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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 27/00 20060101AFI20241017BHJP
   B66B 29/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B66B27/00 C
B66B29/00 B
B66B29/00 G
B66B29/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020078322
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172496
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】桑村 秀樹
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095233(JP,A)
【文献】特開2020-001873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 27/00
B66B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、
前記複数のステップの両側に設けられ、前記複数のステップに同期して移動する移動手すりと、
減速機と、第1の無端状の索状体を介して前記減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、
前記減速機の出力側回転軸に第2の無端状の索状体を介して連結され、前記減速機からの駆動力を前記ステップに伝達するスプロケットと、
前記スプロケットに第3の無端状の索状体を介して連結し、前記減速機からの動力によって前記移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、
を備える乗客コンベアにおいて、
前記減速機の前記入力側回転軸に設けられる減速機軸回転検出器と、
前記移動手すりに対して設けられる移動手すり回転検出器と、
起動時に、前記減速機軸回転検出器の検出信号と、前記移動手すり回転検出器の検出信号とに基づいて、前記駆動装置および前記移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、前記駆動装置の異常を判定すると、前記乗客コンベアを停止して、再起動不可とし、前記移動手すりの異常を判定すると、前記乗客コンベアを停止して、再起動可能とすることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、
前記複数のステップの両側に設けられ、前記複数のステップに同期して移動する一対の移動手すりと、
減速機と、第1の無端状の索状体を介して前記減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、
前記減速機の出力側回転軸に第2の無端状の索状体を介して連結され、前記減速機からの駆動力を前記ステップに伝達するスプロケットと、
前記スプロケットに第3の無端状の索状体を介して連結し、前記減速機からの動力によって前記一対の移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、
を備える乗客コンベアにおいて、
前記減速機の前記入力側回転軸に設けられる第1の回転検出器と
前記一対の移動手すりの一方および他方のそれぞれに対して設けられる、第2の回転検出器および第3の回転検出器と、
起動時に、前記第1の回転検出器の検出信号と、前記第2の回転検出器の検出信号と、前記第3の回転検出器の信号とに基づいて、前記駆動装置および前記移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2の回転検出器および前記第3の回転検出器がともに回転未検出であり、かつ前記第1の回転検出器が回転未検出である場合、前記駆動装置が異常であると判定することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記制御装置は、前記駆動装置が異常であると判定すると、前記乗客コンベアを停止して、再起動不可とすることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、
前記複数のステップの両側に設けられ、前記複数のステップに同期して移動する一対の移動手すりと、
減速機と、第1の無端状の索状体を介して前記減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、
前記減速機の出力側回転軸に第2の無端状の索状体を介して連結され、前記減速機からの駆動力を前記ステップに伝達するスプロケットと、
