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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、及び、その用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20241017BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241017BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C08F290/12
G03F7/038 501
G02B5/20 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020132002
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028533
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】寺田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 秀明
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037695(WO,A1)
【文献】特開2009-128864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
G03F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂と、側鎖にビニルエーテル基を有する重合体とを含み、
該酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂は、側鎖に重合性二重結合を有する
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂の二重結合当量は、200~8000g/当量であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記側鎖にビニルエーテル基を有する重合体は、下記一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。Wは、直接結合又は二価の有機基を表す。)
【請求項4】
前記側鎖にビニルエーテル基を有する重合体は、下記式で表される部分構造を有する構成単位と、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる基を少なくとも1種有する構成単位とを含む重合体を除くことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
(式中、R 及びR はそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表し、nは0~2の整数を表す。)
【請求項5】
前記熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂は、下記一般式(2)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、直接結合、又は、二価の有機基を表す。Aは、熱又は酸により酸基が生成される基を表す。)
【請求項6】
前記酸基含有アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~230mgKOH/gであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂は、主鎖に環構造を有する重合体であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記側鎖にビニルエーテル基を有する重合体の含有量が、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して5~50質量%であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
光重合開始剤を更に含むことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
重合性化合物を更に含むことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
光酸発生剤を更に含むことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂がエポキシ基を更に有する、及び/又は、該硬化性樹脂組成物がエポキシ化合物を更に含むことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
レジスト用であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
カラーフィルター用であることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
基板上に、請求項1~14のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を有することを特徴とするカラーフィルター。
【請求項16】
請求項15に記載のカラーフィルターを備えることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、低温硬化条件でも耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物、及び、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱や活性エネルギー線によって硬化しうる硬化性樹脂組成物は、例えば、液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルター、インキ、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト、有機絶縁膜、有機保護膜等の、各種の光学部材や電機・電子機器等の各種用途への適用が種々検討され、各用途で要求される特性に優れた樹脂組成物の開発がなされている。
【0003】
近年では、光学部材や電機・電子機器等の小型化・薄型化・省エネルギー化が進みつつあり、それに伴って、使用される各種部材等にはより高品位な性能が要望されている。そのような要望に応えるため、各種部材等の材料となる硬化性樹脂組成物について研究が行われている。
【0004】
これまでに、様々な要求に応じた硬化性樹脂組成物が開発されている。
例えば、特許文献1には、ビニルエーテル基含有重合体、及び、エネルギー線の照射にてカチオン又はラジカルを発生する特定構造の化合物を含有してなる硬化性組成物が記載されている。上記硬化性組成物は、エネルギー線の照射による硬化においても気泡が生成しない上、エネルギー線の照射による硬化性能が著しく高く、良質な硬化物を与えることができる。
【0005】
また例えば、特許文献2には、特定の構造を有する少なくとも1つのペンダントビニルエーテルモノマー繰り返し単位を含むポリマー、溶剤を含み、かつ熱酸発生剤を更に含む、調合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-298884号公報
【文献】特許第6181294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、硬化性樹脂組成物について、これまでに色々検討されているが、従来の硬化性樹脂組成物をカラーフィルター等の原料として色材とともに使用すると、カラーフィルターの製造中に原料から洗浄溶媒中に色材が溶出するという問題があった。そのため、硬化性樹脂組成物の耐溶剤性の更なる向上が求められていた。
【0008】
また、近年、特にカラーフィルター用途において、カラー液晶表示装置等の高品質化や用途の拡大により、表示パネルの高輝度化、高コントラスト化等、より高度な性能が強く求められている。しかしながら、カラーフィルターの製造では、露光して現像した後の焼成処理工程(後硬化工程)を200℃超の高温で行うと、得られた硬化物に黄変等の変色が生じ、所望の色による高着色化を十分に行うことができないといった問題があった。また、焼成処理工程を高温で行うと、不要な反応が進行して副生物が生じ、基材や硬化膜の特性を低下させるという問題もあった。そのような不要な反応を抑制し、所望の特性を有するカラーフィルターを効率良く得るには、200℃以下の比較的低温な加熱条件下でも硬化反応が十分に進行することが望ましい。また、硬化性樹脂組成物を比較的低温で硬化させることができると、カラーフィルターの製造効率も向上させることができる。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、低温硬化条件下でも、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができ、カラーフィルター等の用途に好適に使用することができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂と、側鎖にビニルエーテル基を有する重合体とを含むことにより、200℃以下の比較的低温の硬化条件でも、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂と、側鎖にビニルエーテル基を有する重合体とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0012】
上記側鎖にビニルエーテル基を有する重合体は、下記一般式(1)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。Wは、直接結合又は二価の有機基を表す。)
【0015】
上記熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂は、下記一般式(2)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、直接結合、又は、二価の有機基を表す。Aは、熱又は酸により酸基が生成される基を表す。)
【0018】
上記酸基含有アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~230mgKOH/gであることが好ましい。
【0019】
上記酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂は、主鎖に環構造を有する重合体であることが好ましい。
【0020】
上記硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を更に含むことが好ましい。
【0021】
上記硬化性樹脂組成物は、重合性化合物を更に含むことが好ましい。
【0022】
上記硬化性樹脂組成物は、光酸発生剤を更に含むことが好ましい。
【0023】
上記硬化性樹脂組成物は、上記酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂がエポキシ基を更に有する、及び/又は、該硬化性樹脂組成物がエポキシ化合物を更に含むことが好ましい。
【0024】
上記硬化性樹脂組成物は、レジスト用であることが好ましい。
【0025】
上記硬化性樹脂組成物は、カラーフィルター用であることが好ましい。
【0026】
本発明はまた、基板上に、上述した硬化性樹脂組成物の硬化物を有することを特徴とするカラーフィルターである。
【0027】
本発明はまた、上述したカラーフィルターを備えることを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物は、200℃以下の比較的低温な硬化条件であっても耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、液晶・有機EL・量子ドット・マイクロLED液晶表示装置や固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等に用いられる各種の光学部材や電機・電子機器等の構成部材等の各種用途に好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0030】
1.硬化性樹脂組成物
本発明は、酸基含有アルカリ可溶性樹脂、及び/又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂と、側鎖にビニルエーテル基を有する重合体とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記の構成からなるため、200℃以下(例えば、110℃程度)の比較的低温な条件で硬化させた場合であっても、耐溶剤性に極めて優れた硬化物を与えることができる。本発明の硬化性樹脂組成物が、比較的低温な硬化条件でも耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができるのは、以下の理由によると考えられる。
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、酸基含有アルカリ可溶性樹脂が有する酸基、又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂の酸基と、ビニルエーテル基との反応性が高く、100~200℃程度の比較的低温な硬化条件でも架橋反応が進行しうるため、強固な硬化膜を形成することができ、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
(A)酸基含有アルカリ可溶性樹脂
上記酸基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、「樹脂(A)」とも称する。」は、酸基を有する重合体である。酸基を有することにより、アルカリ可溶性となる。
上記酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等、アルカリ水と中和反応する官能基が挙げられ、これらの1種のみを有していてもよいし、2種以上有していてもよい。なかでも、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0033】
(a1)酸基を有する構造単位
上記樹脂(A)は、上述した酸基を有する構造単位(以下、「構造単位(a1)」とも称す。)を有することが好ましい。
上記構造単位(a1)を有する重合体を得る方法としては、例えば、酸基含有単量体を含む単量体成分を重合する方法(1)や、エポキシ基含有単量体を含む単量体成分を重合して、エポキシ基を含む重合体を得た後、そのエポキシ基に酸基含有単量体の酸基を付加反応させることにより、エポキシ基を開環し、その際に発生した水酸基に多塩基酸又は多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を生じさせる方法(2)等が挙げられ、又は、これらを組み合わせた方法であってもよい。
上記方法(1)では、上記構造単位(a1)は、酸基含有単量体由来の構造単位である。上記方法(2)では、上記構造単位(a1)は、エポキシ基含有単量体由来の構造単位に酸基含有単量体を反応させ、更に多塩基酸又は多塩基酸無水物を反応させて生じたカルボキシル基を含む構造単位である。
なかでも、上記構造単位(a1)は、酸基含有単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0034】
上記酸基含有単量体としては、分子内に上述した酸基と重合性二重結合(炭素-炭素二重結合)を有する化合物が挙げられる。上記重合性二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0035】
上記酸基含有単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基との間が鎖延長されている長鎖不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;ライトエステルP-1M(共栄社化学製)等のリン酸基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、入手性等の観点から、カルボン酸系単量体(不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、長鎖不飽和モノカルボン酸類、不飽和酸無水物類)が好ましい。反応性、アルカリ可溶性等の点で、上記酸基含有単量体は、より好ましくは不飽和モノカルボン酸類であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0036】
上記エポキシ基含有単量体としては、分子内にエポキシ基と上記重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記エポキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β-エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルが好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルがより好ましい。
【0037】
上記多塩基酸又は多塩基酸無水物としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸;無水コハク酸(別名:コハク酸無水物)、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等の二塩基酸無水物や、トリメリット酸無水物等の多塩基酸無水物が挙げられる。なかでも、多塩基酸無水物が好ましい。
【0038】
上記樹脂(A)は、上記構造単位(a1)を1種のみ有していてもよし、2種以上有していてもよい。
【0039】
上記構造単位(a1)の含有割合は、適切な現像性を維持する点で、上記樹脂(A)の全構造単位100質量%に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更に好ましく、また、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
(a2)主鎖に環構造を有する構造単位
