(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】吸水剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20241017BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20241017BHJP
C08F 20/04 20060101ALI20241017BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20241017BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/26 D
C08F20/04
C08J3/12 A CEY
C08J3/24 Z
(21)【出願番号】P 2020112707
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】従野 剛
(72)【発明者】
【氏名】片倉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 敦裕
(72)【発明者】
【氏名】足立 芳史
(72)【発明者】
【氏名】田島 峻一
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501295(JP,A)
【文献】特表2012-506462(JP,A)
【文献】特表平06-510551(JP,A)
【文献】特表平05-508674(JP,A)
【文献】特開2016-108400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00- 20/28
B01J 20/30- 20/34
C08F 6/00-246/00
C08J 3/00- 3/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂およびアルカリ剤により得られる吸水性樹脂溶解液を吸水剤の製造工程に添加する吸水剤の製造方法であって、
前記吸水性樹脂溶解液は、前記アルカリ剤の水溶液および前記吸水性樹脂を混合して得られ、前記アルカリ剤の水溶液中の前記アルカリ剤の濃度が5~30質量%であ
り、
前記吸水性樹脂は酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる架橋重合体を含み、
前記アルカリ剤は、アルカリ金属の水酸化物である、吸水剤の製造方法。
【請求項2】
前記吸水性樹脂溶解液が下記(1)~(5)のいずれか1つ以上の製造工程に添加される、請求項1に記載の吸水剤の製造方法;
(1)単量体水溶液の調製工程
(2)重合工程
(3)ゲル粉砕工程
(4)微粉造粒工程
(5)表面架橋工程。
【請求項3】
前記吸水性樹脂溶解液が前記(1)、(2)および(3)のいずれか1つ以上の製造工程に添加される、請求項2に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項4】
前記吸水性樹脂溶解液が前記(1)の製造工程に添加される、請求項3に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項5】
前記吸水剤の原料単量体として酸基含有不飽和単量体を主成分として含み、前記吸水性樹脂溶解液を、前記
吸水剤の原料単量体としての酸基含有不飽和単量体またはその重合体の中和剤の全部または一部として使用する、請求項3
または4に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項6】
前記吸水性樹脂溶解液を、前記吸水剤の原料単量体としての酸基含有不飽和単量体またはその重合体の中和剤の一部として使用する、請求項5に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項7】
前記吸水性樹脂溶解液を、前記吸水剤の原料単量体としての酸基含有不飽和単量体の中和剤の一部として使用する、請求項6に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項9】
前記吸水性樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項10】
前記吸水性樹脂は、固形分率が85質量%以上である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項11】
前記吸水性樹脂は、CRCが18g/g以上である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項12】
前記吸水剤のVortex(吸水速度)が50秒以下である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項13】
前記吸水剤の残存モノマー量が500ppm以下である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/SuperAbsorbentPolymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツや生理用ナプキン等の吸収性物品、農園芸用の保水剤、工業用の止水剤等、様々な分野で多用されている。
【0003】
上記吸水性樹脂は、その原料として多くの単量体や親水性高分子が使用されているが、吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体から構成される重合体を主成分とする吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
【0004】
上記吸水性樹脂には、主用途である紙オムツの高性能化に伴い、様々な機能(高物性化)が求められている。特に、無加圧下吸水倍率や加圧下吸水倍率は基本物性として非常に重要である。
【0005】
このような吸水性樹脂は、シート状、繊維状、フィルム状等、様々な形状とすることができるが、一般的には、粉末状又は粒子状の吸水剤として使用されることが多い。
【0006】
粉末状又は粒子状の吸水剤の主な製造方法として、水溶液重合法や逆相懸濁重合法が挙げられる。特に、単量体水溶液を用いて重合を行う水溶液重合法では、通常、粒子状の吸水性樹脂を最終的に得るために、酸基含有不飽和単量体水溶液を重合する重合工程、重合で得られた含水ゲル状重合体を粉砕するゲル粉砕(細粒化)工程、粉砕ゲルを乾燥する乾燥工程、乾燥物を粉砕する粉砕工程、粉砕物を適正な粒度範囲に調整する分級工程、分級された吸水性樹脂粉末に表面架橋剤で処理する表面架橋工程といった多くの製造工程を必要としている。
【0007】
このような製造工程においては、微粉や規格外品などの不要な吸水性樹脂が発生する。例えば、発生する微粉量は、生産量全体の10~数10質量%(例えば20~30質量%)に達する。不要な吸水性樹脂は製造プロセス中で除去されるが、除去された吸水性樹脂の廃棄はコスト的に不利であるため、分級工程以前の工程、特に乾燥工程以前の工程に除去された吸水性樹脂が回収・再利用される。これまでに吸水性樹脂の回収・再利用については多くの検討がなされている。
【0008】
特許文献1では、アクリル酸に吸水性樹脂の微粉を分散させて分散液を得た後、当該分散液を単量体水溶液に添加することで、微粉の再利用を行っている。
【0009】
また、特許文献2では、吸水性樹脂の微粉をアルカリ物質で処理した後、当該処理体を単量体水溶液に添加することで、微粉の再利用を行っている。特許文献2によれば、当該工程を行うことで、得られる吸水性樹脂は、荷重がかかっていない状態で液体を保持する吸収容量が改良されるとある。なお、特許文献2でいうアルカリ物質による処理は、「噴霧または滴下により、高吸収性ポリマーの微粉の上に均等に分布される」とあり、処理によっても微粉の形態が維持されている。
【0010】
また、微粉の回収方法として、微粉を造粒して回収する方法がある。微粉を造粒する際に、微粉造粒物の強度が不足していると、例えば、乾燥工程、粉砕工程及び分級工程において再び微粉が発生することになり、その結果として、製造プロセス全体で発生する微粉量が増加する。これまで、微粉造粒物の強度を改善するための種々の提案がなされている。例えば、特許文献3では、例えば、多量の温水で微粉をゲル化させることにより、微粉同士を強固に結着させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表平5-508674号公報
【文献】特表2012-506462号公報
【文献】特開平11-106514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2の記載によれば、当該プロセスによって、未処理の微粉を添加した場合よりも得られる吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC;Centirfuge Retension Capacity)が改善されるとあるが、改良の余地が依然としてある。さらに、無加圧下吸水倍率と同様の基本物性である加圧下吸水倍率の低下の抑制も重要な課題である。
【0013】
一方、吸水性樹脂を構成する重合体は、アクリル酸などの酸基含有不飽和単量体を重合開始剤などとともに添加し、加熱により重合させることにより製造される。この際、重合体製造後の重合体反応物には、原料として用いられた酸基含有不飽和単量体成分が少なからず残存するという問題がある(残存モノマーの問題)。これは、重合体の生産性や性能の観点から鑑みて好ましいものではない。また、特に人体へ接触する用途においては、残存モノマーによる毒性や刺激性を可能な限り低減することが求められる。しかしながら、造粒による微粉回収方法などのこれまでの微粉回収によって得られた吸水性樹脂を再利用する場合、得られる吸水性樹脂の残存モノマーが増加する傾向にあった。
【0014】
本発明の目的は、微粉などの吸水性樹脂を回収・再利用した場合であっても、得られる吸水剤の無加圧下吸水倍率や加圧下吸水倍率の低下を抑制する、吸水剤の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、製品中の残存モノマー量が低減する、吸水剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、吸水性樹脂およびアルカリ剤により得られる吸水性樹脂溶解液を吸水剤の製造工程に添加する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸水剤の製造方法によれば、微粉などの吸水性樹脂を回収・再利用した場合であっても、得られる吸水剤の無加圧下吸水倍率の低下が抑制される。また、本発明の吸水剤の製造方法によれば、得られる吸水剤の残存モノマー量が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下に例示する以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲内で適宜変更して、実施することが可能である。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。複数の実施形態についてそれぞれ開示された技術的手段を、適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
〔1〕用語の定義
〔1-1〕「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、下記の物性を満たすものをいう。即ち、水膨潤性としてNWSP 241.0.R2(15)(NWSPについては後述する)で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上であり、かつ、水不溶性としてNWSP 270.0.R2(15)で規定されるExt(水可溶分)が50質量%以下である高分子ゲル化剤を指す。
【0019】
上記吸水性樹脂は、その用途・目的に応じた設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量が架橋重合体である形態に限定されず、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0020】
本発明における「吸水性樹脂」は表面架橋(別称;後架橋、2次架橋)されたものであってもよく、表面架橋されていないものであってもよい。なお、本発明では所定の表面架橋処理が完了した吸水性樹脂を、別途、表面架橋された吸水性樹脂と称することもある。
【0021】
〔1-2〕「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」
本発明における「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」とは、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」とも称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む架橋重合体を意味する。
【0022】
上記「主成分」とは、(メタ)アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体全体に対して、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは70モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%、特に好ましくは実質100モル%であることを意味する。
【0023】
ここで、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)は、未中和でもよいが、好ましくは部分中和または完全中和されたポリ(メタ)アクリル酸塩であり、より好ましくは一価の塩、さらに好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、よりさらに特に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0024】
(1-3)「吸水剤」
本発明における「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液の吸収ゲル化剤を意味する。本発明に係る吸水剤は、水性液を吸収するための衛生材料として好適に使用される。本発明の吸水剤中に吸水性樹脂は好ましくは60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%含まれ、その他の成分として、後述する各種の添加剤を含んでいてもよい。即ち、これらの成分が一体化された吸水性樹脂組成物も本発明の吸水剤の範疇である。なお、本発明の吸水剤を吸水性樹脂、吸水性樹脂粉末、および吸水性樹脂粒子と称す場合がある。特に下記評価方法の定義において、吸水剤を評価する場合には、吸水性樹脂は吸水剤に置き換えて定義される。
【0025】
〔1-3〕評価方法の定義
「NWSP」は「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表し、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)が、不織布及びその製品の評価法を米国および欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。特に断りのない限り、本発明では「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。NWSPに記載のない評価方法に関しては、実施例に記載された方法及び条件で測定する。
【0026】
〔1-3-1〕「CRC」(NWSP 241.0.R2(15))
「CRC」は、CentrifugeRetentionCapacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、重合後及び/又はゲル粉砕後の含水ゲルについては、含水ゲル0.4gを使用し、測定時間を24時間に変更し、且つ固形分補正してCRCを求める。
【0027】
〔1-3-2〕「PSD」(NWSP 220.0.R2(15))
「PSD」は、ParticleSizeDistributionの略称であり、篩分級により測定される吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号のカラム27~28の(3)質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差に記載された方法と同様の方法で振動分級機(電源60Hz)にて測定される。
【0028】
〔1-3-3〕「AAP」(NWSP 242.0.R2(15))