前記スプロケットに第3の無端状の索状体を介して連結し、前記減速機からの動力によって前記一対の移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、
を備える乗客コンベアにおいて、
前記減速機の前記入力側回転軸に設けられる第1の回転検出器と、
前記一対の移動手すりの一方および他方のそれぞれに対して設けられる、第2の回転検出器および第3の回転検出器と、
起動時に、前記第1の回転検出器の検出信号と、前記第2の回転検出器の検出信号と、前記第3の回転検出器の信号とに基づいて、前記駆動装置および前記移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2の回転検出器および前記第3の回転検出器の一方が回転未検出でありかつ他方が回転検出である場合、前記移動手すりが異常であると判定することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、
前記複数のステップの両側に設けられ、前記複数のステップに同期して移動する一対の移動手すりと、
減速機と、第1の無端状の索状体を介して前記減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、
前記減速機の出力側回転軸に第2の無端状の索状体を介して連結され、前記減速機からの駆動力を前記ステップに伝達するスプロケットと、
前記スプロケットに第3の無端状の索状体を介して連結し、前記減速機からの動力によって前記一対の移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、
を備える乗客コンベアにおいて、
前記減速機の前記入力側回転軸に設けられる第1の回転検出器と、
前記一対の移動手すりの一方および他方のそれぞれに対して設けられる、第2の回転検出器および第3の回転検出器と、
起動時に、前記第1の回転検出器の検出信号と、前記第2の回転検出器の検出信号と、前記第3の回転検出器の信号とに基づいて、前記駆動装置および前記移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2の回転検出器および前記第3の回転検出器の両方が回転未検出でありかつ前記第1の回転検出器が回転検出である場合、前記移動手すりが異常であると判定することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の乗客コンベアにおいて、
前記制御装置は、前記移動手すりが異常であると判定すると、前記乗客コンベアを停止して、再起動可能とすることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項7】
無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、
前記複数のステップの両側に設けられ、前記複数のステップに同期して移動する一対の移動手すりと、
減速機と、第1の無端状の索状体を介して前記減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、
前記減速機の出力側回転軸に第2の無端状の索状体を介して連結され、前記減速機からの駆動力を前記ステップに伝達するスプロケットと、
前記スプロケットに第3の無端状の索状体を介して連結し、前記減速機からの動力によって前記一対の移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、
を備える乗客コンベアにおいて、
前記減速機の前記入力側回転軸に設けられる第1の回転検出器と、
前記一対の移動手すりの一方および他方のそれぞれに対して設けられる、第2の回転検出器および第3の回転検出器と、
起動時に、前記第1の回転検出器の検出信号と、前記第2の回転検出器の検出信号と、前記第3の回転検出器の信号とに基づいて、前記駆動装置および前記移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2の回転検出器および前記第3の回転検出器の両方が回転検出である場合、前記乗客コンベアを起動して継続運転することを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや動く歩道などの乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、無端状に連結されて乗降口間を移動するステップ(踏段)と、ステップの両側に設けられた欄干と、この欄干上をステップと同期して移動する移動手すりとを備え、ステップ上の乗客を乗り口から降り口まで搬送する。
【0003】
乗客コンベアを駆動する場合、駆動装置から、スプロケットを介して、ステップが連結された無端状のステップチェーンに動力が伝達される。駆動装置では、モータと減速機とが駆動ベルトで連結され、減速機に設置したブレーキが解放されてモータが回転を開始すると、モータの回転が減速機へ伝達される。減速機とスプロケットは駆動チェーンなどで連結され、減速機の回転がスプロケットへ伝達される。