上記樹脂(A)は、主鎖に環構造を有する重合体であることが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、上記樹脂(A)の耐熱性を向上させることができる。上記環構造としては、イミド環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環等が挙げられる。これらの環構造を有するために、上記樹脂(A)は、主鎖に環構造を有する構造単位(a2)を更に有することが好ましい。
【0041】
上記構造単位(a2)を導入しうる単量体としては、例えば、分子内に二重結合含有環構造を有する単量体や、環化重合して環構造を主鎖に有する重合体を形成する単量体、重合後に環構造を形成する単量体等が挙げられる。なかでも、良好な耐熱性や耐溶剤性、硬度、色材分散性等の観点から、N置換マレイミド系単量体、ジアルキル-2,2’-(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体、及び、α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましく、耐熱着色性がより一層優れる点で、N置換マレイミド系単量体、及び、ジアルキル-2,2’-(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体がより好ましい。
【0042】
上記N置換マレイミド系単量体としては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、透明性の観点から、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましく、特にN-シクロヘキシルマレイミドが好適である。また、耐熱着色性と水ムラの抑制効果を向上させる点で、N-フェニルマレイミド及び/又はN-シクロヘキシルマレイミドが好ましく、N-フェニルマレイミドがより好ましい。
【0043】
上記N-ベンジルマレイミドとしては、例えば、ベンジルマレイミド;p-メチルベンジルマレイミド、p-ブチルベンジルマレイミド等のアルキル置換ベンジルマレイミド;p-ヒドロキシベンジルマレイミド等のフェノール性水酸基置換ベンジルマレイミド;o-クロロベンジルマレイミド、o-ジクロロベンジルマレイミド、p-ジクロロベンジルマレイミド等のハロゲン置換ベンジルマレイミド;等が挙げられる。
【0044】
上記ジアルキル-2,2’-(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体としては、例えば、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジエチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-プロピル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソプロピル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(t-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(t-アミル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(ステアリル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(ラウリル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(2-エチルヘキシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート等が挙げられる。これらのなかでも、透明性や分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエートがより好ましい。
【0045】
上記α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体としては、例えば、α-(アリルオキシメチル)アクリレート系単量体が挙げられる。上記α-(アリルオキシメチル)アクリレート系単量体の具体例としては、例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸;α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸i-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-アミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-アミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-アミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘプチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メリシル等のアルキル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート系単量体;α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸3-メトキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル等のアルコキシアルキル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート系単量体;α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシプロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フルオロエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジフルオロエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸クロロエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジクロロエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ブロモエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジブロモエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ビニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸アリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メタリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸プロパギル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸4-メチルシクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸4-t-ブチルフェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸アントラニル;等が挙げられる。なかでも、アルキル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート系単量体が好適である。上記アルキル-(α-アリルオキシメチル)アクリレート系単量体としては、透明性や分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(メチル-(α-アリルオキシメチル)アクリレートとも称する)が特に好適である。
【0046】
上記α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体は、例えば、国際公開第2010/114077号パンフレットに開示されている製造方法により製造することができる。
【0047】
上記構造単位(a2)を与える単量体としてはまた、2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられる。2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸と反応して、主鎖にラクトン環構造を形成することができる。
【0048】
上記2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルとしては、2-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステル、2-(2-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、具体的には、例えば、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸t-ブチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。なかでも2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(1-ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましい。
【0049】
上記樹脂(A)は、上記構造単位(a2)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0050】
上記構造単位(a2)の含有割合は、耐熱性と耐溶剤性が良好である点で、上記樹脂(A)の全構造単位100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
(a3)他の構造単位
上記樹脂(A)は、上述した構造単位(a1)及び(a2)以外の、他の構造単位(a3)を有してもよい。
上記他の構造単位(a3)としては、例えば、下記の単量体由来の構造単位が挙げられる。
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,3-ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸s-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカ-2-イルメタアクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β-エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等のエポキシ基含有単量体;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム等の重合体分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;
1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニル化合物類;
(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類;等。
【0052】
なかでも、上記構造単位(a3)は、水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、及び、エポキシ基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0053】
上記樹脂(A)は、上記構造単位(a3)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0054】
上記構造単位(a3)の含有割合は、現像性が良好である点で、上記樹脂(A)の全構造単位100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、92質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
上記樹脂(A)が上記構造単位(a3)を2種以上含む場合、各構造単位の含有割合は、本発明の硬化性樹脂組成物の用途、目的に応じて適宜設定することができる。
【0055】
上記樹脂(A)は、更に、エポキシ基を有することが好ましい。上記樹脂(A)がエポキシ基を更に有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させることができ、耐溶剤性により一層優れた硬化物を与えることができる。
エポキシ基を有する上記樹脂(A)は、上述したエポキシ基含有単量体を含む単量体成分を重合することにより得ることができる。
【0056】
上記樹脂(A)がエポキシ基を有する場合、上記樹脂(A)のエポキシ当量は、耐溶剤性が良好である点で、100以上、20000以下であることが好ましく、200以上、8000以下であることがより好ましく、500以上、5000以下であることが更に好ましい。上記エポキシ当量は、樹脂量を樹脂中に含まれるエポキシ基のモル数で除すことで求めることができる。
【0057】
上記樹脂(A)の酸価は、20~230mgKOH/gであることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、現像性が良好になり、かつ、耐溶剤性に優れた硬化膜を与えることができる。30~200mgKOH/gであることがより好ましく、40~180mgKOH/gであることが更に好ましい。
上記酸価は、KOH溶液を用いた中和滴定法により測定して得られる値である。
【0058】
上記樹脂(A)の重量平均分子量は、特に制限されず、硬化性樹脂組成物の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、1000~100000であることが好ましく、2000~50000であることがより好ましく、4000~30000であることが更に好ましい。
上記樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.0~4.0であることが好ましく、1.1~3.5であることがより好ましく、1.5~3.0であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量及び分散度は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により、実施例に記載の方法で測定して得られる値である。
【0059】
上記樹脂(A)は、側鎖に重合性二重結合を有していてもよい。側鎖に重合性二重結合を有することにより、上記樹脂(A)の硬化性を向上させることができる。上記重合性二重結合としては、上述した重合性二重結合を挙げることができる。なかでも、反応性の点で、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0060】
上記樹脂(A)が側鎖に重合性二重結合を有する場合、その二重結合当量は、200~8000g/当量であることが好ましく、250~5000g/当量であることがより好ましく、300~1500g/当量であることが更に好ましい。
【0061】
上記二重結合当量とは、上記樹脂(A)の二重結合1molあたりの樹脂溶液の固形分の質量である。上記樹脂溶液の固形分の質量とは、上記樹脂(A)を構成する単量体成分の質量と重合禁止剤の質量とを合計したものである。上記二重結合当量は、樹脂溶液の樹脂固形分の質量(g)を樹脂の二重結合量(mol)で除することにより、求めることができる。上記樹脂の二重結合量は、重合の際に使用した酸基含有単量体と、当該酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物との量から求めることができる。上記酸基を結合しうる官能基としては、水酸基、エポキシ基等が挙げられる。また、滴定及び元素分析、NMR、IR等の各種分析や示差走査熱量計法を用いて測定することもできる。
【0062】
(酸基含有アルカリ可溶性樹脂の製造方法)
上記酸基含有アルカリ可溶性樹脂(A)の製造方法としては、少なくとも上記構造単位(a1)と、必要に応じて上記構造単位(a2)及び(a3)を有する重合体を得ることができる方法であれば、特に制限されず、上述した各構造単位(a1)~(a3)を導入しうる単量体を含む単量体成分を公知の方法で重合する方法が挙げられる。各単量体の量は、重合体における各構造単位の含有量が所望の範囲となるよう適宜調整することができる。
【0063】
上記単量体成分を重合する方法としては特に制限されず、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の通常用いられる手法を用いることができる。なかでも、工業的に有利で、分子量等の構造調整が容易な点で、溶液重合が好ましい。また、上記単量体成分の重合機構は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の機構に基づいた重合方法を用いることができるが、工業的に有利な点で、ラジカル重合機構に基づく重合方法が好ましい。
また上記単量体成分を重合して得られる重合体の分子量は、重合開始剤の量や種類、重合温度、連鎖移動剤の種類や量の調整等により制御することができる。
【0064】
上記重合開始剤としては、通常重合開始剤として使用される過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。上記連鎖移動剤としては、通常連鎖移動剤として使用されるアルキルメルカプタン類、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類等のメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。これらは1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加量は、公知の方法から適宜設定することができる。
【0065】
上記重合の条件に関し、重合温度としては、使用する単量体の種類や量、重合開始剤の種類や量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、50~130℃が好ましく、60~120℃がより好ましい。また、重合時間も同様に適宜設定することができ、例えば、1~5時間が好ましく、2~4時間がより好ましい。
【0066】
また、水酸基含有単量体を含む単量体成分を重合して得られた重合体(ベースポリマー)に、酸基含有化合物を付加反応させることにより、酸基を導入して、酸基含有アルカリ可溶性樹脂を得る方法であってもよい。
