケーブルの余長の扱いについて簡単に説明する。
【0035】
図3は、従来のケーブルの余長の捌き方の一例を示す説明図である。図3には、天井から見下ろした図を示した。
【0036】
Cアーム14は、上述のように、円弧動機構16aにより、円弧に沿って双方向に円弧動できる。このため、円弧動に応じて生じるケーブルの長さ変化に対応するために、円弧動の移動量(ストローク)に応じてケーブル長に余裕が設けられる。
【0037】
図3に示すように、従来のケーブルの余長を捌く方法の1つとして、ケーブルの余長をダクトホースDHで束ね、CアームやΩアームの筐体の外部に這わせておく方法がある。しかし、この方法では、Cアームの移動の際にダクトホースDHが周囲の障害物に干渉してしまう。Cアーム14の移動の障害物としては、術者や被検体のほか、たとえばX線撮像系11や寝台装置20の近傍に位置する周辺部材が含まれる。周辺部材としては、たとえばケーブル類、造影剤を注入するためのインジェクタ、麻酔機材、点滴スタンド、天井に吊り下げられたディスプレイ31、コンソール32などが挙げられる。
【0038】
このため、ケーブルの余長をダクトホースDHで束ねる方法では、装置の可動範囲に制限が生じるとともに、ユーザは干渉を避けるように注意を払わねばならないため、操作性が悪化し作業効率が大幅に低下してしまう。
【0039】
図4は、従来のケーブルの余長の捌き方の他の例を示す説明図である。
【0040】
図4に示すように、従来のケーブルの余長を捌く他の方法として、Cアーム14とスタンド17との間に巻取り部100を設け、巻取り部100にケーブルの余長を収容する方法がある。具体的には、巻取り部100は、検出器用ドラム141と発生器用ドラム151とを有する。検出器用ドラム141にX線検出器12に一端が接続された検出器用ケーブル142を巻き取り、発生器用ドラム151にX線発生器13に一端が接続された発生器用ケーブル152を巻き取る。図4に示すように、検出器用ドラム141と発生器用ドラム151は、回転軸が水平な同軸であり、同径で互いに固定される。このため、検出器用ドラム141と発生器用ドラム151は互いに同方向に回転する。したがって、検出器用ケーブル142と発生器用ケーブル152とを逆巻きにすることで、巻き取りと送り出しが逆になる。
【0041】
図1および図2に示すようにX線検出器12とX線発生器13とがy軸に沿って対向している位置を標準位置とする。このとき、X線検出器12が標準位置よりもスタンド17から遠ざかる方向にCアーム14が円弧動すると、X線検出器12に一端が接続された検出器用ケーブル142に張力が発生し、検出器用ケーブル142が送り出される方向に検出器用ドラム141が回転する。
【0042】
この回転にともない、検出器用ドラム141と同軸に固定された発生器用ドラム151が同方向に回転する。検出器用ケーブル142と発生器用ケーブル152とを逆巻にしておくことで、この回転にともない発生器用ケーブル152が発生器用ドラム151に巻き取られることになる。X線検出器12が標準位置から遠ざかる方向にCアーム14が円弧動するとき、X線発生器13は標準位置よりスタンド17に近づく。このときに生じる発生器用ケーブル152のたわみを、発生器用ドラム151に巻き取ることができる。また、検出器用ドラム141と発生器用ドラム151は、同径であるため、回転径も同じである。したがって、一方の巻き取り長さと他方の送り出し長さをほぼ同じ長さとすることができる。
【0043】
しかし、検出器用ドラム141と発生器用ドラム151の回転軸を水平同軸とするとともに同径とすると。Cアーム14の回転面の直交方向(x軸方向)における巻取り部100の幅が大きくなってしまい装置が大型化してしまうとともに、巻取り部100のz軸方向における幅(高さ)がx軸方向に一様となり、周辺の障害物の配置位置の自由度が下がってしまう。
【0044】
また、検出器用ケーブル142と発生器用ケーブル152の一方の巻き取り長さと他方の送り出し長さとがほぼ同じとなるため、ケーブルの取り出し位置は、Cアーム14の中央付近とされ、検出器用ドラム141と発生器用ドラム151もその近傍に設けられることになる。しかし、Cアーム14の中央付近は、円弧動機構16aなどの部材が配置されている。このため、Cアーム14の中央付近に検出器用ドラム141と発生器用ドラム151を設けると、スタンド17をz軸方向後方に退避させなければならず、装置のz軸方向の幅が拡大して大型化してしまい、装置を設置する部屋の広さも必要となってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態に係るX線診断装置10は、ケーブルの余長を巻き取ることでダクトホースDHを不要とするとともに、検出器用ドラム(巻胴)と発生器用ドラム(巻胴)の回転を連動させつつ回転速度を異ならせる減速機構16bを備える。減速機構16bを用いることで、検出器用ドラムと発生器用ドラムを異径とし一方のサイズを小型化することが可能となり、またケーブルの取り出し口の位置が変更可能となる。
【0046】
次に、減速機構16bの構成および作用について、図5-10を参照して説明する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る減速機構16bの一例を示す説明図である。また、図6は、図5に示す減速機構16bの構成を説明するための図である。以降、Cアーム支持機構16の筐体の図示を省略する。なお、図5における破線Xは、X線検出器12の受像面中心とX線発生器13のX線焦点とを結ぶ仮想線である。
【0048】
図5に示す例では、減速機構16bは、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51を有し、検出器用ドラム41にX線検出器12に一端が接続された検出器用ケーブル42を巻き取り、発生器用ドラム51にX線発生器13に一端が接続された発生器用ケーブル52を巻き取る。検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52は、Cアーム14の筐体に内包されるとともに、取り出し位置18でCアーム14から取り出される。