【0004】
駆動装置を用いる場合、従来、減速機に回転検出器を設置して、回転検出器の検出値に基づいて乗客コンベアの速度が監視される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来、駆動装置におけるモータおよび減速機の各々に回転検出器を設置し、その検出値の差により駆動ベルトのスリップが検出される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-217090号公報
【文献】特許第3330543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
減速機に回転検出器を設置して速度を監視する従来技術では、速度の異常を確実に検出するために、起動時には、速度の立ち上がりを考慮して、所定時間経過後に異常を検出しようとすると、起動時に発生する駆動ベルトのスリップを即時に検出することが難しい。また、即時に速度の異常を検出するために、異常判定基準を厳しくすると、異常の誤検出が多くなり、異常検出の信頼性が低下する。
【0008】
また、モータおよび減速機の各々に設けられた回転検出器を用いてスリップを検出する技術では、駆動装置の構成が複雑化する。
【0009】
そこで、本発明は、駆動装置の構成を複雑化することなく、起動時に即時にかつ信頼性高く異常を検出できる乗客コンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による乗客コンベアは、無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、複数のステップに同期して移動する移動手すりと、減速機と第1の無端状索状体を介して減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、減速機の出力側回転軸に第2の無端状索状体を介して連結され、減速機からの駆動力をステップに伝達するスプロケットと、スプロケットに第3の無端状索状体を介して連結し、減速機からの動力によって移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、を備えるものであって、減速機の入力側回転軸に設けられる減速機軸回転検出器と、移動手すりに対して設けられる移動手すり回転検出器と、起動時に、減速機軸回転検出器の検出信号と、移動手すり回転検出器の検出信号とに基づいて、駆動装置および移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、を備え、制御装置は、駆動装置の異常を判定すると、乗客コンベアを停止して、再起動不可とし、移動手すりの異常を判定すると、乗客コンベアを停止して、再起動可能とする
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明による乗客コンベアは、無端状に連結されて、乗り口と降り口との間を移動する複数のステップと、複数のステップの両側に設けられ、複数のステップに同期して移動する一対の移動手すりと、減速機と第1の無端状の索状体を介して減速機の入力側回転軸に連結されるモータとを有する駆動装置と、減速機の出力側回転軸に第2の無端状の索状体を介して連結され、減速機からの駆動力をステップに伝達するスプロケットと、スプロケットに第3の無端状の索状体を介して連結し、減速機からの動力によって一対の移動手すりを駆動する移動手すり駆動装置と、を備えるものであって、減速機の入力側回転軸に設けられる第1の回転検出器と、一対の移動手すりの一方および他方のそれぞれに対して設けられる、第2の回転検出器および第3の回転検出器と、起動時に、第1の回転検出器の検出信号と、第2の回転検出器の検出信号と、第3の回転検出器の信号とに基づいて、駆動装置および移動手すりの動作の異常を判定する制御装置と、を備え、さらに次のいずれかの手段を備える
第1の手段は、制御装置は、第2の回転検出器および第3の回転検出器がともに回転未検出であり、かつ第1の回転検出器が回転未検出である場合、駆動装置が異常であると判定することである。
第2の手段は、制御装置は、第2の回転検出器および第3の回転検出器の一方が回転未検出でありかつ他方が回転検出である場合、移動手すりが異常であると判定することである。
第3の手段は、制御装置は、第2の回転検出器および第3の回転検出器の両方が回転未検出でありかつ第1の回転検出器が回転検出である場合、移動手すりが異常であると判定することである。