上記ベースポリマーを得る方法としては、特に制限されず、上述した重合方法と同様の方法が挙げられる。
【0067】
上記酸基含有化合物としては、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸無水物、トリメリット酸無水物等のカルボン酸無水物類;等が挙げられる。
【0068】
上記付加反応は、特に制限されず、公知の方法で行うことができ、例えば、70~100℃で1~10時間、好ましくは60~30℃で1~7時間の条件下で行うことができる。上記付加反応の際、通常使用される触媒や溶媒等を使用してもよい。
【0069】
側鎖に重合性二重結合を有する酸基含有アルカリ可溶性樹脂を製造する方法としては、例えば、酸基を有するベースポリマーを調製した後、当該酸基に、(メタ)アクリル酸グリシジル等の、エポキシ基と重合性二重結合を有する化合物を反応させ、エポキシ基が開裂することによる付加反応により、樹脂の側鎖に重合性二重結合を導入する方法が挙げられる。
また、水酸基を有するベースポリマーを調製した後、当該水酸基に、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル等の、酸基やイソシアネート基と重合性二重結合とを有する化合物を付加反応させることにより、樹脂の側鎖に重合性二重結合を導入する方法も挙げられる。
また、エポキシ基を側鎖に持つ樹脂に対し、(メタ)アクリル酸等の酸基と重合性二重結合とを有する化合物を付加反応させることにより、樹脂の側鎖に重合性二重結合を導入することも好適である。
【0070】
上述した付加反応は、特に制限されず、公知の方法で行うことができる。また、上記付加反応の際、通常使用される触媒や溶媒等を使用してもよい。
【0071】
上記樹脂(A)の製造方法は、上記重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物における上記樹脂(A)の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましく、30~45質量%であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、「固形分総量」とは、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等や硬化触媒を除く成分)の総量を意味する。
【0073】
(B)熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂
上記熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂(B)(以下、「樹脂(B)」とも称する。)としては、熱又は酸の作用により、酸基が生成される構造又は基を有する樹脂が挙げられる。
【0074】
熱又は酸の作用により、酸基が生成される構造又は基としては、例えば、3級炭素含有基、ビニルエーテル化合物により酸基がブロック化された基、t-ブチル基やアセチル基等の保護基によりフェノール性水酸基が保護された基、等が挙げられる。
【0075】
上記3級炭素含有基としては、好ましくは、-COO(Rは、一価の有機基を表し、Oに結合する炭素原子は、第3級炭素原子である。)基で表される基が挙げられる。
【0076】
上記-COOのRは、一価の有機基を表し、Oに結合する炭素原子は、第3級炭素原子である。第3級炭素原子とは、当該炭素原子に結合している他の炭素原子が3個である、炭素原子を意味する。
【0077】
上記一価の有機基としては、好ましくは炭素数1~91の一価の鎖状、分岐状若しくは環状の飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられる。上記有機基は、置換基を有していてもよい。
の炭素数は、より好ましくは炭素数1~50であり、更に好ましくは炭素数1~35であり、更により好ましくは炭素数1~20であり、特に好ましくは炭素数1~12であり、最も好ましくは炭素数1~9である。
【0078】
は、好ましくは、-C(R)(R)(R)で表すことができる。この場合、R、R、及びRは、同一又は異なって、炭素数1~30の炭化水素基であることが好ましい、上記炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよいし、環状構造を有していてもよいし、置換基を有していてもよい。また、R、R、及びRは互いに末端部位で連結して環状構造を形成していてもよい。
【0079】
ここで、上記3級炭素含有基において、第3級炭素原子は、隣接する炭素原子の少なくとも1つが水素原子と結合していることが好ましい。例えば、Rが、-C(R)(R)(R)で表される基である場合、R、R及びRのうち少なくとも1つが、水素原子を1個以上有する炭素原子を含み、かつ当該炭素原子が第3級炭素原子に結合することが好適である。
上記R、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1~15の飽和炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~10の飽和炭化水素基、更に好ましくは炭素数1~5の飽和炭化水素基、特に好ましくは炭素数1~3の飽和炭化水素基である。
上記Rは、好ましくはt-ブチル基、t-アミル基である。
【0080】
上記第3級炭素含有基を有する重合体を得るには、第3級炭素含有単量体を単量体成分として使用すればよい。上記第3級炭素含有単量体として、好ましくは、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸t-アミル等が挙げられる。
【0081】
上記ビニルエーテル化合物により酸基がブロック化された基としては、カルボキシル基等の上述した酸基にビニルエーテル化合物が結合した基が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物や、ジヒドロピラン等の、開環してビニルエーテルを生じうる環状エーテル化合物等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物のなかでも、より低温で保護基が脱離しやすい点で、ジヒドロピランが好ましい。
【0082】
上記ジヒドロピランにより酸基がブロック化された基としては、好ましくは、下記式で表される基が挙げられる。
【0083】
【化3】
【0084】
上記t-ブチル基やアセチル基等の保護基によりフェノール性水酸基が保護された基としては、好ましくは、下記式で表される基が挙げられる。
【0085】
【化4】
(式中nは、置換基の数を表し、1~5の整数である。)
【0086】
上記式で表される基は、例えば、溶媒中、塩酸、硫酸等の酸触媒下に温度50~150℃で1~30時間反応を行うことで、保護基が脱離して、酸基が生成される。
【0087】
なかでも、より低温で酸基を生成することができる点で、上記ジヒドロピランにより酸基がブロック化された基が好ましい。
【0088】
(b1)一般式(2)で表される構造単位
上記樹脂(B)としては、好ましくは、下記一般式(2)で表される構造単位(b1)を有する樹脂が挙げられる。
【0089】
【化5】
【0090】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、直接結合、又は、二価の有機基を表す。Aは、熱又は酸により酸基が生成される基を表す。)
上記一般式(2)において、Rは、水素原子又はメチル基を表す。なかでも、耐熱性が良好である点で、Rは、メチル基であることが好ましい。
Xは、直接結合、又は、二価の有機基を表す。
【0091】
上記二価の有機基としては、置換基を有してもよい、二価の炭化水素基が挙げられる。
【0092】
上記二価の炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。
上記二価の炭化水素基は、当該炭化水素基を構成する原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。
上記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Xは、直接結合であることが好ましい。
【0093】
上記一般式(2)において、Aは、熱又は酸により酸基が生成される基を表す。
上記熱又は酸により酸基が生成される基としては、上述した熱又は酸の作用により、酸基が生成される構造又は基と同じものを挙げることができる。
【0094】
上記樹脂(B)は、上記構造単位(b1)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0095】
上記構造単位(b1)の含有割合は、耐溶剤性が良好である点で、上記樹脂(B)の全構造単位100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0096】
(b2)主鎖に環構造を有する構造単位
上記樹脂(B)は、主鎖に環構造を有する重合体であることが好ましい。主鎖に環構造を有することにより、上記樹脂(B)の耐熱性を向上させることができる。上記環構造としては、上述した(a2)に記載の環構造と同様のものが挙げられる。上記樹脂(B)は、主鎖に環構造を有する構造単位(b2)を更に有することが好ましい。
上記構造単位(b2)を導入しうる単量体としては、上述した構造単位(a2)を導入しうる単量体と同じ単量体を挙げることができる。
上記樹脂(B)は、上記構造単位(b2)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0097】
上記構造単位(b2)の含有割合は、耐熱性と耐溶剤性が良好である点で、上記樹脂(B)の全構造単位100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0098】
(b3)他の構造単位
上記樹脂(B)は、上述した構造単位(b1)及び(b2)以外に、他の構造単位(b3)を更に有していてもよい。
上記他の構造単位としては、上述した他の構造単位(a3)と同様の構造単位が挙げられる。
なかでも、上記構造単位(b3)は、水酸基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、及び、エポキシ基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0099】
上記樹脂(B)は、上記構造単位(b3)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0100】
上記構造単位(b3)の含有割合は、現像性が良好である点で、上記樹脂(B)の全構造単位100質量%に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
上記樹脂(B)が上記構造単位(b3)を2種以上含む場合、各構造単位の含有割合は、本発明の硬化性樹脂組成物の用途、目的に応じて適宜設計することができる。
【0101】
上記樹脂(B)は、更に、エポキシ基を有することが好ましい。上記樹脂(B)がエポキシ基を更に有することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させることができ、耐溶剤性により一層優れた硬化物を与えることができる。
エポキシ基を有する上記樹脂(B)は、上述したエポキシ基含有単量体を含む単量体成分を重合することにより得ることができる。
【0102】
上記樹脂(B)の酸価は、20~230mgKOH/gであることが好ましい。上記酸価が上述の範囲であると、現像性が良好になり、かつ、耐溶剤性に優れた硬化膜を与えることができる。30~200mgKOH/gであることがより好ましく、40~180mgKOH/gであることが更に好ましい。
上記酸価は、KOH溶液を用いた中和滴定法により測定して得られる値である。
【0103】
上記樹脂(B)の重量平均分子量は、特に制限されず、本発明の硬化性樹脂組成物の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、1000~100000であることが好ましく、2000~50000であることがより好ましく、4000~30000であることが更に好ましい。
上記樹脂(B)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、特に制限されないが、1.0~4.0であることが好ましく、1.1~3.5であることがより好ましく、1.5~3.0であることが更に好ましい。
上記重合体の重量平均分子量及び分散度は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により、実施例に記載の方法で測定して得られる値である。
【0104】
上記樹脂(B)は、側鎖に重合性二重結合を有していてもよい。側鎖に重合性二重結合を有することにより、上記樹脂(B)の硬化性を向上させることができる。
上記重合性二重結合としては、上述した酸基含有アルカリ可溶性樹脂(A)におけるものと同様のものが好ましく挙げられる。上記樹脂(B)が側鎖に重合性二重結合を有する場合、その二重結合当量も、上述した酸基含有アルカリ可溶性樹脂(A)と同様の範囲の二重結合当量が好ましく挙げられる。
【0105】
(熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂の製造方法)
上記熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂(B)の製造方法としては、少なくとも上記構造単位(b1)と、必要に応じて上記構造単位(b2)及び(b3)を有する重合体を得ることができる方法であれば、特に制限されず、上述した各構造単位(b1)~(b3)を導入しうる単量体を含む単量体成分を公知の方法で重合する方法が挙げられる。また、酸基含有単量体を含む単量体成分を重合した後に、酸基に保護基を付加してもよい。
各単量体の量は、重合体における各構造単位の含有量が所望の範囲となるよう適宜調整することができる。
重合方法としては、特に制限されず、上記樹脂(A)の製造方法と同様の方法が挙げられる。
【0106】
上記樹脂(B)の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましく、30~45質量%であることが更に好ましい。
上記樹脂(A)と樹脂(B)を併用する場合、上記樹脂(A)と樹脂(B)との合計含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、1~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることが更に好ましい。
【0107】
本発明において、上記樹脂(B)は、上述した酸基を有していてもよい。本発明では、上記樹脂(B)は、上記熱もしくは酸により酸基を生成する基と、上述した酸基とを有してもよい。
【0108】
(C)側鎖にビニルエーテル基を有する重合体
上記側鎖にビニルエーテル基を有する重合体(C)(以下、「重合体(C)」とも称する。)としては、側鎖に、-O-CH=CHで表されるビニルエーテル基を少なくとも1つ有する重合体であれば特に制限されないが、下記一般式(1)で表される構造単位(c1)を有することが好ましい。
【0109】
【化6】
(式中、Rは、水素原子又はメチルを表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。Wは、直接結合又は二価の有機基を表す。)
【0110】
上記一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。
は、水素原子又は有機基を表す。Rで表される有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状若しくは環状の1価の炭化水素基、又は、これらの炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部をハロゲン原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換したもの等が挙げられる。
【0111】
上記鎖状の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基等の飽和炭化水素基、アルケニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられ、好ましくは飽和炭化水素基が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、トリメチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、ノニル基、メチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、ジメチルヘプチル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルヘプチル基、トリメチルヘキシル基、3,3-ジエチルペンチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等のアルキル基;ビニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、1-オクテニル基又2-オクテニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0112】
上記環状の炭化水素基としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、メトキシフェニル基、トリクロロフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、塩素、臭素、又はフッ素が好ましく、フッ素がより好ましい。
【0113】
なかでも、上記Rで表される有機基は、炭素数1~11の鎖状又は環状の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数6~11の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましい。
【0114】
Wは、直接結合又は二価の有機基を表す。上記二価の有機基としては、上述した二価の有機基が挙げられ、好ましくは、二価の炭化水素基、及び、二価の炭化水素基と共に-O-、-COO-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-等の結合を含む基が挙げられる。