【0049】
図7(a)は検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同方向に回転する場合における検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の巻き方向の一例を説明するための図であり、(b)は検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が逆方向に回転する場合における検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の巻き方向の一例を説明するための図である。
【0050】
検出器用ドラム41は、検出器用ケーブル42が巻かれ、回転に応じて検出器用ケーブル42を巻き取りまたは送り出す。発生器用ドラム51には、検出器用ドラム41と連動して回転し、検出器用ケーブル42が巻き取られるときは発生器用ケーブル52を送り出し、検出器用ケーブル42が送り出されるときは発生器用ケーブル52を巻き取るように、発生器用ケーブル52が巻かれる(図7(a)、(b)参照)。
【0051】
減速機構16bは、検出器用ドラム41の回転速度に所定の速比を乗じた回転速度で発生器用ドラム51が回転するよう、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51の一方の回転を他方に伝達する。このため、たとえば、図5に示す例では、減速機構16bは、さらに検出器用プーリ43と発生器用プーリ53とこれらを連結するベルト61とを有する。ベルト61はチェーンであってもよい。
【0052】
検出器用プーリ43と発生器用プーリ53の回転軸は、それぞれ検出器用ドラム41と発生器用ドラム51の回転軸と同軸に設けられる。検出器用プーリ43と発生器用プーリ53のサイズは、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51の速比に応じたサイズとする。また、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51は、回転軸が水平であるとともに、装置平面視(y軸方向上側から見下ろした視点)で、少なくとも一部が互いに重なる位置に設けられるとよい。
【0053】
検出器用ドラム41と発生器用ドラム51の速比は、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51の所望の径の比に応じて定められてもよいし、検出器用ケーブル42および発生器用ケーブル52がCアーム14から取り出される取り出し位置18と、円弧方向CFに沿った一方向への最大移動量と、他方向への最大移動量と、にもとづいて定められてもよいし、これらの組み合わせにもとづいて定められてもよい。
【0054】
図5図6に示すように、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51を装置平面視で少なくとも一部が互いに重なる位置に設けることで、図4に示すように回転軸を同軸に並べる場合に比べて、減速機構16bのx軸方向の幅を大幅に削減することができる。また、Cアーム14とスタンド17の間の上下のデッドスペースに検出器用ドラム41と発生器用ドラム51をそれぞれ配置することができる。このため、スタンド17をz軸方向後方に退避させる必要がないあるいは退避幅を大幅に低減することができ、ダクトホースDHを不要としつつ装置の大型化を防ぐことができる。
【0055】
また、減速機構16bを用いることにより、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51を減速機構16bの速比を異ならせることができる。したがって、減速機構16bによれば、検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の一方の巻き取り長さと他方の送り出し長さとを異ならせることができるため、取り出し位置18を変更することができる。よって、デッドスペースの位置に応じた取り出し位置18の設定が可能となる。
【0056】
また、プーリ43、53、およびベルト61にかえて、速比に応じた歯数のギアを用いてもよい。この場合、用いる歯車の数に応じて検出器用ドラム41と発生器用ドラム51の回転方向が同方向または逆方向となるため、これに応じて、検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の巻方向を変更するとよい。他にも、検出器用ドラム41の回転速度と発生器用ドラム51の回転速度の速比を与える減速機構16bの構成としては、遊星歯車減速器(サイクロ減速器など)など従来各種のものが知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。
【0057】
ここで、図8および図9を参照してCアーム14の円周方向の移動量(スライドストローク)と必要ケーブル巻き取り長さとの関係について説明する。
【0058】
図8は、標準位置における取り出し位置18からX線検出器12までの角度θ1、および取り出し位置18からX線発生器13までの角度θ2の一例を示す説明図である。図9(a)はX線検出器12が標準位置よりもスタンド17から最も遠ざかった位置におけるX線検出器12のストロークθ3の一例を示す説明図であり、(b)はX線発生器13が標準位置よりもスタンド17から最も遠ざかった位置におけるX線発生器13のストロークθ4の一例を示す説明図である。
【0059】
図8および図9において、説明の簡単のため、減速比は1であるものとする。
【0060】
この場合、ケーブルの巻き取り長さは、検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52とでそれぞれを同じ長さにする必要がある。このため、θ1とθ2は等しい(θ1=θ2)。また、動作ストロークを含むケーブル巻取り長さを考慮すると、θ1+θ2=θ3+θ4の関係が成り立つ。このため、スライドストロークがθ3=106度、θ4=94度の場合は、θ1+θ2=106度+94度=200度となる。θ1=θ2であるため、この場合、θ1=θ2=100度が導かれる。