「AAP」は、AbsorptionAgainstPressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下における吸水倍率を意味する。具体的には、実施例に記載の条件で測定した吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0029】
〔1-3-4〕「ResidualMonomers」(NWSP 210.0.R2(15))
「ResidualMonomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)質量(以下、「残存モノマー」と称する)の、吸水性樹脂の質量に対する割合(単位;ppm)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、1時間攪拌した後に溶出したモノマー量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定する。尚、含水ゲルの残存モノマーは、必要により強制冷却等の重合停止操作を行った後、後述する方法にて測定して得られる残存モノマー質量の、含水ゲルの樹脂固形分の質量に対する割合(単位;質量%)とする。
【0030】
〔1-3-5〕「Vortex」
本発明における「Vortex」とは、吸水性樹脂の吸水速度を表す指標であり、2.0gの吸水性樹脂が50mlの0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液を所定の状態まで吸水するのに要する時間(単位;秒)を意味する。
【0031】
〔1-4〕その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「Metricton(メトリックトン)」を意味し、「ppm」は「質量ppm」又は「重量ppm」を意味する。更に、「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
〔2〕吸水剤の製造方法
本発明に係る製造方法は、吸水性樹脂およびアルカリ剤により得られる吸水性樹脂溶解液を得、前記吸水性樹脂溶解液を吸水性樹の製造工程に添加する吸水剤の製造方法である。以下、アルカリ剤と混合される吸水性樹脂を吸水性樹脂Aとも称する。
【0032】
このような製造方法によって得られる吸水剤は、回収した吸水性樹脂を吸水剤の製造工程中へ再利用した場合であっても、CRCやAAPの基本物性の低下を抑制することができる。吸水性樹脂溶解液においては、吸水性樹脂Aは粉末状やゲル状ではなく、溶解した吸水性樹脂として存在する。吸水性樹脂が溶解した形態であることで、吸水性樹脂Aは、原料単量体及び/又は原料単量体由来の可溶性成分となり、当該溶解液を吸水剤の製造工程に使用することにより、工程内での加温などにより吸水性樹脂に組み込まれる(反応する)ことが可能となる。ゆえに、得られる吸水剤の物性の低下が抑制されるものと考えられる。
【0033】
また、回収した微粉を造粒して再利用する方法などの従来の微粉回収・再利用によって得られた吸水剤では残存モノマーが増加する傾向にあった。吸水性樹脂を従来の方法(微粉造粒など)によって吸水性樹脂のプロセス中に再利用すると、再利用した吸水性樹脂が周囲の単量体水溶液や含水ゲルから単量体を捕捉し、単量体の反応性を低下させるため、最終製品の残存モノマー量の増加につながるためであると考えられる。一方、本発明のように、吸水性樹脂Aおよびアルカリ剤により得られる吸水性樹脂溶解液を吸水性樹脂のプロセス中に再利用すると、周囲の単量体を捕捉しないだけでなく、吸水性樹脂Aが元々含有していた残存モノマーも工程内での加温などにより周囲の未反応部分(単量体、開始剤等)と反応が可能となるため、残存モノマー量低減に効果があると考えられる。後述の実施例で示されるように、吸水性樹脂Aを製造プロセス中に添加していない参考例よりも実施例において残存モノマー量が低減している。当該効果は、吸水性樹脂溶解液が、吸水剤の製造における添加剤として新たな機能を有することを示唆するものである。
【0034】
また、上記製造方法によれば、吸水性樹脂溶解液中のアルカリ剤が酸基含有不飽和単量体または酸基含有不飽和単量体を重合してなる重合体中の酸基に対して中和剤として作用することができる。よって、製造プロセス中に吸水性樹脂溶解液を添加しても、吸水性樹脂の物性に与える影響が少ない。
【0035】
なお、上記推定は本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【0036】
吸水性樹脂溶解液の添加は、吸水剤のいずれかの製造工程に添加される。言い換えると、当該吸水性樹脂溶解液は吸水剤の原料の一部として用いられる。
【0037】
具体的には、吸水性樹脂溶解液は、下記(1)~(5)のいずれか1つ以上の製造工程に添加されることが好ましい。
(1)単量体水溶液の調製工程(形態1)、
(2)重合工程(形態2)、
(3)ゲル粉砕工程(形態3)
(4)微粉造粒工程(形態4)
(5)表面架橋工程(形態5)。
【0038】
より好適には、本発明の効果が一層奏されることから、溶解液が(1)、(2)および(3)のいずれかの1つ以上の製造工程に添加される。
【0039】
さらに好適には、得られる吸水剤の吸水速度が向上することから吸水性樹脂溶解液が(1)の製造工程に添加される。
【0040】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0041】
〔2-1〕吸水性樹脂溶解液準備工程
本工程は、吸水性樹脂とアルカリ剤と、必要により水と、を混合して、吸水性樹脂溶解液を得る工程である。アルカリ剤と混合される吸水性樹脂を吸水性樹脂Aとも称する。
【0042】
溶解液とは、吸水性樹脂がアルカリ剤の水溶液にほぼすべて溶解している状態を指し、溶解しているか否かは目視により判断することができる。すなわち、液を目視により確認した場合に、沈殿物または浮遊物が存在せず、均一な溶液となっている状態を指す。より具体的には、JIS Z 8801-1:2019に準拠した公称目開き850μmの篩を用いて濾別した際に篩上に残る不溶分量が、溶解液重量に対して10重量%以下である。
【0043】
吸水性樹脂溶解液を得る方法としては特に制限されず、吸水性樹脂の含水率が高い場合(例えば、含水ゲル)は後述するアルカリ剤を直接吸水性樹脂と混合してもよい。好ましい形態としては、吸水性樹脂およびアルカリ剤の水溶液(以下、アルカリ水溶液と称する)を混合して吸水性樹脂溶解液を得ることができる。
【0044】
アルカリ水溶液に吸水性樹脂を混合する方法としては特に限定されず、アルカリ水溶液を攪拌しながら吸水性樹脂を徐々に添加する方法;吸水性樹脂を攪拌しながらアルカリ水溶液を徐々に添加する方法;などいずれの方法であってもよい。また、アルカリ水溶液に添加する前に、吸水性樹脂を一定量の水又はアルカリ水溶液で膨潤させた形態であってもよい。
【0045】
アルカリ水溶液に対する吸水性樹脂Aの添加量(固形分)は、特に制限されるものではないが、アルカリ水溶液に対する吸水性樹脂Aの溶解性および吸水性樹脂Aの回収効率を考慮すると、アルカリ水溶液100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることがさらにより好ましい。
【0046】
吸水性樹脂Aを添加する際のアルカリ水溶液の液温は特に限定されず、5~100℃程度である。温度が高いほうが吸水性樹脂の溶解性が向上するため、アルカリ水溶液の温度は15℃以上が好ましく、20℃以上であることがより好ましい。また、中和熱を考慮すれば、上限は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。上記温度に制御するために、適宜アルカリ水溶液を冷却、加熱してもよい。
【0047】
さらに、吸水性樹脂Aをアルカリ水溶液と混合する際に、UV光照射や超音波を当てることで吸水性樹脂の溶解が促進される。また、過酸化水素水などの酸化剤を併用することでも吸水性樹脂の溶解が促進される。
【0048】
アルカリ剤としては、水溶性を示し、水溶液にしたときにアルカリ性を示す化合物であればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物のような無機アルカリ剤;モノメチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ剤が好適に挙げられる。吸水性樹脂Aを十分に溶解させる観点からは、水溶液としたときに強アルカリ性を示すアルカリ剤が好ましく、無機のアルカリ剤が好ましい。具体的には、アルカリ水溶液でpHが10以上になるアルカリ剤が好ましい。この中でも、アルカリ金属の水酸化物であることが好ましく、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであることがより好ましく、水酸化ナトリウムであることがさらにより好ましい。上記のアルカリ金属の水酸化物をアルカリ剤として使用することにより、吸水性樹脂の主原料である酸基含有不飽和単量体(塩)を得る中和剤として好適に使用できる。これらのアルカリ剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、得られる吸水性樹脂の性能の面から、アルカリ剤は、後述する酸基含有不飽和単量体及び/又は当該単量体を重合して得られる重合体の中和剤として使用される塩基性物質と同一であることが好ましい。
【0049】
アルカリ水溶液中のアルカリ剤濃度は、酸基含有不飽和単量体/当該単量体から重合されてなる重合体の中和を十分に進行させる観点で、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、吸水性樹脂Aの溶解性を考慮すると、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが好ましい。アルカリ水溶液中のアルカリ剤濃度は、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。また、アルカリ水溶液のpHとしては、10以上であることが好ましく、より好ましくは12以上である。
【0050】
アルカリ水溶液に用いられる水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることができるが、脱イオン水(イオン交換水)が好ましい。
【0051】
アルカリ水溶液には、少量の親水性溶媒を含有させてもよい。親水性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類が例示される。併用して用いられる溶媒は、水に対して例えば0~10質量%で使用される。吸水性樹脂Aの回収効率の面からは、吸水性樹脂Aをアルカリ水溶液に溶解させたのちに、水及び/又は親水性溶媒を留去してもよい。
【0052】
吸水性樹脂Aを得る方法は特に限定されない。吸水性樹脂Aは、本発明の吸水剤の製造工程において得られたものでもよく、本発明とは異なる吸水性樹脂、吸水剤の別製造プロセス中で得られたものでもよい。また、市販品や在庫品の吸水性樹脂を吸水性樹脂Aとしてもよい。既知の製造方法(例えば、後述の吸水剤の製造方法)及び製造条件に従って、後述する物性及び/または粒度となるように吸水性樹脂Aを製造してもよい。例えば、吸水性樹脂Aは、水溶液重合で得られても、逆相懸濁重合で得られてもよい。吸水性樹脂Aは、例えば、製造工程中で形成される微粉、最終製品、市販オムツより取り出される吸収性樹脂などが挙げられる。吸水性樹脂Aの形状は特に限定されず、不定形破砕状、球状、ソーセージ形状およびこれらの造粒形状、ブロッコリー形状などが挙げられる。また、吸水性樹脂Aは吸水してゲル状になっていてもよく、既知の吸水性樹脂の製造工程で得られる中間生産物を含み、[1-1]の吸水性樹脂の定義に限定されない。例えば、吸水剤の製造工程で使用される、吸水性樹脂が付着した装置を水などで洗浄する際、ゲル状になった吸水性樹脂Aを得ることができる。また、後述する連続ベルト重合時のベルトに付着した含水ゲルを水洗浄する際、ゲル状になった吸水性樹脂Aを得ることができる。また、使用済オムツからゲル状になった吸水性樹脂Aを得ることができる。
【0053】
吸水性樹脂Aを構成する重合体に用いられる単量体組成は、好ましくは、本発明で製造する吸水性樹脂に含有される重合体を構成する単量体組成と同様であることが好ましい。ゆえに、吸水性樹脂Aは、酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる重合体(好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)を重合してなる重合体)を主成分とする吸水性樹脂であることが好ましい。ここで、主成分とは、吸水性樹脂中、50モル%以上であることを指し(上限100モル%)、好ましくは70モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%である。酸基含有不飽和単量体中の酸基は、特に限定されず、例示および好適な形態は、後述する単量体水溶液準備工程の欄に記載した酸基含有不飽和単量体と同様である。
【0054】
酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる重合体は、未中和でもよく、中和されたものであってもよい。好ましくは部分中和または完全中和されたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体である。より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、さらに特に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩で中和されたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体である。ここで、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体とは、重合の際に用いられる単量体混合物の主成分が(メタ)アクリル酸であるものを指す。ここで、主成分とは、重合の際に用いられる単量体混合物中、50モル%以上であることを指し(上限100モル%)、好ましくは70モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%である。
【0055】
酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる重合体の中和率は、既知の方法により適宜調整されるが、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%~80モル%、更に好ましくは45モル%~78モル%、特に好ましくは50モル%~75モル%である。
【0056】
酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる重合体は、下記吸水剤製造方法の欄に記載するように、内部架橋剤によって架橋された架橋重合体であることが好ましい。すなわち、好ましくは、吸水性樹脂Aが酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる架橋重合体を含む。下記のように、吸水性樹脂の物性を向上させるために、酸基含有不飽和単量体を重合させる際に内部架橋剤を用いて架橋重合体を形成させることが多い。内部架橋された架橋重合体を含む吸水樹脂の製造の際に発生した微粉などを回収することがあるが、このように、内部架橋された架橋重合体を含む吸水樹脂を回収する際に本発明のようにアルカリ剤で均一に処理することで、得られる吸水性樹脂の吸水速度が向上する。内部架橋された重合体をアルカリ水溶液と混合することにより、架橋鎖が切断される。このように重合体が鎖状となることで、特に単量体水溶液中に含まれる場合に、下記のとおり、単量体水溶液の増粘効果が発揮され、得られる吸水剤の吸水速度が一層向上すると考えられる。上記の観点から、内部架橋剤としては、その分子内にエステル結合を有するか、または、架橋重合反応によりエステル結合を形成する化合物が好ましい。より好ましくは、内部架橋剤は、分子内にエステル結合を有する化合物であり、さらに好ましくは(メタ)アクリレート化合物である。架橋重合体を製造する際に用いられる内部架橋剤の種類、使用量等、およびこれらの好適な形態については、以下の吸水性樹脂の単量体水溶液の調製工程の欄に記載したものと同様である。
【0057】