上記二価の炭化水素基としては、上述した一価の炭化水素基から水素原子を一つ除去した二価の基が挙げられ、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。
上記二価の炭化水素基は、当該炭化水素基を構成する原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
上記二価の炭化水素基は、置換基を有してもよく、上記置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0115】
上記二価の炭化水素基と共に-O-、-COO-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-等の結合を含む基としては、例えば、-(O-R)-(aは、1~5の整数である。)、-(R-O)-(aは、1~5の整数である。)、-R-COO-、-COO-R-、-CO-R-、-R-CO-R’-、-O-CO-R-、-R-O-CO-R’-、-R-S-、-R-S-R’-、-R-SO-、-R-SO-R’-(いずれもR及びR’は、同一又は異なって、上記二価の炭化水素基を表す。)等が挙げられる。
なかでも、上記二価の炭化水素基と共に-O-の結合を含む基が好ましく、-(O-R)a-(Rは、上記二価の炭化水素基を表す。aは、1~5の整数である。)で表される基がより好ましく、-(O-R)-(Rは、炭素数1~2のアルキレン基を表す。aは、1~2の整数である。)が更に好ましい。
【0116】
上記二価の有機基の炭素数は、1~10であることが好ましく、2~6であることがより好ましく、3~4であることが更に好ましい。
【0117】
なかでも、上記一般式(1)で表される構造単位(c1)は、下記一般式(1-1)で表されるものが好ましい。
【0118】
【化7】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。mは1以上の整数を表す。)
【0119】
上記一般式(1-1)において、R及びRは、上記一般式(1)中のR及びRと同じである。
上記一般式(1-1)において、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
及びRで表される有機基としては、上述したRで表される有機基と同様のものを挙げることができるが、なかでも、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、又は炭素数6~11の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素数1~2のアルキル基、炭素数1~2のハロゲン化アルキル基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基が更に好ましい。
【0120】
上記構造単位(c1)を有する重合体は、例えば、下記一般式(1-2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を重合することにより得られる。
【0121】
【化8】
上記一般式(1-2)中、R、R及びWは、上記一般式(1)中のR、R及びWとそれぞれ同じである。
【0122】
上記一般式(1-2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル等を好ましく挙げることができる。
【0123】
上記重合体(C)は、上記構造単位(c1)を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0124】
上記重合体(C)における上記構造単位(c1)の含有割合は、全構造単位100モル%に対して1~100モル%であることが好ましい。上記構造単位(c1)の含有割合は、架橋密度を上げ、硬化物に耐溶剤性や硬度等を付与できる点で、4モル%以上であることがより好ましく、8モル%以上であることが更に好ましい。また、上記構造単位(c1)の含有割合は、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。
なお、上記構造単位(c1)として2種以上含む場合は、上記含有割合は、その2種以上の合計含有割合である。
【0125】
上記重合体(C)は、更に、他の構造単位(c2)を有していてもよい。上記他の構造単位(c2)としては、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類以外の他の重合性単量体由来の構造単位が挙げられる。
上記他の重合性単量体としては、例えば、電子不足二重結合を有する重合性単量体が挙げられ、これらは製造する重合体の目的、用途に応じて適宜選択することができる。
【0126】
上記電子不足二重結合を有する重合性単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸s-アミル、(メタ)アクリル酸t-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等の環状エーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N’-ジメチルアミノエチル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等の窒素原子含有重合性単量体類;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等のイソシアネート基含有重合性単量体類;
4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性単量体類;
メチレンブチロラクトン、メチルメチレンブチロラクトン等の重合性環状ラクトン単量体類;(メタ)アクリロニトリル;無水マレイン酸;
1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカ-2-イルメタアクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン;等が挙げられる。
【0127】
なかでも、上記他の構造単位(c2)は、(メタ)アクリル酸エステル類を含むことが好ましい。上記構造単位(c1)に含まれるビニルエーテル基は親水性が高いため、上記重合体(C)が疎水性の高い(メタ)アクリル酸エステル類を共重合することにより、硬化性樹脂組成物の相溶性を調整でき、上記重合体(C)の含有量を増やすことができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル類のなかでも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。
【0128】
上記他の重合性単量体は、炭素数が1~22であることが好ましく、1~18であることがより好ましく、3~15であることが更に好ましい。
【0129】
上記重合体(C)は、上記他の構造単位(c2)を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0130】
上記重合体(C)における上記構造単位(c2)の含有割合は、全構造単位100モル%に対して0~99モル%であることが好ましい。上記構造単位(c2)の含有割合は、硬化物に柔軟性や密着性、安定性、耐熱性等の上記構造単位(c2)に由来する諸物性を付与することができる点で、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましく、96モル%以下であることがより好ましく、92モル%以下であることが更に好ましい。
なお、上記構造単位(c2)として2種以上含む場合は、上記含有割合は、その2種以上の合計含有割合である。
【0131】
上記構造単位(c1)及び(c2)の含有割合は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、H-HMR等を用いて、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステルやそれ以外のモノマーの反応率の比やH-NMRの該当する積分値の比較の方法により求めることができる。
【0132】
上記重合体(C)は、主鎖末端に、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基を有することが好ましい。上記重合体(C)は、後述するように、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物を重合開始剤として使用したグループトランスファー重合により製造される場合、上記重合体の主鎖の重合開始側末端には、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物に由来する基が形成される。
【0133】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基としては、例えば、下記一般式(3)、(4)又は(5)で示される構造が好ましく挙げられる。
【0134】
【化9】
(式中、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R12は、有機基を表す。)
【0135】
【化10】
(式中、R10、R11及びR13は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。)
【0136】
【化11】
(式中、R10、R11、R14、R15及びR16は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。)
【0137】
上記一般式(3)、(4)及び(5)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16で表される有機基としては、上述した有機基と同じものが挙げられるが、なかでも、炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましい。
【0138】
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
【0139】
なかでも、R10及びR11で表される炭化水素基は、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることが更により好ましく、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0140】
12、R13、R14、R15及びR16で表される有機基としては、例えば、上述した有機基と同じものが挙げられるが、なかでも、炭素数1~22の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、アダマンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であることが特に好ましい。
12、R13、R14、R15及びR16で表される上記炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
【0141】
また、R10とR11、又は、R10若しくはR11とR12~R16は、結合して環構造を形成していてもよい。上記環構造としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル等のシクロアルキル等の脂環式炭化水素構造;ジヒドロフラン環、テトラヒドロフラン環、ジヒドロピラン環、テトラヒドロピラン環等の含酸素ヘテロ環構造;等が挙げられる。
【0142】
なお、上記グループトランスファー重合を用いて上記重合体(C)を製造する際に、重合開始剤として、後述する一般式(7)で表されるシリルケテンアセタール、一般式(8)で表されるビニルシラン化合物、一般式(9)で表されるアリルシラン化合物をそれぞれ用いると、得られる重合体は、それぞれ上記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)で表される構造の主鎖末端を有する。
なかでも、上記重合体(C)は、グループトランスファー重合で得られた場合に分子量分布が制御されやすい点で、主鎖に、上記一般式(3)で表されるシリルケテンアセタール由来の末端基を有することが好ましい。
【0143】
上記重合体(C)はまた、更に、下記一般式(6)で表される末端構造を有していてもよい。主鎖の片末端に、下記一般式(6)で表される末端構造を有すると、重合体に所望の機能を付与することができる。上記重合体(C)は、主鎖の一方の末端に上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物由来の末端基を有し、もう一方の末端に下記一般式(6)で表される末端構造を有することが好ましい。
【0144】
【化12】
【0145】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子又は有機基を表す。Wは、直接結合又は二価の有機基を表す。Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、アリル基又はプロパルギル基を表す。)
【0146】
上記一般式(6)中、R、R及びWは、上記一般式(1)中のR、R及びWとそれぞれ同じである。
【0147】
上記一般式(6)中、Yは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシメチル基、アリル基又はプロパルギル基を表す。上記アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。
上記Yは、なかでも、重合体の末端基を統一できる点では水素原子であることが好ましく、重合体に機能を付与しやすい点ではプロパルギル基であることが好ましく、重合体の安定性を高める点ではアルキル基であることが好ましい。
【0148】
上記重合体(C)の重量平均分子量は、各種用途において適した範囲が存在するが、1000~1000000の範囲であることが好ましい。上記重合体(C)の重量平均分子量は、1000~500000の範囲であることがより好ましく、5000~200000の範囲であることが更に好ましく、10000~200000の範囲であることが特に好ましい。
【0149】
上記重合体(C)の数平均分子量は、1000~1000000の範囲であることが好ましい。上記重合体(C)の数平均分子量は、1000~500000の範囲であることがより好ましく、5000~200000の範囲であることが更に好ましい。
【0150】
上記重合体(C)は、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、5.0以下であることが好ましい。分散度が5.0以下であると、重合体の諸物性のばらつきを抑制することができる。上記分散度は、3.5以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。下限値は、通常1.0以上である。
【0151】
上記重合体(C)の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。分散度は、重量平均分子量を数平均分子量で除することにより求めることができる。
【0152】
上記重合体(C)は、不溶分の量が、上記重合体100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
不溶分の量が多くなると、平坦な塗膜が得られない等、硬化性組成物の硬化物の形状が悪くなったり、硬化物の強度が低下したりするおそれがある。
【0153】
上記不溶分とは、上記重合体(C)に含まれるゲル成分であり、好ましくは酢酸エチル、トルエン又はテトラヒドロフランに対して不溶な成分であり、25℃での溶解度が、酢酸エチル、トルエン又はテトラヒドロフラン100gに対して0.5g以下、好ましくは0.1g以下である。
【0154】
上記不溶分の量は、上記重合体の濃度が約33質量%となるように、酢酸エチル、トルエン又はテトラヒドロフランを加え、室温で充分に攪拌した後、孔径4μmのフィルターに通し、そのフィルター上に残った不溶分の乾燥後の質量を(b)とし、初期の重合体の質量を(a)とした場合に、(b)/(a)×100より求めることができる。
【0155】
上記重合体(C)の含有量は、耐溶剤性が良好である点で、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましく、2~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましい。
【0156】
(重合体(C)の製造方法)
上記重合体(C)を製造する方法としては、上述した構造単位(c1)を有する重合体(C)を製造することができる方法であれば、特に限定されないが、上記重合体(C)を効率良く製造することができる点で、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分をグループトランスファー重合することにより製造する方法が好ましい。グループトランスファー重合を行うことにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリロイル基のみを重合反応させた重合体を効率良く製造することができる。また、この方法によれば、得られる上記重合体(C)に含まれるゲル成分(不溶分)の量を低く抑えることができる。
【0157】
上記重合体(C)の好ましい製造方法として、上記グループトランスファー重合を用いた製造方法を以下に説明する。
上記重合体(C)の製造方法は、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分を、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、及び、触媒の存在下でグループトランスファー重合する工程を含むことが好ましい。
【0158】
上記重合反応では、具体的には、反応前に、上記単量体成分、触媒、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物のうちいずれか2つを反応容器内に仕込み、残り1つを添加することにより重合が開始する。これらを添加する順序については特に限定されず、任意の方法で添加して重合を開始することができる。
また、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、触媒、及び、単量体成分は、それぞれ、使用する全量を一度に添加してもよいし、少量ずつ連続的に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。