第4の手段は、制御装置は、第2の回転検出器および第3の回転検出器の両方が回転検出である場合、乗客コンベアを起動して継続運転することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動装置の構成を複雑化することなく、起動時に即時にかつ信頼性高く異常を検出できる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態であるエスカレーターの全体構成を示す概略側面断面図である。
図2】実施形態における制御系と駆動系の構成を示す構成図である。
図3】制御装置13の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いながら説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるエスカレーターの全体構成を示す概略側面断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のエスカレーターは、無端状のステップチェーン6に連結された複数のステップ1と、各ステップ1の左右両側に配置されて各ステップ1と同期して移動する移動手すり2と、移動手すり2を支持する欄干3を備えている。各ステップ1は、上部乗降口となる乗り口床板4と下部乗降口となる降り口床板5とを結ぶ移動路として移動可能に配置されている。欄干3は、スカート部14に立設されている。
【0018】
各ステップ1の移動領域内には、従動スプロケット7と駆動スプロケット8が互いに離れて回転自在に配置されている。従動スプロケット7および駆動スプロケット8には、各ステップ1を無端状に連結するステップチェーン6が巻き掛けられている。駆動スプロケット8の近傍には、モータ9と減速機10を有する駆動装置11が配置されている。駆動スプロケット8が、無端状の索状体である駆動チェーン12を介して駆動装置11に連結されている。また、駆動装置11の近傍には、駆動装置11を制御するための制御装置13が配置されている。
【0019】
制御装置13の制御によりモータ9が回転すると、モータ9の回転速度が減速機10で減速され、減速機10の回転出力が、駆動チェーン12を介して駆動スプロケット8に伝達される。これにより、各ステップ1が上昇方向または下降方向に移動する。また、駆動スプロケット8から無端状の索状体である移動手すり駆動チェーン15を介して移動手すり駆動装置16に駆動力が伝達されると、移動手すり2が、ステップ1の動きに同期して、上昇方向または下降方向に移動する。各ステップ1は、移動手すり2との同期移動により、下降運転時には、乗り口床板4から降り口床板5へ乗客を搬送し、上昇運転時には、降り口床板5から乗り口床板4へ乗客を搬送する。
【0020】
なお、図1においては、便宜上、乗降板(4,5)の内、上階側の乗降板を「乗り口床板4」と称し、下階側の乗降板を「降り口床板5」と称する。
【0021】
図2は、本実施形態であるエスカレーターにおける制御系と駆動系の構成を示す構成図である。なお、図2において、制御系は、制御装置13と、電磁接触器20と、減速機ブレーキ17とから構成されている。
【0022】
本実施形態では、制御装置13は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェース(いずれも図示省略)等の情報処理装置を備えたコンピュータで構成される。制御装置13は、メモリに格納される制御用プログラムがCPUにより実行されることにより、後述する運転制御部18および駆動装置異常判定部19として機能する。
【0023】
運転制御部18は、制御装置13の動作全体を統括制御するとともに、電磁接触器20と減速機ブレーキ17を制御対象として管理する。また、運転制御部18は、駆動装置異常判定部19の判定結果を基に電磁接触器20に対して運転・停止指令を出力するとともに、減速機ブレーキ17に対してブレーキ開放・遮断指令を出力する。運転制御部18は、駆動装置異常判定部19から異常の判定結果を得た場合、電磁接触器20に停止指令を出力してモータ動力電源(図2では建屋三相電源30)を遮断するとともに、減速機ブレーキ17に対してブレーキ遮断指令を出力し減速機ブレーキ17への電力供給を遮断するする。これにより、モータ9は停止し、減速機ブレーキ17は制動状態になる。
【0024】
駆動装置異常判定部19は、減速機軸回転検出器22および移動手すり回転検出器23の各々から回転信号を入力し、これら回転検出器が回転未検出か否かを判定し、判定結果を運転制御部18に出力する。各回転検出器としては、例えば、ロータリーエンコーダが適用される。
【0025】
なお、移動手すり回転検出器23は、左右一対の移動手すり2の各々に対して設けられる。したがって、駆動装置異常判定部19は、一対の移動手すり回転検出器の各々から、回転信号を取得する。以下では、ステップ1の移動方向に向かって、左側および右側の移動手すりに対して設けられる移動手すり回転検出器23を、それぞれ左側移動手すり回転検出器および右側移動手すり回転検出器と称す。
【0026】