また、酸基含有不飽和単量体(塩)を重合してなる重合体は、下記吸水性樹脂の表面架橋工程の欄に記載した表面架橋を行ってもよいし、行わなくともよい。例えば、乾燥工程前の含水ゲル状吸水性樹脂を回収したり、乾燥工程後、表面架橋前の分級工程の際に除去された吸水性樹脂粉末(このような吸水性樹脂粉末をベースポリマーと称される場合もある)を回収するのであれば、表面架橋は行われていないし、表面架橋後の分級工程の際に除去された吸水性樹脂粉末を回収するのであれば、表面架橋が施された表面架橋吸水性樹脂粉末となる。表面架橋剤の種類、表面架橋剤の使用量、表面架橋の方法およびこれらの好適な形態については、下記吸水性樹脂の表面架橋工程の欄に記載したものと同様である。残存モノマー低減の観点から、酸基含有不飽和単量体(塩)の表面架橋を行わない、いわゆるベースポリマーを吸水性樹脂Aとして用いてもよい。また、当該ベースポリマーは、分級または整粒工程前のベースポリマーであっても、分級または整粒工程後のベースポリマーであってもよい。
【0058】
流動性及び混合性の観点から、吸水性樹脂Aが粉末である場合の固形分率は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。上限は特に限定されるものではないが、固形分率は、通常99.9質量%以下、好ましくは99.5質量%以下である。なお、吸水性樹脂の固形分率の測定方法は、実施例において後述する。
【0059】
吸水性樹脂AのCRC(遠心分離機保持容量)は、固形分換算で、好ましくは5g/g以上であることが好ましく、より好ましくは10g/g以上、さらに好ましくは15g/g以上、特に好ましくは18g/g以上である。CRCが上記範囲内にあることで、溶解速度が向上し、プロセス効率を上げることができる。また、吸水性樹脂AのCRCの上限は特に限定されるものではないが、例えば、80g/g以下である。
【0060】
吸水性樹脂Aは、水や後述する吸水性樹脂のその他の添加剤の添加工程に記載の添加剤を含んでもよい。すなわち、吸水性樹脂Aは、100%が重合体である形態に限らず、吸水性樹脂Aは水や吸水性樹脂粉末の副原料であるその他微量成分(例;無機微粒子など)を含んでもよい。
【0061】
好ましくは、吸水性樹脂Aは、既知の吸水性樹脂の製造工程において実施される分級工程や整粒工程(乾燥工程、破砕工程後の分級工程、表面架橋工程後(任意の添加剤添加工程後)の分級工程、整粒工程など)において分級された不要な吸水性樹脂粉末(例えば、粗大粒子(質量平均粒子径が850μm以上)及びその破砕物、質量平均粒子径が150μm以下の微粉や、所望の物性を外れて除去された吸水性樹脂粉末(例えば、規格外の吸水性樹脂粉末)であり、より好ましくは微粉である。すなわち、分級工程において除去された微粉が採取されて、回収される吸水性樹脂粉末として本工程に供されることが好ましい。
【0062】
上記微粉は、粒子状又は粉末状の吸水性樹脂である。粉末状又は粒子状の吸水性樹脂では、その粒子径や粒度分布等によって吸水性能や取扱性、使用感が変動することが知られている。そのため、粒子径や粒度分布が適正に制御された粉末状又は粒子状の吸水性樹脂が求められている。特に、紙オムツ等衛生用品の用途では、加圧下吸水倍率や通液性などの観点から、微粉の含有量が少ない吸水性樹脂粉末(例えば粒度分布が850~150μm)が好ましいとされている。このため、微粉は分級などの操作により除去されることがある。このように除去された微粉を廃棄することはコストの観点から好ましくないため、微粉は工程中にリサイクルすることが好ましく、その際、本発明の方法が適用できる。
【0063】
本発明の吸水性樹脂Aとして適用できる微粉としては、篩分級による質量平均粒子径(D50)は、好ましくは150μm未満であり、より好ましくは10~150μm、さらに好ましくは20~140μmである。この微粉に含まれる粒子径150μm未満の粒子の割合(JIS標準篩 目開き150μmの篩透過率)は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、理想的には100質量%である。
【0064】
〔2-2〕酸基含有不飽和単量体を用いた、架橋重合体の製造工程
架橋重合体の製造工程において、〔2-1〕で得られた吸水性樹脂溶解液(以下、単に溶解液とも称する)を添加してもよく、当該実施態様が好適である。
【0065】
本架橋重合体の製造工程において溶解液を添加する場合、単量体水溶液の調製工程(形態1)、重合工程(形態2)のいずれかの工程または双方の工程で行うことができる。
【0066】
形態1および2では、溶解液の添加時期が異なる。いずれの形態であっても、溶解液中のアルカリ剤が、酸基含有不飽和単量体または酸基含有不飽和単量体を重合してなる重合体中の酸基の中和剤としても作用する。すなわち、吸水性樹脂溶解液を吸水剤の原料の一部として用いる。また、溶解液の添加は、重合反応の開始前、重合反応の期間中、重合反応終了後のいずれかで添加される。また、多段階中和の場合の中和剤として用いられる場合、どのタイミングで用いてもよいが、1回目の中和の際の中和剤として用いることが好ましい。
【0067】
以下、好適な実施形態について、詳細を述べる。
【0068】
〔2-2-1:単量体水溶液の調製工程〕
酸基含有不飽和単量体を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、得られる吸水剤の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液(単量体の飽和濃度を超えた分散液)を使用することもできるが、本項では便宜上、このようなスラリー液も単量体水溶液に含まれる。
【0069】
また、上記「主成分」とは、酸基含有不飽和単量体の使用量(含有量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0070】
酸基含有不飽和単量体中の酸基は、特に限定されないが、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等が例示される。この酸基含有不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等が挙げられる。吸水性能の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0071】
単量体水溶液に含まれる酸基含有不飽和単量体に含まれる酸基の一部又は全部が中和されることが好ましい。酸基含有不飽和単量体の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機カチオンとの塩及び、アミノ基やイミノ基を有するアミン系有機化合物等の塩基性物質との塩から適宜選択されて用いられる。中でも一価のカチオンとの塩であることがより好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることが更に好ましい。アルカリ金属塩の中でも、ナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがよりさらに好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0072】
上記酸基含有不飽和単量体を中和するために使用される中和剤としては、特に限定されないが、上記の酸基含有不溶和単量体の塩を構成するカチオンを含む塩であればよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、アミノ基やイミノ基を有するアミン系有機化合物等の塩基性物質が適宜選択されて用いられる。中和剤として、2種以上の塩基性物質が併用されてもよい。なお、本発明における単量体は、特に断りのない限り、中和塩を含む概念である。
【0073】
形態1においては、吸水性樹脂溶解液を単量体水溶液に混合することで、当該溶解液が酸基含有不飽和単量体の中和剤としての役割も果たす。
【0074】
なお、吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体とその中和塩の合計モル数に対する中和塩のモル数(以下、「中和率」と称する)は、最終的に、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%~80モル%、更に好ましくは45モル%~78モル%、特に好ましくは50モル%~75モル%となるように調整される。なお、当該中和率の好適な範囲は、後中和(含水ゲル状重合体における中和)の場合も同様である。
【0075】
上記中和率を調整する方法としては、酸基含有不飽和単量体および吸水性樹脂溶解液を混合して得た酸基含有不飽和単量体の中和塩と、酸基含有不溶和単量体と、を混合する方法;酸基含有不飽和単量体に、吸水性樹脂溶解液および/または公知の中和剤を添加する方法;酸基含有不飽和単量体に、吸水性樹脂溶解液を添加した後、公知の中和剤を添加する方法;中和剤の全部もしくは一部として吸水性樹脂溶解液を用いて予め所定の中和率に調整された酸基含有不飽和単量体の部分中和塩(即ち、酸基含有不飽和単量体とその中和塩との混合物)を用いる方法;等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0076】
上記中和率の調整は、酸基含有不飽和単量体の重合反応開始前に行ってもよい(形態1の態様)し、酸基含有不飽和単量体の重合反応中で行ってもよい(形態2の態様)し、酸基含有不飽和単量体の重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体に対して行ってもよい(後中和、形態2の態様)。また、重合反応開始前、重合反応中又は重合反応終了後のいずれか一つの段階を選択して中和率を調整してもよいし、複数の段階で中和率を調整してもよい。すなわち、中和剤の添加は、1回で行ってもよく、多段階(例えば、2段階中和)で行ってもよい。2段階中和は中和剤を2段階にわたって投入するものである。いずれの態様においても、酸基含有不飽和単量体またはその重合体の中和剤の全部または一部として吸水性樹脂溶解液を用いていれば、本発明の範疇に含まれる。
【0077】
単量体水溶液には、酸基含有不飽和単量体以外の単量体が含まれていてもよい。
【0078】
酸基含有不飽和単量体以外の単量体としては、重合して吸水性樹脂となり得る化合物であればよい。例えば、(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;N-ビニルピロリドン等のラクタム基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0079】
単量体水溶液中の単量体濃度(=総単量体量/(総単量体量+総重合溶媒量(通常は水)、ここで、単量体は酸基含有不飽和単量体以外の単量体も含む)は、吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、好ましくは10質量%~90質量%、より好ましくは20質量%~80質量%、更に好ましくは30質量%~70質量%、特に好ましくは40質量%~60質量%である。以下、単量体濃度を「モノマー濃度」と称する場合がある。
【0080】
本工程において調製される単量体水溶液には、重合禁止剤、内部架橋剤などが添加されていてもよい。なお、上述のように、内部架橋剤が含まれる形態は好適である。
【0081】
・重合禁止剤
重合に使用される単量体は、重合の安定性から、好ましくは少量の重合禁止剤を含む。好ましい重合禁止剤はp-メトキシフェノールである。単量体(特にアクリル酸及びその塩)中に含まれる重合禁止剤の量は、通常1ppm~250ppm、好ましくは10ppm~160ppm、より好ましくは20ppm~80ppmである。
【0082】
・内部架橋剤
内部架橋剤によって、得られる吸水性樹脂の吸水性能や吸水時のゲル強度等が調整される。
【0083】
上記内部架橋剤としては、1分子内に合計2以上の不飽和結合又は反応性官能基を有していればよい。例えば、分子内に(単量体と共重合しうる)重合性不飽和基を複数有する内部架橋剤として、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリロキシエタンなどが挙げられる。分子内に(単量体の官能基(例;カルボキシ基)と反応しうる)反応性官能基を複数有する内部架橋剤として、トリアリルアミン、ポリアリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミンなどが挙げられる(なお、ここで、エチレンカーボネートなどの環状カーボネートはカルボキシル基との反応によってさらに官能基OHを生成する架橋剤である)。また、分子内に重合性不飽和基及び反応性官能基を有する内部架橋剤として、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0084】
これら内部架橋剤の中でも、本発明の効果の面から、好ましくは、分子内に重合不飽和基を複数有する化合物であり、より好ましくは、分子内に(ポリ)アルキレン構造単位を有する化合物であり、さらに好ましくはポリエチレングリコール構造単位を有する化合物であり、特に好ましくは、ポリエチレングリコール構造単位を有するアクリレート化合物である。これらの内部架橋剤を用いて得られる含水ゲルでは、乾燥により吸水倍率が向上しやすいという効果が得られる。
【0085】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体及び内部架橋剤の種類等に応じて適宜設定される。得られる吸水性樹脂のゲル強度の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。なお、単量体の自己架橋反応が有効な重合条件においては、上記内部架橋剤を使用しなくともよい。
【0086】
内部架橋剤を添加する場合、内部架橋剤の酸基含有単量体への添加時期は特に限定されず、重合開始前であれば、どの時期に添加してもよい。例えば、重合形態1の場合、溶解液添加前であっても、添加後であってもよい。
【0087】
・その他の物質
本発明の目的が達成される範囲内で、以下に例示する物質(以下、「その他の物質」と称する)を単量体水溶液に添加することもできる。
【0088】
その他の物質の具体例として、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸塩類等の連鎖移動剤;炭酸塩、重炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスフィン酸)やその金属塩、エチレンジアミン4酢酸やその金属塩、ジエチレントリアミン5酢酸やその金属塩等のキレート剤;ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体(例えば吸水性樹脂からなる微粉)、澱粉、セルロース、澱粉-セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子等が挙げられる。その他の物質は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0089】
その他の物質の使用量は、特に限定されないが、その他の物質の全濃度としては、好ましくは単量体に対して10質量%以下、より好ましくは0.001質量%~5質量%、特に好ましくは0.01質量%~1質量%である。
【0090】
(溶存酸素量)
重合前の単量体水溶液中の溶存酸素を、昇温又は不活性ガスとの置換により低減させることも好ましい。例えば、溶存酸素は、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは1ppm以下に低減される。
【0091】
また、単量体水溶液に気泡(特に上記不活性ガス等)を分散させることもできる。この場合には、重合反応において発泡重合となる。
【0092】
(形態1)
形態1では、単量体水溶液の調製工程において吸水性樹脂Aの添加を行う。すなわち、吸水性樹脂溶解液と酸基含有不飽和単量体とを含有する単量体水溶液を得て、当該単量体水溶液を用いて次工程の酸基含有不飽和単量体の重合を行う。
【0093】
形態1においては、吸水性樹脂溶解液を単量体水溶液に添加することで、当該溶解液中に含まれる吸水性樹脂A由来の重合体成分によって水溶液の粘度が上昇する。このような粘度上昇により、重合時に発生する気泡が抜けにくくなり、得られる吸水性樹脂の表面積が増加する。ゆえに、吸水性樹脂の吸水速度が一層向上する。
【0094】
形態1では、溶解液と酸基含有不飽和単量体とを混合して単量体水溶液が形成される。ここで、混合形態としては、酸基含有不飽和単量体および溶解液を一括添加して混合する形態;酸基含有不飽和単量体水溶液を形成した後、当該酸基含有不飽和単量体水溶液に溶解液を添加する形態;などが挙げられる。酸基含有不飽和単量体水溶液を形成した後、当該酸基含有不飽和単量体水溶液に溶解液を添加する形態の場合、酸基含有不飽和単量体水溶液に溶解液を全量添加した後に、重合を開始してもよいし、酸基含有不飽和単量体水溶液と溶解液とを別々に連続的に供給しながら、重合を行ってもよい。好ましくは、酸基含有不飽和単量体水溶液と溶解液とを別々に連続的に供給しながら、例えばラインミキシングにより十分に混合した後に、重合する形態である。また、酸基含有不飽和単量体にあらかじめ中和剤水溶液を添加して、酸基含有不飽和単量体水溶液を形成した後、当該酸基含有不飽和単量体水溶液に溶解液を添加してもよい。