【0159】
上記単量体成分を重合して得られる重合体の分子量は、上記単量体成分の種類及び量や、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の種類及び量、上記触媒の種類及び量、使用する溶媒の種類や量により適宜制御することができる。
【0160】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に上記重合体を製造することができる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0161】
上記触媒の使用量は、所望の重合体が得られるのであれば特に限定されないが、より効率的に上記重合体を製造することができる点で、使用する単量体成分に対して、1×10-4~10モル%であることが好ましく、1×10-3~5モル%がより好ましく、1×10-2~1モル%であることが更に好ましい。
【0162】
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行うこともできるが、溶媒を使用することが好ましい。使用する溶媒としては、原料、触媒、重合開始剤、重合体を溶解させることのできる溶媒であれば制限されないが、重合反応が効率良く進行し得る点で、非プロトン性溶媒が好ましい。
【0163】
上記重合において使用する溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル系溶媒;ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペンタフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン等のフッ素系溶媒;DMSO、ニトロメタン等が挙げられる。
なかでも、重合反応がより一層効率良く進行し得る点で、上記溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、及びニトリル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒であることがより好ましい。
上記溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0164】
上記溶媒の使用量としては、使用する単量体成分総量100質量%に対して、好ましくは10~10000質量%、より好ましくは50~5000質量%、更に好ましくは100~1000質量%が挙げられる。
【0165】
また、上記重合においては、重合開始時の溶媒中の酸素濃度が1000ppm以下であることが好ましい。重合開始時の溶媒中の酸素濃度が上述の範囲であると、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物や触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望の重合体をより効率良く製造することができる。上記酸素濃度は、800ppm以下であることがより好ましく、0~500ppmであることが更に好ましい。
上記酸素濃度は、ポーラロ方式溶存酸素計により測定することができる。
【0166】
また、上記重合においては、重合開始時の溶媒中の水分量が1000ppm以下であることが好ましい。重合開始時の溶媒中の水分量が上述の範囲であると、上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物が分解を起こしにくく触媒等の活性がより低下しにくくなるため、重合反応がより良好に進行し、所望の重合体をより効率良く製造することができる。上記水分量は、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましい。
上記水分量は、カールフィッシャー水分測定法により測定することができる。
【0167】
上記重合における反応温度は、特に制限されないが、分子量及び分子量分布の制御や触媒活性の維持ができる点で、-20~100℃が好ましく、-10~50℃がより好ましく、0~30℃が更に好ましい。また、製造コスト低減の観点から、室温±20℃で重合する工程を含むことも、本発明の製造方法の好ましい形態の一つである。
反応時間は、特に制限されないが、10分~48時間が好ましく、30分~36時間がより好ましく、1~24時間が更に好ましい。
【0168】
上記重合における反応雰囲気下は、大気下でもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
また上記重合における雰囲気中の酸素濃度は、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましい。
【0169】
上記重合反応で得られる重合体は、主鎖末端に重合開始剤のシリル基を含むシリルケテンアセタール構造又はエノレートアニオン構造となっており、反応系内に水、アルコール、又は酸を添加して、重合体の片末端のシリルケテンアセタール又はエノレートアニオンをカルボン酸又はエステルに変換させることにより、重合反応を停止させることができる。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等が挙げられる。
上記酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、安息香酸等の有機酸が挙げられる。
水、アルコール又は酸の使用量としては特に制限されないが、使用する炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物1molに対し、好ましくは1~1000mol、より好ましくは1~100mol、更に好ましくは1~10molである。
【0170】
また、上記水、アルコール、又は酸の代わりに、求電子剤を添加してもよい。求電子剤を添加することにより、目的の官能基を導入して、重合反応を停止させることができる。上記求電子剤としては、例えば、ヨウ素や臭素等のハロゲン、ハロゲン化コハク酸イミド化合物、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリル、ハロゲン化プロパルギル、アルデヒド、酸クロライド等が挙げられる。
上記求電子剤の使用量としては、特に限定されないが、使用するシリルケテンアセタール1molに対し、好ましくは0.5~1.5mol、より好ましくは0.6~1.3mol、更に好ましくは0.8~1.2molである。
【0171】
上記製造方法において使用する単量体成分、炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物、及び、触媒について説明する。
【0172】
上記単量体成分としては、上記構造単位(c1)を導入し得る単量体と、上記構造単位(c2)を導入し得る単量体が挙げられる。上記構造単位(c1)を導入し得る単量体としては、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。上記構造単位(c2)を導入し得る単量体としては、上述した他の重合性単量体が挙げられる。
上記各単量体の含有量は、所望の含有割合範囲の構造単位を有する重合体が得られるよう、適宜設定するとよい。
【0173】
上記炭素-炭素二重結合を有するシラン化合物としては、例えば、下記一般式(7):
【0174】
【化13】
【0175】
(式中、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R12、R17、R18及びR19は、同一又は異なって、有機基を表す。R10とR11又はR11とR12は、結合して環構造を形成していてもよい。R17、R18及びR19は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるシリルケテンアセタール、下記一般式(8):
【0176】
【化14】
【0177】
(式中、R10、R11及びR13は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R17、R18及びR19は、同一又は異なって、有機基を表す。R10とR11又はR11とR13は、結合して環構造を形成していてもよい。R17、R18及びR19は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるビニルシラン化合物、及び、下記一般式(9):
【0178】
【化15】
【0179】
(式中、R10、R11、R14、R15及びR16は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。R17、R18及びR19は、同一又は異なって、有機基を表す。R10とR11又はR11とR14は、結合して環構造を形成していてもよい。R17、R18及びR19は、これらのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。)
で表されるアリルシラン化合物の1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
なかでも、重合が効率良く進みやすい点で、シリルケテンアセタールがより好ましい。
【0180】
上記一般式(7)、(8)及び(9)において、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
上記R10及びR11としては、上述した一般式(3)、(4)、(5)中のR10及びR11とそれぞれ同じものが挙げられる。
上記R12~R16としては、上述した一般式(3)、(4)、(5)中のR12~R16とそれぞれ同じものが挙げられる。
【0181】
上記一般式(7)、(8)及び(9)において、R17、R18、及びR19は、同一又は異なって、有機基を表す。
17、R18及びR19で表される有機基としては、上述した有機基と同じものが挙げられるが、なかでも、炭素数1~12の炭化水素基、アルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~6の炭化水素基、アルコキシ基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基であることが更に好ましい。
【0182】
また、上記R17、R18及びR19で表される炭化水素基は、上記炭化水素基を構成する原子の少なくとも一部が、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子に置換されていてもよいし、上記炭化水素基を構成する水素原子の一つ以上が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
【0183】
上記一般式(7)、(8)及び(9)中の-SiR171819で表される基としては、具体的には、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリイソブチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。なかでも、入手容易であることや合成容易である点で、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェニルシリル基が好ましい。
【0184】
上記一般式(7)で表されるシリルケテンアセタールとしては、具体的には、例えば、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリメチルシリル)ジイソプロピルケテンアセタール、メチル(トリエチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリイソプロピルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(tert-ブチルジメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリメチルシリル)ジエチルケテンアセタール、メチル(トリフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(メチルジフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(ジメチルフェニルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリエトキシシリル)ジメチルケテンアセタール、エチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、2-エチルヘキシル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、tert-ブチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、1-[(1-メトキシ-2-メチル-1-プロペニル)オキシ]-1-メチルシラシクロブタン等が挙げられる。
これらの中でも、入手容易である点や合成容易な点、また安定性の点から、メチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタール、メチル(トリイソプロピルシリル)ジメチルケテンアセタール、エチル(トリメチルシリル)ジメチルケテンアセタールが好ましい。
上記シリルケテンアセタールは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0185】
上記一般式(8)で表されるビニルシラン化合物としては、具体的には、例えば、ビニルトリメチルシラン、1-トリメチルシリルヘキセン、1-トリメチルシリルオクテン、1-トリメチルシリル-1-フェニルエチレン、1-トリメチルシリル-2-フェニルエチレン、ビニル-tert-ブチルジメチルシラン、1-tert-ブチルジメチルシリルヘキセン、1-tert-ブチルジメチルシリルオクテン、1-tert-ブチルジメチルシリル-2-フェニルエチレン、ビニルトリス(トリメチルシリル)シラン、1-トリス(トリメチルシリル)シリルヘキセン、1-トリス(トリメチルシリル)シリルオクテン、1-トリス(トリメチルシリル)シリル-2-フェニルエチレン等が挙げられる。
【0186】
上記一般式(9)で表されるアリルシラン化合物としては、具体的には、例えば、3-(トリメチルシリル)-1-プロペン、3-(トリエチルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルエチルシリル)-1-プロペン、3-(トリイソプロピルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルイソプロピルシリル)-1-プロペン、3-(トリノルマルプロピルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルノルマルプロピルシリル)-1-プロペン、3-(トリノルマルブチルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルノルマルブチルシリル)-1-プロペン、3-(トリフェニルシリル)-1-プロペン、3-(ジメチルフェニルシリル)-1-プロペン、2-メチル-3-(トリメチルシリル)-1-プロペン、3-(トリメチルシリル)-2-メチル-1-プロペン、3-(トリフェニルシリル)-2-メチル-1-プロペン等が挙げられる。
【0187】
上記触媒としては、ブレンステッド塩基やルイス塩基等の塩基性触媒として作用するものが好ましく挙げられ、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の無機塩基;トリアルキルアミン、ピリジン等の有機塩基;等が挙げられる。
なかでも、上記触媒としては、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合をより一層効率良く行うことができる点で、有機リン化合物、N-ヘテロ環カルベン、フッ素イオン含有化合物、環状アミン化合物、及び、アンモニウム塩化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。これらの特定の触媒を使用する場合、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類において、ビニルエーテル基のカチオン重合やビニルエーテルの分解が起こりにくく、(メタ)アクリロイル基のみをより一層効率良く重合させることができる。
【0188】
上記有機リン化合物としては、例えば、1-tert-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P4-t-BuP)、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P4-tOct)、1-tert-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,-4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P2-t-Bu)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(ホスファゼン塩基P2-t-Et)、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(ホスファゼン塩基P1-t-Bu)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン等のホスファゼン塩基;トリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(ジメチルアミノホスフィン)、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン、2,8,9-トリメチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン、2,8,9-トリイソプロピル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカン;等が挙げられる。なかでも、塩基性が強く、シリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、ホスファゼン塩基P4-t-BuP、2,8,9-トリイソブチル-2,5,8,9-テトラアザ-1-ホスファビシクロ[3,3,3]ウンデカンが好ましい。
【0189】