モータ9の回転軸は、無端状の索状体である駆動ベルト21を介して減速機10の入力側回転軸に接続される。減速機10の出力側回転軸は、駆動チェーン12を介してスプロケット8に接続される。したがって、減速機10からの駆動力は、減速機10の出力側回転軸と駆動チェーン12およびスプロケット8を介して、ステップ1に伝達される。また、減速機10からの駆動力は、減速機10の出力側回転軸と駆動チェーン12とスプロケット8および移動手すり駆動チェーン15を介して、移動手すり駆動装置16を駆動することにより、移動手すり2に伝達される。減速機ブレーキ17は、運転制御部18からのブレーキ動作指令に応じて、減速機10の回転を停止させるように動作する。
【0027】
図3は、制御装置13の動作を示すフローチャートである。
【0028】
エスカレーターが、例えばキースイッチが操作されて、起動開始すると(処理ステップS1)、制御装置13は、運転制御部18によって、電磁接触器20に運転指令を出力する(処理ステップS2)。これにより、電磁接触器20は接点を閉じるので、動力電源からの電力がモータ9および減速機ブレーキ17に供給される。このとき、駆動装置11が正常であれば、減速機ブレーキ17が開放され、モータ9が一定の回転速度で運転される。
【0029】
エスカレーターが起動完了するまでの過程で、制御装置13は、起動開始から5秒経過したかどうかを判定する(処理ステップS3)。制御装置13は、判定結果が否定(NO)の場合、処理ステップS3の判定処理を繰り返し、判定結果が肯定(YES)の場合、次に処理ステップS4を実行する。処理ステップS3により、制御装置13は、起動直後の過渡的状態をさけて、各回転検出器の回転信号を入力するので、入力する各回転信号の信頼性が向上する。
【0030】
処理ステップS4において、制御装置13は、左側移動手すり回転検出器が回転未検出であるかを判定する。制御装置13は、判定結果が肯定(YES)の場合、次に処理ステップS5を実行し、判定結果が否定(NO)の場合、次に処理ステップS9を実行する。
【0031】
処理ステップS5において、制御装置13は、右側移動手すり回転検出器が回転未検出であるかを判定する。制御装置13は、判定結果が肯定(YES)の場合、次に処理ステップS6を実行し、判定結果が否定(NO)の場合、次に処理ステップS10を実行する。
【0032】
処理ステップS6において、制御装置13は、減速機軸回転検出器22が回転未検出であるかを判定する。制御装置13は、判定結果が肯定(YES)の場合、次に処理ステップS7を実行し、判定結果が否定(NO)の場合、次に処理ステップS10を実行する。
【0033】
処理ステップS7において、制御装置13は、駆動装置異常判定部19によって、駆動装置11の異常を検出し、異常検出の判定結果を運転制御部18に出力する。制御装置13は、処理ステップS7を実行後、次に、処理ステップS8を実行する。
【0034】
処理ステップS8において、制御装置13は、運転制御部18によって、駆動装置異常判定部19から駆動装置異常検出の判定結果を受けたことを条件に、電磁接触器20に対して停止指令を出力する。電磁接触器20は、停止指令を受けると、モータ9の動力電源を遮断する。また、制御装置13は、運転制御部18によって、減速機ブレーキ17に対して停止指令を出力する。減速機ブレーキ17は、停止指令を受けると、開放状態から制動状態になる。さらに、制御装置13は、運転制御部18によって、エスカレーターを再起動不可状態にする。これにより、キースイッチなどによる起動操作が無効化され、起動操作をしてもエスカレーターは再起動しない。
【0035】
このように、左右両側の移動手すり回転検出器がともに回転未検出であり、かつ減速機軸回転検出器が回転未検出である場合、制御装置13は、駆動装置11が異常であると判定し、この判定結果に基づいて、エスカレーターを停止して、再起動不可状態とする。
【0036】
処理ステップS4における判定結果が否定(NO)の場合、制御装置13は、処理ステップS9において、右側移動手すり回転検出器が回転未検出であるかを判定する。制御装置13は、処理ステップS9において、判定結果が肯定(YES)の場合、次に処理ステップS10を実行し、判定結果が否定(NO)の場合、次に処理ステップS13を実行する。
【0037】
処理ステップS10は、上述のように、処理ステップS5における判定結果が否定(NO)である場合、処理ステップS6における判定結果が否定(NO)である場合、並びに、処理ステップS9における判定結果が肯定(YES)である場合に実行される。すなわち、処理ステップS10は、左右両側の移動手すり回転検出器の内、一方の移動手すり回転検出器が回転未検出でありかつ他方の移動手すり回転検出器が回転検出である場合、並びに、両方の移動手すり回転検出器が回転未検出でありかつ減速機軸回転検出器が回転検出である場合に、実行される。
【0038】