【0095】
溶解液の酸基含有単量体に対する添加量は、中和の程度、得られる吸水性樹脂への物性の影響、回収効率などを考慮して適宜設定されるが、例えば、アクリル酸100質量部に対して、1~400質量部である。
【0096】
当該単量体水溶液に溶解液を添加する際のアルカリ水溶液の液温は5~100℃が好ましく、10~60℃がより好ましく、15~40℃がさらにより好ましい。
【0097】
〔2-2-2:重合工程〕
本工程は、前記単量体水溶液を重合して、その後、場合により中和して含水ゲル状重合体(以下、「含水ゲル」と称する場合がある)を得る工程である。
【0098】
重合は、重合開始剤を添加することで重合反応を行うことができる。重合開始剤は、単量体水溶液には重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、若しくはこれらの併用、又は重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に開示された重合開始剤のうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
【0099】
該重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001モル%~1モル%、より好ましくは0.001モル%~0.5モル%である。また、必要によりレドックス重合を行う場合、酸化剤と併用される該還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001モル%~0.02モル%である。
【0100】
なお、上記重合開始剤を添加することで重合反応を行う方法以外に、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法がある。また、重合開始剤を添加したうえで、活性エネルギー線の照射を併用してもよい。
【0101】
重合形態としては、特に限定されない。吸水性能や重合制御の容易性等の観点から、好ましくは気相中の液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合(ここで疎水性有機溶媒中の液滴重合も逆相懸濁の一例に含む)、より好ましくは水溶液重合、逆相懸濁重合、更に好ましくは水溶液重合が挙げられる。なお、逆相懸濁重合についての詳細は、特許第4969778号の[0016]~[0033]、具体的には実施例1を参考とすることができる。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、その例として、連続ベルト重合、連続ニーダー重合が挙げられる。連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0102】
また、水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」や「高濃度重合」が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいい、「高濃度重合」とは、単量体濃度を好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
【0103】
なお、気相中の液滴重合においては、空気雰囲気下で重合を行うこともできるが、得られる吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが好ましい。この場合、例えば、気相中の酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。
【0104】
酸基含有不飽和単量体の重合により、含水ゲル状の重合体(以下、単に含水ゲルとも称する)が得られる。
【0105】
(形態2)
形態2では、重合工程において溶解液が添加される。ここで、当該溶解液の添加時期については、特に限定されないが、含水ゲル(すなわち、乾燥処理工程前)に吸水性樹脂溶解液を添加することが好ましい。具体的には、酸基含有不飽和単量体を含有する単量体水溶液の重合中に吸水性樹脂溶解液を添加する形態(具体的には、例えば、連続ニーダー重合のように重合とゲル粉砕を同時に行う場合など、重合工程中のゲル粉砕工程において吸水性樹脂溶解液を添加する形態);酸基含有不飽和単量体を含有する単量体水溶液を重合させて得られる重合体に吸水性樹脂溶解液を添加する形態;などが挙げられる。吸水性樹脂溶解液の含水ゲル状重合体に対する添加量は、中和の程度、得られる吸水性樹脂への物性の影響、回収効率などを考慮して適宜設定されるが、例えば、含水ゲル状重合体100質量部に対して、1~100質量部である。
【0106】
〔2-3〕ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲル状重合体を、重合と同時及び/又は重合後に粉砕して粒子状含水ゲル状架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」)を得る工程である。所定の粒子径の粒子状含水ゲルを得るために、本工程を2回以上実施してもよい。また、逆相懸濁重合又は気相重合のように、重合工程で目的とする粒度の粒子状含水ゲルが得られる場合には、本工程を実施しなくてもよい。また、必要な場合には、重合工程後ゲル粉砕工程前に、ローラーカッター、ギロチンカッター等を用いて、含水ゲル状架橋重合体を、ゲル粉砕装置に投入可能な大きさに切断又は粗砕する細断工程を実施してもよい。特に、重合工程がベルト重合であり、シート状又はブロック状の含水ゲルが得られる場合に、細断工程を実施することが好ましい。
【0107】
(形態3)
本発明の吸水性樹脂溶解液の添加を、本ゲル粉砕工程と同時に行ってもよい(形態3)。ゲル粉砕工程前に後述するゲル粉砕装置に投入可能な大きさに切断又は粗砕する細断工程で吸水性樹脂溶解液を添加してもよい。ゲル粉砕工程で添加を行う場合には、ゲル粉砕工程前及び/又はゲル粉砕工程中に吸水性樹脂溶解液を添加し、ゲル粉砕時に十分混合されることが好ましい。吸水性樹脂溶解液の含水ゲル状重合体に対する添加量は、中和の程度、得られる吸水性樹脂への物性の影響、回収効率などを考慮して適宜設定されるが、例えば、含水ゲル状重合体100質量部に対して、1~100質量部である。また、(2-2-1)の単量体水溶液調製工程で酸基含有不飽和単量体の一部のみを中和又は中和を行わず(2-2-2)の重合を行った場合は、本ゲル破砕工程において中和を行うことができる。好ましくは、中和剤として本発明の吸水性樹脂溶解液を一部又は全部使用することができる。また、後述する整粒工程で除去される粗大粒子や微粉造粒工程で得られる微粉に水性液(溶媒)を添加した混合物及び/又は造粒物を、ゲル粉砕工程に加えてもよい。
【0108】
本発明の製造方法において、吸水性能を損なうことなく、所定の粒度の粒子状含水ゲルが得られる限り、ゲル粉砕装置の種類は特に限定されない。例えばバッチ式又は連続式の双腕型ニーダー等、複数の回転撹拌翼を備えたゲル粉砕機、1軸押出機、2軸押出機、ミートチョッパー等が挙げられる。
【0109】
ゲル粉砕工程前及び/又はゲル粉砕工程中に、ゲル流動化剤を添加してもよい。ゲル流動化剤の添加により、後述する乾燥工程における含水ゲル粒子同士の付着が抑制され、得られる吸水性樹脂の吸水速度が向上する。また、後述する乾燥後の粉砕工程における負荷が低減され、微粉発生量が減少する。なお、ゲル粉砕工程を要しない実施形態においても、乾燥工程前に粒子状含水ゲルにゲル流動化剤を添加することにより、上記効果が得られる。
【0110】
このゲル流動化剤の例として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤、これらの低分子型及び高分子型界面活性剤、並びに高分子滑剤が挙げられる。高分子滑剤は、特定のノニオン性界面活性剤の別称であり、その例としては、ポリアルキレンオキサイド及びその無水マレイン酸変性物等が例示される。界面活性剤(特に非高分子界面活性剤)と高分子滑剤とを併用してもよい。
【0111】
ゲル流動化剤の種類と添加量とは、ゲル粉砕工程及び乾燥工程における粒子状含水ゲルの流動性等を考慮して適宜調整される。また、形態3として、本工程で含水ゲルに吸水性樹脂溶解液を添加する場合は、上記のゲル流動化剤と混合して添加してもよいし、別々に含水ゲルに添加してもよい。上述したように、重合と同時に含水ゲルを破砕してもよく、その場合は形態2及び3を並行して行う形態となる。
【0112】
粒子状含水ゲルの重合率は、粒子状含水ゲル状架橋重合体の乾燥中の凝集抑制や、得られる吸水性樹脂中の残存モノマー低減の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上である。多量の未反応モノマーを含む、重合率の低い含水ゲルを用いて乾燥工程を実施すると、乾燥中に重合反応が進行して、粒子径の小さいゲル粒子から大粒子径のゲル粒子が再生又は副生される場合がある。大粒子径のゲル粒子によって、得られる吸水性樹脂の吸水速度の低下、乾燥物の大粒子化、目的とする製品粒度への再粉砕による微粉発生等の問題が発生する。この問題を回避するために、含水ゲルの重合率を上記範囲とすることが好ましい。
【0113】
粒子状含水ゲルの重合率の上限は特に限定されず、100質量%が理想的であるが、高い重合率には長い重合時間や厳しい重合条件が必要であり、生産性や物性面の低下を招くこともあり、上限は99.95質量%、さらに99.9質量%、通常99.8質量%程度で十分である。代表的には98~99.99質量%である。
【0114】
粒子状含水ゲルの重合体のCRC(遠心分離機保持容量)は、固形分換算で、好ましくは5g/g~80g/g、より好ましくは10g/g~50g/g、さらに好ましくは15g/g~45g/g、特に好ましくは20g/g~40g/gである。なお、固形分換算とは、含水ゲルでCRCなどの諸物性を測定後、含水ゲル中の吸水性樹脂固形分あたりの物性に換算した物性(例えば、含水率50%(固形分50%)の含水ゲルなら、含水ゲルでの物性測定値×2倍に換算)のことである。
【0115】
粒子状含水ゲルの固形分率(以下、ゲル固形分率)は、25質量%以上が好ましい。ゲル粉砕後の含水ゲル粒子同士の凝集抑制、粉砕に要するエネルギー、乾燥効率及び吸収性能の観点から、ゲル固形分率は25質量%~75質量%がより好ましく、30質量%~70質量%がさらに好ましく、35質量%~65質量%がよりさらに好ましく、40質量%~60質量%が特に特に好ましい。ゲル固形分率は、後述する実施例に記載の方法にて測定される。
【0116】
〔2-4〕乾燥工程
本工程は、上記重合工程および/またはゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の質量変化)から求められ、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85~99質量%、更に好ましくは90~98質量%、特に好ましくは92~97質量%である。
【0117】
上記粒子状含水ゲルの乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましい。
【0118】
熱風乾燥方法としては、静置状態で乾燥を行う方法、攪拌状態で乾燥を行う方法、振動状態で乾燥を行う方法、流動状態で乾燥を行う方法、気流で乾燥を行う方法等がある。これらの中でも、効率面から、静置乾燥が好ましく、通気バンド乾燥がより好ましく、更には連続静置乾燥(連続通気バンド乾燥)を用いた熱風乾燥が特に好ましく使用される。
【0119】
上記熱風乾燥における乾燥温度(熱風の温度)としては、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは150~200℃である。なお、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総重量および目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0120】
〔2-5〕粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
【0121】
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、必要により併用される。
【0122】
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)、その他の工程で適宜実施できる。また、当該分級工程で分級された規格外品(例えば、微粉)を除去することも可能であり、当該除去された吸水性樹脂粉末を回収される吸水性樹脂粉末として用いてもよい。
【0123】
上記工程で得られる吸水性樹脂粉末(表面架橋工程前の吸水性樹脂粉末、いわゆるベースポリマー)は、質量平均粒子径(D50)として、好ましくは200~600μm、より好ましくは200~550μm、更に好ましくは250~500μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0質量%が望まれるが、0.1質量%程度でもよい。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.40、更に好ましくは0.27~0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やNWSP 220.0.R2(15)に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
【0124】
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての吸水剤についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程(粉砕、分級工程)を設けて粒度調整してもよい。
【0125】
〔2-6〕微粉造粒工程
本工程では2-5で分級された微粉や後述する2-8表面架橋工程後の整粒工程で得られた微粉を造粒する工程である。本工程で得られた造粒物は、好適には製造工程中にリサイクルされる。
【0126】
造粒とは、粒子同士を物理的、化学的な手法により付着させることにより元の粒子より大きな粒子を形成させることである。
【0127】
造粒は、水や親水性溶媒などの溶媒により造粒されてなることが好ましい。溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;およびこれらの組み合わせが例示される。溶媒は、水であることが好ましい。造粒の際、使用される溶媒は、微粉に噴霧または滴下する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。溶媒の量は、使用する微粉の含水率にもよるが、吸水性樹脂の固形分100質量部に対し、通常は25~250質量部、好ましくは25~200質量部の範囲である。
【0128】
溶媒と微粉を混合する際も用いる装置は特に限定されない。例えば容器固定型混合機であれば、機械攪拌型混合機が好ましい。具体的にはタービューライザー(ホソカワミクロン社製)、レーディゲミキサー(レーディゲ社製)、およびモルタルミキサー(西日本試験機社製)などが例示される。また混合にはバッチ式混合機および連続式混合機のいずれでもよい。
【0129】
上記混合時の混合装置内、好ましくは混合装置の内壁面、および/または攪拌手段の加熱温度は好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であって、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下である。混合機装置(好ましくは内壁面、攪拌手段の何れか、より好ましくは両方)を加熱することで微粉を短時間で均一に造粒でき、生産性が向上する。混合装置内の温度は、例えば加熱した気体を供給したり、伝導電熱などによって適宜調整できる。
【0130】
本工程で、吸水性樹脂溶解液を添加することができる(形態4)。この際には、造粒物の造粒強度と物性が調整できる点で、上記溶媒と吸水性樹脂溶解液を併用することが好ましい。併用の際には、上記溶媒と吸水性樹脂溶解液を混合してもよいし、もしくは溶媒とは別ラインで滴下または噴霧してもよい。
【0131】
溶媒および吸水性樹脂溶解液と微粉とを混合して造粒する場合、予め加熱した溶媒、吸水性樹脂溶解液を使用することが好ましい。加熱した溶媒、吸水性樹脂溶解液を使用することで微粉を短時間で均一に造粒でき、生産性が向上する。溶媒および/または吸水性樹脂溶解液の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であって、好ましくは溶媒の沸点以下、より好ましくは100℃以下である。なお、沸点は塩類や溶媒の添加、圧力(減圧・加圧)などによって調整することができる。