上記N-ヘテロ環カルベンとしては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジエチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-シクロヘキシルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ(1-アダマンチル)イミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-メシチルイミダゾール-2-イリデン等が挙げられる。なかでも、シリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾール-2-イリデンが好ましい。
【0190】
上記フッ素イオン含有化合物としては、例えば、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムビフルオリド(TASHF)、フッ化水素-ピリジン、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、フッ化水素カリウム等が挙げられる。なかでも、入手容易である点やシリルケテンアセタールを効果的に活性化できる点で、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、テトラブチルアンモニウムビフルオリド、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムビフルオリド(TASHF)が好ましい。
【0191】
上記環状アミン化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等が挙げられる。
【0192】
上記アンモニウム塩化合物としては、例えば、テトラブチルアンモニウムビスアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムビスベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタクロロベンゾエート、テトラブチルアンモニウムシアネート、テトラブチルアンモニウムメトキシド、テトラブチルアンモニウムチオレート、テトラブチルアンモニウムビブロマイド、及び、これらのアンモニウム塩化合物のアンモニウムカチオンをテトラメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、N-メチル-N-ブチルピペリジニウム、N-メチル-N-ブチルピロリジニウムカチオンに変えたものやピリジニウムカチオンに変えたもの等が挙げられる。
【0193】
また、上記の他に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンのような塩基性の強い含窒素複素環化合物も用いることができる。
【0194】
上記触媒は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0195】
上記重合においては、本発明の効果に影響を与えない範囲において、上述した成分以外に、更に他の成分を使用してもよい。上記他の成分としては、例えば、重合反応において通常使用される重合開始剤、連鎖移動剤、重合促進剤、重合禁止剤等の公知の添加剤等が挙げられる。これらは、必要に応じて適宜選択することができる。
【0196】
上記製造方法は、上記重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。上記他の工程としては、例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0197】
上記重合体(C)は、上述した製造方法により製造されることが好ましい。すなわち、上記重合体(C)は、上記一般式(1-2)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分のグループトランスファー重合物であることが好ましい。
【0198】
上記製造方法で重合体(C)を製造した場合、重合に使用する単量体成分の転化率が非常に高く、残存モノマー量を非常に少なくすることができる。
一方、上記重合体(C)をラジカル重合で製造した場合、ゲル化させずに、重合体の分子量分布が上記の所定範囲に制御された重合体を得ることができたとしても、モノマーが残存し、またその量の制御が困難であるため、得られる硬化物の物性発現の再現性が低下するおそれがある。
上記重合体(C)の残存モノマーの含有量は、重合体100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0~3質量%であることが更に好ましい。
残存モノマーの含有量は、H-NMRやガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0199】
(D)光重合開始剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、光重合開始剤を含むことが好ましい。
本発明において使用する光重合開始剤としては、好ましくはラジカル重合性の光重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合性の光重合開始剤とは、電磁波や電子線等の活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生させるものである。
【0200】
上記光重合開始剤の具体例としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(「IRGACURE907」、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(「IRGACURE369」、BASF社製)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(「IRGACURE379」、BASF社製)等のアミノケトン系化合物;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(「IRGACURE651」、BASF社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(「DAROCUR MBF」、BASF社製)等のベンジルケタール系化合物;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(「IRGACURE184」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(「DAROCUR1173」、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(「IRGACURE2959」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(「IRGACURE127」、BASF社製)、[1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン+ベンゾフェノン](「IRGACURE500」、BASF社製)等のハイドロケトン系化合物;等の他、特開2013-227485号公報段落[0084]~[0086]に例示された、他のアルキルフェノン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](「OXE01」、BASF社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(「OXE02」、BASF社製)、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-,(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン(「OXE03」、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(「OXE04」、BASF社製))等のオキシムエステル系化合物;ベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン系化合物;チオキサントン系化合物;ハロメチル化トリアジン系化合物;ハロメチル化オキサジアゾール系化合物;ビイミダゾール系化合物;チタノセン系化合物;安息香酸エステル系化合物;アクリジン系化合物等;ホスフィンオキシド系化合物;等が挙げられる。なかでも、アミノケトン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0201】
上記光重合開始剤の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲であれば、特に制限されず、適宜設定すればよいが、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0202】
(E)重合性化合物
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、重合性化合物を含むことが好ましい。重合性化合物を更に含むことにより、耐溶剤性に加え、樹脂組成物の硬化性や、機械的強度、耐熱性等の各種物性にも優れた硬化物を与えることができる。
【0203】
上記重合性化合物は、フリーラジカル、電磁波(例えば赤外線、紫外線、X線等)、電子線等の活性エネルギー線の照射等により重合し得る、重合性不飽和結合(重合性不飽和基とも称す)を有する低分子化合物であり、例えば、重合性不飽和基を分子中に1つ有する単官能の化合物と、2個以上有する多官能の化合物が挙げられる。
【0204】
上記単官能の化合物としては、例えば、N置換マレイミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド類;不飽和モノカルボン酸類;不飽和多価カルボン酸類;不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;不飽和酸無水物類;芳香族ビニル類;共役ジエン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;N-ビニル化合物類;不飽和イソシアネート類;等が挙げられる。これらとしては、例えば、上記酸基含有アルカリ可溶性樹脂等の単量体成分として挙げた化合物と同様のものが挙げられる。また、活性メチレン基や活性メチン基を有する単量体等を用いることもできる。
【0205】
上記多官能の化合物としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
【0206】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸変性物、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸変性物、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸変性物、下記式:
【0207】
【化16】
【0208】
で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの変性物等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;
【0209】
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;
【0210】
(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0211】
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;
【0212】
(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル類;等。これらの重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0213】
上記重合性化合物のなかでも、硬化性樹脂組成物の硬化性をより高める観点から、多官能の重合性化合物を用いることが好ましい。上記多官能の重合性化合物の官能数としては、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、上記官能数は10以下が好ましく、8以下がより好ましい。
また上記重合性化合物の分子量としては特に限定されないが、取り扱いの観点から、例えば、2000以下が好ましい。
【0214】
上記多官能の重合性化合物としては、なかでも、反応性、経済性、入手性等の観点から、好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート化合物等の、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、より好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことにより、硬化性樹脂組成物が感光性及び硬化性により優れたものとなり、より一層高硬度で高透明性の硬化物を得ることができる。上記多官能の重合性化合物としては、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることが更に好ましい。
【0215】
本発明の硬化性樹脂組成物において、上記重合性化合物の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲であれば特に制限されず適宜設定すればよいが、硬化性樹脂組成物を適切な粘度にできる点から、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~50質量%である。
【0216】
(F)光酸発生剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤を含むことにより、カチオン重合が進行して、より優れた耐溶剤性を有する硬化物を与えることができる。
本発明において使用される光酸発生剤は、光が照射されることにより、酸と同時にラジカルを発生させる化合物である。上記光酸発生剤としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により酸を発生する化合物であり、具体的には、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物等の公知の化合物が挙げられる。
なかでも、上記光酸発生剤は、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及び、ジアゾメタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、オニウム塩化合物であることがより好ましく、トリアリールスルホニウム塩であることが更に好ましい。
【0217】
上記オニウム塩化合物としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0218】
上記ジアリールヨードニウム塩としては、具体的には、Bluesil PI2074(Elkem社製)、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホナート等のジフェニルヨードニウム塩;4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム-p-トルエンスルホナート等の4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム塩;ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム-p-トルエンスルホナート等のビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0219】
上記トリアリールスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート等のトリフェニルスルホニウム塩;4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート等の4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム塩;4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート等の4-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。
【0220】
上記トリアリールホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルホスホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルホスホニウム-p-トルエンスルホナート等のトリフェニルホスホニウム塩;4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウムトリフルオロアセテート、4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウム-p-トルエンスルホナート等の4-メトキシフェニルジフェニルホスホニウム塩;トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムトリフルオロアセテート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム-p-トルエンスルホナート等のトリス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0221】
上記スルホンイミド化合物としては、例えば、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物;N-(カンファニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(カンファニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(カンファニルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物;N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物;N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ-[2,2,1]-ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等のN-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)基を有するスルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0222】