処理ステップS10において、制御装置13は、起動開始から10秒経過後においても左右の移動手すり回転検出器のいずれかまたは両方が回転未検出であるかどうかを判定する。制御装置13は、判定結果が否定(NO)である場合、次に処理ステップS13を実行し、判定結果が肯定(YES)である場合、次に処理ステップS11を実行する。処理ステップS10によれば、本ステップ実行時点では実質的に駆動装置11は正常であると判定されているので、エスカレーターを通常の定格速度で停止させることができる。
【0039】
処理ステップS11において、制御装置13は、駆動装置異常判定部19によって、移動手すり2の異常を検出し、異常検出の判定結果を運転制御部18に出力する。制御装置13は、処理ステップS11を実行後、次に、処理ステップS12を実行する。
【0040】
処理ステップS12において、制御装置13は、運転制御部18によって、駆動装置異常判定部19から移動手すり異常検出の判定結果を受けたことを条件に、電磁接触器20に対して停止指令を出力する。電磁接触器20は、停止指令を受けると、モータ9の動力電源を遮断する。また、制御装置13は、運転制御部18によって、減速機ブレーキ17に対して停止指令を出力する。減速機ブレーキ17は、停止指令を受けると、開放状態から制動状態になる。ただし、処理ステップS8とは異なり、制御装置13は、運転制御部18によって、エスカレーターを再起動可能状態にする。これにより、再びキースイッチなどによる起動操作がなされると、制御装置13は、運転制御部18によって、再度起動処理を開始する。
【0041】
このように、左右両側の移動手すり回転検出器の内、一方の移動手すり回転検出器が回転未検出でありかつ他方の移動手すり回転検出器が回転検出である場合、並びに、両方の移動手すり回転検出器が回転未検出でありかつ減速機軸回転検出器が回転検出である場合には、制御装置13は、駆動装置11は動作しているが、移動手すり2が異常であると判定し、この判定結果に基づいて、エスカレーターを停止するが、再起動可能状態とする。
【0042】
処理ステップS13は、上述のように、処理ステップS4における判定結果が否定(NO)であり、かつ処理ステップS9における判定結果が否定(NO)である場合に実行される。すなわち、処理ステップS13は、左右両側の移動手すり回転検出器の両方が回転検出である場合に、実行される。
【0043】
処理ステップS13において、制御装置13は、正常に起動動作を完了し、エスカレーターの運転を継続する。
【0044】
このように、制御装置13は、左右両側の移動手すり回転検出器の両方が回転検出である場合に、駆動装置11および移動手すり2が正常に動作しているとして、エスカレーターを起動して継続運転する。
【0045】
本実施形態によれば、減速機の回転軸に設けられる回転検出器の検出信号と、移動手すりに設けられ移動手すりが移動すると回転する回転検出器の検出信号とに基づいて、駆動装置および移動手すりの動作異常を判定するので、駆動装置の構成を複雑化することなく、起動時に即時にかつ信頼性高く異常を検出できる。これにより、起動時に、ベルトスリップ発生などにより駆動系に動作異常が発生しても、エスカレーターを安全に停止することができる。さらに、駆動装置および移動手すりの異常を区別して判定できる。これにより、駆動装置が異常の場合は再起動不可とし、移動手すりが異常の場合は再起動可能とすることができるので、安全性が向上するとともに利便性の低下を抑制できる。
【0046】
さらに、ステップ1の左右両側に位置する移動手すりの両方に回転検出器を設け、これらと、減速機の回転軸に設けられる減速機軸回転検出器22とにより、異常を検出することにより駆動装置および移動手すりの異常の誤検出が抑制されるとともに、異常検出の精度を向上することができる。
【0047】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0048】
例えば、上述の実施形態における駆動系の異常検出手段は、エスカレーターに限らず、動く歩道を含む乗客コンベアに適用できる。
【0049】
制御系は、コンピュータに限らず、FPGAやASICを用いて構成してもよい。また、制御系が用いるプログラム、テーブルデータ、ファイルなどは、半導体メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、ICカード、SDカード、DVD等の各種の記録デバイスに記録しておくことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ステップ、2 移動手すり、3 欄干、4 乗り口床板、5 降り口床板、6 ステップチェーン、7 従動スプロケット、8 駆動スプロケット、9 モータ、10 減速機、11 駆動装置、12 駆動チェーン、13 制御装置、14 スカート部、15 移動手すり駆動チェーン、16 移動手すり駆動装置、17 減速機ブレーキ、18 運転制御部、19 駆動装置異常判定部、20 電磁接触器、21 駆動ベルト、22 減速機軸回転検出器、23 移動手すり回転検出器、30 建屋三相電源
図1
図2
図3