【0132】
吸水性樹脂溶解液の微粉に対する添加量は、得られる吸水性樹脂への物性の影響、回収効率などを考慮して適宜設定されるが、例えば、微粉100質量部に対して、0.1~100質量部である。
【0133】
〔2-7〕表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、加熱処理工程および冷却工程(任意)から構成される。
【0134】
該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0135】
本工程で吸水性樹脂溶解液を添加することができる(形態5)。この場合、下記表面架橋剤溶液と溶解液とを混合後、吸水性樹脂粉末に混合して添加してもよいし、下記表面架橋剤溶液と吸水性樹脂溶解液とを別ラインにて混合してもよい。
【0136】
吸水性樹脂溶解液の吸水性樹脂に対する添加量は、得られる吸水性樹脂への物性の影響、回収効率などを考慮して適宜設定されるが、例えば、吸水性樹脂100質量部に対して、0.1~100質量部である。
【0137】
〔2-7-1:混合工程〕
本工程は、吸水性樹脂粉末と表面架橋剤を混合する工程である。該表面架橋剤の混合方法については、特に限定されないが、予め表面架橋剤溶液を作製しておき、該液を吸水性樹脂粉末に対して、好ましくは噴霧または滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が挙げられる。
【0138】
該混合を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。
【0139】
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機または無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許7183456号に開示される1種または2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、環状尿素化合物等が挙げられる。
【0140】
有機表面架橋剤の具体例として、(ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコール、(ジ、ポリ)プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチルー1,3-ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、2―ブテンー1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジまたはトリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリアルコール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ、ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;2-オキサゾリドン、N-ヒドロキシエチル-2-オキサゾリドン、1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン;登録商標);γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル3-オキセタンエタノール、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン、3-クロロメチル-3-エチルオキセタン、多価オキセタン化合物などのオキセタン化合物、2-イミダゾリジノン等の環状尿素化合物等が挙げられる。
【0141】
前記多価アルコールとしては、炭素数が2~8の多価アルコールが好ましく、炭素数3~6の多価アルコールがより好ましく、炭素数3ないし4の多価アルコールが更に好ましい。更に、ジオールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが例示され、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールから選ばれる多価アルコールが好ましい。
【0142】
また、エポキシ化合物としてはポリグリシジル化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好適に使用される。
【0143】
上記有機表面架橋剤に加えて、イオン結合性表面架橋剤としてポリアミンポリマーなどの多価カチオン性ポリマーや水溶性多価金属カチオン含有化合物を併用してもよい。水溶性多価金属カチオン含有化合物としては、水溶性多価金属カチオン含有化合物としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの多価金属の無機塩、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、チタントリエタノールアミネート、チタンラクテートなどの多価金属の有機塩等の多価金属化合物等が挙げられる。中でも、多価金属カチオンとしてアルミニウムイオンを含有する化合物であることが好ましい。
【0144】
該表面架橋剤の使用量(複数使用の場合は合計使用量)は、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部である。また、該表面架橋剤は水溶液として添加することが好ましく、この場合、水の使用量は、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。更に必要に応じて、親水性有機溶媒を使用する場合、その使用量は、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0145】
また、上述したように当該表面架橋工程において、水溶性多価金属カチオン含有化合物を添加してもよい。
【0146】
〔2-7-2:加熱処理工程〕
本工程は、上記混合工程から排出された混合物に熱を加えて、吸水性樹脂粉末の表面上で架橋反応を起させる工程である。
【0147】
該架橋反応を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくはパドルドライヤーが挙げられる。該架橋反応での反応温度は、使用される表面架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、好ましくは50~300℃、より好ましくは100~200℃である。
【0148】
〔2-7-3:冷却工程〕
本工程は、上記加熱処理工程後に必要に応じて設置される任意の工程である。
【0149】
該冷却を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは加熱処理工程で使用される装置と同一仕様の装置であり、より好ましくはパドルドライヤーである。熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるためである。なお、上記加熱処理工程で得られた吸水性樹脂粒子は、該冷却工程において、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃に、必要に応じて強制冷却される。
【0150】
〔2-8〕整粒工程
本工程は、乾燥重合体又は表面架橋された(粒子状)乾燥重合体の粒度を調整する工程である。表面架橋工程後に整粒工程をおこなうことにより、粒子径又は粒度分布が高レベルで制御された吸水性樹脂粉末が得られる。
【0151】
好ましくは、整粒工程は、粉砕ステップ及び/又は分級ステップを含む。
【0152】
粉砕ステップは、例えば、乾燥工程又は熱処理工程で静置乾燥を行う場合に得られる塊状の乾燥重合体又は強く凝集した粒子状乾燥重合体を粉砕機で粉砕して粒子径を整えるステップである。なお、この粉砕ステップは、粉砕対象である乾燥重合体が乾燥工程を経ている点で、前述のゲル粉砕工程とは異なる。
【0153】
粉砕ステップで用いる粉砕機として、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が例示される。なかでも、粒度分布の制御がしやすいとの観点から、好ましい粉砕機はロールミルである。
【0154】
分級ステップは、分級機を用いて、(粒子状)乾燥重合体、表面架橋された(粒子状)乾燥重合体、又はそれらの粉砕物或いは解砕物から、粗大粒子及び微粉を除去する工程である。分級ステップに用いる分級機としては、篩網を用いた振動式または揺動式の篩分級機が用いられる。当該分級ステップにおいて除去される粗大粒子及び微粉を、本発明の吸水性樹脂Aとして使用してもよい。粗大粒子はその破砕物を吸水性樹脂Aとして使用することができる。
【0155】
吸水性能の観点から、整粒工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm以上であり、より好ましくは200~600μm、さらに好ましくは250~550μm、特に好ましくは300~500μmである。
【0156】
〔2-9〕その他添加剤の添加工程
本工程は、吸水性樹脂に様々な付加機能を付与し、また吸水性能を向上させることを目的として実施される任意の工程であり、いずれかの工程において、添加剤を添加する工程である。添加効果の観点から、下記添加剤は吸水性樹脂粉末の各粒子表面に存在させることが好ましい。従って、本工程は、好ましくは、表面架橋工程と同時又は別途実施され、より好ましくは表面架橋工程後に実施される。
【0157】
その他添加剤としては、キレート剤、有機還元剤、無機還元剤、酸化剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプ、熱可塑性繊維等が例示される。なお、吸水性樹脂に付与する吸水性能の一例として通液性が挙げられるが、当該通液性を向上させる添加剤として、以下の多価金属塩、カチオン性ポリマー、無機微粒子が例示され、これらのうち、少なくとも1種以上の使用が好ましい。
【0158】
・多価金属塩
多価金属塩の多価金属として、好ましくはアルミニウム、ジルコニウム等が挙げられる。また、使用できる多価金属塩として、好ましくは乳酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムであり、より好ましくは硫酸アルミニウムである。
【0159】
この多価金属塩の添加量としては、吸水性樹脂粉末1gに対して、金属カチオンが好ましくは3.6×10-5モル未満、より好ましくは2.8×10-5モル未満、さらに好ましくは2.0×10-5モル未満である。
【0160】
・カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーとして、好ましくは米国特許第7098284号に例示される化合物が挙げられる。なかでもビニルアミンポリマーが好ましい。このカチオン性ポリマーの添加量としては、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは2.5質量部未満、より好ましくは2.0質量部未満、さらに好ましくは1.0質量部未満である。
【0161】
・無機微粒子
無機微粒子として、具体的には、タルク、カオリン、フラー土、ハイドロタルサイト、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライト等の鉱産物;硫酸アルミニウム14~18水塩(又はその無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、硫酸アンモニウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物類;リン酸カルシウム等のその他の多価金属塩、多価金属酸化物及び多価金属水酸化物;親水性のアモルファスシリカ類;酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化マグネシウム複合体、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体等の酸化物複合体類;等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。この無機微粒子の添加量としては、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、好ましくは2.0質量部未満、より好ましくは1.5質量部未満、さらに好ましくは1.0質量部未満である。
【0162】
〔2-10〕その他の工程
本発明に係る製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、冷却工程、再湿潤工程、粉砕工程、分級工程、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等を更に含んでもよい。また、従来の吸水性樹脂粉末の回収・再利用(例えば、微粉の造粒を用いた回収・再利用)と、本実施形態の吸水剤の製造方法と、を併用してもよい。
【0163】
〔3.得られる吸水剤の物性〕
本発明は、上記実施形態の製造方法により得られた吸水剤をも提供する。当該吸水剤の物性は好適には以下のとおりである。なお、吸水性樹脂の物性に関する好適な範囲についても、下記吸水剤の各物性(CRC等)の好適な範囲と同様である。
【0164】
〔3-1〕CRC(遠心分離機保持容量)
吸水剤のCRC(遠心分離機保持容量)は、通常5g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、より好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されず、より高いCRCが好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
【0165】
上記CRCが5g/g未満の場合、吸収量が少なく、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。また、上記CRCが70g/gを超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等の種類や量を変更することで制御することができる。
【0166】
〔3-2〕粒度
吸水剤が粉末である場合、吸水性樹脂の質量平均粒子径d3(D50)は、好ましくは200μm以上、より好ましくは200~600μm、さらに好ましくは250~550μm、特に好ましくは300~500μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。また、粒子径850μm超の粒子の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。吸水性樹脂は、粒子径150~850μmの粒子を、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含む。理想的には100質量%である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.40、更に好ましくは0.27~0.35である。
【0167】
〔3-3〕AAP(加圧下吸水倍率)
吸水剤のAAP(加圧下吸水倍率)は、好ましくは15g/g以上、より好ましくは20g/g以上、更に好ましくは23g/g以上、特に好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは40g/g以下である。
【0168】
AAPが15g/g未満の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(「Re-Wet(リウェット)」と称する場合がある)が多くなるので、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。なお、AAPは、粒度の調整や表面架橋剤の変更等により制御することができる。
【0169】
〔3-4〕Vortex(吸水速度)
吸水剤のVortex(吸水速度)は、好ましくは60秒以下、より好ましくは50秒以下、更に好ましくは40秒以下、特に好ましくは30秒以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上である。
【0170】
Vortexを上記範囲とすることで、短時間で所定量の液を吸収することができるようになる。紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用した際に、使用者が肌の濡れを感じる時間が少なくなり、不快感を与えにくくなるとともに、漏れ量も減少することができる。
【0171】
〔3-5〕残存モノマー量