上記ジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0223】
上記光酸発生剤の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲であれば、特に制限されず、適宜設定すればよいが、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、0.3~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることが更に好ましい。
【0224】
(G)エポキシ化合物
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、エポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物を含むと、カチオン重合が進行し、架橋反応がより進行しやすくなり、耐溶剤性により優れた硬化物を与えることができる。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基と重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、例えば、上述したエポキシ基含有単量体が挙げられる。
上記エポキシ化合物を含む場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは2~40質量%であり、更に好ましくは5~30質量%である。
【0225】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、溶剤;色材(顔料、染料);分散剤;耐熱向上剤;レベリング剤;現像助剤;シリカ微粒子等の無機微粒子;シラン系、アルミニウム系、チタン系等のカップリング剤;フィラー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール等の熱硬化性樹脂;多官能チオール化合物等の硬化助剤;可塑剤;重合禁止剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;艶消し剤;消泡剤;帯電防止剤;スリップ剤;表面改質剤;揺変化剤;揺変助剤;キノンジアジド化合物;多価フェノール化合物;カチオン重合性化合物;熱酸発生剤;等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの他の成分は、公知のものから適宜選択して使用するとよく、その使用量も適宜設定することができる。
例えば、上記硬化性樹脂組成物をカラーフィルター用途に使用する場合には、上記硬化性樹脂組成物は色材を含むことが好ましい。
【0226】
<硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の硬化性樹脂組成物を調製する方法としては、特に制限されず公知の方法を用いればよく、例えば、上述した各含有成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散する方法が挙げられる。混合・分散工程は特に制限されず、公知の方法により行えばよい。また、通常行われる他の工程を更に含んでいてもよい。上記硬化性樹脂組成物が色材を含む場合は、公知の色材の分散処理工程を経て調製することが好ましい。
【0227】
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化物樹脂組成物を使用して硬化物を得る方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いればよく、例えば、上述した硬化物樹脂組成物を基材上に塗布し、塗布したものを乾燥、加熱、紫外線等のエネルギー線を照射、又はこれらの組み合わせにより硬化させて硬化物を得る方法が挙げられる。
【0228】
本発明の硬化物樹脂組成物を用いると、比較的低温である硬化条件でも耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができるので、例えば、下記の方法が好ましく挙げられる。
すなわち、基板上に、上述の硬化性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する工程、形成された塗布膜に光照射する工程、及び、光照射された塗布膜を200℃以下で加熱する工程を含む、硬化物の製造方法である。
【0229】
上記基板(基材)としては、特に制限されず、目的や用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、ガラス板、プラスチック板等、種々の材料からなる基板が挙げられる。
【0230】
上記硬化性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する方法としては、特に制限されず、スピン塗布、スリット塗布、ロール塗布、流延塗布等の公知の方法で行うことができる。
上記製造方法においては、上記硬化性樹脂組成物を基板上に塗布した後、塗布物を乾燥させて塗布膜を形成することが好ましい。上記乾燥は、公知の方法で行うことができ、具体的には、後述する「<カラーフィルターの製造方法>」の「配置工程」に記載の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。
【0231】
上記製造方法は、塗布膜を形成した後、上記塗布膜に光照射する工程を含む。
上記形成された塗布膜に光照射する方法としては、特に制限されず、公知の方法で行うことができ、具体的には、後述する「<カラーフィルターの製造方法>」の「光照射工程」に記載の方法と同様の方法で行うことができる。
【0232】
上記塗布膜に光照射する場合、フォトマスクを介して光照射を行ってもよい。フォトマスクとして、目的とするパターンに応じて遮光部が形成されたマスクを用いるとよい。フォトマスクを介して光照射を行った場合、その後に現像工程を行うことが好ましい。現像工程を行うことで、塗布膜に目的とするパターンを形成することができる。現像方法としては、特に制限されず、公知の方法で行うことができ、具体的には、後述する「<カラーフィルターの製造方法>」の「現像工程」に記載の方法と同様の方法で行うことができる。
【0233】
上記製造方法はまた、光照射された塗布膜を200℃以下で加熱する工程を含む。本発明の製造方法は、上述した硬化性樹脂組成物を用いるので、光照射後の加熱工程(後硬化工程)を200℃以下の低温条件下で行うことができる。
加熱温度は、190℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。加熱温度の下限としては、硬化性が維持できる点で、70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。
温度以外の上記加熱方法については、特に制限されず、公知の方法で行うことができ、例えば、後述する「<カラーフィルターの製造方法>」の「加熱工程」に記載の方法と同様の方法で行うことができる。
【0234】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物は、低温硬化条件でも耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができる。そのため、優れた耐溶剤性が必要とされる用途や、耐溶剤性に優れた硬化物を低温条件下で得ることが必要とされる用途に好適に用いることができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、光学材料用として好適に使用され、レジスト用であることが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物は、ネガ型用としてもポジ型用としても好適に使用することができる。
【0235】
本発明の硬化性樹脂組成物は、具体的には、例えば、液晶・有機EL・量子ドット・マイクロLED液晶表示装置や固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等に用いられるカラーフィルター、ブラックマトリクス、フォトスペーサー、ブラックカラムスペーサー、インキ、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト、絶縁膜、フィルム、有機保護膜等の、各種の光学部材や電機・電子機器等の構成部材の用途に好適に使用することができる。なかでも、カラーフィルター用途に好ましく使用される。
【0236】
2.カラーフィルター
基板上に、上述した硬化性樹脂組成物の硬化物を有するカラーフィルターも、本発明の好ましい形態の一つである。
上記カラーフィルターにおいて、上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化物は、例えば、ブラックマトリクスや、赤色、緑色、青色、黄色等の各画素のような着色が必要なセグメントとして特に好適であるが、フォトスペーサー、保護層、配向制御用リブ等の着色が必ずしも必要としないセグメントとしても好適である。
【0237】
上記カラーフィルターに使用される基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、アルカリ強化ガラス、シリカコート青板ガラス等のガラス基板;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの開環重合体やその水素添加物等の熱可塑性樹脂からなるシート、フィルム又は基板;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなるシート、フィルム又は基板;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板;セラミック基板;光電変換素子を有する半導体基板;表面に色材層を備えるガラス基板(例えばLCD用カラーフィルター)等の各種材料から構成される部材;等が挙げられる。なかでも、耐熱性の点から、ガラス基板や、耐熱性樹脂からなるシート、フィルム又は基板が好ましい。また、上記基板は透明基板であることが好適である。
また上記基板には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤等による薬品処理等を行ってもよい。
【0238】
<カラーフィルターの製造方法>
上記カラーフィルターを得るには、例えば、画素一色につき(すなわち、一色の画素ごとに)、基板上に、上記硬化性樹脂組成物を配置する工程(配置工程とも称す)と、当該基板上に配置された硬化性樹脂組成物に光を照射する工程(光照射工程とも称す)と、現像液により現像処理する工程(現像工程とも称す)と、加熱処理する工程(加熱工程とも称す)とを含む手法を採用し、これと同じ手法を各色で繰り返す製造方法を採用することが好適である。なお、各色の画素の形成順序は、特に限定されるものではない。
【0239】
(1)配置工程(好ましくは塗布工程)
上記配置工程は、塗布により行うことが好適である。基板上に上記硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スピン塗布、スリット塗布、ロール塗布、流延塗布等が挙げられ、いずれの方法も好ましく用いることができる。
上記配置工程ではまた、上記硬化性樹脂組成物を基板上に塗布した後、塗膜を乾燥することが好適である。塗膜の乾燥は、例えば、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いて行うことができる。乾燥条件は、含まれる溶媒成分の沸点、硬化成分の種類、膜厚、乾燥機の性能等に応じて適宜選択されるが、通常、50~160℃の温度で10秒~300秒間行うことが好適である。
【0240】
(2)光照射工程
上記光照射工程において、使用される活性光線の光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が使用される。また、露光機の方式としては、プロキシミティー方式、ミラープロジェクション方式、ステッパー方式が挙げられるが、プロキシミティー方式が好ましく用いられる。
なお、活性エネルギー光線の照射工程では、用途によっては、所定のマスクパターンを介して活性エネルギー光線を照射することとしてもよい。この場合、露光部が硬化し、硬化部が現像液に対して不溶化又は難溶化されることになる。
【0241】
(3)現像工程
上記現像工程は、上述した光照射工程の後、現像液によって現像処理し、未露光部を除去しパターンを形成する工程である。これにより、パターン化された硬化膜を得ることができる。現像処理は、通常、10~50℃の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法で行うことができる。
【0242】
上記現像工程で使用される現像液は、上記硬化性樹脂組成物を溶解するものであれば特に限定されないが、通常、有機溶媒やアルカリ性水溶液が用いられ、これらの混合物を用いてもよい。なお、現像液としてアルカリ性水溶液を用いる場合には、現像後、水で洗浄することが好ましい。有機溶媒やアルカリ性水溶液としては、特開2015-157909号公報に記載のものと同様のものが挙げられる。
【0243】
(4)加熱工程
上記加熱工程は、上述した現像工程の後、焼成によって露光部(硬化部)を更に硬化させる工程(「後硬化工程」とも称す)である。例えば、高圧水銀灯等の光源を使用して、0.5~5J/cmの光量で後露光する工程や、例えば60~200℃の温度で10秒~120分間にわたって後加熱する工程等が挙げられる。このような後硬化工程を行うことにより、パターン化された硬化膜の硬度及び密着性を更に強固なものとすることが可能になる。
上記加熱工程は、一般的には、200~260℃程度の温度で行われるが、上記硬化性樹脂組成物を使用すれば、200℃以下の比較的低温な条件下で十分な硬化を行うことができる。そのため、基板や硬化物が保持する特性を損なうことなく、耐溶剤性に優れたものを得ることができる。
【0244】
上記加熱工程において、加熱温度は、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、加熱温度は、70℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、95℃以上が更に好ましい。
【0245】
上記加熱工程における加熱時間は特に限定されないが、例えば、5~60分間とすることが好適である。また、加熱方法も特に限定されないが、例えば、ホットプレート、コンベクションオーブン、高周波加熱機等の加熱機器を用いて行うことができる。
【0246】
上記加熱工程によって得られる硬化膜(すなわち、上記硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化塗膜)の膜厚は、0.1~20μmであることが好適である。上記膜厚は、より好ましくは0.5~15μm、更に好ましくは1~10μmである。
【0247】
3.表示装置
上述したカラーフィルターを備える表示装置も本発明における好ましい形態の一つである。
上記硬化性樹脂組成物の硬化物を有する表示装置用部材及び表示装置もまた、本発明の好適な実施形態に含まれる。上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化物(硬化膜)は、耐溶剤性に優れ、更に、安定して、基材等に対する密着性に優れ、かつ高硬度であるうえ、高平滑性を示し、高い透過率を有するものであるから、透明部材として特に好適であり、また、各種表示装置における保護膜や絶縁膜としても有用である。
【0248】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等が好適である。
なお、上記硬化物(硬化膜)を表示装置用部材として用いる場合、当該部材は、上記硬化膜から構成されるフィルム状の単層又は多層の部材であってもよいし、上記単層又は多層の部材に更に他の層が組み合わされた部材であってもよいし、また、上記硬化膜を構成中に含む部材であってもよい。
【0249】
以上のとおり、本発明の硬化性樹脂組成物は、低温硬化条件下であっても、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、基板との密着性、透明性、耐熱性等にも優れる。このような本発明の硬化性樹脂組成物は、液晶・有機EL・量子ドット・マイクロLED液晶表示装置や固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等に用いられる各種の光学部材や構成部材として、電機・電子機器等の各種用途に好適に使用することができる。
【実施例
【0250】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0251】
本実施例において、各種物性等の測定は下記の方法で行った。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)
ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液として、HLC-8220GPC(東ソー社製)、カラム:TSKgel SuperHZM-M(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて重量平均分子量(Mw)と分散度(Mw/Mn)を測定した。
【0252】
(2)固形分
重合体溶液をアルミカップに約1gはかり取り、アセトン約3gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥させた。そして、熱風乾燥機(商品名:PHH-101、エスペック社製)を用い、真空下170℃で1.5時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、質量を測定した。その質量減少量から、重合体溶液の固形分(質量%)を計算した。
【0253】
(3)酸価
重合体溶液を3g精秤し、アセトン90gと水10gの混合溶媒に溶解させ、0.1NのKOH水溶液を滴定液として用いて滴定した。滴定は、自動滴定装置(商品名:COM-555、平沼産業社製)を用いて行い、溶液の酸価と溶液の固形分から固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を求めた。