【0061】
以上、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が装置平面視で一部が互いに重なる位置に設けられる場合の例を説明したが、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51は、回転軸が水平であるとともに、互いに同軸となる位置に設けられてもよい。
【0062】
図10(a)は異径の検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同軸に設けられた場合における検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同方向に回転する場合の検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の巻き方向の一例を説明するための図であり、(b)は検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が逆方向に回転する場合における検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の巻き方向の一例を説明するための図である。また、図10(c)は、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同軸である場合の減速機構16bの一例を説明するための図である。なお、図10(a)、(b)、(c)において、異径の検出器用ドラム41と発生器用ドラム51は、互いに固定されてはおらず、したがって互いに異なる回転速度で回転する。
【0063】
検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同軸である場合も、図7(a)、(b)に示す例と同様に、発生器用ドラム51には、検出器用ドラム41と連動して回転し、検出器用ケーブル42が巻き取られるときは発生器用ケーブル52を送り出し、検出器用ケーブル42が送り出されるときは発生器用ケーブル52を巻き取るように、発生器用ケーブル52が巻かれる(図10(a)、(b)参照)。また、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同軸である場合は、たとえば同じ歯数(たとえば10)のギア44と54を、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51と同軸に設け、速比(たとえば2)に応じた歯数のギア62と63(たとえば50と25)をそれぞれギア44と54と噛み合わせることで、容易に所望の速比で検出器用ドラム41と発生器用ドラム51を回転させることができる。
【0064】
図10(a)、(b)、(c)に示すように、減速機構16bによれば、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51が同軸に設けられる場合であっても、互いを異径とすることができる。このため、任意の一方のドラムを小型化することができる。したがって、たとえば天井レールに沿って走行可能なディスプレイ31側に位置するドラムを小型化することで、ディスプレイ31の可動域を拡大することができる。
【0065】
本実施形態に係るX線診断装置10は、減速機構16bを用いることにより、ケーブルの余長を巻き取ることができる。また、減速機構16bは、Cアーム支持機構16の筐体内に収容することができる。このため、装置の外観のケーブルレスを実現することができる。また、ダクトホースDHが不要となる。したがって、ユーザは障害物とダクトホースDHとの干渉に注意を払う必要がなくなり、手技に集中して安全かつ効率的に検査や治療を行うことができる。また、ダクトホースDHと干渉していた位置に周辺部材を設置することができるため、ダクトホースDHに起因するCアーム14の位置決めの制約がなくなる。
【0066】
また、減速機構16bを用いることにより、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51を減速機構16bの速比を異ならせることができる。したがって、減速機構16bによれば、検出器用ケーブル42と発生器用ケーブル52の一方の巻き取り長さと他方の送り出し長さとを異ならせることができるため、取り出し位置18を変更することができる。よって、デッドスペースの位置に応じた取り出し位置18の設定が可能となる。このため、装置を小型化することができる。
【0067】
また、減速機構16bにより、検出器用ドラム41と発生器用ドラム51を減速機構16bの速比に応じて異なる径とすることができるため、さらに装置を小型化することができる。
【0068】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線発生器のケーブルとX線検出器のケーブルとを互いに異なる巻胴に異なる回転速度で巻き取ることができる。
【0069】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0070】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10 X線診断装置
12 X線検出器
13 X線発生器
14 Cアーム
15 保持装置
16 Cアーム支持機構
16a 円弧動機構
16b 減速機構
17 スタンド
18 取り出し位置
41 検出器用ドラム
42 検出器用ケーブル
43 検出器用プーリ
51 発生器用ドラム
52 発生器用ケーブル
53 発生器用プーリ
CF 円弧方向
DH ダクトホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10