吸水剤の残存モノマー量は、好ましくは、500ppm以下、より好ましくは450ppm以下、さらにより好ましくは400ppm以下である。残存モノマー量は安全性の観点から、少なければ少ないほど好ましい。
【0172】
〔4〕吸水剤の用途
吸水剤の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体用途が挙げられる。特に、高濃度紙オムツの吸収体として使用することができる。
【0173】
また、上記吸収体の原料として、上記吸水剤と共にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、更に好ましくは50質量%~100質量%、更により好ましくは60質量%~100質量%、特に好ましくは70質量%~100質量%、最も好ましくは75質量%~95質量%である。
【0174】
上記コア濃度を上記範囲とすることで、該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合に、この吸収性物品を清浄感のある白色状態に保つことができる。更に、該吸収体は尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配がなされることにより、吸収量の向上が見込める。
【実施例】
【0175】
以下の実験例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定解釈されるものではなく、各実験例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実験例も、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0176】
なお、以下に記載する「吸水性樹脂」は、乾燥工程を経た粒状乾燥物、表面架橋された粒状乾燥物又は吸水性樹脂粉末及び表面架橋された吸水性樹脂粉末を意味し、「含水ゲル」は、乾燥工程を経ていない含水ゲル状架橋重合体又は粒子状含水ゲル状架橋重合体を意味する。
【0177】
また、実験例で使用する電気機器(吸水性樹脂の物性測定用機器も含む)には、特に注釈のない限り、60Hzで200V又は100Vの電源を使用した。また、以下に記載する吸水性樹脂及び含水ゲルの諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20℃~25℃)、相対湿度50%RH±10%の条件下で測定された。
【0178】
また、便宜上、「リットル」を「l」又は「L」、「質量%」又は「重量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合、検出限界以下をN.D(Non Detected)と表記する場合がある。
【0179】
[物性測定方法]
(a)吸水性樹脂、吸水剤、及び含水ゲルのCRC(遠心分離機保持容量)
吸水性樹脂のCRC(遠心分離機保持容量)を、NWSP 241.0.R2(15)に準拠して測定した。また、含水ゲルのCRC(遠心分離機保持容量)は、試料の質量を含水ゲルとして0.4gに、自由膨潤時間を24時間に、それぞれ変更した以外はNWSP 241.0.R2(15)と同様の操作を行った。更に、別途含水ゲルの固形分率αを下記(f)に従って測定し、下記(式1)に従って含水ゲルのCRC(以下、ゲルCRCとも称する)を算出した。
【0180】
含水ゲルのCRC(g/g)={(mwi-mb)-msi×(α/100)}/{msi×(α/100)}・・・(式1)
ここで、msiは測定前の含水ゲルの質量(単位;g)、mbは自由膨潤し、脱水した後のBlank(不織布のみ)の質量(単位;g)、mwiは自由膨潤し、脱水した後の含水ゲル(不織布を含む)の質量(単位;g)、αは測定前の含水ゲルの固形分率(単位;質量%)である。
【0181】
(b)吸水性樹脂、吸水剤の含水率及び固形分率
吸水性樹脂の含水率を、NWSP 230.0.R2(15)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を1.0gに、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更し、3時間乾燥した際の乾燥減量から、吸水性樹脂の含水率及び固形分率を算出した。
【0182】
(c)吸水性樹脂、吸水剤の粒度
吸水性樹脂の粒度(粒度分布、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ))を、米国特許第7638570号のカラム27及び28に記載された方法に準拠して測定した。
【0183】
(d)150pass率:目開き150μm篩い通過率
前記の質量平均粒子径(D50)の測定方法と同様の分級操作を行い、目開き150μmの篩いを通過した粒子の割合(質量%)を150pass率(目開き150μm篩い通過率)とした。
【0184】
(e)含水ゲルの重合率及び残存モノマー量
含水ゲルをサンプリングした後、即座に室温のイオン交換水1000gに含水ゲル1.00gを投入し(この時点で重合反応は実質的に停止した)、300rpmで2時間攪拌した後に濾過することにより、不溶分を除去した。上記操作で得られた濾液中に抽出された単量体の量を、液体クロマトグラフを用いて測定した。該単量体の量を残存モノマー量m(g)としたときに、下記(式2)にしたがって、含水ゲルの重合率C(質量%)を求め、下記(式3)にしたがって、含水ゲルの残存モノマー量R(質量%)を求めた。尚、含水ゲルをサンプリング後、直ちに重合率を測定することが好ましいが、サンプリングから測定までに時間がかかる場合には、強制冷却(ドライアイス、液体窒素、氷水との接触等)によって、重合停止操作をおこなう必要がある。
【0185】
C(質量%)=100×{1-m/(α×M/100)} ・・・ (式2)
R(質量%)=100-C ・・・ (式3)
ただし、(式2)中、Mは含水ゲルの質量(g)、αは含水ゲルの固形分率(質量%)を意味する。(式3)中、Cは含水ゲルの重合率(質量%)を意味する。なお、含水ゲルの固形分率αは下記(f)に従って測定される。
【0186】
(f)含水ゲルの含水率及び固形分率
含水ゲルの含水率を、NWSP 230.0.R2(15)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を2.0gに、乾燥温度を180℃に、乾燥時間を24時間にそれぞれ変更した。具体的には、底面の直径が50mmのアルミカップに含水ゲル2.0gを投入した後、試料(含水ゲル及びアルミカップ)の総質量W1(g)を正確に秤量した。次に、上記試料を、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。24時間経過後、該試料を上記オーブンから取り出し、総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された含水ゲルの質量をM(g)としたときに、下記(式4)にしたがって、含水ゲルの含水率(100-α)(質量%)を求めた。なお、αは含水ゲルの固形分率(質量%)である。
【0187】
(100-α)(質量%)={(W1-W2)/M}×100 ・・・ (式4)
(g)吸水性樹脂、吸水剤のVortex(吸水時間)
吸水性樹脂のVortex(吸水時間)は、以下の手順にしたがって測定した。先ず、予め調製された生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)1000質量部に、食品添加物である食用青色1号(ブリリアントブルー)0.02質量部を添加した後、液温を30℃に調整した。
【0188】
続いて、容量100mlのビーカーに、上記生理食塩水50mlを量り取り、長さ40mm、直径8mmのスターラーチップを用いて600rpmで攪拌しながら、吸水性樹脂2.0gを投入した。吸水性樹脂の投入時を始点とし、その吸水性樹脂が生理食塩水を吸液してスターラーチップを覆うまでの時間をVortex(吸水時間)(単位;秒)として、測定した。
【0189】
(h)吸水性樹脂、吸水剤の残存モノマー量
吸水性樹脂の残存モノマー量を、NWSP 210.0.R2(15)に準拠して測定した。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、長さ35mmのスターラーチップを用いて500rpmで1時間攪拌後に濾過し、濾液に溶出したモノマー量を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。尚、残存モノマー量は、吸水性樹脂に対する質量割合として表される(単位;ppm)。
【0190】
(i)吸水性樹脂、吸水剤のAAP(加圧下吸水倍率)
吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)を、NWSP 242.0.R2(15)に準拠して測定した。即ち、吸水性樹脂0.900g(質量W3(g))を測定装置に投入し、測定装置一式の質量(W4(g))を測定した。次に、23±2℃に調温した0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を2.06kPa(0.3psi,21g/cm2)の荷重下で吸収させた。1時間経過後、測定装置一式の質量(W5(g))を測定し、得られたW3(g)、W4(g)、W5(g)から下記(式5)にしたがって、加圧下吸水倍率(AAP)を算出した。
【0191】
AAP(g/g)=(W5-W4)/W3 ・・・ (式5)
[参考例1]
(重合工程)
アクリル酸422g、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92g、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8g、脱イオン水374gからなる単量体溶液を作成した。次に、42.5℃に調温した該単量体溶液を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えた。アクリル酸の中和率は73モル%であった。なお、以下、実施例、比較例について、最終的なアクリル酸の中和率は同じである。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。単量体水溶液の温度が90℃となった時点で、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから15秒後に、重合系は最高到達温度が105℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G2)を得た。
【0192】
(ゲル粉砕工程)
得られた含水ゲル状架橋重合体(G2)を60gごとに切り分けた。9.5mmのダイス口径プレートを設置したミートチョッパー(レマコム株式会社製、モデル:HL-G22SN)に、360g/minとなるように含水ゲル状架橋重合体(G2)を投入すると同時に、90℃に加温した温水22g/minを加え1回通すことで、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG2)を得た。含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG2)のゲル固形分は50.5質量%、ゲルCRCは37.0g/g、重合率は98.3%であった。
【0193】
(乾燥、粉砕、分級工程)
得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG2)500gを、190℃、30分間熱風乾燥機(佐竹化学工業製、通気バンド式乾燥機)で乾燥し、乾燥物を得た。その後ロールミル(有限会社井ノ口技研社製)で粉砕し、吸水性樹脂粉末(F2-1)を得た。目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有する篩で篩い分けた後、850μm篩を通過し、150篩を通過しなかった粒子を集め吸水性樹脂粉末(F2-2)を得た。なお、150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は13.9質量%であった。吸水性樹脂粉末(F2-2)の物性値を表1に示した。
【0194】
吸水性樹脂粉末(F2-2)を目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有する篩で篩い分けた後、850μmを通過し600μmを通過しない粒子が3質量%、600μmを通過し500μmを通過しない粒子が10質量%、500μmを通過し300μmを通過しない粒子が54質量%、300μmを通過し150μmを通過しない粒子が31質量%、150μmを通過し45μmを通過しない粒子が2質量%に調合することにより、吸水性樹脂粉末(F2-3)を得た。
【0195】
(表面架橋工程)
粒度調合された吸水性樹脂粉末(F2-3)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部と、エチレンカーボネート0.3質量部と、プロピレングリコール0.5質量部と、脱イオン水2.0質量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を200℃で35分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(R2)を得た。吸水性樹脂粒子(R2)の物性値を表2に示す。
【0196】
[製造例1]
(吸水性樹脂A)
アクリル酸422質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液173.9質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.86質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8質量部、脱イオン水372質量部からなる単量体水溶液を作成した。次に、38℃に調温した上記単量体水溶液(T1-1)を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液178.7質量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(T1-2)の液温は82℃まで上昇した。
【0197】
更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.9質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル状架橋重合体(G1-1)を得た。得られた帯状の含水ゲル(G1-1)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル状架橋重合体(G1-2)を得た。
【0198】
スクリュー押出機に、得られた含水ゲル状架橋重合体(G1-2)と、3.1質量%ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液とを、同時に供給しながらゲル粉砕した。ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液の供給量は、含水ゲル状架橋重合体(G1-2)の固形分に対して0.15質量%であった。該スクリュー押出機としては、スクリュー軸の外径が86mmであり、先端部に直径100mm、孔径12.5mm、厚さ10mmの多孔板が備えられたミートチョッパーを使用し、含水ゲル状架橋重合体(G1-2)と同時に水及び水蒸気を供給しながらゲル粉砕を行った。得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG1)は、固形分率が44質量%(含水率が56質量%)、重合率は98.6%であった。
【0199】
得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG1)を、連続通気バンド式乾燥機を用いて乾燥した。始めに、この乾燥機の通気板(パンチングメタル)に厚み約10cmになるように含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG1)を散布し、熱風185℃で35分間乾燥させた。乾燥機の出口で得られた乾燥物は、一枚板のブロック状(横幅はほぼ乾燥ベルトの幅に相当し、長さはエンドレス、厚みは数cm)に一体化して固まっていた。
【0200】
この一体化した乾燥物を空冷して、複数の羽を有する回転軸を備えた解砕機(第1粉砕機)で粗砕した後、3段のロールミル(第2粉砕機)に供給して更に粉砕して、吸水性樹脂粉末(A)を得た。得られた吸水性樹脂粉末は、質量平均粒子径(d1)348μm、粒子径150μm未満の粒子の割合が9.8質量%、固形分率は97.6質量%であった。
【0201】