【0254】
(4)NMR
重合体数mg~数十mgを重クロロホルムに溶解し、アジレント・テクノロジー社製核磁気共鳴装置(600MHz)にて測定した。
【0255】
(5)耐溶剤性
硬化性樹脂組成物を5cm角のガラス基板上にスピンコートし、100℃で3分間乾燥後、高圧水銀灯を用いて60mJで露光を行い、110℃で40分間熱処理(後硬化)を行い、膜厚5μmの硬化膜を得た。そして、その硬化膜を1-メチル-2-ピロリドン(NMP)20gに40℃で10分間浸漬した後取り出し、硬化膜を取り出した後の浸漬液(NMP)について、分光光度計UV3100(島津製作所社製)で吸光度を測定した。吸光度の値が大きいほど、浸漬液中に色材が多く溶出したことを示し、硬化性樹脂組成物の耐溶剤性が低いと評価した。
【0256】
(製造例1)
共重合体溶液A-1(MMA-MAA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート116.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル55.1部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにメタクリル酸メチル60.0部、メタクリル酸40.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.4部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1.5部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製「パーブチル(登録商標)O」)2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン2.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.3部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル24.8部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-1を得た。各種物性を表1に示す。
【0257】
(製造例2)
共重合体溶液A-2(BzMI-CHMA-MAA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート81.9部、プロピレングリコールモノメチルエーテル37.7部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド10.0部、メタクリル酸シクロヘキシル70.0部、メタクリル酸20.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート34.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル14.7部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.1部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル16.5部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-2を得た。各種物性を表1に示す。
【0258】
(製造例3)
共重合体溶液A-3(MD-CHMA-MAA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート116.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテル52.7部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート10.0部、メタクリル酸シクロヘキシル55.0部、メタクリル酸35.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート34.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル14.7部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.1部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル49.5部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-3を得た。各種物性を表1に示す。
【0259】
(製造例4)
共重合体溶液A-4(AMA-CHMA-MAA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート57.9部、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.3部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにα-(アリルオキシメチル)メチルアクリレート10.0部、メタクリル酸シクロヘキシル50.0部、メタクリル酸40.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート34.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテル14.7部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン4.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート24.6部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル8.3部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-4を得た。各種物性を表1に示す。
【0260】
(製造例5)
共重合体溶液A-5(BzMI-CHMA-GMA-HEMA共重合体のSAH付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート201.0部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド10.0部、メタクリル酸シクロヘキシル43.6部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル30.0部、メタクリル酸グルシジル16.4部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30.0部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン2.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート31.3部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、無水コハク酸11.5部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.3部を仕込み、60℃3時間反応させ、共重合体溶液A-5を得た。各種物性を表1に示す。
【0261】
(製造例6)
共重合体溶液A-6(BzMI-CHMA-2EHA-AA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート185.9部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド5.0部、メタクリル酸シクロヘキシル25.5部、アクリル酸-2-エチルヘキシル42.5部、アクリル酸27.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート24.4部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン1.8部を準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル39.4部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-6を得た。各種物性を表1に示す。
【0262】
(製造例7)
共重合体溶液A-7(BzMI-VT-AA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート49.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテル24.1部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド30.0部、ビニルトルエン30.0部、アクリル酸40.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート102.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル43.9部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン3.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.0部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル49.3部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-7を得た。各種物性を表1に示す。
【0263】
(製造例8)
共重合体溶液A-8(BzMI-TBMA-HEMA-AA共重合体のGMA付加体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート115.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテル49.4部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド10.0部、メタクリル酸-t-ブチル35.0部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル10.0部、アクリル酸45.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート34.1部、プロピレングリコールモノメチルエーテル14.6部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン4.0部を準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行った。その後、室温まで冷却した後、メタクリル酸グリシジル39.4部、触媒としてジメチルベンジルアミン0.4部、重合禁止剤としてトパノールを0.2部仕込み、110℃7時間反応させ、共重合体溶液A-8を得た。各種物性を表1に示す。
【0264】
(製造例9)
共重合体溶液A-9(BzMI-TBMA-GMA共重合体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート124.3部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、ビーカーにN-ベンジルマレイミド10.0部、メタクリル酸-t-ブチル55.0部、メタクリル酸グルシジル35.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.0部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15.7部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行い、共重合体溶液A-9を得た。各種物性を表1に示す。
【0265】
(製造例10)
共重合体溶液A-10(MMA-HEMA共重合体溶液)の調製
温度計、攪拌機、ガス導入管、冷却管及び滴下槽導入口を備えた反応槽に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート198.4部を仕込み、窒素置換した後、加熱して90℃まで昇温した。他方、滴下槽(A)として、メタクリル酸メチル80.0部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル20.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.9部、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.0部を攪拌混合したものを準備し、滴下槽(B)に、n-ドデシルメルカプタン3.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.0部を攪拌混合したものを準備した。反応槽の温度が90℃になった後、同温度を保持しながら、滴下槽から3時間かけて滴下を開始し、重合を行った。滴下終了後30分間90℃を保った後、115℃まで昇温し、90分間熟成を行い、共重合体溶液A-10を得た。各種物性を表1に示す。
【0266】
(製造例11)
重合体溶液B-1(VEEM重合体溶液)の調製
アセトン(室温)バスに浸した200mLの3つ口フラスコ中、脱水シクロペンチルメチルエーテル(30g)、ジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール(154uL、0.75mmol)、安息香酸テトラブチルアンモニウム(2.73mg、0.0075mmol)の混合物に、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)(15.9g、79.5mmol)を窒素気流下にて30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を同条件にて5時間撹拌することで、VEEM重合体のシクロペンチルメチルエーテル溶液(重合体溶液B-1)を得た。得られた溶液をH-NMRにて測定したところ、重合に用いられたVEEMは完全に消費されていた。重合体溶液B-1の各種物性を表2に示す。
【0267】
(製造例12)
重合体溶液B-2(VEEM-CHMA共重合体溶液)の調製
20℃恒温槽に浸した30mLシュレンクチューブ中、脱水テトラヒドロフラン(8.0 mL)、ジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール(0.12g,0.69mmol)、安息香酸テトラブチルアンモニウム(2.5mg,0.0069mmol)の混合物に、VEEM(2.0g,10mmol)とメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)(2.0g,12mmol)の混合物を窒素気流下にて10分間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を同条件にて5時間撹拌した。得られた溶液を酢酸エチルで希釈し、シリカゲルショートカラムに通してから減圧濃縮することでVEEMとCHMAの共重合体溶液(重合体溶液B-2)を得た。得られた溶液をH-NMRにて測定したところ、重合に用いられたVEEM及びCHMAは完全に消費されていた。重合体溶液B-2の各種物性を表2に示す。
【0268】
【表1】
【0269】
【表2】
【0270】
表1中の記載は、下記のとおりである。
BzMI:N-ベンジルマレイミド
MD:ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート
AMA:α-(アリルオキシメチル)メチルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
GMA:メタクリル酸グリシジル
TBMA:メタクリル酸t-ブチル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
VT:ビニルトルエン
nDM:n-ドデシルメルカプタン
SAH:無水コハク酸
【0271】
表2中の記載は、下記のとおりである。
VEEM:メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル
【0272】
(調製例1)
顔料分散体1の調製
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを12.9部、分散剤としてディスパロンDA-7301を0.4部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58を2.25部、及び、C.I.ピグメントイエロー138を1.5部混合し、ペイントシェーカーにて3時間分散することで顔料分散体1(固形分22質量%)を得た。
【0273】
(実施例1)
共重合体溶液A-1を固形分量で35.0部、重合体溶液B-1を固形量で10.0部、ラジカル重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを20.0部、ラジカル重合性光重合開始剤としてイルガキュアOXE-02(BASFジャパン社製)を5.0部、顔料分散体1を固形分として30.0部、更に希釈溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を固形分濃度が20%となるように加え、攪拌することで硬化性樹脂組成物1を得た。
【0274】
(実施例2~13、比較例1~2)
表3に示す配合としたこと以外は実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物2~15を得た。
【0275】
得られた硬化性樹脂組成物1~15の耐溶剤性について評価した。結果を表3に示す。
また、表3中の記載は、下記のとおりである。
光酸発生剤:CPI-100P(トリアリールスルホニウム塩型、サンアプロ社製)
熱酸発生剤:SI-100(サンエイドSI-100L、三新化学工業社製)
【0276】
【表3】
【0277】
表1~3より、少なくとも酸基含有アルカリ可溶性樹脂、又は、熱もしくは酸により酸基を生成する基を有する樹脂と、側鎖にビニルエーテル基を有する重合体とを含む硬化性樹脂組成物は、110℃の温度条件でも、耐溶剤性に優れた硬化物を与えることができることがわかった。