続いて、吸水性樹脂粉末(A)を目開き850μmおよび180μmのJIS標準篩を用いて、分級した。目開き180μmの篩により分級された通過物として、固形分率95.2質量%の吸水性樹脂Aである微粉(FP1)を得た。微粉(FP1)は、質量平均粒子径(d2)102μmであり、目開き150μmの篩い通過率93.9質量%であり、CRC37.2g/gであった。
【0202】
[実施例1]
(溶解液準備工程)
脱イオン水374gに48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106gを加え、10.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調製し、攪拌しながら微粉(FP1)7.7gを継粉にならないように加えて、20分間攪拌し、無色透明な吸水性樹脂溶解液(A1)を得た。アルカリ水溶液に微粉(FP1)を添加した際のアルカリ水溶液の温度は30℃であった。
【0203】
(単量体水溶液の調製工程)
アクリル酸422gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92gと、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8gと、の混合溶液を攪拌しながら、吸水性樹脂微粉溶解液(A1)全量を加え、水溶液を得た。
【0204】
(重合工程)
次に、42.5℃に調温した該水溶液を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えて、単量体水溶液を得た。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。単量体水溶液の温度が90℃となった時点で、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから16秒後に、重合系は最高到達温度が106℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G3)を得た。
【0205】
(ゲル粉砕工程)
参考例1のゲル粉砕工程と同様の操作を行って、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG3)を得た。
【0206】
含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG3)のゲル固形分は50.8質量%、ゲルCRC36.1g/g、重合率は98.4%であった。
【0207】
(乾燥、粉砕、分級工程)
参考例1の乾燥、粉砕、分級工程と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(F3-1)および(F3-2)を得た。(F3-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は12.1質量%であった。吸水性樹脂粉末(F3-2)の物性値を表1に示す。
【0208】
(表面架橋工程)
参考例1の表面架橋工程と同様の操作を行って、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R3)を得た。吸水剤(R3)の物性値を表2に示す。
【0209】
[比較例1]
(単量体水溶液調製、重合工程)
アクリル酸422g、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92g、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8g、および脱イオン水374gからなる単量体溶液(T4-1)を作成した。次に、42.5℃に調温した該単量体溶液(T4-1)を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えた。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。ここに、微粉(FP1)7.7gを加え60秒間攪拌し、単量体水溶液(T4-2)を得た。単量体水溶液(T4-2)の温度が90℃となった時点で、単量体水溶液中に加えた微粉由来の浮遊物が確認できる状態のまま、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから15秒後に、重合系は最高到達温度が105℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G4)を得た。
【0210】
(ゲル粉砕工程)
参考例1のゲル粉砕工程と同様の操作を行って、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG4)を得た。含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG4)のゲル固形分は51.1質量%、ゲルCRC35.2g/g、重合率は98.3%であった。
【0211】
(乾燥、粉砕、分級工程)
参考例1の乾燥、粉砕、分級工程と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(F4-1)および(F4-2)を得た。(F4-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は13.1質量%であり、実施例1で得た吸水性樹脂粉末(F3-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)12.1質量%に比べ多くなった。吸水性樹脂粉末(F4-2)の物性値を表1に示す。
【0212】
(表面架橋工程)
参考例1の表面架橋工程と同様の操作を行って、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R4)を得た。吸水剤(R4)の物性値を表2に示す。
【0213】
[製造例2]
(吸水性樹脂A)
製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(A)を目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有する篩で篩い分けた後、850μmを通過し600μmを通過しない粒子が3質量%、600μmを通過し500μmを通過しない粒子が10質量%、500μmを通過し300μmを通過しない粒子が54質量%、300μmを通過し150μmを通過しない粒子が31質量%、150μmを通過し45μmを通過しない粒子が2質量%に調合することにより、吸水性樹脂粉末(B)を得た。
【0214】
吸水性樹脂粉末(B)の質量平均粒子径(d3)は346μm、CRCは46.6g/gであった。
【0215】
粒度調合し得られた吸水性樹脂粉末(B)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部と、エチレンカーボネート0.3質量部と、プロピレングリコール0.5質量部と、脱イオン水2.0質量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を200℃で30分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(R1-1)を得た。
【0216】
表面架橋された吸水性樹脂粒子(R1-1)100質量部に対して、脱イオン水8質量部を攪拌しながら添加し、1分間混合した。次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、ハイドロタルサイト(DHT-6、協和化学工業株式会社)0.6質量部を混合した。ハイドロタルサイトの混合は、脱イオン水を加水した表面架橋された吸水性樹脂粒子(R1-2)30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカーを用いて3分間振とうし、粒子状吸水剤(S1)を得た。
【0217】
得られた吸水剤(S1)を目開き850μmおよび180μmのJIS標準篩を用いて、分級した。目開き180μmの篩により分級された通過物として、固形分率88.9質量%の吸水性樹脂Aである微粉(FP2)を得た。微粉(FP2)は、質量平均粒子径(d4)114μmであり、目開き150μmの篩い通過率87.2質量%であり、CRC24.9g/gであった。
【0218】
[実施例2]
(溶解液準備工程)
脱イオン水374gに48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106gを加え、10.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調製し、攪拌しながら微粉(FP2)7.7gを継粉にならないように加えて、20分間攪拌し、無色透明な吸水性樹脂溶解液(A2)を得た。アルカリ水溶液に吸水性樹脂微粉を添加した際のアルカリ水溶液の温度は30℃であった。
【0219】
(単量体水溶液調製、重合工程)
アクリル酸422gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92gと、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8gと、の混合溶液に、攪拌しながら吸水性樹脂溶解液(A2)全量を加え、水溶液を得た。次に、42.5℃に調温した該水溶液を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えて、単量体水溶液を得た。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。単量体水溶液の温度が90℃となった時点で、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから14秒後に、重合系は最高到達温度が105℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G5)を得た。
【0220】
(ゲル粉砕工程)
参考例1と同様にして、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG5)を得た。
【0221】
含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG5)のゲル固形分は51.0質量%、ゲルCRC35.5g/g、重合率は98.3%であった。
【0222】
(乾燥、粉砕、分級工程)
参考例1と同様にして、吸水性樹脂粉末(F5-1)および(F5-2)を得た。(F5-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は14.3質量%であった。吸水性樹脂粉末(F5-2)の物性値を表1に示す。
【0223】
(表面架橋工程)
参考例1と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R5)を得た。吸水剤(R5)の物性値を表2に示す。
【0224】
[比較例2]
(単量体水溶液調製、重合工程)
アクリル酸422g、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92g、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8g、および脱イオン水374gからなる単量体溶液(T6-1)を作成する。次に、42.5℃に調温した該単量体溶液(T6-1)を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えた。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。ここに、微粉(FP2)7.7gを加え60秒間攪拌し、単量体水溶液(T6-2)の温度が90℃となった時点で、単量体水溶液中に加えた微粉由来の浮遊物が確認できる状態のまま、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから15秒後に、重合系は最高到達温度が105℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G6)を得た。
【0225】
(ゲル粉砕工程)
参考例1と同様にして、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG6)を得た。
【0226】
含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG6)のゲル固形分は51.5質量%、ゲルCRC34.6g/g、重合率は98.4%であった。
【0227】
(乾燥、粉砕、分級工程)
参考例1と同様にして、吸水性樹脂粉末(F6-1)および(F6-2)を得た。(F6-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は14.3質量%であった。吸水性樹脂粉末(F6-2)の物性値を表1に示す。
【0228】
(表面架橋工程)
参考例1と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R6)を得た。吸水剤(R6)の物性値を表2に示す。
【0229】
[実施例3]
(溶解液準備工程)
脱イオン水374gに48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液172gを加え、15.3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調製し、攪拌しながら吸水性樹脂Aである微粉(FP1)4.0gを継粉にならないように加えて、20分間攪拌し、無色透明な吸水性樹脂溶解液(A3)を得た。アルカリ水溶液に吸水性樹脂Aである微粉(FP1)を添加した際のアルカリ水溶液の温度は30℃であった。
【0230】
(単量体水溶液調製、重合工程)
容量1Lの反応容器に、アクリル酸200g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.73g及び脱イオン水587gを投入し、内容物の温度を20℃に保持しながら、撹拌して単量体水溶液(T7)を作成した。続いて、単量体水溶液(T7)中の溶存酸素濃度が0.02%未満になるまで窒素ガスを導入した後、密閉下、1質量%過酸化水素水2.44g、0.2質量%アスコルビン酸水溶液2.92g及び2質量%2,2-アゾビスアミノジプロパンジヒドロクロライド水溶液6.82gを単量体水溶液(T7)に添加して、重合反応を開始させた。反応容器内の単量体水溶液(1)の温度が約85℃に達した後、引き続き60℃で3時間加熱して、含水ゲル状架橋重合体(G7)を得た。
【0231】
(ゲル粉砕工程)
得られた含水ゲル状架橋重合体(G7)を3~5cm角のブロック状に細断した。次に、先端部に回転刃及び多孔板(直径70mm、孔径5mm、孔数50個、厚さ8mm、SUS製)を備え、長さ120mmのスクリュー軸を有するミートチョッパーの供給口に、ブロック状の含水ゲル状架橋重合体(G7)800g(固形分25.3質量%)と、吸水性樹脂溶解液(A3)553.7g(含水ゲル状架橋重合体(G7)中のカルボキシル基の75モル%を中和する量に相当)とを投入して、細断しながら混合することにより、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG7-1)を得た。含水ゲル状架橋重合体(G7)の投入から含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG7-1)の排出までの時間は、約30秒であった。
【0232】
続いて、得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG7-1)を、前述と同型のミートチョッパーに再度供給しゲル粉砕し、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG7-2)を得た。ミートチョッパーから排出された含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG7-2)の固形分率は18.9質量%であった。
【0233】
(乾燥、粉砕、分級工程)
次に、得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG7-2)の乾燥時間を35分間に長くしたこと以外は参考例1の乾燥、粉砕、分級工程と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(F7-1)および(F7-2)を得た。(F7-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は、13.2質量%であった。吸水性樹脂粉末(F7-2)の物性値を表1に示す。
【0234】
(表面架橋工程)
参考例1と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R7)を得た。吸水剤(R7)の物性値を表2に示す。
【0235】
[比較例3]
(単量体水溶液調製、重合工程)
容量1Lの反応容器に、アクリル酸200g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.73g及び脱イオン水587gを投入し、内容物の温度を20℃に保持しながら、撹拌して単量体水溶液(T8)を作成した。続いて、単量体水溶液(T8)中の溶存酸素濃度が0.02%未満になるまで窒素ガスを導入した後、密閉下、1質量%過酸化水素水2.44g、0.2質量%アスコルビン酸水溶液2.92g及び2質量%2,2-アゾビスアミノジプロパンジヒドロクロライド水溶液6.82gを単量体水溶液(T8)に添加して、重合反応を開始させた。反応容器内の単量体水溶液(1)の温度が約85℃に達した後、引き続き60℃で3時間加熱して、含水ゲル状架橋重合体(G8)を得た。
【0236】
(ゲル破砕工程)
得られた含水ゲル状架橋重合体(G8)を3~5cm角のブロック状に細断した。次に、先端部に回転刃及び多孔板(直径70mm、孔径5mm、孔数50個、厚さ8mm、SUS製)を備え、長さ120mmのスクリュー軸を有するミートチョッパーの供給口に、ブロック状の含水ゲル状架橋重合体(G8)800gと吸水性樹脂Aである微粉(FP1)4.0gとをPE製の袋中で十分に混合した混合物804gと15.3質量%に調整した水酸化ナトリウム水溶液546g(含水ゲル状架橋重合体(G8)中のカルボキシル基の75モル%を中和する量に相当)とを投入して、細断しながら混合することにより、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG8-1)を得た。含水ゲル状架橋重合体(G8)の投入から含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG8-1)の排出までの時間は、約30秒であった。
【0237】
続いて、得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG8-1)を、前述と同型のミートチョッパーに再度供給しゲル粉砕し、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG8-2)を得た。ミートチョッパーから排出された含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG8-2)の固形分率は18.8質量%であった。
【0238】
(乾燥、粉砕、分級工程)
次に、得られた含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG8-2)の乾燥時間を35分間に長くしたこと以外は参考例1の乾燥、粉砕、分級工程と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(F8-1)および(F8-2)を得た。(F8-1)の150μm篩を通過した粒子率(150pass率)は、13.6質量%であった。吸水性樹脂粉末(F8-2)の物性値を表1に示す。
【0239】
(表面架橋工程)
参考例1と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R8)を得た。吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R8)の物性値を表2に示す。
【0240】
[実施例4]
(溶解液準備工程)
脱イオン水374gに48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106gを加え、10.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調製し、攪拌しながら吸水性樹脂Aである参考例1で得られた吸水性樹脂粉末(F2-1)7.7gを継粉にならないように加えて、超音波洗浄器(共和医理科社製、KS-190N)につけた状態で10分間攪拌し、無色透明な吸水性樹脂溶解液(A4)を得た。水酸化ナトリウム水溶液に吸水性樹脂Aである吸水性樹脂粉末(F2-1)を添加した際のアルカリ水溶液の温度は30℃であった。
【0241】
(単量体水溶液調製工程、重合工程)
アクリル酸422gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92gと、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8gと、の混合溶液に、攪拌しながら吸水性樹脂溶解液であるアルカリ水溶液(A4)全量を加え、水溶液を得た。
【0242】
次に、42.5℃に調温した該水溶液を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えて、単量体水溶液を得た。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。単量体水溶液の温度が90℃となった時点で、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから13秒後に、重合系は最高到達温度が105℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G9)を得た。
【0243】
(ゲル粉砕工程)
参考例1と同様にして、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG9)を得た。
【0244】
含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG9)のゲル固形分は51.7質量%、ゲルCRC35.1g/g、重合率は98.3%であった。
【0245】
(乾燥、粉砕、分級工程)
参考例1と同様にして、吸水性樹脂粉末(F9-1)および(F9-2)を得た。吸水性樹脂粉末(F9-2)の物性値を表1に示す。
【0246】
(表面架橋工程)
参考例1と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R9)を得た。吸水剤(R9)の物性値を表2に示す。
【0247】
[比較例4]
(単量体水溶液調製、重合工程)
アクリル酸422g、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液106g、ポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量523)0.92g、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液25.8g、および脱イオン水374gからなる単量体溶液(T10-1)を作成する。
【0248】
次に、42.5℃に調温した該単量体溶液(T10-1)を攪拌しながら、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液246gを加えた。この時の中和熱によって92℃まで上昇した。ここに、吸水性樹脂Aである吸水性樹脂粉末(F2-1)7.7gを加え60秒間攪拌し、単量体水溶液(T10-2)の温度が90℃となった時点で、単量体水溶液中に加えた吸水性樹脂粉末(F2-1)由来の浮遊物が確認できる状態のまま、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液16.7gを加えたのち、雰囲気温度を60℃の中で、あらかじめ50℃に底面を加温しておいたテフロン(登録商標)シート(四方を1.5cmの高さを有する堰で囲われた30cm×30cmの反応容器)上に流し込み重合を行った。過硫酸ナトリウム水溶液を加えてから15秒後に、重合系は最高到達温度が105℃を示した。さらに3分経過後に得られた重合物を取り出し、含水ゲル状架橋重合体(G10)を得た。
【0249】
(ゲル粉砕工程)
参考例1と同様にして、含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG10)を得た。
【0250】
含水ゲル状架橋重合体粉砕物(MG10)のゲル固形分は51.2質量%、ゲルCRC35.6g/g、重合率は98.2%であった。
【0251】
(乾燥、粉砕、分級工程)
参考例1と同様にして、吸水性樹脂粉末(F10-1)および(F10-2)を得た。吸水性樹脂粉末(F10-2)の物性値を表1に示す。
【0252】
(表面架橋工程)
参考例1と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R10)を得た。吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R10)の物性値を表2に示す。
【0253】
[参考例2]
参考例2は、特許第4969778号 実施例1の手順に従い行った。
【0254】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた2000mLの五つ口円筒型丸底フラスコにn-ヘプタン340g、HLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学株式会社の商品名:S-370)0.92gを加え、分散、昇温して溶解後、55℃まで冷却した。
【0255】
これとは別に、1000mLパックエースに、アクリル酸73.6gを仕込み、これを外部から冷却しつつ、20質量%水酸化ナトリウム水溶液153.1gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、脱イオン水3.9g、水溶性アゾ系重合開始剤の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.11gおよび内部架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mgを添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
【0256】
この1段目重合用の単量体水溶液を、前記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却した。
【0257】
別の1000mLパックエースに、アクリル酸95.3gを仕込み、これを冷却しつつ25質量%水酸化ナトリウム水溶液156.0gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水3.3g、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.14gおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル10.7mgを添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴を用いて冷却した。
【0258】
この2段目重合用の単量体水溶液を、前記重合スラリー液に全量添加した後、再び系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去し、ゲル状物を得た。次いで、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.81gを添加、混合して後架橋反応を行い、さらに水分およびn-ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径(D50)が376μmの表面架橋された吸水性樹脂粒子(R11)を得た。
【0259】
[実施例5]
(溶解液準備工程)
20質量%水酸化ナトリウム水溶液153.1gに、攪拌しながら参考例2で得た吸水性樹脂Aである吸水性樹脂粒子(R11)4.7gを継粉にならないように加えて、超音波洗浄器(共和医理科社製、KS-190N)につけた状態で10分間攪拌し、無色透明な吸水性樹脂溶解液であるアルカリ水溶液(A5)を得た。アルカリ水溶液に吸水性樹脂Aである吸水性樹脂粒子(R11)を添加した際のアルカリ水溶液の温度は30℃であった。
【0260】
(単量体水溶液調製工程、重合工程)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた2000mLの五つ口円筒型丸底フラスコにn-ヘプタン340g、HLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学株式会社の商品名:S-370)0.92gを加え、分散、昇温して溶解後、55℃まで冷却した。
【0261】
これとは別に、1000mLパックエースに、アクリル酸73.6gを仕込み、これを外部から冷却しつつ、吸水性樹脂溶解液であるアルカリ水溶液(A5)全量157.8gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、脱イオン水3.9g、水溶性アゾ系重合開始剤の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.11gおよび内部架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mgを添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
【0262】
この1段目重合用の単量体水溶液を、前記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却した。
【0263】
別の1000mLパックエースに、アクリル酸95.3gを仕込み、これを冷却しつつ25質量%水酸化ナトリウム水溶液156.0gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水3.3g、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.14gおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル10.7mgを添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴を用いて冷却した。
【0264】
この2段目重合用の単量体水溶液を、前記重合スラリー液に全量添加した後、再び系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去し、ゲル状物を得た。次いで、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.81gを添加、混合して後架橋反応を行い、さらに水分およびn-ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径(D50)が435μmの表面架橋された吸水性樹脂粒子(吸水剤)(R12)を得た。吸水剤(R12)の物性値を表2に示す。
【0265】
[比較例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた2000mLの五つ口円筒型丸底フラスコにn-ヘプタン340g、HLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学株式会社の商品名:S-370)0.92gを加え、分散、昇温して溶解後、55℃まで冷却した。
【0266】
これとは別に、1000mLパックエースに、アクリル酸73.6gを仕込み、これを外部から冷却しつつ、20質量%水酸化ナトリウム水溶液153.1gを滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、吸水性樹脂Aである吸水性樹脂粒子(R11)4.7g、脱イオン水3.9g、水溶性アゾ系重合開始剤の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.11gおよび内部架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mgを添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
【0267】
この1段目重合用の単量体水溶液を、前記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却したところ、実施例5とは異なり、フラスコ下部に粗大粒子の沈殿生成が認められたため、2段目重合反応を取りやめた。
【0268】
【0269】
【0270】
以上の結果より、本発明の製造方法により得られた吸水剤は、CRCおよびAAP(0.3psi)の基本物性の低下が抑制された。また、本発明の製造方法により得られた吸水剤は、対応する比較例よりも吸水速度が速く、また、残存モノマー量が低減されたものであった。なお、比較例5は、2段目重合を行うことができなかったため、物性を測定していない。